説明

非浸透性表皮材、成形シート材料、および該成形シート材料の製造方法

【課題】本発明の課題は、自動車の内装材等に用いられる成形シート材料の外観を良好に維持することにある。
【解決手段】繊維シートからなる表皮に通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mの紙材料を裏打ちした非浸透性表皮材を多孔質基材に積層し所定形状に成形する。成形時に該多孔質基材から滲出する含浸物や混合物は該紙材料によって堰止められて表皮材表面に達しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車あるいは建材等の内装材料等に使用される成形シート材料および該成形シート材料の非浸透性表皮材、ならびに該成形シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の成形シート材料にあっては、一般に繊維板や合成樹脂発泡体板のような多孔質基材の表面に表皮材を積層し、所定形状に成形したものが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−78709号公報
【特許文献2】特開2000−319615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記多孔質基材には成形性や剛性を付与するために合成樹脂液あるいは合成樹脂前駆体液が含浸されたり、合成樹脂粒子が混合されたり、あるいは難燃剤が混合されており、その上に表皮材が積層されて接着剤を使用するかまたは使用することなく貼着されている。
上記成形シート材料は通常ホットプレスによって成形され、同時に上記表皮材が上記多孔質基材に貼着されるが、ホットプレス時に接着あるいは基材に含浸あるいは混合されている合成樹脂や合成樹脂前駆体、あるいは難燃剤等の滲出性材料が表皮材表面に滲出して斑となり、外観を悪くする、と云う問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するための手段として、繊維シートまたはマットからなる表皮に通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mの紙材料を裏打ちした非浸透性表皮材を提供するものである。
上記紙材料は表面に多数の凹凸を形成したクレープ加工および/またはエンボス加工紙であることが望ましく、また上記繊維シートまたはマットおよび/または紙材料には合成樹脂が塗布または含浸されていることが望ましい。
更に本発明は、滲出性材料が塗布または含浸または混合されている多孔質基材の片面または両面に接着剤を使用するかまたは使用することなく貼着すると共に、所定の形状に成形した成形シート材料を提供するものである。通常前記多孔質基材に塗布または含浸されている滲出性材料とは、合成樹脂および/または合成樹脂前駆体および/または難燃剤である。
更に本発明は、滲出性材料が塗布または含浸または混合されている多孔質基材に、繊維シートまたはマットからなる表皮を重ねて、接着剤を使用するかまたは使用することなくホットプレスによって所定形状に成形し、かつ上記表皮を上記多孔質基材に貼着する場合、上記表皮に上記接着剤および/または上記滲出性材料が浸出することを防止するために、あらかじめ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mの紙材料を裏打ちしておく成形シート材料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明の非浸透性表皮材に裏打ちされている紙材料は軽量であり、成形シート材料の重量を増加させない。該非浸透性表皮材は、接着剤を使用してあるいは接着剤を使用することなく多孔質基材に積層され、そして通常はホットプレスによって成形されて成形シート材料となる。
この際、上記接着剤あるいは上記多孔質基材に含浸あるいは混合されている合成樹脂や合成樹脂前駆体、あるいは難燃剤等の滲出性材料が上記多孔質基材から滲出するが、該表皮材には通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mの紙材料が裏打ちされており、それ故に非浸透性であるから、上記接着剤や滲出性材料は、該表皮材の表面にまでは滲出して来ない。
【0007】
上記紙材料が表面に多数の凹凸を形成したクレープ加工および/またはエンボス加工紙であると、軽量でありながら該成形シート材料の成形性および吸音性が向上する。該繊維シートまたはマットおよび/または紙材料に合成樹脂が含浸されていると、表皮材の剛性が向上し、得られる成形シート材料の形状安定性、寸法安定性が向上する。
【0008】
〔効果〕
したがって本発明にあっては、表皮材表面に斑が発生せず、優れた外観を有する軽量な成形シート材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】通気抵抗の測定方法を説明する説明図である。
【図2】突起高さhを説明する説明図である。
【図3】実施例5の非浸透性表皮材の断面図である。
【図4】他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔繊維シートまたはマット〕
本発明の表皮として使用される繊維シートまたはマットに使用される繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ、蚕糸、キワタ、ガマ繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、デンプン系、ポリ乳酸系等の生分解性繊維、レーヨン(人絹、スフ)、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート等のセルロース系人造繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、これらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維等である。これらの繊維は、単独あるいは2種以上組合わせて使用される。
【0011】
更に上記繊維としては、融点が180℃以下である低融点繊維を使用してもよい。該低融点繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点繊維は、単独あるいは2種以上組合わせて使用される。また、これらの低融点繊維を芯とし、高融点繊維を鞘とした、あるいは高融点繊維を芯とし、低融点繊維を鞘とした芯鞘構成の繊維等が使用される。
該低融点繊維の繊度は、0.1dtex〜60dtexの範囲である。
上記低融点繊維は通常上記繊維に1〜50質量%混合される。
【0012】
上記繊維シートまたはマットは、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法、あるいは繊維のウェブのシートあるいはマットが上記低融点繊維からなるか、あるいは上記低融点繊維が混合されている場合には該混合繊維のウェブをそのまま、あるいは該ウェブをニードルパンチングによって絡合した上で加熱して、該低融点繊維を軟化せしめて繊維相互を結着する方法、あるいは上記繊維シートまたはマットに合成樹脂を含浸あるいは混合して結着するか、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で合成樹脂あるいは合成樹脂前駆体の粉末、溶液、エマルジョン、あるいはラテックスを混合、塗布あるいは含浸して結着する方法、上記繊維を編織する方法等によって製造される。
上記繊維シートまたはマットとしては例えばカーペットのような起毛布が使用されてもよい。上記カーペットには通常カットパイルやループパイルのようなパイル層が形成されるが、上記パイル層を形成するにはタフティング、ニードルパンチング、あるいは静電植毛等が適用される。
上記繊維シートまたはマットの目付量は通常15〜150g/m、厚みは通常0.1〜5mmに設定される。
【0013】
〔紙材料〕
上記表皮に裏打ちされる紙材料としては、通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mのものが使用される。
上記紙材料の通気抵抗が0.06kPa・s/m未満の場合には吸音性能の良い表皮材が得られないと共に、多孔質基材に含浸または混合されている含浸物または混合物が表皮表面に滲出して来るのを抑制することが困難になる。一方通気抵抗が3.0kPa・s/mを超えた紙材料の場合には、成形性の良い表皮材が得られない。
【0014】
上記の通気抵抗R(Pa・s/m)とは、通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗Rの測定は定常流差圧測定方式により行われる。図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m/m・s)である。なお通気抵抗R(Pa・s/m)は通気度C(m/Pa・s)とC=1/Rの関係にある。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
【0015】
上記紙材料として、抄造した紙でもよいし、表面に多数の凹凸を形成した延伸性紙材料でもよい。該延伸性紙材料を使用すると、吸音性能に優れかつ成形性の良い表皮材が得られる。
【0016】
前記延伸性紙材料としては、表面に縮緬状の皺を形成したクレープ加工紙、表面に多数の突起を形成したエンボス加工紙、表面に縮緬状の皺と多数の突起を形成したクレープエンボス加工紙等が例示される。
上記クレープ加工紙は原料にクレープ加工を施したものであり、上記クレープ加工には、湿紙の状態でプレスロールやドクターブレードを用いて縦方向に圧縮して皺付けを行なうウェットクレープと、シートをヤンキードライヤーやカレンダーで乾燥した後ドクターブレード等を用いて縦方向に圧縮して皺付けを行なうドライクレープがある。
この場合次式で計算されるクレープ率が10〜50%であることが望ましい。
クレープ率(%)=(A/B)×100
A:紙抄造工程における抄紙速度
B:紙の巻き取り速度
即ちクレープ率とはペーパーウェブがクレーピングで縦方向(抄造方向)に圧縮される割合である。
該クレープ率が10%未満の場合には、クレープ加工紙の吸音性能が悪くなりかつ延伸性が不充分となって成形時に皺が発生し易くなり、一方該クレープ率が50%を越えると、やはり成形時に皺が発生し易くなる。
【0017】
上記エンボス加工紙は表面に多数の凹凸を設けたロール(エンボスロール)やプレート(エンボスプレート)を原紙に押圧し、紙の表面に多数の突起を形成したものであり、該突起の高さは0.02〜2.00mmであり、かつ突起数は20〜200個/cmであることが望ましい。該突起高さが0.02mm未満の場合には、該エンボス加工紙の吸音性能が悪くなり、かつ延伸性が不充分となって成形時に皺が発生し易くなり、一方該突起高さが2.00mmを超えても成形時に皺が発生し易くなる。また突起数が20個/cm未満の場合には、該エンボス加工紙の吸音性能が悪くなり、また延伸性が不充分となって成形時に皺が発生し易くなり、一方突起数が200個/cmを超えても、該エンボス加工紙の吸音性能が悪くなる。
なお図2に示されるエンボス加工紙1a(紙材料)には表面に多数の突起2が形成されており、該突起2の高さは、図2に示す「h」に相当する。上記原紙としてクレープ加工紙を使用すればエンボスクレープ加工紙となる。
ところで、本発明に係る紙材料の目付量は、通常、10〜100g/m程度である。
【0018】
〔表皮材〕
本発明の表皮材は、上記繊維シートまたはマットに上記紙材料を裏打ちすることによって製造される。上記繊維シートまたはマットに上記紙材料を裏打ちするには、接着剤を使用して接着したり、ニードルパンチングによって絡合する方法による。
上記表皮材の通気性を阻害しないようにするために、接着剤を使用する場合には、粉末状あるいはくもの巣状のホットメルト型接着剤を選択したり、溶液型接着剤やエマルジョン型接着剤の場合にはスプレーあるいはスクリーン印刷等によって接着面に点状に接着剤を散布あるいは塗布して接着剤層を通気性のものにすることが望ましい。
従来のカーペットにあっては、通常吸音材料としてポリエステル繊維やポリプロピレン繊維等の有機合成繊維からなるフェルトが裏打ちされている。
本発明の表皮材において、上記繊維シートまたはマットであるカーペットに上記フェルトに代えて上記紙材料を裏打ちした場合、従来のフェルトを裏打ちしたカーペットと同等の吸音性能が得られ、かつ厚みが薄くなり、その上重量が大幅に軽減される。
上記フェルトに使用される有機合成繊維は製造工程において二酸化炭素を排出する。しかし本発明の紙材料は原料として製造工程で二酸化炭素を殆んど排出されない天然パルプ繊維を使用しているから、二酸化炭素の排出量を削減できると共に、天然パルプ繊維は腐朽性があるために廃棄物処理も容易であり、またバイオマスエネルギー(例えばバイオエタノールの原料)としても使用できる。
【0019】
〔多孔質基材〕
本発明の表皮材は多孔質基材表面に積層される。上記多孔質基材としては、不織布、繊維編織物等の繊維シート、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、エポキシ樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体、尿素樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等の樹脂発泡体のうち通気性を有する樹脂発泡体、上記プラスチックのビーズの焼結体等が使用される。
【0020】
上記多孔質基材が繊維シートからなる場合には、表皮材に使用されている繊維と同様な繊維、低融点繊維等が使用される。
上記多孔質基材は一般に目付量が50〜2000g/m、厚みが3〜50mmである。
【0021】
〔滲出性材料〕
上記多孔質基材には滲出性材料が塗布および/または含浸および/または混合されている。
上記浸出性材料としては、上記多孔質基材に剛性、成形性、成形形状保持性、耐熱性等を付与するための合成樹脂および/または合成樹脂前駆体、難燃性を付与するための難燃剤、柔軟性を付与するための軟化剤、その他酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、補強剤等が例示される。
【0022】
上記合成樹脂としてはフェノール樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、加熱によりエステル結合を形成して硬化する熱硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低融点ポリアミド、低融点ポリエステル等の融点200℃以下のホットメルト樹脂、あるいは上記熱硬化性樹脂の初期縮合物、プレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体等が例示される。
上記プレポリマーとしては、例えばウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、ジアリルフタレート樹脂プレポリマー、上記オリゴマーとしては、例えばアクリルエステルオリゴマー、メタクリルエステルオリゴマー、上記モノマーとしてはアクリルエステルモノマー、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー、多価イソシアネート等が例示される。
【0023】
上記難燃剤としては、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル、テトラクロロフタル酸、テトラブロモビスフェノールA、三酸化アンチモン、塩素化パラフィン、膨張黒鉛等が例示され、上記軟化剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤やパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、植物油等のオイル等が例示される。
更に上記多孔質基材が繊維シートである場合には、繊維間を緻密にしかつ空隙を設けるために熱膨張性粒体が混合されてもよい。
【0024】
上記滲出性材料は、二種以上併用されてもよく、液体、水溶液、有機溶剤溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョン、水性ラテックス、あるいは粉末の形状で上記多孔質基材に含浸、塗布、あるいは混合される。望ましい形状としては、毒性や引火性がなく取扱いが容易な水性エマルジョン、水性ディスパージョン、水性ラテックスがある。
【0025】
上記滲出性材料は、所望なれば上記表皮材の表皮および/または紙材料に塗布および/または含浸および/または混合されてもよい。
【0026】
上記滲出性材料のうち、合成樹脂や合成樹脂前駆体を上記表皮や紙材料に塗布、含浸、あるいは混合すると、得られる成形シート材料に剛性、成形性、成形形状保持性、耐熱性等が付与される。
【0027】
また、特に本発明で使用される樹脂として望ましいのは、フェノール系樹脂である。該フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
【0028】
〔フェノール系化合物〕
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
【0029】
〔一価フェノール〕
上記一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、ナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することが出来る。
【0030】
〔多価フェノール〕
上記多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシンまたはアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
【0031】
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。
エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
なお上記多価フェノールのうち、レゾルシンおよびアルキルレゾルシン等のレゾルシノール系化合物の一種または二種以上の混合物(エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物を含む)と、アルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体からなるレゾルシノール系樹脂は、本発明のフェノール系樹脂として使用されることが望ましい。
【0032】
〔ホルムアルデヒド供与体〕
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。本発明ではホルムアルデヒドとホルムアルデヒド供与体とを合わせて、以下ホルムアルデヒド類と云う。
【0033】
〔フェノール系樹脂の製造〕
上記フェノール系樹脂には二つの型があり、上記フェノール系化合物に対してホルムアルデヒド類を過剰にしてアルカリ触媒で反応することによって得られるレゾールと、ホルムアルデヒド類に対してフェノールを過剰にして酸触媒で反応することによって得られるノボラックとがあり、レゾールはフェノールとホルムアルデヒドが付加した種々のフェノールアルコールの混合物からなり、通常水溶液で提供され、ノボラックはフェノールアルコールに更にフェノールが縮合したジヒドロキシジフェニルメタン系の種々な誘導体からなり、通常粉末で提供される。
本発明に使用されるフェノール系樹脂にあっては、まず上記フェノール系化合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて初期縮合物とし、該初期縮合物を繊維シートに付着させた後、硬化触媒および/または加熱によって樹脂化する。
上記縮合物を製造するには、一価フェノールとホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール単独初期縮合物としてもよいし、また一価フェノールと多価フェノールとの混合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール−多価フェノール初期共縮合物としてもよい。上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールと多価フェノールのどちらか一方または両方をあらかじめ初期縮合物としておいてもよい。
【0034】
本発明において、望ましいフェノール系樹脂は、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、該共縮合物(初期共縮合物)の水溶液の安定が良く、かつフェノールのみからなる縮合物(初期縮合物)に比較して、常温で長期間保存することが出来るという利点がある。また該水溶液をシート基材に含浸あるいは塗布させ、プレキュアして得られる繊維シートの安定性が良く、該繊維シートを長期間保存しても成形性を喪失しない。また更にアルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを捕捉して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる等の利点も有する。
上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物の望ましい製造方法は、まずフェノールとホルムアルデヒド類とを反応させてフェノール系樹脂初期縮合物を製造し、次いで該フェノール系樹脂初期縮合物にアルキルレゾルシンを添加し、所望なればホルムアルデヒド類を添加して反応せしめる方法である。
【0035】
例えば、上記(a)一価フェノールおよび/または多価フェノールとホルムアルデヒド類との縮合では、通常一価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤、第三成分とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときホルムアルデヒド類は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加または連続滴下してもよい。
【0036】
更に本発明では、上記フェノール系樹脂として、所望なれば、尿素、チオ尿素、メラミン、チオメラミン、ジシアンジアミン、グアニジン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,6ジアミノ−1,3−ジアミンのアミノ系樹脂単量体および/または該アミノ系樹脂単量体からなる初期縮合体を添加してフェノール系化合物および/または初期縮合物と共縮合せしめてもよい。
【0037】
上記フェノール系樹脂の製造の際、必要に応じて反応前あるいは反応中あるいは反応後に、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機または有機酸、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、モノクロル酢酸またはそのナトリウム塩、α,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、サルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、N−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等の酸性物質、アンモニア、アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類等のアルカリ性物質を触媒またはpH調整剤として混合してもよい。
【0038】
本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物を含む)には、更に、上記ホルムアルデヒド類あるいはアルキロール化トリアゾン誘導体等の硬化剤を添加混合しても良い。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体は尿素系化合物と、アミン類と、ホルムアルデヒド類との反応によって得られる。アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用される上記尿素系化合物として、尿素、チオ尿素、メチル尿素等のアルキル尿素、メチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、フェニル尿素、ナフチル尿素、ハロゲン化フェニル尿素、ニトロ化アルキル尿素等の単独または二種以上の混合物が例示される。特に望ましい尿素系化合物は尿素またはチオ尿素である。またアミン類としてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン等の脂肪族アミン、ベンジルアミン、フルフリルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類のほか更にアンモニアが例示され、これらは単独でまたは二種以上の混合物として使用される。上記アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用されるホルムアルデヒド類はフェノール系樹脂の初期縮合物の製造に使用されるホルムアルデヒド類と同様なものである。
【0039】
上記アルキロール化トリアゾン誘導体の合成には、通常、尿素系化合物1モルに対してアミン類および/またはアンモニアは0.1〜1.2モル、ホルムアルデヒド類は1.5〜4.0モルの割合で反応させる。上記反応の際、これらの添加順序は任意であるが、好ましい反応方法としては、まずホルムアルデヒド類の所要量を反応器に投入し、通常60℃以下の温度に保ちながらアミン類および/またはアンモニアの所要量を徐々に添加し、更に所要量の尿素系化合物を添加し、80〜90℃で2〜3時間攪拌加熱して反応せしめる方法がある。ホルムアルデヒド類としては通常37%ホルマリンが用いられるが、反応生成物の濃度をあげるためにその一部をパラホルムアルデヒドに置き換えても良い。またヘキサメチレンテトラミンを用いると、より高い固形分の反応生成物が得られる。尿素系化合物と、アミン類および/またはアンモニアと、ホルムアルデヒド類との反応は通常水溶液で行われるが、水の一部または全部に代えてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類の単独または二種以上の混合物が使用されても差し支えないし、またアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の水可溶性有機溶剤の単独または二種以上の混合物が添加使用出来る。上記硬化剤の添加量はホルムアルデヒド類の場合は本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜100質量部、アルキロール化トリアゾン誘導体の場合は上記フェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜500質量部である。
【0040】
〔フェノール系樹脂のスルホメチル化および/またはスルフィメチル化〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために、上記フェノール系樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
【0041】
〔スルホメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
【0042】
〔スルフィメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0043】
上記フェノール系樹脂初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する場合、該初期縮合物に任意の段階でスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤を添加して、フェノール系化合物および/または初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
【0044】
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
【0045】
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
【0046】
このようにしてスルホメチル化および/またはスルフィメチル化したフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は、酸性(pH1.0)〜アルカリ性の広い範囲で安定であり、酸性、中性およびアルカリ性のいずれの領域でも硬化することが出来る。特に、酸性側で硬化させると、残存メチロール基が減少し、硬化物が分解してホルムアルデヒドを発生するおそれがなくなる。
【0047】
〔成形シート材料〕
本発明の成形シート材料は、上記表皮材を上記多孔質基材に積層し、所望の形状に成形することによって製造される。上記表皮材と上記多孔質基材とを積層する場合には、上記表皮に紙材料を裏打ちする場合と同様、接着剤を使用したり、ニードルパンチングによって絡合したりする。
【0048】
上記積層物を成形するには、通常ホットプレスが適用されるが、積層物を加熱した上でコールドプレスを行ったり、真空および/または圧空成形を行ってもよい。
上記成形過程においては、該多孔質基材中に含浸および/または混合されている前記滲出性材料、あるいは表皮材と多孔質基材との積層に使用した接着剤等が滲出するが、滲出物は上記紙材料によって該表皮材の表面に達することを阻止される。したがって該表皮材の表面には該滲出物によって汚染されることがないので、外観が良好に維持される。
【0049】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例を記載するが、本発明は該実施例にのみ限定されるものではない。
〔実施例1〕
表皮材としてポリエステル繊維からなるスパンボンド法による繊維シート(目付量:50g/m、厚さ:0.27mm)の裏面に、紙材料として広葉樹パルプからなるクレープ加工紙(クレープ率:30%、目付量:30g/m、通気抵抗:0.3kpa・s/m)をホットメルト接着剤により接着した後、レゾール型フェノール樹脂初期縮合物水溶液を該繊維シートに対し固形分で20質量%になるようにロールにて含浸塗布し、120℃で4分間乾燥させ該フェノール樹脂をプレキュアさせた非浸透性表皮材を得た。次に多孔質基材として、硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂粉末が20質量%混合された再生フェルトシート(目付量:1200g/m、厚さ:30mm)を用い、該多孔質基材に上記非浸透性表皮材を重合し、熱圧プレス成形機で200℃で60秒間かけ所定形状の成形物を得た。この成形物の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
〔実施例2〕
実施例1において、紙材料をエンボス加工紙(突起高さ:0.1mm、突起数:64個/cm、目付量:30g/m、通気抵抗:1.2kpa・s/m)に代えた他は同様にして成形物を得た。この成形物の結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1において、紙材料を除いた他は同様にして成形物を得た。この成形物の結果を表1に示す。
【0053】
〔比較例2〕
実施例1において、クレープ加工紙の通気抵抗を0.04kpa・s/mにした他は同様にして成形物を得た。この成形物の結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例3〕
実施例1において、クレープ加工紙の通気抵抗を3.5kpa・s/mにした他は同様にして成形物を得た。この成形物の結果を表1に示す。
【0055】
表1を参照すると、本発明に係る実施例1,2は、多孔質基材からの樹脂の滲出しは見られず、また成形性にも優れていることがわかった。
比較例1の従来の成形物は、表皮材表面に滲出しによる斑点が多く発生し、外観が悪かった。
比較例2は、滲出しに関し、比較例1より良好であったが、依然滲出しが発生した。
比較例3は、成形性が悪かった。
【0056】
〔実施例3〕
表皮材としてポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による繊維シート(目付量:80g/m、厚さ:2.5mm)に、熱硬化アクリル樹脂(固形分:45%)20質量部、フッソ系撥水撥油剤(固形分:20%水溶液)2質量部、窒素−リン系難燃剤(固形分:30%水溶液)3質量部、水75質量部からなる混合液を該繊維シートに対し固形分で20質量%になるようにロールにて含浸塗布し、130℃で3分間乾燥させ該熱硬化アクリル樹脂をプレキュアさせた後、紙材料として広葉樹パルプ50質量部、針葉樹パルプ50質量部の比率からなる抄造紙(目付量:20g/m、通気抵抗:0.7kpa・s/m)をホットメルト接着剤により接着し非浸透性表皮材を得た。次に多孔質基材として、硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂粉末が20質量%、及び難燃剤としてポリリン酸アンモニウム粉末(粒度:20〜30μm)が15質量%混合された再生フェルトシート(目付量:1500g/m、厚さ:30mm)を用い、該多孔質基材に上記非浸透性表皮材を重合し、熱圧プレス成形機で200℃で60秒間かけ所定形状の成形物を得た。
この成形物は、多孔質材に含まれる樹脂や難燃剤が表皮材表面へ滲出すことがなく、表皮材の外観が良好で吸音性能も優れていた。
【0057】
〔実施例4〕
表皮材としてポリエステル繊維80質量%、低融点ポリエステル繊維(融点:150℃)20質量%からなるサーマルボンド法による繊維シート(目付量:20g/m、厚さ:0.13mm)の裏面に、紙材料として広葉樹パルプからなるエンボス加工紙(突起高さ:0.3mm、突起数:49個/cm、目付量:50g/m、通気抵抗:0.4kpa・s/m)をホットメルト接着剤により接着した後、スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分:45%水溶液)30質量部、フッ素系撥水撥油剤(固形分:20%水溶液)3質量部、カーボンブラック(固形分:30%水溶液)1質量部、水76質量部からなる混合液を該繊維シートに対し固形分で20質量%の塗布量になるようにロールにて含浸塗布し、150℃で2分間乾燥させ該スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物をプレキュアさせ非浸透性表皮材を得た。次に多孔質基材として、レゾール型フェノール樹脂が30質量%混合されたガラスウール原綿(目付量:800g/m、厚さ:40mm)に該非浸透性表皮材を重合し、熱圧プレス成形機で200℃で40秒間かけ所定形状の成形物を得た。
この成形物は、多孔質材に含まれる樹脂や難燃剤が表皮材表面へ滲出すことがなく、表皮材の外観が良好で吸音性能も優れていた。
【0058】
〔実施例5〕
実施例3で使用した繊維シートにニードルパンチング法によって起毛層を設け、該起毛層をシャーリングによってカットパイル層としてカーペット4とした。
また、上記カーペット4にくもの巣状のホットメルト接着剤層5を設け、上記接着剤層5を介して実施例3で使用した紙材料3を上記カーペット4に接着し、図3に示すように非浸透性表皮材6とした。
上記表皮材6は従来のカーペットに比べて厚みが薄くても優れた吸音性能を示した。
【0059】
本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、例えば図4に示すように実施例5の非浸透性表皮材6の紙材料3側に、従来のカーペットに使用されるようなフェルト7を貼着することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にあっては、外観に優れかつ成形性のよい成形シート材料が提供される。該成形シート材料は例えば自動車の内装材料等に極めて有用であるから、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1a エンボス加工紙(延伸性紙材料)
2 突起
3 紙材料
4 カーペット
5 ホットメルト接着剤層
6 非浸透性表皮材
7 フェルト
R 通気抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートまたはマットからなる表皮に通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mの紙材料を裏打ちしたことを特徴とする非浸透性表皮材。
【請求項2】
上記紙材料は表面に多数の凹凸を形成したクレープ加工および/またはエンボス加工紙である請求項1に記載の非浸透性表皮材。
【請求項3】
上記繊維シートまたはマットおよび/または紙材料には合成樹脂が塗布または含浸されている請求項1または請求項2に記載の非浸透性表皮材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非浸透性表皮材を、滲出性材料が塗布または含浸または混合されている多孔質基材の片面または両面に接着剤を使用するかまたは使用することなく貼着すると共に、所定の形状に成形したことを特徴とする成形シート材料。
【請求項5】
前記多孔質基材に塗布または含浸されている滲出性材料とは、合成樹脂および/または合成樹脂前駆体および/または難燃剤である請求項4に記載の成形シート材料。
【請求項6】
滲出性材料が塗布または含浸または混合されている多孔質基材に、繊維シートまたはマットからなる表皮を重ねて、接着剤を使用するかまたは使用することなくホットプレスによって所定形状に成形し、かつ上記表皮を上記多孔質基材に貼着する場合、上記表皮に上記接着剤および/または上記滲出性材料が浸出することを防止するために、あらかじめ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mの紙材料を裏打ちしておくことを特徴とする成形シート材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−94990(P2010−94990A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217579(P2009−217579)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】