説明

音声認識通報装置

【課題】 緊急車両の接近方向、接近状態を運転者が直感的に認識できる音声認識通報装置を提供する。
【解決手段】 自動車車外には複数のマイクが配置されており、車外の音声を集音する。警報音認識部は集音した音声から緊急車両の発する警報音を認識し、方向検出部によって緊急車両の存在方向を検出する。制御部は検出した緊急車両の方向に応じて各車内スピーカに音源部が生成した擬似警報音の音声信号を割り当てるようにミキサに設定する。さらにカーオーディオの音量を下げて、擬似警報音の音量を上げるようにミキサに設定する。これにより運転者は緊急車両の接近方向を音声によって正確に認識することができる。また、ナビゲーションシステムと連動してディスプレイに表示する地図上に緊急車両の接近状態を示してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緊急車両等の特定の音声の存在を一般車の運転者に音響付加して通知する音声認識通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
救急車等の緊急車両は、緊急事態発生時に報知音(警報音)を発しながら走行する。一般車の運転手は警報音を耳にした場合に、緊急車両の走行を優先するために走行車線を明け渡したり、停止する等の処置をとる。
【0003】
しかし近年、乗用車の外部遮音性が高くなり、さらには車内にカーオーディオやカーナビゲーション等音響を発生する機器を装備する乗用車が増えており、緊急車両が発する警報音が乗用車内の者に聞こえない状態が常々発生していた。
【0004】
そこで、乗用車内の者に緊急車両の接近を確実に知らせることが望まれており、例えば緊急車両の警報音を集音部で検出して車内の表示装置に緊急車両の存在を表示する車搭載用の緊急車両有無通報装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−231388
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車搭載用の緊急車両有無通報装置は、視覚的に運転手に表示するのみであり、運転者は表示装置に注意を向けなければならかった。また、緊急車両の接近方向を前後左右の4方向表示し、接近距離を複数段階の固定パターンに表示するものであるため、運転者は正確に緊急車両の位置を認識できない問題があった。
【0006】
本発明は、緊急車両の接近方向、接近状態を運転者が直感的に認識できる音声認識通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、自動車の車外の音声を集音する集音部と、集音部が集音した音声のうち特定の音声を認識する音声認識部と、特定の音声の発生方向を検出する方向検出部と、特定の音声を擬似した擬似音声の音声信号を生成する音源部と、音声信号を再生して音声を発音する複数の車内スピーカと、音声信号を各車内スピーカ毎に音量を可変して供給する音響処理部と、特定の音声の発生方向の検出結果に基づいて各車内スピーカに音声信号を供給するように音響処理部に設定する制御部と、からなることを特徴とする。
【0008】
この発明では、自動車の車外にマイクを設置する。音声認識部はマイクが集音する音声のうち例えば緊急車両の警報音のみを選別する。さらに、方向検出部は各マイクから警報音の発生方向を割り出す。車内では検出した警報音の方向に応じて各スピーカの音量をコントロールして擬似警報音を発音し、音場を形成する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、自動車の現在位置検出機能と地図データ参照機能と地図データを表示する表示機能とからなるナビゲーションシステムをさらに備え、前記制御部は、特定の音声の発生方向の検出結果に基づいて特定の音声の発生位置を地図データ上に表示するようにナビゲーションシステムに指示することを特徴とする。
【0010】
この発明では、上記発明において、検出した緊急車両の位置を基にして、ナビゲーションシステムのディスプレイ上に緊急車両の位置を表示する。これにより、運転者はより詳細に緊急車両の接近状態を認識することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、緊急車両が接近する方向に対応した音場を車内に形成するため、運転者は緊急車両の接近方向を音声によって正確に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の緊急車両有無通報装置について図を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は本実施形態の緊急車両有無通報装置を備えた自動車の模式図である。同図中における自動車1は車体外部に複数の車外マイク2FL、2FR、2RL、および2RRを備えている。各車外マイクは同図のように車体の前後左右の4隅に配置され、各々が車体外部の音声を集音する。各車外マイクは例えば平面型コンデンサマイクからなる。平面型コンデンサマイクとは、振動板が振動することで生じる内部の電極の静電容量の変化によって音声信号を取り出すことができるものである。平面型コンデンサマイクを用いることで自動車のボディに設置することが可能であり、外見上の美観を維持したまま車体外部に設置することができる。また、車外マイクはさらに多数設置してもよい。設置数を増やすことでより詳細に外部の音声を集音することができる。
【0014】
なお、車外マイクの設置位置は車体の前後左右4隅に限るものではない。例えば単一指向性を有するマイクを天井等に4方向に向けて設置するようにしてもよい。自動車車外の音声を集音でき、各方向の音声を集音できるものであればどのようなものであってもよい。
【0015】
図2は自動車車内の模式図である。同図のように、自動車車内の前後左右の4隅に車内スピーカ4FL、4FR、4RL、および4RRが設置されている。各車内スピーカは例えば平面型コンデンサスピーカからなる。平面型コンデンサスピーカは、上記の平面型コンデンサマイクと同様のものであり、ここでは音声信号を付加することで振動板を振動させて音声を発音するものである。平面型コンデンサスピーカを用いることで、天井等車内の内装に面一で設置することが可能であり、車内空間を広くすることが可能である。また車内スピーカはさらに多数設置してもよい。上記の車内スピーカはカーオーディオが再生する楽音を発音するものであると同時に、後述する緊急車両の接近状態を運転者3に通知するための音声も発音する。
【0016】
なお、本実施形態では車外マイクと車内スピーカに平面型コンデンサマイクと平面型コンデンサスピーカを用いた例を示すが、これに限らずに外部の音声を集音でき、車内に音声を発音できるものであればどのようなものであってもよい。
【0017】
図3は本実施形態の緊急車両有無通報装置のブロック図である。上記の車外マイク2は警報音認識部5に接続されている。警報音認識部5は車外マイク2FL、2FR、2RL、および2RRが集音した音声から緊急車両が発する警報音のみを認識するものである。例えばバンドパスフィルタ等を使用して警報音の近接周波数のみ音声を集音し、あらかじめメモリ(図示せず)等に記憶してある警報音の音声パターンと比較する。パターン比較方法は例えば隠れマルコフモデル等の確率モデルを用いる。
【0018】
音源部9は制御部7に従って擬似警報音の音声情報を音声信号としてミキサ10に出力する。音声情報は例えばPCM(Pulse Code Modulation)データである。すなわち音源部9は内部に記憶しているPCMデータから音声信号を生成するPCM音源である。なお、PCM音源に限らず、どのような音源であってもよい。さらにカーオーディオ8からはミキサ10に音声信号が出力される。カーオーディオ8は運転者等が好みで運転中に聴く楽音を再生するものである。ミキサ10は音声信号を車内スピーカ4FL、4FR、4RL、および4RRに出力して車内に音声を発生させる。
【0019】
また、ミキサ10は制御部7に従って擬似警報音の音声信号が入力されたときにカーオーディオ8からの音声信号の入力レベル、すなわちオーディオ楽音の音量を下げて擬似警報音の音声信号を出力する。このとき、制御部7は緊急車両の位置情報を基にして各車内スピーカに擬似警報音の音声信号の出力レベルを個別に設定する。緊急車両の警報音であると判定された場合、音声信号が方向検出部6に伝達される。方向検出部6は各車外マイクの音声入力レベルによって緊急車両の警報音発生方向および距離を推定し、制御部7に緊急車両の位置情報として伝達する。例えば左前方の車外マイク2FLの音声入力レベルが最も高い場合は左前方に緊急車両が存在すると判断する。これにより車内に音場を形成し、運転者に緊急車両の存在方向と接近距離を認識させる。
【0020】
図4は本実施形態の緊急車両有無通報装置の動作を示したフローチャートである。まず、車外マイクが集音した音声から緊急車両が発する警報音を認識する処理を行う(s1)。警報音を認識しないときは最初から処理を繰り返す。上述のように、車外マイクから集音した音声の周波数から警報音のみを認識する。警報音が認識されると、各車外マイクの音声入力レベルを調査し、緊急車両の存在方向と存在距離を検出して緊急車両の位置情報として制御部7に出力する(s2)。
【0021】
制御部7は音源部9から擬似警報音の音声情報を音声信号としてミキサ10に出力する指示を行う(s3)。その後、各車内スピーカに発音する音声をミキシングする(s4)。ここでは上述のように、運転者がオーディオ楽音を聴いている場合はカーオーディオ8からの音声信号の入力レベルを下げる処理を行う。また、緊急車両の位置情報を基に音声信号の各車内スピーカへの出力レベルを設定する。各車内スピーカは入力された音声信号を再生して車内に音声を発音する(s5)。
【0022】
その後、車外マイクで集音している警報音の総入力レベルが低下したかを判断する(s6)。ここでは緊急車両が遠ざかる方向に移動しているかどうかを判断する。上記のように警報音の入力レベルから判断してもよいし、例えばドップラー効果を利用する方法も考えられる。その場合、警報音認識部5は警報音の周波数変化分を検出する。緊急車両が遠ざかる方向に移動していると判断されたときは発音中の擬似警報音の音量をフェードアウトしながらオーディオ楽音の音量をフェードインして元の音量に戻す処理を行う(s7)。
【0023】
なお、本実施形態では擬似警報音を車内スピーカ4から発音する例を示したが、車外マイクで集音した警報音をそのまま各車内スピーカに音量を割り当てて発音するようにしてもよい。あるいは、所定の距離以内に緊急車両が接近した時に限り、警報音をそのまま各車内スピーカに音量を割り当てて発音するようにしてもよい。
【0024】
また、緊急車両は1種類に限定するものではなく、救急車や消防車等それぞれに適用するものであってもよい。それぞれの警報音を擬似した音声を発音すればよい。
【0025】
図5は緊急車両通報装置の他の構成を示したブロック図である。同図のように上述の緊急車両通報装置における構成に加えて、ナビゲーションシステム11が制御部7に接続されている。ナビゲーションシステム11はいわゆるGPS(Global Positioning System)やディスプレイ等からなり、自車の位置を特定して地図データを基にし、ディスプレイに地図と自車位置を表示するものである。
【0026】
この実施形態では、緊急車両の警報音を認識したときに上述した擬似警報音を車内スピーカから発音する動作に加えて、ナビゲーションシステム11のディスプレイに緊急車両の存在位置を表示する。この場合、制御部7は緊急車両の位置情報と、GPSで特定されている自車の位置を基にして緊急車両の地図データ上の位置を特定する。なお、位置を特定せずに緊急車両が近づいているという表示をするだけでもよい。また、この場合においても緊急車両は1種類に限定するものではなく、救急車や消防車等それぞれに適用するものであってもよい。それぞれの緊急車両の画像データをナビゲーションシステム11のディスプレイに表示すればよい。
【0027】
なお、緊急車両以外の音声を認識するようにしてもよい。例えば車外マイクが集音した音声のうち、踏み切りの警報音をさらに認識するようにしてもよい。踏み切りの警報音を認識した場合、自動車の窓を少し開け、運転者が実際の踏み切りの警報音を認識できるようにする。このような動作を行う緊急車両通報装置について以下説明する。
【0028】
図6はウィンドウ制御部を備えた緊急車両通報装置のブロック図である。同図のように上述の緊急車両通報装置における構成に加えて、警報音認識部5にはウィンドウ制御部12が接続されている。ウィンドウ制御部12は自動車のパワーウィンドウ機材に接続されており、運転席側の窓の開閉をパワーウィンドウ機材に指示する。
【0029】
この構成における緊急車両通報装置では、緊急車両の警報音を認識したときは上述した擬似警報音を車内スピーカから発音する動作を行うが、踏み切りの警報音を認識したときは警報音認識部5はウィンドウ制御部12に踏み切りの接近情報を伝達する。ここでは踏み切りの警報音の発生方向は特定しない。その後、ウィンドウ制御部12はパワーウィンドウ機材に運転席側の窓を開ける指示を行う。これにより、運転者は実際の踏み切りの警報音を認識することができる。また、警報音認識部5がさらに雨音を認識するようにして、雨天時の場合は窓を開けないようにすることも可能である。なお、降雨センサ(図示せず)を自動車車外に設置し、ウィンドウ制御部12に接続して降雨を感知した時には窓を開けないようにすることも可能である。
【0030】
以上のように本実施形態の緊急車両通報装置は、複数の車外マイクによって緊急車両の警報音の発生方向と距離を検出して、複数の車内スピーカに音場を形成して発音するため、緊急車両の接近方向、接近状態を運転者が直感的に認識することができる。また、ナビゲーションシステムと連動して緊急車両の位置を表示することで、より詳細に緊急車両の接近状態を認識することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】自動車の模式図
【図2】自動車車内の模式図
【図3】緊急車両通報装置のブロック図
【図4】緊急車両通報装置の動作を示したフローチャート
【図5】緊急車両通報装置の他の構成を示したブロック図
【図6】ウィンドウ制御部を備えた緊急車両通報装置のブロック図
【符号の説明】
【0032】
1−自動車
2FL−左前方車外マイク
2FR−右前方車外マイク
2RL−左後方車外マイク
2RR−右後方車外マイク
3−運転者
4FL−左前方車内スピーカ
4FR−右前方車内スピーカ
4RL−左後方車内スピーカ
4RR−右後方車内スピーカ
5−警報音認識部
6−方向検出部
7−制御部
8−カーオーディオ
9−音源部
10−ミキサ
11ーナビゲーションシステム
12−ウィンドウ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車外の音声を集音する集音部と、
集音部が集音した音声のうち特定の音声を認識する音声認識部と、
特定の音声の発生方向を検出する方向検出部と、
特定の音声を擬似した擬似音声の音声信号を生成する音源部と、
音声信号を再生して音声を発音する複数の車内スピーカと、
音声信号を各車内スピーカ毎に音量を可変して供給する音響処理部と、
特定の音声の発生方向の検出結果に基づいてそれぞれの車内スピーカに音声信号を供給するように音響処理部に設定する制御部と、からなる音声認識通報装置。
【請求項2】
自動車の現在位置検出機能と地図データ参照機能と地図データを表示する表示機能とからなるナビゲーションシステムをさらに備え、
前記制御部は、特定の音声の発生方向の検出結果に基づいて特定の音声の発生位置を地図データ上に表示するようにナビゲーションシステムに指示する請求項1に記載の音声認識通報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−92482(P2006−92482A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280331(P2004−280331)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】