説明

PLL制御装置及びPLL制御方法

【課題】各種大振幅雑音、伝送路ロスの増大、雑音レベルの増大が発生するような大規模なPLCシステムに用いても、PLLの受信ダイナミックレンジ拡大、雑音耐力向上が実現でき、アナログ素子の特性のバラツキなどに影響されずに安定して動作し、広範囲な安定したジッタ特性が得られるようにする。
【解決手段】このPLL制御装置は、入力信号からタイミング位相ベクトル信号を抽出するタイミング抽出回路と、供給される制御係数に基づいて基準信号の位相及び/又は発振周波数を制御するVCXOと、抽出されたタイミング位相ベクトル信号の位相又は位相差に基づいて基準信号の位相及び/又は発振周波数を制御するための制御係数を出力する2次PLL回路102とを備えている。この2次PLL回路102は、抽出されたタイミング位相ベクトル信号について対数軸上で位相検出を行うとともに、対数軸上で制御係数を発生する制御係数発生回路111を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、データ通信用モデムのような伝送装置などにおけるPLL(Phase Locked Loop)制御装置及びPLL制御方法に関し、特に、電力線を介してデータ通信を行う電力線通信(PLC:Power Line Communication)システムに用いて最適なPLL制御装置及びPLL制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ店等の遊技店(ホール)では当然遊技者ごとにパチンコ遊技機等の遊技機が設けられ、学校では児童、生徒又は学生及び教職員ごとにパーソナルコンピュータ(パソコン)が設けられていることが多い。さらに、最近の病院には、医師や看護婦ごとにパソコンが設けられているだけでなく、病棟のベッドごとにデータ端末が設けられているものがある。
【0003】
遊技機、パソコン、データ端末等(以下総称するときは、「端末」という。)とサーバや管理装置等は、通常、専用の通信ケーブルを介して接続されるが、既存の施設に通信ケーブルを敷設するのでは、経費も時間もかかってしまう。そこで、最近では、施設に当初より設置され、端末に電力を供給する電力線を介してデータ通信を行うPLCシステムが以下に示すように提案されている。
【0004】
すなわち、従来、電力線ネットワークを介してデータをポイント・ツー・マルチポイントディジタル伝送する多重アクセス及び多重伝送方法がある。この方法では、アップストリームチャンネル及びダウンストリームチャンネルにより、電力線ネットワーク上で双方向通信する複数のユーザ装置と1つのヘッドエンド装置とが設けられている。アップストリームチャンネルでは、データは複数のユーザ装置からヘッドエンド装置に伝送され、ダウンストリームチャンネルでは、データはヘッドエンド装置から複数のユーザ装置に伝送される。
【0005】
各ユーザ装置及び各ヘッドエンド装置は、複数のユーザ装置が送信可能なデータ量を最大化し、かつ、複数のユーザ装置における遅延時間を最小化するための媒体アクセスコントローラ(MAC)を含んでいる。電力線ネットワークは、周波数分割多重及び時分割多重の少なくとも一方によりアップストリームチャンネル及びダウンストリームチャンネルに分割される。
【0006】
また、この方法では、OFDMA(直交周波数分割多重アクセス)、TDMA(時分割多重アクセス)及びCDMA(符号分割多重アクセス)のうちの少なくとも1つのアクセス方法を用いて、アップストリームチャンネルにおける複数のユーザ装置による同時アクセスが可能である。
【0007】
さらに、この方法では、搬送波ごとのビット数増大又はS/N向上により、OFDMシステムにおける各搬送波の伝送容量を増大させ、アップストリームチャンネル及びダウンストリームチャンネルの両方において伝送容量を最大化するように、各搬送波を、その時点で送信するデータを有する1つ又は複数のユーザ装置に対して動的に割り当てる基準をサポートしている。
【0008】
また、この方法では、データのタイプと送信を要求するユーザ装置とに依存してサービス品質(QoS)を調整することをサポートしている。サービス品質は、異なる瞬間における周波数応答と、複数のユーザ装置及びヘッドエンド装置の間の異なる距離とに従って適応化可能である。
【0009】
さらに、この方法では、システムの全帯域幅にわたって、複数のユーザ装置及びヘッドエンド装置によって観測されるS/Nを常に計算しかつモニタリングすることにより、個々の通信要求の間で、利用可能な帯域幅をヘッドエンド装置により動的に割り当てることをサポートしている。これにより、OFDMシステムにおけるすべての搬送波は、各瞬間における各ユーザ装置の送信の必要性と、当該ユーザ装置に対して確立されたサービス品質(QoS)パラメータと、システムの全容量を最大化する基準と、送信遅延時間を最小化する基準とに従って分配される。
【0010】
分配される伝送リソースは、OFDMAが使用される場合には1つのシンボルに係る複数の搬送波において、TDMAが使用される場合には時間的にシンボル間において、CDMAが使用される場合には複数の符号において、複数のユーザ装置間で再分配され、常に変化する電力線の品質パラメータを常にモニタリングすることにより再分配を最適化している(例えば、特許文献1参照。)。以下、この技術を第1の従来例と呼ぶ。
【0011】
ところで、複数のユーザ装置とヘッドエンド装置との間で電力線ネットワーク上でデータ通信するには、送信側と受信側とで同期をとる必要がある。そのためには、PLL制御装置が必要不可欠であるが、従来、以下に示すものがあった。すなわち、このPLL制御装置は、A/D変換器により受信信号をサンプリングした後、復調器により復調し、タイミング成分抽出回路によりタイミング成分を取り出し、第1積分回路及び第2積分回路により積分した後、電圧制御発振器を駆動して得られたサンプリング・クロックを当該A/D変換器に印加するものである。このPLL制御装置では、電圧制御発振器の入力側に直流成分検出回路を設けている。まず、第2積分回路のみを使用してタイミング引込みを行い、引き込み後、直流成分検出回路により電圧制御発振器の入力側の直流成分を検出する。次に、検出された直流成分値を用いて第1積分回路を初期化し、以後第1積分回路と該第2積分回路を使用してタイミング引込みを行う(例えば、特許文献2参照。)。以下、この技術を第2の従来例と呼ぶ。
【0012】
【特許文献1】特表2004−531944号公報
【特許文献2】特許第2078797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、前述したホール、学校、病院等の施設が大規模になるに従って、端末の台数も当然増大する。ホールでは、例えば、最大で2400台の遊技機が設置されることがある。ホールでは、複数台の遊技機をひとまとまりとして「島」と呼び、この「島」を複数個設けることにより全体のシステムを構築しており、大規模なホールでは最大63個の「島」が設けられていることが想定される。したがって、最大で2400台の端末が接続されるシステムを構築するには、63個の「島」入口それぞれに63個の中継機を設置するとともに、各中継機に最大で64台の子機をそれぞれ設置する必要がある。
【0014】
前述した電力線を介してデータ通信を行うPLCシステムでは、一般に、受信レベルが高くても雑音レベルが高い場合もあれば、逆に受信レベルが低いがS/Nが良好な場合もあり、単純には、S/Nが受信レベルに依存しない性質を有している。また、電力線には、接続機器からの雑音や既存無線局等からの飛来雑音など、各種大振幅雑音が重畳される。さらに、大規模システムでは、伝送路ロスの増大、雑音レベルの増大が発生する。このため、大規模なPLCシステム、特に、データ通信用モデム(PLCモデム)が有するPLL制御装置では、かなり広範囲の受信ダイナミックレンジと雑音耐力が要求される。
【0015】
図7は、通信線で送信レベルを意図的に順次低下させ、その時の受信側でのジッタ量を実測したものである。図7からは、受信側での雑音環境は変動雑音挿入のため、実測値に時間軸上の変動が入っているが、単純ロス増大に伴い、対数軸でジッタ量が増大していることが分かる。図7に示す特性は、送信レベルを可変にして実測したものであるが、逆に受信レベルが固定でも受信側の雑音環境が変われば、同様な現象が発生することとなる。
【0016】
また、PLL制御装置には、電圧制御型水晶発振器(VCXO)やディジタル制御水晶発振器(DCXO)など、アナログ素子が用いられているため、これらのアナログ素子の特性のバラツキなどに起因してループゲインのバラツキも発生し、ジッタ量に影響する。したがって、これらのバラツキを吸収した安定した動作が要求される。ところが、前述した第2の従来例では、受信ダイナミックレンジの拡大、雑音耐力の向上及びアナログ素子の特性のバラツキなどに影響されない安定動作という要求に十分に応えることができないという問題があった。
【0017】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、前述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができるPLL制御装置及びPLL制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した課題を解決するために、請求項1記載の発明に係るPLL制御装置は、入力信号からタイミング位相ベクトル信号を抽出するタイミング抽出回路と、供給される制御係数に基づいて基準信号の位相及び/又は発振周波数を制御する可変発振器と、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号の位相及び位相差に基づいて前記基準信号の前記位相及び/又は前記発振周波数を制御するための前記制御係数を出力する2次PLL回路とを備え、前記2次PLL回路は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号について対数軸上で位相検出を行うとともに、対数軸上で前記制御係数を発生する制御係数発生回路を有していることを特徴としている。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のPLL制御装置に係り、前記制御係数発生回路は、保護回路と、減算器と、極性判断回路と、カウンタと、変換ROMと、極性判定回路と、極性変更手段とを有し、前記保護回路は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のリアル成分の極性に基づいて、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の最大値又は絶対値を出力し、減算器は、前記変換ROMから供給される終了16進数値から前記保護回路の出力値を減算し、前記極性判断回路は、前記減算器の減算結果の極性を判断し、前記カウンタは、トリガ信号によりカウント値が初期化され、前記極性判断回路の極性判断結果が第1の値の場合にカウント値をインクリメントし、前記極性判断回路の極性判断結果が第2の値の場合にカウントを停止し、前記変換ROMは、アドレスに対応して、開始16進数値、終了16進数値及びXCNI最適制御力が対数軸上で予め記憶され、前記カウント値と対応したアドレスの終了16進数値を読み出して前記減算器に供給するとともに、前記カウンタが前記カウントを停止した際の前記カウント値と対応したアドレスの前記XCNI最適制御力を前記極性変更手段に供給し、前記極性判定回路は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性を判定し、前記極性変更手段は、前記極性判定回路が判定した極性に基づいて、前記変換ROMから供給される前記制御係数の極性を変更することを特徴としている。
【0020】
また、請求項3に記載の発明に係るPLL制御方法は、入力信号から抽出したタイミング位相ベクトル信号の位相に基づいて制御係数を出力する第1の過程と、前記制御係数に基づいて基準信号の位相及び/又は発振周波数を制御する第2の過程とを有し、前記第1の過程は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号について対数軸上で位相検出を行う第3の過程と、対数軸上で前記制御係数を発生する第4の過程とを有していることを特徴としている。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のPLL制御方法に係り、アドレスに対応して、開始16進数値、終了16進数値及びXCNI最適制御力が対数軸上で予め記憶された変換ROMを備え、前記第4の過程は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のリアル成分の極性に基づいて、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の最大値又は絶対値を出力する第5の過程と、前記変換ROMから供給される終了16進数値から前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の最大値又は絶対値を減算する第6の過程と、前記減算結果の極性を判断して極性判断結果を出力する第7の過程と、トリガ信号によりカウント値が初期化され、極性判断結果が第1の値の場合にカウント値をインクリメントし、前記極性判断結果が第2の値の場合にカウントを停止する第8の過程と、前記カウント値と対応したアドレスの終了16進数値を前記変換ROMから読み出す第9の過程と、前記カウントが停止した際の前記カウント値と対応したアドレスの前記XCNI最適制御力を前記変換ROMから読み出す第10の過程と、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性を判定して極性判定結果を出力する第11の過程と、前記極性判定結果に基づいて、前記変換ROMから供給される前記制御係数の極性を変更する第12の過程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、各種大振幅雑音が発生したり、伝送路ロスの増大、雑音レベルの増大が発生したりするような、例えば、電力線を介してデータ通信を行う大規模なPLCシステムに用いた場合でも、PLLの受信ダイナミックレンジを拡大することができるとともに、雑音耐力を向上させることができる。また、アナログ素子の特性のバラツキなどに影響されずに安定して動作し、広範囲な安定したジッタ特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るPLL制御装置を適用したPLCシステムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るPLCシステムは、最大で2400台の遊技機(端末)1が設置されるホールに適用されるものである。各端末1には、それぞれPLCモデム61(図3参照)を有する子機2がそれぞれ接続されている。各端末1は、最大で64台がひとまとまりとなって島3を構成しており、各島3には、PLCモデム(図示略)を有する1台の中継機4が設けられている。島3は最大で63個設けられるため、中継機4は、最大で63台が必要となる。
【0024】
各中継機4は、AC100Vの電力を供給するための電源ケーブル5を介して例えば、32分岐回路6及び分岐アダプタ(分岐ADP)7に接続されている。32分岐回路6は、後述するフロア入口分電盤31から供給されるAC100V単相2線又はAC100V単相3線の電圧を最大で32分岐して、電源ケーブル5及び8を介して、それぞれ中継機4、分岐ADP7及び変圧器9に供給する。分岐ADP7は、中継機4から電源ケーブル5を介して供給される信号を分岐して通信線10を介して各子機2に供給するとともに、各子機2から通信線10を介して供給される信号をまとめて電源ケーブル5を介して中継機4に供給する。変圧器9は、AC100Vの電圧をAC24Vに変換して、電源ケーブル11を介して各端末1に供給する。
【0025】
一方、当該ホールが入っている建物の、例えば、屋上には、受電設備(図示略)が設けられている。この受電設備には、受電設備内分電盤21が設けられている。受電設備内分電盤21は、変圧器22と例えば、6分岐回路23とを有している。変圧器22は、外部から供給されるAC6.6kVの電圧をAC100Vの電圧に変換して電源ケーブル24を介して6分岐回路23に供給する。6分岐回路23は、変圧器22から供給されるAC100Vの電圧を最大で6分岐して、電源ケーブル25を介してフロア入口分電盤31に供給する。
【0026】
フロア入口分電盤31は、1個の例えば、32分岐回路32と、複数個の例えば、32分岐回路33と、親機34及び34と、分岐アダプタ(分岐ADP)35とを有している。1個の32分岐回路32と、複数個の32分岐回路33とは、それぞれ独立した電源ケーブル25を介して前述した6分岐回路23からAC100Vの電力が供給されている。32分岐回路32は、電源ケーブル26を介して親機34にAC100Vの電力を供給している。この電源ケーブル26は、電源ケーブル42と接続されている。電源ケーブル42は、ホール内監視室41の壁コンセント43と接続されている。
【0027】
親機34は、PLCモデム(図示略)を有しており、ホール内監視室41から電源ケーブル42及び26を介して供給される信号及び親機34から信号線37を介して供給される信号に基づいて、各種信号処理を行う。一方、親機34もPLCモデム(図示略)を有しており、親機34から信号線37を介して供給される信号及び分岐ADP35から通信線37を介して供給される信号に基づいて、各種信号処理を行う。また、親機34は、生成した信号を通信線37を介して分岐ADP35に供給する。分岐ADP35は、親機34から通信線37を介して供給される信号を分岐して電源ケーブル38を介して各32分岐回路33に供給するとともに、各32分岐回路33から電源ケーブル38を介して供給される信号をまとめて通信線37を介して親機34に供給する。
【0028】
ホール内監視室41には、サーバ44と、ホール内LAN45と、子機46とが概略設置されている。子機46は、PLCモデム61(図3参照)を有しており、電源ケーブル47及び差し込みプラグ48を介して壁コンセント43に接続されているとともに、通信線49を介してホール内LAN45に接続されている。サーバ44は、通信線50を介してホール内LAN45と接続されている。ホール内LAN45は、通信線51、WAN52及び通信線53を介して、リモート監視センタ内に設置されたセンタ内サーバ54に接続されている。
【0029】
図2は、本実施の形態に係るPLCシステムで送受信されるマスタフレームの構成の一例を示す図である。マスタフレームは、図2に示すように、同期信号としてのビーコン信号BC1及びBC2の送受信に用いられる同期信号エリアと、データの送受信に用いられるデータエリア等とから構成されている。ビーコン信号BC1は、親機34と子機46との間及び親機34と中継機4との間で同期をとるための同期信号である。一方、ビーコン信号BC2は、中継機4と当該中継機4に属する複数台の子機2との間で同期をとるための同期信号である。
【0030】
図3は、子機2を構成するPLCモデム61の構成を示すブロック図である。PLCモデム61は、ディジタル部62と、アナログ部63と、電源部64と、送信ドライバ回路(DV)65と、トランス66と、コモンモードチョーク(CMC)67と、接続部68とから構成されている。
【0031】
ディジタル部62は、PLCメディアアクセス(PLC−MAC)制御部71と、多重化処理部72と、多重分離処理部73とから概略構成されている。PLC−MAC制御部71は、接続部68を介して外部と送受信データの授受を行うとともに、CPU等からなるコントローラ85からの指示に基づいて、時分割処理等を行い、コントローラ85からの制御データの転送やユーザデータのタイムスロット管理を実施する。多重化処理部72は、送信データを多重化して送信する。多重分離処理部73は、受信信号を分離して受信データとする。
【0032】
多重化処理部72は、スクランブラ(SCR)・和分回路74と、信号点発生部75と、逆高速フーリエ変換部(IFFT)76と、変調部(MOD)77と、D/A変換器78とから構成されている。スクランブラ(SCR)・和分回路74は、PLC−MAC制御部71からの送信データをランダム化し、送信スペクトルの安定化又は漏洩電界の安定化を実現するとともに、回線変動に耐えるべく位相和分を行う。
【0033】
信号点発生部75は、複数チャネルの送信信号点を発生するとともに、必要に応じて、ノッチの生成やスペクトル拡散等を行う。また、信号点発生部75は、同期信号であるビーコン信号BC1及びBC2を発生する。
【0034】
IFFT76は、信号点発生部75から供給される複数チャネルの送信信号点である周波数軸上のデータを、時間軸上のデータに変換する。MOD77は、IFFT76から供給される時間軸上のデータを波形整形した後、変調する。IFFT76及びMOD77は、信号点を時間軸上はナイキスト時間間隔で、かつ、周波数軸上はナイキスト周波数間隔で多重化するように構成されている。D/A変換器78は、MOD77からの変調信号をアナログ信号に変換する。
【0035】
多重分離処理部73は、A/D変換器79と、復調部(DEM)80と、高速フーリエ変換部(FFT)81と、タイミング同期部(TIM抽出&PLL)82と、信号点判定部83と、差分・デスクランブル(DSCR)回路84とから構成されている。A/D変換器79は、アナログ部63からの受信信号を14ビットのディジタル信号に変換する。DEM80は、A/D変換器79からのディジタル信号に変換された受信信号を復調してベースバンド信号とした後、不要帯域を除去する。
【0036】
FFT81は、DEM80からの信号の時間軸上のデータを周波数軸上のデータに変換する。信号点判定部83は、FFT81からの周波数軸上のデータについて受信信号点を判定する。タイミング同期部82は、FFT81からの個々の周波数軸上のデータに基づいて、同期信号であるビーコン信号BC1及びBC2について処理を行い、ビーコン信号BC1及びBC2を検出する。そして、タイミング同期部82は、電圧制御型水晶発振器(VCXO)94を制御して、所望の同期を確立する。
【0037】
差分・DSCR回路84は、受信信号点が判定された信号の位相差分をとった後、ランダム化されていた状態を元に戻すことにより、送信データを再生する。この送信データは、PLC−MAC制御部71及び接続部68を介して端末(図示略)へ転送される。
【0038】
アナログ部63は、第1ローパスフィルタ(LPF)91と、ハイパスフィルタ及びゲインスイッチ部(HPF&GSW)92と、第2LPF93と、VCXO94とから構成されている。第1LPF91は、多重化処理部72から供給されるアナログ信号上の不要帯域を除去する。HPF&GSW92は、CMC67及びトランス66とを介して入力された受信信号より不要な低域成分を除去した後、所定レベルまで増幅する。第2LPF93は、HPF&GSW92からの受信信号の高域の不要帯域成分を除去する。VCXO94は、タイミング同期部82を構成するD/A変換器103(図4参照)から供給されるアナログ信号(電圧)に基づいて、所定の発振周波数の基準クロックを生成してA/D変換器79に供給する。
【0039】
接続部68は、端末1側からインターフェイス86を介して入出力される信号について、フィルタリング処理、フラグメント処理、再送処理、暗号化処理及びスイッチング処理等を行うPLCスイッチ部(PLC−SW)87を有している。
【0040】
電源部64は、例えば、DC電圧5Vの動作電圧を各部に供給する電源出力部95と、スイッチング電源で構成された電源出力部95のスイッチング雑音の漏洩を抑制する電源フィルタ96とを有している。送信ドライバ回路65は、第1LPF91から供給される信号を増幅した後、トランス66及びCMC67を介してAC100Vの屋内配電線側に送信する。
【0041】
また、図4は、本発明の実施の形態に係るPLL制御装置の構成を示すブロック図である。図4において、図3の各部に対応する部分には同一の符号を付ける。A/D変換器79は、アナログ部63からの受信信号を、例えば、14ビットのディジタル信号に変換する。DEM80は、A/D変換器79からのディジタル信号を復調してベースバンド信号とした後、不要帯域を除去する。FFT81は、DEM80からの信号の時間軸上のデータを周波数軸上のデータに変換する。
【0042】
タイミング同期部82は、FFT81からの個々の周波数軸上のデータに基づいて、同期信号であるビーコン信号BC1及びBC2について処理を行い、ビーコン信号BC1及びBC2を検出する。また、タイミング同期部82は、VCXO94を制御して、所望の同期を確立する。VCXO94は、タイミング同期部82を構成するD/A変換器103から供給されるアナログのPLL制御信号(電圧)に基づいて位相/周波数を制御した基準クロックをA/D変換器79に供給する。
【0043】
タイミング同期部82は、タイミング成分(TIM)抽出回路101と、2次PLL回路102と、D/A変換器103とから構成されている。TIM抽出回路101は、FFT81からの周波数軸上のデータよりタイミング成分であるTIM位相ベクトル信号(半径が1.0に正規化された信号)を抽出する。TIM位相ベクトル信号は、例えば、16ビットのリアル成分及びイマジナリ成分を有している。
【0044】
2次PLL回路102は、抽出されたTIM位相ベクトル信号の位相及び/又は周波数に応じて自身のクロック信号の位相及び/又は周波数を制御するディジタルのPLL制御信号を出力する。D/A変換器103は、2次PLL回路102からのディジタルのPLL制御信号をアナログのPLL制御信号に変換し、VCXO94に供給する。
【0045】
ここで、2次PLL回路102を用いる理由について説明する。受信ダイナミックレンジを大きく確保するためには、その分受信側に高精度が要求される。この高精度の要求は、データ伝送路に対してだけでなく、同期系に対しても同様である。また、雑音耐力も要求される。この点、1次PLL回路は高速で引き込むことが可能であるが、精度が十分ではない。また、1次PLL回路は広帯域であるため、雑音に弱いという問題がある。結果として、1次PLL回路では受信ダイナミックレンジの確保が困難となり、安定したデータ伝送が実現できないということになる。そこで、本実施の形態では、これらの問題を解決するために、2次PLL回路102を用いている。なお、TIM抽出回路101の詳細については、例えば、先に特許文献2として説明した特許第2078797号公報を参照されたい。
【0046】
図5は、本発明の特徴である2次PLL回路102の構成を示すブロック図である。2次PLL回路102は、制御係数発生回路111と、ループゲイン制御回路112とから構成されている。本発明は、PLLの受信ダイナミックレンジ拡大、雑音耐力向上及び安定動作という課題を、制御係数発生回路111と、ループゲイン制御回路112を構成する第1のレベル調整回路131及び第2のレベル調整回路132とにより解決する。
【0047】
受信ダイナミックレンジの拡大は、対数軸上での処理の導入が必須である。そこで、まず、制御係数発生回路111により、対数軸上で広範囲な位相検出を行うとともに、対数軸上で制御係数を発生する。次に、この制御係数に基づいて、第1のレベル調整回路131において6dB単位での対数軸上におけるレベル調整を行うとともに、第2のレベル調整回路132において±6dB程度の小規模なレベルの微調整を行うことにより、制御係数を所定のレベルに自動調整する。これにより、広範囲のレベル調整が可能となる。
【0048】
また、VCXO94のゲインが大きい場合には、PLLのループゲインが増大し、雑音帯域が増えるため、ジッタが増大し、制御係数の範囲も大きくなる。これに対し、VCXO94のゲインが小さい場合には、PLLのループゲインが減少し、雑音帯域が狭くなり、ジッタが減少し、制御係数の範囲も小さくなる。したがって、安定した動作を行うPLLを実現するためには、これらの制御係数のレベルを一定レベルに自動制御する手段が必要である。
【0049】
そこで、VCXO94のゲインに左右されず、受信信号のS/Nにも柔軟に対応可能とするため、前述した、制御係数発生回路111と、ループゲイン制御回路112を構成する第1のレベル調整回路及び第2のレベル調整回路とを設け、制御係数の平均レベルがある一定値になるように自動制御することにより、前述した、PLLの受信ダイナミックレンジの拡大及び雑音耐力向上及び安定動作という課題を解決する。
【0050】
制御係数発生回路111は、対数軸上での広範囲な位相検出を行うとともに、対数軸上におけるビット単位でのPLL制御を行うための制御係数を発生するものである。この制御係数発生回路111は、極性判定回路121と、乗算器(極性変更手段)122と、対数軸検出・制御回路123とから構成されている。
【0051】
極性判定回路121は、図4に示すTIM抽出回路101から供給されるTIM位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性を判定して、判定結果である正の極性「+1.0」又は負の極性「−1.0」のいずれかを出力する。乗算器122は、対数軸検出・制御回路123を構成する変換ROM126から供給されるXCNI最適制御力に、極性判定回路121の判定結果(正の極性「+1.0」又は負の極性「−1.0」)を乗算し、乗算結果を、正、負に変化する、対数軸で対数判定された対数制御用の制御係数としてループゲイン制御回路112に供給する。
【0052】
対数軸検出・制御回路123は、保護回路124と、減算器125と、変換ROM126と、カウンタ127と、極性判断回路128とから構成されている。保護回路124は、図4に示すTIM抽出回路101から供給されるTIM位相ベクトル信号の位相面を保護する。すなわち、保護回路124は、TIM位相ベクトル信号のリアル成分が負の場合には、位相が±90度を越えていることとなるため、最大値を示す「1.0」=[4000]を出力し、TIM位相ベクトル信号のリアル成分が正の場合には、TIM位相ベクトル信号のイマジナリ成分の絶対値を出力する。この結果、保護回路124の出力信号は、「0」〜「1.0」のプラスの値のみとなる。このように、保護回路124の出力信号をプラスの値に制限することにより、後段における位相判定が容易なもの(1回で可能)となる。
【0053】
この実施の形態では、[XXXX]はHEX信号(16進)(2の補数表現)を示すものとし、「XXXX」は通常のDEC信号、小数点信号を示すものとする。例えば、前述したように、[4000]は「1.00」を示し、[C000]は「−1.00」を示すこととなる。
【0054】
カウンタ127は、外部から供給されるマスタフレームのトリガ信号によりそのカウント値が「0」に初期化され、当該カウント値「0」を出力し、変換ROM126に供給する。また、カウンタ127は、極性判断回路128から供給される極性判定結果が「1」(負)である場合には、カウントイネイブルと判断し、カウント値をインクリメントする。一方、極性判断回路128から供給される極性判定結果が「0」(正)である場合には、カウンタ127は、カウントディスエイブルと判断し、カウントを停止する。
【0055】
変換ROM126には、アドレス「0」〜「15」に対応して、例えば、図6に示す内容が記憶されている。まず、アドレスは、「0」〜「15」のリニアである。一方、終了値の角度範囲は、非線形(対数リニア)に近い値となっている。開始HEX値及び終了HEX値の範囲が角度範囲の開始と終了と一致している。すなわち、変換ROM126から読み出される値は、HEX値で取り出したタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分を角度θに変換したものである。
【0056】
乗算器122に供給される制御力は、PLLのループゲインが増大するほど、雑音帯域が増大し、雑音に対して弱くなる。PLLのループゲインが1.0を超えると、発振するので、PLLは安定系ではなくなる。これに対し、PLLのループゲインが小さくなりすぎると、雑音帯域が狭くなり、系としては安定するが、追従速度が遅くなるとともに、あまりに小さい値では16進数表示が困難となる。以上説明した理由から制御力の最適値を決定しているのである。
【0057】
変換ROM126は、カウンタ127から供給されたカウント値に対応したアドレスから終了HEX値を読み出して減算器125に供給する。また、変換ROM126は、カウンタ127がカウントを停止した場合には、その際のカウント値に対応したアドレス領域にTIM位相ベクトル信号の位相が存在するとして、このアドレス領域におけるXCNI最適制御力(図6参照)を乗算器122に供給する。
【0058】
減算器125は、変換ROM126から供給される、アドレス「0」〜「15」の上限値である終了HEX値(図6参照)から、保護回路124の出力信号(「0」〜「1.0」)を減算する。極性判断回路128は、減算器125の出力信号、すなわち、減算結果が負である場合には、極性判定結果として「1」(負)をカウンタ127に供給する。一方、減算器125の減算結果が正である場合には、極性判断回路128は、極性判定結果として「0」(正)をカウンタ127に供給する。
【0059】
ループゲイン制御回路112は、制御係数発生回路111から供給される制御係数の時間平均を一定に保持するものである。このループゲイン制御回路112を設けることにより、VCXO94全体のゲインが一定に保持され、極めて安定したPLL制御装置を実現することが可能となる。
【0060】
ループゲイン制御回路112は、第1のレベル調整回路131と、第2のレベル調整回路132と、パワー(PWR)算出回路133と、減算器134と、極性判定回路135とから構成されている。第1のレベル調整回路131は、制御係数発生回路111から供給される制御係数について、6dB単位での対数軸上におけるレベル調整を行う(ビットセレクタで行う)。第2のレベル調整回路132は、第1のレベル調整回路131の出力信号について、±6dB程度の小規模なレベルの微調整を行った後、最終的な制御係数、すなわち、PLL制御信号として図4に示すD/A変換器103に供給する。
【0061】
パワー(PWR)算出回路133は、D/A変換器103に供給される制御係数のレベルを一定レベルに保持するために、D/A変換器103に供給される制御係数の絶対値又は二乗値PWRを算出する。減算器134は、予め設定された基準値信号REFよりパワー(PWR)算出回路133の出力信号を減算する。極性判定回路135は、減算器134の出力信号の極性を判定して、判定結果である正の極性「+LSB」又は負の極性「−LSB」のいずれかを制御信号として出力する。極性判定回路135の判定結果は、正の極性「+LSB」又は負の極性「−LSB」に限定されることなく、この値を変更することにより、第2のレベル調整回路132の追従速度等を変更することができる。
【0062】
第1のレベル調整回路131は、乗算器136と、対数軸制御回路(第2の積分回路)137とから構成されている。乗算器136は、制御係数発生回路111から供給される制御係数と、対数軸制御回路(第2の積分回路)137から供給される制御信号とを乗算する。なお、乗算器136に換えて、ビットセレクタを設けても良い。
【0063】
対数軸制御回路(第2の積分回路)137は、遅延回路141と、判断回路142と、加算器143とから構成されている。遅延回路141は、判断回路142から供給される制御信号を1サンプル時間分(1マスタフレーム分)遅延して出力する。判断回路142は、加算器143から供給される、乗算器136に供給すべき最終的な制御信号に上限又は下限の制限を加えるとともに、最終的な制御信号がオーバーフローの上限状態又は下限状態となった場合には、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139を構成する判断回路145へフィードバックし、ハンチング(上下動の繰り返し)の発生を防止する。加算器143は、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139から供給される桁上げ又は桁下げの制御信号「+LSB」又は「−LSB」と、遅延回路141の出力信号を加算して判断回路142に供給する。
【0064】
第2のレベル調整回路132は、乗算器138と、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139とから構成されている。乗算器138は、第1のレベル調整回路131を構成する乗算器136から供給される信号と、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139から供給される制御信号とを乗算する。
【0065】
リニア軸制御回路(第1の積分回路)139は、遅延回路144と、判断回路145と、加算器146とから構成されている。遅延回路144は、判断回路145から供給される制御信号(積分値)を1サンプル時間分(1マスタフレーム分)遅延して出力する。判断回路145は、加算器146から供給される加算結果が、+6dB又は−6dBのいずれかを超えた場合には、桁上げ又は桁下げのいずれかが必要であると判断し、桁上げ又は桁下げの制御信号「+LSB」又は「−LSB」を対数軸制御回路(第2の積分回路)137に供給するとともに、1サンプル時間分(1マスタフレーム分)前の自己の積分値より桁上げ6dB分又は桁下げ6dB分を加算又は減算し補正する。また、判断回路145は、対数軸制御回路(第2の積分回路)137からの制御信号が正負の上限値又は下限値でオーバーフローした場合には、ハンチングが発生しないように、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139からの制御信号の上限値又は下限値でオーバーフローするように保護回路が設けられている。
【0066】
以下、前述した2次PLL回路102の動作についてさらに詳細に説明する。
まず、図4に示すTIM抽出回路101から供給されたTIM位相ベクトル信号(半径が1.0に正規化された信号)は、図5に示す保護回路124において、位相面が保護される。すなわち、TIM位相ベクトル信号のリアル成分が負の場合には、位相が±90度を越えていることとなるため、最大値を示す「1.0」=[4000]が保護回路124から出力され、TIM位相ベクトル信号のリアル成分が正の場合には、TIM位相ベクトル信号のイマジナリ成分の絶対値が保護回路124から出力される。保護回路124の出力は、減算器125に供給される。
【0067】
一方、外部から供給されるマスタフレームのトリガ信号がカウンタ127に入力される。このマスタフレームのトリガ信号によりカウンタ127のカウント値が「0」に初期化され、このカウント値「0」を変換ROM126に供給する。カウント値「0」がアドレスとして供給された変換ROM126からは、終了HEX値[0001](図6参照)が読み出され、減算器125に供給される。
【0068】
ここで、仮に、保護回路124の出力が[0008]であるとすると、減算器125の出力は、[0001]−[0008]=−[0007]、すなわち、負となる。これは、TIM位相ベクトル信号の位相が、変換ROM126のアドレス「0」の上限値より上にあることを示している。したがって、極性判断回路128からは、極性判定結果として「1」(負)がカウンタ127に供給される。
【0069】
極性判定結果「1」(負)が供給されると、カウンタ127がカウントイネイブルとなり、カウント値をインクリメントし、新たなカウント値「1」を変換ROM126に供給する。カウント値「1」がアドレスとして供給された変換ROM126からは、終了HEX値[0003](図6参照)が読み出され、減算器125に供給される。保護回路124の出力は[0008]のままであるので、減算器125の出力は、[0003]−[0008]=−[0005]、すなわち、負のままである。したがって、極性判断回路128からは、極性判定結果として「1」(負)がカウンタ127に再び供給される。
【0070】
極性判定結果「1」(負)が再び供給されると、カウンタ127がいまだカウントイネイブルであると判断し、カウント値をインクリメントし、新たなカウント値「2」を変換ROM126に供給する。カウント値「2」がアドレスとして供給された変換ROM126からは、終了HEX値[0005](図6参照)が読み出され、減算器125に供給される。保護回路124の出力は[0008]のままであるので、減算器125の出力は、[0005]−[0008]=−[0003]、すなわち、負のままである。したがって、極性判断回路128からは、極性判定結果として「1」(負)がカウンタ127に三度供給される。
【0071】
極性判定結果「1」(負)が三度供給されると、カウンタ127がいまだカウントイネイブルであると判断し、カウント値をインクリメントし、新たなカウント値「3」を変換ROM126に供給する。カウント値「3」がアドレスとして供給された変換ROM126からは、終了HEX値[000B](図6参照)が読み出され、減算器125に供給される。保護回路124の出力は[0008]のままであるので、減算器125の出力は、[000B]−[0008]=[0003]、すなわち、正となる。したがって、極性判断回路128からは、極性判定結果として「0」(正)がカウンタ127に初めて供給される。
【0072】
極性判定結果「0」(正)が初めて供給されると、カウンタ127がカウントディスエイブルであると判断し、カウント値「3」でカウントを停止する。これにより、対数軸検出・制御回路123は、TIM位相ベクトル信号の位相が、変換ROM126のアドレス「3」の領域、すなわち、開始HEX値[0006]〜終了HEX値[000B]の間に存在すると判断し、この領域に対応したXCNI最適制御力[0018]を変換ROM126から出力し、乗算器122に供給する。
【0073】
これ以降、時間軸上でマスタフレームごとに異なったTIM位相ベクトル信号がTIM抽出回路101から供給されるため、前述した処理と同様の処理が行われ、最終的にTIM位相ベクトル信号の位相に合致したXCNI最適制御力が対数軸検出・制御回路123から出力されることとなる。TIM位相ベクトル信号の位相のずれが最悪な場合でも、変換ROM126のアドレス「15」まででカウンタ127の判定が完了するため、最悪でも16サイクルの処理により対数軸上での位相判定が完了し、極めて短時間での判定が可能となる。
【0074】
なお、前述したXCNI最適制御力は常に正の値をとるため、TIM位相ベクトル信号のイマジナリ成分が負の場合には、これに対応して、XCNI最適制御力も負の値にする必要がある。そこで、まず、極性判定回路121において、TIM位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性を判定して、判定結果である正の極性「+1.0」又は負の極性「−1.0」のいずれかを出力する。次に、乗算器122において、XCNI最適制御力に、極性判定回路121の判定結果(正の極性「+1.0」又は負の極性「−1.0」)を乗算し、乗算結果を、正、負に変化する対数制御用の制御係数としてループゲイン制御回路112に供給する。
【0075】
なお、変換ROM126のアドレス「0」〜「15」であるが、図6に示すように、細部範囲が対数軸上で拡大されているため、広範囲な位相面を少ない閾値で検出可能となっている。また、具体的な閾値が変換ROM126の記憶内容だけで決定されるため、非線形な制御係数を発生させることも容易であり、極めて簡単な構成で広範囲なXCNI最適制御力を発生させることができる。例えば、ある一定以上の位相領域では強制エリアとして、引き込み速度を速くしたり遅くしたりすることも可能である。
【0076】
次に、制御係数発生回路111から供給される制御係数は、第1のレベル調整回路131において6dB単位での対数軸上におけるレベル調整が行われ、第2のレベル調整回路132において±6dB程度の小規模なレベルの微調整が行われた後、最終的な制御係数、すなわち、PLL制御信号として図4に示すD/A変換器103に供給される。
【0077】
この制御係数は、D/A変換器103に供給される制御係数のレベルを一定レベルに保持するために、PWR算出回路133において、D/A変換器103に供給される制御係数の絶対値又は二乗値PWRが算出される。次に、PWR算出回路133の出力信号は、減算器134において、予め設定された基準値信号REFより減算された後、極性判定回路135において極性が判定され、判定結果である正の極性「+LSB」又は負の極性「−LSB」のいずれかが制御信号として出力され、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139に供給される。
【0078】
次に、極性判定回路135から出力された制御信号は、加算器146において、遅延回路144で1サンプル時間分(1マスタフレーム分)遅延された過去の制御信号と加算された後、判断回路145を経由して、遅延回路144に供給され、再び蓄積される。判断回路145では、加算器146の加算結果が+6dB又は−6dBのいずれかを超えた場合には、桁上げ又は桁下げのいずれかが必要であると判断され、桁上げ又は桁下げの制御信号「+LSB」又は「−LSB」が対数軸制御回路(第2の積分回路)137に供給される。また、判断回路145では、1サンプル時間分(1マスタフレーム分)前の自己の積分値より桁上げ6dB分又は桁下げ6dB分が加算又は減算され補正される。さらに、判断回路145では、対数軸制御回路(第2の積分回路)137からの制御信号が正負の上限値又は下限値でオーバーフローした場合には、ハンチングが発生しないように、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139からの制御信号の上限値又は下限値でオーバーフローするように保護回路が設けられている。
【0079】
一方、対数軸制御回路(第2の積分回路)137では、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139から供給された桁上げ又は桁下げの制御信号「+LSB」又は「−LSB」が、加算器143において、遅延回路141で1サンプル時間分(1マスタフレーム分)遅延された過去の制御信号と加算された後、判断回路142を経由して、遅延回路141に供給される。判断回路142では、加算器143から供給される、乗算器136に供給すべき最終的な制御信号に上限又は下限の制限が加えられるとともに、最終的な制御信号がオーバーフローの上限状態又は下限状態となった場合には、リニア軸制御回路(第1の積分回路)139を構成する判断回路145へフィードバックされ、ハンチング(上下動の繰り返し)の発生が防止される。
【0080】
このように、本実施の形態によれば、図5に示す制御係数発生回路111及びループゲイン制御回路112を設けているので、対数軸上で広範囲な位相検出を行うことができるとともに、対数軸上で制御係数所定のレベルで自動調整することができ、これにより広範囲のレベル調整が可能となる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、制御係数発生回路111から出力される制御係数自体の時間平均を一定に保持するための広範囲なループゲイン制御回路112を設けているので、広い受信ダイナミックレンジ及び雑音環境下での安定したPLL制御を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、対数軸上で位相検出及び制御係数発生を行う回路と、対数軸上のデータが記憶された変換ROMを設けているので、極めて簡単な回路で広範囲な位相検出及び制御係数発生を行うことができる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、6dB単位での対数軸上におけるレベル調整を行う第1のレベル調整回路131と、±6dB程度の小規模なレベルの微調整を行う第2のレベル調整回路132とを設けているので、広範囲なループゲイン制御を実現することができるとともに、雑音環境下での安定したPLL動作を実現することができる。
【0083】
したがって、本実施の形態によれば、各種大振幅雑音が発生したり、伝送路ロスの増大、雑音レベルの増大が発生したりするような、例えば、電力線を介してデータ通信を行う大規模なPLCシステムに用いた場合でも、PLLの受信ダイナミックレンジを拡大することができるとともに、雑音耐力を向上させることができる。また、アナログ素子の特性のバラツキなどに影響されずに安定して動作し、図7に示した広範囲な安定したジッタ特性を得ることができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述した実施の形態では、VCXO94を設ける例を示したが、これに限定されず、VCXO94に換えて、DCXOを設けても良い。VCXO94及びDCXOの両方を含む概念として、「可変発振器」を挙げることができる。
【0085】
また、上述した実施の形態では、子機2を構成するPLCモデム61の構成のみについて説明した。中継機4、親機34及び34並びに子機46を構成するPLCモデムの構成は、接続部68の構成以外は、前述したPLC61の構成と異なることはない。ただし、各PLCモデムが取り扱う信号、データや実行されるプログラム等が異なっている。
【0086】
また、上述した実施の形態では、乗算器122により変換ROM126からのXCNI最適制御力と極性判定回路121の判定結果を乗算して、乗算結果を制御係数としてループゲイン制御回路112に供給する例を示したが、これに限定されない。例えば、乗算器122に換えてセレクタを設けるとともに、変換ROM126にXCNI最適制御力の正の値の他、XCNI最適制御力の負の値をも予め記憶しておき、TIM位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性が正又は負に基づいて、セレクタがXCNI最適制御力の正の値又は負の値のいずれかを選択するように構成しても良い。
【0087】
また、上述した実施の形態では、乗算器136により乗算器122の乗算結果と対数軸制御回路(第2の積分回路)137から供給される制御信号とを乗算する例を示したが、これに限定されない。例えば、乗算器136に換えてビットセレクタを設けても良い。
【0088】
また、上述した実施の形態では、本発明をPLCシステムに適用する例を示したが、これに限定されず、本発明は、例えば、ロボット制御など、フィードバック制御装置を必要とする各種の制御に幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に係るPLL制御装置を適用したPLCシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るPLCシステムで送受信されるマスタフレームの構成の一例を示す図である。
【図3】子機を構成するPLCモデムの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るPLL制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図4に示すPLL制御装置を構成する2次PLL回路の構成の一例を示す図である。
【図6】図5に示す2次PLL回路を構成する変換ROMの内容の一例を示す図である。
【図7】単純ロス時のジッタ特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1…遊技機(端末)、2,46…子機、3…島、4…中継機、5,8,11,24,25,26,38,42,47…電源ケーブル、6,32,33…32分岐回路、7,35…分岐アダプタ(分岐ADP)、9,22…変圧器、10,37,37,49,50,51,53…通信線、21…受電設備内分電盤、23…6分岐回路、31…フロア入口分電盤、34,34…親機、41…ホール内監視室、43…壁コンセント、44…サーバ、45…ホール内LAN、48…差し込みプラグ、52…WAN、54…センタ内サーバ、61…PLCモデム、62…ディジタル部、63…アナログ部、64…電源部、65…送信ドライバ回路(DV)、66…トランス、67…コモンモードチョーク(CMC)、68…接続部、71…PLCメディアアクセス(PLC−MAC)制御部、72…多重化処理部、73…多重分離処理部、74…スクランブラ(SCR)・和分回路、75…信号点発生部、76…逆高速フーリエ変換部(IFFT)、77…変調部(MOD)、78,103…D/A変換器、79…A/D変換器、80…復調部(DEM)、81…高速フーリエ変換部(FFT)、82…タイミング同期部(TIM抽出&PLL)、83…信号点判定部、84…差分・デスクランブル(DSCR)回路、85…コントローラ(CPU)、86…インターフェイス、87…PLCスイッチ部(PLC−SW)、91…第1ローパスフィルタ(LPF)、92…ハイパスフィルタ及びゲインスイッチ部(HPF&GSW)、93…第2LPF、94…電圧制御型水晶発振器(VCXO)、95…電源出力部、96…電源フィルタ、101…タイミング抽出回路、102…2次PLL回路、111…制御係数発生回路、112…ループゲイン制御回路、121…極性判定回路、122…乗算器(極性変更手段)、123…対数軸検出・制御回路、124…保護回路、125,134…加算器、126…変換ROM、127…カウンタ、128極性判断回路、131…第1のレベル調整回路、132…第2のレベル調整回路、133…パワー(PWR)算出回路、135…極性判定回路、136,138…乗算器、137…対数軸制御回路、139…リニア軸制御回路、141,144…遅延回路、142,145…判断回路、143,146…加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号からタイミング位相ベクトル信号を抽出するタイミング抽出回路と、
供給される制御係数に基づいて基準信号の位相及び/又は発振周波数を制御する可変発振器と、
前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号の位相及び位相差に基づいて前記基準信号の前記位相及び/又は前記発振周波数を制御するための前記制御係数を出力する2次PLL回路とを備え、
前記2次PLL回路は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号について対数軸上で位相検出を行うとともに、対数軸上で前記制御係数を発生する制御係数発生回路を有していることを特徴とするPLL制御装置。
【請求項2】
前記制御係数発生回路は、
保護回路と、減算器と、極性判断回路と、カウンタと、変換ROMと、極性判定回路と、極性変更手段とを有し、
前記保護回路は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のリアル成分の極性に基づいて、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の最大値又は絶対値を出力し、
減算器は、前記変換ROMから供給される終了16進数値から前記保護回路の出力値を減算し、
前記極性判断回路は、前記減算器の減算結果の極性を判断し、
前記カウンタは、トリガ信号によりカウント値が初期化され、前記極性判断回路の極性判断結果が第1の値の場合にカウント値をインクリメントし、前記極性判断回路の極性判断結果が第2の値の場合にカウントを停止し、
前記変換ROMは、アドレスに対応して、開始16進数値、終了16進数値及びXCNI最適制御力が対数軸上で予め記憶され、前記カウント値と対応したアドレスの終了16進数値を読み出して前記減算器に供給するとともに、前記カウンタが前記カウントを停止した際の前記カウント値と対応したアドレスの前記XCNI最適制御力を前記極性変更手段に供給し、
前記極性判定回路は、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性を判定し、
前記極性変更手段は、前記極性判定回路が判定した極性に基づいて、前記変換ROMから供給される前記制御係数の極性を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のPLL制御装置。
【請求項3】
入力信号から抽出したタイミング位相ベクトル信号の位相に基づいて制御係数を出力する第1の過程と、
前記制御係数に基づいて基準信号の位相及び/又は発振周波数を制御する第2の過程とを有し、
前記第1の過程は、
前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号について対数軸上で位相検出を行う第3の過程と、
対数軸上で前記制御係数を発生する第4の過程とを有していることを特徴とするPLL制御方法。
【請求項4】
アドレスに対応して、開始16進数値、終了16進数値及びXCNI最適制御力が対数軸上で予め記憶された変換ROMを備え、
前記第4の過程は、
前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のリアル成分の極性に基づいて、前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の最大値又は絶対値を出力する第5の過程と、
前記変換ROMから供給される終了16進数値から前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の最大値又は絶対値を減算する第6の過程と、
前記減算結果の極性を判断して極性判断結果を出力する第7の過程と、
トリガ信号によりカウント値が初期化され、極性判断結果が第1の値の場合にカウント値をインクリメントし、前記極性判断結果が第2の値の場合にカウントを停止する第8の過程と、
前記カウント値と対応したアドレスの終了16進数値を前記変換ROMから読み出す第9の過程と、
前記カウントが停止した際の前記カウント値と対応したアドレスの前記XCNI最適制御力を前記変換ROMから読み出す第10の過程と、
前記抽出されたタイミング位相ベクトル信号のイマジナリ成分の極性を判定して極性判定結果を出力する第11の過程と、
前記極性判定結果に基づいて、前記変換ROMから供給される前記制御係数の極性を変更する第12の過程と
を有することを特徴とする請求項3に記載のPLL制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−10775(P2010−10775A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164574(P2008−164574)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】