説明

LEDパッケージ及びLEDパッケージの製造方法

【課題】
レンズと封止樹脂との間に光学的界面が存在しないようにして光取り出し効率を最大限に向上させるとともに、製造上無理がなく、しかもLED素子1と確実に光軸を合わせることができるLEDパッケージ100の製造方法等を提供する。
【解決手段】
LED素子1を透明なシリコーン樹脂で封止して封止層3を形成し、前記封止層3の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分Qを形成し、該変質部分Qを取り除くことによって環状の有底溝5を形成し、前記封止層3の表面における前記有底溝5の内周縁5aで囲まれた領域に、前記シリコーン樹脂とは同種又は別種の透明な第2樹脂を液体状態で供給し、前記内周縁5aを境界とする表面張力によって当該第2樹脂の盛り上がり部を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズ付きのLEDパッケージ及び該LEDパッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ付きLEDパッケージは、例えば特許文献1、2に示すように、LED素子が実装されたカップ内に封止樹脂を充填し、その硬化後、封止樹脂上にレンズを接着してある。
【0003】
この種のLEDパッケージの問題点は、レンズと封止樹脂との間に空気が入り込むことによる隙間が生じることにある。このことによって空気層の影響で光の取出効率が低くなるが、製造工程で、カップ内の体積分ちょうどとなるよう封止材を注入し、レンズ板を重ねたときに空気層を無くすことは非常に難しい。
【0004】
そこで、特許文献2に示すように、LED素子が搭載される基板に、LEDを取り囲むように環状の凹溝を設け、その凹溝で囲まれた領域にシリコーン樹脂を滴下することによって、凹溝の内周縁で生じる表面張力を利用して半球状にシリコーン樹脂を形成するようにしたものがある。この半球状シリコーン樹脂は、レンズ効果を奏し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−320656号公報
【特許文献2】特開2008−071859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記環状凹溝は、最近のLED素子の小型化を鑑みると、非常に小さな径で形成しなければならず、極めて製作が難しい。
【0007】
また、LED素子の発光面と半球状シリコーン樹脂表面との距離調整が難しく、例えば、シリコーン樹脂表面からLED素子を離して集光位置を変更するといった要求にほとんど応えることができない。
【0008】
さらに、溝を切った後にLED素子を搭載する必要があるが、このときLED素子の位置ずれがあると、配光特性に大きな悪影響がでてしまい、これを修正するような後工程での調整はほとんど不可能である。
【0009】
こういった問題に鑑み、本発明は、シリコーン樹脂に対してフェムト秒レーザーのような短パルスレーザを照射すると、照射部分が変形固化し、かさぶたが剥がれるように取れるという現象を発明者が鋭意検討の末に見出して初めてなされたものであって、その主たる所期課題は、レンズ付きのLEDパッケージにおいて、レンズと封止樹脂との間に光学的界面が存在しないようにして光取り出し効率を最大限に向上させるとともに、製造上無理がなく、しかもLED素子と確実に光軸を合わせることができるLEDパッケージの製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係るLEDパッケージの製造方法は、LED素子を透明なシリコーン樹脂で封止して封止層を形成する封止層形成工程と、前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって環状の有底溝を形成する有底溝形成工程と、前記封止層の表面における前記有底溝の内周縁で囲まれた領域に、前記シリコーン樹脂とは同種又は別種の透明な第2樹脂を液体状態で供給し、前記内周縁を境界とする表面張力によって当該第2樹脂の盛り上がり部を形成する盛り上がり部形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0011】
このようなものであれば、封止層の表面に、液状の第2樹脂が注入されてレンズ効果を奏し得る盛り上がり部が形成されるので、間に空気層の入る余地がなく、光の取り出し効率を高めることができる。特に、第2樹脂を封止層と同一のシリコーン樹脂とすれば、光学的界面が存在しなくなり、光の取り出し効率を最大限に高めることができる。
【0012】
また、前記有底溝を弾性のあるシリコーン樹脂表面に形成することは、従来であれば、機械加工にせよ、連続レーザ照射等の熱加工にせよ、極めて困難であるが、本願発明によれば、短パルスレーザを照射するだけで、極めて簡単に実現することができる。これは、上述したように、本願発明者が鋭意検討の末見出したものであり、従来では考えられなかったことである。
【0013】
さらに、LED素子の搭載後に有底溝を設けて盛り上がり部を形成するので、LED素子が基板の規定位置からずれて搭載されたとしても、そのずれに合わせてレーザ照射位置を調整するだけで、例えばLEDの光軸に合致する光軸を有した盛り上がり部を形成できる。
加えて、封止層の厚みさえコントロールすれば、LED素子の発光面から盛り上がり部までの距離を調整できるため、集光位置も容易に調整できる。
【0014】
短パルスレーザの仕様としては、パルス幅が3000fs以下が好ましく、その下限値は略100fsが好ましい。平均出力は、10mW〜1000mWの範囲にあることが好ましい。
波長は300nm〜1500nmが好適である。また、パルス幅が150fs〜1000fsであれば、より望ましい。
【0015】
種々の光学的特性を付加するには、前記盛り上がり部の表面を透光性を有した1又は複数の被覆層で覆う被覆工程をさらに設けることが好ましい。
【0016】
被覆層の拡がりを好適に抑制するには、前記シリコーン樹脂層の表面における有底溝の外側に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって環状の第2有底溝を形成する第2有底溝形成工程をさらに有し、前記被覆工程において、前記被覆層を形成する被覆用樹脂を液体状態で供給し、前記第2有底溝の内周縁を境界とする表面張力で前記被覆用樹脂の拡がりを抑制するようにしておけばよい。
【0017】
蛍光体を含有させることも、本発明によれば容易に可能となる。その一例としては、前記第2樹脂又は前記被覆層を形成する被覆用樹脂に、前記LED素子の光によって所定波長の蛍光を発する蛍光体を含有させる態様を挙げることができる。
蛍光体を含む被覆層を保護するには、前記被覆層を2層とし、内側の被覆層を形成する被覆用樹脂に前記蛍光体を含有させることが好ましい。
【0018】
前記封止層の表面における前記有底溝の内周縁で囲まれた領域に、短パルスレーザを部分的に照射して変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって凹部を形成する凹部形成工程をさらに有し、前記盛り上がり部形成工程において、前記第2樹脂を前記凹部に充填しつつ盛り上がり部を形成するようにすれば、封止層の凹部に第2樹脂が入り込んで係止機能を発揮するので、より確実に盛り上がり部を封止層に添着させることが可能になり、盛り上がり部の不測の剥がれや脱落を好適に防止することができる。
【0019】
本発明によれば、用途に応じて種々のレンズ形状も簡単に製作できる。例えば、LED素子が1点に配置されており、通常の円形レンズ効果が欲しい場合は、前記有底溝の内周縁形状を円形状にしておけばよいし、平面視、縦方向と横方向とで異なる集光効果を得たい場合は、有底溝の内周縁形状を、例えば楕円形状にすることが考えられる。また、LED素子をライン状に配置した場合などで、ライン状に集光したい場合は、有底溝の内周縁形状を長円や矩形状にすることで、盛り上がり部がシリンドリカルレンズのような形状になるので、その目的を達成することができる。
【0020】
さらに、LED素子と盛り上がり部の位置合わせを確実に行うには、前記LED素子の位置を検出する位置検出工程をさらに具備し、前記有底溝形成工程において、前記位置検出工程で検出されたLED素子の位置に基づいて有底溝の形成位置を設定することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、LED素子と、前記LED素子を封止する透明なシリコーン樹脂からなる封止層と、前記封止層の表面におけるLED素子上に設けられた盛り上がり部とを具備し、前記盛り上がり部の周縁に有底溝が形成されていることを特徴とするLEDパッケージでも構わない。
【0022】
さらに、LED素子と、前記LED素子を封止する透明なシリコーン樹脂からなる封止層と、前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって形成された環状の有底溝と、前記封止層の表面における前記有底溝の内周縁で囲まれた領域に、前記シリコーン樹脂とは同種又は別種の透明な第2樹脂を液体状態で供給し、前記内周縁を境界とする表面張力によって当該第2樹脂を盛り上がらせた盛り上がり部とを具備することを特徴とするLEDパッケージでもよい。
【0023】
盛り上がり部を形成しなくともレンズ作用を営ませることは可能である。そのためには、LED素子を透明なシリコーン樹脂で封止して封止層を形成する封止層形成工程と、前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって、LED素子から出た光を所定の方向に屈折させる窪み部を形成する窪み部形成工程とを有するLEDパッケージの製造方法、あるいは、LED素子と、前記LED素子を封止する透明なシリコーン樹脂からなる封止層と、前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって形成された窪み部とを具備し、前記窪み部による屈折・散乱によってLED素子から出た光を所定の方向に屈折させることを特徴とするLEDパッケージであればよい。
【発明の効果】
【0024】
このように構成した本発明によれば、封止層の表面に液状の第2樹脂が注入されてレンズ効果を奏し得る盛り上がり部が形成されるので、間に空気層の入る余地が全くなく、光の取り出し効率を高めることができる。
また、弾性のあるシリコーン樹脂表面に有底溝を簡単に形成できるという極めて顕著な効果が得られる。
さらに、LED素子の搭載後に有底溝を設けて盛り上がり部を形成するので、LED素子が仮位置ずれしていたとしても、それに合わせて有底溝を形成することで、例えばLEDの光軸に合致する光軸を有した盛り上がり部を形成できる。
加えて、封止層の厚みさえコントロールすれば、LED素子の発光面から盛り上がり部までの距離を調整できるため、配光特性も容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態におけるLEDパッケージの平面図及び横断面図。
【図2】同実施形態におけるLEDパッケージの製造方法を示す製造工程図。
【図3】シリコーン樹脂にフェムト秒レーザを照射したときに変質部分ができる過程を示した説明図。
【図4】本発明の第2実施形態におけるLEDパッケージの平面図及び横断面図。
【図5】同実施形態におけるLEDパッケージの製造方法を示す製造工程図。
【図6】本発明の第3実施形態におけるLEDパッケージの製造方法を示す製造工程図。
【図7】本発明の他の実施形態におけるLEDパッケージの平面図、縦断面図及び横断面図。
【図8】有底溝の隆起及びガラス質層を示す拡大断面図。
【図9】本発明のさらに他の実施形態におけるLEDパッケージの平面図及び横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0027】
本実施形態に係るLEDパッケージ100は、例えば表面実装型のものであり、図1に示すように、LED素子1と、該LED素子1が搭載される本体基板2と、該LED素子1を封止する封止層3と、この封止層3の表面に設けられた盛り上がり部であるレンズ部4とを具備したものである。
LED素子1は、P層とN層を接合した既知のものである。
【0028】
本体基板2は、例えば平面視円形状の有底凹部21を中央に設けたブロック状(厚肉平板状)をなすものであり、前記有底凹部21の底面中央に前記LED素子1がハンダ付け等によって接合してある。なお、このLED素子1には、本体基板2のプリント配線からワイヤなどによって電力が供給されるが、ここではそれら電気配線関連部材の図示は省略している。
【0029】
前記封止層3は、例えば透明シリコーン樹脂を前記有底凹部21に充填することによって形成してある。
【0030】
前記レンズ部4は、封止層3と同じ透明シリコーン樹脂で形成されたものであり、平面視、その中心を前記LED素子1の中心と合致させた円形状のものである。
【0031】
しかして、このLEDパッケージ100は、図2に示すような工程で製作される。
まず、本体基板2の凹部底面にLED素子1を実装(例えばハンダ付け)した後、本体基板2の凹部21に液状の透明シリコーン樹脂を注入し、露出部分がないようにLED素子1を封止する封止層3を形成する。なお、ここでは、ある程度粘性をもった状態でも流動性がある限りは液状と定義する。
【0032】
次に、CCDカメラ等の図示しない位置検出センサを用いて平面から視たときのLED素子1の位置を検出しておいて、この透明シリコーン樹脂が略完全に硬化する前の所定の硬さまで硬化した後、又は完全に硬化後、図2(a)に示すように、そのLED素子1の中心位置を中心とする所定半径の円形軌道に沿って、短パルスレーザであるフェムト秒レーザをレンズで絞って封止層3の表面に照射する。このフェムト秒レーザRのパルス幅は150fs、平均出力は50mW、波長は800nmである。また、レーザRのスキャン速度、すなわちレーザRの移動速度は200μm/secである。なお、フェムト秒レーザRを固定し、本体基板2を移動(回転)させても構わない。また、位置検出の基準を、パッケージの特定点(例えば隅の位置)にしても構わない。
【0033】
フェムト秒レーザRが照射された封止層3には、一定幅で一定厚みの変質部分Qが形成される。この変質部分Qは、周囲のシリコーン樹脂と比べて物性や形状が変化しており、固化して剥離可能な状態となっている。より具体的には、図3に示すように、フェムト秒レーザRの照射によってボイドが形成されるとともに、その周囲に熱と圧力波が伝播し、照射領域周辺の物性及び形状が変化すると本発明者は推定している。
【0034】
このようにしてフェムト秒レーザRを照射して平面視円環状の変質部分Qを生成した後、図2(b)に示すように、この変質部分Qを、例えば上下逆さまにしたり、振動を与えたり、治具で引っ張ったりして除去し、有底溝5を形成する。このとき、図8に示すように、有底溝5の表面には変質した薄いガラス質層51が形成される。また有底溝5の周囲はわずかに隆起する場合もある。
【0035】
次に、この有底溝5の内周縁5aで囲まれた封止層3の表面領域に、該封止層3と同じ液状のシリコーン樹脂(請求項で言う第2樹脂)を一定量滴下し、図2(c)に示すように、前記内周縁5aで作用する表面張力でそれ以上の拡がりを防止して、概略部分球状の前記レンズ部4を形成する。シリコーン樹脂の滴下量は、前記表面張力を破らない範囲、すなわち、シリコーン樹脂が有底溝5の内周縁5aから溢れ出て当該有底溝5に入らない範囲であって、当該有底溝5で囲まれた領域の大きさや、レンズ部4の盛り上がり高さに応じて定められる。
【0036】
その後、図2(d)に示すように、滴下したシリコーン樹脂を硬化させて、製造が完了する。
【0037】
しかして、このようなものであれば、封止層3の表面に液状のシリコーン樹脂が滴下されてレンズ部4が形成されるので、間に空気層の入る余地がなく、また、レンズ部4と封止層3とが同一のシリコーン樹脂で形成される、光学的界面が全く存在しなくなり、光の取り出し効率を最大限に高めることができる。
【0038】
また、前記有底溝5を弾性のあるシリコーン樹脂表面に形成することは、従来であれば、機械加工にせよ、連続レーザ照射等の熱加工にせよ、極めて困難であるが、本願発明によれば、フェムト秒レーザRを照射するだけで、極めて簡単に実現することができる。これは、本願発明者が鋭意検討の末見出したものであり、従来では考えられなかったことである。
【0039】
さらに、LED素子1の搭載後に有底溝5を設けてレンズ部4を形成するので、LED素子1が本体基板2の規定位置からずれて搭載されたとしても、そのLED素子1の位置に合わせてレーザ照射位置を調整してレンズ部4を形成することができる。したがって光軸ずれがほとんど生じず、歩留まりを大きく向上させることが可能になる。
加えて、封止層3の厚みさえコントロールすれば、LED素子1の発光面からレンズ部4の表面までの距離を調整できるため、集光位置等も容易に調整できる。
また、この実施形態では、有底溝2の周縁部が若干隆起し、しかもそのエッジ部分は図8に示すようにガラス質層51になっているので、レンズ部4を形成するシリコーン樹脂を多く滴下しても溢れない。したがって、レンズ部4の盛り上がりを大きくして曲率を高くするなど、レンズ部4の形状自由度を大きくできるという利点もある。
【0040】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ここでは、本体基板2やLED素子1、封止層3に関しては前記第1実施形態と同様であるので、説明を省略することとし、封止層3まで形成した後の製造方法について主に説明する。また、対応する部材には共通の符号を付することとする。
【0041】
この第2実施形態では、図5(a)、(b)に示すように、封止層3の表面における前記有底溝5の外方に、さらに第2有底溝61、62を2重に形成する。
次に、図5(c)に示すように、第1実施形態同様、有底溝5で囲まれた領域にシリコーン樹脂を滴下してレンズ部4を形成する。
【0042】
その後、このレンズ部4がある程度まで硬化するのを待って、図5(d)に示すように、蛍光体を含んだ液状の被覆用樹脂(例えば、封止層3やレンズ部4と同じシリコーン樹脂の他、熱硬化性樹脂であるフッ素系樹脂やエポキシ樹脂等でもよい。)をレンズ部4上に滴下する。その滴下量は、内側の第2有底溝61の内周縁61aで作用する表面張力によって、この被覆用樹脂がそれ以上拡がらない範囲、すなわち内側の第2有底溝61に被覆用樹脂が入らない範囲である。
このようにして蛍光体を含有した第1被覆層(以下、蛍光層とも言う)71を形成する。
【0043】
次に、図5(e)に示すように、この第1被覆層71がある程度まで硬化するのを待って、ここでは、前記封止層3及びレンズ部4を形成しているのと同じシリコーン樹脂を該第1被覆層71上に滴下して第2被膜層72を形成する。その滴下量は、外側の第2有底溝62の内周縁62aで作用する表面張力によって、この被覆用シリコーン樹脂がそれ以上拡がらない範囲、すなわち外側の第2有底溝62に被覆用シリコーン樹脂が入らない範囲である。
【0044】
その後、各樹脂を硬化させて、図4に示すようなLEDパッケージ100の製造を完了する。
【0045】
このようなものであれば、蛍光層71を好適に封止できる。また、蛍光層71が平らであると、LED素子1から出た光のうち、光軸から傾いた光ほど、蛍光層71を斜めに横切るため、蛍光層での光路長が長くなって減衰が大きくなるという問題点があるが、本実施形態によれば、蛍光層71が部分球状であるため、LED素子1から放射されるどの光も蛍光層71を通過する長さが略等しくなるという効果を奏する。
【0046】
<第3実施形態>
次に第3実施形態を説明する。第2実施形態同様、本体基板2やLED素子1、封止層3に関しては説明を省略することとし、封止層3まで形成した後の製造方法について主に説明する。また、対応する部材には共通の符号を付することとする。
【0047】
この第3実施形態では、図6に示すように、前記封止層3の表面における前記有底溝5の内周縁5aで囲まれた領域に、短パルスレーザを部分的に照射して変質部分Qを形成し、該変質部分Qを取り除くことによって凹部8を形成するようにしている(凹部形成工程)。なお、ここでの凹部8は環状にしているが、点線状や放射線状にしても構わないし、スポット状に1乃至複数箇所に設けても構わない。
【0048】
次に、前記有底溝5の内周縁5aで囲まれた領域に、前記第2樹脂を、前記凹部8に充填しつつ供給し、レンズ部4を形成する(盛り上がり部形成工程)。
その後、滴下したシリコーン樹脂を硬化させて、製造が完了する。
【0049】
このようなものであれば、封止層3の凹部に第2樹脂が入り込んで係止機能を発揮するので、レンズ部4の剥がれや脱落を好適に防止することができる。特に、封止層3に用いているシリコーン樹脂とは、硬化の時間や硬化時の収縮度等が異なる樹脂をレンズ部に用いる場合には、硬化時に不測の剥がれや歪みによる隙間ができる場合があるので、この実施形態の構成が効果を発揮する。
【0050】
その他、本発明は種々の変形が可能である。例えば、図7に示すように、LED素子1を例えばライン状に配置した上で、そのライン方向に沿って延びる矩形状の有底溝5を設ければ、レンズ部4がシリンドリカルレンズのような形状になるので、ライン光源を容易に製造することが可能になる。
また、蛍光体は、例えばレンズ部に含有させてもよいし、封止層3に含有させても構わない。被覆層も1層でもよいし、3層以上でも製作可能である。
レンズ部、各被覆層に用いる樹脂は、シリコーン樹脂のみならず、他の樹脂でも構わない。
【0051】
図9に示すように、レンズ部、すなわち盛り上がり部を形成しないようにして、平面視、例えば円形状の窪み部5’を封止層3にフェムト秒レーザを照射して形成するだけでもよい。この図では、複数(多数)の微小窪み部5’を全体として円形状になるように形成し、各窪み部5’での凹レンズ効果(光発散効果)によって、このパッケージが面発光源として機能するように構成している。その他に、単一の窪み部を形成して凹レンズとして用いるような態様も考えられるし、窪み部が溝状のものであっても構わない。さらに、多数の微小窪み部を、矩形状や長円、楕円状に形成するなどして、所望の光学特性を営ませてもよい。
【0052】
このようなものであれば、極めて簡単に窪み部を形成できるし、また、レーザの特性を活かして、窪み部のLED素子に対する位置決めも容易にでき、光学的な精度をより向上させることができるようになる。
さらに、前記各実施形態の部分構成を適宜組み合わせてもよいし、その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
100・・・LEDパッケージ
1・・・LED素子1
3・・・封止層
R・・・短パルスレーザ
Q・・・変質部分
5・・・有底溝
5a・・・有底溝の内周縁
4・・・盛り上がり部(レンズ部)
71、72・・・被覆層
61,62・・・第2有底溝
61a,62a・・・第2有底溝の内周縁
8・・・凹部
5’・・・窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を透明なシリコーン樹脂で封止して封止層を形成する封止層形成工程と、
前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって環状の有底溝を形成する有底溝形成工程と、
前記封止層の表面における前記有底溝の内周縁で囲まれた領域に、前記シリコーン樹脂とは同種又は別種の透明な第2樹脂を液体状態で供給し、前記内周縁を境界とする表面張力によって当該第2樹脂の盛り上がり部を形成する盛り上がり部形成工程とを有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記盛り上がり部の表面を透光性を有した1又は複数の被覆層で覆う被覆工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂層の表面における有底溝の外側に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって環状の第2有底溝を形成する第2有底溝形成工程をさらに有し、
前記被覆工程において、前記被覆層を形成する被覆用樹脂を液体状態で供給し、前記第2有底溝の内周縁を境界とする表面張力で前記被覆用樹脂の拡がりを抑制することを特徴とする請求項2記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記第2樹脂又は前記被覆層を形成する被覆用樹脂に、前記LED素子の光によって所定波長の蛍光を発する蛍光体を含有させていることを特徴とする請求項2又は3記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記被覆層が2層であり、内側の被覆層を形成する被覆用樹脂に前記蛍光体を含有させていることを特徴とする請求項4記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記封止層の表面における前記有底溝の内周縁で囲まれた領域に、短パルスレーザを部分的に照射して変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって凹部を形成する凹部形成工程をさらに有し、
前記盛り上がり部形成工程において、前記第2樹脂を前記凹部に充填しつつ盛り上がり部を形成することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記有底溝の内周縁の形状が、円、楕円、長円又は矩形状である請求項1乃至8いずれかに記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項8】
LED素子と、
前記LED素子を封止する透明なシリコーン樹脂からなる封止層と、
前記封止層の表面におけるLED素子上に設けられた盛り上がり部とを具備し、前記盛り上がり部の周縁に有底溝が形成されていることを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項9】
LED素子と、
前記LED素子を封止する透明なシリコーン樹脂からなる封止層と、
前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって形成された環状の有底溝と、
前記封止層の表面における前記有底溝の内周縁で囲まれた領域に、前記シリコーン樹脂とは同種又は別種の透明な第2樹脂を液体状態で供給し、前記内周縁を境界とする表面張力によって当該第2樹脂を盛り上がらせた盛り上がり部とを具備することを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項10】
前記有底溝の内周縁部及び外周縁部が、その周辺の封止層表面よりも隆起していることを特徴とする請求項8記載のLEDパッケージ。
【請求項11】
LED素子を透明なシリコーン樹脂で封止して封止層を形成する封止層形成工程と、
前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して環状の変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって、LED素子から出た光を所定の方向に屈折させる窪み部を形成する窪み部形成工程とを有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項12】
LED素子と、
前記LED素子を封止する透明なシリコーン樹脂からなる封止層と、
前記封止層の表面に短パルスレーザを照射して変質部分を形成し、該変質部分を取り除くことによって形成された窪み部とを具備し、
前記窪み部によるレンズ効果によってLED素子から出た光を所定の方向に屈折させることを特徴とするLEDパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248707(P2012−248707A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119754(P2011−119754)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(596099446)シーシーエス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】