説明

高温接合組立体及びその耐摩耗性皮膜システム

【課題】耐摩耗性皮膜システムを提供する。
【解決手段】本耐摩耗性皮膜システム(30)は、ガスタービンエンジンの高温構成要素(22、24)を含む組立体(20)の表面(26、32)のような、高温における接触摩耗を受ける表面(26、32)を保護するのに適している。構成要素(22、24)は、互いに摩耗接触状態になった表面(26、32)を有する。表面の1つ(26)は、他方の構成要素(24)の表面(32)と摩耗接触状態になるようになった耐摩耗性皮膜システム(30)をその上に有する。本耐摩耗性皮膜システム(30)は、TiAlN及びCrNの交互層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはガスタービンエンジンのような高温用途で使用するのに適した構成要素及び材料に関する。より具体的には、本発明は、高温を受ける接合部(継手)及びそのような継手(接合部)のための耐摩耗性皮膜システムを備えた組立体を対象とする。
【背景技術】
【0002】
それらの効率を高めるために、ガスタービンエンジンにおけるより高い作動温度が継続して求められている。高温特性における大きな進歩は、その高温特性により構成要素が高性能ガスタービンエンジンの圧縮機、タービン、燃焼器及びオーグメンタセクション内の作動温度に長時間露出されるのに耐えることが可能になる鉄、ニッケル及びコバルト基超合金の調合物により、達成されてきた。関節継手で取付けることを必要とする一部の構成要素は、ガスタービンエンジン内の高温、振動及び腐食環境の観点で設計課題を発生させている。例えば、他の構成要素をピボット固定するために使用されるピン、トラニオン及びその他の構成要素は、隣接する構成要素に匹敵しかつ高温において長時間にわたり接触摩耗及び腐食に対する耐性(耐接触摩耗性及び耐食性)を示す物理特性を有していなければならない。
【0003】
図1は、構成要素14(断面で示す)をピボット支持して、該構成要素14がピン12の軸線の周りで枢動するのを可能にするピン12によって形成された関節継手を含む組立体10を示している。一例として、ピン12は、ガスタービンエンジンで使用して空気冷却式タービン構成要素への冷却空気流れを調整するタイプのようなフラッパバルブのためのヒンジピンとすることができる。ピン12及び構成要素14間の直径間隙は、例示目的のために誇張している。図1に概略的に示すように、ピン12のシャンク16は、ピン12に対する構成要素14の枢動及び振動の結果として激しく摩耗している。摩耗は主として、ピン12のシャンク16上に発生しているが、逆の状況も存在する可能性があることが予見される。ピン12及び構成要素14の摩耗表面に対する局所的損傷は、タービンエンジンの過酷な環境内での腐食の作用によって加速されるおそれがある。
【0004】
1つの特定の用途では、ニッケル基合金インコネル(IN)625(重量で、約21.5%のクロム、約9.0%のモリブデン、約3.6%のニオブ、約2.5%の鉄、約0.2%のアルミニウム、約0.2%のチタン、約0.2%のマンガン、約0.2%のケイ素、約0.05%の炭素、残部のニッケル及び随伴不純物の公称組成)は、コバルト基合金L−605(HA25)(重量で、約20.0%のクロム、約10.0%のニッケル、約15.0%のタングステン、約0.5%の炭素、残部のコバルト及び随伴不純物の公称組成)で形成されたヒンジで固定した場合に、急速に摩耗することが観察された。この材料の組合せはガスタービンエンジン用途では非常に高い信頼性を有するが、より厳しい作動条件では、一層急速な摩耗率を生じることになり、同時にこの組立体に対してより長い摩耗寿命が求められている。
【0005】
窒化物及び炭化物のような耐過激衝突及び侵食性被膜材料を含む多種多様な被膜材料が、公知でありかつガスタービンエンジンの構成要素を保護するために広く使用されている。例えば、Gupta外に対する米国特許第4,904,528号(窒化チタン(TiN)被膜)、Sue外に対する米国特許第4,839,245号(窒化ジルコニウム(TiN)被膜)、Naik外に対する米国特許第4,741,975号(炭化タングステン(WC)及び炭化タングステン/タングステン(WC/W)被膜)、Bruce外に対する米国特許第7,186,092号(炭化タンタル(TaC)、炭化ニオビウム(NbC)、炭化チタン(TiC)、炭化チタンアルミニウムクロム(TiAlCrC)、窒化チタンアルミニウムクロム(TiAlCrN)、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、炭化チタンアルミニウム(TiAlC)、及び炭化ボロン(B4C)の組合せ)、並びにBruce外に対する米国公開特許出願第2009/0011195号及び第2010/0078308号(TiAlN、窒化クロム(CrN)及び炭窒化チタンケイ素(TiSiCN)の組合せ)を参照されたい。しかしながら、これらの被膜材料は主として、連続して接触摩耗を受ける表面とは対照的に、ブレードの耐衝突及び侵食性を促進させることを意図している。
【0006】
接触摩耗を受ける表面に対して意図した耐摩耗性被膜はまた、ガスタービンエンジンの高温環境内で使用することも提案されている。実施例は、市場購入可能なTRIBALOY(登録商標)T400及びT800合金のような、炭化クロム及びCo−Mo−Cr−Si合金の溶射被膜を含む。これらの耐摩耗性材料はまた、Hasz外に対する米国特許第6,398,103号に教示されているようにフォイルとして施工されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,186,092号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それにも拘わらず、ピボット継手組立体がガスタービンエンジンの過酷な環境内でより長い実働寿命を示すことができるようになる材料組合せの改良に対する継続的な必要性が存在する。
【0009】
本発明は、ガスタービンエンジンの高温構成要素によって形成された関節継手の表面のような、高温における接触摩耗を受ける表面を保護するのに適した耐摩耗性皮膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様によると、組立体を提供し、本組立体は、互いに摩耗接触状態になった表面を有する第1及び第2の構成要素を含む。表面の1つは、他方の構成要素の表面と摩耗接触状態になるようになった耐摩耗性皮膜システムをその上に有する。耐摩耗性皮膜システムは、TiAlN及びCrNの交互層からなる。
【0011】
本発明の別の態様は、物理蒸着法を使用してTiAlN及びCrNの交互層を堆積させることによって、上記した本組立体を形成する方法である。
【0012】
本発明の別の態様は、本組立体が第1及び第2の構成要素によって形成されたピボット継手を含み、このピボット継手において、第1の構成要素がピボット軸線を形成し、また第2の構成要素が、第1の構成要素にピボット結合されて、該第1の構成要素のピボット軸線の周りで枢動するようになる。
【0013】
本発明の技術的効果は、高温において摩耗接触状態になった表面の耐摩耗性を大幅に向上させることができることである。本発明は、第1及び第2の構成要素に対して同一の母材を使用することに基づいて、およそ50倍ほど摩耗を減少させることができる。母材の異なる組合せを使用することにより、更なる改良を達成することができる。
【0014】
本発明のその他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から一層良好に分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ピボット継手を形成した2つの構成要素を含みかつ枢動運動及び振動の結果として継手が摩耗状態になった組立体の部分断面図。
【図2】本発明の実施形態により構成要素の1つに耐摩耗性皮膜システムが設けられた、図1と同様な組立体の部分断面図。
【図3】本発明の実施形態による耐摩耗性皮膜システムの走査イメージを示す図。
【図4】本発明の耐摩耗性皮膜システムを含む、皮膜組成物に対して行った比較摩耗テストによるデータを示す棒グラフ。
【図5】本発明の耐摩耗性皮膜システムを含む、皮膜組成物に対して行った比較摩耗テストによるデータを示す棒グラフ。
【図6】本発明の耐摩耗性皮膜システムを含む、皮膜組成物に対して行った比較摩耗テストによるデータを示す棒グラフ。
【図7】本発明の耐摩耗性皮膜システムを含む、皮膜組成物に対して行った比較摩耗テストによるデータを示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、2つの構成要素22及び24が互いにピボット結合されてピボット継手を形成しているものとして示している点で、図1に示したものと同様である組立体20を示している。特定の実施形態ではまた本発明を説明する目的で、第1及び第2の構成要素22及び24はそれぞれ、タービンエンジンの空気冷却式構成要素への冷却空気流れを調整するために使用するフラッパバルブのようなヒンジピン22及びフラッパバルブ24であるが、その他の用途も予見されかつそれらもまた本発明の技術的範囲内に含まれる。そのような用途では、ピン22はフラッパバルブ24をピボット支持して、バルブ24が該ピンの軸線の周りで枢動(ピボット動)するのを可能にする。図1の激しく摩耗したシャンク16とは対照的に、ピン22の円筒形状シャンク26は、該ピン22の母材28上に位置した皮膜システム30を備えたものとして概略的に断面で示している。本発明の好ましい形態によると、皮膜システム30は、ガスタービンエンジンの作動環境内における高温及び振動により生じる可能性がある厳しい摩耗条件を含む、ピン22及びバルブ24間の接触の結果引き起こされる摩耗に対して耐性を有する。皮膜システム30は、ピン22のシャンク26のみに施工されたものとして示しているが皮膜30は、バルブ24の対向する表面30上に堆積させることができることを理解されたい。ピン22及びバルブ24間の直径間隙は、図2では例示の目的で誇張されていることに留意されたい。ガスタービンエンジン内でのフラッパバルブ用途における直径間隙は一般的に、約75〜約300マイクロメートルの範囲となり、またシャンク26及びバルブ24の対向する表面32間の接触は一般的に、シャンク26の軸方向長さに沿って約10〜約300ミリメートルの範囲となるが、より小さい及びより大きい間隙並びに接触長さもまた、本発明の技術的範囲内にある。
【0017】
図1に関して前述したように、図2に示すタイプの組立体における1つの特定の用途では、フラッパバルブ24はニッケル基合金インコネル(IN)625で形成され、またヒンジピン22はコバルト基合金L−605で形成される。この材料の組合せは、ますます過酷になったエンジン作動条件において高い摩耗率を示すので、本発明の皮膜システム30が、摩耗を減少させかつ組立体20のより長い寿命を促進させるのに役立つ。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、皮膜システム30は、セラミック材料の多層、より具体的にはそれらの間にいかなる介在セラミック又は金属層も備えていない状態での窒化チタンアルミニウム(TiAlN)及び窒化クロム(CrN)の組合せの多層(例えば、交互層)を含む。図3にTiAlN−CrN皮膜システム30の実施例を示しており、この図では、TiAlN及びCrNの個々の交互層は、それぞれ交互した明及び暗層として見ることができる。皮膜システム30の各個々の層は、少なくとも0.20マイクロメートルの厚さまた約0.80マイクロメートルの最大厚さを有しており、好適な範囲は約0.30〜0.50マイクロメートルである。TiAlN及びCrNの厚さは、同一であるのが好ましいが、TiAlN又はCrN層は、意図的に他方よりも厚くなるように堆積させることができると予見される。個々の層は、適切な数及び厚さで堆積させて皮膜システム30の所望の厚さを得る。皮膜システム30全体は、少なくとも6マイクロメートル、例えば約30〜約50マイクロメートルの厚さを有するのが好ましい。80マイクロメートルを超える皮膜厚さは、耐摩耗性に関しては不必要であると思われる。ボンディングコート(図示せず)を使用してピン22の母材28に対する皮膜システム30の付着を促進させることができる。ボンディングコートは、例えば1つ又はそれ以上のチタン層のような1つ又はそれ以上の金属層で構成することができる。
【0019】
本発明の皮膜は、物理蒸着(PVD)法によって堆積させるのが好ましく、従って一般的に溶射法によって皮膜を堆積させた場合に生じることになる非円柱状、不規則性かつ多孔質微細組織と対照的に円柱状かつ/又は緻密微細組織を有することになる。特に好適なPVD法には、EB−PVD、陰極アークPVD及びスパッタリングが含まれ、とりわけ陰極アークが好ましいと思われる。好適なスパッタリング法には、それに限定されないが直流ダイオードスパッタリング、無線周波数スパッタリング、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、プラズマ強化マグネトロンスパッタリング及びステアードアークスパッタリングが含まれる。陰極アークPVD及びプラズマ強化マグネトロンスパッタリングは、それらの高い被覆率により皮膜を形成するのに特に好ましい。堆積は、窒素源(例えば、窒素ガス)を含む雰囲気内で実行して堆積皮膜システム30の窒化物成分を形成することができる。皮膜システム30で使用するあらゆる金属ボンディングコートは、例えばアルゴンのような不活性雰囲気内で堆積させるのが好ましい。
【0020】
皮膜システム30は、約50マイクロインチ(約1.2マイクロメートル)Ra又はそれ以下の表面粗さを有するのが好ましい。ピンの母材28及び/又は皮膜システム30は、研磨加工を行なってこの表面仕上げを達成することができる。皮膜堆積の前に母材28の研磨加工を行なって滑らかな皮膜システム30の堆積を促進させて、皮膜堆積の後に付加的な研磨加工を行なって所望の皮膜表面粗さを得るのを保証するようにすることができる。研磨加工はまた、被覆プロセスの中間ステップとして実行することができる。
【0021】
本発明に到る予備的研究において、約75°F、400°F及び750°F(約75℃、200℃及び400℃)の温度において試料に対して摩耗テストを行なった。摩耗テストは、約25×3.75mmの接触ゾーンを使用した往復摺動摩耗テストであり、摺動運動が、接触ゾーンのより小さい寸法に平行な方向に約1.5mmの距離にわたり行われるようになっていた。テスト試料は、M−152、合金17−4PH、A−286、IN−718、Nitronic60(登録商標)及びアルミニウム2219を含む、チタン、鋼、ニッケル及びアルミニウム合金で形成された。評価皮膜には、5つの窒化物皮膜、つまりTiN、TiAlN、TiSiCN、TiAlN及びCrNの交互層、並びにTiSiAlN及びCrNの交互層が含まれた。比較のために、付加的テスト試料がWC/Coサーメット及びTRIBALOY T400で被覆され、ここで、TRIBALOY T400は、Deloro Stellite Inc.から入手可能であるコバルト基ハードウェア合金であった。優れた耐摩耗性皮膜材料として公知であるが、WC/Co及びTRIBALOY T400皮膜は、それらがHVOFによって堆積されてそれらの皮膜を小直径ピン上に堆積させるのが困難になりまたフラッパバルブに望ましい表面仕上げを達成するための高価な表面仕上げを必要とすることになるので、フラッパバルブ及び同様の用途における許容可能な対象であるとは考えられなかった。実験皮膜組成物の中で、TiAlN及びCrNの交互層で形成された皮膜は、最良の性能でありかつWC/Coの耐摩耗性に近い耐摩耗性を示した。
【0022】
予備的研究の結果に基づいて、TiAlN及びCrNの交互層で形成された皮膜について、第2の研究を行なった。図4〜図7は、第2の研究で得られたデータを要約したグラフを含んでいる。評価テスト試料は、アンビル及びストラカを含むように構成された。摩耗テスト試料は、アンビル上の約4×12mmの接触表面を使用しており、ストラカの初期運動及びアンビルの接触表面に垂直な方向に生じる衝突に接触表面の長さ方向へのストラカの摺動運動が後続するようになっていた。テストは、約2.5ksi(約17MPa)の負荷、約17ミル(約0.43mm)のストローク及び約35Hzの周波数で実行された。全てのテスト試料は、約800°F(約425℃)に過熱された空気を供給されて約650°F(約345℃)の試料温度を得るようになったリグにおいて評価された。
【0023】
基準試料と共に、2つの組の非被覆試料を4つの組の被覆試料と共に評価した。基準試料は、上述したように既存のガスタービンエンジン用途で現在使用されているフラッパバルブのためのバルブ及びピン材料である、IN−625で形成されたアンビル及びL−605で形成されたストライカを使用した。非被覆試料の組の1つでは、アンビル及びストライカの両方はL−605で形成された。非被覆試料の第2の組では、アンビル及びストライカの両方はStellite 6B(Haynes 6B)、つまりDeloro Stellite Inc.から入手可能でありかつ重量で、3.0%のニッケル、30.0%のクロム、1.0%の鉄、1.0%の炭素、1.4%のマンガン、1.5%のモリブデン、4.0%のタングステン、残部のコバルト及び随伴不純物の公称組成を有するコバルト基合金で形成された。TiAlN及びCrNの交互層を含む4つの皮膜システムは、4つの異なるアンビル−ストライカ組合せ、つまりM−152アンビル及びL−605ストライカ、IN−625アンビル及びL−605ストライカ、L−605アンビル及びL−605ストライカ、並びにStellite 6Bアンビル及びL−605ストライカで評価された。皮膜システムは、PVDによってストライカ上に約50マイクロメートルの厚さに堆積されかつ約0.5マイクロメートルの厚さを有するTiAlNの層及び約0.5マイクロメートルの厚さを有するCrNの層を含んでいた。
【0024】
図4及び図5は、基準及び非被覆試料並びにTiAlN−CrN被覆試料についての最深ピット及び平均摩耗結果を表している。図6及び図7は、窒化物テスト試料のみについてのピット及び平均摩耗結果を表している。全ての結果は、100,000サイクルに正規化されている。これらの結果から、M−152アンビル及び被覆L−605ストライカを組合せた試料が最良の性能でありまたIN―625アンビル及び被覆L−605ストライカを組合せた試料もまた極めて良好な性能であることを理解することができる。M−152アンビル及び被覆L−605ストライカを有する試料は、基準IN―625アンビル及び非被覆L−605ストライカよりもほぼ100倍少ない平均摩耗を示し、またIN―625アンビル及び被覆L−605ストライカを組合せた試料は、基準IN―625アンビル及び非被覆L−605ストライカよりもほぼ50倍少ない平均摩耗を示した。
【0025】
これらの結果から、TiAlN−CrN被覆システムは、コバルト基L−605合金の母材に施工されかつIN―625又はM−152で形成された部材による摩耗を受けた時に非常に良好な性能であると結論付けた。従って、本発明はその中でL−605並びにIN―625又はM−152のいずれかで形成された構成要素が高温、特に約425℃及びそれ以上の作動温度において互いに接触状態になる組立体(フラッパバルブ組立体を含む)を包含する。L−605は、重量で約20.0%のクロム、約10.0%のニッケル、約15.0%のタングステン、約0.5%の炭素、残部のコバルト及び随伴不純物の公称組成を有するコバルト基合金L−605である。IN―625は、重量で約21.5%のクロム、約9.0%のモリブデン、約3.6%のニオブ、約2.5%の鉄、約0.2%のアルミニウム、約0.2%のチタン、約0.2%のマンガン、約0.2%のケイ素、約0.05%の炭素、残部のニッケル及び随伴不純物の公称組成を有する固溶体強化ニッケル基合金である。M−152は、重量で約2.5%のニッケル、約12%のクロム、約1.7%のモリブデン、約0.3%のバナジウム、約0.12%の炭素、残部の鉄及び随伴不純物の公称組成を有するクロム含有マルテンサイトステンレス鋼合金である。フラッパバルブ24がIN―625と同様の固溶体強化ニッケル基合金又はM−152と同様のクロム含有マルテンサイトステンレス鋼で形成されることになる場合にも、同様の結果を予測することができると思われる。M−152は一般的に、遠心鋳造法によって製造された鍛造品又は鋳造品として入手可能であるので、IN―625は、図2のフラッパバルブのような用途においてより実用的な材料であると思われる。
【0026】
特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者がその他の形態を採用することができることは、明らかであろう。従って、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されることになる。
【符号の説明】
【0027】
10 組立体
12 ピン
14 構成要素
16 シャンク
20 組立体
22 構成要素、ヒンジピン
24 構成要素、フラッパバルブ
26 (円筒形状)シャンク
28 (ピン22の)母材
30 皮膜システム
32 (バルブ24の)対向する表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立体(20)であって、
互いに摩耗接触状態になった表面(26、32)を有する第1及び第2の構成要素(22、24)、を含み、
前記表面の1つ(26)が、他方の構成要素の表面と摩耗接触状態になるようになった耐摩耗性皮膜システム(30)をその上に有し、
前記耐摩耗性皮膜システム(30)が、TiAlN及びCrNの交互層からなる、
組立体(20)。
【請求項2】
前記TiAlN及びCrNの個々の層が、少なくとも0.2マイクロメートルから最大約0.8マイクロメートルまでの厚さを有することを特徴とする、請求項1記載の組立体(20)。
【請求項3】
前記TiAlN及びCrNの個々の層が、約0.3〜約0.5マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1記載の組立体(20)。
【請求項4】
前記耐摩耗性皮膜システム(30)が、少なくとも6マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の組立体(20)。
【請求項5】
前記耐摩耗性皮膜システム(30)が、最大約80マイクロメートルまでの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の組立体(20)。
【請求項6】
前記耐摩耗性皮膜システム(30)が、約30〜約50マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の組立体(20)。
【請求項7】
前記第1及び第2の構成要素(22、24)が、ピボット継手を形成し、
前記第1の構成要素(22)が、ピボット軸線を形成し、また
前記第2の構成要素(24)が、前記第1の構成要素(22)にピボット結合されて、該第1の構成要素(22)のピボット軸線の周りで枢動するようになる、
ことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の組立体(20)。
【請求項8】
前記第1の構成要素(22)が、コバルト基合金で形成され、また
前記第2の構成要素(24)が、固溶体強化ニッケル基合金又はクロム含有マルテンサイトステンレス鋼のいずれかで形成される、
ことを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の組立体(20)。
【請求項9】
前記耐摩耗性皮膜システム(30)が、前記第1の構成要素(22)の表面上に存在し、また
前記第1の構成要素の表面が、その形状が円筒形である、
ことを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の組立体(20)。
【請求項10】
該組立体(20)が、フラッパバルブ組立体(20)であり、
前記第1の構成要素(22)が、ヒンジピンであり、また
前記第2の構成要素(24)が、フラッパバルブである、
ことを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の組立体(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−141057(P2012−141057A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281128(P2011−281128)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】