説明

I型コラーゲン及び/又はエラスチン産生促進用組成物

ヒト皮膚線維芽細胞のI型コラーゲン及び/又はエラスチンの産生を促進する組成物を提供することにより、皮膚のはりや弾力性を向上させ、しわやたるみの予防、防止、改善に十分に有効で、かつ、皮膚に対する安全性も高い皮膚老化防止用組成物を提供することを目的とする。本発明は、シリビン、シリジアニン、シリクリスチン、イソシリビンなどのフラボノリグナンの総称であるシリマリンを含有し、I型コラーゲン産生促進及び/又はエラスチン産生促進作用を有することを特徴とする組成物、組成物に含まれるシリマリンがシリマリン含有植物及び/又は植物抽出液由来であり、I型コラーゲン産生促進及び/又はエラスチン産生促進作用を有することを特徴とする組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒト皮膚真皮由来の線維芽細胞(以下ヒト皮膚線維芽細胞)が産生するI型コラーゲン及び/又はエラスチンの産生促進効果を有する組成物に関する。特に本発明は、真皮のはりや弾力性を向上させ、加齢や紫外線照射により引き起こされるしわやたるみなどの皮膚の老化を予防、防止、改善する作用をもつ組成物に関する。
【背景技術】
しわやたるみなど、皮膚の老化に伴って起こる変化には、加齢、日光曝露などの環境によるストレス、精神的ストレスなどが関与することが知られている。皮膚の老化により、皮膚組織を構成する細胞である表皮細胞、線維芽細胞が減少するとともに、これらの細胞の活動に必要な物質を供給する血管が減少する。また、皮膚構造を保持する機能を持つ細胞外マトリックスにも変化がみられる。顕著な変化として、真皮のI型コラーゲン、III型コラーゲン及びエラスチンや、表皮層と真皮層の間をつなぐ基底膜のIV型コラーゲンやラミニンなどの減少や変性が起こり、表皮、真皮及び基底膜が偏平化する(非特許文献1)。特に、真皮の主成分であるI型コラーゲンやエラスチンは皮膚のはりや弾力性に深く関わっており、これらのタンパク質の変性及び減少が、しわやたるみの主原因となっている。
このような皮膚の老化を防止する目的で、様々なコラーゲンやエラスチン産生に着目した製剤が開発されている。例えば、コラーゲン産生促進剤としては、レチノイドとブナ科ブナ属植物の木の芽からの抽出物を含む組成物(特許文献1)、Saussurea属に属する植物からの抽出物を含む組成物(特許文献2)、カッコンの抽出物を含む組成物(特許文献3)、セイロンマツリ、ハマスゲの抽出物を含む組成物(特許文献4)、ハス胚芽抽出物を含む組成物(特許文献5)、エピメディウム属に属する植物の抽出物を含む組成物(特許文献6)、月桃からの抽出物を含む組成物(特許文献7)などが開発されている。
また、真皮のエラスチンを増加させるための組成物として、エラスチンを配合した化粧料(特許文献8及び9)、エラスチン産生促進剤(特許文献10)及びエラスチン分解酵素であるエラスターゼ阻害剤(特許文献10及び11)などが開発されている。このように、ヒト真皮組織細胞中でI型コラーゲン及び/又はエラスチンの産生が促進されると皮膚の老化が抑制され、しわやたるみが抑制あるいは改善されることが明らかとなっている。
また、I型コラーゲン及びエラスチンの産生を促進する成分として、レチノイン酸やその誘導体であるレチノールが知られているが(非特許文献2及び3)、皮膚刺激性を始め、安全性面で問題があること(非特許文献4)や、安定性が悪いことから、一般的な実用には適さない。
このように皮膚老化防止を目的とした、真皮のコラーゲン及びエラスチン量を増加させるための組成物が開発されてきたが、皮膚への安全性を兼ね備えつつ、十分に有効な作用を及ぼすには至っていない。
本発明は、皮膚老化に関わるヒト皮膚線維芽細胞における、シリマリンの新規な生理効果に基づく発明である。このシリマリンに関する先行技術としては、以下の非特許文献5及び特許文献12〜17が代表的なものであるが、本発明はこれらの先行技術とは異なるものである。
【非特許文献1】化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望、日本化粧品技術者会編、各論 第1章 第7節 しわ対応化粧品、162〜177頁、2001年3月31日 第1刷発行
【非特許文献2】Varani,J.,et al.,All−trans retinoic acid stimulates growth and extracellular matrix production in growth−inhibited cultured human skin fibroblasts.J.Invest.Dermatol.,Vol.94,No.5,p717−723,1990.
【非特許文献3】Tajima,S.,et al.,Elastin expression is up−regulated by retinoic acid but not by retinol in chick embryonic skin fibroblasts,J.Dermatol.Sci.,Vol.15,p166−172,1997.
【非特許文献4】Zouboulis,C.C.,Retinoids:Is therea New Approach?,IFSCC Magazine,Vol.3,No.3,2000
【非特許文献5】天然薬物事典、奥田拓男編、廣川書店、昭和61年3月3日 発行
【非特許文献6】Wagner,H.,et al.,Arznein.Forsch,18,696,1968.
【非特許文献7】Wagner,H.,et al.,Arznein.Forsch,24,466,1974.
【非特許文献8】Tittel,G.,et al.,J.Chromatogr.,135,499,1977.
【非特許文献9】Tittel,G.,et al.,J.Chromatogr.,153,227,1978.
【非特許文献10】Quercia,V.,et al.,Chromatography in Biochemistry,Medicine and Enviromental Research,Frigerio A.(Ed).,Elsevier Scientific Publishing Company,Amsterdam,1983,p1.
【非特許文献11】Lowry,O.et.al.,J.Biol.Chem.,193,265,1951
【非特許文献12】M.J.Barttek,et al.,J.Invest.Dermatol.,58,114,1972
【非特許文献13】化粧品ハンドブック、日光ケミカルズ(株)・日本サーファクタント工業(株)・東色ピグメント(株)、10.経皮吸収促進、3.経皮吸収の評価、607頁
【特許文献1】特開2001−278783号公報
【特許文献2】特開2001−316240号公報
【特許文献3】特開2001−348338号公報
【特許文献4】特開2002−29923号公報
【特許文献5】特開2002−29980号公報
【特許文献6】特開2002−53427号公報
【特許文献7】特開2001−316275号公報
【特許文献8】登録3121957号
【特許文献9】特開2001−72571号公報
【特許文献10】特開2002−293747号公報
【特許文献11】特開2002−205950号公報
【特許文献12】特開平5−286864号公報
【特許文献13】特許第2948818号
【特許文献14】特開2000−169328号公報
【特許文献15】特開2000−169332号公報
【特許文献16】特願2002−255448号
【特許文献17】特公平5−9406号公報
【特許文献18】特公昭63−41396号公報
【発明の開示】
本発明は、新規な、ヒト皮膚線維芽細胞のI型コラーゲン及び/又はエラスチンの産生を促進する組成物を提供することを課題とする。さらに又、本発明は、皮膚のはりや弾力性を向上させ、しわやたるみの予防、防止、改善に十分に有効で、かつ、皮膚に対する安全性も高い皮膚老化防止用組成物を、提供することを課題とする。
本発明者は、I型コラーゲン及びエラスチンの産生を促進する作用を有する成分の探索を行った。その結果、シリマリン及び/又はマリアアザミエキスなどのシリマリンを含む植物抽出物、あるいはこれらの植物体がI型コラーゲン及び/又はエラスチンの産生促進に関して優れた作用を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.シリマリンを含有するI型コラーゲン産生促進及び/又はエラスチン産生促進作用を有することを特徴とする組成物、
2.組成物に含有されるシリマリンが、シリマリン含有植物抽出物及び/又は植物由来である前記1に記載の組成物、
3.皮膚老化防止用である前記1または2に記載の組成物、
4.皮膚外用である前記1〜3のいずれかに記載の組成物、
5.食品である前記1〜3のいずれかに記載の組成物、
6.シリマリンを有効成分量として0.7%〜2.0%で含有する請求項4に記載の組成物
7.化粧料である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物
に関する。
【図面の簡単な説明】
図1 シリマリンによる皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲンの産生促進作用を示す図
図2 シリマリンによる皮膚線維芽細胞におけるエラスチンの産生促進作用を示す図
図3 シリマリンによるヒト三次元皮膚モデルにおけるI型コラーゲンの産生促進作用を示す図
図4 シリマリンによるヒト三次元皮膚モデルにおけるエラスチンの産生促進作用を示す図
図5 シリマリンのブタ皮膚の真皮への浸透性を示す図。
図6 シワの深さの計測結果を示す図
図7 シワの大きさの計測結果を示す図
図8 皮膚弾力性試験の測定結果を示す図
図9 官能評価の結果を示す図
表1 I型コラーゲン産生促進作用の測定結果を画像解析により数値化した表を示す。
表2 エラスチン産生促進作用の測定結果を画像解析により数値化した表を示す。
表3 各被験物質のI型コラーゲン産生促進作用の測定結果を完全長のI型コラーゲンを数値化した表を示す。
表4 各化合物のエラスチン産生促進作用の測定結果を完全長のエラスチンを数値化した表を示す。
表5 処方例Aと比較例Bを示す表
【発明を実施するための最良の形態】
シリマリン(Silymarin;CAS No.65666−07−1)は、キク科マリアアザミ(学名シリバム・マリアナムSilibum marianum Gaertn、別名オオアザミ、オオヒレアザミ、ミルクアザミ;CAS No.84604−20−6)から抽出されるフラボノリグナンの総称であり、分子式C252210で表される、シリビン(Silybin;CAS No.22888−70−6)、シリジアニン(Silydianin;CAS No.29782−68−1)、シリクリスチン(Silychristin;CAS No.33889−69−9)、イソシリビン(Isosilybin;CAS No.72581−71−6)などを含有している組成物である(非特許文献5)。本発明においては、マリアアザミ抽出物に含有されるこれらのフラボノリグナンを含有している組成物を従来技術と同様、シリマリンと呼ぶ。またシリマリンは前記の通りフラボノリグナンの混合物であり、シリマリンとしての植物抽出物や植物中の含有量は、分光光度計による測定に基づいた方法(非特許文献6)、薄層クロマトグラフィーによる方法(非特許文献7)、高速液体クロマトグラフィーによる方法(非特許文献8〜10)により測定可能である。これらの測定法の中でも、分光光度計による測定に基づいた方法の一つである2,4−ジニトロヒドラジン分析は、ドイツ薬局方(Silybum marianumの果実に関するモノグラフ)に報告されており、広く用いられている。本発明においても、上記成分の混合組成物の定量にあたっては2,4−ジニトロヒドラジン分析法を用いてシリマリンに換算した質量%で表記する。
シリマリンは古くからヨーロッパで肝臓疾患の予防及び治療を目的として使用されている。また、酸化防止剤として広く知られている。皮膚に対して有用な組成物として、乾癬及びアトピー性皮膚炎治療製剤(特許文献12)、フラボノリグナンとリン脂質との錯体を活性成分として含み、紅斑、火傷、皮膚または粘膜のジストロフィー状態、皮膚炎等の治療、皮膚の老化防止及び放射線、風、太陽などの外部環境からの刺激保護に有用な組成物(特許文献13)、表皮透過バリア強化剤(特許文献14)、皮脂分泌抑制剤(特許文献15)、表皮の偏平化を予防、防止、改善する皮膚老化防止用組成物(特許文献16)、抗酸化能に起因する皮膚老化防止用の化粧料(特許文献17)などが知られている。しかし、ヒト皮膚線維芽細胞に対する効果は知られていなかった。また、本発明において、三次元皮膚モデルにおけるI型コラーゲン産生促進作用およびエラスチン産生促進作用を十分得るためのシリマリンの有効量およびブタ皮膚の真皮への浸透性を十分得るためのシリマリン有効量を調べた結果、0.7%以上のシリマリンで顕著に効果が見られることが明らかになった。よって、本発明はシリマリンを皮膚外用として用いる場合の有効成分量は0.7%以上であることを特徴とする。
シリマリンをマリアアザミの果実から高純度で単離する方法として、70〜80%の純度で単離する方法や90〜96%の純度で単離する方法(特許文献18)が既に報告されている。シリマリンは通常マリアアザミの種実からエタノール、酢酸エチル、アセトンなどにより抽出し、スプレードライにより乾燥粉末として得られる抽出物原料として市販されている。本発明に使用するシリマリンはこのようにして調製されて、市販されているシリマリンをそのまま用いることができる。また、マリアアザミからシリビン、シリジアニン、シリクリスチン、イソシリビンなどのシリマリンの構成成分を濃縮した抽出物及びそれらを単離、精製して化合物として用いることができる。
本発明におけるシリマリンを含む植物体は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部、根、塊茎などの地下部、種子、樹脂などのすべての部位が使用可能である。
本発明におけるシリマリン及びそれを含む植物体は、それら自体を乾燥させた乾燥物及びそれらを各種溶媒を用いて溶解した溶解物として使用できる。例えば、水またはエタノール、メタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて溶解した溶解物として使用できる。
本発明におけるシリマリンを含む植物体は、天然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥させたり、醗酵させたりしたものをそのまま使用することができる。また植物抽出物を調製する場合は常法に従って、抽出、濃縮、粉末化などの処理を行って得られたものを使用することができる。
シリマリンを含有する本発明組成物は、真皮の細胞外マトリックスを構成する主要タンパク質であるI型コラーゲン及び/又はエラスチンの産生を促進し、皮膚のはりや弾力性を向上させ、加齢や紫外線照射などにより引き起こされるしわやたるみの形成を予防、防止、改善し、皮膚を若々しく保つことができる。
本発明におけるシリマリン、シリマリンを含む植物体または植物抽出物を含む組成物は、化粧料などの皮膚外用剤、経口用の食品として製造することができる。
化粧料としては、シリマリン、シリマリンを含む植物体または植物抽出物を直接または小麦胚芽油あるいはオリーブ油などに添加して、化粧料成分として使用し、化粧料を製造することができる。
食品としては、シリマリン、またはシリマリンを含む植物体または抽出物を直接、または種々の栄養成分を添加して食品として使用できるし、所望の食品に配合しても良い。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して健康補助食品、保健機能食品などとすることができる。また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加してもよく、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
シリマリン、シリマリンを含む植物体または植物抽出物の組成物への有効配合量は、シリマリン、シリマリンを含む植物または植物抽出物の調製法、製剤の形態などにより、適宜選択、決定され、特に限定されないが、シリマリンに換算して皮膚外用剤として用いる場合は0.7〜2.0重量%を含有させることが好ましい。錠剤やドリンクなどとして食品として用いる場合は、0.001〜20重量%を含有させることが好ましい。通常は、植物体又は植物抽出物を、その乾燥重量としてそれぞれ0.01〜60重量%配合することが好ましい。
本発明におけるシリマリン、またはシリマリンを含む植物体または抽出物を含む組成物の有効適用量は、適用経路、適用スケジュール、製剤形態などにより、適宜決定することができる。例えば、シリマリンを1日当り0.01g〜10gの範囲で適宜調節して、1回または数回に分けて適用できる。また、シリマリンを含む植物体または植物抽出物を含む組成物の場合、乾燥重量として1日当り0.1g〜25gの範囲で適宜調節して、1回または数回に分けて適用できる。
本発明の皮膚外用組成物には、適用形態に応じて、適宜、植物油のような油脂類、ワックス等の炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。また、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
油脂類としては、例えばツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
シリコーンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
両性界面活性剤として、例えば、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
金属イオン封鎖剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
高分子として、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、等を挙げることができる。
増粘剤として、例えば、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト等を挙げることができる。
粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料を挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
紫外線遮断剤として、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
保湿剤として、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
薬効成分としては、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB類、ピリドキシン塩酸塩等のB類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ブナノキエキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ブナノキエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
本発明の皮膚外用組成物は、例えば水溶液、油剤、乳液、懸濁液等の液剤、ゲル、クリーム等の半固形剤、粉末、顆粒、カプセル、マイクロカプセル、固形等の固形剤の形態で適用可能である。従来から公知の方法でこれらの形態に調製し、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾール剤、坐剤、注射剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、シロップ剤、トローチ剤等の種々の剤型とすることができる。これらを身体に塗布、貼付、噴霧、飲用等により適用することができる。特にこれら剤型の中で、ローション剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾール剤等の剤型に適している。
化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、乳液状又はクリーム状あるいは軟膏型のファンデーションといったメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の身体用化粧料、入浴剤等とすることができる。
次に、試験例、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明の効果はこれら試験例、実施例に限定されるものではない。
試験例
[評価試験用化合物溶液の調製]
生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(DMSO;和光純薬)、I型コラーゲン産生促進効果が確認されている陽性対照としてレチノイン酸(all−trans−レチノイン酸;和光純薬)、及び陰性対照として大豆レシチン(和光純薬)を使用した。各化合物をDMSOにより溶解した溶液をストック溶液とし、培養液に適当量添加し、細胞に処理した。また同様にして、シリマリン(Silymarin group;シグマ−アルドリッチ)を上記DMSOにより溶解した溶液をストック溶液とし、培養液に適当量添加し、添加効果を確認した。
[正常ヒト皮膚線維芽細胞の培養]
正常ヒト皮膚線維芽細胞(以下NFB);CCD1059(大日本製薬より購入)を皮膚線維芽細胞用培地;FGM(三光純薬)で37℃−5%COインキュベーターにて培養した。FGMは、線維芽細胞基礎培地にヒト線維芽細胞増殖因子(1μg/ml)、インシュリン(5mg/ml)、ゲンタマイシン(50μg/ml)、アンフォテリシンB(50μg/ml)を添加したものである。本試験には継代数が3〜7代の細胞を使用した。
[シリマリンによるI型コラーゲン産生促進作用の評価]
NFBをFGMで5×10/mlとなるように懸濁調整し、Φ90mm培養ディッシュに10mlずつ播種し、70%コンフルエント状態になるまで培養した。各化合物を各濃度で添加したFGMを10ml/ディッシュで処理し、24時間培養した。培養上清液を回収し、150G、5分間遠心して浮遊細胞を除去した後、12,000G、30分間遠心して細胞片を除去した。80%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加して4℃で一晩攪拌した。15,000G、30分間遠心してタンパク質を沈降させ、上清を除去後、20mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解した。20mM Tris−HCl(pH7.5)中で、4℃で一晩透析後、20倍濃縮になるように20mM Tris−HCl(pH7.5)を加え、ウエスタンブロッティング用サンプルとして用いた。
サンプル中のタンパク質をSDS−PAGEで分離後、ニトロセルロース膜に転写した。転写後のニトロセルロース膜をブロッキング溶液(スキムミルクを5%の濃度になるように0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBSで溶解した溶液)に浸し、4℃で一昼夜ブロッキングした。洗浄液{0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS}で洗浄後、一次抗体{洗浄液で500ng/mlに調製したI型コラーゲンに対するポリクローナル抗体(ロックランド)}に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、二次抗体(洗浄液で250ng/mlに調製したホースラディッシュパーオキシダーゼ標識化抗ウサギイムノグロブリンG)に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、ECLプラスウエスタンプロッティング検出試薬(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて検出した。また、検出されたバンドをイメージスキャナー(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて取り込み後、イメージマスターソフトウエアにより解析し、数値化した。
ウエスタンブロッティングによる各化合物のI型コラーゲン産生促進作用の測定結果を図1に示す。また、完全長のI型コラーゲン(図1中で、I型コラーゲンと表記したバンド)に関して画像解析により数値化した結果を表1に示す。

シリマリンを5及び10μg/mlで処理した時には、無処理対照に比べてI型コラーゲン産生がそれぞれ1.8倍及び3.4倍に促進された。陽性対照として、レチノイン酸を250nM及び500nMで処理した時には、無処理対照に比べてI型コラーゲン産生がそれぞれ2.0倍及び1.4倍に促進された。一方、陰性対照として、大豆レシチンを10μg/mlで処理した時には、無処理対照と同程度であった。このことから、シリマリンはヒト皮膚線維芽細胞のI型コラーゲン産生を顕著に促進することが明らかになった。
[シリマリンによるエラスチン産生促進作用の評価]
NFBをFGMで5×10/mlとなるように懸濁調整し、Φ90mm培養ディッシュに10mlずつ播種し、70%コンフルエント状態になるまで培養した。各化合物を各濃度で添加したFGMを10ml/ディッシュで処理し、24時間培養した。培養上清液を回収し、150G、5分間遠心して浮遊細胞を除去した後、12,000G、30分間遠心して細胞片を除去した。80%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加して4℃で一晩攪拌した。15,000G、30分間遠心してタンパク質を沈降させ、上清を除去後、20mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解した。20mM Tris−HCl(pH7.5)中で、4℃で一晩透析後、20倍濃縮になるように20mM Tris−HCl(pH7.5)を加え、ウエスタンブロッティング用サンプルとして用いた。
サンプル中のタンパク質をSDS−PAGEで分離後、ニトロセルロース膜に転写した。転写後のニトロセルロース膜をブロッキング溶液(スキムミルクを5%の濃度になるように0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBSで溶解した溶液)に浸し、4℃で一昼夜ブロッキングした。洗浄液{0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS}で洗浄後、一次抗体{洗浄液で500ng/mlに調製したエラスチンに対するモノクローナル抗体(ケミコン社)}に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、二次抗体(洗浄液で250ng/mlに調製したホースラディッシュパーオキシダーゼ標識化抗マウスイムノグロブリンG)に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、ECLプラスウエスタンプロッティング検出試薬(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて検出した。また、検出されたバンドをイメージスキャナー(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて取り込み後、イメージマスターソフトウエアにより解析し、数値化した。
ウエスタンブロッティングによる各化合物のエラスチン産生促進作用の測定結果を図2に示す。また、完全長のエラスチン(図2中で、エラスチンと標記したバンド)に関して、画像解析により数値化した結果を表2に示す。

シリマリン10μg/mlの濃度で細胞を処理した時には、無処理対照に比べてエラスチン産生が4.7倍に促進された。陽性対照として、レチノイン酸を250nM及び500nMの濃度で細胞を処理した時には、無処理対照に比べてエラスチン産生がそれぞれ2.8倍及び1.4倍に促進された。一方、陰性対照として大豆レシチンを10μg/ml濃度で細胞を処理した時には、無処理対照と同程度であった。このことから、シリマリンがヒト皮膚線維芽細胞のエラスチン産生を顕著に促進することが明らかになった。
[ヒト皮膚三次元モデルにおけるI型コラーゲン産生促進作用の評価]
ヒト皮膚三次元モデルはヒトの皮膚の疑似モデルとして、安全性評価や有効性評価に広く用いられている。ヒト皮膚三次元モデルは、TESTSKIN(LSE−high)(東洋紡績)を用い、添付のプロトコールにしたがって培養した。ジプロピレングリコール(和光純薬)に70%シリマリン含有マリアアザミエキス(インディナ社)、大豆レシチン(和光純薬)、レチノイン酸(all−trans−レチノイン酸;和光純薬)を各濃度で溶解した。70%シリマリン含有マリアアザミエキスは、有効成分であるシリマリン濃度で換算してジプロピレングリコールに溶解した。70%シリマリン含有マリアアザミエキスおよび大豆レシチンは、加熱処理してジプロピレングリコールに溶解し、レチノイン酸は室温で攪拌により溶解した。無処理対照としてはジプロピレングリコールを用いた。
各被験物質をアッセイリング内の組織上に60μl添加し、24時間培養した。その後、培養液を交換するとともに、アッセイリングを培地で洗浄後、新たにサンプル添加し、さらに24時間培養した。組織を回収し、組織抽出用溶液{50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.5%(Octylphenoxy)polyethoxyethanol(Sigma−Aldrich)}を加え、テフロンホモジナイザーでホモジナイズした。10,000×G、30分間遠心して組織片を除去した後、蒸留水中で、4℃で一晩透析後、凍結乾燥により水分を除いた。20倍濃縮になるように20mM Tris−HCl(pH7.5)を加え、ウェスタンブロッティング用サンプルとして用いた。サンプル中のタンパク質量をDCプロテインアッセイ・キット(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ)を用いて、Lowry法(非特許文献11)によりタンパク定量し、2μg/μlになるように20mM Tris−HCl(pH7.5)を加えて調整した。サンプルに5%2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ)含有の2倍濃縮Laemmliサンプルバッツファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ)を等量加え、ヒートブロックにて100℃、5分間処理し、サンプル中のタンパク質を還元した。
このサンプルを用いて、ウェスタンブロッティングによりI型コラーゲン産生促進作用を評価した。1レーン当り10μgのタンパク質をアプライし、SDS−PAGEで分離後、ニトロセルロース膜に転写した。転写後のニトロセルロース膜をブロッキング溶液(スキムミルクを5%の濃度になるように0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBSで溶解した溶液)に浸し、4℃で一昼夜ブロッキングした。洗浄液{0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS}で洗浄後、一次抗体{洗浄液で500ng/mlに調製したI型コラーゲンに対するポリクローナル抗体(ロックランド)}に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、二次抗体(洗浄液で250ng/mlに調製したホースラディッシュパーオキシダーゼ標識化抗ウサギイムノグロブリンG)に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、ECLプラスウエスタンプロッティング検出試薬(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて検出した。また、検出されたバンドをイメージスキャナー(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて取り込み後、イメージマスターソフトウエア(アマシャムバイオサイエンス社)により解析し、数値化した。
ウエスタンブロッティングによる各被験物質のI型コラーゲン産生促進作用の測定結果を図3に示す。また、完全長のI型コラーゲン(図3中で、コラーゲンと標記したバンド)に関して数値化した結果を表3に示す。

シリマリンを0.5%で処理した時には、無処理対照と同等であったが、0.7%では2.7倍、1.0%では3.3倍、1.5%では2.4倍、2.0%では2.2倍に促進された。陽性対照として、レチノイン酸を0.05%で処理した時には、無処理対照に比べて2.0倍に促進された。一方、陰性対照として大豆レシチンを1.0%で処理した時には、無処理対照と同程度であった。このことから、シリマリンを0.7%以上で処理することにより三次元皮膚モデルのI型コラーゲン産生を2.0倍以上に促進することが明らかになった。
[ヒト皮膚三次元モデルにおけるエラスチン産生促進作用の評価]
前述したヒト皮膚三次元モデルにおけるI型コラーゲン産生促進作用の評価と同様にヒト皮膚三次元モデルにおけるエラスチン産生促進作用の評価を行った。
ウエスタンブロッティングによる各化合物のエラスチン産生促進作用の測定結果を図4に示す。また、完全長のエラスチン(図4中で、エラスチンと標記したバンド)に関して数値化した結果を表4に示す。

シリマリンを0.5%で処理した時には、無処理対照と同等であったが、0.7%では2.5倍、1.0%では4.3倍、1.5%では3.3倍、2.0%では2.0倍に促進された。陽性対照として、レチノイン酸を0.05%で処理した時には、無処理対照に比べて3.3倍に促進された。一方、陰性対照として大豆レシチンを1.0%で処理した時には、無処理対照と同程度であった。このことから、シリマリンを0.7%以上で処理することにより三次元皮膚モデルのエラスチン産生を2.0倍以上に促進することが明らかになった。
[ブタ皮膚を用いたシリマリンの経皮吸収性の評価]
ヒトの皮膚の吸収に近いことが報告されているブタ皮膚を用いてシリマリンの経皮吸収性を評価した(非特許文献12)。評価は、Franzの考案した拡散セルを用いる方法により行った(非特許文献13)。採取後−80℃で保存したユカタンミニブタ皮膚(5ヶ月齢のメス;日本チャールズリバー)を室温で20分程度放置し、半解凍の状態にした。手術用の両鈍直ハサミで脂肪を取り除いた。Franzの考案した拡散セルの下層のレセプターセルに0.05%カナマイシン硫酸塩(和光純薬)含有リン酸緩衝生理食塩液(pH7.4)を入れ、ブタ皮膚を装着し、上層のドナーセルをセットした。セルを37℃のインキュベーター内に設置し、スターラーでレセプターセル液を攪拌した。ジプロピレングリコールに70%シリマリン含有マリアアザミエキスを各シリマリン濃度で溶解したサンプルをドナーセル内に100μl添加し、パラフィルムでシールした。各シリマリン濃度につき、2個のブタ皮膚を用いて評価した。24時間後に、ブタ皮膚上に残ったサンプルを除去し、サンプルを適用した部分の皮膚のみをハサミで取り出した。80℃のウォーターバスで温めておいたスパチュラで皮膚を挟み20秒間加熱後、ピンセットを用いて表皮と真皮を剥離した。真皮をハサミで細かく刻んだ後、15mlの遠沈管に入れた。2mlの99.8%メタノール(和光純薬)を添加し、ポリトロンホモジナイザーで破砕した。10,000×G、30分間遠心して組織片を除去した後、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、成分分析用サンプルとした。
ジプロピレングリコールに70%シリマリン含有マリアアザミエキスを各シリマリン濃度で溶解したサンプル中のシリマリンを標準物質として、ブタ皮膚の真皮に浸透したシリマリンを高速液体クロマトグラフィーで測定した。高速液体クロマトグラフィーの条件を下記に示す。下記条件で分析した場合、シリクリスチン、シリジアニン、シリビニンA、シリビニンB、イソシリビンA、イソシリビンBのピークが見られる。
(高速液体クロマトグラフィー条件)
カラム;C18 UG120 4.6mm−250mm(資生堂)
移動相;水:メタノール:酢酸=65:35:5
カラム温度;40℃
測定波長;288nm
流速;1.0ml/min
各成分のピーク面積の合計値をシリマリン濃度として算出し、ジプロピレングリコールに70%シリマリン含有マリアアザミエキスを各シリマリン濃度で溶解したサンプル中のシリマリン量を100%として、ブタ皮膚の真皮に浸透したシリマリン量を%で表した。結果は、2個のブタ皮膚の真皮に浸透したシリマリン濃度の平均値をグラフ化して表した(図5)。シリマリン濃度が0.5%〜0.7%の傾きに対して0.7%〜2.0%の傾きが緩やかであり、0.7%で真皮への浸透性が急激に高まっていることが示された。
三次元皮膚モデルに対するシリマリンのI型コラーゲンおよびエラスチン産生促進作用の評価、ブタ皮膚の真皮へのシリマリンの浸透性評価の結果から、シリマリンがヒトの皮膚でI型コラーゲンおよびエラスチン産生促進作用を現すためには、0.7%以上のシリマリン濃度が必要であると考えられた。よって、次に示すヒト試験ではシリマリンを0.7%で配合した化粧品を用いて評価を行った。
[1%マリアアザミエキス溶液の安全性評価]
マリアアザミは、ヨーロッパにおいては古くから食品や薬用に用いられており、その安全性は熟知されている。今回、このマリアザミエキスの皮膚刺激性について試験を行った。
1%シリマリン含有マリアアザミエキス溶液の皮膚刺激性について、ヒトパッチテスト法を用いて評価した。被験者の上腕内側部に1%シリマリン溶液を適用したパッチ絆を24時間閉塞貼付した。パッチ絆除去3及び24時間後に適用部位を観察し、日本接触皮膚炎学会の本邦基準に従い判定した。被験者20人により評価した結果、全員陰性で、皮膚安全性の高いことが明らかになった。
[ヒト試験]
[ヒト試験1] シワの目視評価
シワを訴える男性1名、女性10人を対象に次の通り試験を行い、評価を行った。実施例の処方例Aの美容液を任意の半顔に12週間1日2回(朝、夜)各回約0.2g塗布した。反対の半顔に比較例Bを同様に塗布した。専門員により目視にてしわ改善効果を判定した。表5に処方例Aと比較例Bを示す。

目視の結果、11人中7人の実施例化粧料塗布半顔にシワ改善効果が認められた。
[ヒト試験2] シワの深さの測定
上記の方法で試験を行い、試験開始前および試験終了後の目尻に対して山田粧業製二剤混合型レプリカ剤スキンキャストを用いてレプリカを採取し、レプリカ画像解析による表面のしわの深さ計測により判定した。レプリカ剤の画像解析は、レプリカを非接触式光学3D測定装置(PRIMOS GFM)にて画像として取り込み、レプリカ表面のシワの深さを計測した。
画像解析では、実施例の処方例Aの化粧料使用側の半顔において、使用前に比べて使用後では有意にシワが浅くなった。(有意水準5%未満)。図6にシワの深さの計測結果、図7にシワの大きさの計測結果を示す。
[ヒト試験3] 皮膚弾力性試験
目尻の吸引弾力性は、Cutemeter(C+K electronic社製)を用いて測定した。皮膚弾力性試験の測定結果を図8に示す。
吸引弾力性は、肌の弾力性の指標となる測定方法であり、加齢に伴って弾力性が低くなることが知られている。両顔の吸引弾力性は増加しており、特に実施例の処方例Aの化粧料使用側の半顔の吸引弾力性が増加した傾向が見られた。
[ヒト試験4] コラーゲン量の測定
コラーゲン量の測定は、SKINSKAN(光ファイバー蛍光分光測定装置)(Jobin Yvon spec.社製)を用いて測定した。指標として、ペプシン分解コラーゲンとコラゲナーゼ分解コラーゲンのピーク面積を用いた。
その結果、ペプシン分解コラーゲンとコラゲナーゼ分解コラーゲンはそれぞれ、自然老化、光老化により増加することが知られているが、これらを抑制する結果が得られた。
[ヒト試験5] 官能評価
被験者に12週間塗布後の肌状態について、肌のはり、弾力性の改善度を自己評価による官能評価で行った。官能評価の結果を図9に示す。
その結果、実施例化粧料塗布側の改善を認めた被験者が11人中5人であった。
以上の評価により、シリマリンを配合した化粧料は、レプリカによるシワの改善、肌の弾力性の回復、ペプシン及びコラーゲン分解コラゲナーゼ抑制効果、自己評価による肌状態の改善に有効であることが分かった。
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]クリーム
下記の処方(単位は重量%)により、クリームを製造した。
(1)ステアリルアルコール 6.0
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水添ラノリン 4.0
(4)スクワラン 9.0
(5)オクチルドデカノール 10.0
(6)POE(25)セチルアルコールエーテル 3.0
(7)モノステアリン酸グリセリン 2.0
(8)シリマリン 0.1
(9)防腐剤 適量
(10)香料 適量
(11)1、3ブチレングリコール 6.0
(12)PEG1500 4.0
(13)精製水 残余
〔製法〕上記成分(1)〜(10)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(11)〜(13)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却してクリームを得た。
[実施例2]錠剤
下記の処方(単位は重量%)により、錠剤を製造した。
(1)シリマリン 20.0
(2)乳糖 65.0
(3)コーンスターチ 14.0
(4)グアーガム 1.0
[実施例3]乳液
下記の処方(単位は重量%)により、乳液を製造した。
(1)ジプロピレングリコール 9.000
(2)70%シリマリン含有マリアアザミエキス 1.000
(3)(ヒドロキシエチルアクリル酸/アクリルジメチルタウリンNa)
コポリマー 0.188
(4)スクワラン 0.127
(5)ポリソルベート60 0.028
(6)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)1.000
(7)グリセリン 5.000
(8)ジメチコン 3.000
(9)精製水 74.742
(10)カルボマー 0.200
(11)ベタイン 2.000
(12)エタノール 3.000
(13)水酸化カリウム 0.065
(14)精製水 0.650
〔製法〕上記成分(1)に(2)を加え80℃に加熱溶解する。成分(3)〜(8)を加え、80℃に加熱溶解し油相とする。成分(9)〜(11)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら30℃まで冷却する。成分(12)および(13)を(14)に攪拌溶解したものを加え、攪拌冷却して乳液を得た。
【産業上の利用可能性】
シリマリン、シリマリンを含む植物または植物抽出物を含む本発明の組成物は、ヒト真皮のI型コラーゲン及びエラスチンの産生を促進する。その結果、皮膚のはりや弾力性を向上させ、しわ、たるみのない若々しい肌の状態を維持することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリマリンを含有するI型コラーゲン産生促進及び/又はエラスチン産生促進作用を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
シリマリンが、シリマリン含有植物抽出物及び/又は植物由来である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
皮膚老化防止用である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
皮膚外用である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
食品である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
シリマリンを有効成分量として0.7%〜2.0%で含有する請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
化粧料である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。

【国際公開番号】WO2004/085429
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504067(P2005−504067)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003978
【国際出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】