説明

鞍乗型車両

【課題】インバータの大型化を抑えつつインバータの故障を防止できかつモータの巻線を円滑に切り替えることができる、乗り心地の良い鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】自動二輪車10は、切り替え可能な巻線を有するモータ18と、アクセルグリップ22と、アクセルグリップ22からの指示に基づいて制御信号を出力する制御部20と、制御部20からの制御信号に基づいてモータ18に出力電圧を供給するインバータ14と、巻線を切り替えるスイッチ16a〜16cと、モータ電流を検出する電流センサ24a,24bと、モータ18の位相を検出するエンコーダ26とを備える。制御部20は、巻線の切り替え条件が成立したとき、アクセルグリップ22からの指示に係わらずモータ電流が0になるように、モータ電流とモータ18の位相とに基づいてインバータ14のデューティー比を調整する。デューティー比調整期間中に巻線を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鞍乗型車両に関し、より特定的には、モータの巻線を切り替え可能な自動二輪車などの鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるモータの巻線を切り替えることができる従来技術の一例が特許文献1において開示されている。
特許文献1では、巻線切替処理において、巻線切替の必要があると判断された場合には、インバータを構成する各スイッチング素子(ゲート)へのゲート信号を遮断状態にして、電源からモータに供給すべき一次電流を0にし、その状態で巻線を切り替える。そして、巻線を切り替えた後、インバータを構成する各スイッチング素子(ゲート)をオンし、モータに一次電流を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−253594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、モータ回転中の巻線切替時にインバータを構成する各スイッチング素子(ゲート)を一旦遮断状態にするので、その後インバータの各スイッチング素子をオンすると、モータに蓄積されたエネルギがサージ電圧としてインバータに帰還してしまい、インバータが故障し易くなる。また、サージ電圧により車両に衝撃が発生し、乗り心地がよくない。特に車重の小さい鞍乗型車両においては、乗員に衝撃が伝わりやすく、乗り心地の悪化は顕著となる。それを防止しようとすれば、保護回路をさらに付加するか、大型のインバータを用いる必要がある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、インバータの大型化を抑えつつインバータの故障を防止できかつモータの巻線を円滑に切り替えることができる、乗り心地の良い鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の鞍乗型車両は、駆動輪と、駆動輪に駆動力を伝えるように接続され、かつ切り替え可能な巻線を有するモータと、モータの出力を指示する入力部と、入力部からの指示に基づいて制御信号を出力する制御部と、制御部からの制御信号に基づいてそのデューティー比が調整されモータに出力電圧を供給するインバータと、巻線を切り替える巻線切替部と、巻線を流れるモータ電流を検出する電流検出部と、モータの位相を検出する位相検出部とを備え、制御部は、巻線の切り替え条件が成立したか否かを判断する切替判断部と、巻線の切り替え条件が成立したときデューティー比調整期間に入り、入力部からの指示に係わらずモータ電流が0になるように、電流検出部によって検出されたモータ電流と位相検出部によって検出されたモータの位相とに基づいてインバータのデューティー比を調整する調整部と、調整部によるデューティー比調整期間中に巻線切替部に対して巻線の切り替えを指示する切替指示部とを含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の鞍乗型車両は、請求項1に記載の鞍乗型車両において、巻線の切り替え後、制御部は、モータ電流が徐々に回復するようにインバータのデューティー比を調整することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の鞍乗型車両では、巻線の切り替え条件が成立したときには入力部からの指示に係わらず、検出されたモータ電流とモータの位相とに基づいて、モータ電流が0になるようにインバータのデューティー比が調整される。すなわち、モータの位相を検出することによってモータの誘起電圧の位相を取得し、その位相と同期する出力電圧をインバータがモータに供給できるように制御部はインバータを制御する。また、制御部は、モータ電流を監視し、そのモータ電流が0になるようにインバータの出力電圧の大きさを調整する。インバータの出力電圧がモータの誘起電圧と同相かつ同じ大きさに調整されることによって、モータ電流が0になる。ここで、「モータ電流が0」とは、モータ電流が完全に0になる場合に限定されず、インバータへのサージ電圧を抑制できる限りにおいて0に近い少量のモータ電流が流れる状態をも含む。このようにインバータのデューティー比を調整するデューティー比調整期間中に、巻線切替部がモータの巻線を切り替える。巻線切替時において、インバータを遮断することなくインバータのデューティー比を調整してモータ電流を0にすることによって、巻線切替後に、モータ電流を元に戻すときインバータにサージ電圧は与えられない。したがって、保護回路や大きなインバータを用いることなく、インバータの故障を防止できかつモータの巻線を円滑に切り替えることができるため、鞍乗型車両の乗り心地が向上する。
【0009】
請求項2に記載の鞍乗型車両では、モータの巻線切替後、モータ電流が徐々に回復するようにインバータのデューティー比を調整する。このとき、たとえば、制御部は、モータ電流を監視しながら、そのモータ電流が徐々に増加していくようにインバータへ制御信号を出力する。これによって、巻線切替後のモータに急激なトルク変化は発生せず、滑らかに定常動作に復帰できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、インバータの大型化を抑えつつインバータの故障を防止できかつモータの巻線を円滑に切り替えることができる、乗り心地の良い鞍乗型車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態の自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の自動二輪車の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の一実施形態の動作の一例を示すフロー図である。
【図4】この発明の一実施形態および従来例それぞれの動作を示す波形図である。
【図5】この発明の一実施形態におけるモータ電流の波形の一例を示す波形図である。
【図6】この発明の一実施形態におけるモータ電流の波形の他の例を示す波形図である。
【図7】この発明の他の実施形態の自動二輪車の主な電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
この発明の実施の形態における左右、前後、上下とは、自動二輪車10のシート48に乗員がそのハンドル24に向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
【0013】
図1を参照して、この発明の一実施形態の自動二輪車10は、車体フレーム12を有する。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14、ヘッドパイプ14から後方へ斜め下方に延びる前部フレーム16、および前部フレーム16の後部に連結されかつ後方へ斜め上方に立ち上がる後部フレーム18を備えている。
【0014】
ヘッドパイプ14内には、ステアリング軸20が回動自在に挿通されている。ステアリング軸20の上端にはハンドル支持部22が取り付けられ、ハンドル支持部22にはハンドル24が固定されている。ステアリング軸20の下端にはフロントフォーク26が取り付けられており、フロントフォーク26の下端には前輪28が回転自在に取り付けられている。
【0015】
前部フレーム16の後端部にはピボットシャフト30を介してリヤアーム32の前端部が取り付けられ、リヤアーム32が揺動自在に設けられている。リヤアーム32の後端部32aには、モータ34が内蔵されている。モータ34は後輪36に連結されかつ後輪36を回転駆動する。
【0016】
図2をも参照して、リヤアーム32には、制御部38、インバータ40およびスイッチ42a,42bおよび42cが内蔵されている。また、後部フレーム18近傍には、モータ34に電力を供給する直流電源であるバッテリ44が設けられ、ハンドル24の右手側にはアクセルグリップ46が設けられ、後部フレーム18によってシート48が支持されている。
【0017】
インバータ40は、バッテリ44に接続され、たとえばトランジスタやサイリスタなどの6つのスイッチング素子40a〜40fを含み、U相、V相およびW相の3相の出力電圧をモータ34に向けて供給する。インバータ40のU相、V相およびW相のそれぞれの出力端子TU1,TV1およびTW1はそれぞれ、スイッチ42aの入力端子TU2、スイッチ42bの入力端子TV2、およびスイッチ42cの入力端子TW2に接続されている。
【0018】
モータ34は、たとえばIPMモータであり、3相の巻線RU,RVおよびRWを有する。巻線RU,RVおよびRWの一端は接続点Cで共通接続されており、巻線RU,RVおよびRWの他端はそれぞれ、スイッチ42aの出力端子TU3、スイッチ42bの出力端子TV3、およびスイッチ42cの出力端子TW3に接続されている。また、巻線RU,RVおよびRWの中間端子TU4,TV4およびTW4はそれぞれ、スイッチ42aの出力端子TU5、スイッチ42bの出力端子TV5、スイッチ42cの出力端子TW5に接続されている。
【0019】
スイッチ42a〜42cは入力点切り替え方式である。スイッチ42a〜42cの入力端子TU2,TV2およびTW2がスイッチ42a〜42cの出力端子TU3,TV3およびTW3に接続されているときの巻線RU,RVおよびRWの接続状態を巻線モード1という。スイッチ42a〜42cの入力端子TU2,TV2およびTW2がスイッチ42a〜42cの出力端子TU5,TV5およびTW5に接続されているときの巻線RU,RVおよびRWの接続状態を巻線モード2という。巻線モード1での巻線RU,RVおよびRWの巻き数は、巻線モード2での巻線RU,RVおよびRWの巻き数よりも大きい。自動二輪車10における低速走行時には巻線モード1が用いられ、高速走行時には巻線モード2が用いられる。
【0020】
また、U相の出力端子TU1と入力端子TU2との間にはモータ電流を検出するための電流センサ50aが設けられ、V相の出力端子TV1と入力端子TV2との間にはモータ電流を検出するための電流センサ50bが設けられている。モータ34近傍には、モータ34の位相を検出するためのエンコーダ52が設けられている。
【0021】
制御部38は、たとえばCPUやメモリを含む。制御部38には、電流センサ50aおよび50bからの検出値がA/D変換器54によってA/D変換されて与えられ、また、エンコーダ52の検出値、およびアクセルグリップ46からの指示が与えられる。
【0022】
制御部38は、通常、アクセルグリップ46からの指示に応じて、インバータ40の各スイッチング素子40a〜40fに制御信号を与え、インバータ40のデューティー比を制御する。また、制御部38は、巻線切替条件成立時には、電流センサ50aおよび50bの検出値およびエンコーダ52の検出値に基づいて、インバータ40の各スイッチング素子40a〜40fに制御信号を与えてインバータ40のデューティー比を制御し、また、電流センサ50aおよび50bの検出値に基づいて、スイッチ42a〜42cに巻線切替信号を与える。
【0023】
この実施形態では、後輪36が駆動輪に相当する。スイッチ42a〜42cが巻線切替部に相当する。アクセルグリップ46が入力部に相当する。電流センサ50aおよび50bが電流検出部に相当し、エンコーダ54が位相検出部に相当する。制御部38は、巻線RU,RVおよびRWの切り替え条件が成立したか否かを判断する切替判断部、インバータ40の出力電圧を調整する調整部、ならびにスイッチ42a〜42cに対して巻線RU,RVおよびRWの切り替えを指示する切替指示部としても機能する。
【0024】
ついで、図3を参照して、自動二輪車10におけるモータ34の巻線切替動作の一例について説明する。ここでは、巻線RU,RVおよびRWが初期的に巻線モード1である場合について説明する。また、モータ34の3相はそれぞれ同様に動作するので、ここでは、一相分について説明する。
【0025】
まず、エンコーダ52を用いてモータ34の位相が検出され、制御部38は、検出されたモータ34の位相に基づいてモータ34の回転数を検出する(ステップS1)。なお、モータ34の位相は常時検出されている。
【0026】
制御部38は、モータ34の回転数が閾値(たとえば250rpm)以上か否かを判断する(ステップS3)。モータ34の回転数が閾値未満であれば、モータ34の巻線RU,RVおよびRWを切り替えることなく、巻線モード1のままで終了する。一方、モータ34の回転数が閾値以上であれば巻線切替条件が成立し、デューティー比調整期間に入る。デューティー比調整期間では、以下のようにしてモータ電流が0になるように制御される。
【0027】
電流センサ50aによってモータ電流が検出され、そのモータ電流がA/D変換器54を介して制御部38に与えられる(ステップS5)。また、制御部38はエンコーダ52によって検出されているモータ34の位相を取得する(ステップS7)。そして、制御部38は、モータ電流が0になるように、モータ電流およびモータ34の位相に基づいてインバータ40のデューティー比を算出し(ステップS9)、インバータ40がそのデューティー比となるように、制御信号をインバータ40に出力し、インバータ40のデューティー比を調整する(ステップS11)。
【0028】
そして、制御部38は、モータ電流が0であるか否かを判断する(ステップS13)。モータ電流が0でなければ、ステップS5に戻り、モータ電流が0になるまでステップS5〜S13の処理を繰り返す。一方、ステップS13において、モータ電流が0であれば、制御部38は、スイッチ42aに巻線切替信号を出力し、それに応じてスイッチ42aは、入力端子TU2を出力端子TU5に接続し、巻線RUを切り替える(ステップS15)。その後、モータ電流が回復するように、制御部38は制御信号をインバータ40に出力し、それに応じてモータ電流は回復していく(ステップS17)。このようにして、巻線モードが巻線モード1から巻線モード2に切り替えられる。
【0029】
ここで、ステップS5〜S13におけるインバータ40のデューティー比の算出・調整処理について説明する。
インバータ40とモータ34とを含む回路には数1の関係が成立する。
【0030】
【数1】

【0031】
上記数1において、モータ電流Imを0にするには、出力電圧Vmと誘起電圧Emとの大きさおよび位相が一致するような、出力電圧Vmをモータ34に供給できるように、制御部38がインバータ40に制御信号を出力し、インバータ40のスイッチング動作を制御する必要がある。
【0032】
そのために、制御部38は、モータ34の位相を取得することによってモータ34の誘起電圧Emの位相を取得し、その位相と同期する出力電圧Vmをインバータ40がモータ34に供給できるようにインバータ40を制御する。また、制御部38は、モータ電流Imを監視し、そのモータ電流Imが0になるようにたとえばフィードバック処理によってインバータ40の出力電圧Vmの大きさを調整する。インバータ40の出力電圧Vmがモータの誘起電圧Emと同相かつ同じ大きさに調整されることによって、モータ電流Imが0になるタイミングを強制的に作り出し、モータ電流が0に調整される。
【0033】
このような自動二輪車10によれば、インバータ40の出力電圧を調整するデューティー比調整期間(図4〜図6参照)中に、スイッチ42a〜42cがモータ34の巻線RU,RVおよびRWを切り替える。巻線切替時において、インバータ40を遮断することなくインバータ40のデューティー比を調整してモータ電流を0にすることによって、巻線切替後に、モータ電流を元に戻すときインバータ40に、突入電流は発生せずサージ電圧は与えられない。したがって、保護回路や大きなインバータを用いることなく、インバータ40を小さくできてコストを抑制でき、インバータ40の故障を防止できる。さらに、モータ34の巻線RU,RVおよびRWを円滑に切り替えることができ、巻線切替後のモータ電流復帰時の衝撃を抑制でき、自動二輪車10の乗り心地を改善できる。また、巻線切替時における巻線RU,RVおよびRWへのエネルギ蓄積を回避できる。
【0034】
ついで、図4を参照して、この発明の一実施形態の自動二輪車10と従来例との比較について説明する。
自動二輪車10では、まず、アクセルグリップ46からの指示に応じて、制御部38からインバータ40に制御信号が入力され、インバータ40のスイッチング素子40a〜40fがオンされインバータ40が駆動される。すると、モータ電流が流れ、モータ34の回転数が上昇する。モータ34の回転数が閾値以上になるとインバータ40のデューティー比調整期間に入る。この期間では、アクセルグリップ46からの指示に係わらず、上述したインバータ40のデューティー比の調整によってモータ電流が0になるように調整される。モータ電流が0になると、制御部38から巻線切替信号がスイッチ42a〜42cに出力され、巻線RU,RVおよびRWが切り替えられる。その後、制御部38はインバータ40への制御信号を調整し、再びモータ電流が流れる。
【0035】
ここで、自動二輪車10では、デューティー比調整期間(巻線切替期間)においてインバータ40は遮断されることなく(すべてのスイッチング素子40a〜40fが一斉に遮断されることなく)動作し、デューティー比調整期間後にモータ電流が元に戻る。このとき、インバータ40にサージ電圧は与えられない。
【0036】
それに対して、従来例では、巻線切替期間に入るとインバータ40は遮断される。そして、巻線切替期間後にモータ電流が回復するときインバータ40は再び駆動されるが、モータ電流として一旦大きな突入電流が流れ、インバータ40にサージ電圧が与えられてしまう。
【0037】
このように図4からも自動二輪車10が優れていることがわかる。
【0038】
上述したモータ34の巻線切替動作によって、モータ電流をたとえば図5に示すように調整できる。
【0039】
また、図6に示すように、巻線切替後のモータ電流が徐々に回復するようにインバータ40のデューティー比を調整するようにしてもよい。この場合、たとえば、制御部38は、モータ電流を監視しながら、そのモータ電流が徐々に増加していくようにインバータ40へ制御信号を出力する。これによって、巻線切替後のモータ34に急激なトルク変化は発生せず、滑らかに定常動作に復帰できる。
【0040】
また、図7を参照して、この発明の他の実施形態の自動二輪車10aについて説明する。
自動二輪車10aでは、巻線切替部として、自動二輪車10におけるスイッチ42a,42bおよび42cに代えて、中点切り替え方式のスイッチ42dおよび42eが用いられる。
【0041】
スイッチ42dは、共通端子C1、ならびに端子TU6,TV6およびTW6を含み、端子TU6,TV6およびTW6はそれぞれモータ34の巻線RU,RVおよびRWの一端に接続されている。また、スイッチ42eは、共通端子C2、ならびに端子TU7,TV7およびTW7を含み、端子TU7,TV7およびTW7はそれぞれモータ34の巻線RU,RVおよびRWの中間端子TU4,TV4およびTW4に接続されている。また、巻線RU,RVおよびRWの他端はそれぞれ、インバータ40の出力端子TU1,TV1およびTW1に接続されている。
【0042】
その他の構成については、自動二輪車10と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0043】
自動二輪車10aでは、スイッチ42dがオンし、共通端子C1と端子TU6,TV6およびTW6とが接続されているときが巻線モード1となる。また、スイッチ42eがオンし、共通端子C2と中間端子TU7,TV7およびTW7とが接続されているときが巻線モード2となる。
【0044】
自動二輪車10aについても自動二輪車10と同様の作用効果を奏する。
【0045】
なお、上述の実施形態では、図3のステップS13において、モータ電流が0になれば巻線を切り替えるようにしたが、それに限定されない。図3のステップS13において、巻線を切り替えるか否かを判断するモータ電流の閾値は、インバータ40へのサージ電圧を抑制できる限りにおいてある程度の幅を有していてもよく、モータ電流がその範囲内に入れば、巻線切替を行うようにしてもよい。
【0046】
また、巻線切替の条件は、モータ34の回転数、アクセルグリップ46からの指示(たとえばアクセル操作量あるいはアクセル操作変化量)およびモータ34の実出力に基づいて設定されてもよい。この場合、自動二輪車の乗り心地をさらに向上できる。また、アクセルグリップ46とは別に設けられ、任意のタイミングでの入力が可能な、切替入力専用のスイッチへの入力を巻線切替の条件としてもよい。
【0047】
さらに、巻線切替はY結線とΔ結線との間で行うようにしてもよい。
【0048】
上述の実施形態ではこの発明を自動二輪車に適用した場合について説明したが、これに限定されない。この発明は、3輪以上の任意の鞍乗型車両に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10,10a 自動二輪車
34 モータ
36 後輪
38 制御部
40 インバータ
42a〜42e スイッチ
44 バッテリ
46 アクセルグリップ
50a,50b 電流センサ
52 エンコーダ
54 A/D変換器
RU,RV,RW 巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
前記駆動輪に駆動力を伝えるように接続され、かつ切り替え可能な巻線を有するモータと、
前記モータの出力を指示する入力部と、
前記入力部からの指示に基づいて制御信号を出力する制御部と、
前記制御部からの前記制御信号に基づいてそのデューティー比が調整され前記モータに出力電圧を供給するインバータと、
前記巻線を切り替える巻線切替部と、
前記巻線を流れるモータ電流を検出する電流検出部と、
前記モータの位相を検出する位相検出部とを備え、
前記制御部は、
前記巻線の切り替え条件が成立したか否かを判断する切替判断部と、
前記巻線の切り替え条件が成立したときデューティー比調整期間に入り、前記入力部からの指示に係わらず前記モータ電流が0になるように、前記電流検出部によって検出された前記モータ電流と前記位相検出部によって検出された前記モータの位相とに基づいて前記インバータのデューティー比を調整する調整部と、
前記調整部によるデューティー比調整期間中に前記巻線切替部に対して前記巻線の切り替えを指示する切替指示部とを含む、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記巻線の切り替え後、前記制御部は、前記モータ電流が徐々に回復するように前記インバータのデューティー比を調整する、請求項1に記載の鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62888(P2013−62888A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7785(P2010−7785)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】