説明

駆動装置及び画像形成装置

【課題】より長い時間ギヤ同士の接触部に潤滑材を介在させ円滑な駆動ができるものとする。
【解決手段】ウォーム24とはす歯ギヤ27とに潤滑材が塗布されて潤滑され、はす歯ギヤ27は、出力軸26方向沿って移動可能に配置されていると共に、ウォーム24の回転により前記はす歯ギヤが受ける軸方向の力に抗する方向にはす歯ギヤ27を付勢するばね部材28を備え、前記はす歯ギヤ27の歯幅は、はす歯ギヤ27が前記ウォーム24と噛合いう幅寸法と軸方向に移動可能な幅寸法の和以上としてる。ばね部材28は、潤滑材が十分に塗布されたウォーム24の回転によるスラスト力によりはす歯ギヤ27が移動する位置と、潤滑材が塗布されていない場合のウォーム24の回転によるスラスト力によりはす歯ギヤ27が移動する位置の差が、ウォーム24とはす歯ギヤ27の噛合い幅以上になるように付勢力が調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置及び画像形装置に係り、特にウォームとはす歯ギヤを備えた駆動装置及びこの駆動装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にウォームを使用して回転を伝達する場合、一般的に相手ギヤにウォームホイールを用いるが、ウォームホイールを樹脂で成形するには特殊な金型を用いる必要があり、加工に手間がかかる他、ウォームとウォームホイールの噛合い位置を正確に調整する必要があり組立にも手間がかかる。
【0003】
ここで、噛合い位置の調整不要にするには、ギヤを保持するギヤ保持具の寸法精度を上げなくてはならず、ギヤ保持具の加工に手間がかかることになる。そのため、ウォームホイールの代わりに、はす歯ギヤを使用する駆動装置が知られている。しかし、はす歯ギヤを使用した場合、ウォームホイールを使用した場合と比べて、ギヤ同士の接触面積が小さくなり、そのため、同じトルクを伝達する場合においても、歯面にかかる面圧が大きくなる。このため、ギヤが削れ易くなるという不具合がある。これに対処するため、ウォームギヤやはす歯ギヤにグリス等の潤滑材を塗布することが行われている。
【0004】
図8はウォームとはすばギヤを使用した駆動装置を示す模式図、図9はウォームとはす歯ギヤの噛合状態を示す模式図である。この駆動装置50は、ギヤ保持具51に配置したDCモータ52の軸53にウォーム54を取り付け、ギヤ保持具51に配置した軸受55,55を配置し、この軸受55に出力軸56に取り付けたはす歯ギヤ57を配置したものである。
【0005】
しかし、ウォーム54とはす歯ギヤ57の摺動位置は、図9に示すように、ウォーム54の回転により生じるスラスト力Aで、はす歯ギヤ57が軸56方向に移動し、ギヤ保持具51に突き当たった場所で回転してしまうことになる。このため、はす歯ギヤ57は、軸方向の常に同じ噛合個所aで噛合することとなる。このため、噛合個所aに塗布されたグリスなどの潤滑材は、ウォーム54の回転接触により、排除されてしまう。このため、ウォーム54とはす歯ギヤ57の噛合個所aでは潤滑材が少なくなり、最悪の場合にはなくなってしまう。これでは、ウォーム54、はす歯ギヤ57、又は、両者共に削れが生じ、異音やギヤ削れ等の不具合を引き起こすおそれがある。ここで、はす歯ギヤ57へのグリスの塗布は、本来、噛合個所aだけにされていればよいが、噛合個所aのみの狭い範囲にグリスを塗布することは困難であるために、噛合個所a以外のはす歯ギヤ57軸方向のほぼ全域にわたって塗布されることが多い。また、ウォームにグリスが塗布される場合もあるが、ギヤの接触面が高圧になるために、余計に塗ったグリスは、はす歯ギヤとウォームの接触個所と、ウォーム回転方向の上流と下流に塗られた状態になる。
【0006】
特許文献1には、従動ギヤを精度よく駆動するため、駆動源によって回転駆動されるはすば歯車からなる駆動ギヤと、駆動ギヤと噛合して駆動力の伝達を受けるはすば歯車としての従動ギヤと、を有する駆動伝達装置であって、回転時のスラスト力によって従動ギヤが変形する方向とは反対側の面に、従動ギヤより大きい直径を有したフランジ部を従動ギヤと同軸状、且つ一体的に固定し、該従動ギヤの外周から張り出したフランジ部の一面を駆動ギヤの一面と摺接させつつ回転駆動させる構成とした駆動伝達装置が記載されている。
【0007】
特許文献2には、塗布されたグリスを無駄なく有効に使用するため、ギヤ噛合部の潤滑装置を、ピニオンと被駆動ギヤ(いずれもヘリカルギヤ)とを備え、これらの噛合部にグリスが塗布されて潤滑され、被駆動ギヤは、静止軸に回転自在に且つ軸方向移動可能に支持され、被駆動ギヤには環状のグリス溜が配設されており、ピニオンには、グリス溜部材がピニオンと一体回転可能に且つ、軸方向移動可能に嵌合支持され、グリス溜部材は圧縮コイルばねにより被駆動ギヤに向う軸方向に付勢され、ピニオンは正逆回転可能な電動モータにより正逆回転駆動されるものが記載されている。
【0008】
特許文献3には、極めて簡素な構造でありながら、ギヤに対して常に確実に給油することができるようにするため、ウォームと、このウォームに噛合するウォームホイールとからなるウォームギヤを対象とする潤滑構造であり、ウォームの外周面の一部に当接される、潤滑剤を含浸した柔軟な多孔質材料からなる給油部材を備えたものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような、潤滑剤切れによる不具合を解消するため、オイルボックスやグリスボックスの設置、外部からの潤滑材の供給を行う必要がある。しかし、オイルボックスやグリスボックスを配置することは、省スペース化、低コスト化、メンテナンスフリー化を妨げることとなる。
【0010】
そこで、本発明は、より長い時間ギヤ同士の接触部に潤滑材を介在させ円滑な駆動ができる駆動装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、駆動ギヤであるウォームと被駆動ギヤであるはす歯ギヤとを備え、ウォーム及びはす歯ギヤの少なくとも一方に潤滑材が塗布されており、前記はす歯ギヤは、はす歯ギヤの回転軸方向沿って移動可能に配置されていると共に、前記ウォームの回転により前記はす歯ギヤが受ける軸方向の力に抗する方向にはす歯ギヤを付勢する付勢手段を備えることを特徴とする駆動装置である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の駆動装置において、前記はす歯ギヤの歯幅は、はす歯ギヤが前記ウォームと噛合い幅寸法と軸方向に移動可能な幅寸法の和以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の駆動装置において、前記付勢手段は、潤滑材が十分に塗布されたウォームの回転によるスラスト力によりはす歯ギヤが移動する位置と、潤滑材が塗布されていない場合のウォームの回転によるスラスト力によりはす歯ギヤが移動する位置の差が、ウォームとはす歯ギヤの噛合い幅以上になるように付勢力が調整されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の駆動装置において、前記付勢手段は、前記はす歯ギヤと一体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の駆動装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る駆動装置によれば、はす歯ギヤは、はす歯ギヤの回転軸方向沿って移動可能に配置されていると共に、付勢手段は前記ウォームの回転により前記はす歯ギヤが受ける軸方向の力に抗する方向にはす歯ギヤを付勢するから、はす歯ギヤとウォームの潤滑が不良になることにより増すスラスト力によりはす歯ギヤは軸に沿って移動するので、広い範囲にわたって配置された潤滑剤を使用することができ、長時間にわたる潤滑を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に係る画像形成装置の構成を示す断面構成図である。
【図2】実施例に係るプロセスカートリッジ概略構成を示す断面構成図である。
【図3】実施例に係る駆動装置を示す模式図である。
【図4】駆動装置におけるウォームとはす歯歯車の噛合領域を示す模式図である。
【図5】はす歯ギヤの噛合領域を示す模式図である。
【図6】第2の実施例に係る駆動装置を示す模式図である。
【図7】第3の実施例に係る駆動装置を示す模式図である。
【図8】従来の駆動装置を示す模式図である。
【図9】従来の駆動装置におけるウォームとはす歯ギヤの噛合領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の駆動装置は、駆動ギヤであるウォームと被駆動ギヤであるはす歯ギヤとの噛合部に潤滑材が塗布されて潤滑され、前記はす歯ギヤは、はす歯ギヤの回転軸方向沿って移動可能に配置されていると共に、前記ウォームの回転により前記はす歯ギヤが受ける軸方向の力に抗する方向にはす歯ギヤを付勢する付勢手段を備える。
【0019】
また、本発明の駆動装置は、はす歯ギヤの歯幅をはす歯ギヤが前記ウォームと噛合い幅寸法と軸方向に移動可能な幅寸法の和以上としたものである。
【0020】
また、本発明の駆動装置は、その付勢手段を潤滑材が十分に塗布されたウォームの回転によるスラスト力によりはす歯ギヤが移動する位置と、潤滑材が塗布されていない場合のウォームの回転によるスラスト力によりはす歯ギヤが移動する位置の差が、ウォームとはす歯ギヤの噛合い幅以上になるように付勢力が調整されているものである。
【0021】
また、本発明の駆動装置は、その付勢手段が前記はす歯ギヤと一体に形成されているものである。そして、本発明の画像装置は、前記駆動装置を備えるものである。
【実施例】
【0022】
以下実施例に係る画像形成装置について説明する。図1は本発明の実施例に係る画像形成装置の構成を示す断面図、図2は実施例に係るプロセスカートリッジ概略構成を示す図である。
【0023】
まず、画像形成装置がカラー画像を得る過程について説明する。画像形成装置であるカラー画像形成装置には、図1、図2に示すように、4つの画像ステーションであるプロセスカートリッジ11a,11b,11c,11dが配置され、各画像ステーションには像担持体(感光体ドラム)10a,10b,10c,10dをそれぞれ有している。またこの感光体ドラム10a,10b,10c,10dの回りには専用の帯電手段(耐電ローラ)15a,15b,15c,15d、現像ユニット16a,16b,16c,16d、クリーニングユニット、14a,14b,14c,14dを有する。トナーボトル2はトナーを補給する容器であり、図中左からイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(BK)のトナーが充填されており、ここから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色の現像ユニット16a,16b,16c,16dに補給される。
【0024】
転写紙8先端が、給紙コロ7でフィードされレジストローラ6まで到達すると、図示しないセンサによって検知され、この検出信号でタイミングを取りながら、レジストローラ6によって転写紙8を2次転写ローラ5と中間転写ベルト1のニップに搬送する。なお、あらかじめ帯電ローラ15a,15b,15c,15dによって一様に帯電された感光体ドラム10a,10b,10c,10dは、書き込みユニット9によってレーザー光で露光走査され、感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に静電潜像が作られる。各静電潜像は、それぞれ各色の現像ユニット16a,16b,16c,16dにより現像され、これにより感光体ドラム10a,10b,10c表面にイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナー像が形成される。
【0025】
次に転写ローラ13に電圧が印加され各感光体ドラム10a,10b,10c,10d上のトナーが、中間転写ベルト1上に順次転写されていく。このとき、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト1の同じ位置に重ねて転写されるように、上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト1上に形成された画像は、2次転写ローラ5の位置まで搬送され転写紙8に2次転写される。各色のトナー像が転写された転写紙8は定着ユニット4に搬送されて熱定着され排紙ローラ3で排紙される。
【0026】
また、感光体ドラム10a,10b,10c,10d上の残留トナーは、それぞれのクリーニングユニット14a,14b,14c,14dによって、また中間転写ベルト1上の残留トナーはクリーニング手段12によってクリーニングされ、これらの廃トナーは各クリーニングユニット14内の廃トナー搬送スクリュにより、プロセスカートリッジ11の廃トナー排出パイプ18の廃トナー排出口19から画像形成装置に設けられた廃トナーボトル20に排出される。
【0027】
本例に係る駆動装置は、前記クリーニングユニット14に配置される廃トナー搬送スクリュを駆動するために用いられる。なお、他の回転駆動機構の駆動装置として使用することができることはもちろんである。
【0028】
図3は実施例に係る駆動装置を示す模式図、図4は駆動装置におけるウォームとはす歯歯車の噛合領域を示す模式図、図5ははす歯ギヤの噛合領域を示す模式図である。実施例に係る駆動装置20は上述した駆動装置30と同様にギヤ保持具に保持されたDCモータ(共に図示していない)からの出力を、図3に示すように、同保持具に保持されたウォーム24と、はす歯ギヤ27を介して軸受25,25に軸支された出力軸26に伝達する。はす歯ギヤ27は、ウォームホイールと異なり、図4に示すように、その軸方向のどの位置でも、ウォーム24と噛合させることができる。本例に係る駆動装置20は、その出力軸26を前記画像形成装置の廃トナー搬送用スクリュに接続されその駆動に使用される。
【0029】
本例では、はす歯ギヤ27は、出力軸26の軸方向に移動できる構成としている。これは、出力軸26のはす歯ギヤ27が動く個所を、その断面形状に平面部が形成された略D字形状とし、はす歯ギヤ27の軸貫通穴部の形状を前記出力軸26が嵌合する断面略D字形状とすることにより実現できる。この構成により、出力軸26の不要な動きは制限され、それ下段の動力伝達には影響を与えない。なお、はす歯ギヤ27を出力軸26に固定して、出力軸26を軸方向に沿って射移動させることもできる。このような、はす歯ギヤ27を移動させる構造は使用用途に応じて変更することができる。
【0030】
はす歯ギヤ27には、グリスが塗布されており、接触部の磨耗を防止している。この例では、グリスの塗布範囲は、はす歯ギヤ軸方向のほぼ全域にわたるものとする。更に、駆動装置20の出力軸26には、一方の軸受25との間にばね部材28が配置されている。このばね部材28は、ウォーム24の回転により噛合するはす歯ギヤ27に発生するスラスト力Fに抗する位置に配置される。
【0031】
このような構成の駆動装置20において、ウォーム24とはす歯ギヤ27とが噛合すると、ウォーム24の回転により、はす歯ギヤ27にスラスト力Fが作用し、はす歯ギヤ27は、ばね部材28の抗力Bと釣り合う噛合個所aまで移動して噛合した状態となる。ここで、ウォーム24と出力軸26の噛合により、グリスが減少すると、ウォーム24とはす歯ギヤ27の噛合個所aでの摩擦係数が増えるために、伝達効率が下がることとなる。
【0032】
そして、出力軸26では、従前と同じ負荷を回転させるため、ウォーム24の回転トルクが上昇する。また、はす歯ギヤ27のスラスト力は、ウォームの接線力(=2000*ウォームトルク/ウォームピッチ円直径)と同じであるから、前記摩擦係数の上昇と共に、ウォーム24のトルクが増大し、はす歯ギヤ27のスラスト力Fが増えることとなる。
【0033】
ここで、ウォーム24から受けるスラスト力「Fw」とすると、ばね部材28は、スラスト力「Fw」を受けた場合、ばね定数Ksより定まる量だけ圧縮され、これにより、はす歯ギヤ27の移動量が定まる。グリスが十分にある際のスラスト力を「Fwg」とすると、ばねの縮み量「xg」は、「xg=Fwg/Ks」となる。ばねの縮み量「xg」の際のはす歯ギヤ27の位置を「位置(1)」とする。
【0034】
一方、グリスがなくなった場合のスラスト力を「Fwn」とすると、ばねの縮み量「xn」は「xn=Fwn/Ks」となる。ばねの縮み量「xn」の際のはす歯ギヤ27の位置を「位置(2)」とする。
【0035】
即ち、摩擦係数の増大により、ばねの縮み量が大きくなり、はす歯ギヤ27は、「位置(1)」から「位置(2)」に移動することになる。このため、ウォーム24とはす歯ギヤ27の噛合領域は、図5に示すように、はす歯ギヤの軸方向の「領域(1)」と異なる「領域(2)」となる。
【0036】
このとき、はす歯ギヤ27には、出力軸26の軸方向のほぼ全域にわたってグリスが塗布されているから、上記のように摩擦係数が増大し、ばね部材28が縮むにつれ、はす歯ギヤ27が移動する。
【0037】
この状態でグリスが塗布された領域(2)でウォーム24と出力軸26とが噛合するから、ウォーム24は、領域(2)に塗布されていたグリスを掻き取り、ウォーム24とはす歯ギヤ27はこのグリスで潤滑され摩擦係数が低下する。すると、はす歯ギヤ27のスラスト力が小さくなり、はす歯ギヤ27は、ばね部材28により押し戻される。このときウォーム24には、領域(2)で掻き取ったグリスが塗布されているので、その後しばらくの間、良好な潤滑を維持することができる。その結果、グリス切れによる磨耗の増大や、異音を長期にわたって防止することができる。
【0038】
ここで、前記廃トナー搬送用のスクリュは、内部の廃トナー量により駆動トルクが変動することが多い。即ち、廃トナー量が少ないと駆動トルクが小さくなり、廃トナー量が多いと駆動トルクが大きくなる。このため、駆動トルクが大きくなると駆動装置における各ギヤ間の接触面の面圧が大きくなり、磨耗しやすいが、本実施例に係る駆動装置20を用いることで、駆動トルクが大きくなるような場合でも、トルク変動によりはす歯ギヤが移動し、接触面へのグリス塗布を行うことができ、廃トナー搬送用スクリュ用の駆動装置をより長寿命にわたって使用することができる。
【0039】
ここで、はす歯ギヤ27の歯幅は、はす歯ギヤが移動した場合でも噛合いうように設定することが必要である。より好ましくは、ギヤ保持具での、はす歯ギヤ27の可動範囲全てにおいてウォーム24が噛合するようにする。前記ばね部材28のばね定数は、できるだけ小さい方が、接触面のグリス量の変化による、はす歯ギヤの移動距離が大きくなるために、好ましいが、あまり小さいと、グリスが十分に塗られている場合でもばねが縮みきってしまい、接触面のグリス量が減少してもはす歯ギヤが移動することができなくなってしまう。
【0040】
このため、グリスが十分に接触面にある場合(潤滑状態I)と、接触面のグリスが非常に少ない、又は無い場合(潤滑不良状態II)との両者におけるスラスト荷重を測定あるいは計算し、それぞればねの縮み量(縮み量I、II)を計算して移動距離を算出しておく。そして、その移動距離から、ウォーム24とはす歯ギヤ27の噛合い以上になるように、ばね定数を設定する。これにより、はす歯ギヤ27が移動することによって、より確実に接触面にグリスを供給することができる。
【0041】
なお、ばね部材28としては、金属製のコイル圧縮ばねが、耐久性が良好で、製作がしやすく、また、ばね定数の設定がしやすいために好ましいが、ばね部材としては板ばねでもよい。また、材料も、樹脂製やゴム部材、スポンジ部材を用いてもよい。
【0042】
図6は第2の実施例に係る駆動装置を示す模式図である。本例に係る駆動装置30は、ばね部材31として、引張りばねを使用し、ウォーム24によるスラスト力Fの上流側に取り付けている。この例では、ばね部材31は、その一端を軸受25に形成された係止部32に取り付けると共に、他端を出力軸26に配置した係止溝33に係止して、出力軸26を引き方向に付勢する。本例によっても前記第1実施例と同様に、グリス切れによる磨耗の増大や、異音を長期にわたって防止することができる。
【0043】
図7は第3の実施例に係る駆動装置を示す模式図である。本例に係る駆動装置40は、ばね部材42を樹脂製とし、同じく樹脂製としたはす歯ギヤ41と一体に成形するものである。この例では、ばね部材42は板状であり、はす歯ギヤ41から外側に延設され軸受25の内側面に当接して、はす歯ギヤ41に抗力Bを付与する。なお、ばね部材42の軸受25との接触部42aは、軸受25との接触抵抗を低減するため球状としている。を本例によれば、前記第1及び第2の実施例と同様の作用効果を得ることができる他、部品点数を低減させることができる。
【0044】
なお、前記各例ではばね部材は、はす歯ギヤの片側に設けたが、はす歯ギヤの両側に設けることができる。この場合、ウォームの回転によるスラスト荷重の下流側にばね定数の大きなばね、上流側にそれより小さなばね定数のばねを取り付けることが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
20:駆動装置
24:ウォーム
25,25:軸受
26:出力軸
27:はす歯ギヤ
28:ばね部材
30:駆動装置
31:ばね部材
32:係止部
33:係止溝
40:駆動装置
41:はす歯ギヤ
42:板ばね部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2006−163198公報
【特許文献2】特開2007−218400公報
【特許文献3】特開2005−331075公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ギヤであるウォームと被駆動ギヤであるはす歯ギヤとを備え、ウォーム及びはす歯ギヤの少なくとも一方に潤滑材が塗布されており、前記はす歯ギヤは、はす歯ギヤの回転軸方向沿って移動可能に配置されていると共に、前記ウォームの回転により前記はす歯ギヤが受ける軸方向の力に抗する方向にはす歯ギヤを付勢する付勢手段を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記はす歯ギヤの歯幅は、はす歯ギヤが前記ウォームと噛合い幅寸法と軸方向に移動可能な幅寸法の和以上であることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、潤滑材が十分に塗布されたウォームの回転によるスラスト力によりはす歯ギヤが移動する位置と、潤滑材が塗布されていない場合のウォームの回転によるスラスト力によりはす歯ギヤが移動する位置の差が、ウォームとはす歯ギヤの噛合い幅以上になるように付勢力が調整されていることを特徴請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記はす歯ギヤと一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の駆動装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210065(P2010−210065A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59771(P2009−59771)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】