説明

高分子化合物、ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】高解像性、高感度であって、かつパターン倒れが抑制されたレジストパターンを形成できる高分子化合物および該高分子化合物を含むポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】脱保護エネルギーが3級エステルの保護基に比べて低い特定の構造単位(a1)、ラクトン含有環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位(a2)及び、単位(a1)と単位(a2)以外の単位であって、脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基を含み、かつ極性基を含まない、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位(a3)を含む高分子化合物を用いてレジスト組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザー(248nm)が量産の中心となり、さらにArFエキシマレーザー(193nm)が量産で導入され始めている。また、Fエキシマレーザー(157nm)やEUV(極端紫外光)、EB(電子線)等を光源(放射線源)として用いるリソグラフィー技術についても研究が行われている。
このような短波長の光源用のレジストには、微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性と、このような短波長の光源に対する感度の高さが求められている。このような条件を満たすレジストの1つとして、ベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤(以下、PAGという)とを含有する化学増幅型レジストが知られており、化学増幅型レジストには、露光部のアルカリ可溶性が増大するポジ型と、露光部のアルカリ可溶性が低下するネガ型とがある。
【0003】
これまで、化学増幅型レジストのベース樹脂としては、KrFエキシマレーザー(248nm)に対する透明性が高いポリヒドロキシスチレン(PHS)の水酸基を酸解離性の溶解抑制基で保護した樹脂(PHS系樹脂)が用いられてきた。しかし、PHS系樹脂は、ベンゼン環等の芳香環を有するため、248nmよりも短波長、たとえば193nmの光に対する透明性が充分ではない。そのため、PHS系樹脂をベース樹脂成分とする化学増幅型レジストは、たとえば193nmの光を用いるプロセスでは解像性が低いなどの欠点がある。
そのため、現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)が主に用いられており、特に、下記特許文献1に示されるように、酸解離性溶解抑制基として(メタ)アクリル酸の第3級エステル化合物、例えば2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等から誘導される構成単位が一般的に用いられている。該構成単位は、酸解離性溶解抑制基の脱離エネルギーが高いことで知られている。
【特許文献1】特許第2881969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用される酸解離性溶解抑制基を有する樹脂として、前記3級エステル化合物に比べて酸解離性溶解抑制基の脱離エネルギーが低い、(メタ)アクリル酸の水素原子がアセタール基(アルコキシアルキル基)で置換された構成単位を有する樹脂が注目され始めている。該構成単位を有する樹脂を用いることで微細なパターンを形成できるが、レジストパターンのパターン倒れの問題があり、改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高解像性、高感度であって、かつパターン倒れが抑制されたレジストパターンを形成できる高分子化合物および該高分子化合物を含むポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の3種の構成単位を有する高分子化合物及び該高分子化合物を含むポジ型レジスト組成物を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の態様は、下記一般式(1)又は一般式(1)’
【化1】

[式中、Rは水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又は炭素数20以下のフッ素化低級アルキル基を表す。Rは置換基を有していてもよい20員環以下の環式基であり、nは0または1〜5の整数を表す。]
【化2】

[式中、Rは水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又は炭素数20以下のフッ素化低級アルキル基を表す。Rは置換基を有していてもよい20員環以下の環式基であり、nは0または1〜5の整数を表し、mは0又は1である。]で示される構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(a1)、
ラクトン含有単環または多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)及び、
前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)以外の構成単位であって、脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基を含み、かつ極性基を含まない、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を含む高分子化合物である。
【0007】
本発明の第2の態様は、基材樹脂成分(A)として前記第1の態様の高分子化合物と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(B)とを含有してなるポジ型レジスト組成物である。
【0008】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様のポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法である。
【0009】
なお、本発明において、「構成単位」とは重合体を構成するモノマー単位を意味する。 また、本発明において、「(α−低級アルキル)アクリル酸」とは、メタクリル酸等のα−低級アルキルアクリル酸と、アクリル酸の一方あるいは両方を意味する。ここで、「α−低級アルキルアクリル酸」とは、アクリル酸のα炭素原子に結合した水素原子が低級アルキル基で置換されたものを意味する。「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」についても同様である。
また、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
また、「露光」は放射線の照射全般を含む概念とする。
また、本特許請求の範囲、明細書において、「アルキル基」は特に断りがない限り、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、解像性、感度に優れ、パターン倒れが抑制されたレジストパターンを形成できる高分子化合物、ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
<第1の態様:高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、前記一般式(1)又は一般式(1)’
で示される構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(a1)、
ラクトン含有単環または多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)及び、
前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)以外の脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基を含み、かつ極性基を含まない(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を含む高分子化合物である。
【0012】
[構成単位(a1)]
前記一般式(1)又は一般式(1)’中、Rは、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の低級アルキル基又は、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のフッ素化低級アルキル基を表す。なお、フッ素化低級アルキル基は、アルキル基の一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換されたものであって、いずれでもよい。
Rはさらに好ましくは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
【0013】
nは0または1〜5の整数であり、好ましくは0又は1〜2の整数であり、さらに好ましくは0又は1である。
【0014】
は20員環以下(置換基を除いた基本環を構成する原子の数が20以下)の単環または多環の環式基であり、下限値は特に限定しないが3員環以上である。また、Rにおいて、その基本環には、置換基が結合していてもよい。置換基を有する場合は、水酸基、カルボキシ基、シアノ基などの極性基が好ましく、その中でも好ましいのは水酸基、カルボキシ基であり、特には水酸基である。また、Rはカルボニル基(C=O)等を有していてもよい。
また、Rにおいて、その基本環は、酸素、窒素等のヘテロ原子を含む複素環式基であってもよいし、脂環式基でもよい。好ましくは酸素及び/または窒素を含む複素環式基、または脂環式基であり、特に好ましくは脂環式基である。
において、その基本環としては、例えばArFポジ型レジスト材料として従来から知られている単環又は多環式の脂肪族環式基が使用可能である。なお、ここでの「脂肪族」とは、芳香族性を有しないことを示す意味である。
好適な前記単環の脂肪族環式基としては、まず、シクロヘキサン、シクロペンタン等のモノシクロアルカンから1個又は2個の水素原子を除いた基等が例示できる。前記多環の脂肪族環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個または2個の水素原子を除いた基等が例示でき、具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個または2個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0015】
さらに、前記一般式(1)又は一般式(1)’中の−CH−O−(CH−Rとしては、下記化学式で示される構造も好ましいものとして挙げられる。
【0016】
【化3】

【0017】
また、構成単位(a1)として、前記一般式(1)で表される構成単位であることが好ましく、その中でもさらに好ましくは、下記一般式(2)
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、R、nは前記と同じである。Xは極性基である。lは0または1〜3の整数を表す。]
で表される構成単位である。
【0020】
Xは好ましくは水酸基又はカルボキシ基である。また、Xは1価の基に限定されず、酸素原子(=O;当該酸素原子は、環を構成する炭素原子とともにカルボニル基を構成する)も好ましい。lは0または1であり、好ましくは0である。なお、Xがゼロである場合と同様、Xが酸素原子のものも好ましく、このときのlの好ましい数は1である。
【0021】
前記一般式(2)で表される構成単位のうち、最も好ましくは、下記一般式(3)〜(4)、一般式(3)’で表される構成単位が挙げられ、その中でも一般式(3)及び一般式(3)’で表される構成単位が、解像性やレジストパターン形状が良好となる点で好ましい。また、露光面積依存性についても良好となるため好ましい。また、SiON基板のような無機基板上でも、良好な解像性及びレジストパターン形状を有することから好ましい。露光面積余裕度とは、マスクの被覆率やセル内座標(装置内のセル内の周辺部 または中心部のいずれに位置するか)の異なりによって、レジスト形状や寸法が変化してしまう問題である。
本発明のアセタールタイプの保護基は、脱保護エネルギーが非常に低く、露光エネルギーのみで脱保護反応が進行することより、酸の拡散や失活の影響を受け難い為、露光面積余裕度が向上すると考えられる。
【0022】
【化5】

【0023】
[式中、Rは前記と同じである。]
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
[式中、Rは前記と同じである。]
【0027】
構成単位(a1)は、脱保護エネルギーが、3級エステルの保護基、例えば2−アルキル−2−アダマンチル基に比べて低いため、酸強度が弱くても微細パターンを解像することが可能であるといったメリットがある。
また、脱保護エネルギーが低いことから、触媒となる酸強度を弱くする事ができるため、酸発生剤の適用範囲を広げる事ができるという利点がある。
具体的には、例えばジアゾメタン系酸発生剤や、アニオン部にカンファースルホン酸イオンを有する酸発生剤等でも解離させることができる。
【0028】
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の高分子化合物中、構成単位(a1)の割合は、本発明の高分子化合物の全構成単位の合計に対して、10〜80モル%が好ましく、20〜60モル%がより好ましく、25〜50モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に微細なパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0029】
[構成単位(a2)]
本発明の高分子化合物においては、構成単位(a1)に加えてさらに、ラクトン含有単環または多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有する。
これにより、特にレジスト膜と基板との密着性が高められ、微細なレジストパターンにおいてもパターン倒れ、膜剥がれ等が起こりにくくなる。また、高分子化合物の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
構成単位(a2)がα−低級アルキルアクリル酸エステルの場合、α炭素原子に結合する低級アルキル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0030】
構成単位(a2)としては、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエステル側鎖部にラクトン環からなる単環式基またはラクトン環とこれに結合する脂環式基を有する多環式基が結合した構成単位が挙げられる。
なお、このときラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
そして、ラクトン含有単環または多環式基としては、具体的には例えば、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた単環式基や、ラクトン環含有ビシクロアルカン、ラクトン環含有トリシクロアルカン、及びラクトン環含有テトラシクロアルカンから水素原子を1つを除いた多環式基等が挙げられる。
具体的には、例えば以下の一般式(5)で表される構成単位等の、単環式のラクトン環からなる単環式基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、式(6)〜(9)で表される構成単位等の、ラクトン環を有する多環式基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等が挙げられる。
【0031】
【化8】

[式(5)中、R’は低級アルキル基または水素原子である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または低級アルキル基である。]
【0032】
【化9】

(式中、R’は前記に同じであり、oは0又は1である。)
【0033】
【化10】

(式中、R’は前記に同じである。)
【0034】
【化11】

(式中、R’は前記に同じである。)
【0035】
【化12】

(式中、R’は前記に同じである。)
【0036】
一般式(5)中、R’は、上述のα−低級アルキルアクリル酸エステルについての説明の低級アルキル基と同様である。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子または低級アルキル基であり、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
およびRの低級アルキル基としては、直鎖でも分岐でもよく、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0037】
また、このような一般式(5)〜(9)で表される構成単位の中では、近接効果の抑制・低減についての効果が優れる等の点では、一般式(5)で表される(α−低級アルキル)アクリル酸のγ−ブチロラクトンエステル、すなわちγ−ブチロラクトンの(α−低級アルキル))アクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
また、一般式(7)、(8)で表される(α−低級アルキル))アクリル酸のノルボルナンラクトンエステル、すなわちノルボルナンラクトンの(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位は、得られるレジストパターンの形状、例えば矩形性がさらに良好であるため、好ましい。このような一般式(5)〜(9)の中でも、一般式(5)で表される構成単位が本願発明の効果の観点から最も好ましく、その中でも、RおよびRは水素原子であって、ラクトン骨格上のα炭素にエステル結合を有する(α−低級アルキル)アクリル酸のγ−ブチロラクトンエステル、すなわちγ−ブチロラクトンの(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が最も好ましい。
【0038】
構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の高分子化合物中、構成単位(a2)の割合は、高分子化合物の全構成単位の合計に対して、10〜80モル%が好ましく、20〜60モル%がより好ましく、25〜50モル%が最も好ましい。下限値以上とすることにより本発明の効果に優れ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0039】
[構成単位(a3)]
構成単位(a3)は、前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)以外の構成単位であって、脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基を含み、かつ極性基を含まない、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
α−低級アルキル基については、構成単位(a2)の説明と同様である。
脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とは、露光前後の(A)成分全体の疎水性を高めてアルカリ溶解性を抑制する機能を有する構成単位である。
脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基とは、芳香族性を有しない環式基を有する基であって、(B)成分から発生した酸によって解離することがない基である。構成単位(a3)としては、例えば(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエステル部に当該脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基が結合した単位等が挙げられる。
すなわち、構成単位(a3)は、露光前の(A)成分全体のアルカリ溶解性を低減させるとともに、露光後に、(B)成分から発生する酸の作用により解離することなく、前記構成単位(a1)の酸解離性溶解抑制基の解離により(A)成分全体がアルカリ可溶性へと変化した際の(A)成分全体のアルカリ溶解性を、アルカリ不溶とならない範囲で低減する溶解抑制性を有する基を含む構成単位である。
具体的には、PEB(露光後加熱処理)後の純水リンスに対する接触角を向上(疎水性向上)させることができるユニットである。
また、構成単位(a3)は、極性基を含まないことが必要である。極性基とは、水酸基、カルボキシ基、シアノ基等である。
また、構成単位(a3)は酸解離性溶解抑制基を含まないことが好ましい。
【0040】
具体的には、前記構成単位(a3)は下記一般式(10)
【0041】
【化13】

[式中、R’は前記と同じである。Yは、炭素数1〜10のアルキル基を1〜3個有していてもよい、基本環の炭素数が4〜15の脂肪族環式基を表す。]
で示される構成単位である。
【0042】
Yは、基本環(置換基を除いた環構造)の炭素数が4〜15の脂肪族環式基(単環でも多環でもよい)であって、当該脂肪族環式基は、炭素数1〜10のアルキル基を1〜3個有していてもよい。ここで「脂肪族」とは芳香属性を持たないことを意味する。脂肪族環式基は、脂環式基であることが好ましい。
Yが有していてもよいアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは、直鎖又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Yにおいて、当該アルキル基の数は好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0043】
構成単位(a3)は、前記構成単位(a1)、構成単位(a2)とは重複しない。すなわち、構成単位(a1)における特定の酸解離性溶解抑制基、構成単位(a2)におけるラクトン基といった基をいずれも保持しない。
構成単位(a3)において、脂肪族環式基の基本骨格を構成する環式基としては、ArFポジ型レジスト材料として従来から知られている単環又は多環式の脂肪族環式基が使用可能である。前記単環の脂肪族環式基としては、シクロヘキサン、シクロペンタン等のモノシクロアルカンから1個又は2個以上の水素原子を除いた基等が例示できる。
前記多環の脂肪族環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個または2個以上の水素原子を除いた基等が例示でき、具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個または2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
これらの中でもシクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上入手しやすい点から好ましい。
【0044】
その中でも、特に下記一般式(11)〜(13)
【0045】
【化14】

【0046】
[式中、R’は前記と同じである。]
【0047】
【化15】

【0048】
[式中、R’は前記と同じである。]
【0049】
【化16】

【0050】
[式中、R’は前記と同じである。]
【0051】
から選ばれる少なくとも1種より誘導される構成単位が、工業上入手し易いなどの点で好ましい。
【0052】
これらの中でも、一般式(11)で表される構成単位は、得られるレジストパターンの形状、例えば矩形性が特に良好であるため好ましい。また、パターン倒れ抑制の点から好ましい。
【0053】
構成単位(a3)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の高分子化合物中、構成単位(a3)の割合は、高分子化合物の全構成単位の合計に対して、3〜50モル%が好ましく、5〜35モル%がより好ましく、15〜30モル%が最も好ましい。下限値以上とすることにより本発明の効果に優れ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0054】
また、本発明の高分子化合物は、以下の一般式(14)で表される構成単位と一般式(14)’で示す構成単位の少なくとも一方を含む高分子化合物であることが、本願発明の効果に優れる為好ましい。また、露光面積依存性についても良好となるため好ましい。また、SiON基板のような無機基板上でも、良好な解像性及びレジストパターン形状を有することから好ましい。
【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
<他の構成単位>
また、本発明のポジ型フォトレジスト組成物においては、(A)成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、前記構成単位(a1)〜(a3)以外の従来化学増幅型のポジ型レジストとして公知のアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのアルカリ可溶性とするためのエチレン性二重結合を有するカルボン酸、アクリル樹脂の製造に用いられる公知のモノマーなどを、必要に応じて適宜組み合わせ、共重合させて用いることもできる。
【0058】
本発明の高分子化合物は、例えば各構成単位に係るモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
【0059】
本発明の高分子化合物の質量平均分子量(Mw;ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算質量平均分子量、以下同様。)は、30000以下が好ましく、15000以下がより好ましい。質量平均分子量が30000以下であると、エッチング耐性に優れ、また、現像時にレジストパターンの膨潤が生じにくく、パターン倒れが生じにくい等の利点がある。
下限値は、特に限定するものではないが、解像性、有機溶剤への溶解性等を考慮すると、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
分散度は3.0以下、好ましくは1.0〜2.5の範囲であると、解像性や耐熱性が向上するため好ましい。
本発明の高分子化合物は1種または2種以上の重合体から構成することができる。
【0060】
<第2の態様:ポジ型レジスト組成物>
本発明のポジ型レジスト組成物は、基材樹脂成分として本発明の高分子化合物(以下、(A)成分という)と、放射線の照射(露光)により酸を発生する酸発生剤(以下、(B)成分という)とを含有することを特徴とする。
(A)成分は、いわゆる酸解離性溶解抑制基を有する構成単位である構成単位(a1)を有するため、露光前はアルカリ不溶性であり、露光により前記(B)成分から発生した酸が作用すると、酸解離性溶解抑制基が解離し、これによって(A)成分全体がアルカリ不溶性からアルカリ可溶性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、レジストに対して選択的露光を行うと、または露光に加えて露光後加熱(PEB)を行うと、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することによりポジ型のレジストパターンが形成できる。
【0061】
(B)成分
(B)成分は、いわゆる酸発生剤である。本発明において、(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から特に限定せずに用いることができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類、ジアゾメタンニトロベンジルスルホネート類などのジアゾメタン系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0062】
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。
【0063】
前記オニウム塩系酸発生剤の中でも、酸の強度が弱い、アニオン部にカンファースルホン酸イオンを有するオニウム塩も用いることができる。具体的には下記化学式で表される化合物等を例示できる。
【0064】
【化19】

【0065】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0066】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0067】
【化20】

【0068】
本発明においては、中でも、(A)成分との反応性の点から、(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
また、酸強度が弱い酸発生剤、例えばジアゾメタン系酸発生剤や、アニオン部にカンファースルホン酸イオンを有する酸発生剤でも酸解離性溶解抑制基を解離させることができるため好ましく用いることができる。
(B)成分としては、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0069】
(D)成分
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに、任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは、炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0070】
(E)成分
また、前記(D)成分との配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0071】
その他の任意成分
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させる
ことができる。
【0072】
有機溶剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤に溶解させて製造することができる。
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましいが、その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは3:7〜7:3であると好ましい。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
有機溶剤の使用量は特に限定しないが、基板等の支持体に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0073】
<第3の態様:レジストパターン形成方法>
本発明のポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法は例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、まずシリコンウェーハのような支持体上に、上記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光(放射線を照射)した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
なお、支持体(基板)とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
【0074】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。
基板としては、例えばシリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板や、ガラス基板などが挙げられる。
配線パターンの材料としては、例えば銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などが使用可能である。
【0075】
露光(放射線の照射)に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。本発明にかかるレジスト組成物は、特に、ArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0076】
上述したように、本発明の高分子化合物を含むポジ型レジスト組成物を用いることにより、高解像性で、高感度で、かつパターン倒れが抑制されたレジストパターンを形成できる。
その理由は定かではないが、パターン倒れの抑制については、従来のものとの対比により、本発明においては、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)の組み合わせ、特に構成単位(a3)の導入により、接触角の値が大きくなったことが原因ではないかと推測される。なお、実験的には、構成単位(a3)を導入することにより、疎水性が向上すること、また、リンス時の純水等に対する接触角が向上することが確認されている。これに対して、従来の化学増幅型レジスト組成物用の高分子化合物において、アセタール基(アルコキシアルキル基)からなる酸解離性溶解抑制基を導入すると、高分子化合物の親水性が高くなり、接触角が下がる傾向がある。
したがって、パターン倒れは、樹脂の接触角の値に左右されるのではないかと推測される。
そして、本発明においては、上述の様に、パターン倒れの抑制だけではなく、高解像性、高感度、ラインエッジラフネス(LER)の低減という有利な効果も同時に得ることができる。なお、LERとはライン側壁の不均一な凹凸のことである。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を示して本発明の効果をさらに明らかにする。
まず、本実施例1、比較例1に係る合成例で用いたモノマー成分を下記に示す。モノマー成分の略語はモノマー成分の化学式の下に記載されたものを用いる。
【0078】
【化21】

【0079】
なお、上記ADOMMAは以下の通り合成した。
6.9gのメタクリル酸を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン8.0gを加えた。室温で攪拌した後、15gの2−アダマンチルクロロメチルエーテルを溶解させたテトラヒドロフラン100mLを滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を溶媒留去し、酢酸エチルに200mLに溶解させた後、純水(100mL×3)で洗浄し、溶媒留去した。氷冷下放置後、白色固体を得た。
生成物について、赤外吸収スペクトル(IR)、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した結果を以下に示す。
IR(cm-1):2907、2854( C−H伸縮)、1725( C=O伸縮)、1638( C=C伸縮)
1H−NMR(CDCl3、内部標準:テトラメチルシラン)ppm:1.45〜2.1(m、17H)、3.75(s、1H)、5.45(s、2H)、5.6(s、1H)、6.12(s、1H)
【0080】
[合成例1]
20.0gのADOMMA、13.6gのGBLMAと8.8gのTCDMAを200mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.64gを加えた12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂1とする。
この樹脂1は下記化学式で表される構成単位からなる。
【0081】
【化22】

【0082】
GPC測定の結果、樹脂1の質量平均分子量(Mw)は10800、分散度(Mw/Mn)は2.14であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、組成比はp:q:r=40:40:20(モル比)であった。
【0083】
[合成例2]
20.0gのADOMMA、13.6gのGBLMAと9.5gのADOHMAを200mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.64gを加えた12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂2とする。
この樹脂2は下記化学式で表される構成単位からなる。
【0084】
【化23】

【0085】
GPC測定の結果、樹脂2の質量平均分子量(Mw)は9700、分散度(Mw/Mn)は1.88であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、組成比はp:q:r=40:40:20(モル比)であった。
【0086】
[実施例1及び比較例1]
下記表1に示す組成でポジ型レジスト組成物を調製した。
【0087】
【表1】

【0088】
次に、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、上記で得られたポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で95℃、90秒間プレベーク(PAB)し、乾燥することにより、膜厚225nmのレジスト膜を形成した。
ついで、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製;NA(開口数)=0.60,2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(バイナリ−マスク)を介して選択的に照射した。
そして、105℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥した。
【0089】
ポジ型レジスト組成物の諸物性は以下のようにして求めた。なお、接触角については、(B)成分等を用いず、高分子化合物(樹脂1、樹脂2)の溶液を用いて測定した。
【0090】
<感度>
140nmのラインアンドスペースが1:1に形成される露光時間を感度(EOP)としてmJ/cm(エネルギー量)単位で測定した。
【0091】
<限界解像度>
上記EOPにおいての極限解像度をSEM写真により判断した。
【0092】
<パターン倒れ>
選択的露光における露光時間を長くしていき、それに伴いパターンが細くなっていったときにどこでパターン倒れが生じるかどうかをSEMにより観察した。結果は、パターン倒れが生じるパターンの幅のサイズで示した。
【0093】
<接触角>
接触角の測定はFACE接触角計CA−X150型(製品名、協和界面科学株式会社製)を用いて測定を行った。
測定方法は、8インチのシリコンウェーハ上に、各実施例又は比較例で用いた高分子化合物(樹脂1、樹脂2)をそれぞれ用いて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルとの質量比6:4の混合溶剤750質量部に樹脂を溶解させたものを調製し、スピンナーを用いて塗布したのち、95℃で90秒間加熱することで膜厚225nmのレジスト膜を形成した。次に、装置に備え付けられている注射器に前記高分子膜を接触させ(注射器と高分子膜とが接触した際に、2μLの純水が滴下される)、その際の接触角を測定した。
【0094】
上記の評価結果を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
ついで、実施例2に係る合成例を示す。
[合成例3]
2.2gのメタクリル酸を50mLのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン2.5gを加えた。室温で攪拌した後、4.3gの4−オキソ−2−アダマンチルクロロメチルエーテルを溶解させたテトラヒドロフラン50mLを滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を溶媒留去し、酢酸エチルに100mLに溶解させた後、純粋(50mL×3回)で洗浄し、溶媒留去した。氷冷下放置後、白色固体を得た。この化合物をOADOMMAとし、下記化学式で表す。また、赤外吸収スペクトル(IR)、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した結果を示す。
IR(cm-1):2926、2861(C-H伸縮))、1725(C=O伸縮)、1636(C=C伸縮)
1H−NMR(CDCl3、内部標準:テトラメチルシラン)ppm:1.62〜3.85(m、15H)、4.2(s、1H)、5.4(s、2H)、5.65(s、1H)、6.15(s、1H)
【0097】
【化24】

【0098】
[合成例4]
21.0gのOADOMMA、13.6gのGBLMAと8.8gのTCDMAを200mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.64gを加え、12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂3とする。この樹脂3は下記化学式で表される構成単位からなる。
【0099】
【化25】

【0100】
GPC測定の結果、樹脂3の質量平均分子量(Mw)は9800、分散度(Mw/Mn)は1.74であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した
結果、組成比はp:q:r=40:40:20(モル比)であった。
【0101】
[実施例2]
実施例1において、樹脂1を樹脂3に変更したこと以外は、実施例1と同様にポジ型レジスト組成物を調整した後、同様の方法でレジストパターンを形成し、評価した。その際の感度は20mJ/cmであり、限界解像度は110nmであり、パターン倒れは47nmであった。
【0102】
<ラインエッジラフネス(LER)評価>
実施例1〜2、及び比較例1において形成されたレジストパターンのライン幅を、それぞれ側長SEM(日立製作所社製、商品名:S−9220)により、ラインの長手方向に5箇所測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を、LERを示す尺度として算出した。この3σの値が小さいほど線幅のラフネス(ばらつき、凹凸)が小さく、より均一幅のレジストパターンが得られたことを意味する。
その結果、3σの値は、実施例1は3.5nm、実施例2は3.2nm、比較例1は6.3nmであった。
【0103】
上記の結果から、実施例1及び実施例2のポジ型レジスト組成物を用いて得られたレジストパターンは優れた解像性、感度を有しており、パターン倒れ、LERも抑制されていた。
また、実施例1においては、構成単位(a1)、構成単位(a2)、構成単位(a3)に該当する構成単位を用いており、比較例1においては、実施例1で用いた高分子化合物(樹脂1)において、構成単位(a3)を、極性基を有する構成単位に変更した樹脂2を用いているが、両者の接触角は実施例1で用いた樹脂1の方が高いことが確認できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は一般式(1)’
【化1】

[式中、Rは水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又は炭素数20以下のフッ素化低級アルキル基を表す。Rは置換基を有していてもよい20員環以下の環式基であり、nは0または1〜5の整数を表す。]
【化2】

[式中、Rは水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又は炭素数20以下のフッ素化低級アルキル基を表す。Rは置換基を有していてもよい20員環以下の環式基であり、nは0または1〜5の整数を表し、mは0又は1である。]
で示される構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(a1)、
ラクトン含有単環または多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)及び、
前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)以外の構成単位であって、脂肪族環式基含有非酸解離性溶解抑制基を含み、かつ極性基を含まない、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を含む高分子化合物。
【請求項2】
前記構成単位(a1)が、下記一般式(2)
【化3】

[式中、R、nは前記と同じである。Xは極性基を示し、lは0または1〜3の整数を表す。]
で示される構成単位である請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
前記構成単位(a2)が、下記一般式(5)
【化4】

[式中、R’は低級アルキル基または水素原子であり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または低級アルキル基である。]
で示される構成単位である請求項1または2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記構成単位(a3)が、下記一般式(10)
【化5】

[式中、R’は前記と同じである。Yは、炭素数1〜10のアルキル基を1〜3個有していてもよい、基本環の炭素数が4〜15の脂肪族環式基を表す。]
で示される構成単位である請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記構成単位(a3)が、下記一般式(11)〜(13)
【化6】

[式中、R’は前記と同じである。]
【化7】

[式中、R’は前記と同じである。]
【化8】

[式中、R’は前記と同じである。]
から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の高分子化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の高分子物において、下記一般式(14)で表される構成単位と下記一般式(14)’ で表される構成単位の少なくとも一方を含む高分子化合物。
【化9】

[式中、R、R’はそれぞれ前記と同じである。]
【化10】

【請求項7】
酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(B)とを含有してなるポジ型レジスト組成物において、
前記基材樹脂成分(A)が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物であることを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
含窒素有機化合物(D)を含有することを特徴とする請求項7に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載のポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2006−28472(P2006−28472A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316959(P2004−316959)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】