説明

高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法

【課題】現場での施工性を損なうことなく、且つ安価に接合面の応力伝達性能を向上させることが可能な高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法を提供する。
【解決手段】添板3、4のボルト挿通孔を形成する周端側に、被接合部材1のボルト挿通孔1b内に屈曲して嵌合する屈曲部3d、4dを設ける。また、被接合部材1と添板3、4のボルト挿通孔に高力ボルト5の軸部5aを挿通させた状態で、高力ボルト5の頭部5b及び高力ボルト5に螺合したナット6と添板3、4との間に支圧リング9、10を介装する。そして、高力ボルト5で一対の被接合部材1と添板3、4とを締め付けるとともに、支持リング9、10によって、添板3、4の屈曲部3d、4dを押圧して屈曲させ、この屈曲部3d、4dを被接合部材1のボルト挿通孔1bの周端1d側に押圧して支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高力ボルトを用いて例えば鋼板や鉄骨などの被接合部材同士を接合する高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板や鉄骨などの被接合部材同士を接合する手法として、一端部同士を突き合わせるように配置した一対の被接合部材を挟み込むように添板(スプライスプレート)を設置し、一対の被接合部材と添板を高力ボルトで締め付け、被接合部材と添板の接合面に生じる摩擦力によって応力伝達可能に被接合部材同士を接合する高力ボルト摩擦接合が多用されている。また、一般に、高力ボルト摩擦接合では、被接合部材や添板の接合面に赤錆処理やブラスト処理を施して所要の摩擦力が発生するようにしている。
【0003】
しかしながら、赤錆処理においては、錆生成状態にばらつきが生じやすく、ブラスト処理においては、部材の鋼種やショット粒の種類などによって多少の違いが生じるが、表面粗さ、すなわち表面凹凸の高低差が50μm程度である。このため、被接合部材や添板の接合面に赤錆処理やブラスト処理を施した場合においても、接合面の摩擦係数の増加には限界があり、一般に、処理後の接合面の摩擦係数(すべり係数)の設計値に摩擦係数0.45という低い値を設定して、すべり耐力を算出している。
【0004】
これに対し、高力ボルト、添板等の鋼材量の削減と、現場での生産性向上を図るために、被接合部材や添板の接合面を高摩擦係数化し、接合面の応力伝達性能の向上を試みる研究開発が進められている。そして、接合面の高摩擦係数化方法として、
(1)各部材の接合面の凹凸角度や硬さを調整し、接合面の性状を改善する方法
(2)鋼棒、ピアノ線、鋼線メッシュ、軟鋼などの接合補助部材を部材同士の間に介装する方法
(3)接合面に接着剤を塗布する方法
などが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
ここで、高力ボルト摩擦接合における応力伝達機構は、主に凝着抵抗(部材同士の凝着)と、掘り起こし抵抗(凸部による掘り起こし)とに分けられる。そして、上記の(1)接合面の性状を改善する方法では、接合面の凹凸角度や硬さを調整して理想的な掘り起こし抵抗を実現することで高摩擦係数化を図っている。また、(2)接合補助部材を介装する方法では、各部材の接合面に接合補助部材を食い込ませ、支圧抵抗を付加することにより高摩擦係数化を図っている。(3)接合面に接着剤を塗布する方法では、接着剤による粘着抵抗を付加することにより高摩擦係数化を図っている。
【特許文献1】特開平10−18423号公報
【特許文献2】特開平11−106867号公報
【特許文献3】特開平8−177818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の(1)接合面の性状を改善する方法では、表面処理加工が難しく一般の鉄骨加工工場では加工できないため、納期、供給能力に問題が生じ、さらに加工費が高いため、コストダウンを図ることが難しいという問題がある。また、(2)接合補助部材を介装する方法では、理想的な支圧抵抗を得るために高精度で接合補助部材を配置して施工する必要があり、施工性に問題がある。さらに、(3)接合面に接着剤を塗布する方法では、現場施工性に加え、接着剤の耐久性、耐火性などに問題がある。このようにいずれの方法においても現場での施工性やコストなどに問題があるため、一般に広く普及するには至っていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、現場での施工性を損なうことなく、且つ安価に接合面の応力伝達性能を向上させることが可能な高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の高力ボルト摩擦接合構造は、一対の被接合部材の外側に添板を設け、前記一対の被接合部材と前記添板とを高力ボルトで締め付けることにより、前記添板を介して前記被接合部材同士を接合する高力ボルト摩擦接合構造であって、前記添板には、前記被接合部材に形成したボルト挿通孔よりも小径のボルト挿通孔が形成され、該添板のボルト挿通孔を形成する周端側に、前記高力ボルトで前記一対の被接合部材と前記添板とを締め付けるとともに押圧されて屈曲し、前記被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合する屈曲部が設けられ、前記被接合部材と前記添板のボルト挿通孔に前記高力ボルトの軸部を挿通させた状態で、前記高力ボルトの頭部及び/又は前記高力ボルトの軸部の先端側に螺合したナットと前記添板との間には、前記高力ボルトで前記一対の被接合部材と前記添板とを締め付けるとともに前記添板の屈曲部を押圧して屈曲させ、該添板の屈曲部を前記被接合部材のボルト挿通孔の周端側に押圧して支持する支圧リングが介装されていることを特徴とする。
【0010】
この発明においては、被接合部材と添板とを高力ボルトで締め付けるとともに、高力ボルトの頭部及び/又はナットで支圧リングが添板の屈曲部を押圧し、この支圧リングによって添板の屈曲部が面外曲げにより屈曲して塑性化し、被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合する。そして、高力ボルトによる締め付けによって被接合部材と添板の接合面が密着するため、被接合部材に荷重が作用した際には、従来の高力ボルト摩擦接合と同様に、被接合部材と添板の接合面に生じる摩擦力によって応力伝達可能に被接合部材同士を接合することが可能になる。また、添板の屈曲部が被接合部材のボルト挿通孔に嵌合しているため、被接合部材に荷重が作用した際に、一方の被接合部材に生じた応力を添板の屈曲部を通じて他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。これにより、従来の高力ボルト摩擦接合の摩擦伝達に加えて支圧伝達を付加することができ、接合面の応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0011】
また、本発明の高力ボルト摩擦接合構造において、前記添板には、前記ボルト挿通孔を形成する周端から該ボルト挿通孔の径方向外側に向けて延びる切欠部が前記ボルト挿通孔の周方向に間隔をあけて複数設けられていることが望ましい。
【0012】
この発明においては、添板のボルト挿通孔を形成する周端側に切欠部が周方向に間隔をあけて複数設けられていることで、このボルト挿通孔の周方向に隣り合う切欠部で分けられた複数の屈曲部を形成することが可能になる。これにより、被接合部材と添板とを高力ボルトで締め付けるとともに、支圧リングで押圧して屈曲部を屈曲させ、被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合させる場合に、高力ボルトで締め付けるとともに確実に支圧リングによって各屈曲部を屈曲させ、被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合させることが可能になる。よって、確実に摩擦伝達に加えて支圧伝達を付加することができ、確実に接合面の応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0013】
さらに、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記切欠部が前記周方向に等間隔で4つ以上設けられていることがより望ましい。
【0014】
この発明においては、切欠部を4つ以上設けることで、各屈曲部を屈曲させ、容易に被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合させることが可能になる。これにより、より確実に摩擦伝達に加えて支圧伝達を付加することができ、接合面の応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0015】
また、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記添板が前記被接合部材よりも高強度で且つ薄厚の鋼材を用いて形成されていることがさらに望ましい。
【0016】
この発明においては、添板が被接合部材よりも薄厚の鋼板を用いて形成されていることにより、屈曲部を屈曲させることが可能になり、添板が被接合部材よりも高強度の鋼板を用いて形成されていることにより、確実に一方の被接合部材に生じた応力を添板の屈曲部を通じて他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。
【0017】
また、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記被接合部材のボルト挿通孔が、前記高力ボルトの軸部の外径と前記添板の板厚を合わせた寸法よりも大径で形成されていることが望ましい。
【0018】
この発明においては、被接合部材のボルト挿通孔を高力ボルトの軸部の外径と添板の板厚を合わせた寸法よりも大径で形成することにより、屈曲した添板の屈曲部を確実に被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合させることが可能になるとともに、確実に屈曲部を通じて一方の被接合部材に生じた応力を他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。
【0019】
さらに、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記支圧リングが、前記被接合部材のボルト挿通孔の径よりも外径が小径で形成されていることがより望ましい。
【0020】
この発明においては、支圧リングの外径が被接合部材のボルト挿通孔の径よりも小径であることにより、被接合部材と添板とを高力ボルトで締め付けた状態で、支圧リングによって屈曲部の先端(添板のボルト挿通孔の周端)により近い部分を押圧して支持することが可能になり、屈曲部が安定した状態で支圧リングによって支持され、確実に屈曲した添板の屈曲部を被接合部材のボルト挿通孔の周端側に押圧して支持することが可能になる。これにより、確実に屈曲部を通じて一方の被接合部材に生じた応力を他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。
【0021】
また、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記支圧リングがC字状に形成されていることがさらに望ましい。
【0022】
この発明においては、被接合部材と添板とを高力ボルトで締め付ける際に、支圧リングが添板の屈曲部を押圧し、この屈曲部の屈曲状態に応じて外径及び内径が小さくなるように支圧リングを変形させることが可能になる。これにより、支圧リングによって屈曲部の先端(添板のボルト挿通孔の周端)により近い部分を押圧して支持することが可能になり、屈曲部が安定した状態で支圧リングによって支持され、確実に屈曲部を通じて一方の被接合部材に生じた応力を他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。
【0023】
さらに、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記支圧リングがワッシャと一体に形成されていてもよい。
【0024】
この発明においては、高力ボルトの頭部及び/又は高力ボルトの軸部の先端側に螺合したナットと添板との間にワッシャを介装する場合に、ワッシャと支圧リングとをそれぞれ個別に設ける必要がなく、部材数の増加を抑えることが可能になる。
【0025】
また、本発明の高力ボルト摩擦接合構造においては、前記支圧リングが前記高力ボルトの頭部及び/又は前記ナットと一体に形成されていてもよい。
【0026】
この発明においては、高力ボルトの頭部及び/又はナットと支圧リングとが一体形成されていることにより、支圧リングを個別に設ける必要がなく、部材数の増加をなくすことができる。
【0027】
さらに、本発明の高力ボルト摩擦接合構造において、前記被接合部材のボルト挿通孔を形成する周端には、前記添板の屈曲部に係合する面取り部が設けられていることがより望ましい。
【0028】
この発明においては、添板の屈曲部が面取り部に係合することで、この屈曲部と被接合部材の接触面積を大きくすることができる。これにより、確実に屈曲部を通じて一方の被接合部材に生じた応力を他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。
【0029】
本発明の高力ボルト摩擦接合方法は、上記のいずれかの高力ボルト摩擦接合構造によって前記被接合部材同士を接合する方法であって、前記高力ボルトで前記一対の被接合部材と前記添板とを締め付けるとともに、前記添板の屈曲部を前記支圧リングで押圧して前記被接合部材のボルト挿通孔内に屈曲させることを特徴とする。
【0030】
この発明においては、被接合部材と添板とを高力ボルトで締め付けるとともに、高力ボルトの頭部及び/又はナットで支圧リングが添板の屈曲部を押圧し、この支圧リングによって添板の屈曲部が面外曲げにより屈曲して塑性化し、被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合する。そして、高力ボルトによる締め付けによって被接合部材と添板の接合面が密着するため、被接合部材に荷重が作用した際には、従来の高力ボルト摩擦接合と同様に、被接合部材と添板の接合面に生じる摩擦力によって応力伝達可能に被接合部材同士を接合することが可能になる。また、添板の屈曲部が被接合部材のボルト挿通孔に嵌合しているため、被接合部材に荷重が作用した際に、一方の被接合部材に生じた応力を添板の屈曲部を通じて他方の被接合部材に支圧伝達させることが可能になる。これにより、従来の高力ボルト摩擦接合の摩擦伝達に支圧伝達を付加することができ、接合面の応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法によれば、高力ボルトの締め付けとともに支圧リングで添板の屈曲部を押圧して屈曲させ、この屈曲部を被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合させるとともに、屈曲部を支圧リングで被接合部材のボルト挿通孔の周端側に押圧して支持させることにより、従来の高力ボルト摩擦接合の摩擦伝達に支圧伝達を付加することができ、接合面の応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0032】
そして、添板の屈曲部による支圧伝達が十分に大きい場合には、被接合部材や添板の接合面に、赤錆処理やブラスト処理(摩擦面処理)を施す必要がなくなり、部材加工数を減らすことが可能になる。また、従来の高力ボルト摩擦接合に対し、部材数の増加が支圧リングのみであり(支圧リングをワッシャ、高力ボルトの頭部、ナットと一体形成した場合には、部材数の増加がなく)、高力ボルトによる締め付けも従来と同様に行えるため、現場での施工性を損なうこともない。さらに、鋼材量及び部材加工数の増加が少なく、コストの増加も少ない。これにより、現場での施工性を損なうことなく、且つ安価に接合面の応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図1から図8を参照し、本発明の一実施形態に係る高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法について説明する。本実施形態は、互いに突き合わせるように配置した一対の接合鋼板(被接合部材)と、これら接合鋼板を挟み込むように配置した一対の添板を高力ボルトで締め付けることにより、一対の添板を介して接合鋼板同士を接合する高力ボルト摩擦接合構造及び高力摩擦接合方法に関するものである。
【0034】
本実施形態の高力ボルト摩擦接合構造Aは、例えば図1及び図2に示すように、接合する一対の接合鋼板1、2と、添板3、4と、高力ボルト5と、ナット6と、ワッシャ7、8と、支圧リング9、10とを備えて構成されている。
【0035】
一対の接合鋼板1、2は、図1から図3に示すように、互いの一端部1a、2a同士を突き合わせるように間隔をあけて平行配置されている。また、これら一対の接合鋼板1、2にはそれぞれ、一端部1a、2a側に、所定の間隔をあけてキリ孔のボルト挿通孔1b、2bが一面から他面に2つずつ貫通形成されている。この接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bは、高力ボルト5の軸部5aの外径d1と添板3、4の板厚Tを合わせた寸法(d1+T)よりも大径d2で形成されている。例えば軸部5aの外径d1と添板3、4の板厚Tを合わせた寸法(d1+T)の2倍程度の径d2で形成されている。さらに、各接合鋼板1、2は、一面及び他面の一端部1a、2a側の接合面1c、2cがブラスト処理(あるいは赤錆処理)され、高低差が50μm程度の凹凸状に形成されている。
【0036】
添板3、4は、接合鋼板1、2よりも高強度で且つ薄厚(薄い板厚T)の鋼材を用いて形成され、図1、図2及び図4に示すように、一対の接合鋼板1、2の一端部1a、2a側を挟み込むように、一対の接合鋼板1、2のそれぞれの外側に配置されている。また、各添板3、4は、一面(接合面3a、4a)がブラスト処理(あるいは赤錆処理)され、高低差が50μm程度の凹凸状に形成されている。さらに、これら添板3、4にはそれぞれ、一方の接合鋼板1のボルト挿通孔1bと他方の接合鋼板2のボルト挿通孔2bにそれぞれ連通する4つのボルト挿通孔3b、4bが所定の間隔をあけて一面(接合面3a、4a)から他面に貫通形成されている。このボルト挿通孔3b、4bは、接合鋼板1、2に形成したボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも小径d3で形成されている。
【0037】
そして、一対の接合鋼板1、2を挟み込むように添板3、4を設置し、接合鋼板1、2と添板3、4の互いのボルト挿通孔1b、2b、3b、4bを、互いの中心軸を略同軸上に配して連通させた状態(図8(a)の状態)で、添板3、4の接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b上に配される部分(すなわち添板3、4のボルト挿通孔3b、4bを形成する周端3c、4c側)が屈曲部3d、4dとされている。この屈曲部3d、4dは、図2に示すように、高力ボルト5で一対の接合鋼板1、2と一対の添板3、4とを締め付けた状態で、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に屈曲し、この接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bに嵌合する。また、本実施形態の添板3、4においては、図5に示すように、ボルト挿通孔3b、4bを形成する周端3c、4cからボルト挿通孔3b、4bの径方向外側に向けて延びる切欠部3e、4eが、ボルト挿通孔3b、4bの周方向に等間隔で4つ設けられている。これにより、添板3、4の各ボルト挿通孔3b、4bの周端3c、4c側には、周方向に隣り合う切欠部3e、4eで分けられた4つの屈曲部3d、4dが設けられている。
【0038】
支圧リング9、10は、図2、図6及び図7に示すように、その内径d4が高力ボルト5の軸部5aの外径d1よりも僅かに大径で形成され、また、外径d5が接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも僅かに小径で、且つ添板3、4のボルト挿通孔3b、4bの径d3よりも大径で形成されている。さらに、この支圧リング9、10は、内周端から外周端まで切り欠かれた切欠部9a、10aが設けられて、C字状に形成されている。
【0039】
そして、支圧リング9、10は、図2に示すように、接合鋼板1、2と添板3、4のボルト挿通孔1b、2b、3b、4bに高力ボルト5の軸部5aを挿通させた状態で、ワッシャ7、8とともに高力ボルト5の軸部5aを挿通させて設けられ、高力ボルト5の頭部5bと一方の添板3の間、及び高力ボルト5の軸部5aの先端側に螺合したナット6と他方の添板4との間に介装されている。また、高力ボルト5により接合鋼板1、2と添板3、4を締め付けた状態で、各支圧リング9、10は、屈曲した添板3、4の屈曲部3d、4dを接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bを形成する周端1d、2d側に押圧して支持している。
【0040】
ついで、上記構成からなる高力ボルト摩擦接合構造Aによって接合鋼板1、2同士を接合する方法について説明するとともに、本実施形態の高力ボルト摩擦接合構造A及び高力ボルト接合方法の作用及び効果について説明する。
【0041】
図1及び図3に示すように、接合鋼板1、2同士を接合する際には、はじめに、一方の接合鋼板1の一端部1aに他方の接合鋼板2の一端部2aを突き合わせるように、一対の接合鋼板1、2を所定位置に配置する。ついで、図1及び図8(a)に示すように、一対の接合鋼板1、2を挟み込んで、且つ接合鋼板1、2と互いのボルト挿通孔1b、2b、3b、4bを連通させて、添板3、4を所定位置に設置する。そして、このとき、添板3、4のボルト挿通孔3b、4bの径d3が接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも小径であるため、添板3、4のボルト挿通孔3b、4bを形成する周端3c、4c側に設けられた4つの屈曲部3d、4dが接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b上に配置される。
【0042】
ついで、図8(a)に示すように、高力ボルト5の軸部5aをワッシャ7と支圧リング9とにこの順で挿通させて、互いに連通する接合鋼板1、2と添板3、4のボルト挿通孔1b、2b、3b、4bに、一方の添板3側から高力ボルト5の軸部5aを挿通する。また、他方の添板4のボルト挿通孔4bから外側に突出した高力ボルト5の軸部5aの先端側に、支圧リング10とワッシャ8とをこの順に挿通させ、ナット6を螺合する。
【0043】
そして、高力ボルト5の軸部5aに所定の導入軸力が生じるように、高力ボルト5とナット6を締結し、高力ボルト5により一対の接合鋼板1、2と一対の添板3、4を締め付ける。これにより、従来の高力ボルト摩擦接合と同様に、ブラスト処理あるいは赤錆処理を施した接合鋼板1、2と添板3、4の接合面1c、2c、3a、4aが互いに押圧されて密着する。
【0044】
一方、このように接合鋼板1、2と添板3、4とを締め付ける際に、一方の添板3と高力ボルト5の頭部5bの間に介装した一方の支圧リング9と、他方の添板4とナット6の間に介装した他方の支圧リング10とがそれぞれ、添板3、4の屈曲部3d、4dを接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に向けて押圧する。これにより、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4とを締め付けるとともに、添板3、4の屈曲部3d、4dが面外曲げにより屈曲して塑性化し、図8(b)に示すように、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合する。また、このとき、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bが高力ボルト5の軸部5aの外径d1と添板3、4の板厚Tを合わせた寸法よりも大径で形成されているため、屈曲した添板3、4の屈曲部3d、4dが確実に接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合する。
【0045】
さらに、添板3、4のボルト挿通孔3b、4bを形成する周端3c、4c側に、周方向に等間隔で4つの切欠部3e、4eを設け、4つの屈曲部3d、4dが分かれて形成されている。このため、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4とを締め付けるとともに、確実に且つ容易にこれら屈曲部3d、4dが屈曲して接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合する。また、添板3、4が接合鋼板1、2よりも薄厚の鋼板を用いて形成されているため、この点からも、確実に且つ容易に屈曲部3d、4dが屈曲して接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合する。
【0046】
そして、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4を締め付けた状態で、支圧リング9、10によって、屈曲した添板3、4の屈曲部3d、4dが接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの周端1d、2d側に押圧されて支持される。このとき、支圧リング9、10が、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも外径d5が小径で形成されているため、屈曲部3d、4dは、その先端(添板3、4のボルト挿通孔3b、4bの周端3c、4c)により近い部分が支圧リング9、10によって押圧されて支持される。
【0047】
また、支圧リング9、10は、C字状に形成されているため、接合鋼板1、2と添板3、4とを高力ボルト5で締め付ける際に、添板3、4の屈曲部3d、4dを押圧するとともに、屈曲部3d、4dの屈曲状態に応じて外径d5及び内径d4が小さくなるように変形する。これにより、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4を締め付けた状態で、屈曲部3d、4dは、その先端(添板3、4のボルト挿通孔3b、4bの周端3c、4c)により近い部分が支圧リング9、10によって押圧されて支持される。
【0048】
このように、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4を締め付けた状態で、支圧リング9、10が屈曲部3d、4dをその先端により近い部分を押圧して支持することにより、屈曲部3d、4dは、安定した状態で、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの周端1d、2d側に押圧されて支持されることになる。
【0049】
上記のように、本実施形態の高力ボルト摩擦接合構造A(高力ボルト摩擦接合方法)においては、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に添板3、4の屈曲部3d、4dが屈曲して嵌合し、接合鋼板1、2と添板3、4の接合面1c、2c、3a、4aが高力ボルト5の導入軸力に応じた押圧力で互いに密着することで、接合鋼板1、2同士が添板3、4を介して接合される。
【0050】
そして、接合鋼板1、2に荷重が作用した際には、従来の高力ボルト摩擦接合と同様に、接合鋼板1、2と添板3、4のブラスト処理あるいは赤錆処理を施した接合面1c、2c、3a、4aに生じる摩擦力によって応力が伝達される。また、添板3、4の屈曲部3d、4dが接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bに嵌合し、支圧リング9、10によって接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの周端1d、2d側に押圧して支持されているため、接合鋼板1、2に荷重が作用した際には、一方の接合鋼板1(2)に生じた応力が添板3、4の屈曲部3d、4dを通じて他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達される。さらに、このとき、添板3、4が接合鋼板1、2よりも高強度の鋼板を用いて形成されているため、確実に接合鋼板1(2)に生じた応力が添板3、4の屈曲部3d、4dを通じて他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達される。このように、本実施形態の高力ボルト摩擦接合構造Aにおいては、従来の高力ボルト摩擦接合の摩擦伝達に支圧伝達が付加されることで、従来の高力ボルト摩擦接合と比較し、接合面1c、2c、3a、4aの応力伝達性能が大幅に向上することになる。
【0051】
したがって、本実施形態の高力ボルト摩擦接合構造A及び高力ボルト摩擦接合方法においては、接合鋼板1、2と添板3、4を高力ボルト5で締め付けるとともに、支圧リング9、10によって添板3、4の屈曲部3d、4dを屈曲させ、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合させることが可能になる。また、高力ボルト5による締め付けによって接合鋼板1、2と添板3、4の接合面1c、2c、3a、4aを密着させることが可能である。このため、接合鋼板1、2に荷重が作用した際に、従来の高力ボルト摩擦接合と同様、接合鋼板1、2と添板3、4の接合面1c、2c、3a、4aに生じる摩擦力によって応力伝達可能に接合鋼板1、2同士を接合することが可能になる。また、一方の接合鋼板1(2)に生じた応力を添板3、4の屈曲部3d、4dを通じて他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。これにより、従来の高力ボルト摩擦接合の摩擦伝達に支圧伝達を付加することができ、接合面1c、2c、3a、4aの応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0052】
また、添板3、4の屈曲部3d、4dによる支圧伝達が十分に大きい場合には、接合鋼板1、2や添板3、4の接合面1c、2c、3a、4aの赤錆処理やブラスト処理(摩擦面処理)を不要にすることも可能になり、この場合には、部材加工数を減らすことが可能になる。さらに、従来の高力ボルト摩擦接合に対し、部材数の増加が支圧リング9、10のみであり、高力ボルト5による締め付けも従来と同様に行えるため、現場での施工性を損なうこともない。さらに、鋼材量及び部材加工数の増加が少なく、コストの増加も少ない。よって、現場での施工性を損なうことなく、且つ安価に接合面1c、2c、3a、4aの応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0053】
さらに、本実施形態の高力ボルト摩擦接合構造Aにおいては、添板3、4のボルト挿通孔3b、4bを形成する周端3c、4c側に、周方向に等間隔で4つの切欠部3e、4eを設け、4つの屈曲部3d、4dが分かれて形成されているため、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4とを締め付けるとともに、確実に且つ容易にこれら屈曲部3d、4dを屈曲させて接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合させることが可能になる。これにより、確実に摩擦伝達に支圧伝達を付加することができ、接合面1c、2c、3a、4aの応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【0054】
また、添板3、4が接合鋼板1、2よりも薄厚の鋼材を用いて形成されていることにより、支圧リング9、10で押圧して確実に屈曲部3d、4dを屈曲させることが可能になり、添板3、4が接合鋼板1、2よりも高強度の鋼板を用いて形成されていることにより、確実に一方の接合鋼板1(2)に生じた応力を添板3、4の屈曲部3d、4dを通じて他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。
【0055】
さらに、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bを高力ボルト5の軸部5aの外径d1と添板3、4の板厚Tを合わせた寸法よりも大径d2で形成することにより、屈曲した添板3、4の屈曲部3d、4dを確実に接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2b内に嵌合させることが可能になるとともに、より確実に屈曲部3d、4dを通じて一方の接合鋼板1(2)に生じた応力を他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。
【0056】
また、支圧リング9、10の外径d5が接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも小径であることにより、接合鋼板1、2と添板3、4とを高力ボルト5で締め付けた状態で、支圧リング9、10によって屈曲部3d、4dの先端(添板3、4のボルト挿通孔3b、4bの周端3c、4c)により近い部分を押圧して支持することが可能になり、屈曲部3d、4dが安定した状態で支圧リング9、10によって支持され、確実に屈曲した添板3、4の屈曲部3d、4dを接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの周端1d、2d側に押圧して支持することが可能になる。これにより、さらに確実に屈曲部3d、4dを通じて一方の接合鋼板1(2)に生じた応力を他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。
【0057】
また、支圧リング9、10がC字状に形成されていることにより、接合鋼板1、2と添板3、4とを高力ボルト5で締め付ける際に、支圧リング9、10が添板3、4の屈曲部3d、4dを押圧し、この屈曲部3d、4dの屈曲状態に応じて外径d5及び内径d4が小さくなるように支圧リング9、10を変形させることが可能になる。これにより、支圧リング9、10によって屈曲部3d、4dの先端(添板3、4のボルト挿通孔3b、4bの周端3c、4c)により近い部分を押圧して支持することが可能になり、屈曲部3d、4dが安定した状態で支圧リング9、10により支持され、さらに確実に屈曲部3d、4dを通じて一方の接合鋼板1(2)に生じた応力を他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。
【0058】
以上、本発明に係る高力ボルト摩擦接合構造及び高力ボルト摩擦接合方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、被接合部材が接合鋼板1、2であるものとしたが、本発明に係る被接合部材は、例えば鉄骨などの鋼板以外のものであってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、支圧リング9、10が、外径d5を接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも小径にして形成されているものとしたが、本発明に係る支圧リングは、高力ボルト5で接合鋼板1、2と添板3、4を締め付けるとともに、添板3、4の屈曲部3d、4dを接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bを形成する周端1d、2d側に押圧して支持することが可能であれば、特に外径d5を接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも小径にして形成することに限定する必要はない。例えば小径部と大径部を備えて支圧リングを側面視でT型に形成し、小径部のみをその外径d5が接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径d2よりも小径となるように形成して、高力ボルト5で締め付けるとともに、この小径部で屈曲部3d、4dを押圧して屈曲させ、支持するようにしてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、添板3、4が、ボルト挿通孔3b、4bを形成する周端3c、4c側に4つの切欠部3e、4eを形成して、隣り合う切欠部3e、4eで分けられた4つの屈曲部3d、4dを備えているものとして説明を行ったが、本発明に係る屈曲部は、高力ボルト5による締め付けとともに、支圧リング9、10によって接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bを形成する周端1d、2d側に押圧して支持されるように形成されていればよく、特に切欠部3e、4eや屈曲部3d、4dの数、配置を限定する必要はない。
【0061】
また、例えば図9(a)、図9(b)に示すように、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bを形成する周端1d、2dに面取り部1e、2eを設け、屈曲した添板3、4の屈曲部3d、4dがこの面取り部1e、2eに係合(嵌合)するようにしてもよい。この場合には、添板3、4の屈曲部3d、4dが面取り部1e、2eに係合することで、屈曲部3d、4dと接合鋼板1、2の接触面積を大きくすることができる。このため、本実施形態に示した高力ボルト摩擦接合構造Aよりも、確実に屈曲部3d、4dを通じて一方の接合鋼板1(2)に生じた応力を他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。また、このように面取り部1e、2eを設けた場合には、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの周端1d、2d(周端面、内面)と、このボルト挿通孔1b、2bに挿通する高力ボルト5の軸部5aとの遊びSを小さくすることが可能になる。すなわち、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの径を小径(標準サイズの径)にすることができる。このため、接合鋼板1、2のボルト挿通孔1b、2bの加工手間を軽減することが可能になる。
【0062】
さらに、例えば図10に示すように、支圧リング9、10をワッシャ7、8と一体に形成してもよく、また、例えば図11に示すように、高力ボルト5の頭部5bやナット6と支圧リング9、10を一体に形成してもよい。このようにした場合には、支圧リング9、10を設けることによる部材数の増加がないため、本実施形態よりもさらに現場での施工性を損なうことを防止し、安価に接合面1c、2c、3a、4aの応力伝達性能を向上させることが可能になる。また、図10や図11に示すように、添板3、4の屈曲部3d、4dを押圧する支圧リング9、10の外面をテーパー状に形成することによって、屈曲した屈曲部3d、4dと支圧リング9、10との接触面積を大きくすることができ、より確実に接合鋼板1(2)に生じた応力を添板3、4の屈曲部3d、4dを通じて他方の接合鋼板2(1)に支圧伝達させることが可能になる。このため、さらに確実に接合面1c、2c、3a、4aの応力伝達性能を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る高力ボルト接合構造を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る高力ボルト接合構造において、被接合部材と添板の接合部分を示す断面図である。
【図3】被接合部材の平面図である。
【図4】添板の平面図である。
【図5】添板のボルト挿通孔、屈曲部、切欠部を拡大した平面図である。
【図6】支圧リングの平面図である。
【図7】支圧リングの側面図である。
【図8】高力ボルトにより被接合部材と添板を締め付けるとともに添板の屈曲部を屈曲させる状態を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る高力ボルト接合構造の変形例を示す図であり、高力ボルトにより被接合部材と添板を締め付けるとともに添板の屈曲部を屈曲させる状態を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る高力ボルト接合構造の変形例を示す図であり、支圧リングをワッシャと一体形成して構成した高力ボルト接合構造を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る高力ボルト接合構造の変形例を示す図であり、支圧リングを高力ボルトの頭部及びナットと一体形成して構成した高力ボルト接合構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 接合鋼板(被接合部材)
1a 一端部
1b ボルト挿通孔
1c 接合面
1d 周端
1e 面取り部
2 接合鋼板(被接合部材)
2a 一端部
2b ボルト挿通孔
2c 接合面
2d 周端
2e 面取り部
3 添板
3a 接合面
3b ボルト挿通孔
3c 周端
3d 屈曲部
3e 切欠部
4 添板
4a 接合面
4b ボルト挿通孔
4c 周端
4d 屈曲部
4e 切欠部
5 高力ボルト
5a 軸部
5b 頭部
6 ナット
7 ワッシャ
8 ワッシャ
9 支圧リング
10 支圧リング
A 高力ボルト摩擦接合構造
T 添板の板厚
d1 高力ボルトの軸部の外径
d2 接合鋼板のボルト挿通孔の径
d3 添板のボルト挿通孔の径
d4 支圧リングの内径
d5 支圧リングの外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の被接合部材の外側に添板を設け、前記一対の被接合部材と前記添板とを高力ボルトで締め付けることにより、前記添板を介して前記被接合部材同士を接合する高力ボルト摩擦接合構造であって、
前記添板には、前記被接合部材に形成したボルト挿通孔よりも小径のボルト挿通孔が形成され、該添板のボルト挿通孔を形成する周端側に、前記高力ボルトで前記一対の被接合部材と前記添板とを締め付けるとともに押圧されて屈曲し、前記被接合部材のボルト挿通孔内に嵌合する屈曲部が設けられ、
前記被接合部材と前記添板のボルト挿通孔に前記高力ボルトの軸部を挿通させた状態で、前記高力ボルトの頭部及び/又は前記高力ボルトの軸部の先端側に螺合したナットと前記添板との間には、前記高力ボルトで前記一対の被接合部材と前記添板とを締め付けるとともに前記添板の屈曲部を押圧して屈曲させ、該添板の屈曲部を前記被接合部材のボルト挿通孔の周端側に押圧して支持する支圧リングが介装されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記添板には、前記ボルト挿通孔を形成する周端から該ボルト挿通孔の径方向外側に向けて延びる切欠部が前記ボルト挿通孔の周方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項3】
請求項2記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記切欠部が前記周方向に等間隔で4つ以上設けられていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記添板が前記被接合部材よりも高強度で且つ薄厚の鋼材を用いて形成されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記被接合部材のボルト挿通孔が、前記高力ボルトの軸部の外径と前記添板の板厚を合わせた寸法よりも大径で形成されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記支圧リングが、前記被接合部材のボルト挿通孔の径よりも外径が小径で形成されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記支圧リングがC字状に形成されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記支圧リングがワッシャと一体に形成されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記支圧リングが前記高力ボルトの頭部及び/又は前記ナットと一体に形成されていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造において、
前記被接合部材のボルト挿通孔を形成する周端には、前記添板の屈曲部に係合する面取り部が設けられていることを特徴とする高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の高力ボルト摩擦接合構造によって前記被接合部材同士を接合する方法であって、
前記高力ボルトで前記一対の被接合部材と前記添板とを締め付けるとともに、前記添板の屈曲部を前記支圧リングで押圧して前記被接合部材のボルト挿通孔内に屈曲させることを特徴とする高力ボルト摩擦接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−19371(P2010−19371A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181439(P2008−181439)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】