説明

3次元計測方法および3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラム

【課題】 パラメータの設定を簡単にでき、ユーザの負担を大幅に軽減できる3次元計測方法および3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【解決手段】 観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲、測定精度と測定速度の度合いのそれぞれについて設定されたパラメータに基づいて液晶格子604の格子ピッチが求められ、該格子ピッチで生成された液晶格子604のパターンを用いて標本3からの変形格子パターン像をTVカメラ13で撮像するとともに、液晶格子604を数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得し、該取得した各位置毎の撮像画像から位相を求めるとともに、該位相と予め用意された前記倍率、最大測定範囲、測定精度と測定速度の度合いに対応する基本位相との差分を用いて高さを求め、この結果を表示部174に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子パターン投影法を採用した3次元計測方法および3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元形状をなす測定対象物の表面形状を非接触で測定する手段として、位相シフトを用いた格子パターン投影法が知られている。
【0003】
この格子パターン投影法は、測定対象物の表面に対して斜め上方向に投影系を配置し、この投影系からの格子パターンの像を測定対象物表面に所定角度傾けて投影し、測定対象物表面からの散乱光を変形格子パターン像として、測定対象物表面の真上に配置された撮像系により撮像する。この場合、格子パターンを横ずらしして、位相が異なる複数枚の画像を取得し、これら取得された複数枚の画像より各画素毎にその点での格子の位相を求め、その位相情報から測定対象物の高さを含む3次元の表面形状を演算により求めるようにしている。
【0004】
位相情報から測定対象物の高さを求める方法として、従来から三角測量の原理に基づく方法がよく用いられる。
【0005】
図5は、従来の三角測量を使用した方法の一例を示したものである。この例では、入射光線101を入射する不図示の投影系と反射光線102が導かれる不図示の撮像系は、テレセントリック光学系となっている。また、測定対象物103に対して基準平面104を設け、計算される高さはすべて基準平面104に対するものと考える。そして、測定対象物103の高さ、例えば、A点の高さHighは、A点に投影された格子の位置と基準平面104上のB点に投影された格子の位置を用いて求める。つまり、A点の位相ΦaとB点の位相Φb(Φbを基準位相という)を用いて、以下の(1)式を用いて求める。
【0006】
High=(Pitch×(Φa−Φb))/(sinα×2π)…(1)
ここで、Pitchは、格子パターンのピッチ、αは入射角度である。
【0007】
位相シフトを用いて求めた各点の位相は、0〜2πの範囲に畳み込まれるので、求めた高さもPitch/sinαの範囲に畳み込まれる。更に、位相接続などの手法が用いれば、さらに大きな高さの測定結果も再現することができる。ここで、位相接続については、例えば、特許文献1に開示される方法が用いられる。
【特許文献1】特開2000−9444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最近、このような3次元計測システムは、顕微鏡を組み合わせたものが考えられている。このように顕微鏡を組み合わせたものは、これまでの3次元計測システムでは、格子パターンのピッチと観察系の倍率が固定であったものが、測定対象物体が変わる毎に、観察系の倍率が頻繁に変更されることがある。
【0009】
ここで、格子パターンのピッチと観察系の倍率の関係は、格子パターンピッチを小さくして倍率を上げるほど分解能が高くなって測定対象物体の測定精度が改善される。しかし、この反面、高さの大きい測定対象物体に対して、小さな格子パターンピッチを用いて測定すると、位相接続処理時間が長くなって、全体の測定時間が長くかかるようになる。
【0010】
このため、測定対象物体を変える場合は、測定対象物体の状態に応じて測定精度と測定速度(測定時間)のバランスを考えながら格子パターンピッチを設定する必要がある。また、観察系の倍率を高くすると焦点深度が浅くなり、測定不可能な領域が生じることがある。このため、観察系の倍率を変更する場合は、測定可能な範囲を明確にする必要もある。
【0011】
このようなことから、従来では、測定精度と測定速度のバランスの取れた測定を行なうには、これら測定精度と測定速度を決定するパラメータを最適なものに設定する必要があるが、これらパラメータの設定は、複雑であるばかりか、経験を要するなど、ユーザにとって大きな負担になるという問題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、パラメータの設定を簡単にでき、ユーザの負担を大幅に軽減できる3次元計測方法および3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲のパラメータを設定し、これら設定されたパラメータに基づいて格子パターンの格子ピッチを求め、該格子ピッチで生成された格子パターンを用いて標本からの変形格子パターン像を撮像するとともに、前記格子ピッチで生成された格子パターンを数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得し、該取得した各位置毎の撮像画像から位相を求めるとともに、該位相と予め用意された前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に対応する基本位相との差分を用いて高さを求め、この結果を表示部に表示することを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、さらに、前記パラメータとして、測定精度と測定速度の度合いを設定することを特徴としている。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、さらに、前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に、前記測定精度と測定速度の度合いを追加した測定パラメータに対する前記基準位相との差分を用いて高さを求めることを特徴としている。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記測定対象物体の最大測定範囲が前記倍率に対応する焦点深度より大きい場合、前記最大測定範囲又は倍率のパラメータの再設定を指示することを特徴としている。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記観察系の倍率のパラメータは、外部からの情報により自動設定されることを特徴としている。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基本位相は、前記倍率、最大計測範囲、測定精度のそれぞれのパラメータを設定し、これら設定されたパラメータに基づいて格子パターンの格子ピッチを求め、該格子ピッチで生成された格子パターンを用いて基準サンプルからの変形格子パターン像を撮像するとともに、前記格子パターンを数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得し、該取得した各位置毎の撮像画像から求められた位相を基準位相のデータとして保存したものであることを特徴としている。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、さらに、前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に、前記測定精度と測定速度の度合いを追加することを特徴としている。
【0020】
請求項8記載の発明は、3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲のパラメータを設定させ、これら設定されたパラメータに基づいて格子パターンの格子ピッチを求め、該格子ピッチで生成された格子パターンを用いて標本からの変形格子パターン像を撮像させるとともに、前記格子パターンを数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得させ、該取得した各位置毎の撮像画像から位相を求めるとともに、該位相と予め用意された前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に対する基本位相との差分を用いて高さを求め、この結果を表示部に表示させることを特徴としている。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、さらに、前記パラメータとして、測定精度と測定速度の度合いを設定させることを特徴としている。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、さらに、前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に、前記測定精度と測定速度の度合いを追加した測定パラメータに対する前記基準位相との差分を用いて高さを求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パラメータの設定を簡単にでき、ユーザの負担を大幅に軽減できる3次元計測方法および3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面に従い説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態のパラメータ設定方法が適用される顕微鏡3次元計測システムの概略構成を示している。
【0026】
図1において、1は基台で、この基台1上には、ステージ2が設けられている。このステージ2には、標本3が載置されている。
【0027】
基台1には、支柱4が直立して設けられている。この支柱4には、焦準装置5が設けられている。この焦準装置5には、格子パターン投影手段としての液晶格子投影装置6を介して実体顕微鏡を構成する実体顕微鏡本体7が設けられている。
【0028】
焦準装置5は、装置本体501と移動部材502を有し、装置本体501には、支柱4が挿通されている。また、装置本体501には、固定ハンドル503が設けられ、この固定ハンドル503を締付け方向に回転することで、支柱4に固定できるようになっている。移動部材502は、不図示のガイド部により装置本体501に対して移動可能に支持されている。また、装置本体501と移動部材502の間には、ピニオンとラックからなる不図示の昇降機構が設けられている。この昇降機構には、焦準ハンドル504が連結されており、この焦準ハンドル504の操作により移動部材502を支柱4に沿った方向に上下動可能にしている。
【0029】
移動部材502には、アリなどの不図示の装着部材を介して液晶格子投影装置6が着脱可能に設けられている。
【0030】
液晶格子投影装置6は、装置本体601に、ライトガイド挿入部602が設けられている。このライトガイド挿入部602は、先端部にライトガイドとしての光ファイバ8の出射端8aが設けられている。ライトガイド挿入部602の内部には、光ファイバ8の出射端8aから発せられる光の光路上に照明光学系603が配置されている。この照明光学系603は、光ファイバ8の出射端8aからの光をほぼ平行光にするようにしている。
【0031】
装置本体601内部には、照明光学系603からの光の光路上に液晶格子604が配置されている。この液晶格子604は、後述するPC17の液晶格子制御部171の指示により、正弦波形状に変化する明度を一定間隔のピッチで表示する格子パターンを発生するとともに、この格子パターンをピッチ方向に数段階シフト可能にしている。
【0032】
液晶格子604を通過した光路には、投影光学系605が配置されている。この投影光学系605は、液晶格子604により形成される明暗を有する格子パターン像を投影光路9を介して、標本3に対し所定の角度傾けて、つまり所定の入射角度αで投影するようにしている。
【0033】
この場合、投影光学系605は、物体側(液晶格子604)と像側(標本3)で両側テレセントリックな光学系になっている。ここで、両側テレセントリックにしている理由は、格子パターン像の大きさ(倍率)がピント面の前後でも変わらず、一定に保てるからである。これにより、格子パターン像の大きさの変化による計測誤差の発生を防止するようにしている。
【0034】
液晶格子投影装置6には、アリなどの不図示の装着部材を介して実体顕微鏡本体7が着脱可能に設けられている。実体顕微鏡本体7には、ズーム鏡筒701が設けられている。ズーム鏡筒701には、ズームハンドル702が設けられている。このズームハンドル702は、ハンドル操作によりズーム鏡筒701での倍率を可変できるようになっている。
【0035】
ズーム鏡筒701の下端部には、対物レンズ10が装着されている。この場合、対物レンズ10は、ズーム鏡筒701にねじ込みにより装着されるねじ込み方式のものが用いられている。また、対物レンズ10は、標本3の真上に配置され、焦準装置5の操作によるズーム鏡筒701の上下動により標本3との相対距離を変化されることで、標本3にピント合わせできるようになっている。
【0036】
ズーム鏡筒701の上端部には、鏡筒11が装着されている。鏡筒11は、三眼鏡筒からなるもので、観察手段として接眼レンズ12と撮像手段としてのTVカメラ13が設けられている。また、鏡筒11内部には、光路切換え部14が設けられている。光路切換え部14は、標本3からの散乱光が対物レンズ10を介して導かれる撮像光路15上に配置され、一方の光路切換えにより標本3からの散乱光による変形格子パターン像を接眼レンズ12に結像させて目視観察を可能とし、また、他方の光路切換えにより、変形格子パターン像をTVカメラ13の撮像面13aに結像させるようになっている。
【0037】
一方、光ファイバ8には、入射端8b側に光源装置16が接続されている。この光源装置16には、光源としてハロゲンランプやキセノンランプなどが用いられる。また、光源装置16には、光源から発せられる光の光量を調節する調光ボリュウム16aが設けられている。
【0038】
TVカメラ13には、画像処理手段としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)17が接続されている。このPC17は、液晶格子604に対し、明度が正弦波形状に変化する格子パターンの発生を指示するとともに、この格子パターンのシフトを制御する液晶格子制御部171、TVカメラ13の撮像画像などを保存するデータ保存部172、撮像画像を演算処理して標本3の3次元の表面形状を求めるデータ処理部173を有している。また、PC17には、表示部174が設けられている。
【0039】
図2は、表示部174の表示画面の一例を示している。この場合、表示画面の左側には、パラメータを入力するパラメータ入力手段として、観察系の倍率を入力する倍率入力部175、測定対象物体である標本3の最大測定範囲(標本3の大体の最大高さ)を入力する最大測定範囲入力部176、測定精度と測定速度の度合いを入力する度合入力部177が配置されている。ここで、倍率入力部175は、観察系の倍率を数値で入力する数値入力部175aと、指針を所望する倍率の数値に合わせて入力する倍率入力部175bを有している。また、最大測定範囲入力部176は、実際に測定する標本3についての最大測定範囲を数値で入力する。さらに、度合入力部177は、0〜1の間で指針177aを移動させることで、測定精度と測定速度の度合いを入力する。例えば、指針177aを0.5に合わせれば、測定精度と測定速度の度合いは、1:1となり、測定精度を優先したい場合は、指針177aを0〜0.5の間に、測定速度を優先したい場合は、指針を0.5〜1の間に合わせるようにする。
【0040】
これら倍率入力部175、最大測定範囲入力部176、度合入力部177の下方位置には、各種操作スイッチとして、セットスイッチ178、セーブスイッチ179、スタートスイッチ180が配置されている。
【0041】
さらに、表示部174の表示画面中央部には、データ処理部173での撮像画像の演算処理により求められた3次元の表面形状を表示する主表示画面181が配置されている。
【0042】
次に、このように構成された顕微鏡3次元計測システムによるパラメータの設定から測定結果の表示までを説明する。
【0043】
この場合、図3に示すフローチャートを実行する。まず、ステップ301で、観察系の倍率を設定する。この場合、撮像光路15に挿入されている対物レンズ10の倍率を図2に示す表示部174上の倍率入力部175より入力する。この場合、倍率の入力には、数値入力部175a又は倍率入力部175bが用いられる。
【0044】
なお、対物レンズ10の倍率切換えに電動式のレボルバーが用いられる場合は、このレボルバーからの切換え情報から倍率を自動的に入力するようにしてもよい。
【0045】
次に、ステップ302で、最大測定範囲を設定する。この場合、実際に測定する標本3により決定される最大測定範囲を図2に示す表示部174上の最大測定範囲入力部176より入力する。
【0046】
次に、ステップ303に進み、設定した最大測定範囲が倍率に対応する焦点深度より大きいか否かを判断する。この場合、焦点深度より大きいと判断されると、ステップ304に進み、倍率か最大測定範囲の再設定の指示を出力する。この場合、ステップ301に戻り、倍率の設定または最大測定範囲の設定をやり直す。
【0047】
一方、ステップ303で、最大測定範囲が倍率に対応する焦点深度より大きくないと判断されると、ステップ305に進む。ステップ305では、測定精度と測定速度の度合いを設定する。この場合、図2に示す表示部174上の度合入力部177において、0〜1の間で指針177aを移動させることで、測定精度と測定速度の度合いを設定する。ここで、測定精度と測定速度の度合いβ∈(0,1)は、βが大きいほど測定精度が向上するが、測定速度が遅くなる。
【0048】
次に、ステップ306で、図2に示す表示部174上のセットスイッチ178を押し操作する。
【0049】
この状態で、最初に液晶格子604の格子ピッチPitchを(2)式から計算する。
【0050】
Pitch=(High/sinα)(1−β) …(2)
なお、Highは最大測定範囲、αは入射光線の入射角度で、ここでのαは設計値を用いられる。
【0051】
次に、(2)式から計算された液晶格子604の格子ピッチPitchに基づいて液晶格子604の格子パターンのデータを生成し、このデータをデータ保存部172に保存し、さらに液晶格子制御部171に転送する。液晶格子制御部171は、このデータに基づいて液晶格子604に対し、明度が正弦波形状に変化する格子パターンの発生を指示する。
【0052】
一方、不図示の基準位相データファイルを開いて、上述した設定された倍率、最大計測範囲、測定精度と測定速度の度合いに対応して予め用意された基準位相データを読み出し、データ保存部172に保存する。ここでの基準位相データファイルについては後述する。
【0053】
次に、ステップ307で、図2に示す表示部174上のスタートスイッチ180を押し操作すると、以下の動作が実行される。
【0054】
この場合、図1において、光源装置16から光が発せられると、光ファイバ8を介して液晶格子投影装置6に導かれ、照明光学系603を介してほぼ平行光となって液晶格子604に均一に照射される。液晶格子604を透過した光は、投影光学系605を透過し、明暗を有する格子パターン像として投影光路9より標本3上に所定の角度傾けて投影される。標本3上に投影された格子パターンは、標本3面より反射され、このうちの散乱光が対物レンズ10を介して撮像光路15に導かれる。この場合、撮像光路15上の光路切換え部14において他方の光路切換えが設定されていれば、標本3からの散乱光による変形格子パターン像が、TVカメラ13の撮像面13aに結像され撮像される。
【0055】
このような変形格子パターン像の観察は、液晶格子制御部171より液晶格子604による格子パターンを数段階シフトさせながら複数回繰り返して行い、各位置毎のTVカメラ13からの撮像画像(位相シフト画像)をデータ保存部172に保存する。
【0056】
次に、位相の計算を行なう。この場合、位相分布の計算において下記の(3)式を用いる。
【0057】
【数1】

【0058】
ここで、Ii(x,y)は、各シフトの点(x,y)の輝度値、δi=(i/N)2π,(i=0,…,N−1)は位相シフト量、Nはシフト回数である。
【0059】
そして、このようにして求められた位相と、上述したデータ保存部172に保存された基準位相との差分を求め、上述した(1)式を用いて、高さHighが求める。
【0060】
この場合、位相接続などの手法を用いれば、さらに大きな高さの測定結果も再現できる。
【0061】
このような一連の処理により求められた3次元測定結果は、ステップ308で、3次元の表面形状として表示部174の主表示画面181に表示される。
【0062】
次に、基準位相データファイルの作成について簡単に説明する。
【0063】
この場合、図4に示すフローチャートを実行する。
【0064】
基準位相データファイルの作成には、基準サンプルを用いる。まず、ステップ401で、標本3に代えて基準サンプルをステージ2に載置する。このときの基準サンプルには、平面サンプルが用いられる。
【0065】
次に、ステップ402で、倍率、最大計測範囲、測定精度と測定速度の度合いのパラメータを設定する。これらバラメータ設定方法は、図3で述べたフローチャートと同様である。
【0066】
次に、ステップ403で、図2に示す表示部174上のセーブスイッチ179を押し操作する。
【0067】
まず、液晶格子604の格子ピッチPitchを上述した(2)式から計算する。次に、(2)式から計算された液晶格子604の格子ピッチPitchに基づいて液晶格子604の格子パターンのデータを生成し、このデータを液晶格子制御部171に転送する。液晶格子制御部171は、このデータに基づいて液晶格子604に対し、明度が正弦波形状に変化する格子パターンの発生を指示する。
【0068】
この状態で、光源装置16から光が発生させ、液晶格子604を透過した光を、格子パターン像として基準サンプル上に所定の角度傾けて投影し、基準サンプルから反射した光のうち、散乱光を変形格子パターン像としてTVカメラ13で撮像する。このような変形格子パターン像の観察は、液晶格子制御部171より液晶格子604による格子パターンを数段階シフトさせながら複数回繰り返して行い、各位置毎のTVカメラ13からの撮像画像(位相シフト画像)をデータ保存部172に保存する。
【0069】
次に、上述した(3)式を用いて位相の計算を行ない、さらに位相接続を行ない、この結果を基準位相データとして、基準位相データファイルに保存する。
【0070】
以下、同様にして、ズーム倍率、最大計測範囲、測定精度と測定速度の度合いのパラメータの設定を任意に変更しながら、上述した動作を繰り返し、それぞれ設定されたズーム倍率、最大計測範囲、測定精度と測定速度の度合いのパラメータに対応する基準位相データを生成し、これら基準位相データを基準位相データファイルに保存する(ステップ404)。
【0071】
従って、このようにすれば、ユーザが観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲、測定精度と測定速度の度合いのそれぞれのパラメータを設定するだけで、標本3の3次図形を取得することができるので、パラメータの設定を飛躍的に簡単にでき、ユーザの負担を大幅に軽減できる。
【0072】
また、ユーザのパラメータ設定の際に、標本3の最大測定範囲が倍率に対応する焦点深度より大きいと判断されると、最大測定範囲又は倍率のパラメータの再設定を促す指示が出されるので、不適切なパラメータの設定により測定不能に陥ることを防止でき、常に安定した3次元計測を行なうことができる。
【0073】
さらに、測定精度と測定速度の度合いを設定することで、これらに合わせて最適な格子ピッチの格子パターンが設定されるので、測定精度を優先するか、又は測定速度を優先するかのバランス制御を簡単に行なうことができる。
【0074】
さらに、基準位相データは、予め基準サンプルを用いて求められたものが基準位相データファイルに保存されており、測定の際に、基準位相データファイルから対応する基準位相データを読み出し使用するようにしているので、毎回の測定の度に基準位相データを作成する必要がなくなり、効率の良い3次元計測を行なうことができる。また、液晶格子604に関する格子パターンデータは、データ保存部172に保存されているので、基準位相データファイルに保存された基準位相データとともに使用することで、連続測定を行なう場合の高速化を実現できる。
【0075】
さらに、基準位相データの作成には、基準サンプルとして平面サンプルを用いることにより、装置側の歪の影響を軽減することもできる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、パラメータの設定において、観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲、測定精度と測定速度の度合いのパラメータを設定するとしたが、観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲のみでも本発明の効果が得られる。この場合は、図3に示すフローチャートのステップ305、図4に示すフローチャートのステップ402の測定精度と測定速度の度合いのパラメータ設定を省略できる。
【0077】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態のパラメータ設定方法が適用される顕微鏡3次元計測システムの概略構成を示す図。
【図2】一実施の形態に用いられる表示部の表示画面の一例を示す図。
【図3】一実施の形態のパラメータ設定から測定結果の表示までを説明するためのフローチャート。
【図4】一実施の形態の基準位相データファイルの作成を説明するためのフローチャート。
【図5】位相情報から測定対象物の高さを求めるための三角測量の原理に基づく方法を説明する図。
【符号の説明】
【0079】
1…基台、2…ステージ、3…標本
4…支柱、5…焦準装置
501…装置本体、502…移動部材
503…固定ハンドル、504…焦準ハンドル
6…液晶格子投影装置、601…装置本体
602…ライトガイド挿入部、603…照明光学系
604…液晶格子、605…投影光学系
7…実体顕微鏡本体、701…ズーム鏡筒
702…ズームハンドル、8…光ファイバ
8a…出射端、8b…入射端、9…投影光路
10…対物レンズ、11…鏡筒、12…接眼レンズ
13…TVカメラ、13a…撮像面、14…光路切換え部
15…撮像光路、16…光源装置、16a…調光ボリュウム
17…PC、171…液晶格子制御部
172…データ保存部、173…データ処理部
174…表示部、175…倍率入力部
175a…数値入力部、175b…倍率入力部
176…最大測定範囲入力部、177…度合入力部
177a…指針、178…セットスイッチ
179…セーブスイッチ、180…スタートスイッチ
181…主表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲のパラメータを設定し、
これら設定されたパラメータに基づいて格子パターンの格子ピッチを求め、
該格子ピッチで生成された格子パターンを用いて標本からの変形格子パターン像を撮像するとともに、前記格子ピッチで生成された格子パターンを数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得し、
該取得した各位置毎の撮像画像から位相を求めるとともに、該位相と予め用意された前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に対応する基本位相との差分を用いて高さを求め、この結果を表示部に表示する
ことを特徴とする3次元計測方法。
【請求項2】
さらに、前記パラメータとして、測定精度と測定速度の度合いを設定することを特徴とする請求項1記載の3次元計測方法。
【請求項3】
さらに、前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に、前記測定精度と測定速度の度合いを追加した測定パラメータに対する前記基準位相との差分を用いて高さを求めることを特徴とする請求項2記載の3次元計測方法。
【請求項4】
前記測定対象物体の最大測定範囲が前記倍率に対応する焦点深度より大きい場合、前記最大測定範囲又は倍率のパラメータの再設定を指示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の3次元計測方法。
【請求項5】
前記観察系の倍率のパラメータは、外部からの情報により自動設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の3次元計測方法。
【請求項6】
前記基本位相は、
前記倍率、最大計測範囲、測定精度のそれぞれのパラメータを設定し、
これら設定されたパラメータに基づいて格子パターンの格子ピッチを求め、
該格子ピッチで生成された格子パターンを用いて基準サンプルからの変形格子パターン像を撮像するとともに、前記格子パターンを数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得し、該取得した各位置毎の撮像画像から求められた位相を基準位相のデータとして保存したものであることを特徴とする請求項1記載の3次元計測方法。
【請求項7】
さらに、前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に、前記測定精度と測定速度の度合いを追加することを特徴とする請求項6記載の3次元計測方法。
【請求項8】
観察系の倍率、測定対象物体の最大測定範囲のパラメータを設定させ、これら設定されたパラメータに基づいて格子パターンの格子ピッチを求め、該格子ピッチで生成された格子パターンを用いて標本からの変形格子パターン像を撮像させるとともに、前記格子パターンを数段階シフトさせながら各位置毎の撮像画像を取得させ、該取得した各位置毎の撮像画像から位相を求めるとともに、該位相と予め用意された前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に対する基本位相との差分を用いて高さを求め、この結果を表示部に表示させることを特徴とする3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
さらに、前記パラメータとして、測定精度と測定速度の度合いを設定させることを特徴とする請求項8記載の3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
さらに、前記パラメータの前記倍率、最大測定範囲に、前記測定精度と測定速度の度合いを追加した測定パラメータに対する前記基準位相との差分を用いて高さを求めることを特徴とする請求項9記載の3次元計測方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−153636(P2006−153636A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344192(P2004−344192)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】