説明

高度マイクロリソグラフィー用有機反射防止膜用組成物

新規なポリマーおよびそのようなポリマーを含有する新規な反射防止膜用組成物の提供。該組成物は、発色団(4-ヒドロキシ安息香酸、無水トリメリット酸)の結合したポリマー(たとえばエポキシクレゾールノボラック樹脂)を含む。本発明の組成物は、基板(たとえばシリコンウエハ)に塗布して、高いエッチング速度を有する反射防止膜層を形成することができ、該反射防止膜層はその後のフォトレジスト露光および現像工程中、反射を最小限化または抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の技術分野
本発明は、新規なポリマー、このポリマーを含有する新規な反射防止膜用組成物、および当該反射防止膜用組成物をマイクロ電子デバイスの製造に使用する方法に関する。この反射防止膜用組成物は、発色団(たとえば無水トリメリット酸、4-ヒドロキシ安息香酸)をグラフトさせた原料ポリマー(たとえばエポキシクレゾールノボラック樹脂)から形成されたポリマーを含有する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
集積回路製造では、歩留まりを改善し、ユニットケースを減らし、かつチップあたりの演算処理能力を向上させるために、基板ウエハサイズの最大化と、デバイスパターン像のサイズの最小化とが恒常的に求められている。シリコンまたは他のチップ上のデバイスパターン像のサイズは、高度化した遠紫外線(DUV)マイクロリソグラフィー法の出現により、いまやサブミクロンレベルである。
【0003】
しかしながら、半導体デバイスを製造する際に、フォトレジストに付随して頻繁に起こる問題は、活性光線が基板に反射し、基板上に支持されたフォトレジスト層中に跳ね返ってくることである。このような反射性は、フォトレジストの解像力の低下につながる不鮮明なパターンを生じさせやすい。加工後のフォトレジストにおける解像力の低下は、基板が非平面および/または高反射性である場合に特に問題となる。この課題のひとつの解決策は、基板のフォトレジスト層の直下に設けられた反射防止膜を利用することである。
【0004】
このような反射防止膜を形成するための組成物として、ここしばらくの間、典型的な露光波長において高い光学密度をもつ組成物が用いられてきた。この反射防止膜用組成物は、通常、コーティング性を付与する有機ポリマーと、光吸収のための染料とからなる。該染料は、上記組成物中にブレンドされるか、上記ポリマーに化学結合している。熱硬化型反射防止膜用組成物は、上記ポリマーおよび染料に加え、架橋剤を含有する。架橋反応は、熱的に開始され、その後は、通常、組成物中に含まれる酸触媒で遂行される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的な架橋剤としてはメラミンおよびベンゾグアナミンが挙げられる。この種の架橋剤は、通常、反射防止膜用組成物に塩基性を付与するため、これにより、フォトレジストプロファイルにフッティング(footing)を付加させることになる。このフッティングのついたプロファイルは、パターン転写プラズマエッチングプロセスにおいて、基板に転写されてしまうため望ましくない。これはデバイス不良品となる。さらに、この種の架橋剤の使用は、その組成物がトポグラフィを平坦化させるという影響を及ぼすことがある。汎用されている架橋剤は、焼成時に反射防止膜の皮膜を収縮させ、これにより、バイアホールを伴う空隙を生じさせ、バイアホールの上面の被覆が不充分とするか、および/または離れたバイアおよび密集したバイア間の大きな厚みの偏差を生じさせる。このような課題をもたない反射防止膜用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、新規なポリマーおよびこの新規なポリマーを含有する反射防止膜用組成物を広く提供することにより、上記のような従来技術の課題を解決する。
より詳細には、本発明のポリマーは、下式で示される繰り返し単位を含む。
【0007】
【化1】

【0008】
上記式中、各Rは、それぞれ独立に、-OH、-H、および置換または未置換のアルキル基(好ましくはC〜C、より好ましくはC〜C)からなる群より選ばれることが好ましい。Xとしては、チオフェン、ナフトエ酸、アンスラセン、ナフタレン、ベンゼン、カルコン、フタルイミド、パモ酸、アクリジン、アゾ化合物、ジベンゾフラン、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれるものなどの芳香族および/または複素環性の光吸収部位が挙げられる。本明細書で使用される“これらの誘導体”の語は、上記の置換体が芳香族または複素環性である限り、上記の置換体を包含することを意図する。たとえば、下記構造はベンゼンの誘導体といえる。
【0009】
【化2】

【0010】
特に好ましいX基としては、下記からなる群より選ばれるものが挙げられる。
【化3】

【0011】
式中、Rは、-Hおよびアルキル基(好ましくはC〜C、より好ましくはC〜C)からなる群より選ばれ、各Rはそれぞれ独立に電子求引基または電子供与基である。好ましいそのような基としては、-H、アルキル基(好ましくはC〜C、より好ましくはC〜C)、アミノ基、ニトロ基、-SOH、-SO、-COOH、エステル基、アルデヒド基、およびケトン基が挙げられる。
【0012】
R基のいずれも-OHではなく、かつR基のいずれもその構造部分に-OHを含まない態様では、好ましくはXが、その構造中に、1個の-OH基(特には架橋性-OH基)を含有する。さらには、好ましいポリマーは、ポリマーの総重量を100重量%とするとき、約10〜60重量%のX、より好ましくは約20〜60重量%のX、さらに好ましくは約20〜40重量%のXを含有する。反射防止膜用組成物に使用される場合には、上記ポリマーの平均分子量は、好ましくは約3,000〜60,000ダルトン、より好ましくは約3,000〜15,000ダルトン、特に好ましくは約3,000〜5,000ダルトンである。最後に、
【化4】

は、どのようなポリマーであってもよいが、好ましいポリマーは、アクリル、ポリエステル、エポキシノボラック、多糖類、ポリエーテル、ポリイミド、ポリウレタン、およびこれらの混合物からなる群より選ばれるポリマーである。
【0013】
本発明のポリマーは、原料ポリマーと発色団との、好ましくは触媒の存在下の反応により調製される。この反応は、好ましくは溶媒系中、約100〜200℃の温度で、約2〜24時間、実施される。上記原料ポリマーは、反応混合物の総重量を100重量%とするとき、約5〜50重量%、より好ましくは約5〜20重量%の割合で存在させることが望ましい。好ましい原料ポリマーは、その反応部位としてエポキシ環を有していれば、どのようなポリマーであってもよい。このようなものとしては、繰り返し単位中にエポキシ環を有するフェノールノボラック、アクリル、ポリエステル、多糖類、ポリエーテル、およびポリイミド、さらにはエポキシクレゾールノボラックが挙げられる。いずれの場合でも、エポキシ基は、ポリマーにグラフトしようとする発色団の吸収率に基づいて、ポリマー全量の約20〜80重量%、好ましくは約20〜40重量%の割合を占めることが好ましい。
【0014】
原料モノマーの発色団に対するモル比は、約1:0.5〜約1:1、より好ましくは約1:1とすることが望ましい。好ましい発色団は、原料モノマーに共有結合することができる芳香族吸光性化合物のどれでもよく、一般的に下記式で示される。
【化5】

【0015】
式中、Rは、-Hおよび置換もしくは未置換のアルキル基(好ましくはC〜C、より好ましくはC〜C)からなる群より選ばれ、Xは芳香族または複素環性の光吸収部位である。これのようなものとしては、フェノール性-OH、-COOH、および-NH官能基を有する発色団が挙げられる。好ましい発色団の例として、チオフェン、ナフトエ酸、アンスラセン、ナフタレン、ベンゼン、カルコン、フタルイミド、パモ酸、アクリジン、アゾ化合物、ジベンゾフラン、およびこれらの誘導体が挙げられる。特に好ましいこのような化合物は、4-ヒドロキシ安息香酸および無水トリメリット酸である。
【0016】
触媒は、原料ポリマーの総重量を100重量%とするとき、好ましくは約0.1〜5重量%、より好ましくは約0.5〜4重量%の量で存在させる。好ましい触媒としては、ビスフェノールS、p-トルエンスルホン酸、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(BTEAC)、ホスホニウム塩、および他の四級塩などが挙げられる。ポリマー調製に使用される溶媒系は、反応混合物の総重量を100重量%とするとき、約50〜95重量%、より好ましくは約80〜95重量%の割合で反応混合物中に存在させることが望ましい。好ましい溶媒としては、乳酸エチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)などが挙げられる。上記のように原料ポリマーと発色団とを反応させると、上記式Iで示される構造をもつ新規なポリマーが得られる。
【0017】
上記本発明のポリマーは、マイクロリソグラフィーに使用するための組成物(たとえば反射防止膜)の調製に有用であることはいうまでもない。該組成物は、本発明のポリマーの1種または複数種を、好ましくは環境条件で、実質的に均質な分散液を形成しうる充分な時間をかけて、適切な溶媒系中に単に分散または溶解するだけで調製される。好ましい組成物は、組成物の総重量を100重量%とするとき、約1〜10重量%のポリマーを含む。
【0018】
溶媒系としては、マイクロ電子製造環境への使用に適切であればどのような溶媒も挙げることができる。好ましい溶媒系としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、PGMEA、乳酸エチル、シクロヘキサノン、n-メチルピロリドン、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、溶媒系の沸点は、約80〜200℃である。どの添加剤も、上記ポリマーに付随させて溶媒系中に分散させることが好ましい。
【0019】
本発明は、付加的な架橋剤の使用を必要としない点において際立った利点をもたらすことはいうまでもない。すなわち、ポリマーはその内部およびそれ自身で必要な架橋をする。このため、この態様では、反射防止膜用組成物は、添加剤としての架橋ポリアミン剤も実質的になんら含まない(すなわち、0.01重量%未満)。
【0020】
別の態様において、反射防止膜用組成物は別に添加された架橋剤を含むことができる。好ましい架橋剤としては、アミノプラスト(たとえば、POWDERLINK(登録商標)1174、Cymel(登録商標)製品)、エポキシ、ポリオール、無水物、グリシジルエーテル、ビニルエーテル、およびこれらの混合物が挙げられる。特に好ましい架橋剤は、グリコウリル(glycouril)、メラミン、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる架橋剤である。
【0021】
上記架橋剤は、組成物の総重量100重量%に対し、約2〜15重量%、好ましくは約2〜10重量%の割合で存在させることが望ましい。このようにして、本発明の組成物は、約80〜250℃、より好ましくは約115〜250℃の温度で架橋させることが望ましい。
【0022】
多くの他の付加的な成分を上記組成物にさらに含ませることができることはいうまでもない。典型的な付加成分としては、界面活性剤、接着促進剤、および低分子量ポリマーなどが挙げられる。
【0023】
本発明の反射防止膜用組成物を基板(たとえば、Si、Al、W、WSi、GaAs、SiGe、Ta、およびTaNのウエハ)に塗布する方法は、スピンコート法などの従来の塗布方法のどれでも用いて、単に、所定量の本発明の組成物を、基板表面(平坦な表面でも表面に形成されたバイアまたは孔を有するものでも)に塗布することを含む。該膜は、上記組成物の少なくともほぼ架橋温度(たとえば、115〜205℃)に加熱して、どこの厚みもエリプソメータによる5回測定の平均値で約200〜10,000Åの硬化膜とすることが望ましい。その後、この硬化膜上にフォトレジスト層を設け、次いで露光し、現像した後、フォトレジストをエッチングする。勿論、193nmのフォトレジストであればどれでも本発明で使用できる。
【0024】
本発明に係る反射防止膜は、エッチング速度が速い。たとえば、硬化した反射防止膜のレジストに対するエッチング速度選択比(すなわち、反射防止膜のエッチング速度をフォトレジストのエッチング速度で除す)は、エッチング剤としてHBr/O(60/40)を使用し、DUVフォトレジストを使用する場合、少なくとも約1.0好ましくは約1.2である。また、本発明の反射防止膜は、193nmにおけるk値(屈折複素数の虚数成分)が、少なくとも約0.20、好ましくは少なくとも約0.25である。すなわち、本発明の組成物から形成され、膜厚約300Åの硬化膜は、約193nmの波長の光を少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約98%吸収することができる。さらに、本発明の反射防止膜は、典型的なフォトレジスト溶剤(たとえば乳酸エチル)に実質的に不溶である。後で規定するような溶出試験を課したとき、本発明の反射防止膜層の溶出率は、約5%未満、好ましくは約1%未満である。後で規定するような中間層試験を課したとき、該反射防止膜層は、約5%未満、好ましくは約1%未満の値を得る。最後に、該膜は、193nmフォトレジストにおける、約0.1μmの解像度を得るために使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましい実施態様の詳細な説明
【実施例】
【0026】
以下の実施例は本発明に係る好ましい方法を説明するものである。しかしながら、これら実施例は説明のためのものであって、これにより本発明の全体の範囲をなんら限定するべきではないと理解されるべきである。
実施例1
1.架橋剤を用いない反射防止膜
エポキシクレゾールノボラック樹脂(ECN 1299,ダウケミカル社より入手)を、乳酸エチル:PGMEAの75:25溶媒溶液中に溶解して、固形分含量ほぼ20重量%の反応混合物を得た。この反応混合物に、等モル量の無水トリメリット酸(アルドリッチケミカル社より入手)を加えた。この混合物に、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(BTEAC)を添加し(エポキシクレゾールノボラック樹脂に対し2重量%)、反応混合物を、窒素雰囲気下、油浴中、120℃で2時間加熱した。その後、反応混合物を冷却し、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)を205℃における架橋用触媒として加えることにより、反射防止膜コーティング剤(固形分含量ほぼ5重量%で)を調製した。表1および2は、母液および反射防止膜用組成物の各組成を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
I.物性の評価
スキームAは、ポリマー調製過程における反応を示す。
【化6】

【0030】
反射防止膜用組成物の物性を評価した。まず、組成物を2500rpmで60秒間スピンコートして溶媒を除去し、次いで205℃で60秒間焼成して熱硬化したポリマー膜を形成した。Woolam社エリプソメータを用いて膜厚を測定した。
【0031】
1.溶出(Stripping)試験
架橋後の膜が、典型的なフォトレジスト溶剤に本質的に不溶であることを確かめるために、組成物に溶出試験を課した。この試験では、上記のように組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして焼成した。次いで、エリプソメータを用いて、5箇所で膜厚を測定し、初期の平均膜厚を決定した後、膜を乳酸エチルまたはPGMEA液に30秒間曝した。30秒後、ウエハを2500〜5000rpmでスピン回転させて膜を乾燥し、その後、120℃で焼成して残留溶媒をすべて除去した。再び5箇所で膜厚を測定し、最終的な平均膜厚を決定した。溶出量は、初期および最終の各平均膜厚の差である。溶出%は、下記式で示される。
【0032】
【数1】

【0033】
b.中間層(Interlayer)試験
この試験は、反射防止膜組成物層とフォトレジスト層との相互作用を評価するために行った。シリコンウエハに、上記のような本発明の組成物をコーティングした。上記溶出試験において説明したように初期の平均膜厚を決定した後、193nmの化学増幅されたフォトレジスト((i)ARCH GARS7102,ARCHケミカルズ社;環状オレフィン無水マレイン酸系フォトレジストを表2〜4および6に示す組成物用に使用した;(ii)住友製AX4838A-25シリーズのフォトレジストを表7に示す組成物用に用いた。)を、該フォトレジストを1500〜2500rpmで60秒間スピンコーティングすることにより、上記膜の上面にコーティングし、130℃で60秒間焼成した。フォトレジストを193nmの光に3〜10秒間露光した後、130℃で60秒間、露光後焼成した。次いで、フォトレジストを、市販の現像剤((i)シプレイ(Shipley)社製品のMF319をARCHフォトレジストに用い、 (ii)住友製フォトレジストにはモーゼスレイクインダストリーズ(Moses Lake Industries)製品のPD523ADを使用した。)を用いて現像した後、脱イオン水ですすいだ。上記溶出試験において説明したように最終の平均膜厚を決定した。反射防止膜組成物層とフォトレジスト層とのインターミキシング量は、初期と最終との間の平均膜厚の差異である。インターミキシング%は下記式で示される。
【0034】
【数2】

【0035】
c.バイア充填操作
組成物をバイアウエハの小片(チップ)に適用して、組成物のバイア充填特性を評価した。バイアは、直径0.20μmで、各の深さは7000〜10,000Åであった。組成物をチップ上に、400rpmで20秒間、800rpmで20秒間、2000rpmで20秒間スピンコートした。次いでチップを205℃で60秒間焼成した後、切断して走査型電子顕微鏡で写真撮影した。
【0036】
II.結果
上記試験を行った場合、この実施例のパート1の組成物の溶出試験結果は、15Åであり、中間層試験の結果は18Åであった。さらに調製物を、193nmフォトレジストとのリソグラフィー適合性(compatibility)について、レジストにパターン描写する193nm露光装置を用いて評価したところ、調製物は、優れたレジストとの適合性を示した。フォトレジストプロファイル上にはフッティングあるいはアンダーカットは全くみられず、またフォトレジストは反射によるノッチングまたは定在波を全く示さなかったことから、組成物による良好な反射制御が示唆された。このサンプルのSEM写真を図1に示す[(1)PAR710;SB:130℃/60秒;PEB:130℃/60秒;厚み:3300Å;ASML PAS5500/950 スキャナー;環状照明;マスク TM99LF;現像 OPD5262/60秒;露光8.3mJ;および(2)反射防止膜−厚み:1051Å;200SSrpm;焼成:205℃/60秒]。
【0037】
2.POWDERLINK(登録商標)架橋剤を用いた反射防止膜
架橋剤(POWDERLINK(登録商標)1174)を添加し、反射防止膜用組成物の各成分の量を表3に示すようにした以外は、この実施例のパート1に記載した手順を繰り返した。
【0038】
【表3】

【0039】
この組成物を、この実施例のパート1に示すようなウエハ上に塗布し、平均厚み1070Åの硬化膜を形成した。溶出試験値は0Åであり、中間層試験値は5Åであった。
【0040】
3.架橋剤を用いた反射防止膜
架橋剤(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)を添加し、反射防止膜用組成物の各成分の量を表4に示すようにした以外は、この実施例のパート1に記載した手順を繰り返した。
【0041】
【表4】

【0042】
この組成物を、この実施例のパート1に示すようなウエハ上に塗布し、平均厚み1060Åの硬化膜を形成した。溶出試験値は10Åであり、中間層試験値は20Åであった。
【0043】
実施例2
1.トリビニルエーテル架橋剤を用いた反射防止膜
エポキシクレゾールノボラック樹脂(ECN 1299)を、乳酸エチル:PGMEAの75:25溶媒溶液中に溶解して、固形分含量ほぼ20重量%の反応混合物を得た。この反応混合物に、等モル量の4-ヒドロキシ安息香酸を加えた。この混合物に、BTEACを添加し(エポキシクレゾールノボラック樹脂に対し2重量%)、反応混合物を、窒素雰囲気下、油浴中、120℃で24時間加熱した。反応混合物を冷却し、トリメチロールプロパントリビニルエーテル(架橋剤,アルドリッチケミカル社より入手)およびp-TSAを205℃における架橋用触媒として加えることにより、反射防止膜コーティング剤(固形分含量ほぼ5重量%で)を調製した。表5および6は、母液および反射防止膜用組成物の各組成を示す。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
スキームBは、ポリマー調製過程における反応を示す。
【化7】

【0047】
本発明の組成物から形成される皮膜とともに本発明の組成物の物性を実施例1において説明したように分析した。組成物の平均膜厚は570Åであり、溶出試験値は2.5Åであり、中間層試験値は13Åであった。
【0048】
2.POWDERLINK(登録商標)架橋剤を用いた反射防止膜
架橋剤を添加し、反射防止膜用組成物の各成分の量を表7に示すようにした以外は、この実施例のパート1に記載した手順を繰り返した。
【0049】
【表7】

【0050】
この組成物を、この実施例のパート1に示すようなウエハ上に塗布し、平均厚み390Åの硬化膜を形成した。溶出試験値は3.5Åであり、中間層試験値は13Åであった。このサンプルのSEM写真を図2〜4に示す。図2は、フォトレジストとしてAR237J(JSRマイクロエレクトロニクス社より入手)を使用し、下記のパラメータを使用したサンプル(110nm,1:1.4L/S)を示す:(1)レジスト−操作:自動;SB:130℃/90秒;厚み:330nm;露光装置:ASML PAS5500/950;NA 0.63,U 0.87/0.57;環状照明;マスク:TM99LF;E 16.5+0.5mJ/cm;F 0.0+0.1;FEM E17xF17;PEB:125℃/90秒;現像:OPD262-LD30秒;および(2)反射防止膜−コーティング:2700rpm/60秒;焼成:205℃/90秒;および厚み:388Å。
【0051】
図3は、フォトレジストとしてTArF6063(TOK社より入手)を使用し、下記のパラメータを使用したサンプル(110nm,1:1L/S)を示す:(1)レジスト−操作:マニュアル;SB:130℃/90秒;厚み:350nm;露光装置:ASML 5500/950;NA 0.63,U 0.87/0.57;環状照明;マスク:TM99LF;E 13.0+0.3mJ/cm;F 0.0+0.1;FEM E17xF17;PEB:130℃/90秒;現像:OPD5262-LD60秒;および(2)反射防止膜−コーティング:1500rpm/60秒;焼成:205℃/90秒;および厚み:387Å。
【0052】
図4は、フォトレジストとしてPAR718(住友より入手)を使用し、下記のパラメータを使用したサンプル(110nm,1:1L/S)を示す:(1)レジスト−操作:マニュアル;SB:130℃/60秒;厚み:350nm;露光装置:ASML 5500/950;NA 0.63,σ 0.87/0.57;環状照明;マスク:TM99LF;E 25.0+0.3mJ/cm;F 0.0+0.1;FEM E17xF17;PEB:130℃/60秒;現像:OPD262-LD60秒;および(2)反射防止膜−コーティング:1500rpm/60秒;焼成:205℃/90秒;および厚み:388。
【0053】
考察
上記実施例で調製された本発明の各反射防止膜用組成物は、基板上の優れた皮膜特性で示されるように基板に対し優れた接着性を示した。さらに、エポキシの開環は、発色団の無水結合部位と反応し、熱硬化型架橋を生じさせるヒドロキシ官能基をもたらしたと結論づけられた。熱硬化型架橋の存在は、硬化膜を極性溶媒に露光したとき、膜厚ロスをほとんど示さないという事実で立証された。SEM写真は、この組成物を用いて得られた優れたフォトレジストプロファイルを示した。このことは、本組成物が、寸法制御の良好なフォトレジストを得るために必要とされる優れた反射防止性能を有することを示している。上記ポリマー由来のヒドロキシ官能基は、発色団の無水環を開環させ、-COOH官能基をもたらし、フォトレジストが曝されるおそれのあるアミン含有塩基性官能基を完全に捕捉または中和する状態にしたと考えられる。このことは、本発明の組成物を、二重ダマスカスまたは従来のリソグラフプロセスのいずれにおいても有用なバリア材料とさせる。最後に、硬化した組成物は、わずか300〜400Åの厚みがあれば、193nmにおいて0%反射性を示した。このように極薄の、反射防止膜組成物であることによって、反射防止膜エッチング過程におけるフォトレジスト損失は極最小限ですみ(すなわち、エッチングバイアスは最小限である)、これにより、基板エッチング過程における、フォトレジストパターンの転写を有効かつ効果的にし、より良好なリソグラフィー像が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1のパート1に記載した反射防止膜用組成物を被覆した各シリコンウエハの断面図を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】市販フォトレジストを使用した実施例2のパート2に記載した反射防止膜用組成物を被覆した各シリコンウエハの断面図を示すSEM写真である。
【図3】別の市販フォトレジストを使用したこと以外は図2と同様のSEM写真である。
【図4】別の市販フォトレジストを使用したこと以外は図2および3と同様のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で示される繰り返し単位を含むポリマー:
【化1】

式中、
各Rは、それぞれ独立に、-OH、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれ、かつ
Xは、芳香族または複素環性の光吸収部位であり、Rのいずれも-OHではない時、Xは1個の-OHを含有する。
【請求項2】
Xが、チオフェン、ナフトエ酸、アンスラセン、ナフタレン、ベンゼン、カルコン、フタルイミド、パモ酸、アクリジン、アゾ化合物、ジベンゾフラン、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる芳香族部分を含有する請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Xが、下記からなる群より選ばれる式で示される請求項2に記載のポリマー:
【化2】

式中、Rは、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれる。
【請求項4】
上記式中、
【化3】

が、アクリル、ポリエステル、エポキシノボラック、多糖類、ポリエーテル、ポリイミド、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーの平均分子量が、約3,000〜60,000ダルトンである請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
Xが、前記ポリマーの総重量を100重量%とするとき、約10〜60重量%の割合で該ポリマー中に存在する請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
溶媒系に分散されたポリマーを含む反射防止膜用組成物であって、前記ポリマーが下記式で示される繰り返し単位を含むことにより改良された反射防止膜用組成物:
【化4】

式中、
各Rは、それぞれ独立に、-OH、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれ、かつ
Xは、芳香族または複素環性の光吸収部位であり、Rのいずれも-OHではない時、Xは1個の-OHを含有する。
【請求項8】
Xが、チオフェン、ナフトエ酸、アンスラセン、ナフタレン、ベンゼン、カルコン、フタルイミド、パモ酸、アクリジン、アゾ化合物、ジベンゾフラン、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる芳香族部分を含有する請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Xが、下記からなる群より選ばれる式で示される請求項8に記載の組成物:
【化5】

式中、Rは、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれる。
【請求項10】
上記式中、
【化6】

が、アクリル、ポリエステル、エポキシノボラック、多糖類、ポリエーテル、ポリイミド、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマーの平均分子量が、約3,000〜60,000ダルトンである請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
Xが、前記ポリマーの総重量を100重量%とするとき、約10〜60重量%の割合で該ポリマー中に存在する請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、架橋剤、触媒、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる化合物をさらに含む請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記化合物が、アミノプラスト、エポキシ、ポリオール、無水物、グリシジルエーテル、ビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる架橋剤である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記架橋剤が、グリコウリル、メラミン、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記化合物が、p-トルエンスルホン酸、ビスフェノールS、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる触媒である請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒系が、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、乳酸エチル、シクロヘキサン、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる溶媒を含有する請求項7に記載の組成物。
【請求項18】
下記式で示される繰り返し単位を含有する架橋ポリマーを含む硬化した反射防止膜:
【化7】

式中、
各Rは、それぞれ独立に、-OH、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれ;
Xは、芳香族または複素環性の光吸収部位であり、かつ
XまたはRの少なくとも1つが、-OR基であるか、または含み、ここでのRは架橋基である。
【請求項19】
Xが、チオフェン、ナフトエ酸、アンスラセン、ナフタレン、ベンゼン、カルコン、フタルイミド、パモ酸、アクリジン、アゾ化合物、ジベンゾフラン、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる芳香族部分を含有する請求項18に記載の膜。
【請求項20】
Xが、下記からなる群より選ばれる式で示される請求項19に記載の膜:
【化8】

式中、Rは、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれる。
【請求項21】
上記式中、
【化9】

が、アクリル、ポリエステル、エポキシノボラック、多糖類、ポリエーテル、ポリイミド、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項18に記載の膜。
【請求項22】
前記ポリマーの平均分子量が、約3,000〜60,000ダルトンである請求項18に記載の膜。
【請求項23】
Xが、前記ポリマーの総重量を100重量%とするとき、約10〜60重量%の割合で該ポリマー中に存在する請求項18に記載の膜。
【請求項24】
前記膜が、基板に隣接している請求項18に記載の膜。
【請求項25】
前記基板が、Si、Al、W、WSi、GaAs、SiGe、Ta、およびTaNのウエハからなる群より選ばれる請求項24に記載の膜。
【請求項26】
前記Rが、グリコウリル、メラミン、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる請求項24に記載の膜。
【請求項27】
請求項7に記載の組成物の所定量を、基板に塗布し、その上に膜を形成する工程を含む、反射防止膜用組成物の使用方法。
【請求項28】
前記塗布工程が、前記組成物を前記基板表面上にスピンコーティングする工程を含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記基板が、そこに形成された底面および側壁で規定される孔を有し、前記塗布工程が、前記組成物を前記底面および側壁の少なくとも一部に塗布することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記塗布工程の後、該層を115〜120℃の温度で焼成し、硬化層を得る工程をさらに包含する請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記焼成した層に、フォトレジストを塗布する工程をさらに包含する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
下記の工程をさらに包含する請求項31に記載の方法:
前記フォトレジストの少なくとも一部を活性光線に露光する工程;
該露光したフォトレジストを現像する工程;および
該現像したフォトレジストをエッチングする工程。
【請求項33】
Xが、チオフェン、ナフトエ酸、アンスラセン、ナフタレン、ベンゼン、カルコン、フタルイミド、パモ酸、アクリジン、アゾ化合物、ジベンゾフラン、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる芳香族部分を含有する請求項27に記載の方法。
【請求項34】
Xが、下記からなる群より選ばれる式で示される請求項33に記載の方法:
【化10】

式中、Rは、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれる。
【請求項35】
上記式中、
【化11】

が、アクリル、ポリエステル、エポキシノボラック、多糖類、ポリエーテル、ポリイミド、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項27に記載の方法。
【請求項36】
Xが、前記ポリマーの総重量を100重量%とするとき、約10〜60重量%の割合で該ポリマー中に存在する請求項27に記載の方法。
【請求項37】
下記からなる積層体:
表面を有する基板;
該基板表面に隣接する硬化した反射防止膜であって、溶媒系に分散したポリマーおよびビニルエーテル架橋剤を含む組成物から形成される反射防止膜;および
該反射防止膜組成物層に隣接するフォトレジスト層。
【請求項38】
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリビニルエーテルである請求項37に記載の積層体。
【請求項39】
原料ポリマーと発色団との反応工程を含む方法であって、
前記原料ポリマーがエポキシ環を含有する繰り返し単位を含有し、
前記発色団が下記式で示され、
【化12】

(式中、Rは、-Hおよびアルキル基からなる群より選ばれ、Xは、芳香族または複素環性の光吸収部位である。)
前記反応工程中、前記エポキシ環が開環し、該開環した部位と前記発色団が結合する、最終ポリマーの調製方法。
【請求項40】
前記反応工程が、触媒の存在下で行われる請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記反応工程が、約100〜200℃の温度で行われる請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記原料ポリマーが、該原料ポリマーの総重量を100重量%とするとき、約20〜80重量%のエポキシ環を含む請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記原料ポリマーの前記発色団に対するモル比が、約1:0.5〜約1:1である請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記発色団が、無水トリメリット酸、4-ヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれる請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−504807(P2006−504807A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−566621(P2003−566621)
【出願日】平成14年12月13日(2002.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2002/040074
【国際公開番号】WO2003/067329
【国際公開日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【出願人】(500499508)ブルーワー サイエンス アイ エヌ シー. (45)
【Fターム(参考)】