説明

音声出力装置

【課題】車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号と、AV機器から出力されるオーディオ信号とを同時に出力可能な音声出力装置において、案内音声を確実に聴取でき、かつ、オーディオ音声の聴取も確保すること。
【解決手段】重要な経路案内音声を出力するときには、オーディオ音声の出力を一時的に中止して録音しておく。重要な経路案内音声を出力した後、録音したオーディオ音声を、リアルタイムの音声に追いつくまで、音量が小さい部分をスキップして出力する。リアルタイムの音声に追いついたときには、録音を停止し、そのリアルタイムの音声出力を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の車載ナビゲーションでは、一般的に、経路案内の実行中に、音楽や映画のCD、DVDを再生できたり、又は、ラジオやテレビ等も視聴することができるようになっている。この場合、画面の表示領域を分割することによって、現在地周辺の道路地図と、その他の映像とを同時に表示する。また、近年では、見る方向によって、異なる情報を表示することができる画面も開発されており、この画面を用いれば、表示領域を分割する必要は無い。特に、この画面を、ドライバー席側の方向からは、現在地周辺の道路地図を表示し、助手席側の方向からは、映画映像などを表示するようにして用いると有効である。
【0003】
一方、音声については、経路案内に伴う音声は、テレビなどの他の音声に比べて重要度が高いことから、経路案内に伴う音声を出力するときには、他の音声の音量を一時的にオフ又は小さくしている。
【0004】
しかしながら、上述のようにして複数の音声を同時に出力させようとすると、一方の音声については、途切れたり又は聴き取り辛くなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1では、異なる二つの音声を同時に出力するときには、一方の音声については位相を変位させて出力するという技術を提案している。これは、位相を変位させることによって、異なる2つの音声の音源位置を聴覚上異ならせることができるという効果を用いた技術である。これにより、異なる2つの音声を出力するときには、一方の音声の音量を一時的にオフ又は小さくする必要がないので、どちらの音声も明瞭に聴取することができる。
【特許文献1】特開2001−309498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を用いたとしても、異なる2つの音声を同時に出力させていることにはかわりなく、経路案内に伴う音声などのように特に重要な音声情報を聞き逃してしまう可能性もある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号と、AV機器から出力されるオーディオ信号とを同時に出力可能な音声出力装置において、案内音声を確実に聴取でき、かつ、オーディオ音声の聴取も確保できる音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の音声出力装置は、音を出力するスピーカと、前記スピーカから出力するための、車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号と、AV機器から出力されるオーディオ信号とを取得する取得手段と、前記取得手段が取得した信号を再生して前記スピーカから出力する出力手段とを備える音声出力装置において、前記出力手段が、前記オーディオ信号を前記スピーカから出力しているときに、前記取得手段が前記案内音声信号を取得したときは、前記スピーカから出力されているオーディオ信号を録音する録音手段を備え、前記出力手段は、前記オーディオ信号を前記スピーカから出力しているときに、前記取得手段が前記案内音声信号を取得したときは、当該オーディオ信号の前記スピーカへの出力を中止し、代わりに、当該案内音声信号を前記スピーカから出力するとともに、当該案内音声信号の出力の終了後、前記録音手段による録音中のリアルタイムの前記オーディオ信号に追いつくような態様で、前記録音手段が録音したオーディオ信号を、前記スピーカから出力し、追いついたときには、前記リアルタイムのオーディオ信号の前記スピーカへの出力を再開することを特徴とする。
【0009】
このように、車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号を出力するときには、オーディオ信号の出力を中止しているので、その案内音声を確実に聴取することができる。また、このときに出力中止したオーディオ信号については、後で出力されるので、多少の時間差はあるが聴取を確保することができる。
【0010】
請求項2の音声出力装置は、前記録音手段は、前記出力中止されていたオーディオ信号の出力を再開するときに、前記オーディオ信号の録音を停止することを特徴とする。このようにしたのは、出力中止していたオーディオ信号の出力を再開するときには、録音する必要がないためである。
【0011】
請求項3の音声出力装置は、前記取得手段が取得した案内音声信号が重要な音声信号であるか否かを判定する判定手段を備え、前記出力手段は、前記取得手段が取得した前記案内音声信号が前記判定手段によって重要でないと判定された場合には、前記オーディオ信号の出力を継続するとともに、当該案内音声信号も前記スピーカから出力することを特徴とする。
【0012】
車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号でも、さまざまな種類の音声信号があり、それぞれ重要度も異なっている。例えば、「この交差点を右折してください」など、経路案内に直接関係してくる音声については、これを聞き逃してしまうと探索経路から離脱してしまうことにもなりかねないので、重要な音声信号と言える。これに対し、例えば、VICSからの渋滞情報などの音声は、音声出力をしなくても、探索経路から離脱してしまうということもないので、重要度が低くなると考えられる。このようなことから、請求項3の音声出力装置は、車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号のうち、重要度が高い音声信号に対してのみ、上述のオーディオ音声の出力を中止して、その案内音声信号を出力する処理を行い、重要度が低い案内音声信号を出力するときには、オーディオ音声の出力を継続させている。これにより、オーディオ音声の出力が一時的に中止されることの不快感を防いでいる。
【0013】
請求項4の音声出力装置は、表示部を備え、前記オーディオ信号は、映像信号と同期する音声信号であり、前記取得手段は、前記オーディオ信号に対応する映像信号も取得し、前記出力手段は、前記取得手段が前記オーディオ信号及びこれに対応する映像信号を取得したときは、当該映像信号を前記表示部から出力するものであり、前記オーディオ信号の前記スピーカへの出力を中止して、代わりに前記案内音声信号を前記スピーカから出力するときにも、前記映像信号の前記表示部への出力を継続することを特徴とする。
【0014】
映画などのように映像信号と同期しているオーディオ音声信号に、この技術を適用すると特に効果的である。なぜなら、車載ナビゲーション装置からの案内音声を出力するときにも、その映像は継続表示されることになり、出力中止した音声も後からリアルタイムの映像(音声)に追いつくように出力されるため、視聴者は確実に映画等の内容把握をすることができるからである。また、映像が常に表示されているかぎり、一時的に音声の出力を中止したとしても、それ程気になることも少ないと考えられるからである。
【0015】
請求項5の音声出力装置は、前記取得手段は、前記案内音声信号に対応する案内用地図データも取得し、前記出力手段は、前記取得手段が前記案内音声信号に対応する案内用地図データを取得したときは、当該案内用地図データを前記表示部から出力することを特徴とする。
【0016】
このように、案内用地図も同時に表示できるようにしてもよい。この場合、2種類の映像が同時に表示部に表示されることになるが、これは、例えば、画面の表示領域を分割すればよい。
【0017】
請求項6の音声出力装置は、前記表示部は、見る方向によって異なる情報を表示することができる画面を備え、前記出力手段は、前記画面を所定方向から見ると前記映像信号に対応する映像を視認でき、前記所定方向とは別の所定方向から見ると前記案内用地図データに対応する道路地図を視認できるように、当該映像信号と案内用地図データのそれぞれを前記表示部から出力することを特徴とする。
【0018】
このよう画面を用いることにより、例えば、運転席と助手席の間に画面を設置して、運転席側からは、現在地周辺の道路地図を視認できるように表示して、助手席側からは、映画などその他の映像を視認できるように表示することもできる。これにより、画面を分割表示することなく、各座席に合った映像を表示することができる。
【0019】
請求項7の音声出力装置は、前記出力手段は、前記録音手段が録音したオーディオ信号を、前記スピーカから出力するときは、当該オーディオ信号の大きさが所定の基準値よりも小さい部分をスキップして出力することを特徴とする。
【0020】
これにより、リアルタイムの音声に追いつくことができる。また、スキップする部分は音量が小さい部分なので、スキップすることによって、当該音声の内容把握が困難になるということもない。
【0021】
請求項8の音声出力装置は、前記出力手段は、前記録音手段が録音したオーディオ信号を、前記スピーカから出力するときは、当該オーディオ信号の再生速度を、通常よりも速くして出力することを特徴とする。
【0022】
このように、再生スピードを通常よりも速めることによっても、リアルタイムの音声に追いつくことができる。また、このときの再生スピードを調整すれば、当該音声の内容把握が困難となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、車載ナビゲーションに適用した例について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態における車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように車載ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、スピーカ11a、11b、録音用メモリ12、CD・DVDドライブ13及びこれらと接続する制御回路8から構成される。以下各構成部品について説明する。
【0025】
制御回路8は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、制御回路8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が以下に示す各部を用いて各種演算処理を実行する。例えば、制御回路8は、後述する道路データを用いて目的地までの最適経路を探索し、車両がその経路に沿って走行するように音声案内を行う。また、ユーザーから映画や音楽の再生指示があったときには、後述するCD・DVDドライブ13に挿入されているCD又はDVDから音声又は映像信号を読み出し、後述する表示装置10又はスピーカ11a、11bに音声又は映像として出力する。さらに、制御回路8は、経路案内に伴う音声を出力する際に、オーディオ音声を出力しているときは、その経路案内に伴う音声が重要度が高い音声である場合には、そのオーディオ音声の出力を一時的に中止する。そして、このとき中止したオーディオ音声は、後述する録音用メモリ12に録音しておき、後に、リアルタイムの音声に追いつくように、音量が小さい部分をスキップして出力する。このときの処理については、フローチャートを用いて後述する。なお、制御回路8が行う処理に関するプログラムは、外部メモリ9を介して外部から取得してもよい。
【0026】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した一部で構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。この位置検出器1により、車両の現在地が検出され、制御回路8は、経路案内を行う際には、車両が探索経路のどの位置を走行しているのかを認識でき、また車両がその経路に沿って走行しているか否かを判定することができる。
【0027】
地図データ入力器6は、道路データ、背景データ、目印データ等を含む各種データを入力するための装置である。各種データを記憶する記憶媒体としては、CD−ROMやDVD−ROM等の再生専用の記憶媒体の他、メモリカードやハードディスク等の書き込み可能な記憶媒体を用いることもできる。
【0028】
道路データは、リンクデータとノードデータによって構成される。このリンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割し、それぞれのノード間をリンクとして規定したものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び制限速度等の各データから構成される。
【0029】
一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類等の各データから構成される。
【0030】
出発地から目的地に至る経路を探索する際には、これら各リンク及びノードごとに通過しやすさを示す通過コストが算出される。この通過コストは、各リンクの特性(リンク長、道路種、道路幅等)及び各ノードにおける直進、右左折の種別に応じて算出される。そして、出発地から目的地までの任意の経路に対して、各経路を構成する各リンク及び各ノードの通過コストの加算値が最小となる経路がダイクストラ法などの経路探索手法などを用いて探索される。
【0031】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、経路探索の際の出発地及び目的地の設定等各種入力に使用される。
【0032】
表示装置10は、運転席と助手席の間に設置された一つの画面を備え、その画面を運転席側から見たときと、助手席側から見たときとでは、異なる情報を視認させることができる装置である。本実施形態では、画面を運転席側から見たときには、現在地周辺の道路地図などの経路案内情報を視認できるようにし、助手席側からみたときには、後述するCD・DVDドライブ13から入力される、映画などの映像が視認できるようになっている。
【0033】
スピーカ11a、11bは、それぞれ、運転席側と助手席側に設置され、各種音声を出力する。具体的には、目的地までの音声案内や、後述するCD・DVDドライブ13から入力される音楽、映画の音声、またはTV音声などを出力する。また、本実施形態では、経路案内の最中に、経路案内と関係のないオーディオ音声を出力するときには、経路案内に伴う音声を、運転席側に設置されたスピーカ11aから出力し、オーディオ音声を、助手席側に設置されたスピーカ11bから出力している。これは、経路案内に伴う音声は、車両を適切な経路で走行させるためにも重要な音声であることから、できるかぎりドライバーにその経路案内に伴う音声を聴取できるようにするためである。
【0034】
録音用メモリ12は、音声信号を録音するためのメモリであり、例えば、RAMやフラッシュメモリが挙げられる。この録音用メモリ12は、重要度が高い経路案内に伴う音声を出力するときに、助手席側に設置されたスピーカ11bから出力されるオーディオ音声の録音に用いられる。
【0035】
CD・DVDドライブ13は、制御回路8の命令に基づき、CD又はDVDから音楽データや映画データ(音声信号、映像信号)を制御回路8に出力する。
【0036】
次に、本発明の特徴である、映画や音楽が再生しているときに、経路案内に伴う音声を出力しようとするときの制御回路8が行う処理を、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
この処理を開始する前提として、車両が所定の経路に沿って走行するように経路案内が開始されており、かつ、CD・DVDドライブ13に挿入されているCD又はDVDの再生をドライバーから指示されているものとする。なお、経路案内を開始するためには、最適経路が制御回路8によって探索されていることが必要となる。この最適経路は、上述したように、地図データを構成する各リンク及びノードごとに通過しやすさを示す通過コストを付与する。そして、出発地から目的地までの任意の経路に対して、各リンク及び各ノードに付与した通過コストの加算値が最小となる経路をダイクストラ法などの経路探索手法などを用いて探索する。また、経路案内を行っている最中は、現在地周辺の道路地図を表示装置10の画面に出力する。さらに、CD・DVDドライブ13に挿入されているメディアが映画DVDである場合には、その映像も現在地周辺の道路地図と同様に表示装置10の画面に出力する。そして、この際に、運転席側からは現在地周辺の道路地図を視認でき、助手席側からは映画の映像が視認できるように、それぞれを出力する。これにより、画面の表示領域を分割することなく、各座席で異なる画面を視認できる。
【0038】
先ず、ステップS10では、ドライバーによるCD又はDVDの再生指示に基づいて、CD又はDVDを再生し、その音声を助手席側に設置されたスピーカ11bに出力する。
【0039】
ステップS20では、運転席側に設置されたスピーカ11aへ出力させる音声の出力要求があるか否かを判定する。つまり、経路案内に伴う音声の出力要求があるか否かを判定する。この経路案内に伴う音声としては、例えば、右左折を指示する旨の音声、高速道路への乗り降りを指示する旨の音声、その他経路案内には直接には関係ないが、VICSからの渋滞情報など、走行を支援する情報を示す音声が挙げられる。したがって、例えば、車両が探索経路の右左折ポイント付近に近づいてきたときには、その右左折ポイントで右左折するように指示する音声の出力要求が有りと判定する。ここで、経路案内に伴う音声の出力要求がない場合は(否定判定)、再びステップS10に戻る。一方、経路案内に伴う音声の出力要求がある場合は(肯定判定)、次のステップS30に処理を進める。すなわち、経路案内に伴う音声の出力要求があるまでは、助手席側に設置されたスピーカ11bから、音楽や映画音声の出力が継続されることになる。
【0040】
ステップS30では、出力しようとする経路案内に伴う音声が、重要な音声であるか否かを判定する。この重要であるか否かの判断は、音声案内しなければ、車両が探索経路から離脱する可能性が大きいか否かに基づいて行う。したがって、出力しようとする経路案内に伴う音声が、右左折を指示する旨の音声や、高速道路への乗り降りを指示する旨の音声の場合には、当該音声は重要な音声であると判定する。これに対し、例えば、出力しようとする経路案内に伴う音声が、VICSからの渋滞情報などの音声である場合には、音声出力をしなくても、探索経路から離脱する可能性が少ないので、当該音声は重要な音声ではないと判定する。
【0041】
ここで、出力しようとする経路案内に伴う音声が、重要な音声ではないと判定したときは(否定判定)、ステップS50において、助手席側に設置されているスピーカ11bから出力されている音声の出力をさせたまま、経路案内に伴う音声を、運転席側に設置されたスピーカ11aから出力する。つまり、同時にスピーカ11a、11bから異なる音声を出力することになる。このようにしても、各スピーカは、それぞれ各座席側に設置されているので、各音声を聴取できないということはない。また、仮に、ドライバーが経路案内に伴う音声を聴取できなかったとしても、車両を探索経路上に沿って走行させる分には、支障をきたすこともない。
【0042】
一方、ステップS30において、出力しようとする経路案内に伴う音声が、重要な音声であると判定したときは(肯定判定)、次のステップS40に処理を進める。そして、ステップS40では、助手席側に設置されているスピーカ11bから出力される音声信号の、録音用メモリ12への録音を開始する。また、これと同時に、ステップS60において、現に助手席側に設置されているスピーカ11bから出力されている音声出力を中止する。つまり、スピーカ11bから出力する代わりに、録音する。なお、出力中止する音声が、映画などのように、映像と同期した音声である場合には、表示装置10に表示されているその映像は、そのまま、表示を継続する。これにより、助手席に座っている人は、一時的に音声は聴取することができないが、映像は表示されていることから、例えば映画であればある程度内容を把握することができる。一方、経路案内に伴う音声については、ステップS70において、運転席側に設置されたスピーカ11aから出力されるようにする。これにより、ドライバーは、当該音声を確実に聴取することができる。
【0043】
ステップS80では、スピーカ11aへの音声出力を終了したか否かを判定する。ここで、未だ終了していないときは、否定判定され、再びステップS70に戻る。つまり、スピーカ11aにて出力される音声は、終了するまで出力されることになる。一方、スピーカ11aへの音声出力が終了したときは、肯定判定され、次のステップS90に処理を進める。
【0044】
ステップS90では、録音用メモリ12に録音した音声信号を、音量が小さい部分をスキップして、助手席側に設置されたスピーカ11bから出力する。なお、このときも、リアルタイムの音声の録音は継続する。そして、ステップS100では、音量が小さい部分をスキップして出力している音声が、録音中のリアルタイムの音声に追いついたか否かを判定する。なお、その音声が映像と同期した音声である場合には、このステップでの判定は、録音した音声信号の出力が、表示装置10から出力されているリアルタイムの映像に追いついたか否かを判定することと同じである。ここで、未だ追いついていないと判定したときは(否定判定)、再びステップS90に戻る。つまり、リアルタイムの音声に追いつくまでは、スピーカ11bからは、録音した音声信号の音量が小さい部分をスキップした音声が出力されることになる。これにより、助手席に座っている人は、一時的に出力中止した音声を後に聴取することができる。なお、音量が小さい部分はスキップされているが、内容把握という点では、問題ないと考えられる。また、例えば映画を再生中に音声出力が一時的に中止になったとしても、その音声を出力中止する時間は、例えば「この交差点を右折してください」など、経路案内に伴う音声を出力する間だけなので、音声の出力を中止したことによる違和感は、それ程感じないと考えられる。
【0045】
一方、ステップS100において、音量が小さい部分をスキップして出力している音声が、録音中のリアルタイムの音声に追いついたと判定したときは(肯定判定)、ステップS110において、音声の録音を停止する。また、これと同時に、ステップS120において、リアルタイムの音声出力を再開する。
【0046】
以上、本実施形態では、経路案内の実行中に、音楽や映画を再生することができる車載ナビゲーション装置において、重要度が高い経路案内に伴う音声を出力する際には、一時的に、音楽や映画の音声出力を中止する。これにより、ドライバーは、確実に、当該経路案内に伴う音声を聴取することができる。また、この際に、一時的に出力中止する音声を、録音しておき、経路案内に伴う音声の出力が終了した後に、リアルタイムの音声に追いつくように、その録音した音声を、音量が小さい部分をスキップして出力する。これにより、多少の時間的ズレはあるが、一時的に出力中止する音声を聴取することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、録音した音声を出力するときには、音量が小さい部分をスキップしている。これは、リアルタイムの音声に追いつくこと、及び、その音声の内容把握を確保するためである。このようなことから、録音した音声を出力するときには、音声の内容の把握が困難にならない程度に、通常の再生速度よりも速くしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、表示装置10の画面が、見る方向によって、異なる情報を視認することができる画面について説明したが、これに限られず、例えば、ナビゲーションに関する情報と、映画やテレビなどの映像とを分割して表示するような表示装置を用いてもよい。また、スピーカ11a、11bのうち、一方のスピーカから出力される音声に同期した映像のみを表示する場合にも適用することができる。例えば、画面には映画画像を表示し、ナビゲーションに関する情報は表示せずに、音声のみで経路案内をする場合などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】映画や音楽などの音声を出力しているときに、経路案内に伴う音声を出力しようとするときの制御回路8が行う処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
100 車載ナビゲーション装置
1 位置検出器
2 地磁気センサ
3 ジャイロスコープ
4 距離センサ
5 GPS受信機
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路
9 外部メモリ
10 表示装置
11a、11b スピーカ
12 録音用メモリ
13 CD・DVDドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を出力するスピーカと、
前記スピーカから出力するための、車載ナビゲーション装置から出力される案内音声信号と、AV機器から出力されるオーディオ信号とを取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した信号を再生して前記スピーカから出力する出力手段とを備える音声出力装置において、
前記出力手段が、前記オーディオ信号を前記スピーカから出力しているときに、前記取得手段が前記案内音声信号を取得したときは、前記スピーカから出力されているオーディオ信号を録音する録音手段を備え、
前記出力手段は、前記オーディオ信号を前記スピーカから出力しているときに、前記取得手段が前記案内音声信号を取得したときは、当該オーディオ信号の前記スピーカへの出力を中止し、代わりに、当該案内音声信号を前記スピーカから出力するとともに、当該案内音声信号の出力の終了後、前記録音手段による録音中のリアルタイムの前記オーディオ信号に追いつくような態様で、前記録音手段が録音したオーディオ信号を、前記スピーカから出力し、追いついたときには、前記リアルタイムのオーディオ信号の前記スピーカへの出力を再開することを特徴とする音声出力装置。
【請求項2】
前記録音手段は、前記出力中止されていたオーディオ信号の出力を再開するときに、前記オーディオ信号の録音を停止することを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記取得手段が取得した案内音声信号が重要な音声信号であるか否かを判定する判定手段を備え、
前記出力手段は、前記取得手段が取得した前記案内音声信号が前記判定手段によって重要でないと判定された場合には、前記オーディオ信号の出力を継続するとともに、当該案内音声信号も前記スピーカから出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
表示部を備え、
前記オーディオ信号は、映像信号と同期する音声信号であり、
前記取得手段は、前記オーディオ信号に対応する映像信号も取得し、
前記出力手段は、前記取得手段が前記オーディオ信号及びこれに対応する映像信号を取得したときは、当該映像信号を前記表示部から出力するものであり、前記オーディオ信号の前記スピーカへの出力を中止して、代わりに前記案内音声信号を前記スピーカから出力するときにも、前記映像信号の前記表示部への出力を継続することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記案内音声信号に対応する案内用地図データも取得し、
前記出力手段は、前記取得手段が前記案内音声信号に対応する案内用地図データを取得したときは、当該案内用地図データを前記表示部から出力することを特徴とする請求項4に記載の音声出力装置。
【請求項6】
前記表示部は、見る方向によって異なる情報を表示することができる画面を備え、
前記出力手段は、前記画面を所定方向から見ると前記映像信号に対応する映像を視認でき、前記所定方向とは別の所定方向から見ると前記案内用地図データに対応する道路地図を視認できるように、当該映像信号と案内用地図データのそれぞれを前記表示部から出力することを特徴とする請求項5に記載の音声出力装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記録音手段が録音したオーディオ信号を、前記スピーカから出力するときは、当該オーディオ信号の大きさが所定の基準値よりも小さい部分をスキップして出力することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の音声出力装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記録音手段が録音したオーディオ信号を、前記スピーカから出力するときは、当該オーディオ信号の再生速度を、通常よりも速くして出力することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の音声出力装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−311128(P2006−311128A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130271(P2005−130271)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】