説明

転がり軸受、軸受ユニット

【課題】鍛造時の素材変形に伴う材料の流れに着目した方法で、転がり軸受の寿命を長くする。
【解決手段】外輪21の軌道溝21a,21bの転動体接触面の表層部を、円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成する。軸線を含む断面における軌道溝21a,21bの転動体接触点Pでの接線Lと、前記断面における軌道溝21a,21bの最も表面側の鍛流線T1 の方向を示す直線A1 とのなす角度(θ)を、0°以上60°以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受および軸受ユニット(複列の軌道を有する外輪およびフランジが一体になっている外側部材と、内輪と、転動体を備えた軸受)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費を向上するために、軽量化を目的とした車輪支持用軸受のユニット化が進んでいる。図1は、ユニット化された車輪支持用軸受の一例を示す断面図である。このユニットは、内側部材1と、外側部材2と、玉(転動体)3と、保持器4と、第1のシール5と、第2のシール6と、スリンガ7とで構成され、玉3が転動する軌道を二列備えている。
【0003】
内側部材1は、二列の軌道を有する内輪11、車軸を内嵌するハブ12、および車輪側部材8を固定するフランジ13を有する。内側部材1は第1の部材1aと第2の部材1bとからなる。第1の部材1aは、内輪11の一方の内輪軌道11aの部分とハブ12とフランジ13が一体に形成されたもの(ハブ輪)である。第2の部材1bは、他方の内輪軌道11bが形成されたリング状部材であって、第1の部材1aに外嵌されている。
【0004】
外側部材2は、二列の軌道21a,21bを有する外輪21と、車体の懸架装置(車体側部材)を固定するボルト穴22aが形成されたフランジ22とが一体に形成されたものである。
このような複雑な形状を有する内側部材1および外側部材2は、従来、0.5質量%程度の炭素を含有する中炭素鋼からなる素材を用い、熱間鍛造で所定形状に加工した後、軌道溝の表層部を高周波焼入れにより硬化させることで製造されている。
【0005】
また、内部に水が浸入する等の過酷な使用条件に耐えることができるように、車輪支持用軸受ユニットの寿命向上要求が高まっている。この要求に応える方法としては、特定の合金成分を含有した鋼からなる素材を用いる方法や、清浄度の高い鋼からなる素材を用いる方法があるが、これらの方法には、素材が調達しにくくなる、生産性が低減する、コストが上昇する等の問題がある。
【0006】
これに対して、下記の特許文献1および2には、鍛造工程の条件で変化するメタルフロー(鍛流線)の向きを特定範囲に設定することにより、転がり軸受の寿命を長くすることが開示されている。特許文献1では、回転軸を含む断面におけるメタルフローの当該回転軸に対する角度の最大値を10°以上50°以下に設定している。特許文献2では、転動体の公転方向に対するメタルフローの角度を±15°以内に設定している。
【特許文献1】特許第3123055号公報
【特許文献2】特開平8−42576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鍛造時の素材変形に伴う材料の流れに着目した方法ではあるが、特許文献1および2とは異なる方法で転がり軸受の寿命を長くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、円柱状素材の鍛造工程を経て製造され、軌道溝の転動体接触面の表層部(例えば、表面から最大剪断応力深さまでの範囲)は、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする転がり軸受の軌道輪を提供する。また、この軌道輪を備えた転がり軸受を提供する。
【0009】
本発明はまた、複列の軌道を有する軌道輪およびフランジが一体に、円柱状素材の鍛造工程を経て製造された軌道輪部材であって、軌道溝の転動体接触面の表層部は、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、軸線を含む断面における転動体と軌道溝との接触角度が初期接触点での接触角度の−5°〜+10°となる範囲で、前記断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする軌道輪部材を提供する。また、この軌道輪部材を備えたことを特徴とする軸受ユニットを提供する。
【0010】
本発明はまた、複列の軌道を有する内輪、車軸を内嵌するハブ、および車輪側部材を固定するフランジを有し、少なくとも一列の軌道とハブとフランジが一体に、素材の鍛造工程を経て製造された内側部材と、複列の軌道を有する外輪および車体側部材を固定するフランジが一体に、素材の鍛造工程を経て製造された外側部材と、転動体と、を備えた車輪支持用軸受ユニットにおいて、前記内側部材の軌道とハブとフランジが一体化された部材および前記外側部材の少なくともいずれかは、軌道溝の転動体接触面の表層部が、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、軸線を含む断面における転動体と軌道溝との接触角度が初期接触点での接触角度の−5°〜+10°となる範囲で、前記断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする車輪支持用軸受ユニットを提供する。
【0011】
本発明はまた、円柱状素材の鍛造工程を経て転がり軸受の軌道輪を製造する方法において、軌道溝の転動体接触面の表層部は、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下となるように鍛造条件を設定することを特徴とする軌道輪の製造方法を提供する。
【0012】
複列の軌道輪と単列の軌道輪とを比較した場合や、軌道輪にフランジが一体化されている軸受部材とフランジがない軌道輪のみの軸受部材とを比較した場合に、これらが円柱状素材の鍛造工程を経て製造されていると、より複雑な形状である「複列の軌道輪」および「軌道輪にフランジが一体化されている軸受部材」は、鍛造工程で素材の芯部(中心付近の部分)が軌道溝表層部に出現し易くなる。
ここで、素材の芯部(中心付近の部分)は、周辺の部分よりも非金属介在物が存在しやすい(清浄度が低い)ため、芯部が軌道溝表層部に存在すると、介在物を起点とした剥離が生じやすい。
【0013】
本発明によれば、軌道溝の転動体接触面の表層部が、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成されているため、前記接触面の表層部に介在物が存在し難い。また、軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が0°以上60°以下であるため、前記角度が60°を超えた場合と比較して軌道溝に剥離が生じ難い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、円柱状素材の鍛造工程を経て製造された軌道輪(外側部材)の軌道溝の転動体接触面の表層部を、円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成するとともに、軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度を0°以上60°以下とすることにより、転がり軸受(軸受ユニット)の寿命を長くすることができる。
【0015】
本発明の車輪支持用軸受ユニットによれば、円柱状素材の鍛造工程を経て製造された内側部材の軌道とハブとフランジが一体化された部材および外側部材の少なくともいずれかについて、軌道溝の転動体接触面の表層部を、円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成するとともに、軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度を0°以上60°以下とすることにより、内部に水が浸入する等の過酷な使用条件での寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
この実施形態では、図1の車輪支持用軸受ユニットの外側部材2を、図2に示す方法で作製した。これにより、外輪21の軌道溝21a,21bの転動体接触面の表層部(表面から最大剪断応力深さまでの範囲)を、円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成した。また、図3に示すように、軸線を含む断面における軌道溝21a,21bの転動体接触点Pでの接線Lと、前記断面における軌道溝21a,21bの最も表面側の鍛流線T1 の方向を示す直線A1 とのなす角度(θ)を、0°以上60°以下とした。
【0017】
図2の方法では、先ず、図2(a)に示すように、円柱状の素材を用意し、据え込み工程により、円柱の軸方向両側から押し潰す。これにより、図2(b)に示す状態とする。次に、鍛造工程により、図2(c)に示すように、フランジ22と外輪21と、両軌道の間の部分210を繋ぐ部分23とが一体化された形状に成形する。次に、ピアスパンチ工程により、繋ぎ部分23を除去して、図2(d)に示す形状とする。
【0018】
図2の方法で、据え込み工程での素材の径と長さの比率を調整し、鍛造工程での前記部分23の形成位置および厚さを調整すること等によって、外輪21の軌道溝21a,21bの転動体接触面の表層部を、円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成されるように、且つ角度θが0°以上60°以下となるようにすることができる。
【0019】
なお、図1の車輪支持用軸受ユニットは予圧を付与して使用することから、予圧量によって接触角が変化するため、前記角度θを0°以上60°以下とする範囲を、図4(a)に示すように、初期接触点(予圧を付与する前の軌道溝21bと転動体3との接触点)P0 の位置だけでなく、図4(b)に示すように、接触角度が初期接触点での値(α)の−5°〜+10°となる範囲A(接触点P1 〜P2 の範囲)とすることが好ましい。
【0020】
ここで、SUJ2製の円柱状素材(直径130mm)の径方向における介在物の分布状態を調べたところ、図5に示すグラフが得られた。このグラフの横軸「素材の径方向位置(%)」は、図6に示すように、円柱状素材の径方向Kにおける中心Oからの距離の半径に対する割合である。このグラフの縦軸「介在物数(個)」は、観察面積300mm2 に存在している直径10μm以上の介在物の数であり、実際に光学顕微鏡で円柱状素材の径方向各位置での介在物を、観察領域が重ならないように、合計観察面積が300mm2 になるまで複数回観察して得た結果を示している。
図5のグラフから分かるように、軌道溝の転動体接触面の表層部を、円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成することによって、前記表層部の介在物密度が著しく低くなり、介在物を起点とした剥離が生じ難くなる。
【実施例】
【0021】
図7に示す方法で、試験軸受による寿命試験を行った。試験軸受は、内輪10、外輪20、玉30からなるフラットワッシャータイプのスラスト軸受である。内輪10は、回転軸Jを内嵌する中心穴10aを有する円板状部材であり、円板面に軌道溝10bが形成されている。外輪20は、内輪10と同じ直径の円板状に形成されており、軌道溝は設けていない。よって、外輪20ではフラットな円板面に玉30が接触する。外輪20の玉30が接触する面の両端位置(軌道面の範囲)を「M」で示す。
【0022】
この外輪20として、表1に示すNo. 1〜10の構成の試験片を、以下の方法で作製した。
先ず、SUJ2製であるが、鋼中の酸素(O)含有率および硫黄(S)含有率が異なり、鍛流線が軸方向と垂直な円柱状素材を用意した。次に、以下の方法で、この円柱状素材から円板状の試験片を切り出した。
試験片の切り出し方を図8を用いて説明する。図8では、鍛流線を「T」で、円筒状素材を「E1 」「E2 」で示す。各サンプルで、角度θと、軌道面端部(点M)の円柱状素材の径方向Kにおける中心Oからの距離D、の半径Rに対する比(D/R)を、表1に示すように変化させた。θ=0の場合は両方の端点「M」が径方向Kで同じ位置にあるが、θ≠0の場合は異なる位置にある。よって、θ≠0の場合の比(D/R)は、軌道面の最も素材中心に近い位置(点M1 )での値である。
【0023】
使用する円筒状素材の直径は、試験片の直径とθによって異なる。図8(a)に示す例では、この円筒状素材E1 からθ=55°でH=50%の試験片は切り出せないが、例えば図8(b)に示すように、より直径の大きな円筒状素材E2 であれば、切り出すことができる。
次に、切り出した各試験片に、830〜850℃で0.5〜1時間加熱した後に油冷却する焼入れを行った後、160〜200℃で2時間の焼戻し処理を施して、表面硬さをHRC61以上にした。
【0024】
内輪10および玉3は、SUJ2製で通常の熱処理をしたものを用いた。また、玉3を4個使用し、玉3のPCD(ピッチ円直径)を38.5mmとした。
そして、図7に示す方法で、この試験軸受の寿命試験を行った。先ず、内輪10に回転軸Jを取り付けた状態で試験軸受を容器Y内に置く。この状態で、容器Y内に、潤滑油「VG10」に水を5質量%混合した液体Eを入れ、液体E内に試験軸受全体が浸るようにする。次に、回転軸Jの上からアキシャル荷重Pa(2940N)を付与した状態で、回転軸Jを速度1000min-1で回転させる。そして、剥離が発生するまでの時間を調べて、この時間を応力繰り返し数に換算し、この応力繰り返し数(cycle)を寿命(転がり疲れ寿命)とした。
【0025】
その結果を下記の表1に併せて示す。また、この結果から、角度θが60°以下であるNo. 1〜4とNo. 6〜9のデータを用いて、外輪の比(D/R)と寿命との関係を示すグラフを作成した。このグラフを図9に示す。さらに、この結果から、比(D/R)が40%を超えるNo. 3〜10のデータを用いて、外輪の角度θと寿命との関係を示すグラフを作成した。このグラフを図10に示す。
【0026】
また、この結果から、角度θが60°以下で比(D/R)が40%を超えるNo. 3〜4とNo. 6〜9のデータを用いて、外輪の鋼中酸素含有率と寿命との関係を示すグラフを作成した。このグラフを図11に示す。さらに、この結果から、角度θが60°以下で比(D/R)が40%を超えるNo. 3〜4とNo. 6〜9のデータを用いて、外輪の鋼中硫黄素含有率と寿命との関係を示すグラフを作成した。このグラフを図12に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
図9のグラフから分かるように、外輪の比(D/R)が大きいほど、すなわち、外輪の軌道面が円筒状素材の芯部でなく周辺部側の部分のみからなるようにすることで、寿命が長くなる。特に、比(D/R)が43%以上であると、寿命が1.7×107 cycle以上となるが、比(D/R)が36%以下では、寿命が0.48×107 cycle以下であった。
図10のグラフから分かるように、外輪のθが小さいほど寿命が長くなる。特に、θが55°以下であると、寿命が1.7×107 cycle以上となるが、θが65°以上であると寿命が0.77×107 cycle以下であった。
図11および12のグラフから分かるように、外輪の鋼中酸素含有率および鋼中硫黄含有率が低いほど寿命は長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ユニット化された車輪支持用軸受の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の軸受ユニット外側部材の作製方法を説明する図である。
【図3】軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点Pでの接線Lと、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線T1 の方向を示す直線A1 とのなす角度(θ)を説明する断面図である。
【図4】外輪の角度θを0°以上30°以下とする接触角度の範囲を説明する図である。
【図5】円柱状素材の径方向における介在物の分布状態を示すグラフである。
【図6】図5の横軸「素材の径方向位置(%)」を説明する図である。
【図7】実施例で行った寿命試験を説明する図である。
【図8】実施例で作製した試験片の切り出し方を説明する図である。
【図9】実施例で行った寿命試験のデータを、外輪の比(D/R)と寿命との関係にまとめたグラフである。
【図10】実施例で行った寿命試験のデータを、外輪のθと寿命との関係にまとめたグラフである。
【図11】実施例で行った寿命試験のデータを、外輪の鋼中酸素含有率と寿命との関係にまとめグラフである。
【図12】実施例で行った寿命試験のデータを、外輪の鋼中硫黄含有率と寿命との関係にまとめグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 内側部材
1a 第1の部材(ハブ輪)
1b 第2の部材
11b 内輪軌道
11 内輪
12 ハブ
13 フランジ
2 外側部材
21 外輪
21a 軌道溝
21b 軌道溝
22a 懸架装置(車体側部材)を固定するボルト穴
22 フランジ
3 玉(転動体)
4 保持器
5 第1のシール
6 第2のシール
7 スリンガ
8 車輪側部材
1 1 の方向を示す直線
L 接触点での軌道溝の接線
S0 塑性流れを示す直線の平行移動線
K 円柱状素材の径方向
P 接触点
0 初期接触点
1 接触点
2 接触点
T 鍛流線
1 最も表面側の鍛流線
θ 直線A1 と接線Lとのなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状素材の鍛造工程を経て製造され、軌道溝の転動体接触面の表層部は、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、
軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする転がり軸受の軌道輪。
【請求項2】
請求項1記載の軌道輪を備えた転がり軸受。
【請求項3】
複列の軌道を有する軌道輪およびフランジが一体に、円柱状素材の鍛造工程を経て製造された軌道輪部材であって、
軌道溝の転動体接触面の表層部は、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、
軸線を含む断面における転動体と軌道溝との接触角度が初期接触点での接触角度の−5°〜+10°となる範囲で、前記断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする軌道輪部材。
【請求項4】
請求項3記載の軌道輪部材を備えたことを特徴とする軸受ユニット。
【請求項5】
複列の軌道を有する内輪、車軸を内嵌するハブ、および車輪側部材を固定するフランジを有し、少なくとも一列の軌道とハブとフランジが一体に、円柱状素材の鍛造工程を経て製造された内側部材と、
複列の軌道を有する外輪および車体側部材を固定するフランジが一体に、円柱状素材の鍛造工程を経て製造された外側部材と、
転動体と、
を備えた車輪支持用軸受ユニットにおいて、
前記内側部材の軌道とハブとフランジが一体化された部材および前記外側部材の少なくともいずれかは、
軌道溝の転動体接触面の表層部が、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、
軸線を含む断面における転動体と軌道溝との接触角度が初期接触点での接触角度の−5°〜+10°となる範囲で、前記断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする車輪支持用軸受ユニット。
【請求項6】
円柱状素材の鍛造工程を経て転がり軸受の軌道輪を製造する方法において、
軌道溝の転動体接触面の表層部は、前記円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分のみで形成され、
軸線を含む断面における軌道溝の転動体接触点での接線と、前記断面における軌道溝の最も表面側の鍛流線の方向を示す直線と、のなす角度が、0°以上60°以下となるように鍛造条件を設定することを特徴とする軌道輪の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−250317(P2006−250317A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70999(P2005−70999)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】