説明

GSK−3のインヒビターとして有用なピラゾール組成物

【課題】GSK−3タンパク質キナーゼを阻害する治療因子を提供すること。
【解決手段】式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって:Wは、窒素またはCHであり;Rは、水素またはフッ素から選択され;そしてRは、C1〜4脂肪族基であって、該C1〜4脂肪族基は、必要に応じてN(Rまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環で置換され、ここで、各Rは、水素、あるいはOH、N(Rまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環で必要に応じて置換されたC1〜3脂肪族基から独立的して選択され、ここで:各Rは、水素またはC1〜3脂肪族基から独立して選択され、但し、Rが水素であり、WがCHである場合、Rは、メチル以外である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、2002年8月2日に出願された米国仮特許出願60/400,967優先権を主張する。その内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼ、特に、セリン/スレオニンプロテインキナーゼであるグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)のインヒビターに関する。本発明はまた、本発明のインヒビターを含有する組成物、およびこれらの組成物を種々の障害(例えば、糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、脳卒中、神経系障害および神経変性障害、ならびに精神障害)の処置において利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新しい治療薬の探索は、近年、標的疾患に関連する酵素および他の生体分子の構造のより良い理解によって、非常に助けられている。広範な研究の目的になっている酵素のうちの1つの重要なクラスは、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、細胞内のシグナル伝達を媒介する。これらは、ヌクレオシド三リン酸からシグナル経路に関与するタンパク質アクセプターへのリン酸基転移に影響を与えることによってこのことを行う。そこを通って細胞外および他の刺激による種々の細胞応答が細胞の内側で起こるようにする、多数のキナーゼおよび経路が存在する。このような刺激の例としては、環境ストレスシグナルおよび化学ストレスシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、菌体内毒素、およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α))、および増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞の増殖、移動、分化、ホルモンの分泌、転写因子の活性化、筋肉の収縮、グルコース代謝、タンパク質合成の制御、および細胞周期の調節に関連する、1以上の細胞応答に影響し得る。
【0005】
多くの疾患が、プロテインキナーゼ媒介事象により誘発される異常な細胞応答に関連する。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝病、神経疾患および神経変性疾患、癌、心血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病およびホルモン関連疾患が挙げられる。従って、医薬品化学において、治療薬として有効なプロテインキナーゼインヒビターを見出すための相当な努力がなされている。
【0006】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)は、各々が異なる遺伝子によってコードされるαアイソフォームおよびβアイソフォームを含む、セリン/スレオニンプロテインキナーゼである(非特許文献1;非特許文献2)。GSK−3は、種々の疾患(糖尿病、アルツハイマー病、CNS障害(例えば、双極性障害および神経変性疾患)、ならびに心筋細胞肥大が挙げられる)に関与する(例えば、特許文献1;特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5を参照のこと)。これらの疾患は、GSK−3が役割を果たす特定の細胞シグナル経路の異常な作用に関連する。
【0007】
GSK−3は、多数の調節タンパク質をリン酸化し、そしてそのタンパク質の活性を調節することが見出されている。これらのタンパク質としては、グリコーゲン合成のために必要な律速酵素であるグリコーゲンシンターゼ、微小管関連タンパク質Tau、遺伝子転写因子β−カテニン、翻訳開始因子e1F−2B、ならびにATPシトレートリアーゼ、アキシン(axin)、熱ショック因子−1、c−Jun、c−myc、c−myb、CREB、およびCEPBαが挙げられる。これらの様々な標的は、細胞の代謝、増殖、分化および発生の多くの局面において、GSK−3に関与する。
【0008】
II型糖尿病の処置に関連するGSK−3媒介経路において、インスリン誘導シグナルは、細胞のグルコース摂取およびグリコーゲン合成をもたらす。この経路において、GSK−3は、インスリン誘導シグナルのネガティブな調節因子である。通常は、インスリンの存在は、GSK−3が媒介するリン酸化の阻害およびグリコーゲン合成の不活化を引き起こす。GSK−3の阻害は、増加したグリコーゲン合成およびグルコース摂取をもたらす(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;および非特許文献9;非特許文献10)。しかし、糖尿病患者においてインスリン応答が損なわれる場合、インスリンの比較的高い血液レベルの存在にもかかわらず、グリコーゲン合成およびグルコース摂取は増加しない。これは、急性かつ長期の効果を伴うグルコースの異常に高い血液レベルをもたらし、最終的に心血管疾患、腎不全および失明を生じ得る。このような患者においては、インスリンにより誘導されるGSK−3の正常な阻害は生じない。II型糖尿病を有する患者において、GSK−3が過剰発現されることもまた、報告されている(特許文献2)。従って、GSK−3の治療的インヒビターは、インスリンに対する応答障害に罹患する糖尿病患者を処置するために有用である。
【0009】
アポトーシスは、虚血性脳損傷の病態生理学に関係している(Liら、1997;Choiら、1996;Charriaut−Marlangueら、1998;GrahmおよびChen、2001;Murphyら、1999;Nicoteraら、1999)。最近の刊行物は、GSK−3βの活性化が、アポトーシスの機構に関連し得ることを示す(KaytorおよびOrr、2002;Culbertら、2001)。中大脳動脈閉塞(MCAO)によって誘導された虚血性脳卒中のラットモデルにおける研究は、増加したGSK−3β発現が、虚血に従うことを示した(非特許文献11;非特許文献12)。線維芽細胞増殖因子(FGF)は、ラットにおいて、中大脳動脈閉塞(MCO)の後に、虚血性脳損傷を減少させた(Fisherら、1995;Songら、2002)。実際に、ラットにおける虚血モデルで示されたFGFの神経保護効果は、GSK−3βのPI−3キナーゼ/AKT依存性不活性化によって媒介され得る(Hashimotoら、2002)。従って、大脳の虚血性事象の後のGSK−3βの阻害は、虚血性脳損傷を改善し得る。
【0010】
GSK−3はまた、心筋梗塞に関係する。非特許文献13(再灌流でのインスリン投与による心筋梗塞における減少は、Akt依存性シグナル経路を介して媒介される);非特許文献14(Akt活性化は、インビボで、心臓の機能を保ち、かつ一過性の心臓虚血後の心筋細胞傷害を予防する);非特許文献15(心臓における冠動脈内のアデノウイルス媒介Akt遺伝子送達は、インビボで、虚血性再灌流後に総梗塞サイズを減少させる);および非特許文献16(Aktシグナリングは、インビトロで、心筋細胞アポトーシスを阻害し、かつマウスの心臓における虚血性再灌流傷害から守る)を参照のこと。
【0011】
GSK−3活性は、頭部外傷において役割を果たす。非特許文献17(Akt/PI3−キナーゼ経路のアップレギュレーションは、外傷性脳損傷後の細胞生存のために重要であり得る)、および非特許文献18(bFGFの外傷後投与は、外傷性脳損傷のラットモデルにおいて、損傷した皮質ニューロンおよび総挫傷容積を有意に減少した)を参照のこと。
【0012】
GSK−3はまた、精神障害において役割を果たすことが公知である。非特許文献19;非特許文献20(抗精神病の抗躁うつ病薬であるLiClおよびバルプロ酸は、GSK3活性を減少させ、かつβ−カテニンを増加させる)、および非特許文献21(乱雑な(dishevelled)KOマウスは、異常な社会的行動および不完全な感覚運動ゲーティングを示した。WNT経路に関与する乱雑な細胞質(cytoplamic)タンパク質は、GSK3β活性を阻害する)を参照のこと。
【0013】
リチウムおよびバルプロ酸によるGSK3阻害が、軸索の再構築を誘導し、かつシナプスの結合性を変化させることが示されている。非特許文献22(GSK3のダウンレギュレーションは、微小管関連タンパク質であるtau、MAP1およびMAP2における変化を引き起こす)、および非特許文献23(リチウムおよびバルプロ酸は、軸索に沿って成長した円錐様構造の形成を誘導する)を参照のこと。
【0014】
GSK−3活性はまた、アルツハイマー病に関連している。この疾患は、周知のβ−アミロイドペプチドおよび細胞内神経原線維変化の形成の存在によって特徴付けられる。この神経原線維変化は、高リン酸化Tauタンパク質を含み、ここで、Tauは、異常な部位でリン酸化される。GSK−3は、細胞モデルおよび動物モデルにおいて、これらの異常な部位をリン酸化することを示している。さらに、GSK−3の阻害は、細胞におけるTauの高リン酸化を防止することが示されている(非特許文献24;および非特許文献25;非特許文献26)。GSK3を過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて、有意に増加したTau高リン酸化およびニューロンの異常な形態が観察された(非特許文献27)。活性なGSK3は、予め変化したニューロンの細胞質に蓄積し、このことが、ADを有する患者の脳において神経原線維変化をもたらし得る(非特許文献28)。従って、GSK3の阻害は、神経原線維変化を遅らせるか停止させ、従って、アルツハイマー病の重篤度を処置するかまたは低減する。
【0015】
GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割についての証拠は、インビトロで示されている。非特許文献29;非特許文献30(GSK3bは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の細胞質ドメインをリン酸化し、GSK3bの阻害は、APPトランスフェクト細胞におけるAb40およびAb42の分泌を減少する);非特許文献31;非特許文献32(GSK3bは、APPからのAβの合成においてγ−セクレターゼと関連するプレレセニリン−1と複合体を形成し、これをリン酸化する);非特許文献33(Ab(25−35)によるGSK3bの活性化は、海馬ニューロンにおけるtauのリン酸化を増強する。この観察は、Aβと、ADの別の過剰リン酸化tauで形成される神経原線維のもつれ(tangle)との間の結び付きを提供する);非特許文献34(GSK3b発現または活性のブロックは、皮質および海馬培養物のAb誘導性神経変性を防止する);非特許文献35(細胞内Ab42は、Akt/GSK−3bシグナル伝達依存的機構の活性化を妨害することにより、内皮細胞に対して毒性である);非特許文献36(リチウムは、Aβ原繊維により誘導される毒性およびb−カテニンの減少した核トランスロケーション/脱安定化からN2A細胞および原発性海馬神経を保護する);ならびに非特許文献37(アルツハイマーのプレセニリン1における変異は、GSK−3活性を調節不能にしてこれを増加させ、次いで神経における軸索の輸送に損傷を与える。影響を受けたニューロンにおける結果としての軸索の輸送の減少は、最終的に、神経変性を導く)を参照のこと。
【0016】
GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割についての証拠は、インビボで示されている。非特許文献38;非特許文献39(GSK3bの免疫反応性は、AD脳の敏感な領域において上昇する);非特許文献40(条件付きGSK3b過剰発現を有するトランスジェニックマウスは、ADのトランスジェニックAPPマウスモデルと同様に認識不全を示す);非特許文献41(継続的なリチウム処置は、Aβ原繊維の海馬内注入により引き起こされる神経変性および行動障害(モリスの水迷路)を減少させた);非特許文献42(ADのトランスジェニックマウスにおけるAβ免疫は、AD様神経病理および空間記憶障害の両方を減少する);および非特許文献43(GSK3は、AD tgマウスにおけるγセクレターゼの直接的阻害を通じてアミロイドβペプチド産生を調節する)を参照のこと。
【0017】
プレセニリン−1およびキネシン−1はまた、近年非特許文献44によって記載されたように、GSK−3の基質であり、GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割の別の機構に関する。GSK3βは、キネシン−1軽鎖をリン酸化して、膜結合オルガネラからキネシン−1を遊離し、迅速な巡行的軸索輸送の減少を導くことが見出された(Morfiniら,2002)。この著者らは、PS1における変異が、GSK−3活性を調節不全にしてこれを増加させ、次いで、ニューロンにおける軸索輸送に損傷を与えることを示唆している。影響を受けたニューロンにおけるその後の軸索輸送の減少は、最終的に、神経変性を導く。
【0018】
GSK−3はまた、筋萎縮性側索硬化(ALS)にも関連する。WilliamsonおよびCleveland,1999(軸索輸送は、mSOD1マウスにおけるALSの最早期において妨げられる);非特許文献45(大部分の脊髄運動ニューロンは、このALSのSOD1 tg動物モデルにおけるニューロンの有意な喪失の前の早期段階および前駆症状段階において、PI3−KおよびAktの両方に対する免疫反応性を喪失した);およびSanchezら,2001(PI−3Kの阻害は、GSK3活性化により媒介される神経突起の退縮を誘導する)を参照のこと。
【0019】
GSK−3活性はまた、脊髄および末梢神経の損傷にも関連する。リチウムおよびバルプロ酸によるGSK3阻害は、軸索のリモデリングを誘導し、シナプスの連結性を変更し得ることが示された。非特許文献46(GSK3のダウンレギュレーションは、微小管結合タンパク質;tau、MAP1、および2における変化を引き起こす)を参照のこと。非特許文献47(FGF2は、シュヴァン細胞の増殖を刺激し、軸索成長の間の髄鞘形成を阻害する);GrotheおよびNikkhah,2001(FGF−2は、神経破壊後5時間以内に近位および遠位の神経断端においてアップレギュレートされる);およびSanchezら,2001(PI−3Kの阻害は、GSK3活性化により媒介される神経突起の退縮を誘導する)もまた参照のこと。
【0020】
別のGSK−3の基質は、β−カテニンであり、これは、GSK−3によるリン酸化後、分解される。精神分裂病の患者では、β−カテニンのレベルが低下していることが報告されており、これはまた、神経細胞死の増大に関係している他の疾患と関連している[非特許文献48;非特許文献49;非特許文献50;および非特許文献51]。さらに、β−カテニンおよびTcf−4は、脈管平滑筋細胞のアポトーシスを阻害し増殖を促進することにより脈管のリモデリングにおいて二重の役割を果たす(非特許文献52)。従って、GSK−3は、脈管形障害に関連する。非特許文献53(GSK3の活性化は、肝細胞増殖因子を減少して、内皮細胞障壁機能を変更し、脈管の統合性を減少する)および非特許文献54(GSK3βの活性化は、Matrigelプラグアッセイを用いたインビボ脈管形成を阻害する;GSK3βシグナル伝達の阻害は、毛細管形成を増強する)を参照のこと。
【0021】
GSK−3とハンティングトン病との間の関連が示されている。非特許文献55(GSK3βの阻害は、β−カテニンおよびその関連する転写経路における増加を通じて、ポリグルタミンにより誘導されるニューロン細胞および非ニューロン細胞の死から細胞を保護する)を参照のこと。GSK3の過剰発現は、熱ショック転写因子1および熱ショックタンパク質HSP70の活性化を減少する(非特許文献56)。HSP70は、インビトロHDモデルにおけるポリ−(Q)凝集体および細胞死の両方を減少することが示されている(非特許文献57)。
【0022】
GSK−3は、FGF−2レベルに影響し、それらのレセプターは、ラット脳を再ミエリン化する脳凝集体培養物の再ミエリン化の間に増加する。Copelmanら,2000,Messersmithら,2000;ならびにHinksおよびFranklin,2000を参照のこと。FGF−2は、オリゴ樹状細胞による突起成長を誘導し、再ミエリン化におけるFGFの関与と結び付いていること(OhおよびYong,1996;Gogateら,1994)およびFGF−2遺伝子療法は、実験的アレルギー脳脊髄炎(EAE)マウスの回復を改善することが示された(Ruffiniら,2001)こともまた発見された。
GSK−3はまた、毛髪成長にも関連する。というのも、Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、毛包の形態形成および分化において主要な役割を果たすことが示されているからである(非特許文献58;非特許文献59)。皮膚におけるWntシグナル伝達のインヒビターを構成的に発現させると、毛包が発達できなかったことが見出された。Wntシグナル伝達は、毛包の初期発達に必要とされ、GSK3は、β−カテニンを阻害することにより、Wnt経路を構成的に調節する(非特許文献60)。一過的なWntシグナルは、β−カテニンおよび内皮毛包前駆体におけるTCFにより調節される遺伝子転写を活性化することにより、新規の毛髪成長サイクルの開始に重要な初期刺激を提供する。(非特許文献61)。
【0023】
GSK−3活性は、精子の運動性に関連するので、GSK−3の阻害は、女性の避妊に有用である。精子GSK3活性の低下が、ウシおよびサルの精巣上体における精子の運動性の発達に関連することが示された(非特許文献62;非特許文献63)。さらに、GSK3のチロシンおよびセリン/スレオニンリン酸化は、雄ウシにおいて、非運動性精子と比較して、運動性精子において高い(非特許文献64)。この効果はまた、ヒト精子においても実証された(非特許文献65)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第99/65897号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/38675号パンフレット
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Coghlanら,Chemistry & Biology,2000年,第7巻,793−803頁
【非特許文献2】KimおよびKimmel,Curr.Opinion Genetics Dev.,2000年,第10巻,508−514頁
【非特許文献3】KaytorおよびOrr、Curr.Opin.Neurobiol.、2000年、第12巻、275−8頁
【非特許文献4】Haqら,J.Cell Biol.,2000年,第151巻,117−30頁
【非特許文献5】Eldar−Finkelman、Trends Mol.Med.、2002年、第8巻、126−32頁
【非特許文献6】Kleinら,PNAS,1996年,第93巻,8455−9頁
【非特許文献7】Crossら,Biochem.J.,1994年,第303巻、21−26頁
【非特許文献8】Cohen,Biochem.Soc.Trans.,1993年,第21巻,555−567頁
【非特許文献9】Massillonら,Biochem J.,1994年,第299巻,123−128頁
【非特許文献10】CohenおよびFrame,Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.,2001年,第2巻,769−76頁
【非特許文献11】Wangら、Brain Res、2000年、第859巻、381−5頁
【非特許文献12】Sasakiら、Neurol Res、2001年、第23巻、588−92頁
【非特許文献13】Jonassenら、Circ Res、2001年、第89巻:1191頁
【非特許文献14】Matsuiら、Circulation、2001年、第104巻:330頁
【非特許文献15】Miaoら、J Mol Cell Cardiol、2000年、第32巻:2397頁
【非特許文献16】Fujioら、Circulation、2000年、第101巻:660頁
【非特許文献17】Noshitaら、Neurobiol Dis、2002年、第9巻:294頁
【非特許文献18】Dietrichら、Neurotrauma、1996年、第13巻:309頁
【非特許文献19】Elder−Finkelman、Trends Mol Med、2002年、第8巻:126頁
【非特許文献20】Liら、Bipolar Disord、2002年、第4巻:137頁
【非特許文献21】Lijamら、Cell、1997年、第90巻:895頁
【非特許文献22】KaytorおよびOrr、Curr Opin Neurobiol、2002年、第12巻:275頁
【非特許文献23】Hallら、Mol Cell Neurosci、2002年、第20巻:257頁
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【非特許文献27】Lucasら、EMBO J、2001年、第20巻:27−39頁
【非特許文献28】Peiら、J Neuropathol Exp Neurol、1999年、第58巻、1010−19頁
【非特許文献29】Aplinら,J Neurochem,1996年,第67巻:699頁
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【非特許文献32】Kirschenbaumら,J Biol Chem,2001年,第276巻:7366頁
【非特許文献33】Takashimaら,Neurosci Res,1998年,第31巻:317頁
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【非特許文献36】De Ferrariら,Mol Psychiatry,2003年,第8巻:195頁
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【非特許文献38】Yamaguchiら,Acta Neuropathol,1996年,第92巻:232頁
【非特許文献39】Peiら,J Neuropath Exp Neurol,1999年,第58巻:1010頁
【非特許文献40】Hernandezら,J Neurochem,2002年,第83巻:1529頁
【非特許文献41】DePerrariら,Mol Psychiatry,2003年,第8巻:195頁
【非特許文献42】McLaurinら,Nature Med,2002年,第8巻:1263頁
【非特許文献43】Phielら,Nature,2003年,第423巻:435頁
【非特許文献44】Pigino,G.ら,Journal of Neuroscience,2003年,第23巻:4499頁
【非特許文献45】Waritaら,Apoptosis,2001年,第6巻:345頁
【非特許文献46】KaytorおよびOrr,Curr Opin Neurobiol,2002年,第12巻:275頁
【非特許文献47】Grotheら,Brain Res,2000年,第885巻:172頁
【非特許文献48】Zhongら、Nature,1998年,第395巻,698〜702頁
【非特許文献49】Takashimaら,PNAS,1993年,第90巻,7789−93頁
【非特許文献50】Peiら、J.Neuropathol.Exp.,1997年,第56巻,70〜78頁
【非特許文献51】Smithら、Bio−org.Med.Chem.,2001年,第11巻,635−639頁
【非特許文献52】Wangら,Circ Res,2002年,第90巻:340頁
【非特許文献53】Liuら,FASEBJ,2002年,第16巻:950頁
【非特許文献54】Kimら,k J Biol Chem,2002年,第277巻:41888頁
【非特許文献55】Carmichaelら,J Biol Chem.,2002年,第277巻:33791頁
【非特許文献56】Bijurら,J Biol Chem,2000年,第275巻:7583頁
【非特許文献57】Wyttenbachら,Hum Mol Genet,2002年,第11巻:1137頁
【非特許文献58】Kishimototら,Genes Dev,2000年,第14巻:1181頁
【非特許文献59】Millar,J Invest Dermatol,2002年,第118巻:216頁
【非特許文献60】Andlら,Dev Cell,2002年,第2巻:643頁
【非特許文献61】Van Materら,Genes Dev,2003年,第17巻:1219頁
【非特許文献62】Vijayaraghavanら,Biol Reprod,1996年,第54巻:709頁
【非特許文献63】Smithら,J Androl,1999年,第20巻:47頁
【非特許文献64】Vijayaraghavanら,Biol Reprod,2000年,第62巻:1647頁
【非特許文献65】Luconiら,Human Reprod,2001年,第16巻:1931頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
GSK−3タンパク質キナーゼに関連する状態の大部分に対して現在利用可能な処置選択肢がないため、このタンパク質標的を阻害する新規の治療因子に対して依然として大きな必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の要旨)
本発明により、以下が提供される。
(項目1)
式I:
【化1】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
Wは、窒素またはCHであり;
は、水素またはフッ素から選択され;そして
は、C1〜4脂肪族基であって、該C1〜4脂肪族基は、必要に応じてN(Rまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環で置換され、ここで、
各Rは、水素、あるいはOH、N(Rまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環で必要に応じて置換されたC1〜3脂肪族基から独立的して選択され、ここで:
各Rは、水素またはC1〜3脂肪族基から独立して選択され、
但し、
が水素であり、WがCHである場合、Rは、メチル以外である、
化合物。
(項目2)
項目1に記載の化合物であって、Rが、C1〜4脂肪族基である、化合物。
(項目3)
項目2に記載の化合物であって、Rが、メチル、エチル、シクロプロピル、tert−ブチル、またはイソプロピルから選択される、化合物。
(項目4)
項目3に記載の化合物であって、Rが、メチル、シクロプロピル、またはtert−ブチルから選択される、化合物。
(項目5)
項目1に記載の化合物であって、Wが、窒素である、化合物。
(項目6)
項目1に記載の化合物であって、Wが、CHである、化合物。
(項目7)
項目1に記載の化合物であって、Rが、水素である、化合物。
(項目8)
項目1に記載の化合物であって、Rが、フッ素である、化合物。
(項目9)
項目1に記載の化合物であって、Rが、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する6員の飽和環で置換されたC1〜4脂肪族基である、化合物。
(項目10)
項目9に記載の化合物であって、Rが、モルホリニル環、ピペリジニル環、またはピペラジニル環で置換されたC1〜4脂肪族基である、化合物。
(項目11)
項目1に記載の化合物であって、Rが、N(Rで置換されたC1〜4脂肪族基である、化合物。
(項目12)
以下:
【化2】

【化3】

【化4】

からなる群より選択される、化合物。
(項目13)
項目1に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含有する、薬学的に受容可能な組成物。
(項目14)
項目13に記載の組成物であって、アルツハイマー病(AD)のための処置、パーキンソン病のための処置、多発性硬化症(MS)の処置のための薬剤、喘息のための処置、抗炎症剤、炎症調節剤または炎症抑制剤、神経栄養因子、発作を処置するための薬剤、心臓血管疾患を処置するための薬剤、抗うつ薬、抗精神病剤、または糖尿病を処置するための薬剤から選択される追加治療剤をさらに含む、組成物。
(項目15)
生物学的サンプル中でのGSK3キナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法が、該生物学的サンプルを、以下:
(a)項目13に記載の組成物;または
(b)項目1に記載の化合物、
と接触させる工程を包含する、方法。
(項目16)
患者においてGSK3キナーゼ活性の方法であって、該方法が、該患者に、以下:
(a)項目13に記載の組成物;または
(b)項目1に記載の化合物、
を投与する工程を包含する、方法。
(項目17)
自己免疫疾患、炎症疾患、代謝障害、精神医学的障害、糖尿病、脈管原性障害、タウオパチー、神経学的障害、神経変性障害、脊髄損傷、緑内障、禿頭症、または心臓血管疾患を、処置が必要な患者において処置する方法であって、該方法が、該患者に、項目13に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目18)
項目17に記載の方法であって、前記疾患、障害または状態が、アレルギー、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、AIDS関連痴呆症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリグ病)、多発性硬化症(MS)、頭部外傷に起因する損傷、精神分裂病、不安、双極性障害、タウオパチー、脊髄または末梢神経損傷、心筋梗塞、心筋肥大、緑内障、注意欠陥障害(ADD)、抑鬱、睡眠障害、再灌流/虚血、発作、脈管原性障害、または禿頭症から選択される、方法。
(項目19)
項目18に記載の方法であって、前記疾患、障害、または状態が、発作である、方法。
(項目20)
項目18に記載の方法であって、前記疾患、障害、または状態が、アルツハイマー病である、方法。
(項目21)
項目17に記載の方法であって、前記障害が、神経学的障害または神経変性障害である、方法。
(項目22)
雄性患者における精子の運動性を減少させる方法であって、項目13に記載の組成物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目23)
項目17に記載の方法であって、該方法が、前記患者に、アルツハイマー病(AD)のための処置、パーキンソン病のための処置、多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤、喘息のための処置、抗炎症剤、炎症調節剤または炎症抑制剤、神経栄養因子、発作を処置するための薬剤、心臓血管疾患を処置するための薬剤、抗鬱薬、抗精神病剤、または糖尿病を処置するための薬剤から選択される追加治療剤を投与するさらなる工程を包含し、ここで:
該追加治療剤が、処置される疾患に適切であり;そして
該追加治療剤が、単一投薬形態として、該組成物とともに投与されるか、または多投与形態の一部として、該組成物とは別々に投与される、
方法。
本発明は、式I:
【0028】
【化5】

の化合物または薬学的に受容可能なその塩(ここで、W、R、およびRは以下に記載される通りである)を提供することにより、この必要性に取り組むものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の化合物は、GSK−3活性を阻害することが可能である。本発明に従って、これらの化合物はまた、GSK−3活性を阻害するための組成物および方法ならびに患者におけるGSK−3に関連する疾患または状態の重篤度を処置または減少させるための方法においても用いられる。
【0030】
本発明の方法が効果的な疾患または状態としては、例えば、神経学的障害および神経変性障害、糖尿病、精神医学的障害、多発性硬化症(MS)、心筋梗塞、再灌流/虚血、禿頭症、および発作が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、ビヒクルコントロールと比較して、中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)の6時間後に投与した式Iの化合物による処置の効果(総梗塞量、皮質梗塞量、線条体の虚血性損傷、および水腫形成における減少)を示す。
【図2】図2は、ビヒクルコントロール群と比較して、実験の時間経過にわたる式Iの化合物で処置したラットの神経学的機能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の式I:
【0033】
【化6】

の化合物またはその薬学的に受容な塩を提供し、ここで、
Wは、窒素またはCHであり;
は、水素またはフッ素から選択され;そして
は、必要に応じてN(Rで置換されたC1〜4の脂肪族基、または窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する飽和5〜6員環であり、ここで;
各Rは、水素または必要に応じてOH、N(Rで置換されたC1〜3の脂肪族基、あるいは窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する飽和5〜6員環から独立して選択され;そしてここで:
各Rは、水素またはC1〜3の脂肪族基から独立して選択され;
但し:
が水素であり、そしてWがCHである場合、Rはメチル以外である。
1つの実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩において:
Wは、窒素またはCHであり;
は、水素またはフッ素から選択され;そして
は、C1〜4脂肪族基であって、該C1〜4脂肪族基は、必要に応じてN(Rまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環で置換され、ここで、
各Rは、水素、あるいはOH、N(Rまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環で必要に応じて置換されたC1〜3脂肪族基から独立的して選択され、ここで:
各Rは、水素またはC1〜3脂肪族基から独立して選択され、
但し、
が水素であり、WがCHである場合、Rは、メチル以外である。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「脂肪族」または「脂肪族基」とは、完全に飽和であるかまたは1単位以上の不飽和を含む直鎖または分枝鎖のC〜C炭化水素鎖、あるいは完全に飽和であるかまたは1単位以上の不飽和を含む単環式C〜C炭化水素を意味するが、これらは、芳香族(本明細書中では、「炭素環」または「シクロアルキル」ともいわれる)ではなく、残りの分子への単一の結合点を有する。例えば、適切な脂肪族基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:直鎖または分枝鎖あるいはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびこれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)。
【0035】
単独またはより大きな部分のうちの一部として用いられる場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」は、1〜4個の炭素原子、アルケニルの場合において、少なくとも2個の炭素原子と1つの二重結合、ならびにアルキニルの場合において、少なくとも2個の炭素原子と1つの三重結合を含む、直鎖および分枝鎖の両方を含む。
【0036】
本発明に使用される化合物は、化学的に実現可能でありかつ安定な化合物に限定される。従って、上記の化合物における置換基または可変基の組み合わせは、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物を生じるこのような組み合わせに限って、可能である。安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、化学構造が40℃以下の温度で維持された場合、湿度または他の化学反応条件の非存在下において、少なくとも1週間、実質的に改変しない化合物である。
【0037】
本発明の特定の化合物が、互変異性形態で存在し得、化合物の全てのこのような互変異性形態は、本発明の範囲内であることが、当業者に明らかである。
【0038】
特に明記しない限り、本明細書中に示される構造はまた、構造の全ての立体化学的形態(すなわち、各不斉中心のR立体配座およびS立体配座)を含むことが意味される。従って、本発明の化合物の単一の立体異性体ならびにエナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物は、本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本明細書中に示される構造はまた、1つ以上の同位体的に富化された原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことが意味される。例えば、重水素または三重水素による水素の置換あるいは13C〜14Cの富化された炭素による炭素の置換を除き、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0039】
本発明の化合物は、PCT公報WO 02/22607に記載される化合物の属の範囲内である。しかし、発明者らは、虚血損傷に対するニューロン細胞の保護および発作の処置において驚くべきかつ予想外に増大した可能性を有する本発明の化合物を発見した。
【0040】
本発明の1つの局面は、Rが非置換のC1〜4脂肪族基である式Iの化合物に関する。式Iの化合物の好ましい脂肪族基は、アルキル基である。このようなアルキル基は、メチル、エチル、シクロプロピル、tert−ブチルまたはイソプロピルが好ましい。式Iのより好ましいアルキル基は、メチル、シクロプロピルおよびtert−ブチルである。
【0041】
1つの実施形態に従って、本発明は、式Iの化合物に関し、ここでRは、窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1〜2個のへテロ原子を有する飽和6員環で置換されたC1〜4脂肪族基である。このような飽和6員環としては、モルホリニル、ピペリジニルおよびピペラジニルが挙げられる。
【0042】
別の実施形態に従って、本発明は、RがN(Rで置換されたC1〜4脂肪族基である式Iの化合物に関する。
【0043】
特定の実施形態において、本発明は、Rが水素である式Iの化合物に関する。
【0044】
別の実施形態に従って、本発明は、Rが非置換C1〜3脂肪族基である式Iの化合物に関する。
【0045】
なお別の実施形態は、RがOHまたはN(Rで置換されたC1〜3の脂肪族基である式Iの化合物に関する。
【0046】
なお別の実施形態は、Rが窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1〜2個のへテロ原子を有する飽和6員環で置換されたC1〜3脂肪族基である、式Iの化合物に関する。このような飽和6員環としては、モルホリニル、ピペリジニルおよびピペラジニルが挙げられる。
【0047】
1つの実施形態に従って、本発明は、Wが窒素である式Iの化合物に関する。
【0048】
別の実施形態に従って、本発明は、WがCHである式Iの化合物に関する。
【0049】
なお別の実施形態に従って、本発明は、Rが水素である式Iの化合物に関する。
【0050】
別の実施形態に従って、本発明は、Rがフッ素である式Iの化合物に関する。
【0051】
本明細書中に記載されるような、実施形態の全ての組み合わせおよび部分的な組み合わせが、本発明の範囲内であることが理解される。
【0052】
式Iの化合物の代表的な例は、以下の表1に示される。
【0053】
(表1.式Iの化合物)
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

本発明の化合物は、以下のスキームI〜IIおよび当業者に公知の一般的な方法によって例示されるように調製され得る。
【0056】
(スキームI)
【0057】
【化9】

試薬および条件:(a)塩化オキサリル、ジクロロメタン、70℃;(b)ジメチルアミン、ペンタン、TiCl;(c)NHOAc、HOAc、THF、還流;(d)POCl、n−PrN、還流;(e)160℃、ニート。
【0058】
上記のスキームIは、本発明の化合物を調製するための一般的な方法を示す。工程(a)で、アリールアミド1を塩化オキサリルで処理し、アシルイソシアネート2を形成する。工程(c)に示されるように、アシルイソシアネート2は、エナミン3と縮合され、ピリミジノン4を得ることができる(J.Org.Chem(1993),58,414−418;J.Med.Chem.,(1992),35,1515−1520;J.Org.Chem.,91967,32,313−214)。中間体4を、POClで処理し、クロロ化合物5を形成し、次いで、これをアミノインダゾール誘導体6と合わせ、式Iの化合物を得る。アミノインダゾール誘導体6を調製する方法は、当該分野で公知である。特に、これらの誘導体の合成は、WO 02/22607に示される。
【0059】
(スキーム2)
【0060】
【化10】

試薬および条件:(a)iLiN(TMS)、エーテル、THF、iiHCl;(b)NaOEt、EtOH、還流。
【0061】
上記スキームIIは、ピリミジノン中間体5を調製するための代替方法を示し、これは、上記のスキームIの工程(e)に示されるような式Iの化合物の調製に使用され得る。工程(a)で、アリールニトリル7はベンズアミジンであり、そして中間体8は、次いで、β−ケトエステル9で処理され、ピリミジノン化合物5を形成し、これを上記のように使用し得る。
【0062】
当業者は、容易に合成されるかまたは市販の試薬を使用して、本明細書の教示に従って、本発明の他の化合物を合成し得る。
【0063】
GSK−3のインヒビターとして本発明に使用される化合物の活性を、インビトロ、インビボまたは細胞株において、アッセイし得る。インビトロアッセイとしては、活性化されたGSK−3のリン酸化活性またはATPase活性のどちらかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。インビトロアッセイの代替物は、GSK−3に結合するためのインヒビターの能力を、定量化する。インヒビター結合を、結合する前にインヒビターを放射標識すること、インヒビター/GSK−3複合体を単離すること、および結合した放射標識量を決定することによって、測定し得る。あるいは、新規インヒビターを、既知の放射性リガンドに結合するGSK−3とともにインキュベートする競合実験を行うことによって、インヒビター結合を決定し得る。
【0064】
別の実施形態に従って、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントもしくはビヒクルを含む組成物を提供する。本発明の組成物中の化合物の量は、生物学的サンプルまたは患者において、プロテインキナーゼ(特にGSK−3)を検出可能に阻害するのに効果的な量である。好ましくは、本発明の組成物は、このような組成物を必要とする患者に投与すつために処方される。最も好ましくは、本発明の組成物は、患者に経口投与するために処方される。
【0065】
本明細書中に使用される場合、用語「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトを意味する。
【0066】
用語「薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクル」とは、処方される本発明の化合物の薬学的活性を破壊しない、非毒性のキャリア、アジュバント、またはビヒクルをいう。本発明の組成物において使用され得る薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂。
【0067】
本明細書中に使用される場合、用語「検出可能に阻害する」とは、前記組成物の非存在下で、前記組成物およびGSK−3キナーゼを含むサンプルとGSK−3キナーゼを含む等価のサンプルとの間におけるGSK−3活性の測定可能な変化を意味する。
【0068】
「薬学的に受容可能な塩」とは、本発明の化合物の任意の非毒性塩、エステル、エステルの塩または他の誘導体であって、レシピエントに投与した際、本発明の化合物またはそれらの阻害活性代謝物または残留物を直接的または間接的のいずれかで提供できるものを意味する。
【0069】
本明細書中に使用される場合、用語「阻害活性代謝物またはその残留物」とは、本発明の化合物の代謝物またはその残留物がまたGSK−3キナーゼインヒビターであることを意味する。
【0070】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な、無機酸および有機酸、ならびに無機塩基および有機塩基から誘導されたものが、挙げられる。適切な酸塩の例としては、以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホネート(camphorsulfonate)、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモン酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩。
【0071】
他の酸(例えば、シュウ酸)は、それ自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において、使用され得る。
【0072】
適切な塩基由来の塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性もしくは油溶性の生成物または水もしくは油に分散可能な生成物は、このような四級化によって得られ得る。
【0073】
本発明の組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレー、局所投与、直腸投与、鼻投与、頬投与、膣投与、または移植レザバによって、投与され得る。用語「非経口」とは、本明細書中で使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内注射、肝臓内、病変内、および頭蓋内の、注射または注入技術を包含する。好ましくは、この組成物は、経口投与、腹腔内投与、または静脈内投与される。本発明の組成物の滅菌した注射可能形態は、水性または油性の、懸濁物であり得る。これらの懸濁物は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、当該分野で公知の技術に従って処方され得る。この滅菌した注射可能な調製物は、非経口的に受容可能な非毒性の希釈剤または溶媒中にある、滅菌した注射可能な溶液または懸濁物(例えば、1,3−ブタノール中の溶液)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌した不揮発性油が、溶媒または懸濁媒質として従来使用される。
【0074】
このために、刺激性の低い任意の不揮発性油(合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む)が、使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)が、この注射可能調製物中で有用であり、同様に、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油(特に、そのポリオキシエチル化形態))も、有用である。
これらの油溶液または油懸濁物はまた、長鎖アルコール希釈剤または長鎖アルコール分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)または薬学的に受容可能な投薬形態(エマルジョンおよび懸濁物を含む)の処方において一般的に使用される同様の分散剤も含み得る。他の一般的に使用される界面活性剤(例えば、Tween、Span、および薬学的に受容可能な固体、液体、もしくは他の投薬形態の製造において一般的に使用される他の乳化剤もしくはバイオアベイラビリティ増強剤)もまた、処方目的のために使用され得る。
【0075】
本発明の薬学的組成物は、経口的に受容可能な任意の投薬形態(カプセル、錠剤、水性懸濁物または水溶液を含むが、これらに限定されない)で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、代表的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。−水性懸濁物が経口使用のために必要とされる場合、その活性成分は、乳化剤および懸濁剤と合わされる。所望される場合、特定の甘味剤、矯味矯臭剤または着色剤もまた、添加され得る。
【0076】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のために坐剤形態で投与され得る。これらは、室温では固体であるが直腸温度では液体である適切な非刺激性賦形剤とその薬剤とを混合することによって、調製され得、従って、直腸で融解してその薬物を放出する。このような物質としては、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0077】
本発明の薬学的組成物はまた、特に、処置標的が、局所適用により容易に接近可能な領域または器官を含む場合(眼の疾患、皮膚の疾患、または腸管下部の疾患)に、局所投与され得る。適切な局所処方物は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0078】
腸管下部のための局所適用は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方物の状態で、もたらされ得る。局所的経皮パッチもまた、使用され得る。
【0079】
局所適用のために、この薬学的組成物は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含む、適切な軟膏中で処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱物油、流動パラフィン、白色鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、この薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含む、適切なローションまたはクリームの状態で処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルろう、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
眼への使用のために、この薬学的組成物は、滅菌した等張性のpH調整生理食塩水中の微粉化懸濁物としてか、または好ましくは、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)を含むかもしくは含まない、滅菌した等張性のpH調整生理食塩水中の溶液として、処方され得る。あるいは、眼への使用のために、この薬学的組成物は、軟膏(例えば、ペトロラタム)中で処方され得る。
【0081】
本発明の薬学的組成物はまた、経鼻エアロゾルまたは吸入によっても、投与され得る。このような組成物は、薬学処方物の分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤と使用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0082】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与のために処方される。
【0083】
単回投薬形態を産生するためにキャリア材料と組合わされ得る本発明の化合物の量は、処置される患者および特定の投与形態に依存して変化する。好ましくは、組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の間のインヒビターの投薬量がこれらの組成物を受ける患者に投与され得るように処方されるべきである。
【0084】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量および処置レジメンが、種々の要因(使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態(general health)、性別、食餌、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、および処置医の判断、および処置される特定の疾患の重症度を含む)に依存することもまた、理解すべきである。組成物中の本発明の化合物の量もまた、組成物中の特定の化合物に依存する。
【0085】
処置または予防されるべき、特定の状態または疾患に依存して、その状態を処置または予防するために通常投与されるさらなる治療剤がまた、本発明の組成物中に存在し得る。
【0086】
例えば、神経疾患または神経変性疾患を処置するための神経栄養因子または他の薬剤を、神経疾患または神経向性疾患を処置するために、本発明の化合物と組み合わせ得る。公知の神経栄養因子の例としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネル遮断薬、リルゾールおよび抗パーキンソン病薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
脳卒中のための公知の処置の例としては、Activase、組換え体または遺伝子改変体、組織プラスミノーゲン活性因子(rt−PA)、ヘパリン、グルタミン酸拮抗薬、カルシウム拮抗薬、オピエート拮抗薬、GABA拮抗薬および抗酸化剤が挙げられる。
【0088】
薬剤の他の例として、本発明の化合物はまた、以下に挙げられるがこれらに限定されないものと組合わされ得る:抗鬱剤(例えば、Zoloft、Prozac、PaxilおよびBuspar);抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジン);免疫調節剤および免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン);神経栄養因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣剤、イオンチャネルブロッカー、リルゾール(riluzole)、および抗パーキンソン症候群薬剤;心血管疾患を処置するための薬剤(例えば、β−ブロッカー、ACEインヒビター、利尿剤、ニトレート、カルシウムチャネルブロッカー、およびスタチン(statin);糖尿病を処置するための薬剤(例えば、インスリン、インスリン類似体、α−グリコシダーゼ阻害剤、ビグアナイドおよびインスリン増感剤;ならびに免疫不全障害を処置するための薬剤(例えば、γ−グロブリン)。
【0089】
本発明の組成物中に存在する追加治療薬の量は、唯一の活性剤としてその治療薬を含有する組成物で通常投与される量以下である。好ましくは、現在開示された組成物中の追加治療薬の量は、唯一の活性剤としてその治療薬を含有する組成物中で通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0090】
別の実施形態に従って、本発明は、アルツハイマー病(AD)のための処置、パーキンソン病のための処置、多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤、喘息のための処置、抗炎症剤、免疫調節剤および免疫抑制剤、神経栄養因子、脳卒中を処置するための薬剤、心臓血管疾患を処置するための薬剤、抗鬱剤、抗神経病薬剤、または糖尿病を処置するための薬剤から選択される、さらなる治療薬剤を患者に投与することに関する。ここで:
前記さらなる治療薬剤は、処置される疾患に対して適切であり;そして、
前記さらなる治療薬剤は、単一投薬形態として前記組成物と一緒に、または複数投薬形態の一部として前記組成物と分けて投与される。
【0091】
他の実施形態に従って、本発明は、生体試料において、GSK3キナーゼ活性を阻害する方法に関し、該方法は、該生体試料を、本発明の化合物または該化合物を含有する組成物と接触させる工程を包含する。
【0092】
本明細書中で使用する「生体試料」との用語は、細胞培養物またはそれらの抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得られる生検材料;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、または他の体液またはそれらの抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
生体試料でのGSK3キナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の種々の目的のために有用である。このような目的の例には、輸血、臓器移植、生体試料の保存および生物検定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
別の実施形態に従って、本発明は、患者のGSK−3キナーゼ活性を阻害する方法に関し、該方法は、該患者に、本発明の化合物または該化合物を含む組成物を投与する工程を包含する。
【0095】
別の実施形態に従って、本発明は、患者におけるGSK−3媒介性疾患または状態の重症度を処置または軽減させるための方法を提供し、該方法は、本発明に従う組成物を患者に投与する工程を包含する。
【0096】
用語「GSK−3媒介性疾患」とは、本明細書中で使用される場合、GSK−3が役割を果すことが公知である任意の疾患または他の有害状態を意味する。そのような疾患または状態としては、自己免疫疾患、炎症疾患、代謝障害、精神障害、糖尿病、血管形成障害、タウオパチー、神経疾患または神経変性疾患、脊髄損傷、緑内障、禿頭症または心臓血管疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
別の実施形態に従って、本発明は、自己免疫疾患、炎症疾患、代謝障害、精神障害、糖尿病、血管形成障害、タウオパチー、神経疾患または神経変性疾患、脊髄損傷、緑内障、禿頭症または心臓血管疾患から選択される疾患、障害または状態の重症度を、必要とする患者に対して処置するか、または軽減する方法に関し、該方法は、該患者に、本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0098】
別の実施形態に従って、本発明は、アレルギー、喘息、糖尿病、アルツハイマー疾患、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、AIDS関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、頭蓋骨損傷による傷害、精神分裂病、不安症、躁鬱病、タウオパチー、精髄神経障害、末梢神経障害、心筋梗塞、心筋細胞肥大、緑内障、注意不足障害(ADD)、うつ病、不眠症、再灌流/虚血、脳卒中、血管形成障害、または禿頭症から選択される疾患または状態の重症度を処置するか、または軽減する方法に関する。ここで、該方法は、それを必要としている患者に、本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0099】
好ましい実施形態に従って、本発明の方法は、脳卒中の重症度を処置するか、または軽減することに関する。
【0100】
別の好ましい実施形態に従って、本発明の方法は、神経変性疾患または神経疾患の重症度を処置するか、または軽減する方法に関する。
【0101】
本発明の別の局面は、男性患者の精子の運動性を減少させる方法に関し、該方法は、該患者に本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0102】
別の実施形態において、さらなる治療薬剤を含まない組成物を利用する本発明の方法は、前記患者に、さらなる治療薬剤を分けて投与する、さらなる工程を包含する。それらのさらなる治療薬剤を分けて投与する場合、それらは、本発明の化合物の投与前、投与に連続して、または投与後に、投与され得る。
【0103】
本明細書中に記載される発明を、さらに十分に理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、唯一説明する目的のためであり、いかなる方法においても本発明を制限するものとして構成されていないことは、理解されるべきである。
【実施例】
【0104】
本明細書中で用いられる場合、「方法A」として示されるHPLC法は、以下の通りである:
カラム:C18、3μm、2.1×50mm、Jones Chromatographyによる「Lighting」。
【0105】
勾配:4.0分かけて、100%水(1%アセトニトリル、0.1% TFAを含む)から100%アセトニトリル(0.1% TFAを含む)へ、100%アセトニトリルにて1.4分間保持、そして最初の条件に戻す。
【0106】
合計泳動時間7.0分。
【0107】
流量:0.8mL/分。
【0108】
本明細書中で用いられる場合、用語「R」とは、示されたHPLC法を用いて化合物について得られた保持時間(分)をいう。以下の実施例に示される化合物番号は、上記の表1に示される化合物番号に対応する。
【0109】
(実施例1)
6−メチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン:エタノール(20mL)中の2−トリフルオロメチル−ベンズアミジン(2.13g、4mmol)およびナトリウムエトキシド(0.83g、12mmol)の混合物をアセト酢酸メチル(0.44mL、4mmol)で処理し、そして24時間加熱した。反応物を冷却し、濃縮し、水で希釈し、そして2N塩酸で酸性にした。得られた溶液を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、メタノール:ジクロロメタン(3:97)]による精製によって、表題化合物(0.51g、50%の収率)が黄色固体として提供された;
【0110】
【化11】

(実施例2)
4−クロロ−6−メチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン:オキシ塩化亜リン酸(39mL、419mmol)中の6−メチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン(10.7g、41.9mmol)の溶液をトリ−n−プロピルアミン(16mL、83.9mmol)で処理し、そして110℃〜120℃において1時間にわたって還流した。溶媒をエバポレートし、トルエンとともに3回共沸し、次いで減圧しながら乾燥した。残渣を酢酸エチル中に溶解し、1N水酸化ナトリウム、水およびブラインで順番に洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、酢酸エチル:ヘキサン(1:9)]による精製により、表題化合物(9.61g、84%の収率)が橙色オイルとして提供された。
【0111】
【化12】

(実施例3)
(5−フルオロ−1H−インダゾール−3−イル)−[6−メチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]アミン(I−2):4−クロロ−6−メチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン(0.10g、0.37mmol)および5−フルオロ−1H−インダゾール−3−イルアミン(0.072g、0.48mmol)の混合物を、160℃〜170℃において8時間、ニートで加熱した。得られた残渣を室温まで冷却し、次いでN−メチル−ピロリジノン(2mL)中に溶解した。この混合物を水(20mL)中に注ぎ、そして重炭酸ナトリウム(5mL)を添加し、そして得られた混合物を濾過し、水で洗浄した。分取HPLCによる精製により、表題化合物(0.081g、43%の収率)が黄褐色固体として提供された。
【0112】
【化13】

(実施例4)
6−tert−ブチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン:エタノール(50mL)中の2−トリフルオロメチルベンズアミジン(1.12g、5mmol)、ナトリウムエトキシド(1.02g、15mmol)および4,4−ジメチル−3−オキソ−ペンタン酸メチルエステル(0.80mL、5mmol)の混合物を還流にて16時間加熱した。反応物を冷却し、濃縮し、水で希釈し、そして2N塩酸で酸性にした。この溶液を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、メタノール:ジクロロメタン(2:98)]による精製により、表題化合物(0.48g、32%の収率)が黄色固体として提供された;
【0113】
【化14】

(実施例5)
6−tert−ブチル−6−クロロ−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン:オキシ塩化亜リン酸(1.65mL、15.9mmol)中の6−tert−ブチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン(0.47g、1.59mmol)の溶液をトリ−n−プロピルアミン(0.61mL、3.17mmol)で処理し、そして110℃〜120℃で1時間加熱した。溶媒をエバポレーションにより除去し、次いでトルエンとともに共沸した。残渣を酢酸エチル中に溶解し、1N水酸化ナトリウム、水およびブラインで順番に洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、酢酸エチル:ヘキサン(1:9)]による精製により、表題化合物(0.33g、66%の収率)が黄色オイルとして提供された。
【0114】
【化15】

(実施例6)
[6−tert−ブチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−3):4−クロロ−6−tert−ブチル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン(0.10g、0.32mmol)および1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イルアミン(0.064g、0.48mmol)の混合物を、160℃〜170℃で16時間、ニートで加熱した。得られた残渣を冷却し、N−メチル−ピロリジノン(2mL)中に溶解し、次いで水(20mL)および重炭酸ナトリウム(5mL)中に注ぎ、そして酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を水で4回洗浄し、ブラインで1回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮した。粗製生成物を分取HPLCにより精製して、表題化合物(0.007g、4%の収率)を黄色固体として提供した。
【0115】
【化16】

(実施例7)
・6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン:(1−シクロプロピル−ビニル)−ジメチルアミン:窒素下にて0℃のペンタン(600mL)中のシクロプロピルメチルケトン(19.8mL、200mmol)の溶液にジメチルアミン/テトラヒドロフラン(2M、500mL、1000mmol)を添加し、次いでペンタン(60mL)中の塩化チタン(IV)(12.1mL、110mmol)の溶液を滴下様式で添加した。反応物を0℃にて0.5時間、そして室温にて5時間攪拌した。反応物をCeliteを通して濾過し、ペンタンおよびエーテルで洗浄し、15℃〜20℃の浴温度にて減圧下で濃縮し、次いで橙色オイルとして−4℃にて一晩保存した。
【0116】
・2−トリフルオロメチルベンゾイルイソシアネート:窒素下にて室温の1,2−ジクロロエタン(600mL)中の2−トリフルオロメチルベンズアミド(34.9g、185mmol)の溶液を、塩化オキサリル(20.2mL、230mmol)で迅速な滴下で処理し、そして反応物を70℃〜80℃にて一晩攪拌した。溶媒をエバポレーションにより除去し、そして残渣をトルエンとともに2回共沸した。
【0117】
・6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン4−オン:窒素下にて0℃の(1−シクロプロピル−ビニル)−ジメチルアミンの溶液に、テトラヒドロフラン(50mL)中の2−トリフルオロメチルベンゾイルイソシアネートの溶液を滴下様式で添加した。反応物を0.5時間攪拌し、次いで酢酸アンモニウム(78g、1000mmol)および酢酸(400mL)を添加した。反応混合物を、テトラヒドロフランを連続的に除去しながら還流にて3時間加熱し、次いでプールし、そして水(1.2L)中に注いだ。得られた沈澱物を濾過により収集し、水およびエーテルで洗浄して、6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン(28.79g、56%の収率)を白色固体として得た。この白色固体は、表題化合物と(2−トリフルオロメチル−ベンゾイル)−ウレア(HPLCによれば91:9)との混合物である。
【0118】
【化17】

(実施例8)
4−クロロ−6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン:オキシ塩化亜リン酸(40mL、428mmol)中の6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン(12.0g、42.8mmol)を、75℃〜80℃にて1時間加熱した。溶媒をエバポレーションにより除去し、そしてトルエンとともに3回共沸した。残渣を0℃まで冷却し、酢酸エチル中に溶解し、氷小片および水で処理した。次いで、混合物を重炭酸ナトリウム、水およびブラインで順番に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、5:95の酢酸エチル:ヘキサン(5:95)]による精製により、表題化合物(9.71g、76%の収率)が無色のオイルとして提供された。
【0119】
【化18】

(実施例9)
[6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(1H−インダゾール−3−イル)−アミン(I−4):4−クロロ−6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン(0.08g、0.27mmol)および1H−インダゾール−3−イルアミン(0.036g、0.41mmol)の混合物を160℃〜170℃にて6時間、ニートで加熱した。残渣を冷却し、そしてN−メチル−ピロリジノン(2mL)中で溶解し、水(30mL)および重炭酸ナトリウム(5mL)中に注ぎ、次いで濾過し、水およびエーテルで洗浄した。収集した沈澱物およびエーテル洗浄液を合わせ、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、メタノール:ジクロロメタン(2:98)]による精製により、表題化合物(0.017g、15%の収率)が淡黄色固体として得られた。
【0120】
【化19】

(実施例10)
[6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−1):N−メチルピロリジノン(50mL)中の4−クロロ−6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン(7.00g、23.4mmol、実施例8において上記の通りに調製した)および1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イルアミン(9.43g、70.3mmol)の混合物を、130℃にて12時間加熱した。残渣を冷却し、N−メチル−ピロリジノン(2mL)中に溶解し、水(500mL)および重炭酸ナトリウム(15mL)中に注ぎ、次いで濾過し、水で洗浄した。フラッシュクロマトグラフィー[SiO、酢酸エチル:ヘキサン(35:65)]による精製により、表題化合物(5.25g、57%の収率)が白色固体として提供された。
【0121】
【化20】

(実施例11)
[6−シクロプロピル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン塩酸塩:化合物I−1(8.42g、21.4mmol)を6N塩酸中に溶解して溶解することによりこのHCl塩を調製して、表題化合物(9.242g、99%)を黄色固体として提供した。
【0122】
【化21】

(実施例12)
6−ブト−3−エニル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オン:6−ブト−3−エニル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン4−オンを、3−オキソ−ヘプト−6−エン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例1において上記の通りに調製した。この反応により、表題化合物(2.545g、49%の収率)がクリーム色の固体として提供された。
【0123】
【化22】

(実施例13)
4−ブト−3−エニル−6−クロロ−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン:表題化合物を、6−ブト−3−エニル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−ピリミジン−4−オンを用いたこと以外は実施例2に記載の通りに調製して、黄色オイル(0.49g、99%の収率)を提供した。
【0124】
【化23】

(実施例14)
[6−ブト−3−エニル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−7):表題化合物を、4−ブト−3−エニル−6−クロロ−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジンを用いたこと以外は実施例6に記載の通りに調製して、クリーム色の固体(2.712g、62%の収率)を提供した。
【0125】
【化24】

(実施例15)
[6−(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(1−8):−78℃のメタノール(5mL)およびテトラヒドロフラン(5mL)中の[6−ブト−3−エニル−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(0.10g、0.25mmol)の溶液を、オゾンを通して5分間発泡させた。この混合物に、モルホリン(0.05mL、0.56mmol)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.39g、1.85mmol)を添加した。反応物を室温で24時間攪拌し、この時点でさらなるモルホリン(0.10mL、1.28mmol)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.39g,1.85mmol)を添加し、次いで攪拌をさらに2時間続けた。反応物を重炭酸ナトリウムでクエンチし、そしてエバポレートした。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、1:9のメタノール:ジクロロメタンを用いて溶出した)、続いて分取HPLCによる精製により、表題化合物が山吹色の凍結乾燥物(0.068g、38%の収率)として提供された。
【0126】
【化25】

(実施例16)
以下の化合物を、本明細書中で実施例1〜15、一般的スキームに記載される方法と実質的に類似の方法および当業者に公知の方法により調製した。
【0127】
[6−(3−ピペリジン−1−イル−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−9):
【0128】
【化26】

[6−(3−ジエチルアミノ−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−10):
【0129】
【化27】

[6−(3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−11):
【0130】
【化28】

[6−(3−ピペラジン−1−イル−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−12):
【0131】
【化29】

[6−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−13):
【0132】
【化30】

N,N−ジメチル−N’−{3−[6−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル−アミノ)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−プロピル}−エタン−1,2−ジアミン(I−14):
【0133】
【化31】

[6−(3−メチルアミノ−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−15):
【0134】
【化32】

2−{3−[6−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イルアミノ)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリミジン−イル]プロピルアミノ}−エタノール(I−16):
【0135】
【化33】

[6−(3−(2−モルホリン−4−イル−エチルアミノ)−プロピル)−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−17):
【0136】
【化34】

[6−{3−[メチル−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミノ]−プロピル}−2−(2−トリフルオロメチル−フェニル)ピリミジン−4−イル]−(1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル)−アミン(I−18):
【0137】
【化35】

(実施例17K)
(GSK−3の阻害についてのK決定)
化合物を、標準的な結合酵素系(Foxら(1998)Protein Sci.7,2249)を用いて、GSK−3(AA 1−420)活性を阻害する能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTTおよび1.5% DMSOを含む溶液中で実施した。このアッセイにおける最終基質濃度は、20μM ATP(Sigma Chemicals,St Louis,MO)および300μMペプチド(HSSPHQS(PO)EDEEE,American Peptide,Sunnyvale,CA)であった。反応を、30℃および20nM GSK−3βにおいて実施した。結合酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルベート、300μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0138】
ATPおよび目的の試験化合物を除いて上記に列挙した試薬の全てを含む、アッセイストック緩衝溶液を調製した。このアッセイストック緩衝溶液(175μl)を、0.002μM〜30μMの範囲にわたる最終濃度で5μlの目的の試験化合物を含む96ウェルプレートにおいて、30℃にて10分間インキュベートした。代表的には、12点滴定を、DMSOを用いて、娘プレートにおいて試験化合物の(10mM化合物ストックからの)系列希釈物を調製することによって行った。反応を、20μlのATP(最終濃度20μM)の添加によって開始した。反応速度を、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale,CA)を30℃にて10分間用いて得た。K値を、阻害濃度の関数として、速度のデータから決定した。
【0139】
本発明の化合物は、上記のアッセイを用いて、100nM未満のK値を有することが見出された。
【0140】
(実施例18)
(神経保護パーセントの決定)
本明細書中で用いられる場合、用語「保護パーセント」は、虚血損傷(OGD)に対して保護されたニューロン細胞の百分率を表し、そして以下の通りに算出される:
保護%=(試験−OGD)/(正常−OGD)×100。
【0141】
本プロトコルは、培養海馬ニューロン細胞において無酸素−再酸素付加によって実験的虚血を誘導するために用いられる手順を記載する。試験化合物の神経保護効果を、虚血誘導性のニューロン細胞損傷および細胞死に対して評価する。
【0142】
以下の工程を、アッセイ日の前に実施した:
LoG−Neurobasal[LoG−Neurobasalは、NoG−Neurobasal培地(Invitrogen Corp,特別注文)+0.5mMグルコース、0.5mM L−グルタミンおよび0.25×ペニシリン/ストレプトマイシンを含む]を、低酸素チャンバ中で一晩、予め平衡化した。
【0143】
このLoG−Neurobasalを、通常のインキュベータ(5% CO)中で一晩、予め平衡化した。
【0144】
この通常のインキュベータ(5% CO)中で、Neurobasal/B27AO[Neurobasal/B27AOは、Neurobasal培地(Invitrogen Corp Cat #21103−049)を、2×B27−AO補充物(Invitrogen Corp Cat #10889−038)、0.5mM L−グルタミン、および0.25×ペニシリン/ストレプトマイシンとともに含む]を、一晩、予め平衡化した。
【0145】
以下の工程を、アッセイ日に実施した:
LoG−Neurobasal培地を低酸素チャンバから除去し、そしてこの培地に、100% Nを30分間軽く発泡させて完全に脱酸素した。
【0146】
このNeurobasal/B27m培養培地[Neurobasal/B27mは、Neurobasal培地を、2×B27補充物(Invitrogen Corp Cat #17504−044)および0.5mM L−グルタミンとともに含む]を、無菌のガラスパスツールピペットを取り付けた真空ポンプを用いて各12ウェルプレート中の細胞から吸引した。
【0147】
このプレートを、以下から調製した2mlのグルコース非含有BSS(pH7.4)で1回洗浄した:143.6mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl、0.8mM MgSO、1mM NaHPO、26.2mM NaHCO、10mg/1フェノールレッド、および0.25×P/S。
【0148】
ニューロン(最初の培養から10〜11日)を、LoG−Neurobasal(12ウェルプレートの各ウェルについて、1ウェルあたり1ml)を用いて脱酸素した。これらのニューロン細胞を、Park LC,Calingasan NY,Uchida K,Zhang H,Gibson GE.(2000)「Metabolic impairment elicits brain cell type−selective changes in oxidative stress and cell death in culture」.J Neurochem 74(1):114−124に従って調製した。
【0149】
試験化合物を、各ウェルに直接添加した(3つの濃度の化合物+ポジティブコントロール、各々三連)。これらの化合物を100% DMSO中に溶解し、ここで、DMSOの濃度は、0.5%を決して超えず、次いで、これらのプレートを、プレートの蓋を半開きにした状態で、Hypoxic Chamber中に5時間配置した。
【0150】
酸素正常状態のコントロールについて、予め平衡化した(equalibrated)酸素正常状態LoG−Neurobasal培地を各ウェルに添加し、そしてこのプレートを、通常の培養インキュベータ中に4時間、再度配置した。
【0151】
4時間の低酸素後、既存の培地を注意深く吸引し、そして2mLの新たな酸素付加(予め平衡化した)Neurobasal/B27AOを各ウェルに添加した。再度酸素付加培地を、使用前に培地を一晩、培養インキュベータ(5%CO/95%O)中に配置することによって達成した。
【0152】
同じ濃度を有する同じ試験化合物を、対応するウェルに添加し、そしてプレートを細胞培養インキュベータ(5% CO/95% O)中に配置し、そして20〜24時間、再度酸素付加した。20〜24時間の再酸素付加後、下記の細胞トラッカーグリーン蛍光法を用いて生存ニューロンの数を計数する。
【0153】
既存の培養培地を、12ウェルプレートの各ウェルから吸引し、そしてニューロンを、30℃〜37℃に予め温めた2mlのHBSS(pH7.4、Invitrogen Corp,Cat #14170−112)で1回洗浄した。
【0154】
このプレートの各ウェルに、HBSS中に溶解した1mlの2.5μM Cell Tracker Green((Molecular Probes Cat #2925)および5μM Hoechst 33342蛍光色素を添加した。次いで、これらのプレートを暗所にて室温で15分間配置し、次いでこれらのニューロンを2mlのHBSSで1回洗浄した。1mlのHBSSを各ウェルに添加し、そして生存蛍光細胞および死んだ蛍光細胞の数を、Cellomics(登録商標)自動画像化システムを用いて計数した。
【0155】
本発明の化合物は、30%以下の保護%値を有することが見出された。
【0156】
(実施例19)
(中大脳動脈閉塞モデル(MCAO))
本研究において用いた動物は、270gと333gとの間の体重の雄性Sprague−Dawleyラット(Charles River,NC)であった。これらのラットを、12時間明/暗の日周期にて、少なくとも1週間にわたって動物施設に順応させた。これらに、食物および水を自由に摂取させた。
【0157】
中大脳動脈(MCA)の起点をブロックするために用いた管腔内動脈オクルダーを、25mmの長さのセグメントに切断した4−0ナイロンモノフィラメント縫合糸から作製した。縫合糸の先端部を、熱に曝露することにより丸めた。この動脈の管腔をブロックするためのオクルダーの有効性を高めるために、これらに、1% ポリ−L−リジン懸濁物をコーティングし、そして60℃に設定したオーブン中で1時間にわたって乾燥した。縫合糸をEthelon,Somerville,NJから購入した。化学試薬を、以下の通りに利用した:
1.塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(すなわち、TTC、Cat #T8877、ロット#50K1435)およびPEG400(Cat #P−3265)を、Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouriから購入した。
【0158】
2.リン酸緩衝化ホルマリン(Cat #245−685)を、Fisher Scientific Co.,Mddletown,VAから購入した。
【0159】
3.蒸留水を社内で生成した。
【0160】
4.エタノール(Cat #E702−3)を、Aldridge,Milwaukee,WIから購入した。
【0161】
限局性大脳虚血の管腔内縫合糸モデルを、実質的にLongaら,Stroke,20:84−91(1989)に記載された通りに用いた。左の外側静脈を、ビヒクルまたは化合物の投与のためにカニューレ挿入した。
【0162】
ラットが研究の間の水分補給を維持するのを補助するために、水および酸素加リンゲル溶液(各々5ml)中の5%デキストロースを、MCAOの10時間後、24時間後および48時間後に各側腹部に皮下注射した。
【0163】
最初の算入基準を満たしたラット(2の神経学的スコアおよび体温38.5℃未満)を、ビヒクル処置群または化合物処置群への逐次割り当てによってランダム化した。特定の群へのラットの最初の毎日の割り当ては、1日おきであった。
【0164】
化合物またはビヒクルでの処置を、MCAOの6時間後、i.v.ボーラス注射によって開始し、そしてInfu Diskポンプを用いた一定の注入により、次の18時間にわたって継続した。これらのラットを短時間で麻酔し、そして頸静脈カテーテルを、背面の首切開部を通して露出させた。化合物またはビヒクルのボーラス用量を投与し、そして注入ポンプを5分後に作動させた。注入ポンプを、ジャケットによりラットの背面に取り付けた。
【0165】
化合物溶液を、体積が5:4:1の水:PEG400:エタノールのビヒクルを用いて、毎日新たに調製した。このモデルにおいて利用した群および用量を、以下の表2に示す。
【0166】
【表2】

梗塞の体積を、Bedersonら(1986)によって記載された手順の変法を用いて、塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(TTC)で染色した7枚の連続切片の画像解析によって決定した。MCAOの3日後、ラットを、CO窒息によって屠殺し、そして断頭した。脳を頭蓋冠から迅速に取り出し、そして氷浴中のPBSを含む個々のビーカー中に30分間配置した。2mmの厚さの冠状脳切片を、脳マトリクススライサを用いて得た。これらの脳切片を、PBS中に2% TTCを含むラベルしたペトリ皿中に、37℃にて2分間配置した。TTCは、生存可能な脳組織を赤に染色して、虚血領域を白色のままにする。次いで、脳切片を、10%中性緩衝化ホルマリン中に、4℃にて少なくとも24時間浸漬した。全ての切片を、屠殺の3日以内に画像化した。
【0167】
ホルマリン固定したTTC染色脳切片(7個の連続切片)を、Adobe Photoshopソフトウェアおよびディジタルカメラを用いてディジタルに捕捉した。画像を、IPLab画像解析プログラムにインポートした。皮質梗塞の面積(白色面積)の輪郭を描いて面積を測定した。梗塞の体積を、以下の式を用いて算出した:
【0168】
【数1】

同側小脳半球体積および反対側小脳半球体積の合計を、同様に決定した。水腫の体積を、反対側小脳半球体積を、同側小脳半球体積から差し引くことにより算出した。ラットの処置に対して盲検にされた科学者が分析を実施した。
【0169】
ラットの神経学的機能を、Bedersonら(1986b)によって記載されたスコア付け系を用いて、MCAOの2時間後、24時間後、48時間後および72時間後に評価した。スコアは、0〜3の範囲におよび、0が正常であり、3は重篤な欠損を示す。
【0170】
2時間の虚血の時点での神経学的スコアを、研究への算入基準として用いた。ラットが少なくとも2の神経学的スコアを有さなかったかまたは3のスコアを有した場合、このラットを、研究から排除した。ラットの処置群に対して盲検にされた研究者が、神経学的評価を行った。
【0171】
血液サンプル(約0.5mL)を、薬物動態学的分析のために、ボーラス注射の5分後、4時間後、22時間後、46時間後および70時間後に、これらのラットから入手した。これらのラットに、イソフルランを用いて軽く麻酔した。血液を、ヘパリン処理した血液収集チューブ(0.6mLの容積)中に、外側尾静脈から、23ゲージの蝶形注入セットを用いて収集した。血液サンプルを、微量遠心機において(10に設定した)4分間回転した。血漿を取り出し、ラベルしたバイアル中に配置し、そしてフリーザー中に−20℃に保存した。
【0172】
MCAOの72時間後、ラットに、CO吸入により深く麻酔し、そしてなるべく多くの血液を心臓穿刺により得た。血液を、ヘパリン処理した血液収集チューブ(6mlの容積)中に入れた。血漿を、4000rpmにて5分間(Allegra R6)の遠心分離により、血液から分離した。血漿を収集し、ラベルしたプラスチックチューブ中に配置し、そしてフリーザ中で−20℃で保存した。
【0173】
ビヒクル群と処置群との間での梗塞サイズ、血漿グルコース、体温および体重についての統計分析を、両側Student t検定により実施した。神経学的スコアの統計分析を、非パラメトリック分析により行った。これらのデータを、平均SEMとして表す。
【0174】
MCAOの6時間後に投与した式Iの化合物を用いた処置は、一過性限局性発作のこのモデルの梗塞体積を減少させることに非常に有効であった(図1)。化合物処置群におけるラット(88±31mm)は、ビヒクルコントロール(418±31mm、p<0.0001)と比較して、総梗塞体積において非常に有意な79%減少を有した。化合物処置群における皮質虚血損傷(32±20mm)もまた、ビヒクルコントロール(272±22mm、p<0.0001)と比較して有意に、88%減少した。式Iの化合物を用いた処置(55±12mm)は、ビヒクルコントロール(146±13mm、p<0.0001)と比較した場合に、線条体の虚血損傷を有意に、62%減少させ得た。最終的に、式Iの化合物を用いた処置(21±10mm)は、ビヒクルコントロール群(97±10mm、p<0.0001)と比較した場合に、水腫形成の量を79%減少させた。
【0175】
式Iの化合物を用いて処置したラットは、実験の時間経過にわたって神経学的機能における顕著な改善を実証した(図2)。投与の開始の18時間後という早期に、神経学的機能における顕著な改善が、ビヒクルコントロール群と比較した場合、化合物処置群において観察された(それぞれ、1.3±0.3対2±0単位、p<0.01)。化合物で処置したラットの神経学的スコアは、MCAOの72時間後に改善され続け、これらのラットは、顕著な欠損がほとんどまたは全くなく、機能し得た。対照的に、ビヒクル処置ラットは、実験の時間経過を通して、神経学的機能における改善を示さなかった。
【0176】
(実施例20)
(抗鬱剤についての動物モデル)
本発明の化合物を、Porsolt,R.D.ら,1977;229:327−336:Bourin M.Fundam Clin Phannacol 1990;4:49−64によって記載された方法と実質的に類似の方法により、ラットにおける抗鬱活性についてアッセイした。
【0177】
(ラットにおける水泳試験(鬱病試験))
ラットを、水を満たした透明なシリンダ中に配置する。ラットが頭を水の上に保つために最小の体の動きしかしない時間として定義される、不動持続時間(=不動時間)を、手で記録する。第2試行において、4日目に、ラットを再度このシリンダ中に、今回は5分間配置する。不動時間を、試行全体を通して手で記録する。
【0178】
(試行I(最初の試行):)
1日目に、雄Wistarラット(RA239系統;160−180g)を、シリンダ中に15分間配置する。ラットが頭を水の上に保つために最小の体の動きしかしない時間として定義される、不動の持続時間(=不動時間)を、手で記録する。合理的な数の動物を1日に試験するために、記録を、15分間の試行のうちの以下の3つの部分期間に制限する:0分〜2.5分(すなわち、試行の開始時)、6.25分〜8.75分(正確に、この試行の中間)および12.5分〜15分(この試行のまさに終了時)。この手順は、この試行全体を通しての動物の「動作」を表すことが以前に見出されている。
【0179】
(試行II(第2試行):)
4日目に、ラットを、このシリンダ中に、今回は5分間、再度配置する。不動時間を、試行全体を通して手で記録する。
【0180】
化合物処置を、0.5%メチルセルロース(Methocel)中に懸濁し、そして経口投与した(5ml/kg)。薬物投与は、1日目(試行Iの当日)の夕(16:00付近)、2日目および3日目の朝(08:00付近)および夕、ならびに試行II(4日目)の正確に1時間前においてである。一対の2匹のラットについての処置は、試行Iにおける動作についてのランダム化に依存して、類似であるかまたは異なっている。Methocelまたは15mg/kg p.o.Despiramine(DMI)で処置したラットの群を、それぞれ、コントロール群およびポジティブ標準として役立てる。
【0181】
本発明の化合物は、上記のモデルにおいて抗鬱活性を示すことが見出された。
【0182】
(実施例21)
(精神分裂病の動物モデル:驚愕のプレ−パルス阻害(pre−pulse Inhibition)(PPI))
注意および認識の分裂に関連する感覚運動ゲーティングの障害は、精神分裂病患者の間で一般的である。プレ−パルス阻害は、大きな聴覚刺激に進行する弱い音が、驚愕反射を阻害する場合に起こる。PPIは、予測しやすく、精神分裂病の妥当性に直面し、かつこれを構築するテストであると考えられている。
【0183】
ポジティブコントロールであるクロザピンは、市販されている非定型の抗精神剤(Clozaril(登録商標))である。クロザピンは、D4ドパミンおよび5−HT2レセプターに高い親和性を有し、動物モデルにおいてPPI応答を効率的に増強する。
【0184】
PPIアッセイを、以下の様式で、Spoorenら,Anxiolytic−like effects of the prototypical metabotropic glutamate receptor 5 antagonist 2−methyl−6−(phenylethynyl)pyridine in rodents.J Pharrnacol Exp Ther.295:1267−1275(2000)に記載される方法と実質的に類似の方法で実行した。
【0185】
雄のC57BL/6(20〜30g)を、4群でmacrolonケージ(42×26×15cm)に少なくとも実験3日前に入れた。ハウジング設備は、温度調節および湿度調節し、人工照明を備えた(6:00 AM〜6:00 PM照明)。動物を、水および食物に、適宜接触させた。全ての動物は、実験的に未処置であった。
【0186】
手順動物を試験化合物(30、60、100mg/kg)、クロザピン(30mg/kg)(ポジティブコントロール)またはビヒクル(0.5% メチルセルロース)で前処置した。45分後、バックグラウンドを70dBの白色雑音にした驚愕室(startle chamber)にマウスを個別に入れ、10分間静かに放置した。次に、56試験(trial)を含む15分のセッションを行った。驚愕刺激は、40ms−120dB−白色雑音、プレパルスは72、74および78dBの20ms−白色雑音から100msの驚愕に進行する。
【0187】
8種の試験を行った:プレパルス+驚愕(プレパルス強度につき7試験)、プレパルスのみ(プレパルス強度につき7試験)、驚愕のみ(7試験)、および刺激無し(7試験)。試験間の間隔の変数は、平均15sである(10sと20sとの間)。無刺激試験において、基線測定を行った。驚愕のみの試験において、基線聴覚驚愕振幅をプレパルス+驚愕試験において測定し、正常驚愕の阻害の量を測定して基線驚愕の百分率で表した。プレパルスのみの試験において、弱いノイズに対する正常応答を、コントロールとして測定した。プレパルス阻害を、以下の式に従って計算した:% PPI=100−100×[(PA2 PPP)/PA2]。本発明者らは、本発明の化合物がマウスにおける聴覚驚愕反射のPPIを増強することを見出した。
【0188】
(実施例22)
(抗不安薬に対する動物モデル)
抗不安薬アッセイを、以下の様式で、Spoorenら,Anxiolytic−like effects of theprototypical metabotropic glutamate receptor 5 antagonist 2−methyl−6−(phenylethynyl)pyridine in rodents.J Pharmacol Exp Ther.295:1267−1275(2000)およびLecci A,Borsini F,Voltera GおよびMeli A,Pharmacological validation of a novel animal model of anticipatory anxiety in mice.Psychophannacology 101:255−261(1990)に記載される方法と実質的に類似の方法で実行した。
【0189】
(I.ストレス誘導性過温症:)
ストレス誘導性過温症(SIH)を、Lecciら(1990)による原型の記載から僅かに改変して採用した。温度計(ELLAB instruments,Copenhagen,Denmark)で、0.1℃単位の最も近い温度まで、潤滑したサーミスタプローブ(2mm直径)を直腸に20mm挿入して直腸温度を測定した。測定の間、マウスを尾の基部近くを手で捕まえていた。プローブを、安定するまでその場にとどめ、読み取りを得た(15s以内)。
【0190】
1つのmacrolonケージ(42×26×15cm)あたり15匹の動物を入れた。実験の少なくとも24時間前、後の同定のために、ケージ内の動物に色で毛皮に印をつけた。直腸温度を測る60分前、所定のケージ内の全ての個体を、1分間隔で連続して、試験化合物(用量:1.3、10または30mg/kg、p.o.;注射容積:10ml/kg)、クロルジアゼポキシド−HCl(10mg/kg、p.o.;Research Biochemicals International)(すなわち、ポジティブコントロール)またはビヒクル(0.5% メチルセルロース;Animed)で処置した。正確に30分間後、マウスを連続してケージから出し(再び、1分間隔)、そして直腸温度を決定し、記した。一旦温度を記録した後、動物を異なった(隣接した)ケージに入れた。従属変数(すなわち、ストレス誘導性過温症)を、6匹の最初に取り出したマウスにおける直腸温度中間値および6匹の最後に取り出したマウスにおける直腸温度中間値のΔとして規定した。このΔを、特定の温度群に依存して6〜8のケージに対して計算し、ここで、これらの6〜8の値の平均の最後の表示を、使用した。最初の方の動物の直腸温度を使用し、さらに、基礎体温に対する化合物それ自体の潜在的な効果を評価した。
【0191】
(II。ラットにおける社会的審査テスト)
成体雄Sprague−Dawleyラット(=「レジデント」ラット;350〜400g)および幼若なLister Hoodedラット(=「侵入者(intruder)」ラット;100〜120g)を使用した。試験2週間前に、侵入者ラットを、一対でmacrolonケージ(42×26×15cm)に入れ、レジデントラットを個別にmacrolonケージ(42×26×15cm)に入れた。全ての動物を、同じ部屋に入れた。ハウジング設備は、温度調節および湿度調節し、人工照明を備えた(6:00 AM〜6:00 PM照明)。動物を、水および食物に、適宜接触させた。全ての動物は、実験的に未処置であった。
【0192】
全ての動物に試験化合物(0.3、3、10または30mg/kg)、クロザピン(5mg/kg、p.o.;CDZ,Research Biochemicals International,Natick,MA)、参照/ポジティブ化合物としてLiCl(10、30mg/kg)またはビヒクル(0.5% メチルセルロース)を与えた。注射容積は2ml/kgであった。経口処置を侵入者ラットのみに与え、化合物投与1時間後にテストを行った。全ての観察を、明期(light phase)(8: 00AM〜1: 00PM)にレジデントラットのホームケージ(上述)にて行った。ケージの床を、おがくずで覆った。1匹の侵入者ラットおよび1匹のレジデントラットで構成された一対を、ランダムに実験群またはコントロール群に割り当てた。レジデントに対する侵入者ラットの活性アプローチ挙動の持続時間(=社会的活動に費やした時間)(嗅ぐ行動(sniffing)、肛門性器探索(anogenital exploration)、鼻を押し付ける行動(nosing)、毛づくろい(grooming)、舐める行動(licking)、遊び(playing))を、5分の間、手で記録(score)して累積的に記録(record)した。
【0193】
(III.上昇プラスメイズ(Elevated plus maze)テスト:)
雄の成体Sprague−Dawleyラット(180〜220g)を、4群でmacrolonケージ(42×26×15cm)内に、実験の少なくとも3日前に入れた。ハウジング設備は、温度調節および湿度調節し、人工照明を備えた(6:00 AM〜6:00 PM照明)。動物を、水および食物に、適宜接触させた。全ての動物は、実験的に未処置であった。
【0194】
上昇プラス−メイズは、2つの開放腕(open arm)(40×12cm)および閉鎖腕(enclosed arm)(40×12×20cm)から成り、これらは、すべて共通の中央プラットホーム(12×12cm)から延びる。および互いに反対に配置された類似の腕を有する、プラス記号の形状を形成する立体構造、および装置は、中央台上の床から60cm上に上がる。このメイズは、灰色のプレキシグラスからできている。開放腕を掴むことは、小さなその周囲の小さく持ち上がった縁(0.25cm)を含めることによって促進される。
【0195】
この方法を、以下の様式で、Handley,S.L.およびMithani,S Effects of alpha−adrenoceptor agonists and antagonists in a maze exploration model of”fear”−motivated behaviour.Naunyn−Schtvziedeberg’s Arch Pharmacol 327:1−5(1984)に記載の方法と実質的に類似の方法で実施した。ラットを、種々の処置のうちの1つにランダムに割り当てた。動物を、テストの少なくとも1時間前に、ハウジング室から実験室に移動した。経口化合物投与後、ラットを、個々にmacrolonケージ(22×16×14cm)内に入れ、60分後に、閉鎖腕に面した中央プラットホームに配置した。8分間の試験を行い、メイズを被験体間で完全に洗浄した。直接位置決定を、メイズの側に座している観察者によって行い、以下の従来パラメータを使用した:開放腕および閉鎖腕の侵入数(腕の侵入は、四肢が腕に侵入したことによって定義した)、および開放腕上で過ごした時間(中央プラットホームを除く)。異なった処置群由来の動物を、代わる代わるテストし、そして試験を、8:30AM〜12:30PM(すなわち、明期の前半部)に行った。パラメータを反映する以下の不安を、記録した:開放腕上で過ごした時間の比率(開放/全体)、第1腕を離れるまでの持続時間、そして腕侵入の総数。
【0196】
本発明の化合物は、上述の動物モデルにおいて、抗不安薬様の効果を示す。
【0197】
(実施例23)
(アルツハイマー病についての細胞アッセイ−ニューロン生存)
Kienlen−Campardら,J Biol Chem 277:15666(2002)に記載の方法と実質的に類似の方法で以下のアッセイを行った。海馬ニューロンの一次培養物、E18ラット胚から調製した(Parkら,J Neurochem,74:114,2000)。細胞を、6ウェルまたは96ウェル培養皿(4×10細胞/cm)中またはスライドガラス(1. 25×10細胞/cm)にプレート培養し、ポリ(D−リジン)で前処理し、そして6日間インビトロで2%B−27および0.5mM L−グルタミンで補充したNEUROBASALTM倍地中で培養し、その後組換えアデノウイルスを感染させた。これらの条件の下で、ニューロン培養物(ニューロンの98%まで)は、高い分化率および生存率を示す。
【0198】
組換えアデノウイルスおよびニューロン感染−−アデノウイルスをコードする変異体(APP695の形態)の産生、伝播、および精製を行う。インビトロで6時間後、ニューロン培養物を、100の多重感染で4時間、最小の培養培地容積で感染させる。次いで感染培地を、新しい培養培地で3〜5日間置換した。これらの条件の下で、少なくとも75%のニューロンは、組換えアデノウイルスによってコードされるタンパク質を発現する。
【0199】
細胞生存−−ニューロン生存を、呈色NTTアッセイまたはCellomics自動画像化システムを使用してCellTracker蛍光細胞生存度アッセイによって測定した。核染色については、細胞を固定し(リン酸緩衝か生理食塩水中0.37%ホルムアルデヒド/0.2%グルタルアルデヒド)、そしてHoechst 33342色素(1μg/ml)中で30分間培養した。
【0200】
Aβ産生の定量−−培養培地を収集し、プロテアーゼインヒビターで処理し (1μg/mlペプスタチン、10μg/mlロイペプチン、1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド)、そして遠心分離(16,000×g、5分、4℃)によって除去する。100μlの上清を、以下に記載するELISA方法を用いたβアミロイド定量のために使用する。
【0201】
(実施例24)
(βアミロイド(1−40)産生の阻害)
アルツハイマー病は、細胞外プラークおよび脳内の細胞間神経細線維もつれによって特徴付けられる。これらのプラークの主要なタンパク質成分は、βアミロイド(「ars」)ペプチドであり、これは、アミロイド前駆体タンパク質(「APP」)によって切断される。
【0202】
(細胞株および化合物処理:)
Aβを分泌可能な安定細胞株を、ヒトH4神経膠腫症細胞において、APP695含有Swedish変異体(K595N、M596L)およびYFPを分泌マーカーとして発現するレトロウイルスベクターの導入によって構築した。APP695を発現する安定な形質導入体を、高レベルのYFPを発現する細胞の選別によって選択した。
【0203】
細胞を、1ウェルあたり80,000細胞で、96ウェルプレート中で、10%胎仔ウシ血清(PBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDulbecco’s改変イーグル培地(Invitrogen,カタログ番号11965−092)中でプレート培養した。24時間後、この培地を目的の化合物を含有する新しい培地と交換した。ここで、この20μM〜10nMの範囲の濃度の化合物を、7点滴定で二連でテストした。試験化合物で18〜24時間、37℃でインキュベート後、上清中hAD(1−40)濃度を、hAβ40 ELISAを用いて決定した。
【0204】
(Aβ分泌についてのELISAアッセイ)
サンプルの培養物上清におけるhAβ40のインビトロ定量測定のために、The Biosource International,Inc.Signal Select Humanβ Amyloid(hAβ40)ELISA(カタログ番号KHB3482)を使用した。NH末端特異的なモノクローナル抗体を、マイクロタイタープレートのウェル上にコートした。サンプル(公知のhAβ成分標準を含む)をこれらのウェル内にピペット分注し、その後、hAβの1−40配列について特異的なウサギ抗体を添加した。次いで、結合ウサギ抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ウサギ抗体の使用により検出した。過剰な抗ウサギ抗体の除去後、結合酵素により切断されて色を呈する基質溶液を加えた。この呈された色の強度は、サンプル中のhAβ(1−40)の濃度に正比例する。
【0205】
(ELISAアッセイを以下のように行った:)
サンプルおよび既知の濃度のhAβ(1−40)ペプチドを含む標準を、標準/サンプル希釈剤(Biosource試薬)中に希釈した。プロテアーゼインヒビターAEBSF、アプロチニン、ベスタチン、E−64、ロイペプチン、およびペプスタチンA(Calbiochem,Protease Inhibitor Cocktail SetIII,カタログ番号539134)を全てのサンプルに添加し、Aβペプチドのタンパク質溶解を防いだ。100μlのサンプルを、96ウェルELISAプレートのウェルに加え、そして室温で2時間または4℃で一晩インキュベートした。ウェルを、100μlの洗浄緩衝液(Biosource試薬)で4回洗浄し、次いで、100μlの検出抗体を加え、そしてプレートを2時間室温でインキュベートした。検出抗体は、hAβ(1−40)配列を認識する。
【0206】
このウェルを4回100μlの洗浄緩衝液で洗浄し、次いで100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギ二次抗体を加えた。プレートwくぉ室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルを、100μlの洗浄緩衝液で5回戦上司、次いで100μlの安定化色素原を加えた。このプレートを、室温で30分間、暗所でインキュベートした。安定化色素原は、結合HRPによって切断したときに青くなる基質溶液であり、従って、標準マイクロタイタープレートリーダー中でモニターされ得る。次いで、100μlの停止溶液を加え、そしてウェル中の色の強度を、Molecular Devices SpectraMAX 340プレートリーダーを用いて450nmで測定した。代表的に、化合物を点用量反応(2連で実行)において、20μM〜10μMの範囲の化合物濃度で分析した。サンプル中のAβの濃度(1−40)を、既知の濃度のAβペプチドを含む標準から産生された標準曲線から計算した。
【0207】
本発明の化合物を、3日間に渡ってテストした。毎日、Calbiochemγセクレターゼ「インヒビターX」を、コントロールに含めた。これは、報告されたIC50を有する、50nMの細胞許容性ヒドロキシエチルジペプチドアイソスター(カタログ番号565771)である。
【0208】
(実施例25)
(アルツハイマー病(AD)についてのトランスジェニック動物アッセイ)
(I.ADトランスジェニック動物)
Lys670−−>Asn、Met671−−>Leu変異を含むヒトアルツハイマーβアミロイド(Aβ)前駆体タンパク質の形態の695アミノ酸を過剰発現するトランスジェニックマウス(Tg2576マウスは、Taconic,N.Y.から市販される)は、3月齢で空間参照および改変課題においておよび正常な学習および記憶を有したが、9〜10月齢で障害を示した。Aβ(1−40)における5倍の増加およびAβ(1−42/43)における14倍の増加が、これらの行動の欠陥の出現を達成した。Congo red色素で染色された多くのAβプラークは、マウスの皮質構造および辺縁構造において、Aβの増加した量で存在する。これらのトランスジェニックマウスにおけるアルツハイマー病を暗示する行動異常、生化学的異常、病理学的異常に相関する出現は、この疾患の病理学および神経生物学の新規の探索の機会を示唆する。Correlative memory deficits,Abeta elevation,and amyloid plaques in transgenic mice.Science 1996 Oct 4;274(5284):99−102を参照のこと。
【0209】
Tg2576マウスは、本明細書中に記載のモデルに特定されているが、市販および個人的にの両方で入手可能な他のトランスジェニックマウスがこれらのモデルにおける使用に感受性であることが理解される。
【0210】
(II.β−アミロイドELISAプロトコル)
Tg2576マウスのアルツハイマー病モデルにおけるAβと記憶との間の関係。The Journal of Neuroscience,2002年3月1日,22(5):1858−1867。
【0211】
凍結した脳半球(hemibrain)を、連続して2工程抽出で抽出する[(1)2% SDSおよび(2)70%蟻酸(FA)中の超音波処理]。後の画分は、Abnsolと呼ばれる。サンプルの超音波処理の後、100,000×gで1時間4℃で遠心分離し、上清を回収し、そしてペレットを次の溶液で超音波処理した。脳抽出物を、サンドイッチELISAによって以前記載されたように(Suzukiら,1994;Gravinaら,1995)測定した。以下のシステムを使用した:(1)BAN−50捕捉およびBA−27またはBC−05検出または(2)3160捕捉およびBA−27またはBC−05検出、これらは両方ともAβ 1−40およびAβ 1−42を、それぞれ検出する。全ての年齢のマウスの多くのTg2576脳の検出比較は、3160捕捉ELISAによって検出されるAβ40およびAβ42の量を示し、これは、BAN−50が捕捉のために使用される場合と本質的に同一である。2% SDS抽出物は、少なくとも1:40で希釈され、従って、このアッセイは、0.05% SDS中で行われる。より大きな希釈がSDSについて矯正するため、これらをまた、0.05% SDS中でアッセイする。FA抽出物を、1M Trisリン酸緩衝液中1:20の希釈で中性化する(pH 8.0)。Softmaxプログラムを使用し、マイクロリットル中フェムトモルを、サンプルと同一溶液中の既知の濃度の合成Aβ 1−40およびAβ 1−42のサンプル吸光度の比較により計算し、これらの値を、湿重量グラムあたりピコモルで最終的に発現された元のホモジネートの湿重量で矯正する。全ての場合において、非トランスジェニック組織を、トランスジェニック組織と同様に平行して処理する。
【0212】
(III.トランスジェニックマウスの行動試験:モリス水迷路)
水迷路を、発明者らが記憶障害の全ての段階を検出し、識別するのを可能にする様式で、B6/SJL株バックグラウンドのTg2576マウスに調整する。このプロトコルは、生命の初期におけるわずかな変化および生命の後期におけるかなりの変化を測定するために必要な感受性、特異性および動的範囲を提供する。訓練の間のプローブの内挿は、感受性を提供する。性能の欠損に対する除外基準の採用は、特異性を提供する。訓練は、広範囲に、ダイナミックレンジを適合させる。平均プローブ点数(MPS)の値は、3回のプローブ試行の間の標的象限のマウスによって費やされた時間の平均百分率であって、分子マーカーと関連した個々のマウスの認識能力の定量化を改善し、広範なダイナミックレンジを伴なう単一の測定を提供した。他の株バックグラウンドのTg2576マウスに対するプロトコルを、学習の速度および能力欠損における株特異的差異に関して調整する必要がある場合もある。The Relationship between Aβ and Memory in the Tg2576 Mouse Model of Alzheimer’s Disease.The Journal of Neuroscience,2002年3月1日、22(5):1858−1867を参照のこと。
【0213】
水迷路は、25−27℃の水で満たした1mまたは1.2mの円形のプールであって、無毒性の白色塗料の添加によって不透明にしている。プールは、はっきりと形づくったカーテンおよび別個の物体を備える棚からなるアミド固定した空間手掛かりを配置する。マウスをビーカー中に配置し、プールの壁に面して穏やかに水中に下げる。マウスは最初に、可視的なプラットフォーム訓練を連続3日間受け(1日当たり、8回の試行)、泳いで黒色と白色のしまの柱で印をつけたプラットフォーム(12×12cmの四角形の表面)に上がらせる。可視的なプラットフォームの日程は、統計解析のために、4回の試行の2組の訓練にわける。可視的なプラットフォーム訓練の間、プラットフォームの位置(NE、SE、SWまたはNW)および開始位置(プラットフォームのすぐ横に隣接した位置を除いて、N、NE、E、SE、S、SW、WまたはNW)は、各試行において、擬似ランダム的に変動する。擬似ランダム化は、所定の位置が繰り返される前に、全ての位置がサンプリングされることを確実にする。遮蔽プラットフォームの訓練を、9連続日にわたって実施し(1日当たり、4回の試行)、この訓練では、マウスは、水の表面の1.5cm下に沈めたプラットフォームを捜す。60秒以内にプラットフォームに到達できないマウスは、金属避難シャベル(metal escape scoop)でプラットフォームに到達に導かれる。遮蔽プラットフォーム試行の間、プラットフォームの位置は、一定のまま(NE,SE、SWまたはNW)であり、そして、7つの擬似ランダム的に選択される位置(プラットフォームのすぐ横に隣接する位置を除く、N、NE、E、SE、S、SW、WまたはNW)の一つのプールにマウスを入れる。各遮蔽プラットフォーム試行の後、30秒間でプラットフォーム上に残ったマウスを、プラットフォームから追い去り、非難シャベルを使って飼育かごに戻される。マウスは直ちに、シャベルとプールからの避難との関係を学び、連続してシャベルの方に向くか、または、シャベルが出現するとシャベルの後を追う。マウスの避難シャベルの方に向く能力または非難シャベルを追う能力は、視力および注意力の独立した測定に相当した。遮蔽プラットフォーム訓練の開始後4日目、7日目および10日目で、プラットフォームをプールから取り除いたプローブ試行を実施し、マウスに、プラットフォームを60秒間捜させる。全ての試行は、プールの上に直接マウントしたカメラによってモニタリングし、コンピュータ追跡システムを使用して記録し、分析する。
【0214】
MPSを各マウスについて計算し、モリス水迷路における空間情報の記憶力を評価するために使用する。挿入したプローブからの情報を統合することによって、MPSは、以前に記載された学習指標(Gallagherら、1993)と類似した概念の学習の測定を表し、学習の種々の段階で記憶をサンプリングする。同様の統計結果は、MPS、学習指標および学習点数(プローブ試行の間に、標的四分円で費やした時間の百分率の加重合計)を用いて見出され、本発明者らは、表現が容易なために、MPSを使用してデータを表すことを選択した。
【0215】
試験後、各群のマウスの部分集合を安楽死させ、Aβ測定のために、右半分の脳を液体窒素中で凍結させる。全ての脳をコード化した様式で分析する。
【0216】
(IV.トランスジェニックマウスの行動試験:探索活動性、不安、運動神経)
βAPP695SWE変異を発現するトランスジェニックマウス:探索活動性、不安および運動神経に対する効果を参照のこと。Brain Res 2003年7月4日;977(1):38−45。
【0217】
白色アクリルで作製されたT迷路で、自発的な変化を試験する。この迷路は、2本のアーム(長さ:30cm)によって各側に隣接する中心の幹(長さ:30cm)からなる。迷路の幅は、9cmであって、各壁は、20cmの高さである。最初の試行では、マウスをT迷路のプラスチック障壁によってブロックされた右アームを有するT迷路の幹に配置する(強制選択)。利用可能なアームに入った後、マウスの後ろを障壁で閉鎖することによって、マウスを60秒間その中に維持する。次いで、マウスを回収し、障壁を取り除いた後すぐに、自由選択試行のために、幹に戻す。マウスは、反対のアームまたは同一のアームのどちらかを探索し得る(四肢基準)。第一試行のブロックしたアームが、奇数日の右側から偶数日の左側に切り替えることを除いて、続く9日間、同じ二試行手順を繰り返す。選択試行を測定する間の反応の前の反復の数および試行ごとの1分間の切捨て期間を含む待ち時間を測定する。マウスが1分以内に反応しなかった場合、それは、選択時点ではなく、反応が全ての試行で記録され得るように、通常は、1回以下、マウスを後ろから短くつつく。
【0218】
自発運動量を、50cm×50cmの表面領域および38cmの高さの壁を有する白色アクリルで作製された開放領域で測定する。中心帯および周辺帯における活性を、頭上のビデオカメラによって記録し、分析する。中央帯は、正方形で、各壁から25cmの距離で始まった。マウスを、毎日3回、5分間の時間で、開放領域の角に配置する。移動した距離および各領域において休息(<2cm/s)に費やした時間、緩慢な移動(2〜5cm/s)に費やした時間、または敏速な移動(>5cm)に費やした時間を測定し、また、装置の周辺および中心で費やした時間も測定する。
【0219】
増強したプラス迷路(plus−maze))は、十字型の4つのアーム(長さ:70cm、幅:10cm、床面からの高さ:40cm)および中央領域(10cm)からなる。アームの内2つは、壁(高さ:10cm)によって3つの側面上に囲まれるが、他の2つは、落下を最小限にするために使用する最小限の境界(高さ:0.5cm)を除いて開放される。2つの囲まれたアームまたは開放アームは、互いに面している。マウスを中央領域に配置し、閉鎖アームおよび開放アームに入る数および入っている時間を、前述の試験で使用したものと同一のビデオ追跡装置を用いて、毎日2回、5分間の時間で測定する。次いで、開放/総アームへの進入および時間の割合を計算する。マウスが開放アームから落下する稀な場合、時間の記録を停止し、マウスを落ちた元の正確な位置に戻す。生じ得る匂いの手がかりの効果を低減させるために、自発的な反復、開放領域およびプラス迷路試験の各期間の後、装置を湿った布できれいにふきとり、次の試行の開始の前に乾燥させる。
【0220】
定常梁は、プラスチックで構成し、2.5cmの直径と、110cmの長さを有する。この梁は、頑丈なグリップを確保するために、1層の白色の遮蔽テープで覆われ、線画によって11個の部分に分けられる。梁は、艶消しで覆った床面から45cmの高さに配置し、落下を和らげるのに役立ち、それによってマウスに対する傷害を防止する。マウスが逃げるのを防止するために、梁の末端に厚紙の壁を挿入する。マウスを中央部分に配置することによって、試行を開始した。越えた部分の数(四肢基準)、落下するまでの時間および落下した数を、4回の試行時間の1回当たり測定する。切捨て期間は、試行あたり1分間で、試行間の間隔は15分間である。
【0221】
加速的回転棒(accelerating rotorod)(Model 7650、Stoelting、Wood Dale、IL、USA)は、うねのあるプラスチック(直径:3cm)から構成される。梁を、床面レベルから13.5cmの高さに配置し、プラスチック障壁によって5個の部分(幅:5.5cm)に分ける。実験者の視点から離れると、前向きの歩行運動によって落下が避けられ得るように、マウスを、既に、マウスの動きと反対向きに回転する(4rpm)棒の上に配置する。回転棒を、各5分間の試行の間に、徐々に、滑らかに4rpmから40rpmまで加速した。落下するまでの時間を、毎日3回、15分間の試行間の間隔を備えた4回の試行時間に対して測定する。マウスが2回の完全な回転の間、移動せずに、棒にしがみついた(受動的な回転)場合は常に、落下したとみなす。訓練後、種々の正常反射および病的反射の発生率を評価する。
【0222】
(V.免疫組織化学による脳のβ−アミロイドの蓄積の定量)
変異体ヒトプレセニリン1およびアミロイド前駆体タンパク質を同時発現するトランスジェニックマウスにおける増進した血小板の蓄積、連合性学習障害およびα7ニコチンレセプタータンパク質の上方制御については、J Biol Chem.2002年6月21日;277(25)22768−80を参照のこと。
【0223】
マウスを、リン酸緩衝生理食塩水(10mM NaHPO、150mM NaCl、pH7.2)で心臓灌流し、その後4% パラホルムアルデヒドで固定する。凍結した脳切片を、クリオスタットを使用して、12μmの厚さで冠状に切り出し、ProbeOn Plus顕微鏡スライド(Fisher Scientific)上にマウントし、その後、風乾する。染色のすぐ前に、脳切片をアセトンで固定する。組織切片を、0.3% Hおよび0.3% 正常ヤギ血清中で30分間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水中1.5%正常ヤギ血清とともに30分間インキュベートする。次いで、脳切片をビオチン化抗マウスIgG(1:200、Vector Laboratories)で染色した抗Aβ抗体6E10(1:1000、Senetik)とともにインキュベートし、その後、Vectastain ABC Reagent(1:100、Vector Laboratories)で免疫検出する。切片を、ヘマトキシリンで対比染色する。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明の多数の実施形態が上に記載されるが、本発明者らの基本的な実施例は、変化させて、本発明の化合物および方法を使用する他の実施形態を提供し得ることが明らかである。従って、本発明の範囲は、実施例を用いて示した特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280729(P2010−280729A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211448(P2010−211448)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2004−526255(P2004−526255)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】