説明

PLL回路

【課題】 複数種類の異なった記録モードで記録するための記録信号が入力され、入力信号に含まれる雑音成分を取り除いた純度の高い信号を出力するPLL回路を実現する。
【解決手段】 入力信号を1/Lにして第1分周器41から第1周波数信号を出力し、入力信号に対応するマスタクロック信号を発振器46aで発振し、マスタクロック信号の周波数を1/Mにして第2周波数信号を第2分周器52から出力し、第1周波数信号と第2周波数信号との位相差信号を位相比較器43から出力し、第1周波数信号と第2周波数信号とが一致しているか否かをロック検出器44で検出し、一致しない場合には第1分周器のL及び第2分周器のMを可変させ、一致した場合にはL及びMを固定させる制御信号を制御回路48から出力し、マスタクロック信号を1/Nにして真の信号成分を第3分周器から出力するようにしたPLL回路を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の周波数をマスタークロックとし、所定の媒体に記録するための記録信号を出力する記録装置に接続され、その記録信号に含まれる雑音を取り除いた記録信号を生成するために用いるPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近になり、CD−RW、DVD−RWなど記録可能な高密度記録媒体や、それらの記録媒体に記録する記録装置が開発され、市場導入されている。その記録装置は所定のマスタークロックで発振するマスター周波数を基にして、媒体規格に合致した周波数関係及び時間関係の信号として生成される記録信号を媒体に記録することにより、記録媒体は他の再生装置との間で互換性を有して再生できるようになされている。
一方、媒体に記録される信号は周波数変動、いわゆるジッター成分を有する記録信号を記録するよりはジッター成分のない記録信号を媒体に記録する方が、より高品質で記録されることになる。記録装置によっては通常の使用では問題とされない程度の周波数変動や雑音を含んだ信号を出力する装置がある。高品質な音声や映像信号を媒体に記録するためには、記録信号に含まれるジッターや雑音成分を可能な限り除去した記録信号を生成し、媒体に記録することが好ましい。
【0003】
信号に含まれるジッターや雑音成分を除去した信号を生成する回路としてPLL(位相同期回路)がある。位相同期して発振する電圧制御発振器の周波数を安定させるようにループフィルタの特性を設定し、入力信号に位相同期したジッター成分の少ない出力信号を得る。記録装置から出力される信号をFIFO回路に入力し、FIFO回路の動作クロックをPLLから出力されるジッター成分のないクロック信号を用いて駆動することにより、記録信号に含まれるジッター成分を除去した記録信号を生成することができる。
一方、記録装置から出力される記録信号は、例えば記録媒体への記録速度が高い場合には周波数が高くなる。記録装置の動作モードにより異なった周波数の記録信号が出力される。動作モードとしては、例えばCD−RWの場合では1、2、4、8、16倍速など多くの記録モードを有すると一方、DVD−RWに対しても1、2、4倍速など複数の記録モードを有している。PLLは、それらの複数の記録モードで出力される広い周波数範囲の入力信号に対してジッター成分を含まない出力信号を短時間で生成して出力する必要がある。
【0004】
特許文献1には、短時間でクロック信号を同期させることができる位相同期回路の構成が開示されている。第1の分周器は基準クロックを分周して分周クロックを出力する。第2の分周器は電圧制御水晶発振器のクロック信号を分周して分周クロックを出力する。位相引き寄せ動作時、シフトレジスタは、分周クロックと周波数が等しく位相の異なる複数の分周クロックを発生する。クロックセレクタは、シフトレジスタの複数の分周クロックの中から、分周クロックの位相に最も近いクロックを選択して、電圧制御水晶発振器のクロック信号の位相を基準クロックの位相に引き寄せる。この処理を複数段繰り返すことによって、短時間でクロック信号の位相を引き寄せることができる位相同期回路が開示されている。
【特許文献1】特開平9−261044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている位相同期回路では複数の周波数レンジで入力される信号のそれぞれに対して位相同期した信号を生成する動作は想定されてなく、例えばマスタークロック周波数がお互いに簡単な整数比の関係になく、且つそれぞれの記録モードの異なりにより、異なったレンジの周波数で出力される信号の全てに対してジッター成分を含まない周波数の信号を生成する位相同期回路として実現することはできていない。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、お互いに簡単な整数比関係にない複数周波数のマスタークロックが用いられて生成され、且つそれぞれが複数種類の異なった記録モードで媒体に記録するための複数の記録信号が入力され、それらの入力信号から、入力信号に含まれる雑音成分を取り除いた純度の高い位相同期された信号を発振させて出力可能なPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明における第1の発明は、所定の周波数の入力信号から雑音信号を除去して、真の信号成分のみを位相同期して取り出すPLL回路において、前記入力信号の所定の周波数を1/L(L:正の数)にして第1周波数信号を出力する第1分周器と、前記入力信号に対応するマスタクロック信号を基準として所定の範囲内の周波数で発振する発振器と、前記発振器で発振した前記マスタクロック信号の周波数を1/M(M:正の数)にして第2周波数信号を出力する第2分周器と、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号との位相を比較して、位相差信号を出力する位相比較器と、前記位相差信号から低域周波数成分を得て前記発振器に供給し、前記発振器の発振周波数を可変する信号を出力する低域通過フィルタと、前記位相差信号を基に前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しているか否かを検出するロック検出器と、前記ロック検出器で前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しないとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを可変させる制御信号を出力し、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致したとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを固定させる制御信号を出力する制御回路と、前記一致したことを示す制御信号に基づいて、前記マスタクロック信号を1/N(N:正の数)にして前記真の信号成分を出力する第3分周器と、を備えたことを特徴とするPLL回路を提供する。
第2の発明は、前記発振器で発振する周波数は前記マスタクロック信号周波数に対して200ppmの範囲で発振する周波数であることを特徴とする第1の発明に記載のPLL回路を提供する。
第3の発明は、前記発振器は、複数のマスタクロック信号で発振するための複数の振動子を有し、前記制御回路は複数の振動子により得られる複数のマスタクロック信号のうちの1つを選択して前記第2分周器に出力させることを特徴とする第1又は第2の発明に記載のPLL回路。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入力信号の所定の周波数を1/L(L:正の数)にして第1周波数信号を出力する第1分周器と、前記入力信号に対応するマスタクロック信号を基準として所定の範囲内の周波数で発振する発振器と、前記発振器で発振した前記マスタクロック信号の周波数を1/M(M:正の数)にして第2周波数信号を出力する第2分周器と、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号との位相を比較して、位相差信号を出力する位相比較器と、前記位相差信号から低域周波数成分を得て前記発振器に供給し、前記発振器の発振周波数を可変する信号を出力する低域通過フィルタと、前記位相差信号を基に前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しているか否かを検出するロック検出器と、前記ロック検出器で前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しないとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを可変させる制御信号を出力し、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致したとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを固定させる制御信号を出力する制御回路と、前記一致したことを示す制御信号に基づいて、前記マスタクロック信号を1/N(N:正の数)にして前記真の信号成分を出力する第3分周器と、を備えた格別な構成があるので、お互いに簡単な整数比関係にない複数周波数のマスタークロックが用いられて生成され、且つそれぞれが複数種類の異なった記録モードで媒体に記録するための複数の記録信号が入力され、それらの入力信号から、入力信号に含まれる雑音成分を取り除いた純度の高い位相同期された信号を発振させて出力可能なPLL回路を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施例に係るPLL回路について図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の実施に係るPLL回路を用いた記録システムの構成例を示した図である。
図2は、本発明の実施に係るPLL回路の構成例を示したブロック図である。
図3は、本発明の実施に係るPLL回路の要部の構成例を示したブロック図である。
【0010】
そのPLL回路はお互いに簡単な整数比関係にない複数周波数のマスタークロックが用いられて生成され、且つそれぞれが複数種類の異なった記録モードで媒体に記録するための複数の記録信号が入力され、それらの入力信号から、入力信号に含まれる雑音成分を取り除いた純度の高い位相同期された信号を発振させて出力可能なPLL回路を実現するという目的を、入力信号の所定の周波数を1/L(L:正の数)にして第1周波数信号を出力する第1分周器と、前記入力信号に対応するマスタクロック信号を基準として所定の範囲内の周波数で発振する発振器と、前記発振器で発振した前記マスタクロック信号の周波数を1/M(M:正の数)にして第2周波数信号を出力する第2分周器と、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号との位相を比較して、位相差信号を出力する位相比較器と、前記位相差信号から低域周波数成分を得て前記発振器に供給し、前記発振器の発振周波数を可変する信号を出力する低域通過フィルタと、前記位相差信号を基に前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しているか否かを検出するロック検出器と、前記ロック検出器で前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しないとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを可変させる制御信号を出力し、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致したとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを固定させる制御信号を出力する制御回路と、前記一致したことを示す制御信号に基づいて、前記マスタクロック信号を1/N(N:正の数)にして前記真の信号成分を出力する第3分周器と、を備えるようにして実現した。
【0011】
PLL回路が用いられる記録システムの構成について述べる。
図1に示す記録システムは、CD−RWないしはDVD−RWに記録する記録用信号が入力され、CDやDVDに設定された記録速度により記録するための記録信号を発生する記録信号発生装置1と、記録信号が入力されその記録信号に含まれるジッターなどの雑音成分を取り除いた純度の高い駆動用出力信号を生成するPLL回路4、及び生成された駆動信号により駆動され記録信号から雑音成分を除去した記録信号を再生成するFIFO3で構成される記録信号再生成装置2と、再生成された記録信号が入力されCD−RWやDVD−RWなどの円盤形記録メディアに記録信号を記録するDVDドライブ6とより構成される。
【0012】
記録システムの動作について述べる。
記録信号発生装置1は、記録用信号をCD−RW(以下、単にCDと呼ぶことがある。)やDVD−RW(以下、単にDVDと呼ぶことがある。)に記録するための、それらの信号記録フォーマットの規格に従った記録信号を生成して出力する。記録信号は、媒体への記録速度がCDの場合では1倍速(等速)、2倍、4倍、・・・、及び16倍の記録速度を選択でき、DVDへは1倍、2倍、及び4倍の記録速度が選択できる。
PLL回路4は、記録信号発生装置1がCDやDVDのいずれの記録媒体に対してどのような記録速度が設定されて出力された記録信号が入力されても、その記録信号周波数に位相同期されたジッター成分を含まない純度の高い駆動用信号を生成して出力する。FIFO3は、純度の高い駆動用信号により駆動され記録信号に含まれるジッター成分を除去した純度の高い記録信号が生成され、出力される。DVDドライブ6は入力される純度の高い記録信号に同期し、CDやDVDに純度が高い記録信号に基づき正確なピットを記録する。特に、高品質なディジタル音声信号を記録する場合では、記録媒体を再生して高品質の音声信号が再生される。
【0013】
図2及び図3を用いてジッター成分が含まれる記録信号から、ジッター成分を含まない純度の高い駆動用信号を生成して出力するPLL回路4の構成とその動作について述べる。
図2に示すPLL回路4は、記録信号を1/L(Lは正の整数)の周波数に分周する分周器41、分周器41側の回路とそれ以降の回路との接地部を分離するアイソレータ42、入力される2つの信号の位相差を検出する位相比較器43、PLL動作がロック状態にあるか否かを判定するロック検出器44、PLLに応答特性を与えるループフィルタ45、VCXO(Voltage Control Crystal Oscillator:電圧制御水晶発振器)46a、46b、46c、分周器47、制御器48、セレクタ49、1/N(Nは正の整数)分周器51、1/M(Mは正の整数)分周器52、及びアイソレータ53で構成される。VCXO46aの発振周波数は、CDのチャンネルクロック周波数の16倍である69.1488MHzに設定され、VCXO46bの発振周波数はDVDのチャンネルクロック周波数の4倍である104.64MHzに設定されている。
図3に示すPLL回路4の要部である制御器48は、PLL回路4を構成する回路各部の動作を制御する制御回路480、8ビットカウンタ481、デコーダ482、484、486、488、分周比指定回路483、485、489、及びVCXO指定回路487で構成される。
【0014】
PLL回路4の動作につき、PLL回路4にCDのワ−ドクロック44.1kHzが入力される場合の位相同期について述べる。
まず、制御器48の中にある制御回路480は、位相比較器43の(a)側に入力される信号の周波数の概略を計測する。本実施例に示した位相比較器43は400kHz以下の入力信号周波数に対して精度の高い位相比較を行える。入力される信号の周波数は44.1kHzであり、400kHzより小さい。制御回路480は分周器41の分周比を1に設定する。制御回路480はVCXO46aの出力信号を選択する。次に、分周器152の分周比を例えば100に設定し位相比較器43の端子(a)(b)に入力される信号がロック状態にあるか否かをロック検出器44で検出する。約5m秒経過してもPLLがロック状態にないとして検出される場合には、制御回路480は分周器52の分周比を1増加させ、ロック状態にあるか否かを検出する。以下の動作を繰返し分周器52の分周比が1568になった場合にロック状態が検出される。即ち、VCXO46aの発振周波数である69.1488MHzを1/1568に分周すると44.1kHzが得られる。位相比較器43の端子(a)(b)には同一周波数の信号が入力されるためPLLはロックする。1/1568の分周比は分周比指定回路485に記憶される。
【0015】
VCXO46aは水晶振動子を用いる発振回路であり、発振引き込み周波数は100ppm程度である。従って、位相比較器43の端子(a)(b)に入力される周波数の差が100ppmを超える場合にPLL回路4はロックしない。分周器52の分周比が1568より1小さい1567の場合、69.1488MHzを1/1567に分周して44.1276kHzが得られる。その周波数は44.100kHzに比し1000.6ppm大きな値である。従って分周比が1567や1569の場合にはPLLはロック状態とならず、M=1568の場合にのみロック状態となる。
また、分周器152の分周比を100から1づつ増加させながら計測したのは、位相比較器43の端子(a)側に入力される周波数を約400kHz以下となるように分周器41を設定することによる。分周器152の分周比を100とした場合に位相比較器43の端子(b)側に入力される周波数は691.44kHzであり、400kHzよりも十分大きな周波数である。分周器152の分周比を100からロック状態を検出することにより検出時間を短縮できる。
【0016】
表1に、上記と同様にして求められたCDの1倍〜16倍速、DVDの1倍〜4倍速のそれぞれに対する分周器41(1/L)、分周器52(1/M)及び分周器51(1/N)の分周比を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
CDに1倍速で記録する場合の周波数4.3218MHzをL=16で分周し、位相比較器に入力される周波数は400kHzより小さな270.1125kHzを得ている。分周器52のMの値を256とするとき、VCXO46aの発振周波数である69.1488MHzは1/256に分周されて270.1125kHzが得られる。位相比較器43の端子(a)(b)には同一周波数の信号が入力されPLLはロックする。制御回路480は、ロック検出器44によりロックが検出された場合には、分周器47に係るLの値を分周比指定回路483に、分周器52に係るMの値を分周比指定回路485に、分周器51に係るNの値を分周比指定回路489に格納する。セレクタ49が選択していたVCXO46a、46bに係る情報をVCXO指定回路487に格納する。
【0019】
同様にして、CDの2倍〜16倍速、DVDの1倍〜4倍速のそれぞれに対する分周器41、分周器52、及び分周器51に係る分周比情報と、セレクタ49に係るVCXOの選択情報は分周比指定回路483、485、489、及びVCXO指定回路487に格納される。分周比指定回路483には順に1、16、32、64、128、256、512の分周比が記憶される。分周比指定回路485には順に、1568、256、512の分周比が記憶される。VCXO指定回路487には順にVCXO46a、46bを選択するための情報が記憶される。分周比指定回路485には分周比L及びMにより定められる数Nが記憶される。入力される信号周波数と同一の周波数の信号を出力する場合のNの値はMの値をLの値で除した値となる。入力信号に対する整数倍の周波数を得たい場合は、Mの値をLの値で除した値を更に所定の整数値で除した値をNの値とする。
【0020】
上記の分周比に係る情報が格納された後に、例えば52.32MHzの入力信号がある場合に行われるPLL回路4のロックについて述べる。以下に述べる動作は制御回路480により制御されながら実行される。
最初に、8ビットカウンタ481の第0〜第7ビットのそれぞれは0に設定される。デコーダ482、484、486、488のそれぞれからは0が出力される。分周比指定回路483により設定される分周器41の分周比は1であり、分周比指定回路485により設定される分周器52の分周比は1568であり、VCXO指定回路487によりセレクタ49によりVCXO46aの発振周波数が取得される。この状態では位相比較器43の端子(a)(b)に入力される周波数は異なっているためPLL回路4はロック動作を行わない。ロック検出器44によりロックは検出されない。
【0021】
分周器47はVCXO46bの発振出力(104.64MHz)を約52万クロック計数する、即ち5m秒経過後に8ビットカウンタ481にクロック信号を入力する。8ビットカウンタ481の計数値が1増加する。デコーダ482から1が出力されデコーダ484からは0、デコーダ486からは0、デコーダ488からは0が出力される。分周器41の分周比は16に設定される。この場合もPLL回路4はロック動作を行わなく、ロック検出器44によりロックは検出されない。以下順に8ビットカウンタ481のカウント値を5m秒ごとに1づつ増加させていく。
【0022】
8ビットカウンタ481のカウント値が第7ビット目(上位ビット)から01010101となった場合に、デコーダ486から1が出力されてセレクタ49によりVCXO46bの発振出力が選択され、デコーダ484から2が出力されて分周器52の分周比は512に設定され、デコーダ482から5が出力されて分周器41の分周比Lは256に設定される。その場合に位相比較器43の端子(a)(b)に入力される周波数は同一となる。ロック検出器44で検出して得られたロック状態信号が8ビットカウンタ481のエネーブル端子に入力され、8ビットカウンタ481はカウント動作を停止する。分周器41のLの値、及び分周器52のMの値は固定され、セレクタ49の選択動作も固定される。デコーダ488から85の値が出力され、1/N分周器51の分周比は2に設定される。
以上により、1/N分周器51からは周波数変動が少なく純度の高い水晶発振器46bで発振された信号が分周して得られる純度の高い出力信号が出力される。
【0023】
PLL回路4は、入力されてロック動作がなされた場合には、その際に得られた分周比の値及び用いたVCXOの情報を分周比指定回路483、485、489及びVCXO指定回路487に記憶する。新たな周波数の信号が入力された場合には、その信号にロックするための分周比の値L、M、及び使用するVCXOを特定し、それらの情報を分周比指定回路483、485、489及びVCXO指定回路487に記憶する。次回からは短時間で入力信号にロックした純度の高い周波数の信号が出力される。
なお、PLL回路4を分周比指定回路483、485、489及びVCXO指定回路487を設けないで動作させることもできる。その場合は、電源の投入ごと、ないしは入力信号の周波数が変更されるたび毎に、位相比較器43に入力される周波数が約400kHz以下となるように分周器41のLを選定し、分周器52の分周比Mを所定の値以上から増加させ、ロック検出器44でロックが検出されるMの値を検出するように動作させる。
【0024】
また、位相比較器43に入力される周波数を400kHz以下とするLに対してロックするMが存在しなかった場合にはLを2倍の値に設定して、Mの値を可変しつつロックするMの値を検出する。その場合に制御回路480はMの値を1、3、5、・・・・のように奇数で変化させてロックするMの値があるかを調べる。ロックするMの値が検出されない場合にはセレクタ49が選択しているVCXOを他の発振周波数のものに選択しなおし、上記の動作を繰り返してもよい。
そして、表1で「−」により示した新たなディスクシステムとして、例えばBDの記録装置から出力される信号にロックさせる場合では、VCXO46cにBDのマスター周波数に係るVCXOを備えることにより、上述と同様にロック動作を行わせることができる。
【0025】
さらに、PLL回路4は、アイソレータ42、53により分周器41及び記録信号発生装置1と、アイソレータ42、53以降の回路との間のアース電位や電源を交流的に切り離して回路を構成しているため、記録信号発生装置1の側で発生した雑音成分を遮断して得られた信号を出力することができる。DVDドライブ6はPLL回路4により生成された純度の高い信号を用いて再生成された記録信号を用いることにより高品質なディジタル信号を記録媒体に記録することができる。
【0026】
以上のように、本実施例で示したPLL回路4によれば、入力信号の所定の周波数を1/L(L:正の数)にして第1周波数信号を出力する第1分周器(41)と、前記入力信号に対応するマスタクロック信号を基準として所定の範囲内の周波数で発振する発振器(46a)と、前記発振器で発振した前記マスタクロック信号の周波数を1/M(M:正の数)にして第2周波数信号を出力する第2分周器(52)と、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号との位相を比較して、位相差信号を出力する位相比較器(43)と、前記位相差信号から低域周波数成分を得て前記発振器に供給し、前記発振器の発振周波数を可変する信号を出力する低域通過フィルタ(45)と、前記位相差信号を基に前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しているか否かを検出するロック検出器(44)と、前記ロック検出器で前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しないとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを可変させる制御信号を出力し、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致したとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを固定させる制御信号を出力する制御回路(48)と、前記一致したことを示す制御信号に基づいて、前記マスタクロック信号を1/N(N:正の数)にして前記真の信号成分を出力する第3分周器(51)と、を備えた格別な構成があるので、お互いに簡単な整数比関係にない複数周波数のマスタークロックが用いられて生成され、且つそれぞれが複数種類の異なった記録モードで媒体に記録するための複数の記録信号が入力され、それらの入力信号から、入力信号に含まれる雑音成分を取り除いた純度の高い位相同期された信号を発振させて出力するPLL回路を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
特定の周波数をマスタークロックとし、所定の媒体に記録するための記録信号を出力する記録装置に接続され、その記録信号に含まれる雑音を取り除いた記録信号を生成するために用いるPLL回路に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施に係るPLL回路を用いた記録システムの構成例を示した図である。
【図2】本発明の実施に係るPLL回路の構成例を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施に係るPLL回路の要部の構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1 記録信号発生装置
2 記録信号再生成装置
3 FIFO
4 PLL回路
6 DVDドライブ
41 分周器
42 アイソレータ
43 位相比較器
44 ロック検出器
45 ループフィルタ
46a、46b、46c VCXO
47 分周器
48 制御器
49 セレクタ
51 1/N分周器
52 分周器
53 アイソレータ
480 制御回路
481 8ビットカウンタ
482、484、486、488 デコーダ
483、485、489 分周比指定回路
487 VCXO指定回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の入力信号から雑音信号を除去して、真の信号成分のみを位相同期して取り出すPLL回路において、
前記入力信号の所定の周波数を1/L(L:正の数)にして第1周波数信号を出力する第1分周器と、
前記入力信号に対応するマスタクロック信号を基準として所定の範囲内の周波数で発振する発振器と、
前記発振器で発振した前記マスタクロック信号の周波数を1/M(M:正の数)にして第2周波数信号を出力する第2分周器と、
前記第1周波数信号と前記第2周波数信号との位相を比較して、位相差信号を出力する位相比較器と、
前記位相差信号から低域周波数成分を得て前記発振器に供給し、前記発振器の発振周波数を可変する信号を出力する低域通過フィルタと、
前記位相差信号を基に前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しているか否かを検出するロック検出器と、
前記ロック検出器で前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致しないとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを可変させる制御信号を出力し、前記第1周波数信号と前記第2周波数信号とが一致したとして検出された場合には、前記第1分周器のL及び前記第2分周器のMを固定させる制御信号を出力する制御回路と、
前記一致したことを示す制御信号に基づいて、前記マスタクロック信号を1/N(N:正の数)にして前記真の信号成分を出力する第3分周器と、
を備えたことを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記発振器で発振する周波数は前記マスタクロック信号周波数に対して200ppmの範囲で発振する周波数であることを特徴とする請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記発振器は、複数のマスタクロック信号で発振するための複数の振動子を有し、前記制御回路は複数の振動子により得られる複数のマスタクロック信号のうちの1つを選択して前記第2分周器に出力させることを特徴とする請求項1又は2に記載のPLL回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−116500(P2007−116500A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306792(P2005−306792)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】