説明

高圧鉄塔の変位計測方法

【課題】 高圧鉄塔の変位測定を簡易、確実に行うとともに、取得された情報から直感的に変位を認識することができる高圧鉄塔の変位計測方法を提供することである。
【解決手段】 複数の写真に基づく写真画像データを入力するステップと、入力された写真画像データに基づいて写真ごとに三次元座標を取得する位置を特定するステップと、特定された同一点についての写真ごとの位置を関連付けるステップと、この関連付けられた同一点についての位置に基づいて三次元座標を得るステップと、を有する三次元計測方法において、4本の脚で囲まれた高圧鉄塔の内側であって少なくとも異なる2点から前記特定された同一点をカメラを使用して撮影するステップと、三次元計測方法によって得られた三次元座標に基づいて三次元表示を行う表示ステップとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧鉄塔の変位を計測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧鉄塔は、各地に電力を供給する等社会を支える重要なインフラである。これらの高圧鉄塔の中には、地震や台風等の自然災害や立地条件等の周囲の環境の変化、年月の経過に伴う構成部材の老朽化等の様々な要因によって変位しているものがある。そのため、高圧鉄塔の安全性を確保し、倒壊等の事故を未然に防ぐために、高圧鉄塔の安全度調査が定期的に行われている。
【0003】
このように変位する高圧鉄塔に対しては、例えばレーザ光を使用した高精度三次元測定器を用いて調査が行われている。
【0004】
また、下記特許文献1には、鉄塔の変位計測を容易にする測定方法およびその装置の一例が示されている。下記特許文献1によれば、予めコンピュータに取り込んでおいた測定対象の鉄塔構造図を含む既知情報から鉄塔構造モデルを作成し、カメラによって外側から撮影された測定対象鉄塔の静止画の中で基準部位とされた部位を上記鉄塔構造モデルの基準部位となる部分と重ねる。両者の基準部位が一致したところで、静止画の鉄塔の変位測定対象部位の位置ずれ量を鉄塔構造モデルの同一部位に対して求め、この位置ずれ量から測定対象の鉄塔の変位を計測するとされる。
【特許文献1】特開2003−148916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば上述の高精度三次元測定器による測定では、測定を行うためには1箇所ごとの測定点の測定と野帳と呼ばれる記録表への測定点の位置関係の記録に、作業員を長時間に渡って従事させる必要があり、測定機材の操作にも専門的な技術を要する。しかもこの測定機材はかなりの重量物であり、これを携帯して山間部等の人が入るには比較的厳しい場所に多く建設されている高圧鉄塔のところまで行くには多大な時間を必要とする。また、測定により得られたデータはその場で確認をすることができないことから、持ち帰って確認することになるが、測定に誤りや見落としがあることが発見された場合には再度測定を行わなければならず、この点が測定者に心的不安やストレスを与える要因になっていた。
【0006】
また、測定結果は上述の野帳に書き込まれたりや表形式にまとめられたりするが、測定値等、数字が羅列されるだけのことが多く、専門家であっても変位の量を直感的に把握することは容易ではない。
【0007】
また、上述の特許文献1に開示されている発明においては、鉄塔の外側からカメラでの撮影を行うようにされているが、鉄塔は、市街地では、通常は安全確保のため高いフェンスで囲まれており、外側からの撮影に必要な距離を確保できず、また、多くの鉄塔が建てられている山間部等では、地形や樹木が障害になるため、現実問題として鉄塔の外側からカメラで撮影すること困難である。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、三次元写真計測の技術を用いることで、高圧鉄塔の変位測定を簡易、確実に行うとともに、取得された情報から直感的に変位を認識することができる高圧鉄塔の変位計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る特徴は、高圧鉄塔の変位計測方法において、複数の写真に基づく写真画像データを入力するステップと、入力された写真画像データに基づいて写真ごとに三次元座標を取得する位置を特定するステップと、この特定された同一点についての写真ごとの位置を関連付けるステップと、関連付けられた同一点についての位置に基づいて三次元座標を得るステップとを有する三次元計測方法を用いて、4本の脚で囲まれた高圧鉄塔の内側であって少なくとも異なる2点から前記特定された同一点をカメラを使用して撮影するステップと、三次元計測方法によって得られた三次元座標に基づいて三次元表示を行う表示ステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、三次元写真計測の技術を用いることで、高圧鉄塔の変位測定を簡易、確実に行うとともに、取得された情報から直感的に変位を認識することができる高圧鉄塔の変位計測方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1のフローチャートに示すように、本発明の実施の形態に係る高圧鉄塔の変位計測方法は、計測の対象となっている高圧鉄塔を撮影するステップである計測対象物の撮影(ST1)、撮影された高圧鉄塔に貼付されているターゲット反射シールの部分の三次元座標を求めるステップである三次元画像計測の処理(ST2)、求められた三次元座標に基づいて三次元表示を行うステップである計測データの三次元表示(ST3)に大きく分けることができる。以下、これらのステップごとに説明する。
【0013】
(第1のステップ)
本発明の実施の形態においては、ステップ3における三次元表示を行うために、計測対象物である高圧鉄塔を三次元写真計測という手法を用いて計測している。この三次元写真計測とは、計測対象物を複数の異なる方向から撮影し、撮影された写真データを解析することによって計測対象物を計測する手法である。この計測方法を用いることによって、写真に写された計測対象物の物理量及び質情報を得ることができる。
【0014】
ここにいう「物理量」とは、写真に写されている計測対象物の位置、長さ、面積のことを指し、空間的な位置を表わす三次元座標のことである。一方、「質情報」とは、写真に写されている計測対象物の利用目的、性質等を読み取るための情報である。本実施の形態における三次元写真計測では、計測対象物は明らかであり、専ら物理量のみを求めることとなる。
【0015】
図2に示すように、三次元写真計測の原理は、受光素子面aに投影された像bと計測対象物cとの間の幾何学的関係から計測対象物cの形状に関する情報を取得する、というものである。この原理においては、計測対象物cとレンズの中心d、受光素子面a上の像bの3点が同一直線上にあるという、共線条件を用いる。但し、1台のカメラで撮影した写真から計測対象物の奥行きを含む三次元情報を取得することは特殊な条件を与えない限り不可能である。そこで、異なる2カ所の位置から撮影した2枚一組の写真からステレオモデルを構成し、計測対象物を観測することによって三次元情報を求める。
【0016】
実際の撮影においては、まず計測対象物に図3に示すようなターゲット反射シール1を貼付する。このターゲット反射シール1はアルミニウムの表面をアクリルコーティングして作られたもので、入射した光を全方向に反射する。貼付する場所は、計測対象物の中で予め決められた場所であり、例えば、高圧鉄塔において図4、図5に示すような場所である。図4は高圧鉄塔を構成する脚の地面と接する部分の全体を示した図であり、図5はその拡大図である。図5に示されるように、脚の根元にあるボルトの頭の部分に図3で示しているターゲット反射シール1が貼付されている。なお、貼付されるターゲット反射シール1は、高圧鉄塔1基あたり約数十から200箇所程度である。
【0017】
計測対象物にターゲット反射シール1を貼付した後、高圧鉄塔の撮影を行う。なお、以下では、特に撮像画面サイズが通常の35mmフィルムカメラと同程度のデジタルカメラと焦点距離14mmのレンズとを組み合わせて使用して撮影した場合を例にとって説明する。
【0018】
図6(a)は高圧鉄塔Tを上から見た平面図である。ここで高圧鉄塔Tは四角い線で表わされており、四隅の線が交わる部分が高圧鉄塔Tの4本の脚が設けられている部分である。撮影を行うに当たっては、高圧鉄塔Tの4本の脚の内側IでカメラCを構える。通常、上述のようにほとんどの高圧鉄塔の周囲には撮影の障害となるものが存在するため、現実問題として高圧鉄塔の外側からカメラで撮影すること困難であることから、4本の脚の内側Iから撮影を行う。これによって撮影ができず、計測が不可能となることを避けることができる。また、カメラCは上述のような超広角レンズを使用しており、線Ca、カメラC、線Cb及び内側Iで囲まれる範囲内にある物が写るようにされている。このようなレンズを装着したカメラC使用することで、カメラCを構えた場所の背後にある脚を除いた3本の脚が写真に収まるようにされている。これは、三次元写真計測の原理上、撮影枚数の増加を抑えながら写真間のオーバーラップする測定点を多くすることにより計測の精度を上げることができるからである。
【0019】
また、撮影を行う際には、カメラCに同期して発光するストロボS1ないしS3を内側Iで使用する。これは、高圧鉄塔Tに貼付しているターゲット反射シール1を鮮明に反射させることで、カメラCに写るターゲット反射シール1の貼付位置をより明確にするためである。なお、撮影を行う際は基準尺等の三次元写真計測の処理時に必要とされる基準となる長さを示す物も同時に写す。
【0020】
このような機材位置、構成で各脚を背中にして4方向から撮影を行う。さらに、高圧鉄塔を側面から見た図6(b)に示すように、高さ方向の精度を上げるため、各方向で高さを2段階に分けて撮影する。そして、本実施の形態における高圧鉄塔の変位計測方法においては、高圧鉄塔の下層部のみを計測の対象としている。これは鉄塔の構造上、下層部の変位が上層部ではうち消されてしまう性質に配慮したものである。これにより、計測対象物1基につき合計8枚ずつ撮影されることになり、各脚が写っている写真は各々6枚となる。
【0021】
なお、カメラCの位置は正確に決める必要はない。後述するように、撮影画像のデータを解析することで、逆にカメラCによる正確な撮影位置を割り出すことができるからである。特にカメラCをデジタルカメラとすることで、撮影後その場ですぐに撮影した写真の確認を行うことができる。これにより、撮影画像のデータを持ち帰って確認した後に測定に誤りや見落としがあった場合に再度測定を行わなければならないという、測定者の心的不安を除くことが可能となる。
【0022】
また、本実施の形態においては、より正確な三次元座標値を割り出すべく上述のような撮影位置から上述のようなカメラとレンズの組み合わせを用いて撮影した場合を説明したが、高圧鉄塔の内側であって少なくとも異なる2点から特定された同一点をデジタルカメラで撮影するのであれば、特にその撮影位置や機材の選択は自由である。
【0023】
(第2のステップ)
第1のステップにおける計測対象物の撮影が終了すると、撮影された高圧鉄塔に貼付されているターゲット反射シール1の部分の三次元座標を求めるステップに移る(ST2)。
【0024】
三次元画像計測の処理は、図7のフローチャートに示すように行われる。なお、以下の処理は、予めCD−R等に記憶されているソフトウェアを介して行われ、本実施の形態においては、使用時に情報処理装置にインストールされて用いられる。この情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ等を使用することが可能である。なお、このソフトウェアは情報処理装置に予め格納されていてもよい。
【0025】
まず、カメラCによって撮影された計測対象物である高圧鉄塔Tの写真画像データが情報処理装置に入力される(ST21)。この写真画像データが三次元表示の基礎のデータとなる。また、このステップ21では、撮影に使用したカメラCの基本的な情報、例えば、レンズの焦点距離等も同時に入力される。
【0026】
次に、撮影画像の特徴点をマーキングする(ST22)。これは、三次元表示を行う際に必要となる三次元座標を得るべく、その位置を確定するために行われるものである。ここで、「特徴点」とは、本実施の形態においては、いわゆる必要となる三次元座標の部分に貼付されているターゲット反射シールのことを指す。すなわち、三次元座標を得るために、撮影に際してフラッシュを使用し、ターゲット反射シール1を反射させている。このことによって、ターゲット反射シール1は撮影画像の中で最も光量の大きな部分となり、この大きな光量を手がかりに順次ターゲット反射シール1が検出され、その中心点にマーキングポイントが設置されていく。このマーキングポイントの設置と同時に、ある基準となる点から順に各マーキングポイントに番号が付される。なお、このマーキングポイントの設置は、全てのターゲット反射シール1に対して行われる。
【0027】
三次元写真計測で得られた三次元座標データは、そのデータ群でのみ有効な相対的な位置関係を示すデータであり、時間的に異なる時点の高圧鉄塔の変位を明らかにするためには、統一した座標空間データへの変換が必要である。ステップ23では、統一した座標空間にデータを展開するのに必要な情報を入力する。
【0028】
この情報の入力は、情報処理装置内に記録されている過去の高精度レーザ測定器或いは、三次元写真計測等の方法で計測した三次元座標データがある場合には、同一線上に存在しない3点の測定点の三次元座標値が過去の測定時点から変化していないと仮定してこの情報処理装置により自動的に行われる。この情報を用いるのは実用的で使用しやすいからである。
【0029】
なお、座標情報を入力した3点の測定点の三次元座標値が変位等によりずれていた場合は、三次元表示した場合に全体に歪みが現われることもあるが、この場合であっても視覚的に指定した3点の測定点がずれていたことは容易に判別可能である。但し、この歪みが看過できない場合は、上述のような方法による情報の入力ではなく、変位の影響がない3点を改めて選択し直すか、或いは、例えば、X軸上の2点の測定点の実寸値(距離)と、X軸に直交するY軸またはZ軸の方向を入力する。後者の場合は、残る1軸の方向は自動的に決定される。
【0030】
次に自動対応点処理を行う(ST24)。上述のように、本実施の形態における写真撮影では、計測対象物1基につき合計8枚ずつ撮影されることになり、各脚がそのうち6枚に写ることになる。従って、同一の点を示すターゲット反射シール1も6カ所撮影されていることになる。そのため、これら各写真画像のマーキングポイントのうち、どの点とどの点とが同一の計測点であるかは、ステップ22におけるマーキングポイントを設置するだけでは判別することができない。そこで、各写真画像で同一の計測点を指すマーキングポイントを判別するために、写真画像間のマーキングポイントを相互に関連づける必要がある。そのため、ステップ22で各マーキングポイントに付された番号を利用して各写真画像間のマーキングポイントが関連づけられる。
【0031】
各写真画像間のマーキングポイントが関連づけられた後、この関連づけられたデータを用いて三次元解析処理を行う(ST25)。このステップは、写真画像のデータとしては、本実施の形態では本来同一である計測点について6カ所分のデータが得られるが、これらを1つのデータとしてまとめるためのステップである。この三次元解析処理によって各マーキングポイントごとの三次元座標を得ることができる。同時に、写真を撮影したカメラCの位置座標と向き情報の算出を行うとともに、撮影に使用したカメラCのレンズの歪みの補正も行う。これにより、より正確な三次元座標を得ることができる。
【0032】
この三次元座標を得ると、解析結果として出力する(ST26)。例えば、得られた三次元座標に基づいて構築された高圧鉄塔を情報処理装置で表示させると、図8に示すような三次元モデルMとして表示させることができる。図8では、三次元モデルMの中にカメラCの4カ所の位置座標C’が示されている。また、算出した三次元座標データをテキスト形式で画面に表示した例を図9に表示例10として示す。この表示例10では、最上部にタイトルバー11が設けられている。そして、その下に位置する画面12には左からId13、名称14、算出された三次元座標データ15がそれぞれ表示されている。Id13、名称14は各マーキングポイントに付されたものであり、これによって各マーキングポイントを識別する。三次元座標データ15は、左からX軸、Y軸、Z軸の値をそれぞれ示している。これらの値は、基準となる点から三次元座標上どの程度離れているかを示すものである。なお、スクロールバー16を上下に動かすことで、画面12には示されていない複数のデータを見ることができる。
【0033】
(第3のステップ)
次に、求められた三次元座標に基づいて三次元表示を行う計測データの三次元表示ステップ(ST3)が行われる。
【0034】
このステップではまず、ST2で求めた三次元座標データを情報処理装置に入力する(ST31)。次に入力された三次元座標データの中から三次元表示を行う座標データを選択し、各種の設定を行う(ST32)。設定としては、例えば、入力した座標データを基に再構築画像を表示するラインの太さ、色、マウスやキーボード(以下、「マウス等」という。)を操作した際の動作量等が挙げられる。また、表示部材の部材長を求めるために、座標データの並べ替えも同時に行われる。なお、このマウス等を操作した際の動作量等を設定する必要があるのは、本実施の形態における三次元表示ステップにおいては、マウス等を操作することで、表示された再構築画像を水平・垂直・回転移動させたり、拡大或いは縮小する機能を備えているからである。ここで再構築画像とは、上述した三次元モデルMを構成するのに用いた三次元座標を用いて、本ステップにおいて再び構築された画像のことをいう。
【0035】
本実施の形態における三次元表示ステップでは、複数の三次元座標データを重ねて表示することが可能である。そのため、複数の三次元座標データを重ねて表示するか否かを選択することができる(ST33)。なお、ここでの「複数」とは、複数の高圧鉄塔を意味するものではなく、同一の高圧鉄塔であって、得られた三次元座標データ間に時間差がある、ということを指している。
【0036】
複数の三次元座標データを重ねて表示しない選択を行うと(ST33のN)、ひとつの三次元座標データに基づく再構築画像が表示される(ST34)。図11に再構築画像が表示された画面例を模式図として表わした。高圧鉄塔の各4本の脚の下部に表示されているA〜Dのアルファベットは、表示を行う際に高圧鉄塔の位置関係を判別するためのものである。
【0037】
一方、複数の三次元座標データを重ねて表示する選択を行うと(ST33のY)、まず、表示を行う選択をした複数の三次元座標データのそれぞれ対応する計測点のマッチング処理を行う(ST35)。複数の三次元座標データを重ねて表示するメリットは、例えば、設計時のデータとの比較や経年的に起こる部材の変位の比較検討等、基準とするデータと比較して新たな三次元座標データがどの程度の変位を示したのかを視覚上簡易に理解することができるという点にある。そのためには、基準となるデータとその他の三次元座標データが持つそれぞれのマーキングポイントが三次元座標上で互いに対応している必要がある。さらに、基準となるデータの基準点とその他の三次元座標データの中で基準となる点を一致させる(ST36)。たとえ、複数表示される個々の三次元座標データのマーキングポイントが互いに対応していても、基準となる点がずれていては変位の量も把握できない。これらのマッチング処理(対応付け)がなされることにより、基準となるデータに基づいて再構築された画像とその他の三次元座標データに基づく再構築画像とを比較してどの程度変位したのか等が理解できるようになる。
【0038】
これらの処理が終了すると、複数の三次元座標データを重ねて表示する(ST37)。複数の三次元座標データを重ねて表示した例を示したのが図12である。図12においては、実線が基準となるデータに基づいて再構築した画像である。一方点線で表示されているのは、その他の三次元座標データに基づいて再構築した画像である。この場合、脚Aを基準として両画像を表示していることから、脚Aの部分においてはいずれのデータも一致している。なお、通常は、変位の幅(ずれの値)は、高圧鉄塔の大きさに比して微少である。そのため、例えば変位を30倍に誇張して表示し、その辺がより明らかになるようにしている。図12においても誇張表示がなされている。
【0039】
さらに、例えば、基準となるデータとその他の三次元座標データとのマッチング処理がされた計測点における差分を取ることで、例えば危険度を判断させることも可能である(ST38)。これは予め差分のしきい値を決めておき、変位した部分の差分の値がそのしきい値との関係でどの範囲にあるかによって判断するものである。
【0040】
このように、複数の三次元座標データが重ねて表示されることによって、直感的に視覚を通じてどの程度の変位があるのかを容易に認識することができる。また、計測ミスに基づいて三次元表示を行うと、視覚的に変な高圧鉄塔が構築されて表示されることになるため、計測ミスを容易に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係る高圧鉄塔の変位計測方法を示すフローチャートである。
【図2】三次元写真計測の原理を説明する模式図である。
【図3】ターゲット反射シールを示す模式図である。
【図4】ターゲット反射シールを貼付した場所を示す高圧鉄塔の脚部の模式図である。
【図5】ターゲット反射シールの貼付状態を示すために図4を拡大した模式図である。
【図6】高圧鉄塔の内側から撮影をする方法を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】三次元画像計測の処理ステップを詳しく示すフローチャートである。
【図8】三次元モデルを表わした図である。
【図9】出力された三次元座標データを示す模式図である。
【図10】計測データの三次元表示の流れを示すフローチャートである。
【図11】単数の三次元座標データから表示された再構築画像を示す図である。
【図12】複数の三次元座標データから表示された複数の再構築画像を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
a 受光素子面
b 受光素子面の像
c 対象物
d レンズ中心
C カメラ
I 高圧鉄塔の内側
S ストロボ
T 高圧鉄塔
1 ターゲット反射シール
10 表示例



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の写真に基づく写真画像データを入力するステップと、
前記入力された写真画像データに基づいて写真ごとに三次元座標を取得する位置を特定するステップと、
前記特定された同一点についての写真ごとの位置を関連付けるステップと、
前記関連付けられた同一点についての位置に基づいて三次元座標を得るステップと、を有する三次元計測方法において、
4本の脚で囲まれた高圧鉄塔の内側であって少なくとも異なる2点から前記特定された同一点をカメラを使用して撮影するステップと、
前記三次元計測方法によって得られた三次元座標に基づいて三次元表示を行う表示ステップと、
を備えることを特徴とする高圧鉄塔の変位計測方法。
【請求項2】
前記撮影ステップは、4本の脚で囲まれた高圧鉄塔の内側であって前記脚のうち1本の脚を背にして前記高圧鉄塔の内側を向き、前記脚の他の3本が写るように配置されたカメラを使用して前記各脚ごとに4方向から撮影する撮影ステップであることを特徴とする請求項1に記載の高圧鉄塔の変位計測方法。
【請求項3】
前記表示ステップは、前記三次元座標に基づいて表示される第1の三次元表示と、同一の高圧鉄塔の三次元座標であって前記撮影ステップとは別に時間を前後して撮影された写真画像データから求められた三次元座標に基づく第2の三次元表示とを、同時に表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高圧鉄塔の変位計測方法。
【請求項4】
前記撮影ステップは地上からの高さを複数変更して撮影することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一に記載の高圧鉄塔の変位計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−275984(P2006−275984A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99922(P2005−99922)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年10月23日 社団法人電子情報通信学会北海道支部(幹事学会)発行の「平成16年度 電気・情報関係学会北海道支部連合大会講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月7日 社団法人電子情報通信学会発行の「EiC電子情報通信学会 2005年総合大会講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月25日 北海道工業大学発行の「北海道工業大学研究紀要 第33号」に発表
【出願人】(505116013)
【出願人】(594102784)株式会社ハイデックス和島 (1)
【出願人】(391024892)北海電気工事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】