説明

SNS−595、及びその使用方法

本発明は、SNS−595、及び該剤を使用するガンの治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
SNS−595は、新規のナフチリジン細胞毒性剤であり、以前はAG−7352として知られていた(Tsuzukiらの論文「Tetrahedron-Asymmetry」 12: 1793-1799 (2001)、及び米国特許第5,817,669号)。SNS−595の化学名は、(+)−1,4−ジヒドロ−7[(3S,4S)−3−メトキシ−4−(メチルアミノ)−1−ピロリジニル]−4−オキソ−1−(2−チアゾイル)1,8−ナフチリジン−3−カルボン酸であり、該構造は以下に示される:
【0002】
【化1】

本発明は、SNS−595、及びガン治療におけるSNS−595の治療可能性を最大限にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
(詳細な説明)
増殖細胞は、細胞周期の4つの段階―G、S、G、及びM―を経る。これらの段階は、まず細胞分裂を観察することによって同定され、細胞は、細胞周期の合成、又はS期として知られるようになったDNA合成、及び細胞周期の有糸、又はM期、又はS期として知られる有糸分裂を介して発達した。DNA合成の完了から有糸分裂までの間、及び有糸分裂から次のDNA合成の周期までの間に観察された間期は、それぞれG期、及びG期として知られるようになった。適切な条件下において増殖能力を保持する非増殖型の細胞は、静止期、すなわちG0期にあり、及び細胞周期から逸脱しているものとして典型的に特徴付けられる。
【0004】
細胞周期は複数のチェックポイントを有し、これらの指定された地点でその細胞を停止することによって、不適切な環境下で細胞周期を介して細胞が発達しようとするのを防ぐ。ある重要なチェックポイントは、細胞がS期に入る前に発生し、例えば、環境が(例えば、十分な栄養)細胞分裂に適しているかどうかテストする。G期にチェックポイントで落第した細胞は、それゆえ、G1停止と呼ばれ、S期に入ることを妨げられる。別のチェックポイントは、細胞がM期に入る前に発生し、例えば、合成されたDNAの完全性をテストする。G2期においてチェックポイントで落第し、それゆえM期に入ることが妨げられた細胞は、G2停止にあると言われる。別のチェックポイントは細胞質分裂が起こる直前のM期に発生し、例えば、染色体が適切に並んでいるかテストする。M期においてチェックポイントで落第し、それゆえ分裂が妨げられる細胞は、M停止にあると言われる。
【0005】
実際のところ、細胞周期停止はしばしばDNA内容物によって特徴付けられ、チェックポイントの失敗によるものではない。結果として、最も頻繁に報告されている細胞停止は、2N DNA内容物に基づくG1停止と、4N DNA内容物に基づいたG2/M停止である。
SNS−595は、細胞周期阻害剤であり、G期において細胞を停止させる。始めは、SNS−595の活性は、トポイソメラーゼIIの阻害によるものと考えられていた。SNS−595は、約5μMのIC50を有するトポイソメラーゼIIの触媒阻害剤であり(開裂可能な複合体の形成を伴わずに、スーパーコイル状DNAの分離、又は弛緩を防ぐ)、量依存的な相互関係を、そのトポイソメラーゼII活性と、その細胞への効果との間に確立することができなかった。例えば、様々な細胞内のEC50は、200nM〜300nMの範囲であり、効力増大において、トポイソメラーゼIIの生化学的阻害かとは、少なくとも約10倍異なる。さらに、細胞におけるトポイソメラーゼIIのレベルが2−デオキシグルコース(該酵素の分解を導く)の使用によって調節された場合、2−デオキシグルコース処理細胞と未処理細胞との間で、本質的に活性に何の違いも見られなかった。
【0006】
G2停止の誘導もまた、SNS−595の細胞毒性の重要な原因ではないようである。例えば、G停止が(ATMとATRの両方を阻害するカフェインで処理することによって)無効にされた細胞内において、SNS−595処理後、未処理の群の細胞(カフェイン処理が行われず、G停止が見られる)と比較した場合、EC50値に本質的には何の違いも観察されなかった。図1に示されているように、ATM、ATR、及びDNA−PKは、3つの中心的なDNAセンサー/エフェクターであり、個々の細胞において検出されたDNA損傷のレベルにより、DNA修復、G2停止、又はアポトーシスを含む、いくつかのうちのある結果に該細胞を導く。
最初の特徴づけとは反対に、SNS−595は、やがてアポトーシス細胞死を導くDNA−PK経路の活性化を仲介する。とりわけ、これらの出来事がS期に特有であるということは、細胞周期のS期の間のみに起こることを特異的に意味している。
【0007】
SNS−595を用いた処理は、S期に形成される二重鎖DNA切断の増加をもたらす。この損傷は、細胞のDNA合成能を阻害し、S期において細胞が費やす時間を長引かせる。
図2が例示する通り、SNS−595の投与量に応じて、二重鎖切断の形成が、DNA−PKの媒介する修復、及び以下を含むがそれらに限定されないアポトーシス細胞の働き:i)DNA−PK発現;ii)H2AXリン酸化;iii)c−Ablリン酸化;iv)p53リン酸化;v)p73リン酸化;vi)p21発現;vii)カスパーゼ−9活性化;及びviii)カスパーゼ−3活性化、を活性化する。非相同的末端結合(NHEJ)を介して二重鎖切断を修復することができないほど、DNA損傷が十分に深刻な場合、該細胞は速やかにアポトーシスに入る。いくつかの細胞は、G期に達することができるが、M期に入るには該細胞はあまりに損傷がひどいため、その次に停止され(cdc2/サイクリンBによって仲介され)、やがてまたアポトーシスとなる。特に、SNS−595はS期選択的なので、SNS−595の量は、増殖細胞に細胞毒性であり(それゆえ、S期を含む細胞周期を介して進行する)、非増殖細胞にとって非致死的である。
【0008】
この機構相応に、SNS−595に対する誘導抵抗性を有する細胞は、DNA−PK経路において代替をも有している。例えば、HCT−116細胞に比べて、約10倍SNS−595感受性が低いHCT−116の安定的変異株は、例えば、活性化されたDNA−PK複合体の不可欠な構成要素タンパクである、Ku70のレベルが増加していることを示す。反対に、DNA−PKのレベルの低下、又はその活性の減少は(例えば、阻害剤の存在下において)、SNS−595に対する感受性の増加に関連する。
【0009】
SNS−595のDNA−PK媒介性細胞毒性は、一般的ではない。DNA合成を妨げる既知の化合物は、通常ATRを介して、又はATMとDNA−PKの両方を介して作動する。ATR媒介性細胞毒性化合物の実例は、代謝拮抗剤、及びDNAポリメラーゼ阻害剤を含む。ATR媒介性、及びDNA−PK媒介性細胞毒性化合物によって媒介されたATM、及びDNA−PKの実例は、トポイソメラーゼII毒と、ブレオマイシンのような抗腫瘍性抗生物質を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、SNS−595に関連し、その作用の機構を使用して、ヒトのガン治療において、その治療可能性を最大化する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それゆえ、本発明の一つの態様において、治療すべきガンがSNS−595治療に応答する可能性が高いかどうか、並びに該治療を進めた場合に、該ガンがSNS−595治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を提供する。SNS−595を用いた治療に適したガンの種類は、膀胱ガン、乳ガン、子宮頸ガン、結腸ガン(直腸結腸ガンを含む)、食道ガン、頸頭部ガン、白血病、肝臓ガン、肺ガン(小細胞、及び非小細胞の両方)、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、腎臓ガン、肉腫(骨肉腫を含む)、皮膚ガン(扁平上皮細胞ガンを含む)、胃ガン、精巣ガン、甲状腺ガン、及び子宮ガンを含むが、それらに限定されない。
該方法は、治療すべきガンの細胞中のDNA−PK経路の少なくとも1つの構成タンパク質の始めの量を決定すること、及び始めの量と2回目の量とを比較することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ガンがSNS−595処理に応答する可能性が高いかどうかを決定するとき、始めの量とは、治療すべき細胞中のDNA−PK経路の少なくとも1つの構成タンパク質の量(治療前の量)である。2回目の量とは、対照細胞における、DNA−PK経路の構成タンパク質の量(対照量)である。適切な対照細胞は、治療されたガンとして同じ細胞に由来する通常の細胞を含むが、限定されない。例えば、治療すべきガンが卵巣ガンの場合、適切な対照細胞は非ガン性の卵巣細胞を含む。対照細胞は、治療すべき患者から得るか、又は治療すべきガンと同じ型の通常組織から得ることができる。あるいは、HCT116結腸ガン細胞(SNS−595に対する耐性を示すために誘導されない)におけるDNA−PK経路の任意の構成タンパク質の量は、一般的に対照量として使用され得る。
【0013】
本発明の実施におけるDNA−PK経路の適切な構成タンパク質は、DNA−PK、Ku70、Ku80、MRE11、NBS1、RAD50、XRCC4、リガーゼIV、H2AX、c−Abl、p53、p73、p21、カスパーゼ−9、及びカスパーゼ−3を含むが、限定されない。ある実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質は、DNA−PKである。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はKu70である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はKu80である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はMRE11である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はNBS1である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はRAD50である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はXRCC4である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はリガーゼIVである。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はH2AXである。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はc−Ablである。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はp53である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はp73である。別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はp21である。さらに別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はカスパーゼ−9である。さらに別の実施態様において、DNA−PK経路の構成タンパク質はカスパーゼ−3である。
【0014】
DNA−PK経路の構成タンパク質の量は、細胞内に存在するタンパク質レベルの定量化のように、直接的に算出され得る。ある特定の構成タンパク質の量もまた、それに対応するDNA,又はmRNAレベルを測定することによって、間接的に算出され得る。あるいは、ある特定の構成タンパク質の量もまた、活性レベルを使用して間接的に測定される。活性定量は、酵素活性が酵素の量の代わりとして使用されるため、間接的測定となる。例えば、測定された構成タンパク質がキナーゼである場合、そのキナーゼ量は、そのリン酸化産物のレベルを決定することによって、間接的に決定され得る(例えば、DNA−PKレベルの量の決定は、H2AXリン酸化レベルの量によって行われる)。上記に加えて、DNA−PK経路の構成タンパク質の量は、免疫組織化学を含む、当業者に周知の任意の方法を使用して測定され得る。
【0015】
DNA−PK経路の構成タンパク質の処理前の量が、対照量よりも少ない、又はほとんど同じである場合、該ガンは10mg/m〜150mg/mのSNS−595の量に好ましく反応する可能性が高い。体表面積(BSA)は、例えばMosteller式を用いて計算される:
BSA(m)=[高さ(cm)×重さ(kg)/3600]の平方根
【0016】
別の実施態様において、ガン治療に用いられるSNS−595の量は、10mg/m〜100mg/mである。別の実施態様において、ガン治療に用いられるSNS−595の量は、30mg/m〜75mg/mである。別の実施態様において、ガン治療に用いられるSNS−595の量は、40mg/m〜80mg/mである。別の実施態様において、ガン治療に用いられるSNS−595の量は、50mg/m〜90mg/mである。
【0017】
SNS−595の投与量は、mg/m以外の単位として表現され得る。例えば、量はmg/kgとして表現され得る。当業者は、対象の既知の高さ、もしくは重さのうちのいずれか、又はその両方に対して、mg/mからmg/kgへの量の変換の仕方を容易に理解するであろう(例えば、http:///www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htmを参照されたい)。例えば、65kgの人に対して10mg/m〜150mg/mの量は、ほぼ0.26mg/kg〜3.95mg/kgに等しい。
【0018】
投与量は、同時に、又は24時間の期間にわたって運ばれる可能性があり、患者の病状が安定、又は退行するまで、若しくは患者の病状が進行、又は許容できない毒性を呈するまで繰り返される場合がある。例えば、固形ガンにおける疾病の安定とは、測定可能な病巣の垂直の直径が、前回の測定から25%以上増加していないことを一般的に意味する。例えば、「固形ガンの反応評価基準(RECIST)のガイドライン」、『Journal of the National Cancer Institute』92(3): 205-216 (2000)を参照されたい。疾病の安定、又はその欠如は、患者の症状の評価、健康診断、X線、CAT、PET、又はMRIスキャンを用いたガン細胞の可視化、及び他の一般に是認されている評価様式のような、当業者に周知の方法で決定される。
DNA−PK経路の構成タンパク質の前処理量が、対照量よりも多ければ、単一剤としてのSNS−595は十分ではあり得ないだろうし、SNS−595を含んだ組み合わせ治療を検討すべきである。
【0019】
ガンがSNS−595治療に反応しているかどうかを決定するとき、始めの量とは、SNS−595を用いて治療したガン細胞におけるDNA−PK経路中の、少なくとも1種の構成タンパク質の量(処理後量)である。二番目の量とは、対照細胞におけるDNA−PK経路のある構成タンパク質の量(対照量)である。好ましくは、該対照量は、SNS−595を用いた治療を行う前のガンの細胞における、DNA−PK経路の構成タンパク質の量(処理前量)である。他の適切な対照細胞は、治療すべきガンと同じ細胞に由来する通常の細胞を含むが、それに限定されない。例えば、治療中のガンが卵巣ガンであれば、適切な対照細胞は非ガン性の卵巣細胞を含む。対照細胞は、治療される患者から得るか、又は治療中のガンと同じ型の通常組織から得ることができる。あるいは、HCT116結腸ガン細胞(SNS−595への耐性を示すために誘導されない)におけるDNA−PK経路の任意の構成タンパク質の量は、一般的に対照量として使用され得る。
【0020】
処理後の量が対照量以上である場合、該ガンは好ましく応答しており、SNS−595を用いた処理(単一、又は組み合わせの一部として)を続けるべきである。
本発明の別の態様として、SNS−595の機構を利用して、SNS−595の治療可能性を最大化させる組み合わせを提供する。ある実施態様において、組み合わせは以下のa、及びbを含んで提供する:
a)治療的有効量のSNS−595;
b)治療的有効量の、DNA合成阻害効果のある2番目の薬剤。
【0021】
加算性、又は相互作用の可能性を最大化するには、異なる作用機構を有する薬剤を選択する、という一般原則とは対照的に(例えば、R. Page、及びC.Takimotoの『化学療法の基礎』 、ガンの管理:多くの専門分野にわたるアプローチ(2001), p. 23を参照されたい)、SNS−595、及び同じくDNA合成を妨げる2番目の薬剤を含む組み合わせが、加算的である、又は相互作用をもたらすことがわかった。
【0022】
本明細書中に用いられているように、薬剤が、直接的、又は間接的に、細胞のDNA合成能力、又はDNA損傷修復能力に影響を与える場合、該薬剤はDNA合成を妨げる。該薬剤は直接的にDNAと相互作用することができ(例えば、結合する、又は間に入る)、又はDNA合成、或いはDNA修復に関与するDNA結合タンパクに結合し得る。一般的に、DNA合成を妨げる薬剤は、S期の間、活性であるが、S期に特異的にとは限らない。
【0023】
適切な2番目の薬剤は、DNA−PK経路を介してそれ自体の細胞毒性をも媒介する別の薬剤を含む。1つの例は、DNA−PK阻害剤のように非相同的末端結合修復を阻害する薬剤である。本明細書で用いられているように、DNA−PK経路阻害剤は、DNA−PKによって媒介されるシグナル経路を阻害する薬剤である。DNA−PKの活性の阻害は、DNA−PK自身の触媒阻害剤のような直接的であり得るかもしれず、又はDNA−PK、Ku70、及びKu80を含む活性DNA−PK複合体の形成を阻害する薬剤として間接的であるかもしれない。DNA−PK経路を介してそれ自体の細胞毒性を媒介する薬剤の他の例は、カスパーゼ−9アクチベーター、カスパーゼ−3アクチベーター、及びHsp90阻害剤のようなアポトーシス増幅剤と同様、リガーゼIV阻害剤を含む。
【0024】
DNA合成を阻害する薬剤の他の例は、アルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質、抗代謝剤、プラチナ配位複合体、トポイソメラーゼII阻害剤、及び放射線のような他の抗ガン剤を含む。これらのタイプの化合物にふさわしい標準用量、及び投薬管理は知られている(例えば、『医師用卓上参考書』, Medical Economics Company, Inc. Montvale, N.J., 59版, (2005)を参照されたい)。しかしながら、説明の目的のために、いくつかの例を以下に提供する。
【0025】
アルキル化剤は、非相特異的抗ガン剤であり、強い求電子試薬である。典型的に、アルキル化剤は、リン酸、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシル、及びイミダゾール基のようなアルキル化DNA部分によって共有結合を形成する。アルキル化剤の例は、ブスルファンのようなスルホン酸アルキル、クロラムブシル、シクロフォスファミド、及びメルファランのようなナイトロジェンマスタード、カルムスチンのようなニトロソ尿素、及びダカルバジンのようなトリアジンを含むが、限定されない。
抗腫瘍性抗生物質は、一般的に非相特異的な抗ガン剤であり、DNAに結合、又は間に挿入される。典型的に、そのような作用は安定なDNA複合体、又は鎖の切断をもたらす。抗生物質抗ガン剤の例は、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、及びドキソルビシンを含むが、それらに限定されない。
【0026】
抗代謝剤はDNA合成、又はその中間体を阻害することによって、細胞周期のS、又はDNA合成期に作用する。S期は進行しないので、細胞死が起こる。抗代謝剤の実例は、葉酸類似体、プリン類似体、アデノシン類似体、ピリミジン類似体、及び置換した尿素を含むが、それらに限定されない。葉酸類似体の例は、メトトレキサート、及びペメトレキセドを含む。プリン類似体の例は、メルカプトプリン、及びチオグアニジンを含む。アデノシン類似体の例は、クラドリビイン、及びペントスタチンを含む。ピリミジン類似体の例は、シタラビン、カペシタブリン、及びフルオロウラシルを含む。
【0027】
プラチナ配位複合体はDNAと相互作用する、非相特異的抗ガン剤である。プラチナ複合体は、腫瘍細胞に入り、DNAと、鎖内、又は鎖間クロスリンクを形成する。そのような細胞におけるDNA損傷の蓄積は、最終的に細胞死を導く。プラチナ配位複合体の例は、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンを含むが、限定されない。
【0028】
トポイソメラーゼII阻害剤は、典型的にトポイソメラーゼとDNAと共に3量体構造を形成することによって、細胞周期のG期に影響を与える。例えば、トポイソメラーゼII毒は、やがて細胞死に繋がるDNA鎖切断の蓄積をもたらす。トポイソメラーゼII阻害剤の例は、エトポシド、及びテニポシドのようなエピポドフィロトキシンを含むが、それらに限定されない。
【0029】
ある実施態様において、2回目の薬剤は、アルキル化剤である。別の実施態様において、該アルキル化剤はスルホン酸アルキルであり、治療中のガンは白血病、又はリンパ腫である。別の実施態様において、スルホン酸アルキルはブスルファンである。別の実施態様において、スルホン酸アルキルはブスルファンであり、治療的有効量は1日につき少なくとも1mgである。別の実施態様において、スルホン酸アルキルはブスルファンであり、治療的有効量は、1日につき約2mg〜約8mgの経口使用量である。別の実施態様において、スルホン酸アルキルはブスルファンであり、治療的有効量は、1日につき約1mg〜約3mgの経口使用量である。
【0030】
別の実施態様において、アルキル化剤はナイトロジェンマスタードであり、治療中のガンは、膀胱ガン、乳ガン、ホジキン病、白血病、肺ガン、黒色腫、卵巣ガン、又は精巣ガンである。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはクロラムブシルである。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはクロラムブシルであり、治療的有効量は、少なくとも0.1mg/kgである。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはクロラムブシルであり、治療的有効量は、3〜6週間、1日につき約0.1mg/kg〜約0.2mg/kgの経口投与量である。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはクロラムブシルであり、治療的有効量は、3〜4週間ごとに、0.4mg/kgの投与量である。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはシクロフォスファミドである。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはシクロフォスファミドであり、治療的有効量は、少なくとも10mg/kgの静脈内投与量である。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはシクロフォスファミドであり、治療的有効量は、7〜10日毎に、約10mg/kg〜約15mg/kgの静脈内投与量である。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはシクロフォスファミドであり、治療的有効量は、1日につき、約1mg/kg〜約5mg/kgの経口投与量である。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはメルファランである。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはメルファランであり、治療的有効量は、1日につき、少なくとも2mgである。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはメルファランであり、治療的有効量は、2〜3週間、1日につき、6mgの経口投与量であり、2〜4週間はメルファランがなく、それから1日につき、2mg〜4mgの経口投与量である。別の実施態様において、ナイトロジェンマスタードはメルファランであり、治療的有効量は、4〜6週間毎に4日間、1日につき10mg/mの経口投与量である。
【0031】
別の実施態様において、アルキル化剤はニトロソ尿素であり、治療中のガンが、脳腫瘍、直腸結腸ガン、ホジキン病、肝臓ガン、肺ガン、リンパ腫、又は黒色腫である。別の実施態様において、ニトロソ尿素はカルムスチンである。別の実施態様において、ニトロソ尿素はカルムスチンであり、治療的有効量は少なくとも150mg/mである。別の実施態様において、ニトロソ尿素はカルムスチンであり、治療的有効量は、6〜8週間毎に、約150mg/m〜200mg/mの静脈内投与量である。
【0032】
別の実施態様において、アルキル化剤はトリアジンであり、治療中のガンが、ホジキン病、黒色腫、神経芽細胞腫、又は軟部組織の肉腫である。別の実施態様において、トリアジンはダカルバジンである。別の実施態様において、トリアジンはダカルバジンであり、治療的有効量は、4週間毎の10日間において、1日につき、約2.0mg/kg〜約4.5mg/kgの静脈内投与量である。別の実施態様において、トリアジンはダカルバジンであり、治療的有効量は、3週間毎の5日間において、1日につき250mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、トリアジンはダカルバジンであり、治療的有効量は、16日毎に375mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、トリアジンはダカルバジンであり、治療的有効量は、4週間毎の5日間において、150mg/mの静脈内投与量である。
【0033】
別の実施態様において、該2番目の薬剤が抗腫瘍性の抗生物質であり、治療中のガンが、膀胱ガン、乳ガン、子宮頸ガン、頭頸部ガン、ホジキン病、白血病、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣ガン、肉腫、皮膚ガン、精巣ガン、又は甲状腺ガンである。別の実施態様において、抗生物質がブレオマイシンである。別の実施態様において、抗生物質はブレオマイシンであり、治療的有効量は、少なくとも10ユニット/mである。他の実施態様において、抗生物質はブレオマイシンであり、治療的有効量は、週毎、又は2週毎に、約10ユニット/m〜約20ユニット/mの静脈内、皮下、又は筋肉内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はダクチノマイシンである。別の実施態様において、抗生物質はダクチノマイシンであり、治療的有効量は少なくとも0.01mg/kgである。別の実施態様において、抗生物質はダクチノマイシンであり、治療的有効量は、3週間毎の5日間において、1日につき0.010mg/kg〜0.015mg/kgの静脈内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はダクチノマイシンであり、治療的有効量は3、又は4週間毎に2mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はダウノルビシンである。別の実施態様において、抗生物質はダウノルビシンであり、治療的有効量は、少なくとも30mg/mである。別の実施態様において、抗生物質はダウノルビシンであり、治療的有効量は3日間の1日につき、約30mg/m〜約45mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はリポソーム調製のダウノルビシンであり、治療的有効量は、2週間毎に40mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はドキソルビシンである。別の実施態様において、抗生物質はドキソルビシンであり、治療的有効量は、少なくとも15mg/mである。別の実施態様において、抗生物質はドキソルビシンであり、治療的有効量は3週間毎に、約60mg/m〜90mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はドキソルビシンであり、治療的有効量は、毎週、約15mg/m2〜約20mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、抗生物質はドキソルビシンであり、治療的有効量は、2週間のドキソルビシンの非投与に続いて2週間、毎週30mg/mの静脈内投与量を含むサイクルである。
【0034】
別の実施態様において、該2番目の薬剤は、代謝拮抗剤である。別の実施態様において、代謝拮抗剤は葉酸類似体であり、かつ治療中のガンは乳ガン、頭頸部ガン、白血病、肺ガン、非ホジキンリンパ腫、又は骨肉腫である。別の実施態様において、葉酸類似体はメトトレキセートである。別の実施態様において、葉酸類似体はメトトレキセートであり、治療的有効量は、少なくとも2.5mgである。別の実施態様において、葉酸類似体はメトトレキセートであり、治療的有効量は、1日につき、約2.5mg〜約5mgの経口投与量である。別の実施態様において、葉酸類似体はメトトレキセートであり、治療的有効量は、1週につき2回、約5mg/m〜約25mg/mの投与量である。別の実施態様において、葉酸類似体はメトトレキセートであり、治療的有効量は、2〜3週間毎に、1週につき50mg/mの静脈投与量である。別の実施態様において、葉酸類似体はペメトレキセドである。別の実施態様において、葉酸類似体はペメトレキセドであり、治療的有効量は少なくとも300mg/mである。別の実施態様において、葉酸類似体はペメトレキセドであり、治療的有効量は2、又は3週間毎に約300mg/m〜約600mg/mの静脈投与量である。別の実施態様において、葉酸類似体はペメトレキセドでああり、治療的有効量は3週間毎に、500mg/mの静脈投与量である。
【0035】
別の実施態様において、代謝拮抗剤はプリン類似体であり、治療中のガンは結腸直腸ガン、白血病、又は骨髄腫である。別の実施態様において、プリン類似体はメルカプトプリンである。別の実施態様において、プリン類似体はメルカプトプリンであり、治療的有効量は少なくとも1.5mg/kgである。別の実施態様において、プリン類似体はメルカプトプリンであり、治療的有効量は、1日につき約1.5mg/kg〜約5mg/kgの経口投与量である。別の実施態様において、プリン類似体はチオグアニジンである。他の実施態様において、プリン類似体はチオグアニジンであり、治療的有効量は、少なくとも2mg/kgである。別の実施態様において、プリン類似体はチオグアニジンであり、治療的有効量は、約2mg/kg〜約3mg/kgの経口投与量である。
【0036】
別の実施態様において、代謝拮抗剤はアデノシン類似体であり、治療中のガンは、白血病、又はリンパ腫である。別の実施態様において、アデノシン類似体はクラドリビインである。別の実施態様において、アデノシン類似体はクラドリビインであり、治療的有効量は、少なくとも0.09mg/kgである。別の実施態様において、アデノシン類似体はクラドリビインであり、治療的有効量は7日間の1日につき、0.09mg/kgの静脈内投与量である。別の実施態様において、アデノシン類似体はクラドリビインであり、治療的効果量は、7日間の1日につき4mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、アデノシン類似体はペントスタチンである。別の実施態様において、アデノシン類似体はペントスタチンであり、治療的有効量は4mg/mである。別の実施態様において、アデノシン類似体はペントスタチンであり、治療的効果量は隔週毎に、4mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、アデノシン類似体はペントスタチンであり、治療的有効量は、3週間毎に4mg/mの静脈内投与量である。
【0037】
別の実施態様において、代謝拮抗剤はピリミジン類似体であり、治療すべきガンは、膀胱ガン、乳ガン、結腸直腸ガン、食道ガン、頭頸部ガン、白血病、肝臓ガン、リンパ腫、卵巣ガン、膵臓ガン、皮膚ガン、又は胃ガンである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はシタラビンである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はシタラビンであり、治療的効果量は、少なくとも100mg/mである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はシタラビンであり、治療的有効量は7日間の1日につき100mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、ピリミジン類似体はカペシタビンである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はカペシタビンであり、治療的有効量は、少なくとも一日につき2000mg/mである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はカペシタビンであり、治療的有効量は、14日間、約1200mg/m2〜約1300mg/mの1日2回の経口投与量である。別の実施態様において、ピリミジン類似体はカペシタビンであり、治療的有効量は3週間サイクルであり、約1250mg/mの1日2回投与量は、1週間の休息の後に14日間与えられる。別の実施態様において、ピリミジン類似体はフルオロウラシルである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はフルオロウラシルであり、治療的有効量は、少なくとも10mg/kgである。別の実施態様において、ピリミジン類似体はフルオロウラシルであり、治療的有効量は、少なくとも3日間の1日につき、約300mg/m〜約500mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、ピリミジン類似体はフルオロウラシルであり、治療的有効量は、3〜5日間の1日につき12mg/kgの静脈内投与量である。別の実施態様において、ピリミジン類似体はフルオロウラシルであり、治療的有効量は、毎週、約10mg/kg〜約15mg/kgの静脈内投与量である。
【0038】
別の実施態様において、代謝拮抗剤は置換尿素であり、治療すべきガンが、頭頸部ガン、白血病、黒色腫、又は卵巣ガンである。別の実施態様において、置換尿素はヒドロキシ尿素である。別の実施態様において、置換尿素はヒドロキシ尿素であり、治療的有効量は、少なくとも20mg/kgである。別の実施態様において、置換尿素はヒドロキシ尿素であり、治療的有効量は3日毎、80mg/kgの経口投与量である。別の実施態様において、置換尿素はヒドロキシ尿素であり、治療的有効量は、1日につき、約20mg/kg〜約30mg/kgの間の経口投与量である。
【0039】
別の実施態様において、該2回目の薬剤がプラチナ配位複合体であり、治療中のガンが、膀胱ガン、乳ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、頭頸部ガン、白血病、肺ガン、リンパ腫、卵巣ガン、肉腫、精巣ガン、又は子宮ガンである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はカルボプラチンである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はカルボプラチンであり、治療的有効量は、少なくとも300mg/mである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はカルボプラチンであり、治療的有効量は、4週毎に、少なくとも300mg/mである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はカルボプラチンであり、治療的効果量は4週毎に300mg/mである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はカルボプラチンであり、治療的有効量は4週毎に、少なくとも360mg/mである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はシスプラチンである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はシスプラチンであり、治療的有効量は、少なくとも20mg/mである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はシスプラチンであり、治療的有効量は3〜4週毎の4〜5日において、1日につき20mg/mの静脈投与量である。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はシスプラチンであり、治療的有効量は、3週毎に50mg/mの静脈投与量である。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はオキサリプラチンである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はオキサリプラチンであり、治療的有効量は、少なくとも75mg/mである。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はオキサリプラチンであり、治療的有効量は、約50mg/m〜約100mg/mの間である。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はオキサリプラチンであり、治療的有効量は、2週毎に、約50mg/m〜約100mg/mの間のIV注入である。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はオキサリプラチンであり、治療的有効量は2週毎に、約80mg/m〜約90mg/mの間のIV注入である。別の実施態様において、プラチナ配位複合体はオキサリプラチンであり、治療的有効量は、2週毎に85mg/mの2〜4時間にわたるIV注入である。
【0040】
別の実施態様において、該2番目の薬剤はトポイソメラーゼII阻害剤であり、治療中のガンが、ホジキン病、白血病、小細胞肺ガン、肉腫、又は精巣ガンである。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドである。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドであり、治療的有効量は、少なくとも35mg/mである。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドであり、治療的有効量は、約50mg/m〜約100mg/mの間である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドであり、治療的効果量は、3〜4週毎の5日において、少なくとも3回、一日につき、約35mg/m〜約50mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドであり、治療的効果量は3〜4週毎の5日において少なくとも3回、1日につき約50mg/m〜約100mg/mの静脈内投与量である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドであり、治療的有効量は、3、又は4週につき5日間において少なくとも3回、1日につき100mg/mの経口投与量である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はテニポシドである。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はテニポシドであり、治療的有効量は、少なくとも20mg/mである。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はテニポシドであり、治療的有効量は、一週につき100mg/mの投与量である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はテニポシドであり、治療的有効量は、週に2回、100mg/mの投与量である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はテニポシドであり、治療的有効量は、5日間で、一日につき、約20mg/m〜60mg/mの間である。別の実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤はテニポシドであり、治療的有効量は、5日間で、一日につき約80mg/m〜約90mg/mの間の投与量である。
すべての引用文献は、引用によって本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
(注射、又は静脈内注入に適した医薬組成物)
酸性組成物(<pH4)が、SNS−595の可溶性を適切なバランスで増加させ、好ましい医薬特性を与えた(例えば、輸送部位における刺激を少なくすることによって、患者の快適性を増加させる)。適切な組成物の実例は、メタンスルホン酸を用いてpHを2.5に調製した、4.5%ソルビトール溶液の水溶液1mLに対して10mgのSNS−595を含む。そのような100mg/10mLの濃度の溶液を作る一つの手順は:100mgのSNS−595、及び450mgのD−ソルビトールを蒸留水に加え;該体積を10mLの容量に合わせ;出来た溶液のpHを、メタンスルホン酸を用いて2.5に調製することを含む。出来た組成物は、凍結乾燥にも適している。凍結乾燥された形態は、使用に先立って、蒸留水を用いてその後適切な濃度にまでもどされる。
【0042】
(実施例2)
(ガン患者におけるSNS−595の薬物動態)
SNS−595を、最高6回周期まで被験患者へ投与した。1周期を3週間として定義し、各周期の最初の日(0日)にSNS−595を投与して、その後少なくとも21日間観察した。SNS−595を少なくとも3名の患者の集団に投与し、また投与量の段階的増加を順次集団ごとに行った。SNS−595の用量は、濃度曲線下面積が無限大の直線であり、その薬物動態特性は、同集団内の患者間で著しく一致していた。表1は、患者の経時的なSNS−595の血漿濃度から算出した薬物動態パラメータを示している。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例3)
(薬力学研究)
Nu/nuマウス(約25グラム)に、50%マトリゲル(Becton-Dickinson)と共に、500万個のHCTI細胞(ATCCから獲得された)をわき腹に注入した。腫瘍は、400mmまでの成長が許された。異種移植片を有した動物に、それから尾の静脈にSNS−595(20、又は40mg/kg)のIVボーラス注入、又は生理食塩水のどちらかを与えた。所定の時間(投与から1、2、4、8、16、及び24時間後)において、動物をCOで麻酔し、血液を末端心臓穿刺を介して摂取し、動物は犠牲になった。腫瘍を切除し、液体窒素で冷却した乳鉢、及び乳棒を用いて粉々にし、液体窒素中で急速冷凍した。腫瘍溶解物を、溶解バッファーの添加によって、粉々にされたサンプルから作成した。
【0045】
DNA−PK経路の構成タンパク質のタンパク濃度を、ウエスタンブロットによって決定した。SDS−PAGEゲルの1レーンにつき、約25マイクログラムのタンパクを充填した。タンパクを電気泳動ゲルによって分離し、ニトロセルロース膜上に吸い取らせ、下記の抗体を用いて検出した:S139でリン酸化した、H2AX (Cell Signaling, catalog no. 2577L);S15でリン酸化した、p53(Cell Signaling, catalog no. 9284S);S37でリン酸化した、p53(Cell Signaling, catalog no. 9289S);p21(Cell Signaling, catalog no. 2946);Y15でリン酸化した、cdc2 (Calbiochem, catalog no. 219437);cyclinB(Santa Cruz, catalog no.sc- 594 (H-20));Y99でリン酸化した、p73(Cell Signaling, catalog no.4665L);T735でリン酸化した、cAbl(Cell Signaling, catalog no. 2864S);及び、S317でリン酸化した、CHK1(Cell Signaling, catalog no. 2344L)。
図3は、SNS−595で治療する腫瘍において活性化されたDNA−PK経路の典型的な構成タンパク質のレベルを示している。
【0046】
(実施例4)
(SNS−595を用いた組み合わせ研究)
HCT116細胞を、100μl/ウェルのRPMI−1640培地(10%ウシ胎児仔血清、1%抗生物質/抗カビ剤、及び1.5%重炭酸ナトリウムを与えられている)と共に、透明な96ウェルプレートに約4e細胞/ウェルの密度で植え、5%CO、37℃で24時間培養処理した。SNS−595を、単独、または一定の割合で別の細胞毒性化合物と混合して、終濃度が5μM〜5nMの間になるように加えた。DMSOの終濃度は、アッセイプレートにおいて1%であった。処理された細胞を、20μl/ウェルの3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)を1時間加える前に、5%CO、37℃で72時間インキュベートされ、続いて100μl/ウェルのn,n−ジメチルフォルムアミド/SDS溶解バッファーに、少なくとも16時間インキュベートした。該プレートの吸光度は595nmの波長で読まれる。該データはコンビネーションインデックス(線量効果解析のソフトウエア、Calcusyn V2(Biosoft)を用いて計算された)を用いた相互作用を定量化する半有効法を用いて詳しく調べる。コンビネーションインデックスが、0.90〜1.10である場合、組み合わせは、加算的であると言われる。コンビネーションインデックスが0.90未満である場合、組み合わせは、相乗的であると言われ、コンビネーションインデックスが1.10以上の場合、組み合わせが、対立的であると言われる。全てのコンビネーションインデックスが0.5のFa値であった時、細胞の50%は死んでいた。表2を参照されたい。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例5)
HCT−116結腸ガン細胞を、5%CO、100μl/ウェルのRPMI−1640培地(10%ウシ胎児仔血清、1%抗生物質/抗カビ剤、及び1.5%重炭酸ナトリウムを与えられている)と共に、透明な96ウェルプレートに約4e5細胞/ウェルの密度で植え、37℃で24時間培養処理した。いくつかの細胞は、100nMのウォートマンニンで、8〜16時間処理した。SNS−595をそれから連続希釈法として加え、細胞は、5%CO、37℃で72時間、インキュベートされた。MTT(5mg/mlストック溶液の、20μl/ウェル)を1時間加え、次に少なくとも16時間、N,N−ジメチルホルムアミド/SDS溶解バッファーを加えた。吸光度を595nmで監視し、データを非線形回帰によって適合し、ウォートマンニンの存在、及び非存在下において、SNS−595による細胞の成長(IC50)の阻害を決定する。HCT−116細胞中のSNS−595のためのIC50は、ウォートマンニン非存在下よりも、存在下において、3〜6倍低かった。同様な結果は、HCT−116細胞の代わりにDNA−PK欠失細胞株(約10倍の感作)を使用した場合に見られた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、3つの主要なDNAダメージ、及び修復経路を説明している。
【図2】図2は、SNS−595で処理したHCT 116細胞におけるDNA−PK経路の典型的な構成タンパク質の用量依存的な反応を示している。
【図3】図3はマウスの腫瘍における、DNA−PK経路の典型的な構成タンパク質の活性化を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療すべきガン細胞におけるDNA−PK経路の、少なくとも1つの構成タンパク質の始めの量を測定すること、及び該始めの量と2回目の量とを比較することを含む方法。
【請求項2】
前記始めの量が治療前の量であり、前記2回目の量が治療すべきガンと同じ組織に由来する正常細胞における、DNA−PK経路の構成タンパク質の量である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記DNA−PK経路の構成タンパク質が、DNA−PK、Ku70、Ku80、MRE11、NBS1、RAD50、XRCC4、リガーゼIV、H2AX、c−Abl、p53、p73、p21、カスパーゼ−9、及びカスパーゼ−3から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記始めの量が治療前の量であり、かつ前記2回目の量が治療後の量である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該DNA−PK経路の構成タンパク質が、DNA−PK、Ku70、Ku80、MRE11、NBS1、RAD50、XRCC4、リガーゼIV、H2AX、c−Abl、p53、p73、p21、カスパーゼ−9、及びカスパーゼ−3から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
該DNA−PK経路の構成タンパク質がDNA−PKである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
該DNA−PK経路の構成タンパク質がKu70である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
該DNA−PK経路の構成タンパク質がKu80である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
a)治療的有効量のSNS−595、及びb)細胞毒性が、また、DNA−PK経路を媒介した、治療的有効量の2番目の薬剤を含む組み合わせ。
【請求項10】
前記2番目の薬剤が、非相同的末端結合修復を阻害する薬剤である、請求項9記載の組み合わせ。
【請求項11】
前記2番目の薬剤が、DNA−PK阻害剤である、請求項10記載の組み合わせ。
【請求項12】
前記2番目の薬剤が、リガーゼIV阻害剤である、請求項10記載の組み合わせ。
【請求項13】
前記2番目の薬剤が、アポトーシス増進剤である、請求項9記載の組み合わせ。
【請求項14】
前記2番目の薬剤が、カスパーゼ−9活性化剤である、請求項13記載の組み合わせ。
【請求項15】
前記2番目の薬剤が、カスパーゼ−3活性化剤である、請求項13記載の組み合わせ。
【請求項16】
前記2番目の薬剤が、Hsp90阻害剤である、請求項13記載の組み合わせ。
【請求項17】
a)治療的有効量のSNS−595、及びb)DNA合成を妨げることのできる、治療的有効量の2番目の薬剤を含む組み合わせ。
【請求項18】
前記2番目の薬剤が、アルキル化剤である、請求項17記載の組み合わせ。
【請求項19】
前記アルキル化剤が、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、又はトリアゼンである、請求項18記載の組み合わせ。
【請求項20】
前記2番目の薬剤が、抗腫瘍性抗生物質である、請求項17記載の組み合わせ。
【請求項21】
前記2番目の薬剤が、代謝拮抗剤である、請求項17記載の組み合わせ。
【請求項22】
前記代謝拮抗剤が、葉酸類似物質、プリン類似物質、アデノシン類似物質、ピリミジン類似物質、又はヒドロキシ尿素である、請求項21記載の組み合わせ。
【請求項23】
前記2番目の薬剤が、プラチナ配位複合体である、請求項17記載の組み合わせ。
【請求項24】
前記2番目の薬剤が、トポイソメラーゼII阻害剤である、請求項17記載の組み合わせ。
【請求項25】
前記2番目の薬剤が、放射物である、請求項17記載の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−529524(P2007−529524A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503972(P2007−503972)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/008036
【国際公開番号】WO2005/089756
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500586635)サネシス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (29)
【Fターム(参考)】