説明

PEALDによってSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する方法

【課題】プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)によって半導体基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、窒素及び水素を含有する反応ガス及び添加ガスを、半導体基板が中に配置された反応空間に導入する工程と、高周波RFパワー入力源と低周波RFパワー入力源を使用してRFパワーを反応空間に印加する工程と、プラズマが励起している反応空間に水素を含有するシリコン前駆体をパルスの状態で導入し、このことにより基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路製造に関するもので、特に、ストレス調節された窒化ケイ素薄膜を形成する方法、及び低温(たとえば、400℃以下)でプラズマ励起原子層の成膜(PEALD)を使って窒化ケイ素膜を成膜する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温(400℃以下)で成膜された窒化ケイ素膜が、メモリデバイスのための多くの重要な応用例に、たとえば、トランジスタのゲートのための不動態化層、表面保護層及び/又はスペーサーとして利用されてきた。窒化ケイ素膜は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)方法によって形成することができる。他のCVD方法よりも優れたPECVD方法の主要な長所は、広範囲な屈折率にわたり成膜率が高く、制御性に優れていることである。PECVD方法の更なる長所は、プロセスが比較的低温、たとえば400℃以下で行われ、セル処理での熱の総量が最小に維持されることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2003/0040158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、窒化ケイ素層が、特許文献1(サイトーによる米国特許公開第2003/0040158号号)に示されているように、異なるストレス(多少引っ張りのストレスを呈し、多少圧縮ストレスを呈する)があるn-pチャンネルMOSFETデバイスにおいて、キャリヤー移動度を向上させる構造で使われた。好ましくは、引っ張りのストレスをもつ窒化ケイ素層が低圧CVDプロセスにより形成され、圧縮ストレスをもつ窒化ケイ素層がPECVDプロセスにより形成される。特許文献1に開示された技術にしたがって、逆ストレスの特徴をもつ窒化ケイ素層を形成するためには、全く異なる成膜方法が使用されなければならない。
【0005】
一実施例において、本発明は、低温(たとば400℃以下)でプラズマ励起原子層の成膜(PEALD)を使用して、ストレス調節された窒化ケイ素薄膜を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、400℃以下のような低温で、集積回路のための、窒化ケイ素層のようなSi−N結合をもつストレス調節された(たとえば、−2.0GPa〜1.5GPa)誘電体膜を形成する方法を提供することである。本発明の他の目的は、PEALDプロセスで二周波パワーを操作することによって成膜する方法を提供することである。
【0007】
本発明の一実施例では、PEALDによって半導体基板上に、Si−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する方法が提供される。この方法は、窒素と水素を含有する反応ガスと添加ガス(たとえば、希ガス)を半導体基板が配置された反応空間内に導入し、二周波のRF(高周波と低周波)パワーを反応空間に印加することを含む。水素を含有するシリコン前駆体が、プラズマが励起されている反応空間に5秒以下の持続期間をもつパルスの状態で導入され、これより、基板上にストレス調節されたSi−N結合を有する誘電体膜が形成される。
【0008】
ここで開示する発明において、“ガス”は固体や液体の蒸気を含んでもよい。ここで開示する発明において、“Si−N結合をもつ”とは、Si-N結合によって特徴づけられること、Si−N結合によって主に構成されていること、Si−N膜に分類されること、及び/又は、Si−N結合によって実質的に構成される主要な骨格を有することとして参照されてもよい。ここで開示する発明において、反応ガス、添加ガス及び水素を含有するシリコン前駆体は互いに異なっても、又はガスタイプに関して相容れないものであってもよい。すなわち、これらの分類間で重複するガスがない。さらに、ここで開示する発明において、示されるどんな範囲でも、端点を含む場合もあれば含まない場合もある。
【0009】
他の実施例において、PEALDによって半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法は、反応ガスと添加ガスとを半導体基板が配置された反応室に導入する工程を含み、ここで、半導体基板の温度は約0℃から400℃範囲に維持される。反応ガス及び添加ガスが反応室に導入された後、反応室はプラズマ励起状態に置かれる。つぎに、水素を含むシリコン前駆体がパルス流量制御弁を使用して、パルスの状態で反応室に導入され、ここで、シリコン前駆体は、プラズマが励起した反応室に導入され、このことにより、ガスのプラズマ反応により、基板上にSi−N結合をもつ誘電体膜が形成される。
【0010】
さらに他の実施例では、Si−N結合を有するストレス調節された誘電体膜が、異なる周波数範囲をもつRFパワーを供給することによって動作する二周波のRFパワー入力源をもつPEALDチャンバーで成膜される。典型的に、高周波パワー入力源が、5MHzを越える周波数(たとえば、13.56MHz又は27MHzの高RF周波パワーが使用され得る)のRFパワーを供給することによって動作する。低周波パワー入力源が、約400kHzから約500kHzの範囲にある周波数のRFパワーを供給することによって動作する。他の実施例では、低周波パワーと高周波パワーの比率は0%から100%であってもよい。
【0011】
一実施例において、高周波パワーは、約0.01W/cmから約0.3W/cmの範囲、より典型的には約0.04W/cmから約0.15W/cmの範囲にあるRFパワー(HRF)入力源を使用して導入されてもよい。低周波パワーは、0W/cmから約0.3W/cmの範囲、より典型的には0W/cmから約0.15W/cmの範囲にあるRFパワー(LRF)入力源を使用して導入されてもよい。
【0012】
さらに他の実施例において、水素を含有するシリコン前駆体は、シリコンと水素の組合せ、シリコンと水素と窒素との組合せ、又はシリコンと水素と炭素と窒素との組合せからなってもよい。一実施例において、蒸発した水素を含有するシリコン前駆体は、約0.1秒から約1.0秒の持続時間をもつパルス(パルスの間の間隔が約0.5秒から約3秒)で導入されてもよい。一実施例として、反応ガスは、窒素ガスと水素ガスとの組合せ又はアンモニアガスと水素ガスとの組合せであってもよい。一実施例として、添加ガスはHe、Ar、Kr、Xeのグループから選択されてもよく、添加ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソースのモル流量を越えるものであってもよい。一実施例として、反応室は、約0.1トルから約10トルの圧力に維持されてもよい。
【0013】
本発明の態様及び従来技術を越えて達成される効果を要約する目的のために、本発明の目的及び効果がここで説明される。もちろん、このような目的や効果のすべてが本発明の特定の実施例のいずれかに従って達成されるわけではないことは理解されるであろう。したがって、たとえば、以下で教示する他の目的、効果を必ずしも達成することなく、ここで教示する一つの効果又は一群の効果を達成又は最適にする方法で本発明を実施又は成し遂げることができることは当業者であれば分かるであろう。
【0014】
さらに、本発明の態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施例に従ったSi−N結合を有する誘電体層を成膜するPEALD装置の略示図である。
【図2】図2は、Si−N結合を有するストレス調節された誘電体層を形成するための本発明の実施例に従ったPEALD法のプロセス工程を示す概略図である。
【図3A】図3Aは、成膜の間(50WのHRF)、窒素流(slm)の関数として、本発明の実施例に従ったSi−N結合を有する誘電体層の膜ストレス(MPa)を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、成膜の間、HRFパワー(W)の関数として、成膜の間のHRFパワー(W)の機能として、本発明の実施例に従ったSi−N結合を有する誘電体層の膜ストレス(MPa)を示すグラフである。
【図4】図4は、成膜の間、LRFパワー(W)及び異なるHRFパワー(W)の関数として、本発明の実施例に従ったSi−N結合を有する誘電体層の膜ストレス(MPa)を示すグラフである。
【図5】図5は、成膜の間(100WのHRF)、LRFパワー(W)及び異なる成膜温度の関数として、本発明の実施例に従ったSi−N結合を有する誘電体層の膜ストレス(MPa)を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、基板温度が250℃であるときの、LRFパワー(W)及びHRFパワー(0.142W/cm)に関連してウエットエッチング(nm/min)と膜ストレス(MPa)との間の関連を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、基板温度が350℃であるときの、LRFパワー(W)及びHRFパワー(0.142W/cm)に関連してウエットエッチング(nm/min)と膜ストレス(MPa)との間の関連を示すグラフである。
【図6C】図6Cは、基板温度が400℃であるときの、LRFパワー(W)及びHRFパワー(0.142W/cm)に関連してウエットエッチング(nm/min)と膜ストレス(MPa)との間の関連を示すグラフである。
【図7】図7は、LRFパワー(W)に関連したストレス(MPa)とN−H結合との間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のこれら又は他の特徴は、本発明を限定することを意図するものではないが、好適実施例を図示する図面を参照して説明される。図面は説明の目的で単純化され、尺度も必ずしも一致しない。
【0017】
本発明は、本発明を制限することを意図しない実施例を参照して記述される。さらに、一実施例に適用された要素を他の実施例に適用することは可能であり、異なる実施例に適用された要素を、特別な条件が付されない限り、互いに置き換えても、あるいは交換してもよい。さらに、以下で示された範囲の端点は、実施例において含む場合もあり、含まない場合もある。
【0018】
本発明の実施例において、PEALDにより、半導体基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する方法は、(a)半導体基板が中に配置された反応空間内に、窒素及び水素を含有する反応ガスならびに添加ガスを導入する工程、(b)反応空間に二周波のRF(高周波数及び低周波数)パワーを印加する工程、及び(c)基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成するために、プラズマが励起されている反応空間に、水素を含有するシリコン前駆体を、持続時間が5秒未満で、ある間隔をもつパルスの状態で導入する工程を含む。
【0019】
一実施例において、Si−N結合を有するストレス調節された誘電体薄膜は、異なる周波数範囲にあるRFパワーを供給することによって動作する二周波のRFパワー入力源をもつPEALD反応室で成膜される。典型的に、高周波パワー入力源は、5MHzを越える周波数(たとえば、13.56MHz又は27MHzの高RF周波パワーを使用することができる)で動作する。低周波パワー入力源は、約400kHzから約500kHzの範囲にある周波数で動作する。ある実施例では、高周波パワーに対する低周波パワーは0から100%であってもよい。
【0020】
前述のどの実施例においてでも、高周波パワーは、約0.01W/cmから約0.3W/cmの範囲、より典型的には約0.04W/cmから約0.15W/cmの範囲にあるRFパワー入力源を使用して導入される。低周波パワーは、0W/cmから約0.3W/cmの範囲、より典型的には0W/cmから約0.15W/cmの範囲にあるRFパワー入力源を使用して導入される。
【0021】
開示される実施例の一つは、プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)により、半導体基板上に主要な膜構成をもつSi−N結合を有するターゲットの誘電体膜(ここでターゲット誘電体膜は、PEALDにより半導体基板上に主要な膜構成をもつSi−N結合を有する基準の誘電体膜のストレスタイプとは反対のストレスタイプとして、引っ張りか圧縮のいずれかのストレスを有する)を形成する方法を提供し、この方法は、(i)半導体基板が中に配置された反応空間に、窒素及び水素を含有する反応ガスならびに希ガスを導入する工程と、(ii)基準の誘電体膜とは反対のストレスを有するターゲット誘電体膜を得るために、低周波RFパワー(LRF)と高周波RFパワー(HRF)の混合のRFパワーをLRF/HRFの比率(この比率は、基準の誘電体膜のストレスタイプが引っ張りであるとき、基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を増加させることでセットされ、基準の誘電体膜のストレスタイプが圧縮であるとき、基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を減少させることによりセットされ、)で反応空間に印加する工程と、(iii)半導体基板上にターゲット誘電体膜をPEALDにより形成せるために、RFパワーが印加されている間、水素を含有するシリコン前駆体をパルスの状態で反応空間に導入する工程とを含み、ここで、セットされた比率の結果として、ターゲット誘電体膜は、基準の誘電体膜のものと反対のストレスタイプを有する。
【0022】
他の実施例では、LRF/HRFの比率は、ターゲット誘電体膜のストレスタイプを制御する主要なパラメータである。ある実施例では、LRF/HRFの比率は、ターゲット誘電体膜のストレスタイプを制御する唯一のパラメータである。
【0023】
他の実施例では、ターゲット誘電体膜は圧縮の膜ストレスをもち、(ii)工程において、LRF/HRFの比率は基準の誘電体膜のために使用されるLRF/HRFの比率を増加させることによってセットされ、ここで、LRF/HRFの増加した比率は2/1ないし10/10である。これに代えて、ある実施例では、ターゲット誘電体膜は引っ張りの膜ストレスをもち、(iii)工程において、LRF/HRFFの比率は基準の誘電体膜のために使用されるLRF/HRFの比率を減少させることによってセットされ、ここで、LRF/HRFの減少した比率は0/10ないし4/10である。
【0024】
他の実施例では、成膜の間、水素を含有するシリコン前駆体は約0.5秒〜約3秒の間隔で約0.1秒〜約1.0秒のパルス持続時間をもつパルスの状態で導入される。
【0025】
開示された他の実施例は、プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)により半導体基板上に主要な膜構成をもつSi−N結合を有するターゲット誘電体膜(このターゲット誘電体膜はPEALDにより半導体基板上に主要な膜構成をもち、基準の誘電体膜のものと異なる膜ストレス値を有する。)を形成する方法を提供し、その方法は、(i)半導体基板が中に配置される反応空間に窒素及び水素を含有する反応ガスならびに希ガスを導入する工程、(ii)基準の誘電体膜のものとは異なるストレスタイプをもつターゲット誘電体膜を得るために、低周波パワー(LRF)及び高周波パワー(HRF)の混合を、LRF/HRFの比率(この比率は、基準の誘電体膜のものよりも低い膜ストレス値をもつ誘電体膜を得るために基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を増加させることによりセットされ、又は基準の誘電体膜のものよりも高い膜ストレス値をもつ誘電体膜を得るために基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を減少させることによりセットされる。)で導入する工程、及び(iii)半導体基板上にターゲット誘電体膜を形成するために、RFパワーが印加されている間、水素を含有するシリコン前駆体をパルスの状態で反応空間に導入する工程を含み、ここで、LRF/HRFの比率は、ターゲット誘電体膜の膜ストレス値を基準の誘電体膜のものと違いをつける主要なパラメータとして使用される。
【0026】
さらに開示された実施例は、プラズマ励起原子膜の成膜(PEALD)により半導体基板上に膜の主要な膜構成をもつSi−N結合をそれぞれ有する多数の誘電体膜(この多数の誘電体膜は、引っ張りストレスをもつ膜と圧縮ストレスをもつ膜を含む。)を形成する方法を提供し、この方法は、(i)半導体基板が中に配置される反応空間に、窒素と水素を含有する反応ガス及び希ガスを導入する工程、(ii)低周波RFパワー(LRF)及び高周波RFパワー(HRF)の混合をLRF/HRFの比率で反応空間に印加する工程、(iii)PEALDにより半導体基板上に、引っ張りストレスをもつ膜及び圧縮ストレスをもつ膜のうちの一方を形成するために、水素を含有するシリコン前駆体をRFパワーが印加される反応空間に導入する工程、及び(iv)半導体基板上に引っ張りストレスをもつ膜及び圧縮ストレスをもつ膜のうちの他方を形成するために、主要なパラメータとして、成膜のストレスを制御し、LRF/HRFの比率を変更し、変更したLRF/HRFの比率で(i)から(iii)の工程を繰り返す工程を含む。
【0027】
ここで開示された特徴の全て又は一部は、どの開示の実施例においても組み合わせて使用することができる。
【0028】
一実施例において、Si−N結合を有する誘電体膜の成膜は、約−2.0GPa(圧縮)から1.5GPa(引っ張り)の範囲にあるストレスを有するように調節される。圧縮ストレスをもつ膜が必要な場合は、誘電体膜のストレスは、約−2.0GPaから−180GPaの範囲にあるように調節又は適合され得る。引っ張りストレスを有する膜が必要な場合は、誘電体膜は、約40GPaから−1.5GPaの範囲にあるように調節又は適合され得る。
【0029】
一実施例において、水素を含有するシリコン前駆体は、SiαHβXγの化学式を有し、ここでα、β及びγは整数であり、γはゼロを含む。XはN及び/又はCmHnであってもよく、m及びnは整数である。一実施例として、αは1ないし5であってもよく、βは1ないし10であってもよい。一実施例として、mは2ないし18であってもよく、nは6ないし30であってもよい。
【0030】
上記の実施例のいずれも、基板は、その基板上への成膜の間、0℃から400℃の温度に維持されてよい。他の実施例としては、基板の温度は、成膜の間、約250℃ないし約350℃である。
【0031】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体は、反応ガス及び添加ガスが連続して導入され、二周波のRFパワーが連続して印加されている間、パルスの状態で導入されてよい。
【0032】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつパルスの状態で導入されてよい。他の実施例としては、水素を含有するシリコン前駆体のパルスは、約0.2秒ないし約0.3秒の持続時間をもつ。
【0033】
他の実施例としては、水素を含有するシリコン前駆体のパルスは、約0.1秒ないし約3.0秒の間隔があけられている。また、他の実施例としては、間隔は、約0.5秒ないし約1.0秒又は約0.1秒ないし約2.0秒である。さらに、他の実施例では、パルスの持続時間は、パルスの間の間隔に等しいか又は短くてよい。
【0034】
上記の実施例のいずれも、反応ガスは、NとHの混合物、NHとHの混合物、窒素−ホウ素−水素ガスを含む。一実施例として、反応ガスは、NとHの混合物(N/Hのモル流量が約1/1ないし約10/1である)を含んでよい。他の実施例では、N/Hのモル流量は約2/1ないし約4/1である。他の実施例では、反応ガスは、NHとHの混合物(NH/Hのモル流量が約1:1ないし約1:10である)を含んでよい。また、他の実施例では、NH/Hのモル流量が約1:1ないし約1:3であってよい。
【0035】
上記に実施例のいずれも、添加ガスは、He、Ar、Kr及びXeのグループから選択された一つ又はそれ以上のガスであってよく、添加ガスのモル流量は、水素を含有するシリコン前駆体のモル流量を超えるものでもよい。他の実施例として、添加ガスの流量は約1500sccmないし約2500sccmであってよい。さらに、他の実施例として、添加ガスは、ヘリウムとアルゴンの混合物又はヘリウムとクリプトンとの混合物を含んでよい。他の実施例では、添加ガスはヘリウムとアルゴンの混合物で、そのモル流量が約3/1ないし約20/1のものを含んでよい。他の実施例として、ヘリウム/アルゴンのモル流量は、約5/1ないし約15/1であってよい。さらに他の実施例として、添加ガスはヘリウムとアルゴンの混合物であって、そのヘリウム/アルゴンのモル流量が約5/1ないし15/1であるものでよい。
【0036】
上記の実施例のいずれも、反応空間の圧力は、約0.1トルから約10トルの範囲にあるように調節されてよい。他の実施例では、反応空間の圧力は、約2トルないし約9トルであってよい。
【0037】
上記の実施例のいずれも、成膜されたときのSi−N結合を有するストレス調節された誘電体層の誘電率は、約4.5から約7.5の範囲とすることができる。他の実施例では、誘電率は約6.5ないし約7.2とすることができる。
【0038】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体は室温で、蒸気でも、液体であってもよい。他の実施例では、水素を含有するシリコン前駆体は、シラン、ジシラン、トリシリルアミン及びビス(tertブチルアミノ)シランのグループから選択された一つ以上の化合物であってもよい。
【0039】
実施例が、本発明を限定することを意図することなく、図を参照して説明される。図1は、流量制御弁を有するプラズマCVDリアクター(本発明で使用することができる)を組み込む装置の略示図である。
【0040】
この例では、反応チャンバー3の内部11に、平行で互いに向き合った一対の電気伝導性の平らなプレート電極4、2が設けられ、電極4にHRFパワー(たとえば、13.56MHz又は27MHz)5とLRFパワー(たとえば、400kHz〜500kHz)50を印加し、他の電極2を接地することによって、またはその反対にすることによって、プラズマが電極の間で励起される。温度レギュレータが下のステージ(下方電極2)に設けられ、その上に置かれた基板1の温度が所定の温度で、一定に維持される。上方電極4は、シャワープレートとしても機能し、反応ガス及び添加ガスが制御器21及び22をそれぞれ通過し、シャワープレート4を通過して反応チャンバー3に導入される。水素を含有するシリコン前駆体が、ガス流量制御器23、パルス流量制御弁31及びシャワープレート4を通過して反応チャンバーに導入される。さらに、反応チャンバー3内のガスを一定に排気する排気パイプ6が反応チャンバー3に設けられている。さらに、反応チャンバーには、反応チャンバー3の内部11に封止ガスを導入するための封止ガス流量制御器24が設けられている。(図では、反応チャンバーの内部において、反応ゾーンと移動ゾーンとを分離する分離プレートが省略されている。)
【0041】
この実施例では、パルス流量制御弁31に対して、ALD(原子層の成膜)のために使用されるパルス供給弁を適宜使用することができる。
【0042】
図2は、ストレス調節された窒化ケイ素を成膜する本発明の実施例にしたがったプロセス工程を示す。反応ガスと添加ガスが反応チャンバーに導入される、図2に示された本発明の実施例において(パターンI)、シリコン前駆体が、パターンIVで示されているように、反応チャンバーにパルス流量制御弁を介して約0.1秒から約1.0秒の間導入され、次に、約0.5秒から約3秒の間、導入が停止される。ここで、ガスの供給の間、パターンII及びIIIによりそれぞれ示されているようにLRF及びHRFパワーによりプラズマが励起される。一実施例として、他のガスは使用されなくともよい。
【0043】
時間間隔A(たとえば、1.0秒から10.0秒の間隔)の間も、反応ガスと添加ガスは、反応チャンバーの圧力を安定させるために導入される。時間間隔Bの間で、反応ガスと添加ガスの流量が維持されている間、水素を含むシリコン前駆体は導入される。時間間隔Bの間はまた、HRFパワー及びLRFパワーは自己帰還反応により原子層を成膜するように供給される。時間間隔Cの間、水素を含有するシリコン前駆体は停止する一方で、反応ガスの流量、添加ガスの流量、HRFパワーの供給、LRFパワーの供給は維持されている。時間間隔Bと時間間隔Cは1つのサイクルを構成し、時間間隔Dの間、所望の膜が得られるまで、複数のサイクルが実行される。
【0044】
シリコン前駆体をパルスの状態で導入することがこれらを実施することにより繰り返され、形成された膜のストレスを著しく高めるものと考えられている水素−窒素結合が制御でき、膜の成長の間、Hx、Nxラジカルを著しく増加させると考えられている大量の水素及び窒素がプロセスに添加することができ、その結果、成膜材の表面マイグレーションが改善され、基板上にストレス調節され、良好なコンフォーミティをもつ窒化ケイ素膜が形成される。
【0045】
一実施例では、一サイクル当たりの成膜された膜の厚さは約0.1nm/サイクルから約1.0nm/サイクルであってもよく、シリコン前駆体のパルスの供給は、所望の厚さの膜(たとえば、5nmから20nm)が得られるまで続けられる。
【0046】
半導体基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体層を形成するために、一実施例では、成膜条件は以下の通りとなる。
【0047】
水素を含有するシリコン前駆体(たとば、トリシリルアミン):
10〜2000sccm(たとえば、50〜1000sccm)
反応ガス1(たとえば、水素):
200〜2000sccm(たとえば、500〜1500sccm)
反応ガス2(たとえば、窒素):
2〜2000sccm(たとえば、100〜1500sccm)
反応ガス3(たとえば、アンモニア):
0〜1000sccm(たとえば、0〜500sccm)
希ガス1(たとえば、プロセスヘリウム):
0〜5000sccm(たとえば、500〜3000sccm)
封止ガス(たとえば、ヘリウム(典型的に、これは反応又はプロセスガスの一部を構成しない。)):
200〜700sccm(たとえば、300〜600sccm)
希ガス2(たとえば、アルゴン):
50〜700sccm(たとえば、200〜600sccm)
【0048】
基板温度:0〜400℃(たとえば、100〜350℃)
【0049】
高周波RFパワー(基板の表面積当たり):
0.01W/cm〜0.3W/cm
(たとえば、0.04W/cm〜0.2W/cm
低周波RFパワー(基板の表面積当たり):
高周波RF電圧の0〜100%
【0050】
前駆体供給時間:
0.1〜0.7秒の供給(たとえば、0.2〜0.5秒)、
0.1〜4.0秒の供給停止(たとえば、0.4〜2.0秒)
(たとえば、停止時間は、供給時間より長い。)
【0051】
本発明の実施例にしたがったSi−N結合を有する誘電体層は、約80%を超える(好適には、90%以上)のコンフォーミティをもつことができる。コンフォーミティは、上面で形成される膜の平均厚さに対する溝の側面に形成される膜の平均厚さの比率と定義される。ストレスは、約−2.0GPa(圧縮)から約1.5GPa(引っ張り)の範囲に調節することができる。さらに、他の実施例では、基板に成膜した膜の誘電率は約6.7ないし約7.3とすることができ、633nmでの反射率は、約1.8から2.5の範囲とすることができる。緩衝フッ化水素を用いて測られる、本発明の実施例に従った成膜された窒化ケイ素膜のエッチ速度は、約二倍から約十倍、標準として一般的に用いられる従来の熱酸化ケイ素膜の場合より小さいものとすることができる。
【0052】
本発明は、本発明を制限することを意図しない具体的な例に関連して説明される。具体的な例に適用される数値は、他の条件の下で、少なくとも±50%の範囲で修正してもよい。ここで範囲の端点を含む場合もあれば含まない場合もある。
条件及び/又は構成が特定されていない開示例に関して、当業者であれば、開示内容を考慮し日常の実験の問題として、このような条件及び/又は構成を容易に示すことができる。
【0053】
例1
Si−N結合を有する誘電体層が、以下の条件の下、図2に図示されたシーケンスと図1に図示されたPEALD装置を使用して基板上に形成された。
【0054】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:500、1000、2000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:500sccm
基板温度:350℃
高周波RFパワー(13.56MHzの周波数):0.07W/cm
低周波RFパワー(430kHzの周波数):0.0W/cm
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0055】
図3Aは、500、1000と2000sccmの窒素流でもって成膜された膜のストレスの変化を表す。ストレスは、約0.7GPa(引っ張り)から約1.0GPa(引っ張り)の範囲で調整された。
【0056】
例2
Si−N結合を有する誘電体層は、以下の条件の下で、図2に図示されるシーケンスと図1に図示されるPEALD装置を使用して、基板上に形成された。
【0057】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:500sccm
基板温度:350℃
高周波RFパワー(13.56MHzの周波数):
0.043、0.07、0.1、0.142W/cm
(それぞれ、30、50、70、100W)
低周波RFパワー(430kHzの周波数):
0.0W/cm
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0058】
図3Bは、0.043,0.07、0.1及び0.142W/cmの高周波パワーでもって成膜された膜のストレスの変化を表す。ストレスは、約0.6GPa(引っ張り)から約1.0GPa(引っ張り)の範囲で調節された。
【0059】
例3
Si−N結合を有する誘電体層が、以下の条件の下で、図2に図示されたシーケンスと図1に図示されるPEALD装置を使用して基板上に形成された。
【0060】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:500sccm
基板温度:350℃
高周波RFパワー(13.56MHzの周波数):
0.07W/cm(50W)、0.143W/cm(100W)
低周波RFパワー(430kHzの周波数):
高周波RFパワーの0〜100%
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0061】
図4は、上記の条件の下、成膜された膜のストレスの変化を表すグラフである。膜は、0.07W/cmのHRFパワーでもって、−1496MPa(圧縮)から1044MPa(引っ張り)の範囲のストレス値をもつ膜、0.142W/cmのHRFパワーでもって、−1684MPa(圧縮)から966W/cmの範囲のストレス値をもつ膜を形成するために、種々の異なるLRFパワー条件の下で成膜された。
【0062】
例4
Si−N結合を有する誘電体層が、以下の条件の下で、図2に図示されたシーケンスと図1に図示されたPEALD装置を使用して、基板上に形成された。
【0063】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:500sccm
基板温度:250、350、400℃
高周波RFパワー(13.56MHzの周波数):
0.142W/cm(100W)
低周波RFパワー(430kHzの周波数):
高周波RFパワーの0〜100%
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0064】
図5は、上記の条件の下で、成膜された膜のストレスの変化を表しているグラフである。膜は、種々の異なるLRFパワー及び基板温度条件の下で成膜された。成膜された膜は、250℃で−921.8MPa(圧縮)から669.4MPa(引っ張り)のストレス値、350℃で−1684MPa(圧縮)から966MPa(引っ張り)のストレス値、400℃で−2108MPa(圧縮)から887.24MPa(引っ張り)のストレス値をもつ。
【0065】
図6A〜図6Cは、0.142W/cmのHRFと異なるLRFパワー強度の組み合わせにおける、ウエットエッチ速度とストレスとの関係を示す(図6A、6B及び6Cは、それぞれ250℃、350℃及び400℃の基板温度のときを示す。)。成膜された膜のストレスは、基板温度に関係なく、LRFパワーを高くすることにより、引っ張りから圧縮に徐々にそして一定に変化する。ストレスが(LRFパワーを高くすることにより)引っ張りから圧縮に減少するときに、膜のウエットエッチ速度もまた減少する。
【0066】
図7は、異なるLRFパワーの条件でもって、成膜された膜のストレス及びN−H結合(面積)を表すグラフである。N−H構成はLRFパワーを高めることにより増加する。成膜内のこれらの構成は圧縮状態の原因となる。これらの構成の量が減少すると、ストレスは次第に引っ張りとなる。
【0067】
上述したように、開示した本発明の実施例にしたがった方法の重要な利点は、ストレス調節された窒化ケイ素の層又は他のSi−N結合を有する誘電体層が、他の制御パラメータを実質的に変えることなく単に、HRFパワーに対するLRFパワーの比率を操作することにより半導体基板上に形成することができることである。同様の方法で、膜のウエットエッチ速度を調節することができる。言い換えると、ストレスは単にHRFパワーに対するLRFパワーの比率を調整することにより、引っ張りと圧縮との間で調節することができる。このように、n−pチャネルMOSFETデバイスのような、異なるストレス及び/又はウエットエッチ速度を有する膜のラミネートを必要とする膜構成を、高い生産性で簡単に生産することができる。窒化ケイ素の層及び他のSi−N結合を有する誘電体層はまた、比較的低い基板温度で形成されてもよく、このことにより、基板に熱による損傷が生ずることなく、生産性を高めることでき、適用できる基板のタイプを拡大することができる。さらに、本発明の実施例にしたがった方法は、厚さを正確に制御することができて、高い成膜率を達成することができ、高いコンフォーミティをもった構成を得ることができる。
【0068】
本発明は、限定を意図するものではないが、上述の実施例に加え、以下の実施例も含む。
【0069】
1) プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)により、半導体基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する方法が、(i)
窒素及び水素を含有する反応ガスと添加ガスを半導体基板が中に配置された反応空間に導入する工程、(ii)RFパワーを高周波RFパワーと低周波RFパワー入力源を使用して反応空間に印加する工程、及び(iii)プラズマが励起された反応空間に、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で水素を含有するシリコン前駆体を導入し、これにより、基板上にSi−N結合を有するストレス調節された誘電体膜を形成する工程を含む。
【0070】
2) 1)に従う方法であって、高周波RFパワー入力源は約13.56MHz又は約27MHzの周波数を有する高周波RFパワーを供給し、低周波RFパワー入力源は約400kHzから約500kHzの範囲の周波数を有する低周波RFパワーを供給する。
【0071】
3) 1)又は2)に従う方法であって、高周波RFパワー入力源は、約0.04W/cmから約0.15W/cmの範囲にある高周波RFパワーを供給する。
【0072】
4) 1)ないし3)のいずれかに従う方法であって、低周波RFパワー入力源は、高周波RFパワーによって供給される高周波RFパワーの100%以下又は0%である低周波RFパワーを供給する。
【0073】
5) 1)ないし4)のいずれかに従う方法であって、基板は、その上に成膜する間、0℃から400℃の温度に保たれる。
【0074】
6) 1)ないし5)のいずれかに従う方法であって、水素を含有するシリコン前駆体はSiαHβXγの化学式を有し、ここで、α、βとγが整数で、γはゼロを含み、XはN及び/又はCmHnを含み、ここで、mとnは整数である。
【0075】
7) 1)ないし6)のいずれかに従う方法であって、水素を含有するシリコン前駆体がパルスの状態で導入される間、反応ガス及び添加ガスが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される。
【0076】
8) 1)ないし7)のいずれかに従う方法であって、水素を含有するシリコン前駆体は、持続時間が約0.1秒から約1.0秒で、間隔が約0.1秒から3.0秒であるパルスの状態で導入される。
【0077】
9) 8)に従う方法であって、パルスの持続時間が間隔に等しいか又は短い。
【0078】
10) 1)ないし9)のいずれかに従う方法であって、反応ガスは、NとHの混合物、NHとHの混合物、及び窒素-ホウ素-水素ガスから成るグループから選択された少なくとも一つである。
【0079】
11) 10)に従う方法であって、反応ガスは、NとHの混合物であり、ここでこの混合物におけるN/Hのモル流量比率が約1/1ないし約10/1である。
【0080】
12) 10)に従う方法であって、反応ガスは、NHとHの混合物であり、ここでこの混合物におけるNH/Hのモル流量比率が約1/1ないし約10/1である。
【0081】
13) 1)ないし12)のいずれかに従う方法であって、添加ガスは、ヘリウムとアルゴンの混合物、及びヘリウムとクリプトンの混合物からなるグループから選択された少なくとも一つである。
【0082】
14) 13)に従う方法であって、添加ガスはヘリウムとアルゴンの混合物であり、ここでヘリウム/アルゴンのモル流量比率が約3/1ないし約20/1である。
【0083】
15) 13)に従う方法であって、添加ガスはヘリウムとクリプトンの混合物であり、ここで、ヘリウム/クリプトンのモル流量比率が約3/1ないし約20/1である。
【0084】
16) 1)ないし15)のいずれかに従う方法であって、Si−N結合を有するストレス調節された誘電体膜が、一サイクル当たり、約1Åないし約10Åの厚さで、半導体基板上に形成される。
【0085】
17) 1)ないし16)のいずれかに従う方法であって、基板上に成膜されたストレス調節された誘電体膜は、約−2.0GPaないし約+1.5GPaの膜ストレスを有する。
【0086】
18) 1)ないし17)のいずれかに従う方法であって、ストレス調節された誘電体膜は窒化ケイ素膜である。
【0087】
19) 1)ないし18)のいずれかに従う方法であって、ストレス調節された誘電成膜は、少なくとも90%のステップカバレージ又はコンフォーミティを有する。
【0088】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に主要な膜構成をもち、Si−N結合を有するターゲット誘電体膜であって、プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)により、半導体基板上に主要な膜構成をもちSi−N結合を有する基準の誘電体膜のストレスタイプと反対で、引っ張り又は圧縮のストレスタイプを有するターゲット誘電体膜をPEALDにより形成する方法であって、
(i) 半導体基板が中に配置される反応空間に、窒素及び水素を含有する反応ガス並びに希ガスを導入する工程と、
(ii) 基準の誘電体膜のストレスタイプとは反対のストレスタイプを有するターゲット誘電体膜を得るために、低周波RFパワー(LRF)と高周波RFパワー(HRF)の混合のRFパワーを、基準の誘電体膜のストレスタイプが引っ張りのときは、基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を増加させることにより、又は基準の誘電体膜のストレスタイプが圧縮のときは、基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を減少させることによりセットされるLRF/HRFの比率で、反応空間に印加する工程と、
(iii) RFパワーが印加されている間、反応空間に水素を含有するシリコン前駆体をパルスの状態に導入し、このことにより半導体基板上にターゲット誘電体膜をPEALDにより形成する工程と、
を含み、セットされた比率の結果として、ターゲット誘電体膜は基準の誘電体膜のストレスタイプとは反対のストレスタイプを有する、方法。
【請求項2】
LRF/HRFの比率はターゲット誘電体膜のストレスタイプを制御する主要なパラメータである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
LRF/HRFの比率はターゲット誘電体膜のストレスタイプを制御する唯一のパラメータである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ターゲット誘電体膜は圧縮の膜ストレスを有し、工程(ii)において、LRF/HRFの比率は基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を増加させることによりセットされ、ここで増加したLRF/HRFの比率は2/10から10/10である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ターゲット誘電体膜は引っ張りの膜ストレスを有し、工程(ii)において、LRF/HRFの比率が基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を減少させることによりセットされ、ここで減少したLRF/HRFの比率は0/10ないし4/10である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
膜を形成している間、水素を含有するシリコン前駆体は、パルスの持続時間が約0.1秒ないし約1.0秒で、パルスの間の間隔が約0.5秒ないし約3秒のパルスの状態で導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
半導体基板上に主要な膜構成をもち、Si−N結合を有するターゲット誘電体膜であって、プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)により、半導体基板上に主要な膜構成をもちSi−N結合を有する基準の誘電体膜の膜ストレス値と異なる膜ストレス値を有するターゲット誘電体膜をPEALDにより形成する方法であって、
(i) 半導体基板が中に配置される反応空間に、窒素及び水素を含有する反応ガス並びに希ガスを導入する工程と、
(ii) 基準の誘電体膜のストレスタイプとは反対のストレスタイプを得るために、低周波RFパワー(LRF)と高周波RFパワー(HRF)の混合のRFパワーを、基準の誘電体膜の膜ストレス値未満の膜ストレス値を有するターゲット誘電体膜を得るために基準の誘電体膜のために使用されたLRF/HRFの比率を増加させることにより、又は基準の誘電体膜の膜ストレス値を超える膜ストレス値を得るために基準の誘電体膜に対して使用されたLRF/HRFの比率を減少させることによりセットされるLRF/HRFの比率で、反応空間に印加する工程と、
(iii) RFパワーが印加されている間、反応空間に水素を含有するシリコン前駆体をパルスの状態で導入し、このことにより半導体基板上にターゲット誘電体膜をPEALDにより形成する工程と、
を含み、LRF/HRFの比率は、ターゲット誘電体膜の膜ストレス値を基準の誘電体膜の膜ストレス値と違わせる主要なパラメータとして使用される、方法。
【請求項8】
LRF/HRFの比率はターゲット誘電体膜の膜ストレス値を違わせる唯一のパラメータである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
半導体基板上に主要な膜構成をもち、Si−N結合をそれぞれが有する複数の誘電体膜であって、引っ張りのストレス膜及び圧縮のストレス膜を含む複数の誘電体膜を、プラズマ励起原子層の成膜(PEALD)により形成する方法であって、
(i) 半導体基板が中に配置される反応空間に、窒素及び水素を含有する反応ガス並びに希ガスを導入する工程と、
(ii) 低周波RFパワー(LRF)と高周波RFパワー(HRF)の混合のRFパワーをLRF/HRFの比率で反応空間に印加する工程と、
(iii) RFパワーが印加されている間、反応空間に水素を含有するシリコン前駆体をパルスの状態で導入し、このことにより半導体基板上に引っ張りストレス膜及び圧縮ストレス膜のうちの一方をPEALDにより形成する工程と、
(iv) 成膜される膜のストレスを制御する主要なパラメータとして、LRF/HRFの比率を変更し、変更したLRF/HRFの比率で、工程(i)から工程(ii)を繰り返し、このことにより、半導体基板上に引っ張りストレス膜及び圧縮ストレス膜のうちの他方を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
LRF/HRFの比率の変更はLRF/HRFの比率を増加させることであり、ここで、引っ張りのストレスを有する膜又は圧縮のストレスを有する膜の他方は、圧縮のストレスを有する膜である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
増加したLRF/HRFの比率は2/10ないし10/10である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
LRF/HRFの比率の変更はLRF/HRFの比率を減少させることであり、引っ張りのストレスを有する膜又は圧縮のストレスを有する膜の他方は、引っ張りストレスを有する膜である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
減少したLRF/HRFの比率は0/10ないし4/10である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、成膜する膜のストレスを制御する第二のパラメータとして、工程(iv)において、水素に対する窒素の比率を変更する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
さらに、成膜する膜のストレスを制御する第二のパラメータとして、工程(iv)において、HRFの量を変更する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
水素を含有するシリコン前駆体はシリコンと水素の組合せ、シリコン、水素及び窒素の組合せ、又はシリコン、水素、炭素及び窒素の組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
反応ガスは窒素ガスと水素ガスの組合せ又はアンモニアガスと水素ガスの組合せである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
膜を形成している間、水素を含有するシリコン前駆体は、パルスの持続時間が約0.1秒ないし約1.0秒で、パルスの間の間隔が約0.5秒ないし約3秒のパルスの状態で導入される、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
反応ガス、希ガス及び水素を含有するシリコン前駆体は互いに異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
希ガスのモル流量は水素を含有するシリコンソースのモル流量より大きい、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−23718(P2011−23718A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153754(P2010−153754)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】