面積を増大させた電極を有する全電子バッテリー
【課題】改良されたエネルギー貯蔵装置を提供する。
【解決手段】2つの物理的効果を組み合わせて利用することによって、改良されたエネルギー貯蔵装置が提供される。第1の効果は、全電子バッテリー(AEB)効果と呼ぶことができるもので、キャパシタの2つの電極間で誘電体構造に埋め込まれている内包物の使用に関連する。電子は、電極と内包物との間の誘電体をトンネル現象によって通り抜け、それによって、従来のキャパシタと比べて電荷貯蔵密度を増加させることができる。第2の効果は、面積増大効果と呼ぶことができるもので、2つの電極の一方または両方で微細構造化またはナノ構造化を用い、電極幾何学的面積と比べて界面面積を向上させることに関連する。面積増大は、装置の自己放電率を低下させるのに有利である。
【解決手段】2つの物理的効果を組み合わせて利用することによって、改良されたエネルギー貯蔵装置が提供される。第1の効果は、全電子バッテリー(AEB)効果と呼ぶことができるもので、キャパシタの2つの電極間で誘電体構造に埋め込まれている内包物の使用に関連する。電子は、電極と内包物との間の誘電体をトンネル現象によって通り抜け、それによって、従来のキャパシタと比べて電荷貯蔵密度を増加させることができる。第2の効果は、面積増大効果と呼ぶことができるもので、2つの電極の一方または両方で微細構造化またはナノ構造化を用い、電極幾何学的面積と比べて界面面積を向上させることに関連する。面積増大は、装置の自己放電率を低下させるのに有利である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵装置は、特に携帯機器及び自動車向けの、多数の様々な電子装置の部品の中でも、極めて重要な役割を担っている。エネルギー貯蔵装置は、多種多様な物理的効果に基づくものであった。例えば、キャパシタ(コンデンサ)には電界を用いてエネルギーを貯蔵することができ、バッテリー(蓄電池)には化学反応(イオン運動を含む)を用いてエネルギーを貯蔵することができる。しかしながら、キャパシタ内のエネルギー貯蔵は、装置の幾何学構造(例えば、面積が小さい2次元キャパシタプレート)によって制限され、バッテリーは、電気化学反応に固有のイオン運動のせいで応答時間が遅いという欠点もある。
【0003】
例えばハイブリッド車や電気自動車などのバッテリーで動く装置は、多くの場合、バッテリーの1重量当たりの貯蔵エネルギーが小さいことによって性能が制限される。バッテリーの貯蔵密度が小さいのは、バッテリー内に貯蔵されているイオンのサイズ及び重量が大きいからである。バッテリーにおけるイオンの移動の遅さも、充電及び放電動作を遅くする要因の1つである。さらに、既存のバッテリーは、イオンの移動に依存しているので、バッテリーの劣化が早い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、キャパシタよりもエネルギー密度を大きくし、バッテリーよりも充電/放電を速くし、かつ/またはバッテリーよりも寿命をずっと長くしたエネルギー貯蔵装置を提供することができれば、当分野において進展をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
2つの物理的効果を組み合わせて利用することによって、改良されたエネルギー貯蔵装置が提供される。第1の効果は、全電子バッテリー(All-Electron Battery:AEB)効果と呼ぶことができるもので、キャパシタの2つの電極間で誘電体構造に埋め込まれている内包物(inclusion)の使用に関連する。電子は、電極と内包物との間の誘電体をトンネル現象(トンネリング)によって通り抜け、それによって、従来のキャパシタと比べて電荷貯蔵密度を増加させることができる。第2の効果は、面積増大効果と呼ぶことができるもので、2つの電極の一方または両方で微細構造化またはナノ構造化を用い、電極幾何学的面積と比べて界面面積を向上させることに関連する。面積増大は、装置の自己放電率を低下させるのに有利である。
【0006】
本発明の用途には、電気自動車用エネルギー貯蔵装置(EVまたはPHEV用バッテリー)、携帯用電子機器(ラップトップ、携帯電話など)及び軍用装備/兵器が含まれ、本発明の利点には、エネルギー貯蔵密度が大きいこと(場合により250Whr/kg以上)、電力貯蔵密度が大きいこと(〜108W/kg)、充電/放電速度が高速であること、及び化学反応がないので経時的な劣化が小さいことが含まれる。さらなる利点として、原子/イオンが動かないこと、壊滅的で危険な故障のリスクがないことも含まれる。
【0007】
本発明は、非常に高い貯蔵密度を有するキャパシタ及び電子バッテリーに関する。本発明はイオンの代わりに電子として貯蔵される電気エネルギーに依存しているので、貯蔵容量の大きな小型・軽量装置が提供される。さらに、電子の移動によって、高速の充電及び放電が可能になる。本発明のソリッドステート装置は、既存のエネルギー貯蔵装置と比べて寿命を向上させることもできる。本発明では、エネルギー貯蔵には、表面電荷(例えば従来のキャパシタ)またはイオン(例えばバッテリー)とは対照的に、バルク内の電子が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の或る実施形態を示す。
【図2】本発明の別の実施形態を示す。
【図3】本発明のさらなる実施形態を示す。
【図4】本発明の或る実施形態の詳細図を示す。
【図5】本発明の実施形態で用いるのに適した数種類の内包物を示す。
【図6a】本発明の実施形態に関連して用いられる異なるサイズの内包物の例を示す。
【図6b】本発明の実施形態に関連して用いられる異なるサイズの内包物の例を示す。
【図7a】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7b】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7c】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7d】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7e】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図8a】本発明の或る実施形態のための第2の製作順序の1つを示す。
【図8b】本発明の或る実施形態のための第2の製作順序の1つを示す。
【図9】本発明の或る実施形態のための第3の製作順序の最終ステップを示す。
【図10a】本発明の原理に関連する実験のための対照構造を示す。
【図10b】図10aの対照構造に対するI−Vデータを示す。
【図11a】本発明の原理に関連する試験構造を示す。
【図11b】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11c】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11d】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11e】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11f】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の或る実施形態を示す。この例では、電極106は、微細構造化またはナノ構造化された特徴部を含み、それらのうちの1つを符号108で表す。これらの電極特徴部は、電極の幾何学的面積と比べて界面面積(すなわち有効面積)を増大させる。電極106の上に、絶縁層104が配置されている。絶縁層104の上に、内包物が配置されている。これらの内包物のうちの1つを符号110で表す。内包物は、絶縁層によって取り囲まれてており、複数の絶縁層のうちの1つを符号112で表す。第2の電極102が、電極間に誘電体構造が配置されるようにして配置されている。この例では、誘電体構造は、層104及び112を含む。内包物は、この誘電体構造内に配置されている。
【0010】
内包物は、電子を、誘電体構造を通り抜けるトンネル現象によって、2つの電極の少なくとも一方へ、または該一方から移動させることができる。エネルギーは、内包物間の電荷分離を確立することによって貯蔵されることができ、エネルギーは、この電荷分離をエネルギー源として用いることによって供給されることができる。
【0011】
図2及び図3は、いくつかの可能な代替的な幾何学構造を示している。より詳細には、図1の互いに入り込んだ電極102が図2ではプレーナ電極204に置き換えられていることと、図2の誘電体構造が誘電体充填領域202を含むことを除いて、図2の例は図1の例と似ている。また、図3の上部電極302がナノ構造化されていることと、この電極の近くにも内包物があることを除いて、図3の例は図2の例と似ている。2つの電極の一方または両方の上に、誘電層によって取り囲まれた幾つかの内包物層を配置することができる。
【0012】
上記したように、装置の2つの電極の一方または両方を微細構造化またはナノ構造化する真意は、電極の面積を増大させることである。純粋に幾何学的な効果は、面積増大比率a=Ai/Agによってパラメータ化することができ、ここで、Aiは界面面積(すなわち有効面積)、Agは幾何学的面積である。キャパシタンスは、面積増大係数に比例して増加することになる。
【数1】
【0013】
ナノワイヤ電極全電子バッテリーの1つの可能な実施形態は、界面面積を増加させるために電極上に導電性NiSiナノワイヤを用いるが、任意の導電性材料でも十分であろうことを理解されたい。NiSiナノワイヤ成長プロセスは、十分理解されているものであり、a〜50−100の面積増大係数をもたらすことができる。
【0014】
ナノ構造化電極の利点は、それがコストダウンをもたらすということである。というのも、AEBの製造コストは、ナノ構造化電極ではなく堆積される幾何学的面積に従って増加するが、幾何学的面積当たりのエネルギー密度は、a倍大きくなることになるからである。面積増大係数は、1.5以上であることが好ましい。この係数は、5以上であることがより好ましく、10以上であるとさらに好ましい。
【0015】
ナノ構造化電極を用いる別の利点は、自己放電率がaとともに指数関数的に低下するということである。AEBは、高い電力密度(パワー密度)を与えるのに本質的に適しているが、それは、薄いトンネリング層が高速充電/放電を可能にするからである。単純な方法で作り出されるAEBは、同じ理由で、不当に高い自己放電率に悩まされるであろう。
【0016】
有害な副反応がなく、かつ自己放電がキャパシタのシャント抵抗からの放電によるリーク電流によってのみ生じると仮定すると、材料の抵抗率を所与としてリーク電流を計算することができる。それゆえに、平行なプレートキャパシタに貯蔵される電荷量は、
【数2】
に従って時間とともに指数関数的に減衰することになる。ここで、Qoは初期電荷、tは時間、Cはキャパシタンス、Rは、抵抗率ρ及び誘電率εの誘電体の抵抗である。電極をナノ構造化すると、上記したように最大でa=Ai/Ag〜102の面積増大係数を得ることができる。この場合、積RCは、
【数3】
になる。ここで、dは電極同士を隔てる厚さである。従って、aの観点から電荷損失は、
【数4】
によって与えられる。
【0017】
1ヶ月当たりの自己放電がわずか15%という規格に合うように、積aρεは1018Ω・mより大きくなければならない。SiO2などの絶縁体の抵抗率が約1014Ω・mであるので、aεは10000より大きくなければならないという結論を出した。上記したように、ナノワイヤ電極は、a〜102の面積増大係数を可能にする。従って、自己放電要件は、εが少なくとも102でなければならないことを示唆している。この程度の高さまたはそれより高い誘電率値は容易に到達可能である。ところが、104以上の誘電率を得ることは困難であり、そのような誘電率は、低い破壊強度、低い温度許容度、低いエネルギー密度などの他の不利な特性を持つ材料においてのみ生じやすい。
【0018】
PVD法は、直進的(line-of-sight)堆積によって制限される傾向があるのに対して、原子層堆積(ALD)は、高アスペクト比構造及び複雑な幾何学構造をコーティングするのによく適している。従って、ALDなどの化学気相堆積法は、微細構造化電極と結合される誘電体層のための好適な堆積機構である。
【0019】
本発明の装置の注目に値する特徴は、本発明の装置がトランジスタなどの超小型電子スイッチ装置と比べて大きい傾向があるが、それでも従来のバッテリーと比べれば小さいことである。そのようなサイズは、エネルギーを貯蔵するという目的から得られる。電極は各々、1μm2以上の幾何学的面積を有することが好ましい。本発明の実施形態の別の典型的な特徴は、比較的高い電圧での作動である。内包物間の電荷分離は、電極間に5V以上の電圧を印加することによって確立されることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態の、注目に値する別の特徴は、AEBが好適には二端子装置であり、外部装置端子が誘電体構造の両側の電極のみであることである。
【0020】
本発明の実施形態は、高い電荷貯蔵密度を提供することができる。この点を定量化するために、以下のように体積平均電荷分離密度を定義することが便利である。充電された装置において、その端子の一方の近くにN個の過剰の電子を有し、他方の端子の近くにN個の電子の不足状態(例えば正孔)を有し、端子間体積がVであるとき、体積平均電荷分離密度はN/Vである。内包物間の電荷分離の状態が存在しているとき(すなわち、AEBがエネルギー貯蔵状態にあるとき)、体積平均電荷分離密度は10−4e−/nm3以上であることができることが好ましい。
【0021】
AEBのための重要な設計パラメータには、以下のパラメータの一部または全部が含まれる。そのようなパラメータとはすなわち、電極面積増大係数、電極と内包物との間の間隔、内包物間の間隔、内包物のサイズ、形状及び数密度、電極と内包物との間のトンネリングエネルギー障壁、内包物間のトンネリングエネルギー障壁、誘電率及び仕事関数である。装置の充放電速度及び貯蔵容量は、適切な幾何学構造及び材料の選択によって選択可能である。充放電速度は、内包物間の間隔及びの誘電材料の誘電率によって決まるので、内包物間の距離及び/または誘電率を変えることによって速度を変更することができる。充放電速度はさらに、誘電材料及び内包物の電子親和力にも左右される。
【0022】
図4は、本発明の或る実施形態の詳細図を示している。この例では、複数の内包物が、誘電体構造内または誘電体構造上に配置される複数の機能層として構築されている。より詳細には、微細構造化電極106の近くに機能層402及び406が配置され、プレーナ電極204の近くに機能層424及び428が配置されている。絶縁層422及び104が、機能層424及び402を電極204及び106からそれぞれ分離している。機能層424と428との間に絶縁障壁層426が配置されている。機能層402と406との間に絶縁障壁層404が配置されている。このように、この例の誘電体構造は、複数の誘電層(すなわち層104、404、202、422及び426)を含んでいる。機能層は、金属または半導体であってよく、誘電体構造の電子親和力よりも大きい電子親和力を有する埋め込み型内包物を含むことができる。
【0023】
複数の内包物は、例えば内包物サイズ及び/または材料組成勾配を与えることによって、内包物のための仕事関数勾配を与えるように配置されることができる。複数の機能層は、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料を含むことができ、フェルミ準位勾配を形成するように配置されることができる。機能層は、誘電体構造の一部または全部の電子親和力よりも小さい電子親和力を有する1若しくは複数の材料を含むことができる。
【0024】
この例は、好適な特徴として、垂直に積み重ねられた内包物を含む。各機能層は、単独で或る量の電荷を貯蔵することができ、従って、機能層を有する装置は、より大量の電荷を貯蔵することができる。直列に積み重ねられたこれらの機能層の電圧は加法的であるので、エネルギー密度は電圧の2乗に従って大きくなり、実質的により高いエネルギー密度を達成することができる。
【0025】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、様々なサイズの内包物を有する。1つの電極の近くに大きな内包物を配置し、反対側の電極の近くにそれより小さな内包物を配置することが好ましい。電荷は、より大きな内包物に貯蔵されることが好ましい。サイズ分布の勾配により、たとえセルが中性であるときであっても、内包物の分極が可能になる(例えば、より大きな内包物は、より小さな内包物に近接していることで、分極される場合がある)。装置が充電されると、過剰の電荷は優先的により大きな内包物内に収容され、それによって、貯蔵される電荷が増加する。内包物は、様々なサイズを有することができることに留意されたい。具体的には、より大きな内包物が、ナノワイヤ、量子井戸及び/またはバルク内包物である一方で、より小さな内包物が、個々の原子と同じくらい小さいものであってよい。
【0026】
別の実施形態では、内包物は異なる材料でできている。さらに、第1の内包物を、第2の内包物より仕事関数が大きい材料から製造することができる。電子移動は、互いに近接した材料間のフェルミ準位の差によって生じるので、フェルミ準位の差を大きくすることでより大きな分極を達成することができる。
【0027】
これらの原理については、図4に関連する以下のより詳細な例を考慮して、よりよく理解することができる。この特定の例では、サイズ勾配が用いられる。機能層402内の複数の内包物(そのうちの1つを符号412で表す)は、機能層406の複数の内包物(そのうちの1つを符号416で表す)よりも大きい。同様に、機能層428内の複数の内包物(そのうちの1つを符号438で表す)は、機能層424内の複数の内包物(そのうちの1つを符号434で表す)よりも大きい。これらのサイズ勾配は、それぞれ機能層428及び424並びに機能層402及び406に及ぶ仕事関数の連続的な変化を与えるが、その理由は、量子閉じ込め内包物に関してサイズが減少するにつれて仕事関数が減少するからである。
【0028】
この例では、機能層402、406、428及び424の厚さは、0.3nm〜300μmの範囲内であることが好ましい。誘電体充填層202は、1nm〜500μmの範囲の厚さを有し、比較的高い電子親和力、比較的高いバンドギャップ及び比較的高い絶縁破壊電圧を有することが好ましい。層202のバンドギャップは、約1eV以上、より好適には約4eV以上である。層202に対する破壊電場は、約1MV/cmであることが好ましく、約3MV/cmであればより好ましい。
【0029】
電極204は、相対的に小さい仕事関数φs(すなわち4eV以下、より好適には3eV以下のφs)を有することが好ましい。電極204に有用な材料のいくつかの例には、Zn、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Ba、Cs、ドープされたダイアモンド及びYが含まれるが、これらに限定されるものではない。電極106は、上記したように微細構造化電極であり、相対的に大きい仕事関数φl(すなわち4.5eV以上、より好適には5.5eV以上のφl)を有する。電極106に有用ないくつかの例示的な材料には、Au、Pt、W、Al、Cu、Ag、Ti、Se、Ge、Pd、Ni、Co、Rh、Ir及びOsが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
内包物のサイズ勾配は、限定されるものではないが、Ni、Pt、Cu、Ag、Au及びIrを内包物材料として含む高状態密度(DOS)材料を用いて、高度に分極可能である。内包物は、誘電体構造材料において化学的に安定である(例えば、マトリクス材料が酸化物であれば酸化しない)ことが好ましい。誘電層に有用な材料のいくつかの例には、Al2O3、Si、TiO2、窒化チタン、酸窒化チタン、Ge、ZnO、ZrO2、HfO2、SiO2、Si3N4、Y2O3、BaTiO3、SrO、SrTiO3、及びこれらの混合物または組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。内包物に有用な材料には、Pt、Au、Ni、Ag、W、Ti、Al、Cu、Pd、Cs、Li、Na、K、Y、Sr及びBaなどの金属が含まれる。内包物に有用な材料のさらなる例には、PbSe、PbS、ZnS、CdSe、CdS、ZnSe、Ge、Si、Snなどの低バンドギャップ半導体及びRuO2などの導電性酸化物が含まれる。絶縁層202は、限定されるものではないが、ZnS、TiO2、Al2O3、ZrO2、Y2O3、HfO2、Si3N4、SiO2、他の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物などを含む材料から製造され得る。
【0031】
図5は、本発明の実施形態で用いるのに適した数種類の内包物を示している。より詳細には、内包物は、バルク材料であることができ、あるいは1次元(量子井戸506)、2次元(量子ワイヤ504)及び/または3次元(量子ドット502)に量子閉じ込めされることができる。そのサイズ以下では量子閉じ込め効果が顕著になるというサイズは、材料によって決まるが、通常は、金属で約2〜10nm、半導体で約5〜40nmである。それゆえ、3つの寸法が全て10nmより大きいサイズを有する金属製内包物は、事実上バルク材料特性を有する可能性がある。同様に、3つの寸法が全て40nmより大きいサイズを有する半導体内包物は、事実上バルク材料特性を有する可能性がある。上記の例で示したような量子ドット内包物(例えば、全寸法が10nm以下である金属ドット及び/または全寸法が40nm以下である半導体ドット)の使用は、好ましいが必須ではない。
【0032】
図6a〜図6bは、本発明の実施形態に関連して用いられる異なるサイズの内包物の例を示している。図6aの例では、相対的に大きい内包物604が相対的に小さい複数の内包物602によって取り囲まれている。図6bの例では、相対的に小さい内包物606が相対的に大きい複数の内包物602によって取り囲まれている。上記したように、そのようなサイズ勾配は、AEBにおいて有用な仕事関数勾配を作ることを可能にする。
【0033】
図7a〜図7eは、本発明の或る実施形態のための第1の製作順序を示している。図7aは、この例の第1のステップ(電極106上に複数の垂直な金属ナノワイヤ(そのうちの1つを符号108で表す)を形成するステップ)の結果を示している。適切な製作方法には、気相−液相−固相(VLS)成長法、光リソグラフィー及び/または電子ビームリソグラフィー、ナノ粒子リソグラフィー、及び多孔質膜(例えば、ポリカーボネートトラックエッチ膜)を通しての電気めっきが含まれるが、これらに限定されるものではない。VLS法は、固体触媒粒子及び蒸気反応物から始まる。蒸気は固体上に着地し、その中で拡散し、触媒粒子の下で固体を形成するので、結果的に、ワイヤの直径は触媒の直径にほぼ等しくなる。
【0034】
図7bは、この例の第2のステップ(絶縁層104を堆積させるステップ)の結果を示している。任意の絶縁体堆積方法を用いてよいが、上記したように化学気相堆積が好ましい。
【0035】
図7cは、この例の第3のステップ(量子ドットを堆積させるステップ)の結果を示しており、量子ドットのうちの1つを符号110で表す。限定するものではないが、気相堆積、自己集合、及びコロイド状量子ドットの処理を含む任意の量子ドット堆積法を用いることができる。任意選択で、第2及び第3のステップを1回または複数回繰り返し、多層構造(例えば、図4の例にあるようなもの)を形成することができる。
【0036】
図7dは、この例の第4のステップ(量子ドットの上に絶縁パッシベーション層を堆積させるステップ)の結果を示しており、絶縁パッシベーション層の一部を符号112で表す。任意の絶縁体堆積方法を用いてよいが、上記したように化学気相堆積が好ましい。
【0037】
図7eは、この例の第5のステップ(金属を堆積し、互いに入り込んだ上部電極102を形成するステップ)の結果を示している。限定するものではないが、気相堆積及び無電解めっきを含む任意の金属堆積方法を用いることができる。
【0038】
図8a〜図8bは、本発明の或る実施形態のための第2の製作順序の最終ステップを示している。この第2の順序では、最初の4つのステップは、図7a〜図7dに関連して説明した通りである。図8aは、この例の第5のステップ(図7dの構造上に誘電体充填領域202を堆積させるステップ)の結果を示している。任意の絶縁体堆積方法を用いてよいが、上記したように化学気相堆積が好ましい。任意選択で、図7b及び図8aのステップを組み合わせて1つの絶縁体堆積ステップにすることができる。図8bは、この例の第6のステップ(誘電体充填領域202の上に電極204を堆積させるステップ)の結果を示している。絶縁体上に金属電極を堆積させるための任意の方法を用いることができる。
【0039】
図9は、本発明の或る実施形態のための第3の製作順序の最終ステップを示している。この第3の順序では、最初の5つのステップは、図7a〜図7d及び図8aに関連して説明した通りである。図9は、この例の第6のステップ(接合線902に沿って図8aと同様に2つの構造の絶縁体間接合を行い、2つのナノ構造化電極を有するAEBを提供するステップ)の結果を示している。適切な接合方法には、焼結、低融点金属による熱処理(低融点はんだ付けに似たものと考えることができる)及び気相堆積が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
図10aは、本発明の原理に関連する実験のための対照構造を示している。この例では、電圧源1002が、Pt/Ir原子間力顕微鏡(AFM)の先端1004を通して対照サンプルに入力電圧を与える。対照サンプルは、水晶基層1018と、Cr層1016と、Pt層1014とを含み、これらは協働してこのサンプルの下部電極を形成する。対照サンプルはさらに、厚さ10nmのZrO2絶縁層1012と、厚さ10nmの導電性Pt層1010と、厚さ10nmのZrO2絶縁層1008と、Pt上部電極1006とを含む。この対照構造は、基本的には2つの直列のキャパシタである。
【0041】
図10bは、図10aの対照構造に対するI−Vデータを示している。実線は、電圧スイープ速度7.8V/sの結果を示しており、破線は、電圧スイープ速度8.8V/sの結果を示している。キャパシタ電流IはI=CdV/dt(ここで、Cはキャパシタンスである)によって与えられるので、予想通り、スイープ速度が大きいときにより多くの電流が流れている。
【0042】
図11aは、本発明の原理に関連する試験構造を示している。この例では、電圧源1101が、Pt/Ir AFMの先端(図示せず)を通して試験サンプルに入力電圧を与える。試験サンプルは、水晶基層1126と、Cr層1124と、Pt層1122とを含み、これらは協働してこのサンプルの下部電極を形成する。試験サンプルはさらに、厚さ10nmのZrO2絶縁層1120と、厚さ10nmの導電性Pt層1118と、厚さ2nmのZrO2絶縁層1116と、10xのPt量子ドット層1114と、厚さ10nmのZrO2絶縁層1112と、厚さ10nmの導電性Pt層1110と、厚さ2nmのZrO2絶縁層1108と、10xの量子ドット層1106と、厚さ10nmのZrO2絶縁層1104と、Pt上部電極1102とを含む。ここで、「10x」は、平均直径が1.7nm、数密度が3.2×1012個(粒子)/cm2のPtアイランドを形成するために、PtのALDが10サイクル行われたことを示す。この試験構造の電極が、微細構造化またはナノ構造化されているものとは対照的に平坦(プレーナ型)であるにもかかわらず、この実験は、ここで関係のあるAEBの挙動を示している。
【0043】
AEB効果の実験的特徴は、印加された電圧のスイープ中に得られるI−V曲線中のピーク(peak)である。図11bは、代表的な例を示している。この例では、電圧を10Vから−10Vまで3906V/sのスイープ速度でスイープさせたときに、実質的なI−Vピークが見られる。このピークは、バイアス電圧10Vの初期状態にした結果として装置内に貯蔵されていた電荷が放出されることに起因する。そのようなI−Vピークの定量分析は、電力及びエネルギー貯蔵密度の実験的評価に対する根拠を提供する。より詳細には、図11cは、図11aの構造に対する生のピークデータを示しており、図11dは、対応するエネルギー密度の結果を示している。
【0044】
図11e及び図11fは、図10aの対照構造及び図11aの試験構造に対するエネルギー密度と電力密度との比較結果を示している。これらのプロット上の「充電電圧」は、次のように定義される。Xボルトから10ボルトまで電圧スイープを行った。ここで、Xは充電電圧でありかつマイナスである。Xから0ボルトまでの電圧範囲は装置を充電するように作用するが、0から10ボルトまでの電圧範囲は放電範囲である。貯蔵されるエネルギー/電力は、これらのプロット上では、充電電圧がマイナス寄りになる(すなわち、装置がより完全に充電される)につれて増加するように見える。
【0045】
上記の説明は、限定ではなく例としてのものであり、所与の例の数多くの変形形態を用いて本発明を実施することができる。例えば、本発明の実施は、用いる製作順序及び/または方法に決定的に左右されるものではない。別の例として、内包物のサイズ勾配を内包物の材料勾配と組み合わせることができ、内包物を任意の方法で配置することができる。さらなる例として、内包物は、球形、円錐形、角錐形などの任意の形状、または三角形や円などの略2次元形状を有し得る。さらに別の例として、各々が誘電層によって取り囲まれている多くの内包物の層を、2つの電極の一方または両方に含めることができる。別の例では、ナノワイヤ成長によって電極をナノ構造化するのではなく、ナノ構造化テンプレートを用いて導電性ナノ構造化電極を提供することができる。例えば、陽極アルミナなどの絶縁ナノ構造化された材料をテンプレートとして用いることができ、そのような微細構造化またはナノ構造化されたテンプレート上に導電性電極層を堆積させることによって電極を形成することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵装置は、特に携帯機器及び自動車向けの、多数の様々な電子装置の部品の中でも、極めて重要な役割を担っている。エネルギー貯蔵装置は、多種多様な物理的効果に基づくものであった。例えば、キャパシタ(コンデンサ)には電界を用いてエネルギーを貯蔵することができ、バッテリー(蓄電池)には化学反応(イオン運動を含む)を用いてエネルギーを貯蔵することができる。しかしながら、キャパシタ内のエネルギー貯蔵は、装置の幾何学構造(例えば、面積が小さい2次元キャパシタプレート)によって制限され、バッテリーは、電気化学反応に固有のイオン運動のせいで応答時間が遅いという欠点もある。
【0003】
例えばハイブリッド車や電気自動車などのバッテリーで動く装置は、多くの場合、バッテリーの1重量当たりの貯蔵エネルギーが小さいことによって性能が制限される。バッテリーの貯蔵密度が小さいのは、バッテリー内に貯蔵されているイオンのサイズ及び重量が大きいからである。バッテリーにおけるイオンの移動の遅さも、充電及び放電動作を遅くする要因の1つである。さらに、既存のバッテリーは、イオンの移動に依存しているので、バッテリーの劣化が早い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、キャパシタよりもエネルギー密度を大きくし、バッテリーよりも充電/放電を速くし、かつ/またはバッテリーよりも寿命をずっと長くしたエネルギー貯蔵装置を提供することができれば、当分野において進展をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
2つの物理的効果を組み合わせて利用することによって、改良されたエネルギー貯蔵装置が提供される。第1の効果は、全電子バッテリー(All-Electron Battery:AEB)効果と呼ぶことができるもので、キャパシタの2つの電極間で誘電体構造に埋め込まれている内包物(inclusion)の使用に関連する。電子は、電極と内包物との間の誘電体をトンネル現象(トンネリング)によって通り抜け、それによって、従来のキャパシタと比べて電荷貯蔵密度を増加させることができる。第2の効果は、面積増大効果と呼ぶことができるもので、2つの電極の一方または両方で微細構造化またはナノ構造化を用い、電極幾何学的面積と比べて界面面積を向上させることに関連する。面積増大は、装置の自己放電率を低下させるのに有利である。
【0006】
本発明の用途には、電気自動車用エネルギー貯蔵装置(EVまたはPHEV用バッテリー)、携帯用電子機器(ラップトップ、携帯電話など)及び軍用装備/兵器が含まれ、本発明の利点には、エネルギー貯蔵密度が大きいこと(場合により250Whr/kg以上)、電力貯蔵密度が大きいこと(〜108W/kg)、充電/放電速度が高速であること、及び化学反応がないので経時的な劣化が小さいことが含まれる。さらなる利点として、原子/イオンが動かないこと、壊滅的で危険な故障のリスクがないことも含まれる。
【0007】
本発明は、非常に高い貯蔵密度を有するキャパシタ及び電子バッテリーに関する。本発明はイオンの代わりに電子として貯蔵される電気エネルギーに依存しているので、貯蔵容量の大きな小型・軽量装置が提供される。さらに、電子の移動によって、高速の充電及び放電が可能になる。本発明のソリッドステート装置は、既存のエネルギー貯蔵装置と比べて寿命を向上させることもできる。本発明では、エネルギー貯蔵には、表面電荷(例えば従来のキャパシタ)またはイオン(例えばバッテリー)とは対照的に、バルク内の電子が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の或る実施形態を示す。
【図2】本発明の別の実施形態を示す。
【図3】本発明のさらなる実施形態を示す。
【図4】本発明の或る実施形態の詳細図を示す。
【図5】本発明の実施形態で用いるのに適した数種類の内包物を示す。
【図6a】本発明の実施形態に関連して用いられる異なるサイズの内包物の例を示す。
【図6b】本発明の実施形態に関連して用いられる異なるサイズの内包物の例を示す。
【図7a】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7b】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7c】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7d】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図7e】本発明の或る実施形態のための第1の製作順序の1つを示す。
【図8a】本発明の或る実施形態のための第2の製作順序の1つを示す。
【図8b】本発明の或る実施形態のための第2の製作順序の1つを示す。
【図9】本発明の或る実施形態のための第3の製作順序の最終ステップを示す。
【図10a】本発明の原理に関連する実験のための対照構造を示す。
【図10b】図10aの対照構造に対するI−Vデータを示す。
【図11a】本発明の原理に関連する試験構造を示す。
【図11b】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11c】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11d】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11e】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【図11f】図11aの試験構造から得られた実験データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の或る実施形態を示す。この例では、電極106は、微細構造化またはナノ構造化された特徴部を含み、それらのうちの1つを符号108で表す。これらの電極特徴部は、電極の幾何学的面積と比べて界面面積(すなわち有効面積)を増大させる。電極106の上に、絶縁層104が配置されている。絶縁層104の上に、内包物が配置されている。これらの内包物のうちの1つを符号110で表す。内包物は、絶縁層によって取り囲まれてており、複数の絶縁層のうちの1つを符号112で表す。第2の電極102が、電極間に誘電体構造が配置されるようにして配置されている。この例では、誘電体構造は、層104及び112を含む。内包物は、この誘電体構造内に配置されている。
【0010】
内包物は、電子を、誘電体構造を通り抜けるトンネル現象によって、2つの電極の少なくとも一方へ、または該一方から移動させることができる。エネルギーは、内包物間の電荷分離を確立することによって貯蔵されることができ、エネルギーは、この電荷分離をエネルギー源として用いることによって供給されることができる。
【0011】
図2及び図3は、いくつかの可能な代替的な幾何学構造を示している。より詳細には、図1の互いに入り込んだ電極102が図2ではプレーナ電極204に置き換えられていることと、図2の誘電体構造が誘電体充填領域202を含むことを除いて、図2の例は図1の例と似ている。また、図3の上部電極302がナノ構造化されていることと、この電極の近くにも内包物があることを除いて、図3の例は図2の例と似ている。2つの電極の一方または両方の上に、誘電層によって取り囲まれた幾つかの内包物層を配置することができる。
【0012】
上記したように、装置の2つの電極の一方または両方を微細構造化またはナノ構造化する真意は、電極の面積を増大させることである。純粋に幾何学的な効果は、面積増大比率a=Ai/Agによってパラメータ化することができ、ここで、Aiは界面面積(すなわち有効面積)、Agは幾何学的面積である。キャパシタンスは、面積増大係数に比例して増加することになる。
【数1】
【0013】
ナノワイヤ電極全電子バッテリーの1つの可能な実施形態は、界面面積を増加させるために電極上に導電性NiSiナノワイヤを用いるが、任意の導電性材料でも十分であろうことを理解されたい。NiSiナノワイヤ成長プロセスは、十分理解されているものであり、a〜50−100の面積増大係数をもたらすことができる。
【0014】
ナノ構造化電極の利点は、それがコストダウンをもたらすということである。というのも、AEBの製造コストは、ナノ構造化電極ではなく堆積される幾何学的面積に従って増加するが、幾何学的面積当たりのエネルギー密度は、a倍大きくなることになるからである。面積増大係数は、1.5以上であることが好ましい。この係数は、5以上であることがより好ましく、10以上であるとさらに好ましい。
【0015】
ナノ構造化電極を用いる別の利点は、自己放電率がaとともに指数関数的に低下するということである。AEBは、高い電力密度(パワー密度)を与えるのに本質的に適しているが、それは、薄いトンネリング層が高速充電/放電を可能にするからである。単純な方法で作り出されるAEBは、同じ理由で、不当に高い自己放電率に悩まされるであろう。
【0016】
有害な副反応がなく、かつ自己放電がキャパシタのシャント抵抗からの放電によるリーク電流によってのみ生じると仮定すると、材料の抵抗率を所与としてリーク電流を計算することができる。それゆえに、平行なプレートキャパシタに貯蔵される電荷量は、
【数2】
に従って時間とともに指数関数的に減衰することになる。ここで、Qoは初期電荷、tは時間、Cはキャパシタンス、Rは、抵抗率ρ及び誘電率εの誘電体の抵抗である。電極をナノ構造化すると、上記したように最大でa=Ai/Ag〜102の面積増大係数を得ることができる。この場合、積RCは、
【数3】
になる。ここで、dは電極同士を隔てる厚さである。従って、aの観点から電荷損失は、
【数4】
によって与えられる。
【0017】
1ヶ月当たりの自己放電がわずか15%という規格に合うように、積aρεは1018Ω・mより大きくなければならない。SiO2などの絶縁体の抵抗率が約1014Ω・mであるので、aεは10000より大きくなければならないという結論を出した。上記したように、ナノワイヤ電極は、a〜102の面積増大係数を可能にする。従って、自己放電要件は、εが少なくとも102でなければならないことを示唆している。この程度の高さまたはそれより高い誘電率値は容易に到達可能である。ところが、104以上の誘電率を得ることは困難であり、そのような誘電率は、低い破壊強度、低い温度許容度、低いエネルギー密度などの他の不利な特性を持つ材料においてのみ生じやすい。
【0018】
PVD法は、直進的(line-of-sight)堆積によって制限される傾向があるのに対して、原子層堆積(ALD)は、高アスペクト比構造及び複雑な幾何学構造をコーティングするのによく適している。従って、ALDなどの化学気相堆積法は、微細構造化電極と結合される誘電体層のための好適な堆積機構である。
【0019】
本発明の装置の注目に値する特徴は、本発明の装置がトランジスタなどの超小型電子スイッチ装置と比べて大きい傾向があるが、それでも従来のバッテリーと比べれば小さいことである。そのようなサイズは、エネルギーを貯蔵するという目的から得られる。電極は各々、1μm2以上の幾何学的面積を有することが好ましい。本発明の実施形態の別の典型的な特徴は、比較的高い電圧での作動である。内包物間の電荷分離は、電極間に5V以上の電圧を印加することによって確立されることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態の、注目に値する別の特徴は、AEBが好適には二端子装置であり、外部装置端子が誘電体構造の両側の電極のみであることである。
【0020】
本発明の実施形態は、高い電荷貯蔵密度を提供することができる。この点を定量化するために、以下のように体積平均電荷分離密度を定義することが便利である。充電された装置において、その端子の一方の近くにN個の過剰の電子を有し、他方の端子の近くにN個の電子の不足状態(例えば正孔)を有し、端子間体積がVであるとき、体積平均電荷分離密度はN/Vである。内包物間の電荷分離の状態が存在しているとき(すなわち、AEBがエネルギー貯蔵状態にあるとき)、体積平均電荷分離密度は10−4e−/nm3以上であることができることが好ましい。
【0021】
AEBのための重要な設計パラメータには、以下のパラメータの一部または全部が含まれる。そのようなパラメータとはすなわち、電極面積増大係数、電極と内包物との間の間隔、内包物間の間隔、内包物のサイズ、形状及び数密度、電極と内包物との間のトンネリングエネルギー障壁、内包物間のトンネリングエネルギー障壁、誘電率及び仕事関数である。装置の充放電速度及び貯蔵容量は、適切な幾何学構造及び材料の選択によって選択可能である。充放電速度は、内包物間の間隔及びの誘電材料の誘電率によって決まるので、内包物間の距離及び/または誘電率を変えることによって速度を変更することができる。充放電速度はさらに、誘電材料及び内包物の電子親和力にも左右される。
【0022】
図4は、本発明の或る実施形態の詳細図を示している。この例では、複数の内包物が、誘電体構造内または誘電体構造上に配置される複数の機能層として構築されている。より詳細には、微細構造化電極106の近くに機能層402及び406が配置され、プレーナ電極204の近くに機能層424及び428が配置されている。絶縁層422及び104が、機能層424及び402を電極204及び106からそれぞれ分離している。機能層424と428との間に絶縁障壁層426が配置されている。機能層402と406との間に絶縁障壁層404が配置されている。このように、この例の誘電体構造は、複数の誘電層(すなわち層104、404、202、422及び426)を含んでいる。機能層は、金属または半導体であってよく、誘電体構造の電子親和力よりも大きい電子親和力を有する埋め込み型内包物を含むことができる。
【0023】
複数の内包物は、例えば内包物サイズ及び/または材料組成勾配を与えることによって、内包物のための仕事関数勾配を与えるように配置されることができる。複数の機能層は、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料を含むことができ、フェルミ準位勾配を形成するように配置されることができる。機能層は、誘電体構造の一部または全部の電子親和力よりも小さい電子親和力を有する1若しくは複数の材料を含むことができる。
【0024】
この例は、好適な特徴として、垂直に積み重ねられた内包物を含む。各機能層は、単独で或る量の電荷を貯蔵することができ、従って、機能層を有する装置は、より大量の電荷を貯蔵することができる。直列に積み重ねられたこれらの機能層の電圧は加法的であるので、エネルギー密度は電圧の2乗に従って大きくなり、実質的により高いエネルギー密度を達成することができる。
【0025】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、様々なサイズの内包物を有する。1つの電極の近くに大きな内包物を配置し、反対側の電極の近くにそれより小さな内包物を配置することが好ましい。電荷は、より大きな内包物に貯蔵されることが好ましい。サイズ分布の勾配により、たとえセルが中性であるときであっても、内包物の分極が可能になる(例えば、より大きな内包物は、より小さな内包物に近接していることで、分極される場合がある)。装置が充電されると、過剰の電荷は優先的により大きな内包物内に収容され、それによって、貯蔵される電荷が増加する。内包物は、様々なサイズを有することができることに留意されたい。具体的には、より大きな内包物が、ナノワイヤ、量子井戸及び/またはバルク内包物である一方で、より小さな内包物が、個々の原子と同じくらい小さいものであってよい。
【0026】
別の実施形態では、内包物は異なる材料でできている。さらに、第1の内包物を、第2の内包物より仕事関数が大きい材料から製造することができる。電子移動は、互いに近接した材料間のフェルミ準位の差によって生じるので、フェルミ準位の差を大きくすることでより大きな分極を達成することができる。
【0027】
これらの原理については、図4に関連する以下のより詳細な例を考慮して、よりよく理解することができる。この特定の例では、サイズ勾配が用いられる。機能層402内の複数の内包物(そのうちの1つを符号412で表す)は、機能層406の複数の内包物(そのうちの1つを符号416で表す)よりも大きい。同様に、機能層428内の複数の内包物(そのうちの1つを符号438で表す)は、機能層424内の複数の内包物(そのうちの1つを符号434で表す)よりも大きい。これらのサイズ勾配は、それぞれ機能層428及び424並びに機能層402及び406に及ぶ仕事関数の連続的な変化を与えるが、その理由は、量子閉じ込め内包物に関してサイズが減少するにつれて仕事関数が減少するからである。
【0028】
この例では、機能層402、406、428及び424の厚さは、0.3nm〜300μmの範囲内であることが好ましい。誘電体充填層202は、1nm〜500μmの範囲の厚さを有し、比較的高い電子親和力、比較的高いバンドギャップ及び比較的高い絶縁破壊電圧を有することが好ましい。層202のバンドギャップは、約1eV以上、より好適には約4eV以上である。層202に対する破壊電場は、約1MV/cmであることが好ましく、約3MV/cmであればより好ましい。
【0029】
電極204は、相対的に小さい仕事関数φs(すなわち4eV以下、より好適には3eV以下のφs)を有することが好ましい。電極204に有用な材料のいくつかの例には、Zn、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Ba、Cs、ドープされたダイアモンド及びYが含まれるが、これらに限定されるものではない。電極106は、上記したように微細構造化電極であり、相対的に大きい仕事関数φl(すなわち4.5eV以上、より好適には5.5eV以上のφl)を有する。電極106に有用ないくつかの例示的な材料には、Au、Pt、W、Al、Cu、Ag、Ti、Se、Ge、Pd、Ni、Co、Rh、Ir及びOsが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
内包物のサイズ勾配は、限定されるものではないが、Ni、Pt、Cu、Ag、Au及びIrを内包物材料として含む高状態密度(DOS)材料を用いて、高度に分極可能である。内包物は、誘電体構造材料において化学的に安定である(例えば、マトリクス材料が酸化物であれば酸化しない)ことが好ましい。誘電層に有用な材料のいくつかの例には、Al2O3、Si、TiO2、窒化チタン、酸窒化チタン、Ge、ZnO、ZrO2、HfO2、SiO2、Si3N4、Y2O3、BaTiO3、SrO、SrTiO3、及びこれらの混合物または組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。内包物に有用な材料には、Pt、Au、Ni、Ag、W、Ti、Al、Cu、Pd、Cs、Li、Na、K、Y、Sr及びBaなどの金属が含まれる。内包物に有用な材料のさらなる例には、PbSe、PbS、ZnS、CdSe、CdS、ZnSe、Ge、Si、Snなどの低バンドギャップ半導体及びRuO2などの導電性酸化物が含まれる。絶縁層202は、限定されるものではないが、ZnS、TiO2、Al2O3、ZrO2、Y2O3、HfO2、Si3N4、SiO2、他の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物などを含む材料から製造され得る。
【0031】
図5は、本発明の実施形態で用いるのに適した数種類の内包物を示している。より詳細には、内包物は、バルク材料であることができ、あるいは1次元(量子井戸506)、2次元(量子ワイヤ504)及び/または3次元(量子ドット502)に量子閉じ込めされることができる。そのサイズ以下では量子閉じ込め効果が顕著になるというサイズは、材料によって決まるが、通常は、金属で約2〜10nm、半導体で約5〜40nmである。それゆえ、3つの寸法が全て10nmより大きいサイズを有する金属製内包物は、事実上バルク材料特性を有する可能性がある。同様に、3つの寸法が全て40nmより大きいサイズを有する半導体内包物は、事実上バルク材料特性を有する可能性がある。上記の例で示したような量子ドット内包物(例えば、全寸法が10nm以下である金属ドット及び/または全寸法が40nm以下である半導体ドット)の使用は、好ましいが必須ではない。
【0032】
図6a〜図6bは、本発明の実施形態に関連して用いられる異なるサイズの内包物の例を示している。図6aの例では、相対的に大きい内包物604が相対的に小さい複数の内包物602によって取り囲まれている。図6bの例では、相対的に小さい内包物606が相対的に大きい複数の内包物602によって取り囲まれている。上記したように、そのようなサイズ勾配は、AEBにおいて有用な仕事関数勾配を作ることを可能にする。
【0033】
図7a〜図7eは、本発明の或る実施形態のための第1の製作順序を示している。図7aは、この例の第1のステップ(電極106上に複数の垂直な金属ナノワイヤ(そのうちの1つを符号108で表す)を形成するステップ)の結果を示している。適切な製作方法には、気相−液相−固相(VLS)成長法、光リソグラフィー及び/または電子ビームリソグラフィー、ナノ粒子リソグラフィー、及び多孔質膜(例えば、ポリカーボネートトラックエッチ膜)を通しての電気めっきが含まれるが、これらに限定されるものではない。VLS法は、固体触媒粒子及び蒸気反応物から始まる。蒸気は固体上に着地し、その中で拡散し、触媒粒子の下で固体を形成するので、結果的に、ワイヤの直径は触媒の直径にほぼ等しくなる。
【0034】
図7bは、この例の第2のステップ(絶縁層104を堆積させるステップ)の結果を示している。任意の絶縁体堆積方法を用いてよいが、上記したように化学気相堆積が好ましい。
【0035】
図7cは、この例の第3のステップ(量子ドットを堆積させるステップ)の結果を示しており、量子ドットのうちの1つを符号110で表す。限定するものではないが、気相堆積、自己集合、及びコロイド状量子ドットの処理を含む任意の量子ドット堆積法を用いることができる。任意選択で、第2及び第3のステップを1回または複数回繰り返し、多層構造(例えば、図4の例にあるようなもの)を形成することができる。
【0036】
図7dは、この例の第4のステップ(量子ドットの上に絶縁パッシベーション層を堆積させるステップ)の結果を示しており、絶縁パッシベーション層の一部を符号112で表す。任意の絶縁体堆積方法を用いてよいが、上記したように化学気相堆積が好ましい。
【0037】
図7eは、この例の第5のステップ(金属を堆積し、互いに入り込んだ上部電極102を形成するステップ)の結果を示している。限定するものではないが、気相堆積及び無電解めっきを含む任意の金属堆積方法を用いることができる。
【0038】
図8a〜図8bは、本発明の或る実施形態のための第2の製作順序の最終ステップを示している。この第2の順序では、最初の4つのステップは、図7a〜図7dに関連して説明した通りである。図8aは、この例の第5のステップ(図7dの構造上に誘電体充填領域202を堆積させるステップ)の結果を示している。任意の絶縁体堆積方法を用いてよいが、上記したように化学気相堆積が好ましい。任意選択で、図7b及び図8aのステップを組み合わせて1つの絶縁体堆積ステップにすることができる。図8bは、この例の第6のステップ(誘電体充填領域202の上に電極204を堆積させるステップ)の結果を示している。絶縁体上に金属電極を堆積させるための任意の方法を用いることができる。
【0039】
図9は、本発明の或る実施形態のための第3の製作順序の最終ステップを示している。この第3の順序では、最初の5つのステップは、図7a〜図7d及び図8aに関連して説明した通りである。図9は、この例の第6のステップ(接合線902に沿って図8aと同様に2つの構造の絶縁体間接合を行い、2つのナノ構造化電極を有するAEBを提供するステップ)の結果を示している。適切な接合方法には、焼結、低融点金属による熱処理(低融点はんだ付けに似たものと考えることができる)及び気相堆積が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
図10aは、本発明の原理に関連する実験のための対照構造を示している。この例では、電圧源1002が、Pt/Ir原子間力顕微鏡(AFM)の先端1004を通して対照サンプルに入力電圧を与える。対照サンプルは、水晶基層1018と、Cr層1016と、Pt層1014とを含み、これらは協働してこのサンプルの下部電極を形成する。対照サンプルはさらに、厚さ10nmのZrO2絶縁層1012と、厚さ10nmの導電性Pt層1010と、厚さ10nmのZrO2絶縁層1008と、Pt上部電極1006とを含む。この対照構造は、基本的には2つの直列のキャパシタである。
【0041】
図10bは、図10aの対照構造に対するI−Vデータを示している。実線は、電圧スイープ速度7.8V/sの結果を示しており、破線は、電圧スイープ速度8.8V/sの結果を示している。キャパシタ電流IはI=CdV/dt(ここで、Cはキャパシタンスである)によって与えられるので、予想通り、スイープ速度が大きいときにより多くの電流が流れている。
【0042】
図11aは、本発明の原理に関連する試験構造を示している。この例では、電圧源1101が、Pt/Ir AFMの先端(図示せず)を通して試験サンプルに入力電圧を与える。試験サンプルは、水晶基層1126と、Cr層1124と、Pt層1122とを含み、これらは協働してこのサンプルの下部電極を形成する。試験サンプルはさらに、厚さ10nmのZrO2絶縁層1120と、厚さ10nmの導電性Pt層1118と、厚さ2nmのZrO2絶縁層1116と、10xのPt量子ドット層1114と、厚さ10nmのZrO2絶縁層1112と、厚さ10nmの導電性Pt層1110と、厚さ2nmのZrO2絶縁層1108と、10xの量子ドット層1106と、厚さ10nmのZrO2絶縁層1104と、Pt上部電極1102とを含む。ここで、「10x」は、平均直径が1.7nm、数密度が3.2×1012個(粒子)/cm2のPtアイランドを形成するために、PtのALDが10サイクル行われたことを示す。この試験構造の電極が、微細構造化またはナノ構造化されているものとは対照的に平坦(プレーナ型)であるにもかかわらず、この実験は、ここで関係のあるAEBの挙動を示している。
【0043】
AEB効果の実験的特徴は、印加された電圧のスイープ中に得られるI−V曲線中のピーク(peak)である。図11bは、代表的な例を示している。この例では、電圧を10Vから−10Vまで3906V/sのスイープ速度でスイープさせたときに、実質的なI−Vピークが見られる。このピークは、バイアス電圧10Vの初期状態にした結果として装置内に貯蔵されていた電荷が放出されることに起因する。そのようなI−Vピークの定量分析は、電力及びエネルギー貯蔵密度の実験的評価に対する根拠を提供する。より詳細には、図11cは、図11aの構造に対する生のピークデータを示しており、図11dは、対応するエネルギー密度の結果を示している。
【0044】
図11e及び図11fは、図10aの対照構造及び図11aの試験構造に対するエネルギー密度と電力密度との比較結果を示している。これらのプロット上の「充電電圧」は、次のように定義される。Xボルトから10ボルトまで電圧スイープを行った。ここで、Xは充電電圧でありかつマイナスである。Xから0ボルトまでの電圧範囲は装置を充電するように作用するが、0から10ボルトまでの電圧範囲は放電範囲である。貯蔵されるエネルギー/電力は、これらのプロット上では、充電電圧がマイナス寄りになる(すなわち、装置がより完全に充電される)につれて増加するように見える。
【0045】
上記の説明は、限定ではなく例としてのものであり、所与の例の数多くの変形形態を用いて本発明を実施することができる。例えば、本発明の実施は、用いる製作順序及び/または方法に決定的に左右されるものではない。別の例として、内包物のサイズ勾配を内包物の材料勾配と組み合わせることができ、内包物を任意の方法で配置することができる。さらなる例として、内包物は、球形、円錐形、角錐形などの任意の形状、または三角形や円などの略2次元形状を有し得る。さらに別の例として、各々が誘電層によって取り囲まれている多くの内包物の層を、2つの電極の一方または両方に含めることができる。別の例では、ナノワイヤ成長によって電極をナノ構造化するのではなく、ナノ構造化テンプレートを用いて導電性ナノ構造化電極を提供することができる。例えば、陽極アルミナなどの絶縁ナノ構造化された材料をテンプレートとして用いることができ、そのような微細構造化またはナノ構造化されたテンプレート上に導電性電極層を堆積させることによって電極を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された誘電体構造と、
前記誘電体構造内に配置され、電子を、前記誘電体構造を通り抜けるトンネル現象によって、前記電極の少なくとも一方へ、または該一方から移動させることができる1若しくは複数の内包物とを含み、
前記第1及び第2の電極のうちの少なくとも一方が、幾何学的面積よりも大きい有効面積を提供するために微細構造化されており、
前記装置が、前記内包物間の電荷分離を確立することによってエネルギーを貯蔵することができ、かつ、前記電荷分離をエネルギー源として用いることによってエネルギーを供給することができるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極のうちの少なくとも一方において、前記幾何学的面積に対する前記有効面積の比率が1.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、外部端子として前記第1及び第2の電極のみを有する二端子装置であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の電極が各々、1μm2以上の幾何学的面積を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記内包物間の前記電荷分離が、前記第1の電極と第2の電極との間に5Vの電圧を印加することによって確立されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電荷分離の状態が存在しているときの前記装置の体積平均電荷分離密度が、10−4e−/nm3以上であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記内包物が、量子井戸、量子ワイヤ、量子ドット及びバルク材料からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記内包物の仕事関数勾配が滑らかになるように、前記内包物がサイズに従って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記内包物のうちの第1の内包物が、該第1の内包物より小さなサイズを各々が有する幾つかの他の前記内包物によって取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記内包物のうちの第1の内包物が、該第1の内包物より大きなサイズを各々が有する幾つかの他の前記内包物によって取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記内包物の一部または全部が、前記誘電体構造内または前記誘電体構造上に配置される複数の機能層として構築されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の機能層が、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料を含み、
前記複数の機能層が、フェルミ準位勾配を形成するように配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記機能層が、前記誘電体構造の一部または全部の電子親和力よりも小さい電子親和力を有する材料を含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の機能層のうちの2つ以上が、多層に積み重ねられて配置され、かつ1若しくは複数の障壁層によって互いから分離されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記誘電体構造が、2つ以上の誘電層を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項1】
ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された誘電体構造と、
前記誘電体構造内に配置され、電子を、前記誘電体構造を通り抜けるトンネル現象によって、前記電極の少なくとも一方へ、または該一方から移動させることができる1若しくは複数の内包物とを含み、
前記第1及び第2の電極のうちの少なくとも一方が、幾何学的面積よりも大きい有効面積を提供するために微細構造化されており、
前記装置が、前記内包物間の電荷分離を確立することによってエネルギーを貯蔵することができ、かつ、前記電荷分離をエネルギー源として用いることによってエネルギーを供給することができるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極のうちの少なくとも一方において、前記幾何学的面積に対する前記有効面積の比率が1.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、外部端子として前記第1及び第2の電極のみを有する二端子装置であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の電極が各々、1μm2以上の幾何学的面積を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記内包物間の前記電荷分離が、前記第1の電極と第2の電極との間に5Vの電圧を印加することによって確立されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電荷分離の状態が存在しているときの前記装置の体積平均電荷分離密度が、10−4e−/nm3以上であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記内包物が、量子井戸、量子ワイヤ、量子ドット及びバルク材料からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記内包物の仕事関数勾配が滑らかになるように、前記内包物がサイズに従って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記内包物のうちの第1の内包物が、該第1の内包物より小さなサイズを各々が有する幾つかの他の前記内包物によって取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記内包物のうちの第1の内包物が、該第1の内包物より大きなサイズを各々が有する幾つかの他の前記内包物によって取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記内包物の一部または全部が、前記誘電体構造内または前記誘電体構造上に配置される複数の機能層として構築されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の機能層が、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料を含み、
前記複数の機能層が、フェルミ準位勾配を形成するように配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記機能層が、前記誘電体構造の一部または全部の電子親和力よりも小さい電子親和力を有する材料を含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の機能層のうちの2つ以上が、多層に積み重ねられて配置され、かつ1若しくは複数の障壁層によって互いから分離されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記誘電体構造が、2つ以上の誘電層を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図11f】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図11f】
【公表番号】特表2012−523117(P2012−523117A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503420(P2012−503420)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/000953
【国際公開番号】WO2010/114600
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/000953
【国際公開番号】WO2010/114600
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】
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