X線平面検出器
【課題】 基板の反りや剥がれ、感光膜の特性を改善したX線平面検出器を提供する。
【解決手段】 本発明のX線平面検出器は、X線電荷変換膜210の一方の面に設けられた上部電極212と、X線電荷変換膜210の他方の面に設けられた画素電極503と、X線電荷変換膜210と画素電極503との間に介在する有機膜504とを具備している。
【解決手段】 本発明のX線平面検出器は、X線電荷変換膜210の一方の面に設けられた上部電極212と、X線電荷変換膜210の他方の面に設けられた画素電極503と、X線電荷変換膜210と画素電極503との間に介在する有機膜504とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用X線診断装置のX線平面検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野においては、治療を迅速かつ的確に行うために、患者の医療データをデータベース化する方向へと進んでいる。これは、患者はしばしば複数の医療機関を利用するので、的確な治療行為を行うために他の医療機関のデータが必要になるためである。
【0003】
X線撮影の画像データについてもデータベース化の要求があり、それに伴って、X線撮影画像のデジタル化が望まれている。従来、医用X線診断装置では、銀塩フィルムを使用して画像を撮影している。このような画像をデジタル化するためには、撮影したフィルムを現像した後、スキャナなどで読み取る操作が必要となり、手間と時間がかかっていた。
【0004】
最近は、光電膜、加速電極、蛍光膜を設けた大きな真空管と1インチ程度のCCDカメラを使用し、直接画像をデジタル化するイメージインテンシファイアTV(II−TV)方式が実現されている。しかし、例えば、肺の診断では、40cm×40cm程度の領域を撮影するため、光を集光する光学装置が必要であり、装置の大型化が問題になっている。
【0005】
これら2方式の問題を解決する方式としてa−Si TFT(アモルファスシリコン薄膜トランジスタ)を用いたX線平面検出器が提案されている。
【0006】
このX線平面検出器では、a−Si TFT、光電変換膜及び画素容量により画素が構成され、この画素は縦横の各辺に数百個から数千個並んだアレイ状(以下TFTアレイと呼ぶ)に配列されている。
【0007】
光電変換膜には電源からバイアス電圧が印加される。a−Si TFTは、信号線と走査線に接続しており、走査線駆動回路によってオン・オフ制御される。信号線の終端は、切り替えスイッチを介して信号検出用の増幅器に接続されている。
【0008】
光が入射すると光電変換膜に電流が流れ、画素容量に電荷が蓄積される。走査線駆動回路で走査線を駆動し、1つの走査線に接続している全てのTFTをオンにすると、蓄積された電荷は信号線を通って増幅器側に転送される。切り替えスイッチで、1画素ごとに電荷を増幅器に入力し、CRT等に表示できるように順次信号に変換する。画素に入射する光の量によって電荷量が異なり、増幅器の出力振幅は変化する。
【0009】
このような方式は、増幅器の出力信号をA/D変換することで、直接ディジタル画像にすることが出来る。更に、画素領域は、ノートパソコンに使用されているTFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)と同様の構造であり、薄型、大画面のものを容易に製作することが可能である。
【0010】
以上の説明は、入射したX線を蛍光体等で可視光線に変換し、変換した光を各画素の光電変換膜で電荷に変えるという間接変換方式のX線平面検出器についてのものである。この間接変換方式のX線平面検出器では、以下のような欠点を有していた。すなわち、X線が蛍光体に入射した際、蛍光体を構成する媒体中で、X線が変換された可視光が散乱し、解像度が低下するという問題が存在する。
【0011】
この間接変換方式のX線平面検出器に対し、画素に入射したX線を直接電荷に変換する直接変換方式のX線平面検出器がある。この直接変換方式のX線平面検出器では、光電変換膜で直接X線を電荷に変換し、画素容量に蓄積することが、間接変換型と異なる。即ち、間接変換型X線平面検出器から蛍光体を除いた構成を有する。
【0012】
この直接変換方式のX線平面検出器では、ガラス基板上に、キャパシタ電極、絶縁層及び補助電極の積層構造からなる蓄積容量と、この蓄積容量に接続されたスイッチングTFT及び保護用ダイオードが形成されている。これらの各部材の上に保護膜が形成されており、この保護膜には、補助電極上にコンタクトホールが形成されている。保護膜上には画素電極(コンタクトホールを介して補助電極と接続される)、X線電荷変換膜、及び共通電極(上部電極)が順次積層されている。以上のように構成される画素は、アレイ状に配置される。
【0013】
X線が入射すると、X線は、X線電荷変換膜で電荷に変換され、電荷は共通電極と画素電極との間に印加された電界により加速され、蓄積容量に蓄積される。スイッチングTFTは、走査線を介して駆動され、蓄積容量に蓄積された電荷を信号線へ転送する。保護用ダイオードは過度の電荷が発生した場合に、電荷を逃がし、電圧が絶縁層の破壊電圧以下にするように機能する。この直接変換方式のX線平面検出器では、蛍光体が存在せず、X線が直接X線電荷変換膜で電荷に変換されるため、間接変換方式のような、可視光の散乱による解像度の低下という問題が発生しないという利点を有する。
【非特許文献1】R.A. Street et al.,SPIE Vol.3659,p.36,1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、X線により発生した信号電荷は速やかに画素電極に到達し、蓄積容量に蓄積されなければならない。X線電荷変換膜内に信号電荷が残る場合、前の画像パターンが残る残像、解像度の低下等の画像不良が発生する。このような画像不良は、X線電荷変換膜内に残った信号電荷が新たにX線により発生した信号電荷の走行に影響を及ぼすために発生することが多い。また、X線電荷変換膜に欠陥が多い場合には、欠陥を通して電流が流れるため、暗電流が大きいという問題も発生する。X線電荷変換膜はPbI2、HgI2、BiI3等のような金属ハライドにより構成され、特にPbI2は材料的には優れた特性が期待されるが、実際に薄膜を形成した場合には結晶性が不十分なため、上記の様な、残像、解像度不良、大きな暗電流等の問題がある。従って十分な特性の膜は実現できていないのが現状である(例えば非特許文献1参照)。上記の材料はいずれも熱膨張係数が大きいため基板に用いられるガラス等との熱膨張係数の差が大きく、基板の反りや、またX線感光膜へのクラック発生等の問題が発生し、X線感光特性を劣化させる。また基板との熱応力によるハガレが発生する。
【0015】
また、別の問題として下地電極上には上部感光膜との絶縁のために絶縁膜が形成され、この絶縁膜にはコンタクト用の穴が形成され、この部分で段差が発生する。この部分に成膜されたX線感光膜は成長方位が平坦部と異なるために結晶性が劣化し、これに伴いX線感光特性も劣化する。このようなX線感光膜の特性改善のためには、下地基板の改善が必要である。
【0016】
以上のように、従来のX線平面検出器では、下地基板との熱応力や不整合のためにX線感光膜の特性の劣化やハガレが発生するという問題が存在する。また、別の問題として下地基板の凸凹部での結晶性の劣化が存在する。これに伴いX線感光特性も劣化する。本発明は、以上のような事情の下になされ、基板の反りや剥がれ、感光膜の特性を改善したX線平面検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために本発明のX線平面検出器は、X線電荷変換膜と、前記X線電荷変換膜の一方の面に設けられた第1の電極と、前記X線電荷変換膜の他方の面に設けられた第2の電極と、前記X線電荷変換膜と前記第2の電極との間に介在する有機膜とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のX線平面検出器によれば、X線電荷変換膜に接して有機膜を形成しているため、基板が平坦化し、その上に成長するX線感光膜の特性が改善する。また、有機膜と基板との熱膨張係数の差が小さいために熱応力が減少し、感光膜の剥がれ、基板の反りが改善する。これによりX線感光膜の特性が改善し高性能のX線平面検出器を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に本発明の実施例1に係るX線平面検出器の断面図を示す。ガラス基板101上に、幅10μm程度、厚さ300nm程度であり、モリブデンータンタル(MoTa)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)モリブデンータングステン(MoW)から選ばれる一層、あるいはTaとTaNxとの積層体からなるスイッチングTFTのゲート電極102、及び幅80μm程度、厚さ300nm程度であり、ゲート電極102と同一材料からなる蓄積容量404の電極21が形成されている。ゲート電極102、電極21を含む基板101上には厚さ350nm程度であり、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、又はSiOxとSINxの積層体である絶縁膜103が形成されている。
【0021】
スイッチングTFT402のゲート電極102上には絶縁膜103を介して、スイッチングTFT402のバックゲート領域となる100nm程度の膜厚のアンドープ非晶質シリコン(a―Si)層104が形成されている。a−Si層104はゲート電極102の形状を反映して上に凸状となっている。a−Si層104の凸状表面にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域を区画するため、窒化シリコンからなるストッパ105が約200nmの膜厚に形成されている。a−Si層104上にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域となる高濃度n型(n+)a−Si層106が膜厚50nmで形成されており、n+a−Si層106に形成された開口、およびストッパ105により、ソース/ドレイン領域を構成している。
【0022】
n+a−Si層106、絶縁膜103を覆うように、約50nmのモリブデン、約350nmのアルミニウム、約20〜50nmのモリブデンの積層体である補助電極502が形成されており、n+a−Si層106と電気的に接続されている。この補助電極502はその構造上、信号線408、TFT402のソース、ドレインと同一層となっている。
【0023】
補助電極502を覆うようにして、膜厚約200nmの窒化シリコン、及び膜厚約1〜5μmのアクリル系有機樹脂膜からなる保護膜107を積層する。この保護膜107には補助電極502の表面を露出させるコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホール表面、および保護膜107上に画素電極503が形成される。そして画素電極503を覆うように有機膜504が形成されている。この有機膜504は保護膜107中のコンタクトホールを埋め込むように形成されており、有機膜504の表面は平坦化されている。
【0024】
有機膜504上には約300μmの膜厚の、ヨウ化鉛(PbI2)からなるX線電荷変換膜210が形成されている。X線電荷変換膜210上面にはPdからなる、X線が変換された電荷を加速するための上部電極が、200nm程度の膜厚で形成されている。
【0025】
以上の構成のX線平面検出器によれば、有機膜504として、熱膨張係数が基板、及びX線電荷変換膜210の材料である金属ハロゲン化物とほぼ同等のアクリル系有機樹脂を用いているため、熱応力を減少させ、基板との熱膨張係数の差があることによる基板の反り、X線電荷変換膜210へのクラック発生等の問題が生じない。また、保護膜107のコンタクトホールによる段差を有機膜504でカバーすることができるため、下部形状が平坦でないことによるX線電荷変換膜210の結晶性の劣化を防止し、X線感光特性の劣化を防ぐことが可能となる。
【0026】
本実施例に係るX線平面検出器において、X線電荷変換膜210は、金属ハロゲン化物により構成されるが、これは金属ハロゲン化物のX線電荷変換効率が高いためである。X線電荷変換膜210を構成する金属ハロゲン化物としては、X線の吸収効率を良好にするために、X線吸収係数の大きい材料が好ましい。このような金属ハロゲン化物の金属としてはPb、Hg、Tl、Bi、Cd、In、Sn、Sbが好ましい。この中で特にX線吸収係数の大きいPb、Hg、Biが好ましい。ハロゲンとしてはCl、Br、Iが好ましく、特にX線吸収係数の大きいIが好ましい。これらの金属ハロゲン化物は基本的には六方晶系をとり、格子常数が近い値を取る。これらの材料は抵抗率が高いため、暗電流を低下させることができ、そのため微小な信号を検出することができるので、X線平面検出器の性能を上げることができる。これらの材料のうち、BiI3 等はIの六方構造の原子の一部が欠けているが、一部に欠けが存在しても格子整合の効果は六方構造が完全な場合と大差が無い。これらの格子常数に近い値を取る材料を基板とすることにより、高品質のX線光電変換膜を得ることが出来る。
【0027】
これらの金属ハロゲン化物材料は、熱膨張率が5×10-5から5×10-4/℃と通常用いられるガラス基板の5×10-6と比べ非常に大きな値を取る。Seも3×10-5/℃と大きい。このため、基板との熱膨張係数が大きく、ガラス基板の反り、膜のクラック、剥がれ等が発生する。これに対して、PVA,アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の有機膜は3×10-5〜10×10-5/℃程度であり、ガラス基板の熱膨張率と同程度の大きな熱膨張率を有する。またこれら有機膜は可塑性が大きいためX線感光膜と基板の間に発生した熱応力を緩和することができる。これにより上記の基板の反り、膜のクラック、剥がれ等の問題の対策ができる。
【0028】
次に図2〜11を参照して本実施例に係るX線平面検出器の形成方法について説明する。図3は図2のA−A断面図、図5は図4のA−A断面図、図7は図6のA−A断面図、図9は図8のA−A断面図、図11は図10のA−A断面図をそれぞれ示す。
【0029】
まず、図2、3に示すように、ガラス基板101上にMoTa、Ta、TaN、Al、Al合金、Cu、MoW等からなる膜を1層、又はTaとTaNx の2層を約300nmの厚さに堆積し、エッチングによりパターニングして、スイッチングTFT402及び保護ダイオードのゲート電極402,411、ゲート配線102、走査線405、蓄積容量404の電極102a、及び蓄積容量線406を形成する。次いで、プラズマCVD法により絶縁膜103として、SiOx を約300nm、SiNx を約50nmの厚さに積層する。
【0030】
次に図4、5に示すように、a−Si層104を約100nmの厚さに、窒化シリコンからなるストッパ105を約200nmの厚さにそれぞれ堆積する。
【0031】
ストッパ105の材料堆積後、図6、7に示すようにストッパ105を裏面露光法によりゲート電極102にあわせてパターニングし、その上にn+a−Si層106を約50nmの厚さに堆積した後、トランジスタの形状にあわせてa−Si層104及びn+a−Si層106をエッチングし、島状のa−Si層104及びn+a−Si層106を形成する。そして、図示しないが、画素エリア内外のコンタクト部の絶縁膜103をエッチングし、コンタクトホールを形成する。コンタクトホール形成後、モリブデンを約50nm、アルミニウムを約350nm、そして更にモリブデンを約20nm〜50nmの厚さにぞれぞれスパッタ法により積層し、補助電極502、信号線408、スイッチングTFT402のソース、ドレインその他の配線(図示せず)を形成する。
【0032】
その後、図8、9に示すように窒化シリコンを約200nm、その上にアクリル系有機樹脂膜(オプトマHRC:商品名、日本合成ゴム社製)を約1〜約5μm、好ましくは約3.5μmの厚さに積層して、保護膜107を形成する。なお、有機樹脂膜としてオプトマHRCの代わりにBCB、PI(ポリイミド)等の有機膜を用いても良い。これらの有機膜は200℃以上の耐熱温度を有することが好ましい。耐熱温度とは熱分解が発生する温度を言う。保護膜107堆積後、保護膜107に補助電極502へのコンタクトホール600を形成する。
【0033】
その後、図10、11に示すように、ITO(Indium Tin Oxide)膜を100nm成膜する。ITO膜はITOターゲットを用いたスパッタ法で成膜される。そしてパターニングを行い、画素電極503を得る。なお、ITO膜の形成法は蒸着等の他の方法でも良く、また、ITO膜はアモルファスでも多結晶でも良い。
【0034】
そしてこの保護膜107上に有機膜504としてアクリル系有機樹脂(オプトマHRC)を塗布する。塗布はスピンコートでもスリット塗布でも良い。この有機膜504は電極をかねることができるために抵抗率が低い方が良い。しかし、抵抗率が低すぎると隣接画素に信号電荷が伝導してしまう。抵抗率は1×105〜1×1013Ωcmが好ましい。さらに1×106〜1×1012Ωcmがより好ましい。有機膜504の抵抗を下げるために、有機膜504に顔料、炭素粒子、金属粒子を混合することができる。なお、有機膜を画素毎に分離する場合には抵抗率は低いほど良い。有機膜504の膜厚は厚い程コンタクトホール600を平坦化するためには良いが、画素分離しない場合には膜厚が厚いと隣接画素に信号が逃げてしまう不都合が生じる。このため有機膜504の膜厚は50nm〜10μm程度の間で選択すれば良い。本実施例では平坦化を重視し、抵抗率を1×10-7Ωcm、膜厚を3μmとした。有機膜504はフォトリソグラフィ法により、感光性樹脂を用いマスクによりITO画素とほぼ同じサイズにパターニングする。この有機膜層の形成によりコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できる。基板上ではX線感光膜は基板に平行に結晶面が形成される。例えば、PbI2では基板に平行にc面が形成される。同様に段差の傾斜部でも傾斜に沿ってc面が形成される。このため基板平面と段差傾斜の交差部ではことなった結晶平面が形成され、粒界が衝突する。この部分では異なる方位の結晶が併存するため、粒界欠陥が多数存在し、暗電流の増加やX線感度の劣化等の特性劣化が発生する。これに対し本発明ではコンタクト部が平坦化されるため、このような暗電流の増加やX線感度の劣化等の問題は発生しない。また、アクリル型樹脂はPbI2の8×10-5/℃とほぼ同じ熱膨張係数を持ち、可塑性が大きいため基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力を緩和するため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和でき、又感光膜の基板界面部での膜質劣化が少ないため、感度の低下、暗電流の増大等が少なく検出器の特性が改善できる。
【0035】
次に、図1に示すように、画素電極504上に、蒸着により高抵抗のPbI2膜からなるX線電荷変換膜210を約100〜1000μm、好ましくは300μmの膜厚に成膜する。このX線電荷変換膜210aの上に、Pdを200nmの厚さに、PbI2膜210aの周辺から1cm離した領域のほぼ全面に堆積し、上部電極212を形成する。さらにこの上部電極212上に電圧印加電極を形成し、TFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して図1のX線平面検出器が完成する。
【0036】
このX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果を表1に示す。表1に示すように、有機膜を塗布した上にX線感光膜を形成することにより、X線感度が増加し、暗電流が低下するという改善が見られた。
【表1】
【0037】
本発明により、有機膜によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化でき、X線感光膜の結晶性が改善できる。また、有機膜により基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力が緩和できるため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和できる。ガラス基板101上ではX線電荷変換膜は基板に平行に結晶面が形成される。例えば、PbI2では基板に平行にc面が形成される。同様に段差の傾斜部でも傾斜に沿ってc面が形成される。このため基板平面と段差傾斜の交差部では異なった結晶平面が形成され、粒界が衝突する。この部分では異なる方位の結晶が併存するため、粒界欠陥が多数存在し、暗電流の増加やX線感度の劣化等の特性劣化が発生する。これに対し本発明ではコンタクト部が平坦化されるため、このような暗電流の増加やX線感度の劣化等の問題は発生しない。また、アクリル型樹脂はPbI2の8×10-5とほぼ同じ熱膨張係数を持ち、可塑性が大きいため基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力を緩和するため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和できる。
【実施例2】
【0038】
本実施例に係るX線平面検出器の断面図を図12に示す。図1と同一の構成には同一符号を付している。ガラス基板101上に、幅10μm程度、厚さ300nm程度であり、モリブデンータンタル(MoTa)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)モリブデンータングステン(MoW)から選ばれる一層、あるいはTaとTaNxとの積層体からなるスイッチングTFTのゲート電極102、及び幅80μm程度、厚さ300nm程度であり、ゲート電極102と同一材料からなる蓄積容量402の電極102aが形成されている。ゲート電極102、電極102aを含む基板101上には厚さ350nm程度であり、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)との積層体である絶縁膜103が形成されている。
【0039】
スイッチングTFT402のゲート電極102上には絶縁膜103を介して、スイッチングTFT402のバックゲート領域となる100nm程度の膜厚のアンドープ非晶質シリコン(a―Si)層104が形成されている。a−Si層104はゲート電極102の形状を反映して上に凸状となっている。a−Si層104の凸状表面にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域を区画するためのストッパ105が約200nmの膜厚に形成されている。a−Si層104上にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域となる高濃度n型(n+)a−Si層106が膜厚50nmで形成されており、n+a−Si層106に形成された開口、およびストッパ105により、ソース/ドレイン領域を構成している。
【0040】
n+a−Si層106、絶縁膜103を覆うように膜厚300nmの補助電極502が形成されており、n+a−Si層106と電気的に接続されている。補助電極502を覆うようにして、アクリル系有機樹脂膜からなる保護膜107を膜厚1〜5μm程度を積層する。本実施例では有機樹脂保護膜は4μmである。この保護膜107には補助電極502の表面を露出させるコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホール表面、および保護膜107上に画素電極503が形成される。そして画素電極503を覆うように有機膜504が形成されている。この有機膜504は保護膜107中のコンタクトホールを埋め込むように形成されており、有機膜504の表面は平坦化されている。実施例1の有機膜504は画素電極503毎に分割されているが、本実施例では有機膜504は画素電極503毎に分割されずガラス基板101上連続的に形成されている。膜に垂直方向の抵抗が低く膜に平行方向の抵抗が高いという抵抗率の条件より、有機膜の抵抗率として1×108Ωcmから1×1013Ωcm、好ましくは1×1010Ωcm〜1×1012Ωcmであり、本実施例では1×1011Ωcmであった。有機膜の膜厚は1〜5μmで良く本実施例では1μmとした。
【0041】
次いで、有機膜504上に蒸着により、ブロッキング層としてBiOx 層220aを1〜10μm、好ましくは3μmの厚さに成膜した。このBiOx 層220a上にX線電荷変換膜としてPbI2 膜220を300μmの厚さに蒸着する。更に、このPbI2 膜220上に高抵抗のPbxBiy I膜220b膜を蒸着により約1〜100μm、好ましくは10μmの厚さに成膜する。成膜温度は250℃である。PbI2 膜とPbxBiy I膜220b膜は六方晶のc軸が基板に垂直に配向している。この上に、Crからなる上部電極212を形成する。
【0042】
このようにして得たTFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して完成したX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果、有機膜層によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できたためコンタクト部のX線感光膜の結晶性が改善できた。本実施例ではコンタクト部の段差約4μmに対して有機膜厚が1μmと薄いため、コンタクト段差の平坦化は完全ではなかったが、段差は2μm程度と有機膜が無い場合より3μm段差が減少し且つ段差部の傾斜もなだらかになったため大きな効果が得られた。また、下部のITO膜の粒界の影響が無くなり、微視的にも平坦化できたためX線感光膜の結晶性が改善でき、X線検出器の暗電流が低下し、感度が増大した。また、有機膜により基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力を緩和するため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和でき、画像の不均一が改善し、暗電流の低下、感度の増加等の改善が得られた。更に段差を減少させるために有機膜を塗布後に研磨して平坦化することにより更に良好なX線変換特性が得られた。研磨は研磨剤のみで実施しても良く、化学研磨を併用しても良い。
【0043】
抵抗を下げるためにアクリル系ポリマーに添加する材料としてはカーボン粒子に限定されず、有機顔料や酸化鉄、硫化バリウム等の金属化合物の無機顔料を用いても良い。また、ベースポリマーとしてはアクリル系樹脂に限定されず、PI、エポキシ等熱膨張係数の近い樹脂であれば良い。
【0044】
以上、本実施例のX線平面検出器においては、実施例1で満たされる効果の他、有機膜を画面全面に形成し、画素毎に分離しないことにより、特性の均一性が改善し、歩留が改善し、コストが低減できた。
【0045】
次に、図2〜12を参照して本実施例に係るX線平面検出器の形成方法について説明する。本実施例においては、有機膜504を形成する工程までは実施例1の製造方法と同一であるから、実施例1と同一図面を用いて簡潔に説明する。
【0046】
実施例1と同様に、図2〜11に示すように、ガラス基板101上にスイッチングTFT402及び蓄積容量404を形成し、保護膜107を介して画素電極503を、厚さ30nmのTi及び厚さ200nmのPdをスパッタリングで成膜し、これをパターニングすることにより形成する。
【0047】
次に、図10、11に示すように、このアレイ基板の上に低抵抗有機膜としてアクリル系の有機膜504をスリットスクリーンで塗布する。厚さは50nmから10μmが好ましいが、この実施例では1μmの厚さに塗布する。この有機膜504は実施例1と同様、顔料、炭素粒子、金属粒子を混合させることができる。スリットスクリーンを用いることにより周辺のコンタクトパッド部には有機膜が塗布されないように形成可能である。本実施例では実施例1とは異なり、有機膜を画素形状に分離せずに連続した形状で形成している。
【0048】
有機膜504形成後、図12に示すように、有機膜504上に蒸着により、ブロッキング層としてBiOx 層220aを1〜10μm、好ましくは3μmの厚さに成膜する。このBiOx 層220a上にX線電荷変換膜としてPbI2 膜220を300μmの厚さに蒸着する。更に、このPbI2 膜220上に高抵抗のPbxBiy I膜220b膜を蒸着により約1〜100μm、好ましくは10μmの厚さに成膜する。成膜温度は250℃である。PbI2 膜とPbxBiy I膜220b膜は六方晶のc軸が基板に垂直に配向する。この上に、Crからなる上部電極212を形成する。
【0049】
このようにして得たTFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して完成したX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果を表2に示す。表2によれば、有機膜層によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できたためコンタクト部のX線感光膜の結晶性が改善できる。有機膜を塗布した上にX線感光膜を形成する事により、X線感度が増加し、暗電流が低下するという改善が見られる。
【表2】
【0050】
本実施例においても実施例1と同様、保護膜107のコンタクト部の段差を有機膜504が平坦化することにより、下部の画素電極503の粒界の影響が無くなり、微視的にも平坦化できるためX線感光膜の結晶性が改善できる。よってX線検出器の暗電流が低下し、感度が増大する。また、有機膜504によりガラス基板101とX線電荷変換膜210の熱膨張係数差による熱応力を緩和することができるため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和でき、画像の不均一が改善し、暗電流の低下、感度の増加等の改善が得られる。有機膜を画面全面に形成し、画素毎に分離しないことにより、特性の均一性が改善し、歩留が改善し、コストが低減できた。
【実施例3】
【0051】
本実施例に係るX線平面検出器の断面図を図13に示す。図1と同一の構成には同一符号を付している。ガラス基板101上に、幅10μm程度、厚さ300nm程度であり、モリブデンータンタル(MoTa)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)モリブデンータングステン(MoW)から選ばれる一層、あるいはTaとTaNxとの積層体からなるスイッチングTFTのゲート電極102、及び幅80μm程度、厚さ300nm程度であり、ゲート電極102と同一材料からなる蓄積容量402の電極102aが形成されている。ゲート電極102、電極102aを含む基板101上には厚さ350nm程度であり、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)との積層体である絶縁膜103が形成されている。
【0052】
スイッチングTFT402のゲート電極102上には絶縁膜103を介して、スイッチングTFT402のバックゲート領域となる100nm程度の膜厚のアンドープ非晶質シリコン(a―Si)層104が形成されている。a−Si層104はゲート電極102の形状を反映して上に凸状となっている。a−Si層104の凸状表面にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域を区画するためのストッパ105が約200nmの膜厚に形成されている。a−Si層104上にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域となる高濃度n型(n+)a−Si層106が膜厚50nmで形成されており、n+a−Si層106に形成された開口、およびストッパ105により、ソース/ドレイン領域を構成している。
【0053】
n+a−Si層106、絶縁膜103を覆うように膜厚300nmの補助電極502が形成されており、n+a−Si層106と電気的に接続されている。補助電極502を覆うようにして、アクリル系有機樹脂膜からなる保護膜107を膜厚1〜5μm程度を積層する。この保護膜107には補助電極502の表面を露出させるコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホール表面、および保護膜107上に画素電極503が形成される。そして画素電極上には実施例2と同様、有機膜504がガラス基板101全面に亘って形成されている。この有機膜504は保護膜107中のコンタクトホールを埋め込むように形成されており、有機膜504の表面は平坦化されている。実施例1の有機膜504は画素電極503毎に分割されているが、本実施例では有機膜504は画素電極503毎に分割されずガラス基板101上連続的に形成されている。
【0054】
有機膜504上には約300μmの膜厚の、ヨウ化鉛(PbI2)からなるX線電荷変換膜210が形成されている。X線電荷変換膜210上面にはX線が変換された電荷を加速するための上部電極が、30nm程度の膜厚で形成されている。
【0055】
以上、本実施例のX線平面検出器においては、実施例1で満たされる効果の他、X線電荷変換膜210のa軸が有機膜の伸延方向(ガラス基板101表面と平行であり、スイッチングTFT402のゲート伸張方向と同方向)に揃うことになりX線電荷変換膜210の結晶性がさらに改善するという効果が得られる。
【0056】
次に図2〜11、13を参照して本実施例に係るX線平面検出器の形成方法について説明する。本実施例においては、有機膜504を形成する工程までは実施例1の製造方法と同一であるから、実施例1と同一図面を用いて簡潔に説明する。
【0057】
実施例1と同様に、図2〜11に示すようにガラス基板101上にスイッチングTFT402及び蓄積容量404を形成し、保護膜107を介して画素電極503を成膜する。厚さ30nmのITOにより画素電極503を形成する。
【0058】
次に、図13に示すようにこのアレイ基板101の上に有機膜504としてアクリル系有機膜をスリットスクリーンで塗布する。この有機膜504は実施例1と同様、顔料、炭素粒子、金属粒子を混合させることで低抵抗有機膜として構成することができる。厚さは50nmから10μmが好ましいが、この実施例では3μmの厚さに塗布した。スリットスクリーンを用いることにより周辺のコンタクトパッド部には有機膜が塗布されないように形成する。この実施例では有機膜を画素形状に分離せずに連続した形状で形成する。
【0059】
また、アクリル樹脂に混合したカーボン粒子による表面の平坦性の劣化を改善するために、有機顔料を混合したアクリル樹脂を積層した。顔料混合アクリル樹脂の厚さは10から300nm程度で良い。また、顔料を添加しないアクリル樹脂でも同様の効果がある。更に平面方向の抵抗を上げて画素分離を良くするためにTFTアレイ上に10〜300nmの無添加アクリル膜を形成し、その上にカーボン入りアクリル膜を2μm形成し、更に10〜300nmの無添加アクリル膜を形成しした3層構造としても良い。無添加有機膜の抵抗率は5x1013Ωcm以上の膜が良い。有機膜としてはアクリル樹脂に限らず、PVA,アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド等でも良い。
【0060】
次に、ラビングによりこの有機膜をこすり一方向性の伸延を発生させる。次いで、有機膜504上にPbI2を溶解した液層から、X線電荷変換膜210としてPbI2を300μmの厚さに蒸着する。このX線電荷変換膜210は有機膜の伸延方向にa軸が配向するようになる。また配向処理をしない場合より粒径が増大し、結晶性が改善するようになる。粒径の拡大は成膜法として蒸着を用いた場合にも見られる。このX線電荷変換膜210上に、Pd300nmからなる上部電極212を形成する。
【0061】
このようにして得たTFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して完成したX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果を表3に示す。有機膜層によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できたためコンタクト部のX線感光膜の結晶性が改善できていることがわかる。また、下部のITO膜の粒界の影響が無くなり、微視的にも平坦化できたためX線感光膜の結晶性が改善でき、X線検出器の暗電流が低下し、感度が増大していることがわかる。有機膜にラビングをすることによりX線感度が33(pC/cm2)/(nC/kg)まで改善し、暗電流も1pA/mmまで改善した。これは結晶粒径の方向が揃い結晶性が向上したためである。
【表3】
【0062】
以上、本実施例のX線平面検出器の製造方法においては更に有機膜の伸延による結晶性の改善が見られ、この結果、暗電流の低下、X線感度の更なる増大が見られた。ラビングの方向は1方向のみに限定されず、1方向及びこれに対して30度傾いた方向の2方向を用いても良い。0度と30度の2つの方向を用いることにより六方の2つの結晶方位が規定されるため更に結晶性が改善した。又、HgI2の様な正方晶のX線感光膜に対しては0度と90度の2方向にラビングすることにより結晶性が改善し、効率が上がった。またラビングによる有機膜の伸延に限らず、表面に浅い溝を一方向に形成したり、こすってキズを一方向につけてもても結晶性を改善するのに有効である。又、0度、30度、90度等の複数の方向に形成しても良い。
【0063】
本発明は上記実施例に限定されない。X線感光膜としては金属ハライドで有ればPbI2,InI,HgI2、BiI3、CdI2等何でも適用可能である。結晶方位は基板面がc面(0001)面、ab面(1000)又は(0100)面が好ましい。成膜法としては蒸着に限らず、液層成長、塗布、CVD等何を用いても良い。また、アモルファスSe,アモルファスSe−Te等のX線感光膜に対しても同様の効果がある。
【0064】
有機膜の抵抗率は1×105から1×1013Ωcmが良い。膜厚は50nmから10μmが良く、平坦化のためには段差と同程度の有機膜厚が好ましい。抵抗率を下げるために、顔料等の有機物、金属粒子、炭素粒子を含有させても良い。また、導電性ポリマーを用いても良い。導電性ポリマーとして、キャリア輸送材料として用いられる有機半導体は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、N,N−ジフェニル−N,N−ジ(m−トリル)ベンジジン(TPD)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリアルキルチオフェン、ポリビニルカルバゾール(PVK)、トリフェニレン(TNF)、液晶分子、金属フタロシアニン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)からなる群より選択される少なくとも1種の材料からなる。これらの物質はキャリアの移動度が高いため好ましい。PPVまたはPVK−TNF混合物のようなポリマー系のキャリア輸送材料を用いる場合、X線電荷変換膜はX線感光材料の粒子をポリマー系のキャリア輸送材料に分散させることにより形成される。また、低分子のキャリア輸送材料を用いる場合、X線電荷変換膜はX線感光材料の粒子および低分子のキャリア輸送材料をバインダーに分散させることにより形成される。バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが用いられる。バインダーを用いる場合、キャリア輸送材料とバインダーとの混合物中におけるキャリア輸送材料の混合割合はキャリア輸送材料が約0.1〜40モル%に設定される。しかし、PPVやPVK−TNF混合体ではキャリア輸送材料が100%であってもよい。
【0065】
ポリマーとしては膜形成できれば何でも良く、PVA,アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドや導電性ポリマーを用いれば良い。パターン形成のためにはマスク露光してパターニングするために感光性ポリマーが好ましい。有機膜を伸延させる方法はラビングに限らず、機械的伸延、光ポリマー化等の方法を用いても良い。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1に係るX線平面検出器の断面図である。
【図2】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図3】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図4】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図5】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図6】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図7】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図8】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図9】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図10】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図11】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図12】本発明の実施例2に係るX線平面検出器の断面図である。
【図13】本発明の実施例3に係るX線平面検出器の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
101 … ガラス基板
102 … ゲート電極
103 … 絶縁膜
104 … a−Si層
105 … ストッパ
106 … n+a―Si層
107 … 保護膜
210 … X線電荷変換膜
210a … ブロッキング層
210b … PbxBiyI層
212 … 上部電極
402 … スイッチングTFT
404 … 蓄積容量
405 … 走査線
406 … 蓄積容量線
502 … 補助電極
503 … 画素電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用X線診断装置のX線平面検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野においては、治療を迅速かつ的確に行うために、患者の医療データをデータベース化する方向へと進んでいる。これは、患者はしばしば複数の医療機関を利用するので、的確な治療行為を行うために他の医療機関のデータが必要になるためである。
【0003】
X線撮影の画像データについてもデータベース化の要求があり、それに伴って、X線撮影画像のデジタル化が望まれている。従来、医用X線診断装置では、銀塩フィルムを使用して画像を撮影している。このような画像をデジタル化するためには、撮影したフィルムを現像した後、スキャナなどで読み取る操作が必要となり、手間と時間がかかっていた。
【0004】
最近は、光電膜、加速電極、蛍光膜を設けた大きな真空管と1インチ程度のCCDカメラを使用し、直接画像をデジタル化するイメージインテンシファイアTV(II−TV)方式が実現されている。しかし、例えば、肺の診断では、40cm×40cm程度の領域を撮影するため、光を集光する光学装置が必要であり、装置の大型化が問題になっている。
【0005】
これら2方式の問題を解決する方式としてa−Si TFT(アモルファスシリコン薄膜トランジスタ)を用いたX線平面検出器が提案されている。
【0006】
このX線平面検出器では、a−Si TFT、光電変換膜及び画素容量により画素が構成され、この画素は縦横の各辺に数百個から数千個並んだアレイ状(以下TFTアレイと呼ぶ)に配列されている。
【0007】
光電変換膜には電源からバイアス電圧が印加される。a−Si TFTは、信号線と走査線に接続しており、走査線駆動回路によってオン・オフ制御される。信号線の終端は、切り替えスイッチを介して信号検出用の増幅器に接続されている。
【0008】
光が入射すると光電変換膜に電流が流れ、画素容量に電荷が蓄積される。走査線駆動回路で走査線を駆動し、1つの走査線に接続している全てのTFTをオンにすると、蓄積された電荷は信号線を通って増幅器側に転送される。切り替えスイッチで、1画素ごとに電荷を増幅器に入力し、CRT等に表示できるように順次信号に変換する。画素に入射する光の量によって電荷量が異なり、増幅器の出力振幅は変化する。
【0009】
このような方式は、増幅器の出力信号をA/D変換することで、直接ディジタル画像にすることが出来る。更に、画素領域は、ノートパソコンに使用されているTFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)と同様の構造であり、薄型、大画面のものを容易に製作することが可能である。
【0010】
以上の説明は、入射したX線を蛍光体等で可視光線に変換し、変換した光を各画素の光電変換膜で電荷に変えるという間接変換方式のX線平面検出器についてのものである。この間接変換方式のX線平面検出器では、以下のような欠点を有していた。すなわち、X線が蛍光体に入射した際、蛍光体を構成する媒体中で、X線が変換された可視光が散乱し、解像度が低下するという問題が存在する。
【0011】
この間接変換方式のX線平面検出器に対し、画素に入射したX線を直接電荷に変換する直接変換方式のX線平面検出器がある。この直接変換方式のX線平面検出器では、光電変換膜で直接X線を電荷に変換し、画素容量に蓄積することが、間接変換型と異なる。即ち、間接変換型X線平面検出器から蛍光体を除いた構成を有する。
【0012】
この直接変換方式のX線平面検出器では、ガラス基板上に、キャパシタ電極、絶縁層及び補助電極の積層構造からなる蓄積容量と、この蓄積容量に接続されたスイッチングTFT及び保護用ダイオードが形成されている。これらの各部材の上に保護膜が形成されており、この保護膜には、補助電極上にコンタクトホールが形成されている。保護膜上には画素電極(コンタクトホールを介して補助電極と接続される)、X線電荷変換膜、及び共通電極(上部電極)が順次積層されている。以上のように構成される画素は、アレイ状に配置される。
【0013】
X線が入射すると、X線は、X線電荷変換膜で電荷に変換され、電荷は共通電極と画素電極との間に印加された電界により加速され、蓄積容量に蓄積される。スイッチングTFTは、走査線を介して駆動され、蓄積容量に蓄積された電荷を信号線へ転送する。保護用ダイオードは過度の電荷が発生した場合に、電荷を逃がし、電圧が絶縁層の破壊電圧以下にするように機能する。この直接変換方式のX線平面検出器では、蛍光体が存在せず、X線が直接X線電荷変換膜で電荷に変換されるため、間接変換方式のような、可視光の散乱による解像度の低下という問題が発生しないという利点を有する。
【非特許文献1】R.A. Street et al.,SPIE Vol.3659,p.36,1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、X線により発生した信号電荷は速やかに画素電極に到達し、蓄積容量に蓄積されなければならない。X線電荷変換膜内に信号電荷が残る場合、前の画像パターンが残る残像、解像度の低下等の画像不良が発生する。このような画像不良は、X線電荷変換膜内に残った信号電荷が新たにX線により発生した信号電荷の走行に影響を及ぼすために発生することが多い。また、X線電荷変換膜に欠陥が多い場合には、欠陥を通して電流が流れるため、暗電流が大きいという問題も発生する。X線電荷変換膜はPbI2、HgI2、BiI3等のような金属ハライドにより構成され、特にPbI2は材料的には優れた特性が期待されるが、実際に薄膜を形成した場合には結晶性が不十分なため、上記の様な、残像、解像度不良、大きな暗電流等の問題がある。従って十分な特性の膜は実現できていないのが現状である(例えば非特許文献1参照)。上記の材料はいずれも熱膨張係数が大きいため基板に用いられるガラス等との熱膨張係数の差が大きく、基板の反りや、またX線感光膜へのクラック発生等の問題が発生し、X線感光特性を劣化させる。また基板との熱応力によるハガレが発生する。
【0015】
また、別の問題として下地電極上には上部感光膜との絶縁のために絶縁膜が形成され、この絶縁膜にはコンタクト用の穴が形成され、この部分で段差が発生する。この部分に成膜されたX線感光膜は成長方位が平坦部と異なるために結晶性が劣化し、これに伴いX線感光特性も劣化する。このようなX線感光膜の特性改善のためには、下地基板の改善が必要である。
【0016】
以上のように、従来のX線平面検出器では、下地基板との熱応力や不整合のためにX線感光膜の特性の劣化やハガレが発生するという問題が存在する。また、別の問題として下地基板の凸凹部での結晶性の劣化が存在する。これに伴いX線感光特性も劣化する。本発明は、以上のような事情の下になされ、基板の反りや剥がれ、感光膜の特性を改善したX線平面検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために本発明のX線平面検出器は、X線電荷変換膜と、前記X線電荷変換膜の一方の面に設けられた第1の電極と、前記X線電荷変換膜の他方の面に設けられた第2の電極と、前記X線電荷変換膜と前記第2の電極との間に介在する有機膜とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のX線平面検出器によれば、X線電荷変換膜に接して有機膜を形成しているため、基板が平坦化し、その上に成長するX線感光膜の特性が改善する。また、有機膜と基板との熱膨張係数の差が小さいために熱応力が減少し、感光膜の剥がれ、基板の反りが改善する。これによりX線感光膜の特性が改善し高性能のX線平面検出器を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に本発明の実施例1に係るX線平面検出器の断面図を示す。ガラス基板101上に、幅10μm程度、厚さ300nm程度であり、モリブデンータンタル(MoTa)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)モリブデンータングステン(MoW)から選ばれる一層、あるいはTaとTaNxとの積層体からなるスイッチングTFTのゲート電極102、及び幅80μm程度、厚さ300nm程度であり、ゲート電極102と同一材料からなる蓄積容量404の電極21が形成されている。ゲート電極102、電極21を含む基板101上には厚さ350nm程度であり、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、又はSiOxとSINxの積層体である絶縁膜103が形成されている。
【0021】
スイッチングTFT402のゲート電極102上には絶縁膜103を介して、スイッチングTFT402のバックゲート領域となる100nm程度の膜厚のアンドープ非晶質シリコン(a―Si)層104が形成されている。a−Si層104はゲート電極102の形状を反映して上に凸状となっている。a−Si層104の凸状表面にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域を区画するため、窒化シリコンからなるストッパ105が約200nmの膜厚に形成されている。a−Si層104上にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域となる高濃度n型(n+)a−Si層106が膜厚50nmで形成されており、n+a−Si層106に形成された開口、およびストッパ105により、ソース/ドレイン領域を構成している。
【0022】
n+a−Si層106、絶縁膜103を覆うように、約50nmのモリブデン、約350nmのアルミニウム、約20〜50nmのモリブデンの積層体である補助電極502が形成されており、n+a−Si層106と電気的に接続されている。この補助電極502はその構造上、信号線408、TFT402のソース、ドレインと同一層となっている。
【0023】
補助電極502を覆うようにして、膜厚約200nmの窒化シリコン、及び膜厚約1〜5μmのアクリル系有機樹脂膜からなる保護膜107を積層する。この保護膜107には補助電極502の表面を露出させるコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホール表面、および保護膜107上に画素電極503が形成される。そして画素電極503を覆うように有機膜504が形成されている。この有機膜504は保護膜107中のコンタクトホールを埋め込むように形成されており、有機膜504の表面は平坦化されている。
【0024】
有機膜504上には約300μmの膜厚の、ヨウ化鉛(PbI2)からなるX線電荷変換膜210が形成されている。X線電荷変換膜210上面にはPdからなる、X線が変換された電荷を加速するための上部電極が、200nm程度の膜厚で形成されている。
【0025】
以上の構成のX線平面検出器によれば、有機膜504として、熱膨張係数が基板、及びX線電荷変換膜210の材料である金属ハロゲン化物とほぼ同等のアクリル系有機樹脂を用いているため、熱応力を減少させ、基板との熱膨張係数の差があることによる基板の反り、X線電荷変換膜210へのクラック発生等の問題が生じない。また、保護膜107のコンタクトホールによる段差を有機膜504でカバーすることができるため、下部形状が平坦でないことによるX線電荷変換膜210の結晶性の劣化を防止し、X線感光特性の劣化を防ぐことが可能となる。
【0026】
本実施例に係るX線平面検出器において、X線電荷変換膜210は、金属ハロゲン化物により構成されるが、これは金属ハロゲン化物のX線電荷変換効率が高いためである。X線電荷変換膜210を構成する金属ハロゲン化物としては、X線の吸収効率を良好にするために、X線吸収係数の大きい材料が好ましい。このような金属ハロゲン化物の金属としてはPb、Hg、Tl、Bi、Cd、In、Sn、Sbが好ましい。この中で特にX線吸収係数の大きいPb、Hg、Biが好ましい。ハロゲンとしてはCl、Br、Iが好ましく、特にX線吸収係数の大きいIが好ましい。これらの金属ハロゲン化物は基本的には六方晶系をとり、格子常数が近い値を取る。これらの材料は抵抗率が高いため、暗電流を低下させることができ、そのため微小な信号を検出することができるので、X線平面検出器の性能を上げることができる。これらの材料のうち、BiI3 等はIの六方構造の原子の一部が欠けているが、一部に欠けが存在しても格子整合の効果は六方構造が完全な場合と大差が無い。これらの格子常数に近い値を取る材料を基板とすることにより、高品質のX線光電変換膜を得ることが出来る。
【0027】
これらの金属ハロゲン化物材料は、熱膨張率が5×10-5から5×10-4/℃と通常用いられるガラス基板の5×10-6と比べ非常に大きな値を取る。Seも3×10-5/℃と大きい。このため、基板との熱膨張係数が大きく、ガラス基板の反り、膜のクラック、剥がれ等が発生する。これに対して、PVA,アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の有機膜は3×10-5〜10×10-5/℃程度であり、ガラス基板の熱膨張率と同程度の大きな熱膨張率を有する。またこれら有機膜は可塑性が大きいためX線感光膜と基板の間に発生した熱応力を緩和することができる。これにより上記の基板の反り、膜のクラック、剥がれ等の問題の対策ができる。
【0028】
次に図2〜11を参照して本実施例に係るX線平面検出器の形成方法について説明する。図3は図2のA−A断面図、図5は図4のA−A断面図、図7は図6のA−A断面図、図9は図8のA−A断面図、図11は図10のA−A断面図をそれぞれ示す。
【0029】
まず、図2、3に示すように、ガラス基板101上にMoTa、Ta、TaN、Al、Al合金、Cu、MoW等からなる膜を1層、又はTaとTaNx の2層を約300nmの厚さに堆積し、エッチングによりパターニングして、スイッチングTFT402及び保護ダイオードのゲート電極402,411、ゲート配線102、走査線405、蓄積容量404の電極102a、及び蓄積容量線406を形成する。次いで、プラズマCVD法により絶縁膜103として、SiOx を約300nm、SiNx を約50nmの厚さに積層する。
【0030】
次に図4、5に示すように、a−Si層104を約100nmの厚さに、窒化シリコンからなるストッパ105を約200nmの厚さにそれぞれ堆積する。
【0031】
ストッパ105の材料堆積後、図6、7に示すようにストッパ105を裏面露光法によりゲート電極102にあわせてパターニングし、その上にn+a−Si層106を約50nmの厚さに堆積した後、トランジスタの形状にあわせてa−Si層104及びn+a−Si層106をエッチングし、島状のa−Si層104及びn+a−Si層106を形成する。そして、図示しないが、画素エリア内外のコンタクト部の絶縁膜103をエッチングし、コンタクトホールを形成する。コンタクトホール形成後、モリブデンを約50nm、アルミニウムを約350nm、そして更にモリブデンを約20nm〜50nmの厚さにぞれぞれスパッタ法により積層し、補助電極502、信号線408、スイッチングTFT402のソース、ドレインその他の配線(図示せず)を形成する。
【0032】
その後、図8、9に示すように窒化シリコンを約200nm、その上にアクリル系有機樹脂膜(オプトマHRC:商品名、日本合成ゴム社製)を約1〜約5μm、好ましくは約3.5μmの厚さに積層して、保護膜107を形成する。なお、有機樹脂膜としてオプトマHRCの代わりにBCB、PI(ポリイミド)等の有機膜を用いても良い。これらの有機膜は200℃以上の耐熱温度を有することが好ましい。耐熱温度とは熱分解が発生する温度を言う。保護膜107堆積後、保護膜107に補助電極502へのコンタクトホール600を形成する。
【0033】
その後、図10、11に示すように、ITO(Indium Tin Oxide)膜を100nm成膜する。ITO膜はITOターゲットを用いたスパッタ法で成膜される。そしてパターニングを行い、画素電極503を得る。なお、ITO膜の形成法は蒸着等の他の方法でも良く、また、ITO膜はアモルファスでも多結晶でも良い。
【0034】
そしてこの保護膜107上に有機膜504としてアクリル系有機樹脂(オプトマHRC)を塗布する。塗布はスピンコートでもスリット塗布でも良い。この有機膜504は電極をかねることができるために抵抗率が低い方が良い。しかし、抵抗率が低すぎると隣接画素に信号電荷が伝導してしまう。抵抗率は1×105〜1×1013Ωcmが好ましい。さらに1×106〜1×1012Ωcmがより好ましい。有機膜504の抵抗を下げるために、有機膜504に顔料、炭素粒子、金属粒子を混合することができる。なお、有機膜を画素毎に分離する場合には抵抗率は低いほど良い。有機膜504の膜厚は厚い程コンタクトホール600を平坦化するためには良いが、画素分離しない場合には膜厚が厚いと隣接画素に信号が逃げてしまう不都合が生じる。このため有機膜504の膜厚は50nm〜10μm程度の間で選択すれば良い。本実施例では平坦化を重視し、抵抗率を1×10-7Ωcm、膜厚を3μmとした。有機膜504はフォトリソグラフィ法により、感光性樹脂を用いマスクによりITO画素とほぼ同じサイズにパターニングする。この有機膜層の形成によりコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できる。基板上ではX線感光膜は基板に平行に結晶面が形成される。例えば、PbI2では基板に平行にc面が形成される。同様に段差の傾斜部でも傾斜に沿ってc面が形成される。このため基板平面と段差傾斜の交差部ではことなった結晶平面が形成され、粒界が衝突する。この部分では異なる方位の結晶が併存するため、粒界欠陥が多数存在し、暗電流の増加やX線感度の劣化等の特性劣化が発生する。これに対し本発明ではコンタクト部が平坦化されるため、このような暗電流の増加やX線感度の劣化等の問題は発生しない。また、アクリル型樹脂はPbI2の8×10-5/℃とほぼ同じ熱膨張係数を持ち、可塑性が大きいため基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力を緩和するため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和でき、又感光膜の基板界面部での膜質劣化が少ないため、感度の低下、暗電流の増大等が少なく検出器の特性が改善できる。
【0035】
次に、図1に示すように、画素電極504上に、蒸着により高抵抗のPbI2膜からなるX線電荷変換膜210を約100〜1000μm、好ましくは300μmの膜厚に成膜する。このX線電荷変換膜210aの上に、Pdを200nmの厚さに、PbI2膜210aの周辺から1cm離した領域のほぼ全面に堆積し、上部電極212を形成する。さらにこの上部電極212上に電圧印加電極を形成し、TFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して図1のX線平面検出器が完成する。
【0036】
このX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果を表1に示す。表1に示すように、有機膜を塗布した上にX線感光膜を形成することにより、X線感度が増加し、暗電流が低下するという改善が見られた。
【表1】
【0037】
本発明により、有機膜によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化でき、X線感光膜の結晶性が改善できる。また、有機膜により基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力が緩和できるため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和できる。ガラス基板101上ではX線電荷変換膜は基板に平行に結晶面が形成される。例えば、PbI2では基板に平行にc面が形成される。同様に段差の傾斜部でも傾斜に沿ってc面が形成される。このため基板平面と段差傾斜の交差部では異なった結晶平面が形成され、粒界が衝突する。この部分では異なる方位の結晶が併存するため、粒界欠陥が多数存在し、暗電流の増加やX線感度の劣化等の特性劣化が発生する。これに対し本発明ではコンタクト部が平坦化されるため、このような暗電流の増加やX線感度の劣化等の問題は発生しない。また、アクリル型樹脂はPbI2の8×10-5とほぼ同じ熱膨張係数を持ち、可塑性が大きいため基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力を緩和するため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和できる。
【実施例2】
【0038】
本実施例に係るX線平面検出器の断面図を図12に示す。図1と同一の構成には同一符号を付している。ガラス基板101上に、幅10μm程度、厚さ300nm程度であり、モリブデンータンタル(MoTa)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)モリブデンータングステン(MoW)から選ばれる一層、あるいはTaとTaNxとの積層体からなるスイッチングTFTのゲート電極102、及び幅80μm程度、厚さ300nm程度であり、ゲート電極102と同一材料からなる蓄積容量402の電極102aが形成されている。ゲート電極102、電極102aを含む基板101上には厚さ350nm程度であり、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)との積層体である絶縁膜103が形成されている。
【0039】
スイッチングTFT402のゲート電極102上には絶縁膜103を介して、スイッチングTFT402のバックゲート領域となる100nm程度の膜厚のアンドープ非晶質シリコン(a―Si)層104が形成されている。a−Si層104はゲート電極102の形状を反映して上に凸状となっている。a−Si層104の凸状表面にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域を区画するためのストッパ105が約200nmの膜厚に形成されている。a−Si層104上にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域となる高濃度n型(n+)a−Si層106が膜厚50nmで形成されており、n+a−Si層106に形成された開口、およびストッパ105により、ソース/ドレイン領域を構成している。
【0040】
n+a−Si層106、絶縁膜103を覆うように膜厚300nmの補助電極502が形成されており、n+a−Si層106と電気的に接続されている。補助電極502を覆うようにして、アクリル系有機樹脂膜からなる保護膜107を膜厚1〜5μm程度を積層する。本実施例では有機樹脂保護膜は4μmである。この保護膜107には補助電極502の表面を露出させるコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホール表面、および保護膜107上に画素電極503が形成される。そして画素電極503を覆うように有機膜504が形成されている。この有機膜504は保護膜107中のコンタクトホールを埋め込むように形成されており、有機膜504の表面は平坦化されている。実施例1の有機膜504は画素電極503毎に分割されているが、本実施例では有機膜504は画素電極503毎に分割されずガラス基板101上連続的に形成されている。膜に垂直方向の抵抗が低く膜に平行方向の抵抗が高いという抵抗率の条件より、有機膜の抵抗率として1×108Ωcmから1×1013Ωcm、好ましくは1×1010Ωcm〜1×1012Ωcmであり、本実施例では1×1011Ωcmであった。有機膜の膜厚は1〜5μmで良く本実施例では1μmとした。
【0041】
次いで、有機膜504上に蒸着により、ブロッキング層としてBiOx 層220aを1〜10μm、好ましくは3μmの厚さに成膜した。このBiOx 層220a上にX線電荷変換膜としてPbI2 膜220を300μmの厚さに蒸着する。更に、このPbI2 膜220上に高抵抗のPbxBiy I膜220b膜を蒸着により約1〜100μm、好ましくは10μmの厚さに成膜する。成膜温度は250℃である。PbI2 膜とPbxBiy I膜220b膜は六方晶のc軸が基板に垂直に配向している。この上に、Crからなる上部電極212を形成する。
【0042】
このようにして得たTFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して完成したX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果、有機膜層によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できたためコンタクト部のX線感光膜の結晶性が改善できた。本実施例ではコンタクト部の段差約4μmに対して有機膜厚が1μmと薄いため、コンタクト段差の平坦化は完全ではなかったが、段差は2μm程度と有機膜が無い場合より3μm段差が減少し且つ段差部の傾斜もなだらかになったため大きな効果が得られた。また、下部のITO膜の粒界の影響が無くなり、微視的にも平坦化できたためX線感光膜の結晶性が改善でき、X線検出器の暗電流が低下し、感度が増大した。また、有機膜により基板とPbI2の熱膨張係数差による熱応力を緩和するため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和でき、画像の不均一が改善し、暗電流の低下、感度の増加等の改善が得られた。更に段差を減少させるために有機膜を塗布後に研磨して平坦化することにより更に良好なX線変換特性が得られた。研磨は研磨剤のみで実施しても良く、化学研磨を併用しても良い。
【0043】
抵抗を下げるためにアクリル系ポリマーに添加する材料としてはカーボン粒子に限定されず、有機顔料や酸化鉄、硫化バリウム等の金属化合物の無機顔料を用いても良い。また、ベースポリマーとしてはアクリル系樹脂に限定されず、PI、エポキシ等熱膨張係数の近い樹脂であれば良い。
【0044】
以上、本実施例のX線平面検出器においては、実施例1で満たされる効果の他、有機膜を画面全面に形成し、画素毎に分離しないことにより、特性の均一性が改善し、歩留が改善し、コストが低減できた。
【0045】
次に、図2〜12を参照して本実施例に係るX線平面検出器の形成方法について説明する。本実施例においては、有機膜504を形成する工程までは実施例1の製造方法と同一であるから、実施例1と同一図面を用いて簡潔に説明する。
【0046】
実施例1と同様に、図2〜11に示すように、ガラス基板101上にスイッチングTFT402及び蓄積容量404を形成し、保護膜107を介して画素電極503を、厚さ30nmのTi及び厚さ200nmのPdをスパッタリングで成膜し、これをパターニングすることにより形成する。
【0047】
次に、図10、11に示すように、このアレイ基板の上に低抵抗有機膜としてアクリル系の有機膜504をスリットスクリーンで塗布する。厚さは50nmから10μmが好ましいが、この実施例では1μmの厚さに塗布する。この有機膜504は実施例1と同様、顔料、炭素粒子、金属粒子を混合させることができる。スリットスクリーンを用いることにより周辺のコンタクトパッド部には有機膜が塗布されないように形成可能である。本実施例では実施例1とは異なり、有機膜を画素形状に分離せずに連続した形状で形成している。
【0048】
有機膜504形成後、図12に示すように、有機膜504上に蒸着により、ブロッキング層としてBiOx 層220aを1〜10μm、好ましくは3μmの厚さに成膜する。このBiOx 層220a上にX線電荷変換膜としてPbI2 膜220を300μmの厚さに蒸着する。更に、このPbI2 膜220上に高抵抗のPbxBiy I膜220b膜を蒸着により約1〜100μm、好ましくは10μmの厚さに成膜する。成膜温度は250℃である。PbI2 膜とPbxBiy I膜220b膜は六方晶のc軸が基板に垂直に配向する。この上に、Crからなる上部電極212を形成する。
【0049】
このようにして得たTFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して完成したX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果を表2に示す。表2によれば、有機膜層によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できたためコンタクト部のX線感光膜の結晶性が改善できる。有機膜を塗布した上にX線感光膜を形成する事により、X線感度が増加し、暗電流が低下するという改善が見られる。
【表2】
【0050】
本実施例においても実施例1と同様、保護膜107のコンタクト部の段差を有機膜504が平坦化することにより、下部の画素電極503の粒界の影響が無くなり、微視的にも平坦化できるためX線感光膜の結晶性が改善できる。よってX線検出器の暗電流が低下し、感度が増大する。また、有機膜504によりガラス基板101とX線電荷変換膜210の熱膨張係数差による熱応力を緩和することができるため、クラックの発生、基板の反り、PbI2膜はがれ等の問題が緩和でき、画像の不均一が改善し、暗電流の低下、感度の増加等の改善が得られる。有機膜を画面全面に形成し、画素毎に分離しないことにより、特性の均一性が改善し、歩留が改善し、コストが低減できた。
【実施例3】
【0051】
本実施例に係るX線平面検出器の断面図を図13に示す。図1と同一の構成には同一符号を付している。ガラス基板101上に、幅10μm程度、厚さ300nm程度であり、モリブデンータンタル(MoTa)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)モリブデンータングステン(MoW)から選ばれる一層、あるいはTaとTaNxとの積層体からなるスイッチングTFTのゲート電極102、及び幅80μm程度、厚さ300nm程度であり、ゲート電極102と同一材料からなる蓄積容量402の電極102aが形成されている。ゲート電極102、電極102aを含む基板101上には厚さ350nm程度であり、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)との積層体である絶縁膜103が形成されている。
【0052】
スイッチングTFT402のゲート電極102上には絶縁膜103を介して、スイッチングTFT402のバックゲート領域となる100nm程度の膜厚のアンドープ非晶質シリコン(a―Si)層104が形成されている。a−Si層104はゲート電極102の形状を反映して上に凸状となっている。a−Si層104の凸状表面にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域を区画するためのストッパ105が約200nmの膜厚に形成されている。a−Si層104上にはスイッチングTFT402のソース/ドレイン領域となる高濃度n型(n+)a−Si層106が膜厚50nmで形成されており、n+a−Si層106に形成された開口、およびストッパ105により、ソース/ドレイン領域を構成している。
【0053】
n+a−Si層106、絶縁膜103を覆うように膜厚300nmの補助電極502が形成されており、n+a−Si層106と電気的に接続されている。補助電極502を覆うようにして、アクリル系有機樹脂膜からなる保護膜107を膜厚1〜5μm程度を積層する。この保護膜107には補助電極502の表面を露出させるコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホール表面、および保護膜107上に画素電極503が形成される。そして画素電極上には実施例2と同様、有機膜504がガラス基板101全面に亘って形成されている。この有機膜504は保護膜107中のコンタクトホールを埋め込むように形成されており、有機膜504の表面は平坦化されている。実施例1の有機膜504は画素電極503毎に分割されているが、本実施例では有機膜504は画素電極503毎に分割されずガラス基板101上連続的に形成されている。
【0054】
有機膜504上には約300μmの膜厚の、ヨウ化鉛(PbI2)からなるX線電荷変換膜210が形成されている。X線電荷変換膜210上面にはX線が変換された電荷を加速するための上部電極が、30nm程度の膜厚で形成されている。
【0055】
以上、本実施例のX線平面検出器においては、実施例1で満たされる効果の他、X線電荷変換膜210のa軸が有機膜の伸延方向(ガラス基板101表面と平行であり、スイッチングTFT402のゲート伸張方向と同方向)に揃うことになりX線電荷変換膜210の結晶性がさらに改善するという効果が得られる。
【0056】
次に図2〜11、13を参照して本実施例に係るX線平面検出器の形成方法について説明する。本実施例においては、有機膜504を形成する工程までは実施例1の製造方法と同一であるから、実施例1と同一図面を用いて簡潔に説明する。
【0057】
実施例1と同様に、図2〜11に示すようにガラス基板101上にスイッチングTFT402及び蓄積容量404を形成し、保護膜107を介して画素電極503を成膜する。厚さ30nmのITOにより画素電極503を形成する。
【0058】
次に、図13に示すようにこのアレイ基板101の上に有機膜504としてアクリル系有機膜をスリットスクリーンで塗布する。この有機膜504は実施例1と同様、顔料、炭素粒子、金属粒子を混合させることで低抵抗有機膜として構成することができる。厚さは50nmから10μmが好ましいが、この実施例では3μmの厚さに塗布した。スリットスクリーンを用いることにより周辺のコンタクトパッド部には有機膜が塗布されないように形成する。この実施例では有機膜を画素形状に分離せずに連続した形状で形成する。
【0059】
また、アクリル樹脂に混合したカーボン粒子による表面の平坦性の劣化を改善するために、有機顔料を混合したアクリル樹脂を積層した。顔料混合アクリル樹脂の厚さは10から300nm程度で良い。また、顔料を添加しないアクリル樹脂でも同様の効果がある。更に平面方向の抵抗を上げて画素分離を良くするためにTFTアレイ上に10〜300nmの無添加アクリル膜を形成し、その上にカーボン入りアクリル膜を2μm形成し、更に10〜300nmの無添加アクリル膜を形成しした3層構造としても良い。無添加有機膜の抵抗率は5x1013Ωcm以上の膜が良い。有機膜としてはアクリル樹脂に限らず、PVA,アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド等でも良い。
【0060】
次に、ラビングによりこの有機膜をこすり一方向性の伸延を発生させる。次いで、有機膜504上にPbI2を溶解した液層から、X線電荷変換膜210としてPbI2を300μmの厚さに蒸着する。このX線電荷変換膜210は有機膜の伸延方向にa軸が配向するようになる。また配向処理をしない場合より粒径が増大し、結晶性が改善するようになる。粒径の拡大は成膜法として蒸着を用いた場合にも見られる。このX線電荷変換膜210上に、Pd300nmからなる上部電極212を形成する。
【0061】
このようにして得たTFTアレイX線電荷変換膜基板に周辺の駆動回路を実装して完成したX線平面検出器を用いて、X線画像の検出を行った。その結果を表3に示す。有機膜層によるコンタクトホール部の層間絶縁膜の段差が平坦化できたためコンタクト部のX線感光膜の結晶性が改善できていることがわかる。また、下部のITO膜の粒界の影響が無くなり、微視的にも平坦化できたためX線感光膜の結晶性が改善でき、X線検出器の暗電流が低下し、感度が増大していることがわかる。有機膜にラビングをすることによりX線感度が33(pC/cm2)/(nC/kg)まで改善し、暗電流も1pA/mmまで改善した。これは結晶粒径の方向が揃い結晶性が向上したためである。
【表3】
【0062】
以上、本実施例のX線平面検出器の製造方法においては更に有機膜の伸延による結晶性の改善が見られ、この結果、暗電流の低下、X線感度の更なる増大が見られた。ラビングの方向は1方向のみに限定されず、1方向及びこれに対して30度傾いた方向の2方向を用いても良い。0度と30度の2つの方向を用いることにより六方の2つの結晶方位が規定されるため更に結晶性が改善した。又、HgI2の様な正方晶のX線感光膜に対しては0度と90度の2方向にラビングすることにより結晶性が改善し、効率が上がった。またラビングによる有機膜の伸延に限らず、表面に浅い溝を一方向に形成したり、こすってキズを一方向につけてもても結晶性を改善するのに有効である。又、0度、30度、90度等の複数の方向に形成しても良い。
【0063】
本発明は上記実施例に限定されない。X線感光膜としては金属ハライドで有ればPbI2,InI,HgI2、BiI3、CdI2等何でも適用可能である。結晶方位は基板面がc面(0001)面、ab面(1000)又は(0100)面が好ましい。成膜法としては蒸着に限らず、液層成長、塗布、CVD等何を用いても良い。また、アモルファスSe,アモルファスSe−Te等のX線感光膜に対しても同様の効果がある。
【0064】
有機膜の抵抗率は1×105から1×1013Ωcmが良い。膜厚は50nmから10μmが良く、平坦化のためには段差と同程度の有機膜厚が好ましい。抵抗率を下げるために、顔料等の有機物、金属粒子、炭素粒子を含有させても良い。また、導電性ポリマーを用いても良い。導電性ポリマーとして、キャリア輸送材料として用いられる有機半導体は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、N,N−ジフェニル−N,N−ジ(m−トリル)ベンジジン(TPD)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリアルキルチオフェン、ポリビニルカルバゾール(PVK)、トリフェニレン(TNF)、液晶分子、金属フタロシアニン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)からなる群より選択される少なくとも1種の材料からなる。これらの物質はキャリアの移動度が高いため好ましい。PPVまたはPVK−TNF混合物のようなポリマー系のキャリア輸送材料を用いる場合、X線電荷変換膜はX線感光材料の粒子をポリマー系のキャリア輸送材料に分散させることにより形成される。また、低分子のキャリア輸送材料を用いる場合、X線電荷変換膜はX線感光材料の粒子および低分子のキャリア輸送材料をバインダーに分散させることにより形成される。バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが用いられる。バインダーを用いる場合、キャリア輸送材料とバインダーとの混合物中におけるキャリア輸送材料の混合割合はキャリア輸送材料が約0.1〜40モル%に設定される。しかし、PPVやPVK−TNF混合体ではキャリア輸送材料が100%であってもよい。
【0065】
ポリマーとしては膜形成できれば何でも良く、PVA,アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドや導電性ポリマーを用いれば良い。パターン形成のためにはマスク露光してパターニングするために感光性ポリマーが好ましい。有機膜を伸延させる方法はラビングに限らず、機械的伸延、光ポリマー化等の方法を用いても良い。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1に係るX線平面検出器の断面図である。
【図2】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図3】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図4】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図5】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図6】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図7】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図8】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図9】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図10】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図11】本発明の実施例1、2、3に係るX線平面検出器製造工程図である。
【図12】本発明の実施例2に係るX線平面検出器の断面図である。
【図13】本発明の実施例3に係るX線平面検出器の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
101 … ガラス基板
102 … ゲート電極
103 … 絶縁膜
104 … a−Si層
105 … ストッパ
106 … n+a―Si層
107 … 保護膜
210 … X線電荷変換膜
210a … ブロッキング層
210b … PbxBiyI層
212 … 上部電極
402 … スイッチングTFT
404 … 蓄積容量
405 … 走査線
406 … 蓄積容量線
502 … 補助電極
503 … 画素電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線電荷変換膜と、
前記X線電荷変換膜の一方の面に設けられた第1の電極と、
前記X線電荷変換膜の他方の面に設けられた第2の電極と、
前記X線電荷変換膜と前記第2の電極との間に介在する有機膜と
を具備することを特徴とするX線平面検出器。
【請求項2】
前記X線電荷変換膜は金属バライド、アモルファスカルコゲナイドから選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項3】
前記有機膜は熱膨張係数が3×10-6/℃以上5×10-4/℃以下であり、厚さが0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項4】
前記有機膜はアクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドや導電性ポリマーより選ばれる1つの材料からなることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項5】
前記有機膜は導電性を有し、抵抗率が1×1013Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項6】
前記有機膜は顔料又は導電性金属又は導電性炭素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のX線平面検出器。
【請求項7】
前記有機膜はその表面の少なくとも一部に一方向に伸延されていることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項1】
X線電荷変換膜と、
前記X線電荷変換膜の一方の面に設けられた第1の電極と、
前記X線電荷変換膜の他方の面に設けられた第2の電極と、
前記X線電荷変換膜と前記第2の電極との間に介在する有機膜と
を具備することを特徴とするX線平面検出器。
【請求項2】
前記X線電荷変換膜は金属バライド、アモルファスカルコゲナイドから選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項3】
前記有機膜は熱膨張係数が3×10-6/℃以上5×10-4/℃以下であり、厚さが0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項4】
前記有機膜はアクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドや導電性ポリマーより選ばれる1つの材料からなることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項5】
前記有機膜は導電性を有し、抵抗率が1×1013Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【請求項6】
前記有機膜は顔料又は導電性金属又は導電性炭素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のX線平面検出器。
【請求項7】
前記有機膜はその表面の少なくとも一部に一方向に伸延されていることを特徴とする請求項1に記載のX線平面検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−156555(P2006−156555A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342269(P2004−342269)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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