説明

Limnocitruslittoralis抽出物を含有する化粧料組成物

【課題】炎症が起源の非病理学的皮膚症状、特に敏感肌に関わるものを、鎮静作用によって治癒させるために特に好適な抽出物を提供すること。
【解決手段】局所適用に適合し、化粧品として許容される賦形剤中に、アルコール又は水性アルコール抽出溶媒によって得られるLimnocitrus littoralisの抽出物を活性作用物質として含むことを特徴とする化粧料組成物を提供することによる。さらに、炎症性起源の非病理学的皮膚症状の鎮静化、並びに/又は内因性及び/若しくは光誘導性の老化の影響の予防及び/若しくは治癒を特に意図した、本発明の化粧料組成物の皮膚への適用を含む、化粧品を用いた手入れの方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品の分野に関する。さらに詳細には、本発明はLimnocitrus littoralis(Miq.)Swingle(以下、Limnocitrus littoralisと表示する)の抽出物を含む新規化粧料組成物、及び化粧品の分野における本抽出物の新規用途に関する。
【背景技術】
【0002】
Limnocitrus littoralisは、basionym Paramignya littoralis Miqと共にミカン(Rutaceae)科に属する植物である。これは東南アジアを起源とし、情報によると、これまでにLimnocitrus属に索引付けされた唯一の種である。この生息地は基本的に、高温乾燥地帯に位置している。
【0003】
これらは本来ベトナムで見出される(固有種ではない)叢林の形態をとる低木であり、これはさらに、本発明の記載で用いるものの源である。
【0004】
この植物の伝統的又は宗教的な使用は、伝承及びベトナムの文書中に詳説されている。特にLimnocitrus littoralisの葉からの、去痰、鎮咳製剤として、又は浸出の有効な療法であると考えられる蒸し風呂の調製、並びに風邪及び発熱の治療のための使用及び伝統的治療の効果の記載もある。
【0005】
解熱用として根、鎮咳用として葉、又は喘息発作若しくは咳の治療のための果皮のいずれかの、伝統的な医薬における異なる用途も知られている。
【0006】
最後に、特に子宮炎、便秘及び咳に対する様々な伝統的療法で、とりわけ、Limnocitrus littoralisの生鮮又は乾燥部位のいずれかを含有する浸煎剤が提案されている。
【0007】
芳香性の煙から、焼き葉の用途も報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
Limnocitrus littoralisが属するミカン(Rutaceae)科は特に、非常に広汎性で大変よく知られており、約165種を含むかんきつ(Citrus)属を含んでいる。
【0009】
かんきつ(Citrus)属に属する数多くの植物種が、抗炎症性を有していることが知られている。しかしながら、この抗炎症特性はとても一般的とは言い難い。
【0010】
本発明者らは従って、それらの植物学的属がLimnocitrus littoralisの属と異なっていても、かんきつ(Citrus)属に属する植物種にも関心を持った。
【0011】
すると、かんきつ(Citrus)属の特定の植物種は逆に、炎症誘発特性を有している。さらに、出願人が行った実験によって実証したところでは、かんきつ(Citrus)属の他の植物種は、それらが抗炎症活性を有する用量で用いたモデルに対して毒性を呈する。
【0012】
本発明の発明者らはここで、かんきつ(Citrus)属の異なる植物種を試験することによって、植物Limnocitrus littoralisから、使用した用量では無毒であり、同時に化粧品において特に活性を有する抽出物を調製できることを見出した。
【0013】
さらに詳細には、系統的な実験の過程で、本発明の発明者らは、炎症が起源の非病理学的皮膚症状、特に敏感肌に関わるものを、鎮静作用によって治癒させるために特に好適な抽出物の選択を可能としている。
【0014】
敏感肌とは、いわゆる正常肌と同じ徴候において、より迅速、且つ場合によってはより激烈に、外部からの攻撃に応答する肌で、当該肌が病理学的状態を呈するものではないことを意味するものとして理解される。
【0015】
敏感肌に通常伴う非病理学的症状がよく知られており、該当する人によって程度の差はあるが、明瞭な肌の不快感、特に熱若しくは灼熱、刺痛、掻痒及び/又は引張の感覚、あるいは発疹の出現を引き起こす。これらの肌障害は、情動、環境因子(汚染、UV、タバコ、温度等)等の外的因子、及び界面活性剤、保存剤、香料又は特定の化粧料活性作用物質等、特に化粧料組成物に存在する化学薬品によって引き起こされる。
【0016】
これらの症状を引き起こす作用の機構は種々に理解されるが、炎症プロセスは共通の特徴とそれ自体が起源のものとの両方である。
【0017】
これらのプロセスは、反応性酸素種、(インターロイキン−8のような)サイトカイン又はプロスタグランジン等の炎症メディエータによって、特にE型プロスタグランジンの放出後に、程度の差はあるが感受性皮神経の興奮が誘発される。
【0018】
さらに、本発明者らは、これらの同じ抽出物が、特に皮膚老化の分野においてコラーゲン合成に対する刺激能のために他の化粧用途で有効であるのが明らかなことを確認できている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
よって、第一の特徴によれば、本発明は、植物Limnocitrus littoralisの抽出物を含む化粧料組成物に関する。
【0020】
第二の特徴によれば、本発明は、炎症に起因する非病理学的皮膚症状の治癒、並びに皮膚老化の影響の予防及び/又は治癒を目的として異なる化粧品特性を組成物に与えるための、前記組成物における活性作用物質としての当該抽出物の使用に関する。
【0021】
第三の特徴によれば、本発明は、肌の手入れ用、特に炎症性起源の非病理学的皮膚症状の治癒、又は皮膚老化の影響の予防及び/若しくは治癒、特にシワ対策の手入れの効果を目的とした化粧処置の方法に関する。
【0022】
よって、第一の本質的な特徴によれば、本発明は、局所適用に適合し、化粧品として許容される賦形剤中に、アルコール又は水性アルコール抽出溶媒によって得られるLimnocitrus littoralisの抽出物を活性作用物質として含むことを特徴とする化粧料組成物に関する。
【0023】
第二の本質的な特徴によれば、本発明は、化粧料組成物における、又は化粧料組成物の製造を目的とした、敏感肌に関わるもの等の、炎症性起源の非病理学的皮膚症状の治癒のための化粧料特性を鎮静作用によって当該化粧料組成物に与える、本発明のLimnocitrus littoralisの抽出物の活性作用物質としての使用に関する。
【0024】
この第一の使用によれば、本発明は、熱又は灼熱の感覚、発疹、引張、掻痒及び刺痛等、炎症性起源の非病理学的皮膚症状を鎮静化するための当該化粧料組成物の使用に関する。
【0025】
第二の使用によれば、本発明は、化粧料組成物における、又は化粧料組成物の製造を目的とした、コラーゲン合成を刺激するための薬剤としての本発明に係るLimnocitrus littoralisの抽出物の使用に関する。
【0026】
この第二の使用によれば、本発明は、内因性及び/又は光誘導性の皮膚老化の影響を予防及び/又は治癒するための、当該組成物の使用に関する。
【0027】
別の本質的な特徴によれば、本発明は、炎症性起源の非病理学的皮膚症状の鎮静化、並びに/又は内因性及び/若しくは光誘導性の老化の影響の予防及び/若しくは治癒を特に意図した、本発明に係る化粧料組成物の皮膚への適用を含む、化粧品を用いた手入れの方法に関する。
【0028】
この最後の特徴によれば、本発明はより詳細には、シワ対策の手入れのための、化粧品を用いた手入れの方法に関する。
【0029】
本発明の他の特徴は、以下の説明及び詳細な実施例から明らかになるであろう。
【0030】
本発明の化粧料組成物は、Limnocitrus littoralisの抽出物からなる活性作用物質の存在を特徴とする。
【0031】
この抽出物は、アルコール又は水性アルコール抽出溶媒を用いた少なくとも一つの抽出工程を含む方法によって得られる。
【0032】
本発明の発明者らが行った実験によって、本発明で有用な抽出物を得るために植物の地上部を使用するのが好ましいことが示されている。
【0033】
一つの特に有利な本発明の異なる態様において、抽出物は葉の抽出物である。
【0034】
純品又は水性アルコール混合液にて使用するアルコールは、C〜Cモノアルコール又はC〜Cグリコールであるとよい。
【0035】
本発明で有用な抽出物を調製するための特に好ましいアルコールとして、エタノール、ブチレングリコール並びにエタノール/水及びブチレングリコール/水の混合液が挙げられる。
【0036】
本発明の発明者らが行った実験の過程で、抽出溶媒が比較的少量の水を含有するか否かである場合に、抽出物の質、特にそれらの固有特性の経時的安定性がかなり向上することが明らかになった。
【0037】
よって、一つの有利な異なる態様において、抽出溶媒はエタノール、又は多くとも50%の水、好ましくは多くとも4%の水を含むエタノール/水の混合液である。
【0038】
別の特に有利な本発明の異なる態様において、抽出物は、純粋なブチレングリコールを抽出溶媒として用いることによって得られる。
【0039】
よって、本発明のLimnocitrus littoralisの抽出物は、無水溶媒、さらに特にはブチレングリコールを使用することによって得るのが有利である。
【0040】
さらに、特に有利な一つの態様において、ブチレングリコールでの抽出によって抽出物を直接得なくても、それをブチレングリコール溶液の形態、特にブチレングリコールの重量に基づき0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%の乾燥抽出物を含有する溶液の形態の本発明の組成物に導入と有用であることが示されている。
【0041】
さらに別の異なる態様において、抽出物を組成物に導入する前、且つ本発明に従って使用する抽出溶媒の溶液状態にある間に、固形部分を除去するためにそれを固液分離工程に付すことになる。
【0042】
抽出物を、様々な脱色工程、特に活性炭を用いる脱色工程にも付してよい。
【0043】
乾燥抽出物の重量百分率で表される本発明の組成物中の抽出物の濃度は、広い範囲内で変化してもよい。
【0044】
しかし、この濃度は、組成物の総重量に基づき10−4〜5重量%の間、好ましくは0.01〜2重量%の間の乾燥抽出物が有利であり、この抽出物は好ましくはLimnocitrus littoralisの葉の抽出物であってもよい。
【0045】
本発明の組成物は、化粧品の分野で従来使用される保存剤から選択される少なくとも1種の保存剤を含んでもよい。
【0046】
本発明の組成物はまた、少なくとも1種の酸化防止剤も含んでよい。
【0047】
アルファ−トコフェロール、アスコルビン酸及びそれらの化粧品として許容される誘導体、特にそれらのエステルが、本発明に係る特に好ましい酸化防止剤として挙げられる。
【0048】
本発明の組成物は、多種多様な方法で製剤化させることができ、皮膚への局所適用に適合する如何なる形態ででも提供できる。
【0049】
特に、クリーム、ゲル、ローション、スティック、アイシャドウ又はメークアップファンデーションの形態で提供できる。
【0050】
本発明の好ましい組成物は、特に含水量が低いもの、又は無水の形態をとるものでよい。
【0051】
このような組成物の例として、メークアップファンデーション、アイシャドウ又はスティックが挙げられる。
【0052】
上記の通り、組成物の価値は本質的に、炎症性起源の非病理学的皮膚症状を鎮静化するための特性に依存し、内因性及び/若しくは光誘導性の皮膚老化、特にシワの影響を治癒又は予防する活性にも依存している。
【0053】
本発明の発明者らは、E型プロスタグランジン(PGE)を阻害する活性、及びコラーゲン合成を刺激する際の活性に伴う老化防止活性に、鎮静化の特性が本質的に関することを立証している。
【0054】
それらの特性に基づき、前記定義の抽出物は、化粧料組成物における皮膚鎮静化剤として、又はこれらの組成物の製造のために使用してもよい。
【0055】
こうして得られる組成物は、皮膚の炎症性型現象によって引き起こされる、熱若しくは灼熱の感覚、刺痛、できもの、引張又は掻痒等の炎症性起源の非病理学的皮膚症状の鎮静化のために使用してよい。
【0056】
コラーゲン合成におけるそれらの第二の型の活性に基づき、本発明の抽出物は、化粧料組成物でコラーゲン合成を刺激するための薬剤として、又はこのような組成物の製造のために使用してよい。
【0057】
かかる組成物は、内因性及び/又は光誘導性の皮膚老化、特にシワの影響を予防及び/又は治癒すると考えられるあらゆる場合に使用してよい。
【0058】
前記の炎症性型の現象は、S. Pillai,C. Oresajo and J. Haywardにより以下の文献:International Journal of Cosmetic Science,2005,27,17−34頁に記載のように、皮膚老化の促進における役割を有するものとしても認識される。
【0059】
よって、それらの二重の活性、すなわち、一方は炎症性起源の非病理学的皮膚症状に対する活性と、もう一方はコラーゲン合成の刺激における活性により、本発明に係る抽出物は皮膚老化の分野に特に好適である。
【0060】
前記の通り、本発明はさらに、炎症性起源の皮膚障害の鎮静化、並びに/又は内因性及び/若しくは光誘導性の老化の影響の予防及び/若しくは治癒を特に意図した、前記定義の化粧料組成物の皮膚への適用を含むことを特徴とする、化粧品を用いた手入れの方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
実施例
【実施例1】
【0062】
I.本発明で有用な抽出物の調製
【0063】
a.水性エタノール抽出による抽出物の調製
【0064】
90/10体積/体積(v/v)の比率のエタノール/水の混合液150mlを、250mlの丸底フラスコ中の粉砕した葉10gに添加する。混合物を30分間還流する。冷却後に、2枚のGF/Fフィルター(Whatman)を備えたブフナー漏斗にて抽出物を濾過し、その後ケーキ状濾過物は50mlのエタノール/水の混合液(90/10、v/v)で濯ぐ。次いで濾液をロータリーエバポレータにて蒸発乾固させる。得られた乾燥抽出物を用いて以下の3種の溶液: 1重量/体積(w/v)%のエタノール/水の混合液(50/50、v/v)溶液(以下、抽出物Aと称する)、1(w/v)%のブチレン−1,3−グリコール溶液(以下、抽出物Bと称する)、及び1(w/v)%の、酸化防止剤を含有する30μl/mlの混合物を含むエタノール/水(50/50、v/v)溶液(以下、抽出物Cと称する)を調製する。
【0065】
この酸化防止剤の混合物は、0.20gのアルファ−トコフェロール+0.05gのパルミトイルレシチン+0.01gのアスコルビン酸パルミテート(すべて、6mlの水/エタノールの混合液(16/84、v/v)に含まれる)で構成される。
【0066】
b.ブチレングリコール抽出による抽出物の調製
【0067】
150mlのブチレン−1,3−グリコールを、250mlの丸底フラスコの中の粉砕した葉10gに添加する。混合物を50℃で1時間攪拌する。冷却後に、1枚の0.45μmフィルター(Millipore)を備えたブフナー漏斗にて抽出物を濾過する。ケーキ状濾過物は、50mlのブチレン−1,3−グリコールで濯ぐ。溶液の乾燥抽出物は、溶液の総重量に基づき約0.4重量%である。得られた乾燥抽出物は、以下抽出物Dと称する。
【0068】
c.脱色した抽出物の調製
【0069】
b)で得たブチレングリコール溶液は、下記の手順に従って活性炭(CxV)(CECAにより供給)で脱色する。
【0070】
第一工程は、50.07mlの前記溶液について、10mgの活性炭(すなわち、固形重量に基づき約5重量%)を用いて行う。全体を室温で2時間攪拌する。溶液をGF/Fフィルター(Whatman)にて濾過する。
【0071】
この溶液に、さらに10mgの活性炭を添加する。全体を室温で1時間攪拌する。溶液をGF/Fフィルター(Whatman)にて濾過する。
【0072】
この溶液に、さらに20mgの活性炭を添加する。全体を室温で1時間攪拌する。溶液をGF/Fフィルター(Whatman)にて濾過し、次いで蒸発乾固させる。
【0073】
この溶液の得られた乾燥抽出物は、溶液の総重量に基づき0.28重量%である。これを以下、抽出物Eと称する。
【実施例2】
【0074】
II.抗炎症性活性の立証
【0075】
1.試験の原理
【0076】
試験は、ヒト・ケラチノサイトについて実施し、本発明に係る抽出物の存在下にE型プロスタグランジンの放出の阻害を判定することをその目的とする。
【0077】
2.抗炎症性活性を測定するための試験のプロトコル
【0078】
a.陽性参照及び試験試料の調製
【0079】
PEGの放出を阻害するのに使用する陽性参照は、インドメタシン(シグマ参照番号:I7378)である。3×10−3モル濃度の原液を、DMSOにて調製した。インドメタシンは、0.1v/v%、すなわち、3×10−6Mの有効成分の最終濃度で、培養液に添加した。0.1v/v%の最終濃度の賦形剤参照(DMSO)を平行して調製した。試験すべきLimnocitrus littoralisの各抽出物を5v/v%の濃度でDMSOに溶解させ、次いで3.125mg/mlの濃度に希釈する。
【0080】
試験すべきLimnocitrus littoralisの各抽出物は、その後0.1v/v%、すなわち、3.125μg/mlの有効成分の最終濃度で培養液に導入する。0.1v/v%の最終濃度の賦形剤参照(DMSO)を平行して調製した。
【0081】
被験Limnocitrus littoralisの用量でケラチノサイトに対する細胞毒性がないことを立証するために、XTT法により予め(処理の24時間後)細胞の生存度試験を行った。
【0082】
b.細胞の処理
【0083】
ケラチノサイト(HaCaT型)は、補完KSFM(ギブコ参照番号:17005−034 + 37000−015)で培養する。ケラチノサイトは、96ウェルのマイクロプレートに、ウェル当たり10,000細胞数の割合で接種する。培養のこの第一日をD0とする。インキュベーションの24時間後(D1)に、項目Iに記載のLimnocitrus littoralisの抽出物、若しくはインドメタシンのいずれかを含有するKSFMc、又は溶媒参照(DMSO)に培地交換する。
【0084】
48時間後(D3)、すなわち処理の24時間後に培養液を回収して、その後−20℃で凍結させ、その細胞をPBSで一度濯いでBCA法によるタンパク質アッセイに付す。
【0085】
解凍後に、参照番号514010でCaymanが販売するEIA(酵素イムノアッセイ)キットのプロトコルに従って培養液をアッセイする。
【0086】
同じプロトコルに従う較正範囲を同時に確立する(0〜1ng/mlの範囲)。
【0087】
c.結果
【0088】
以下の表1は、DMSO中1mg/ml及び0.1mg/mlで用いた抽出物A、B、C、D及びEの存在下のE型プロスタグランジンの阻害百分率として表した結果を列記している。
【0089】
【表1】

【0090】
抽出物A、B、C、D及びEは全て、PEG−2阻害活性を有し、細胞毒性のない高い濃度でPEG−2阻害活性は非常に顕著になることもわかる。
【実施例3】
【0091】
III.CITRUS属に属する他の植物と比較したLIMNOCITRUS LITTORALISの価値の立証
【0092】
以下に示す実験では、抗炎症性活性及び毒性に関して、他の柑橘類と比較したLimnocitrus littoralisの価値を例証する。
【0093】
この部分で行う試験において、前記部分IIに記載の試験を用いて抗炎症性活性を判定した。
【0094】
試験は、かんきつ(Citrus)属の以下の五種を用いて行った。
I:Citrus maxima(Burm. Ex Rumph.)Merr.
II:Citrus aurentifolia(Christm.)Swingle
III:Citrus nobilis(Lour.)
IV:Citrus hystrix(DC.)
V:Citrus reticulata(Blanco.)
【0095】
本発明の発明者らは、Limnocitrus littoralisの抽出物Aと、抽出物Aについて記載したと同じ抽出条件下に得て、同じ濃度で試験した様々な柑橘類の水性アルコール抽出物との間でPGE阻害能を比較してみた。
【0096】
さらに、抽出物I〜Vの毒性を、同じ条件下に得たLimnocitrus littoralisの抽出物Aのものと比較することによって確認した。
【0097】
1.細胞毒性限界の判定
【0098】
細胞毒性限界を判定するために、許容される非細胞毒性限界を90%細胞生存度に対応するように採用した。
【0099】
結果を以下の表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
試料IV及びVは、用いた実験条件下に細胞毒性であると考えられる。
【0102】
2.PEGの放出の判定
【0103】
全ての抽出物を、II.b)に記載の条件下に3.125μg/mlで試験し、アッセイはCaymanが販売しているEIAキット(参照番号:514010)を用いて行った。かんきつ(Citrus)属の種IV及びVから得た抽出物は、この用量を超えて細胞毒性のプラトーを呈する。
【0104】
以下の表に示す数値は、所定の試料のPEG放出活性とエフェクタなしの参照の同活性(細胞の基礎PEG放出活性に対応するので、そのPEG放出活性を任意に100%で固定)との比較によって得られるPEG放出百分率である。
【0105】
【表3】

【0106】
わずか3点(かなり高い標準偏差ができる)に対して得たこの第一の結果は、使用したモデルで、且つその操作条件下で試験したかんきつ(Citrus)属のすべての種のうちCitrus maxima(I)のみが、参照に比して−32.76と負のPGE放出性を有し、これで事実上PGE阻害活性がもたらされることを示唆している。この活性は、ずっと高いPGE阻害能を示す−52のLimnocitrus littoralisの活性よりも実質的に低いこともわかる。
【実施例4】
【0107】
IV.「老化防止」活性の立証
【0108】
1.試験の原理及び目的
【0109】
フリーラジカルは、それらの炎症誘発活性を介する直接的及び間接的作用を通じて、経時的な皮膚老化の促進に関与する。従って我々は、経時的老化促進を刺激するために、UVA及びUVB照射による酸化的ストレスのモデルを選択した(Rittieら、UV light−induced cascades and skin ageing(UV光で誘発されるカスケード及び皮膚の老化). Ageing Research Review 2002,2,705−720)。
【0110】
コラーゲン合成に対する、本発明に係るLimnocitrus littoralisの抽出物の効果を評価した。
【0111】
2.生存状態に保ち酸化的ストレスに付したヒト皮膚の実験モデル
【0112】
皮膚断片は、美容整形手術後の女性(8名の異なる供与者)から得た。断片を挿入体に入れ、これら自体を培養ウェル上で懸濁させた。培養液をウェルの底に加えて、多孔膜(12μm)を通す緩徐な拡散によって2つの区画の間を通過させた。ウェル内の培養液は、3日毎に新しく交換した。
【0113】
酸化的ストレスの実験モデルは、酸化型フリーラジカルの生成を引き起こすように、UVA(8J/cm)及びUVB(16J/cm)での照射のセッションで(D0に)用意した。本発明に係るLimnocitrus littoralisの試験抽出物は次いで、1日1回、皮膚の表面に付す。従ってそのプロトコルは、以下の条件を含んでいる。
参照皮膚(酸化的ストレスなし、且つ未処理)
皮膚+酸化的ストレス(対照皮膚)
皮膚+酸化的ストレス+本発明に係るLimnocitrus littoralisの試験抽出物
その後、D7に、様々な分析のため皮膚培養を停止した。
【0114】
3. コラーゲン合成に対するLimnocitrus littoralisの抽出物の効果の解析
【0115】
コラーゲン合成の面からの、皮膚線維芽細胞の代謝の刺激に対するLimnocitrus littoralisの抽出物の効果を、コラーゲンの生化学的アッセイにより真皮について評価する。
【0116】
皮膚断片を、ペプシンを含有する0.5M酢酸溶液で+4℃にて終夜酵素消化する。この方法によって、新たに合成したコラーゲンを回収することが可能になる。例えば陶製のミルで機械的に粉砕した後、コラーゲンの量(μg/ml)を分光比色アッセイ法により540nmで評価し、酸−可溶性コラーゲンはシリウスレッド染料の特異的固定後に検出する(Sircol Collagen Assay、Interchim)。
【0117】
試料中の総タンパク質量に対するコラーゲン量の比を取ることによって、異なる結果を比較する。タンパク質濃度は、562nmで分光光度法によりアッセイする(BCA assay、Pierce).
【0118】
結果は、コラーゲンのμg/タンパク質のmgにて表す。
【0119】
4.統計的分析
【0120】
Limnocitrus littoralisの抽出物で処理した皮膚断片と、未処理だがUVでの酸化的ストレスを受けた皮膚断片の結果の比較試験を行い、この試験には以下のものを含めた。
・参照皮膚
・UVA及びUVBで実験的に老化させた皮膚(対照皮膚)
・皮膚+UVA/UVB+本発明のLimnocitrus littoralisの抽出物
【0121】
8つの皮膚断片に対して得られた結果を平均した。
【0122】
統計的解析は、いわゆる低偏差スチューデントt検定、又は対応試料t検定で、5%の危険水準によって実施した。
【0123】
5.生化学的コラーゲンアッセイの結果
【0124】
表4に示す結果は、抽出物Dを用いて得た。
【0125】
【表4】

*:参照皮膚に対して統計的に有意な差(対応スチューデントt検定、p<0.05)
♯:UV対照皮膚に対して統計的に有意な差(対応スチューデントt検定、p<0.05)
【0126】
一方で、参照皮膚の場合の114.5μg/mgの比率に比べ、酸化的ストレスに付した皮膚の場合は87.3μg/mgの比率で統計的に有意なコラーゲン合成の減少があることがわかる(p=0.02)。
【0127】
他方、Limnocitrus littoralisの抽出物Dでの処理によって、対照皮膚の場合87.3に対して128.4μg/mgの比率で、統計的に有意なコラーゲン合成に対する刺激を得るのが可能になったことがわかる(p=0.04)。
【0128】
6.結論
【0129】
生存状態を保ち、且つ皮膚老化の促進を刺激する酸化的ストレスに付したヒト皮膚のモデルを用いて、我々はコラーゲン合成の統計的に有意な刺激を立証し、これによって本発明に係るLimnocitrus littoralisの抽出物が老化防止活性を有することが示されている。
【実施例5】
【0130】
V.本発明に係る製剤例
【0131】
下記の局所用化粧料組成物を、以下の百分の1組成物(重量)から従来の方法で調製する。
【0132】
ゲル
【表5】

【0133】
ボディエマルジョン
【表6】

【0134】
ローション
【表7】

【0135】
メークアップファンデーション
【表8】

【0136】
無水のメークアップファンデーション
【表9】

【0137】
日焼け後の鎮静化用ゲル
【表10】

【0138】
日焼け用保護液
【表11】

【0139】
シワ対策の手入れ用クリーム
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用に適合し、化粧品として許容される賦形剤中に、アルコール又は水性アルコール抽出溶媒によって得られるLimnocitrus littoralisの抽出物を活性作用物質として含むことを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、Limnocitrus littoralisの地上部から得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抽出物が、Limnocitrus littoralisの葉から得られることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抽出溶媒が、C〜Cモノアルコール及びC〜Cグリコールからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抽出溶媒が、エタノール、ブチレングリコール並びにエタノール/水及びブチレングリコール/水の混合液からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抽出溶媒が、エタノール又は50%以下の水、好ましくは4%以下の水を含むエタノール/水の混合液であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抽出溶媒が、ブチレングリコールであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抽出溶媒中で溶液状態にある前記抽出物を、固形部分を除去するために固液分離工程に付すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抽出物を、脱色工程、特に活性炭での脱色工程に付すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の総重量に対して10−4〜5重量%の間、好ましくは0.01〜2重量%の間のLimnocitrus littoralisの乾燥抽出物、特に葉の抽出物を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
アルファ−トコフェロール、アスコルビン酸及びそれらの化粧品として許容される誘導体、特にそれらのエステルのような酸化防止剤の少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
クリーム、ゲル、ローション、スティック、アイシャドウ又はメークアップファンデーションの形態で提供されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
無水の形態で、及び特にメークアップファンデーション、アイシャドウ又はスティックであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抽出物が、ブチレングリコール溶液に、特にブチレングリコールの重量に基づいて、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%の前記乾燥抽出物を含む溶液になるように添加されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
化粧料組成物における、又は化粧料組成物の製造を目的とした、敏感肌に関わるものなど、炎症性起源の非病理学的皮膚症状の治癒のための化粧料特性を鎮静作用によって当該化粧料組成物に与える活性作用物質としての、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項16】
熱又は灼熱の感覚、発疹、引張、掻痒及び刺痛など、炎症性起源の非病理学的皮膚症状を鎮静化するために前記化粧料組成物を用いることを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
化粧料組成物における、又は化粧料組成物の製造を目的とした、コラーゲン合成を刺激するための薬剤としての、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項18】
内因性及び/又は光誘導性の皮膚老化の影響を予防及び/又は治癒するために当該組成物を用いることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
炎症性起源の非病理学的皮膚症状の鎮静化、並びに/又は内因性及び/若しくは光誘導性の老化の影響の予防及び/若しくは治癒を特に意図した、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化粧料組成物の皮膚への適用を含むことを特徴とする、化粧品を用いた手入れの方法。
【請求項20】
シワ対策の手入れのためであることを特徴とする、請求項19に記載の化粧品を用いた手入れの方法。

【公開番号】特開2008−13553(P2008−13553A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−160836(P2007−160836)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(506215560)
【Fターム(参考)】