説明

PLL回路

【課題】入力信号の断、回復状態でも出力の周波数変動を抑制し、周波数精度を維持するPLL回路の提供。
【解決手段】入力を所望周波数に分周する第1分周手段3と、電圧制御発振器7出力を所望周波数に分周する第2分周手段8と、前記第1分周手段3出力と前記第2分周手段出力8間の第1位相比較手段4と、前記第1分周手段3出力と前記第2分周手段8出力の反転の一方の第1選択手段11と、前記第2分周手段8出力と前記第1選択手段11出力間の第2位相比較手段12と、前記第1位相比較手段4出力と、前記第2位相比較手段12出力の一方の第2選択手段6と、入力信号監視手段9と、前記入力信号監視手段9からの監視結果に対して一定時間のタイミングを生成するタイミング生成手段10と、を備え、前記第1選択手段11及び前記第2選択手段6は、前記タイミング生成手段10からの信号状態に従って選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号に同期した出力信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路に関するものである。特に、情報通信装置等で使用され、入力信号の断状態や回復状態においても出力信号の周波数変動を抑制し、且つ周波数精度を維持するPLL回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基準信号に同期した信号を発生する回路としてPLL回路が広く利用されている。
【0003】
特許文献1に開示されているように従来のPLL回路の一例を図2を参照して説明する。
【0004】
図2において、PLL回路は、基準となる入力信号が印加される入力端子21、入力信号に同期した出力信号が印加される出力端子22、入力端子からの入力信号を所望の周波数に分周する分周回路23、2つの信号の位相を比較する位相比較器24、位相比較器での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換するフィルタ25、フィルタからの直流制御信号に応じた出力信号を出力する電圧制御発振器26、電圧制御発振器からの出力信号を所望の周波数に分周する分周回路27より構成される。
【0005】
上記PLL回路の動作は、位相比較器24では入力端子21に印加された入力信号を分周回路23によって所望の周波数に分周した信号と、電圧制御発振器26の出力信号を分周回路27によって所望の周波数に分周した信号とを位相比較し、フィルタ25を介して位相比較結果に応じた直流制御信号を電圧制御発振器26に与えて出力周波数を制御するという動作を繰り返すことにより、入力信号に同期した出力信号を生成している。
【0006】
すなわち、位相比較器24、フィルタ25、電圧制御発振器26、分周回路27とから形成されるフィードバックループによる自動制御系を通して入力信号に同期した出力信号を常時生成している。
【0007】
もし、入力端子21に印加される入力信号の周波数が例えばプラス方向に変化した場合、位相比較器24では、入力端子21に印加された入力信号を分周回路23によって所望の周波数に分周した信号と、電圧制御発振器26の出力信号を分周回路27によって所望の周波数に分周した信号との間に位相差が発生する。そのため、位相比較器24は位相差に応じた位相比較結果を出力し、フィルタ25を介して出力信号の周波数をプラス方向に変化させる直流制御信号を電圧制御発振器26に与えるように動作する。
【0008】
従って、電圧制御発振器26の出力信号はプラス方向に変化し、分周回路27を介して位相比較器24へフィードバックされ、再度入力信号と位相比較されるため、この自動制御系により入力信号に同期した出力信号を生成することができる。
【0009】
入力端子21に印加される入力信号の周波数がマイナス方向に変化した場合でも同様である。
【0010】
また、図5は、上記PLL回路の動作例を示している。入力端子1に印加される入力信号が正常状態である場合、電圧制御発振器26の制御電圧は中心制御電圧近傍(≒VDD/2)であり、電圧制御発振器26の出力周波数は中心周波数近傍(≒F0)で動作している。
【0011】
また、特許文献2には、入力信号断から解除されたときの位相比較器出力を記憶した位相比較器の出力に位相の合わせ込みを行い、解除することが開示されている。
【特許文献1】特開2001−85995号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2002−135115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のPLL回路では入力端子21に印加される入力信号が異常状態(断状態)となった場合、分周回路23を介して位相比較器24に入力される信号が無くなってしまう。その結果、フィルタ25からの直流制御信号(即ち電圧制御発振器26の制御電圧)は中心制御電圧近傍(≒VDD/2)から例えば電源電圧レベル近傍(≒VDD)、あるいはグランドレベル近傍(≒0)に固定した状態になってしまい、電圧制御発振器26の出力周波数は自身の持つ周波数可変範囲分だけプラス方向あるいはマイナス方向に変動してしまうことになる。
【0013】
例えば、電圧制御発振器26の周波数可変範囲が±100ppmであったとすると、入力端子21に印加される入力信号が異常状態(断状態)となった場合、出力端子22には+100ppm、あるいは−100ppmだけ周波数が変動した出力信号が印加されてしまうことになり、システム内に多大な影響を与えてしまうという問題がある。更に、場合によってはネットワーク全体に重大な影響を与えてしまうという可能性もあり得る。
【0014】
そこで、本発明は、通信装置等で使用され、入力信号の断状態や回復状態においても出力信号の周波数変動を抑制し、且つ周波数精度を維持するPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電圧制御発振器を備えたPLL回路において、入力信号を所望の周波数に分周する第1分周手段と、前記電圧制御発振器の出力信号を所望の周波数に分周する第2分周手段と、前記第1分周手段の出力信号と前記第2分周手段の出力信号との位相を比較する第1位相比較手段と、前記第1分周手段の出力信号と前記第2分周手段の出力信号を反転した反転信号との一方の信号を選択する第1選択手段と、前記第2分周手段の出力信号と前記第1選択手段の出力信号との位相を比較する第2位相比較手段と、前記第1位相比較手段の出力信号と、前記第2位相比較手段の出力信号との一方の信号を選択する第2選択手段と、前記入力信号の状態を監視する入力信号監視手段と、前記入力信号監視手段からの監視結果に対して一定時間のタイミングを生成するタイミング生成手段と、を備え、前記第1選択手段及び前記第2選択手段は、前記タイミング生成手段からの信号状態に従って前記一方の信号を選択することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のPLL回路において、前記入力信号監視手段は、前記入力信号の状態が断状態又は回復状態であるかを監視することを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のPLL回路において、前記第1位相比較手段での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換して前記第2選択手段に出力する第1フィルタと、前記第2位相比較手段での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換して前記第2選択手段に出力する第2フィルタと、を備え、前記第2フィルタのフィルタ時定数は、前記第1フィルタのフィルタ時定数よりも十分に大きい関係となるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のPLL回路において、前記タイミング生成手段は、前記入力信号の状態が正常状態から断状態になる場合は略同時のタイミングを生成し、前記入力信号の状態が断状態から回復状態に回復する場合はフィルタ時定数よりも十分に大きい時定数のタイミングを生成することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のPLL回路において、前記第1選択手段は、前記タイミング生成手段からの信号状態が正常状態である場合は前記第1分周手段からの出力信号を選択し、前記タイミング生成手段からの信号状態が異常状態(断状態)である場合は前記反転信号を選択することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載のPLL回路において、前記第2選択手段は、前記タイミング生成手段からの信号状態が正常状態である場合は前記第1位相比較手段の出力信号を選択し、前記タイミング生成手段からの信号状態が異常状態(断状態)である場合は前記第2位相比較手段の出力信号を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べたように、本発明によれば、入力信号の状態に従ってPLL回路を切り替えることにより、該入力信号が異常状態(断状態)である場合、第2位相比較手段に入力される2つの信号はともに電圧制御発振器からの信号となり、かつ両者の信号に位相差はないので、第2フィルタからの直流制御信号を電圧制御発振器の中心制御電圧の近傍に固定することができ、電圧制御発振器の出力周波数は大きく変動することはなく、中心周波数の近傍で動作させることが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願の最良の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、本実施形態については本願を実施するための一形態にすぎず、本願は本実施形態によって限定されるものではない。
【0023】
本発明に係る実施形態のPLL回路の構成を図1に示す。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のPLL回路は、基準となる入力信号が印加される入力端子1、入力信号に同期した出力信号が印加される出力端子2、入力端子1からの入力信号を所望の周波数に分周する第1分周手段としての分周回路3、2つの信号の位相を比較する第1位相比較手段としての位相比較器4、位相比較器4での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換して選択回路6に出力する第1フィルタとしてのフィルタ5、選択回路6を介してフィルタ5からの直流制御信号に応じた出力信号を出力する電圧制御発振器7、電圧制御発振器7からの出力信号を所望の周波数に分周する第2分周手段としての分周回路8、入力端子1に印加される入力信号の状態(断状態および回復状態)を監視する入力信号監視手段としての入力信号監視回路9、入力信号監視回路9からの結果に対して一定時間のタイミングを生成するタイミング生成手段としてのタイミング生成回路10、タイミング生成回路10からの信号状態に従って2つの入力信号の一方を選択する第1選択手段としての選択回路11、2つの信号の位相を比較する第2位相比較手段としての位相比較器12、位相比較器12での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換して選択回路6に出力する第2フィルタとしてのフィルタ13、タイミング生成回路10からの信号状態に従って2つの入力信号の一方を選択する第2選択手段としての選択回路6とを備える。
【0025】
選択回路11は、タイミング生成回路10からの信号状態が正常状態であれば分周回路3からの信号を選択し、タイミング生成回路10からの信号状態が異常状態(断状態)であれば分周回路8からの信号を選択するように動作する。
【0026】
また、選択回路6は、タイミング生成回路10からの信号状態が正常状態であればフィルタ5からの信号を選択し、タイミング生成回路10からの信号状態が異常状態(断状態)であればフィルタ13からの信号を選択するように動作する。
【0027】
本実施形態によれば、入力信号監視回路9、およびタイミング生成回路10により入力端子1に印加される入力信号の状態、即ち断状態および回復状態を監視し、その状態監視結果により選択回路11、および選択回路6を制御することによって動作するPLL回路を切替えることを特徴としている。
【0028】
すなわち、入力端子1に印加される入力信号が正常状態である場合、PLL回路は位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作し、入力端子1に印加される入力信号が異常状態(断状態)である場合、PLL回路は位相比較器12、フィルタ13、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作する回路構成となっている。
【0029】
このように、入力信号の状態に従ってPLL回路を切り替えることにより、入力端子1に印加される入力信号が異常状態(断状態)である場合、位相比較器12に入力される2つの信号はともに電圧制御発振器7からの信号となり、且つ両者の信号に位相差は無いため、フィルタ13からの直流制御信号を電圧制御発振器7の中心制御電圧近傍(≒VDD/2)に固定することができる。
【0030】
従って、電圧制御発振器7の出力周波数は大きく変動することは無く、中心周波数近傍(≒F0)で動作させることが可能になる。
【0031】
次に、本実施形態によるPLL回路の動作例について、図3及び4を参照して説明する。
【0032】
図1の本実施形態によるPLL回路の構成において、フィルタ5およびフィルタ13は、それぞれPLL回路の応答特性を決定する時定数τ1およびτ2を持っており、τ1<<τ2の時定数となるように構成されている。
【0033】
更に、タイミング生成回路10は、入力信号監視回路9からの結果に対し一定時間(=T)のタイミングを生成しており、入力信号の状態が正常状態から断状態になる場合はT≒0、入力信号の状態が断状態から回復状態になる場合はT>τ2のタイミングが生成されるように構成されている。
【0034】
まず、入力端子1に印加される入力信号が正常状態であり、且つ入力信号の周波数偏差が無い場合(ΔF/F0≒0)のPLL回路の動作について、図3を参照して説明する。
【0035】
図3において、入力端子1に印加される入力信号が正常状態の場合、PLL回路は位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作している。
【0036】
入力端子1に印加される入力信号が正常状態の場合は、選択回路11は分周回路3からの信号を選択するように動作するので、位相比較器4および位相比較器12には同一の信号が入力されていることになり、フィルタ5およびフィルタ13の出力信号は同一の結果になっている。
【0037】
ここで、入力信号の周波数偏差が無い(ΔF/F0≒0)ので、フィルタ5およびフィルタ13の出力信号はともに中心制御電圧近傍(≒VDD/2)になっており、電圧制御発振器7の出力周波数は中心周波数近傍(≒F0)で動作していることになる。
【0038】
尚、入力信号が正常状態の場合には、位相比較器12、フィルタ13、電圧制御発振器7、及び分周回路8とより構成されるフィードバックループによる自動制御系においても、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、及び分周回路8とより構成されるフィードバックループと同様の値をとっている。
【0039】
次に、入力端子1に印加される入力信号が異常状態(断状態)になった場合は、タイミング生成回路10からの信号により選択回路6が即時(T≒0)に切り替わる。すなわち、PLL回路は位相比較器12、フィルタ13、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作するように切り替わる。同時に、タイミング生成回路10からの信号により選択回路11も即時(T≒0)に切り替わる。
【0040】
すなわち、位相比較器12に入力される2つの信号は共に分周回路8からの信号となり、且つ両者の信号に位相差は無いため、フィルタ13の出力信号を電圧制御発振器7の中心制御電圧近傍(≒VDD/2)に固定することができる。
【0041】
従って、動作するPLL回路の切り替わりによって電圧制御発振器7に入力される制御電圧は中心制御電圧近傍(≒VDD/2)から大きく変動することは無く、電圧制御発振器7の出力周波数も中心周波数近傍(≒F0)で動作させることが可能になる。
【0042】
尚、入力信号が異常状態の場合には、入力信号が正常状態において、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、及び分周回路8とより構成されるフィードバックループと同様の値をとっていたために、電圧制御発振器7への出力も大きく変動しない。
【0043】
また、入力端子1に印加される入力信号が正常状態(回復状態)に戻った場合は、タイミング生成回路10からの信号により選択回路6が一定時間後(T>τ2)に切り戻る。
【0044】
すなわち、PLL回路は位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作するように切り戻る。
【0045】
この時、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるPLL回路では、入力信号が断状態から回復状態になるためPLL回路の過渡応答特性によりフィルタ5の時定数(=τ1)だけPLL回路が安定するまでに時間を必要とする。
【0046】
従って、即時(T≒0)に切り戻ってしまうとPLL回路が安定していないため、一定時間後(T>τ2、τ2>>τ1)に切り戻るようになっており、切り戻るまでの間はフィルタ13の出力信号である中心制御電圧近傍(≒VDD/2)で動作させている。同時に、タイミング生成回路10からの信号により選択回路11も一定時間後(T>τ2)に切り戻る。
【0047】
従って、動作するPLL回路の切り戻りによっても電圧制御発振器7の制御電圧は中心制御電圧近傍(≒VDD/2)から変動することは無く、電圧制御発振器7の出力周波数も中心周波数近傍(≒F0)で動作させることが可能になる。
【0048】
次に、入力端子1に印加される入力信号が正常状態であり、且つ入力信号の周波数偏差が有る場合(ΔF/F0≠0)のPLL回路の動作について、図4を参照して説明する。
【0049】
図4において、入力端子1に印加される入力信号が正常状態の場合は、PLL回路は位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作している。
【0050】
入力端子1に印加される入力信号が正常状態の場合は、選択回路11は分周回路3からの信号を選択するように動作するので、位相比較器4および位相比較器12には同一の信号が入力されていることになり、フィルタ5及びフィルタ13の出力信号は同一の結果になっている。
【0051】
ここで、入力信号の周波数偏差がF0+ΔFとプラス方向にΔFだけずれている場合、フィルタ5およびフィルタ13の出力信号はともに中心制御電圧に対してプラス方向にずれた制御電圧(≒(VDD/2)+α)になっており、電圧制御発振器7の出力周波数は中心周波数に対してプラス方向にずれた周波数(≒F0+ΔF)で動作していることになる。
【0052】
尚、入力信号が正常状態の場合には、位相比較器12、フィルタ13、電圧制御発振器7、及び分周回路8とより構成されるフィードバックループによる自動制御系においても、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、及び分周回路8とより構成されるフィードバックループと同様の値をとっている。
【0053】
一方、入力端子1に印加される入力信号が異常状態(断状態)になった場合は、タイミング生成回路10からの信号により選択回路6が即時(T≒0)に切り替わる。すなわち、PLL回路は、位相比較器12、フィルタ13、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作するように切り替わる。同時に、タイミング生成回路10からの信号により選択回路11も即時(T≒0)に切り替わる。
【0054】
すなわち、位相比較器12に入力される2つの信号はともに分周回路8からの信号となり、且つ両者の信号に位相差は無いため、フィルタ13の出力信号を電圧制御発振器7の中心制御電圧近傍(≒VDD/2)に固定することができる。
【0055】
この時、電圧制御発振器7の制御電圧は(VDD/2)+αからVDD/2に変化することになるが、急激に制御電圧を変化してしまうと電圧制御発振器7の出力周波数がF0+ΔFからF0に瞬時に変動してしまい、出力端子2の後段に接続される回路がこの急激な周波数変動に追従できず当該システム内に影響を与えてしまう可能性がある。
【0056】
そのため、フィルタ13の応答特性に大きな時定数τ2を持たせ、電圧制御発振器7の制御電圧を(VDD/2)+αからVDD/2にゆっくりと変化させることによって、電圧制御発振器7の出力周波数もF0+ΔFからF0にゆっくりと変動し、出力端子2の後段に接続される回路が本周波数変動に追従できるようにするとともに、電圧制御発振器7の出力周波数を中心周波数近傍(F0)で動作させることが可能になる。
【0057】
従って、動作するPLL回路の切り替わりによって当該システム内に影響を与えないPLL回路を提供することが可能になる。
【0058】
尚、入力信号が異常状態の場合には、入力信号が正常状態において、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、及び分周回路8とより構成されるフィードバックループと同様の値をとっていたために、電圧制御発振器7への出力も大きく変動しない。
【0059】
また、入力端子1に印加される入力信号が正常状態(回復状態)に戻った場合は、タイミング生成回路10からの信号により選択回路6が一定時間後(T>τ2)に切り戻る。
【0060】
すなわち、PLL回路は、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるフィードバックループによる自動制御系で動作するように切り戻る。
【0061】
この時、位相比較器4、フィルタ5、電圧制御発振器7、分周回路8とから形成されるPLL回路では、入力信号が断状態から回復状態になるため、PLL回路の過渡応答特性によりフィルタ5の時定数(=τ1)の分だけPLL回路が安定するまでに時間を必要とする。
【0062】
従って、即時(T≒0)に切り戻ってしまうと、PLL回路が安定していないため、一定時間後(T>τ2、τ2>>τ1)に切り戻るようになっており、切り戻るまでの間はフィルタ13の出力信号で動作させている。
【0063】
また、回復した入力信号の周波数は、F0+ΔFとプラス方向にずれているため、電圧制御発振器7の制御電圧はVDD/2から(VDD/2)+αに変化することになるが、急激に制御電圧を変化してしまうと電圧制御発振器7の出力周波数がF0からF0+ΔFに瞬時に変動してしまい、出力端子2の後段に接続される回路がこの急激な周波数変動に追従できず当該システム内に影響を与えてしまう可能性がある。
【0064】
そのため、フィルタ13の応答特性に大きな時定数τ2を持たせ、電圧制御発振器7の制御電圧を(VDD/2)+αからVDD/2にゆっくりと変化させることによって、電圧制御発振器7の出力周波数もF0からF0+ΔFにゆっくりと変動し、出力端子2の後段に接続される回路が本周波数変動に追従できるようになっている。
【0065】
従って、動作するPLL回路の切り戻りによっても当該システム内に影響を与えないPLL回路を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によるPLL回路のブロック図である。
【図2】従来のPLL回路のブロック図である。
【図3】本発明によるPLL回路の動作例1である。
【図4】本発明によるPLL回路の動作例2である。
【図5】従来のPLL回路の動作例である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・入力端子
2・・・出力端子
3・・・分周回路
4・・・位相比較器
5・・・フィルタ
6・・・選択回路
7・・・電圧制御発振器
8・・・分周回路
9・・・入力信号監視回路
10・・・タイミング生成回路
11・・・選択回路
12・・・位相比較器
13・・・フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御発振器を備えたPLL回路において、
入力信号を所望の周波数に分周する第1分周手段と、
前記電圧制御発振器の出力信号を所望の周波数に分周する第2分周手段と、
前記第1分周手段の出力信号と前記第2分周手段の出力信号との位相を比較する第1位相比較手段と、
前記第1分周手段の出力信号と前記第2分周手段の出力信号を反転した反転信号との一方の信号を選択する第1選択手段と、
前記第2分周手段の出力信号と前記第1選択手段の出力信号との位相を比較する第2位相比較手段と、
前記第1位相比較手段の出力信号と、前記第2位相比較手段の出力信号との一方の信号を選択する第2選択手段と、
前記入力信号の状態を監視する入力信号監視手段と、
前記入力信号監視手段からの監視結果に対して一定時間のタイミングを生成するタイミング生成手段と、を備え、
前記第1選択手段及び前記第2選択手段は、前記タイミング生成手段からの信号状態に従って前記一方の信号を選択することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
請求項1に記載のPLL回路において、
前記入力信号監視手段は、前記入力信号の状態が断状態又は回復状態であるかを監視することを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のPLL回路において、
前記第1位相比較手段での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換して前記第2選択手段に出力する第1フィルタと、
前記第2位相比較手段での位相比較結果から不要な高周波成分を除去し直流信号に変換して前記第2選択手段に出力する第2フィルタと、を備え、
前記第2フィルタのフィルタ時定数は、前記第1フィルタのフィルタ時定数よりも十分に大きい関係となるように構成されていることを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のPLL回路において、
前記タイミング生成手段は、前記入力信号の状態が正常状態から断状態になる場合は略同時のタイミングを生成し、前記入力信号の状態が断状態から回復状態に回復する場合はフィルタ時定数よりも十分に大きい時定数のタイミングを生成することを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のPLL回路において、
前記第1選択手段は、前記タイミング生成手段からの信号状態が正常状態である場合は前記第1分周手段からの出力信号を選択し、前記タイミング生成手段からの信号状態が異常状態(断状態)である場合は前記反転信号を選択することを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のPLL回路において、
前記第2選択手段は、前記タイミング生成手段からの信号状態が正常状態である場合は前記第1位相比較手段の出力信号を選択し、前記タイミング生成手段からの信号状態が異常状態(断状態)である場合は前記第2位相比較手段の出力信号を選択することを特徴とするPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−199355(P2008−199355A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33327(P2007−33327)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】