説明

面導光円板、光学式エンコーダおよびテープフィーダ

【課題】設計自由度が高くキャリアテープの送り量を高精度に制御可能なテープフィーダ、および省スペース性と検出精度の高さを兼ね備えた光学式エンコーダ、半径方向に導光する面導光円板を提供する。
【解決手段】第1面側から入射された光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板15と、面導光円板15の第1面側に中心軸aを同じくして配され、中心角毎に異なるパターンのスリット群14aを有する回転スリット板14と、面導光円板15に光を入射する発光素子11aと、回転スリット板14のスリット14bを透過した反射光を受光する受光素子11bと、回転スリット板14と同期して回転するキャリアテープ搬送用のスプロケット1を備え、受光素子11bが受光した反射光のパターンに基づいてスプロケット1の回転角を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向に導光する面導光円板、および面導光円板を備えた光学式エンコーダ、面導光円板を備えたテープフィーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
テープフィーダはキャリアテープに収納された実装用部品を実装ヘッドによるピックアップ位置に供給する機能を備えている。テープフィーダにはキャリアテープに設けられた送り孔に係合するスプロケットが備えられており、スプロケットの回転によりキャリアテープの送り動作が行われ、収納された部品が順次ピックアップ位置に供給されるようになっている。部品をピックアップ位置により正確に供給するためにはキャリアテープの送り量を厳密に管理する必要があり、これを実現するテープフィーダとして、回転ディスクとスプロケットを無端ベルトで連結し、回転ディスクの回転角をエンコーダで検出することでキャリアテープの送り量制御を行うものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−139272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、回転ディスクとスプロケットを無端ベルトで連結するという構成であることから、テープフィーダの限られた筐体内部でのレイアウトが制限され、設計上の自由度が低くなるという問題がある。また、無端ベルトの張力に耐え得るだけの剛性が必要になり、無端ベルト自体の重量に加え、剛性を確保するためにテープフィーダの重量が増大するという問題もある。さらに、回転伝達を担う無端ベルトがスプロケットの回転角と回転ディスクの回転角との間に位相差が生じる原因となり、検出結果の信頼性に問題がある。
【0004】
そこで本発明は、設計自由度が高くキャリアテープの送り量を高精度に制御可能なテープフィーダ、および省スペース性と検出精度の高さを兼ね備えた光学式エンコーダ、半径方向に導光する面導光円板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の面導光円板は、対向する第1面と第2面を有し、第1面側から入射した光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板であって、円板の中心軸を中心として少なくとも外周寄りもしくは内周寄りの何れかに環状に設けられて第1面側から入射された光を径方向に反射する第1反射部と、前記円板の中心軸を中心とした同心円上に複数設けられて第1反射部で反射した光を第1面側に反射する第2反射部を備えた。
【0006】
請求項2に記載の面導光円板は請求項1に記載の面導光円板であって、前記円板の所定の中心角で区画した領域内に入射して前記第1面と前記第2面の間で導光される光を当該領域内に反射する第3反射部を備えた。
【0007】
請求項3に記載の面導光円板は請求項1または2に記載の面導光円板であって、前記円板が1つのプリズム体であり、前記第1反射部が、前記第1面と前記第2面のそれぞれの外周と連続して前記第2面から前記第1面に向けて拡径するテーパ面で構成され、前記第2反射部が、前記第2面から前記第1面に向けて縮径するように前記第2面に形成されたテーパ面で構成される。
【0008】
請求項4に記載の面導光円板は請求項2または3に記載の面導光円板であって、前記第3反射部が、前記円板の前記第1面と前記第2面に前記円板の中心軸を中心とする所定の中心角で放射状に形成された複数の三角溝の傾斜面で構成される。
【0009】
請求項5に記載の光学式エンコーダは、対向する第1面と第2面を有し、第1面側から入射した光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板と、面導光円板の第1面側に中心軸を同じくして配され、中心角毎に異なるパターンの透光部と遮光部を有する遮光円板と、面導光円板に光を入射する発光部と、遮光円板の透光部を透過した反射光を受光する受光部を備え、受光部が受光した反射光のパターンに基づいて遮光円板の回転角を検出する。
【0010】
請求項6に記載のテープフィーダは、対向する第1面と第2面を有し、第1面側から入射された光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板と、面導光円板の第1面側に中心軸を同じくして配され、中心角毎に異なるパターンの透光部と遮光部を有する遮光円板と、面導光円板に光を入射する発光部と、遮光円板の透光部を透過した反射光を受光する受光部と、受光部が受光した反射光のパターンに基づいて遮光円板の回転角を検出する光学式エンコーダと、遮光円板と同期して回転するキャリアテープ搬送用のスプロケットを備えた。
【発明の効果】
【0011】
本発明の面導光円板によれば、光学式エンコーダにおいて省スペース性と検出精度の高さを実現することができ、テープフィーダにおいて設計自由度の高さとキャリアテープの送り量の高精度制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態のテープフィーダに内蔵されたスプロケットに光学式エンコーダが装着された状態を示す斜視図であり、図2は本発明の実施の形態のスプロケットと光学式エンコーダを分解した状態を示す斜視図であり、図3は本発明の実施の形態の面導光円板の径方向の断面図(図2に示すA−A断面図)であり、図4は本発明の実施の形態の面導光円板の周方向の断面図(図2に示すB−B断面図)である。
【0013】
図1において、スプロケット1は外周に設けられたピン2をキャリアテープ3に係合させた状態でテープフィーダに内蔵されている。テープフィーダは、スプロケット1に中心軸a周りの回転駆動力を伝達することでピン2に係合したキャリアテープ3の送り動作を行い、キャリアテープ3に収納された部品を順次ピックアップ位置に供給する。
【0014】
図2において、光学式エンコーダ10は、フォトセンサ11とプリズム12と固定スリット板13と回転スリット板14と面導光円板15で構成される。回転スリット板14と面導光円板15はこの順番でスプロケット1に取り付けられ、中心軸a周りの回転するスプロケット1と同期して回転するように構成される。これに対し、フォトセンサ11とプリズム12と固定スリット板13は中心軸aに対する位置が変わらないようにテープフィーダ4に固定される。なお、スプロケット1はステンレスなどの金属材で形成されており、スプロケット1の表面1aは光を反射する反射面として機能するが、より反射率の高い素材で形成した反射シートを反射面として設けてもよい。
【0015】
フォトセンサ11は、発光部である1つの発光素子11aに対し受光部であるアレイ状の6つの受光素子11bを備えた反射型フォトセンサであり、発光素子11aから発せられた光の反射光を受光素子11bで受けて検知する。フォトセンサ11は、回転スリット板14を挟んで面導光円板15と対向する側に発光方向および受光方向が中心軸aと直交
するように配置されている。プリズム12は、発光素子11aから発せられた光の進行方向を中心軸aと同方向になるように90度変更させて面導光円板15に入射させる1つの発光プリズム12aと、面導光円板15により反射された光の進行方向を90度変更させて各受光素子11bにそれぞれ受光させる6つの受光プリズム12bで構成される。
【0016】
回転スリット板14は、中心軸aを中心とした等角上に形成した複数のスリット群14aなどのスリットにより面導光円板15により反射された光の一部を通過させ、それ以外を遮光する遮光円板である。各スリット群14aには透光部と遮光部が径方向に並設されており、全てのスリット群14aの間で透光部と遮光部の組み合わせパターンが異なるように構成されている。透光部は回転スリット板14に開設したスリット14bで形成されており、このスリット14bの数および位置に差異を設けることで透光部と遮光部の組み合わせパターンをスリット群14a毎に変化させている。従って、回転スリット板14の回転角毎にスリット14bを通過する反射光のパターンが変化し、反射光を受光する受光素子11bの組み合わせパターンが回転スリット板14の回転角毎に異なることになるので、各受光素子11bにおける受光状態を把握することで回転スリット板14の回転角、すなわちスプロケット1の回転角を検出することができる。
【0017】
回転スリット板14の外縁部には各スリット群14aに対応する入射スリット14cが形成されており、発光素子11aから発光プリズム12aを経た光を回転スリット板14の回転角に関係なく面導光円板15に入射させるための透光部となっている。
【0018】
固定スリット板13は、発光プリズム12aおよび受光プリズム12bと回転スリット板14の間に配置され、光を面導光円板15に入射させるための入射スリット13aと、面導光円板15からの反射光を通過させるための反射スリット群13bが形成されている。反射スリット群13bは受光素子11bの数に対応する6箇所に形成されたスリットで構成されている。入射スリット13aは、発光プリズム12aを経た光を回転スリット板14の入射スリット14bに確実に入射させ、隣接するスリット群14aへの入射を阻止する役割を有し、反射スリット群13bは、スリット群14aを通過した反射光を対応する受光プリズム12bに確実に入射させ、対応しない受光プリズム12bへの入射を阻止する役割を果たす。
【0019】
面導光円板15は、発光プリズム12aを経て入射された光を受光プリズム12bに向けて反射するプリズム体であり、ポリアセタール(POM)やメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の光透過率の高い樹脂を素材として回転スリット板14と略同径の円板状に形成されている。
【0020】
図3において、面導光円板15は、平行をなす第1面20と第2面21を有し、それぞれの外周が第2面21から第1面20に向けて拡径するテーパ面22で連続されている。なお、第1面20が回転スリット板14に取り付けられる側であり、第2面21がスプロケット1に取り付けられる側である(図1参照)。第2面21には、中心軸aを中心とした同心円上に第2面21から第1面20に向けて縮径するように複数のテーパ面23が略同間隔で形成されている。
【0021】
これらのテーパ面23と外周に設けられたテーパ面22は相対しているため、第1面20側からテーパ面22に向けて入射された光は径方向に拡散反射され、複数のテーパ面23が形成された内周側に向けて進行方向を変更し、より手前に位置するテーパ面23には直接入光し、内周側に位置するテーパ面23には第1面20で反射した後に入光する。各テーパ面23に入光した光は第1面20に向けて反射される。このように、面導光円板15は、テーパ面22が第1面20側から入射された光を径方向に拡散反射させる第1反射部として機能し、テーパ面23が第1反射部であるテーパ面22で拡散反射された光を第
1面20側に反射させる第2反射部として機能し、第1面20側から入射した光を第1面20と第2面21の間で導光して第1面側に反射する機能を備えている。
【0022】
図2において、面導光円板15には中心軸aを中心として放射状に複数の三角溝24が形成されており、面導光円板15は隣り合う三角溝24により複数の扇型領域に区画されている。図4において、三角溝24は第1面20と第2面21に対向して形成され、それぞれ2つの傾斜面24a、24bを有している。第1面20側の隣り合う三角溝24の対向する傾斜面24a、24bは第2面21側に向けて拡間するように傾斜しており、第2面21側の隣り合う三角溝24の対向する傾斜面24a、24bは第1面20側に向けて拡間するように傾斜している。例えばある扇型領域15a内の光が矢印a方向に進行している場合、傾斜面24bにより矢印b方向に反射されるので、隣り合う扇型領域15bへの拡散が防止され、光が矢印c方向に進行している場合、傾斜面24aにより矢印d方向に反射されるので、隣り合う扇型領域15cへの拡散が防止される。このように傾斜面24a、24bは任意の扇型領域内にある光を当該領域内に反射する第3反射部として機能し、当該領域外への拡散を抑制する効果を奏する。従って、図2に示すようにある扇型領域内に入射された光は、隣り合う扇型領域への拡散が抑制されつつ当該領域内で内周側に向けて導光されるので、第1面20側へ十分な光量で反射される。
【0023】
光学式エンコーダ10は、上述したフォトセンサ11とプリズム12と固定スリット板13と回転スリット板14と面導光円板15で構成され、回転角検出対象の一方の側に配置することができるという省スペース性を備えている。また、回転スリット板14と面導光円板15が回転角検出対象に直接取り付けられるため、他の部材を介して取り付ける場合に比べて検出精度が格段に向上する。この光学式エンコーダ10は、その省スペース性および検出精度の高さの点で、高精度化とともに薄型軽量化が進展するテープフィーダに好適であり、テープフィーダに内蔵されたスプロケットの回転角を正確に検出することでキャリアテープの送り量制御を高精度に行うことが可能になる。
【0024】
なお、上述した実施の形態においては、受光部を構成する受光素子11bの数と受光プリズム12bの数、各スリット群14aに形成される透光部と遮光部の合計数をそれぞれ6つに設定したものを例示しているが、受光素子11bと受光プリズム12bの数は各スリット群14aに形成される透光部と遮光部の合計数に従属するものであり、反射光のパターンを回転角毎に変化させることが可能であれば透光部と遮光部の合計数はいくつであってもかまわない。また、発光部となる発光素子11aから発せられた光は面導光円板15の外周となるテーパ面22に入射し、その後内周側に向けて導光させるが、これとは逆に内周側に入射して外周側に向けて導光されるようにしてもよい。この場合は、第1反射部であるテーパ面22と第2反射部であるテーパ面23が上述した向きと逆向きとなる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、光学式エンコーダにおいて省スペース性と検出精度の高さを実現することができ、テープフィーダにおいて設計自由度の高さとキャリアテープの送り量の高精度制御を実現することができるという利点を有し、実装精度の高さが要求される実装分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態のテープフィーダに内蔵されたスプロケットに光学式エンコーダが装着された状態を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態のスプロケットと光学式エンコーダを分解した状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態の面導光円板の径方向の断面図(図2に示すA−A断面図)
【図4】本発明の実施の形態の面導光円板の周方向の断面図(図2に示すB−B断面図)
【符号の説明】
【0027】
1 スプロケット
10 光学式エンコーダ
11a 発光素子
11b 受光素子
14 回転スリット板
15 面導光円板
20 第1面
21 第2面
22、23 テーパ面
24 三角溝
24a、24b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1面と第2面を有し、第1面側から入射した光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板であって、
円板の中心軸を中心として少なくとも外周寄りもしくは内周寄りの何れかに環状に設けられて第1面側から入射された光を径方向に反射する第1反射部と、
前記円板の中心軸を中心とした同心円上に複数設けられて第1反射部で反射した光を第1面側に反射する第2反射部を備えた面導光円板。
【請求項2】
前記円板の所定の中心角で区画した領域内に入射して前記第1面と前記第2面の間で導光される光を当該領域内に反射する第3反射部を備えた請求項1に記載の面導光円板。
【請求項3】
前記円板が1つのプリズム体であり、
前記第1反射部が、前記第1面と前記第2面のそれぞれの外周と連続して前記第2面から前記第1面に向けて拡径するテーパ面で構成され、
前記第2反射部が、前記第2面から前記第1面に向けて縮径するように前記第2面に形成されたテーパ面で構成される請求項1または2に記載の面導光円板。
【請求項4】
前記第3反射部が、前記円板の前記第1面と前記第2面に前記円板の中心軸を中心とする所定の中心角で放射状に形成された複数の三角溝の傾斜面で構成される請求項2または3に記載の面導光円板。
【請求項5】
対向する第1面と第2面を有し、第1面側から入射した光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板と、
面導光円板の第1面側に中心軸を同じくして配され、中心角毎に異なるパターンの透光部と遮光部を有する遮光円板と、
面導光円板に光を入射する発光部と、
遮光円板の透光部を透過した反射光を受光する受光部を備え、
受光部が受光した反射光のパターンに基づいて遮光円板の回転角を検出する光学式エンコーダ。
【請求項6】
対向する第1面と第2面を有し、第1面側から入射された光を第1面と第2面の間で導光して第1面側に反射する面導光円板と、
面導光円板の第1面側に中心軸を同じくして配され、中心角毎に異なるパターンの透光部と遮光部を有する遮光円板と、
面導光円板に光を入射する発光部と、
遮光円板の透光部を透過した反射光を受光する受光部と、
受光部が受光した反射光のパターンに基づいて遮光円板の回転角を検出する光学式エンコーダと、
遮光円板と同期して回転するキャリアテープ搬送用のスプロケットを備えたテープフィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−256641(P2008−256641A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101502(P2007−101502)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】