説明

封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】 成形性と耐半田性に優れ、耐湿信頼性にも優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で素子が封止されている電子部品装置を提供する。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び、(D)一般式(1)で示されるシラン化合物、を含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(D)成分が、純度が98.5〜99.5質量%であり、炭素数1〜5の一価のアルコールの含有量が1000〜2500ppmであり、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が8000ppm未満であることを特徴とする、封止用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品装置の分野では、装置の小型化、軽量化、高性能化を図るため、素子の高密度実装化、配線の微細化、多層化、及び多ピン化、素子のパッケージに対する占有面積の増大化が進んでいる。同時に電子部品装置ではパッケージ薄型化傾向が進んでおり、このような開発が進む中で、封止材に対する要求はますます厳しくなっている。
半導体などの電子部品の封止用エポキシ樹脂組成物には一般的に無機充填剤や素子などの無機物とエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの有機物との接着性向上を目的として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランや3―アニリノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等、種々のカップリング剤がエポキシ樹脂組成物中に添加されてきた。
【0003】
例えば特許文献1及び特許文献2では、耐半田リフロー性向上を目的として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを添加した封止材を用いているが、特許文献1及び特許文献2に記載された方法では耐半田性や成形性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−25335号公報
【特許文献2】特開2009−249424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、成形性と耐半田性に優れ、耐湿信頼性にも優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で素子が封止されている電子部品装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示されるシラン化合物として、純度が98.5〜99.5質量%であり、炭素数1〜5の一価のアルコールの含有量が1000〜2500ppmであり、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が8000ppm未満であるものを封止用エポキシ樹脂組成物に添加することにより上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
このような目的は、下記の本発明[1]〜[4]により達成される。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び、(D)下記一般式(1)で示されるシラン化合物、を含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(D)成分が、純度が98.5〜99.5質量%であり、炭素数1〜5の一価のアルコールの含有量が1000〜2500ppmであり、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が8000ppm未満であることを特徴とする、封止用エポキシ樹脂組成物。
【0008】
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基である。R2は炭素数1〜5のアルキル基である。mは1〜6の整数である。nは1〜3の正数である。)
【0009】
[2]上記(A)成分が、下記一般式(2)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のエポキシ樹脂を含む、上記[1]に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【0010】
【化2】

(上記一般式(2)において、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0011】
【化3】

(上記一般式(3)において、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0012】
【化4】

(上記一般式(4)において、R10〜R18は水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0013】
[3]上記(B)成分が、下記一般式(5)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のフェノール樹脂を含む、上記[1]又は[2]に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【0014】
【化5】

(上記一般式(5)において、R19〜R27は水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0015】
[4]上記[1]ないし[3]のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で、素子が封止されていることを特徴とする電子部品装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形性と耐半田性に優れ、耐湿信頼性にも優れた封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
また、この封止用エポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば信頼性に優れた電子部品装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る封止用エポキシ樹脂組成物を用いた電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」ということが
ある)は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び、(D)上記一般式(1)で示されるシラン化合物、を含有し、前記(D)成分が、所定の純度、炭素数1〜5の一価のアルコール含有量、及び、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量を有することを特徴とする。
これにより、成形性、耐半田性、耐湿信頼性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
本発明の電子部品装置は、上述のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、素子が封止されていることを特徴とする。これにより、信頼性に優れた電子部品装置を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において用いられる(A)成分のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル、アルキル置換又は無置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、1−アルケン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
これらの中でも、成形性、接着性の観点から下記一般式(2)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
【化2】

(上記一般式(2)において、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0022】
【化3】

(上記一般式(3)において、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0023】
【化4】

(上記一般式(4)において、R10〜R18は水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0024】
上記一般式(2)中のR〜Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基、及び、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等から選ばれるが、中でも水素原子又はメチル基が好ましい。上記一般式(2)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられ、中でも、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂がより好ましく、例えば、YX−4000K、YX−4000H(いずれも三菱化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能で
ある。このビフェニル型エポキシ樹脂を使用する場合、ダイパッドやリードフレームに対する接着性が向上することで、耐半田性の向上が期待できる。その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0025】
上記一般式(3)中のR〜Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基、及び、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等から選ばれるが、中でも水素原子又はメチル基が好ましい。上記一般式(3)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂としては、n=0を主成分とするエポキシ樹脂がより好ましく、例えば、NC−2000(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。このフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を使用する場合、架橋点間距離が広がるため、硬化物の弾性率を低減でき、耐半田性の向上が期待できる。その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0026】
上記一般式(4)中のR10〜R18は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基、及び、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等から選ばれるが、中でも水素原子又はメチル基が好ましい。上記一般式(4)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂としては、n=0を主成分とするエポキシ樹脂がより好ましく、例えば、NC−3000L(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。このビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を使用する場合、架橋点間距離が広がるため、硬化物の弾性率を低減でき、耐半田性の向上が期待できる。その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0027】
上記一般式(2)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、上記一般式(3)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び上記一般式(4)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても2種以上を併用してもよい。単独で用いる場合あるいは2種以上を併用する場合には、それらの配合量はエポキシ樹脂全量に対して合計で50質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましい。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いられる(A)成分のエポキシ樹脂全体の配合割合としては、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、1質量%以上、15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。
(A)成分のエポキシ樹脂全体の配合割合が上記下限値以上であると、エポキシ樹脂組成物の溶融時の流動性を良好なものとすることができる。また、上記上限値以下であると、成形品の耐半田性を良好なものとすることができる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物において用いられる(B)成分のフェノール樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール
、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
これらの中でも、流動性、低吸湿性の観点から、下記一般式(5)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。
【0031】
【化5】

(上記一般式(5)において、R19〜R27は水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0032】
上記式(5)中のR19〜R27は全てが同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基、及び、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等から選ばれるが、中でも水素原子及びメチル基が好ましい。上記一般式(5)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂としては、例えば、R19〜R27が全て水素原子である化合物等が挙げられ、中でも溶融粘度の観点から、nが0の成分を50質量%以上含む縮合体の混合物が好ましい。このような化合物としては、MEH−7851SS(明和化成株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。このビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を使用する場合、その配合量は、その性能を発揮するためにフェノール樹脂硬化剤全量に対して50質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いられる(B)成分のフェノール硬化剤の配合割合は、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、0.5質量%以上、12質量%以下であることが好ましく、1質量%以上、9質量%以下であることがより好ましい。
(B)成分のフェノール樹脂硬化剤の配合割合が上記下限値以上であると、エポキシ樹脂組成物の溶融時の流動性を良好なものとすることができる。また、上記上限値以下であると、成形品の耐半田性を良好なものとすることができる。
【0034】
(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール樹脂硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数/フェノール樹脂硬化剤中の水酸基数の比は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.5の範囲に設定されることがより好ましい。また、成形性、耐リフロー性に優れるエポキシ樹脂組成物を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物において用いられる(C)成分の無機充填材は、吸湿性低減、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び機械的強度向上のためにエポキシ樹脂組成物に配合されるものであり、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の無機充填材の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填材形状は成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。
【0036】
無機充填材(C)の配合量は、成形性の向上、吸湿性、線膨張係数の低減及び機械的強度向上の観点から、エポキシ樹脂組成物全体に対して80質量%以上、96質量%以下の範囲が好ましく、82質量%以上、92質量%以下の範囲がより好ましく、86質量%以上、90質量%以下の範囲がさらに好ましい。
無機充填材(C)の配合量を上記下限値以上とすることにより、吸湿要因である樹脂成分の配合量を少なくし、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿量を低く抑えることができる。また、上記上限値以下とすることにより、成形性を良好なものとすることができる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物において用いられる(D)成分は、下記一般式(1)で示されるものであり、純度が98.5〜99.5質量%であり、炭素数1〜5の一価のアルコールの含有量が1000〜2500ppmであり、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が8000ppm未満であるものであれば適用することができる。
例えば、一般式(1)におけるアルキル基R、Rの炭素数は1〜5の中から選択することができ、含有される一価のアルコールの炭素数も1〜5の中から選択することができる。また、メルカプト基とシリル基とを結合するアルキレン基は、炭素数1〜6の中から選択することができる。これらの化合物を単独で用いても2種類以上を組み合わせてもよい。
【0038】
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基である。R2は炭素数1〜5のアルキル基である。mは1〜6の整数である。nは1〜3の正数である。)
【0039】
本発明で用いられる(D)成分は、純度が98.5〜99.5質量%である。このような高い純度の(D)成分を用いることにより、エポキシ樹脂組成物内の有機樹脂成分と無機充填材、インサート部品との接着性を向上させることができる。なお、ここで、(D)成分の純度は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)により測定することができる。
【0040】
また、本発明で用いられる(D)成分は、炭素数1〜5の一価のアルコールの含有量が1000〜2500ppmである。このような所定量の一価アルコールは、アルコキシシラン同士の縮合反応によって生じた化合物を加溶媒分解させ、アルコキシシリル基に戻している。これにより、エポキシ樹脂組成物内で、(D)成分の分散性を向上させ、樹脂組成物の局所的な高分子量化を抑制できるため、成形性を向上させることができる。一価のアルコールの含有量が1000ppm未満であると、この作用効果が充分ではなく、また、2500ppmを越えると、揮発成分の多さから、成形物中にボイドが発生し、耐半田性が低下するようになる。
含有される炭素数1〜5の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2,2ジメチル−1−プロパール、1−メチルブタノール、2−メチルブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノールが挙げられるが、これらの中でも炭素数1〜3のアルコールが好ましく、さらにこれら中でもメタノールが好ましい。これにより、(D)成分の自己縮合物を効率よく単量体に戻し、純度を向上させることができる。
【0041】
さらに、エポキシ樹脂と反応できない、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量を8000ppm未満に低減したことを特徴とする。これにより、無機充填材や各種基材表面と有機樹脂成分との化学結合を効率よく形成可能なため、耐半田性を向上させることが可能になる。
さらに、本発明で用いられる(D)成分は蒸留等による精製が十分に行われているため耐湿信頼性が改善される。分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量が8000ppm以上であると、エポキシ樹脂組成物内の有機樹脂成分と無機充填材、インサート部品との接着性が低下するようになる。
ここで、上記分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物としては、例えば、プロピルトリメトキシシラン(下記式a)、3−メチルチオプロピルトリメトキシシラン(下記式b)、1,6−ビス(トリメトキシシリル)へキサン(下記式c)が挙げられる。本願発明においては、(D)成分中におけるこれらの化合物の合計含有量を8000ppm未満とすることにより、上記効果を発現させることができるものである。
Si(OCH (a)
CHSCSi(OCH(b)
(CHO)SiC12Si(OCH(c)
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる上記(D)成分において、一価のアルコールの含有量と分子内にメルカプト基を含有しないシラン化合物の含有量はともにガスクロマトグラフィー(GC)測定時のピーク面積で定量可能である。
【0042】
本発明で用いられるような性状を有する上記(D)成分を調製する方法としては特に限定されないが、例えば、減圧蒸留精製により、(D)成分の自己縮合を抑えながら、メルカプト基を含まないシラン化合物の含有量を8000ppm未満に低減させ、この蒸留成分に炭素数1〜5の一価のアルコールを添加することで、上記一価のアルコールの含有量を調節する方法により調製することができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、上記(D)成分の配合量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜2質量%が好ましく、特に0.1〜0.4質量%が好ましい。
上記(D)成分の配合量を上記下限値以上とすることにより、成形品の耐半田性を向上
させることができる。また、上記上限値以下とすることにより、成形性を良好なものとすることができる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物において用いられる上記(D)成分は、その特性が損なわれない範囲で他のシランカップリング剤と併用できる。併用できるシランカップリング剤としては、1分子中にアルコキシ基と、エポキシ基などの有機官能基を有するシラン化合物全般を指し、例えばエポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物が挙げられる。これらを例示すると、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
通常、カップリング剤はインテグラルブレンドによりエポキシ樹脂組成物中に混合されるが、本発明のエポキシ樹脂組成物において上記(D)成分は、予めエポキシ樹脂あるいはフェノール樹脂の全部又は一部に予め加熱混合しても良い。
【0046】
又、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記(D)成分で無機充填材表面を処理してもよい。上記(D)成分は、無機充填材表面に存在することにより、無機充填材とエポキシ樹脂組成物中の有機成分とを化学的に結合させ、界面の接着性の向上に有効であると考えられる。そのため、上記(D)成分が無機充填材表面に存在すること、より好ましくは吸着又は固定化していることが有効である。無機充填材表面を上記(D)成分で処理する方法としては、例えば攪拌している無機充填材に上記(D)成分を噴霧し、更に攪拌を行った後室温に放置したり、加熱したりすることにより表面処理無機充填材を得る方法等を挙げることができる。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化性と流動性の良好なエポキシ樹脂組成物を得る目的で、硬化促進剤を用いることができる。
本発明で用いることができる硬化促進剤は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及び、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン、及びこれらの有機ホスフィンに1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1
,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物等の有機リン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも成形性の観点から、有機リン化合物が好ましく、有機ホスフィン及び有機ホスフィンとキノン化合物との付加物がより好ましく、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン等の第三ホスフィンとp−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン化合物との付加物がさらに好ましい。
【0048】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂(A)に対して0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。
硬化促進剤の配合量を上記下限値以上とすることにより、短時間での硬化性を良好なものとすることができる。また、上記上限値以下とすることにより、硬化速度を適正なものとし、充填性の良好な成形品を得ることができる。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、耐半田ストレス性と、流動性の良好なエポキシ樹脂組成物を得る目的で、シロキサン付加重合体を添加することができる。シロキサン付加重合体しては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ジメチルシロキサンのメチル置換基の一部を、アルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、及びアミノ基等の置換基で置換した変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0050】
シロキサン付加重合体は1種又は2種以上混合して、エポキシ樹脂組成物全体に対し0.1質量%以上、2質量%以下の割合で使用することができる。
配合量を上記下限値以上とすることにより、成形品に十分な低弾性率を発現させることができるとともに、離型剤の分散性も良好なものとすることができる。また、上記上限値以下とすることにより、表面汚染を抑え、レジンブリードが長くなるのを抑制することができる。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、IC等の素子の耐湿性、高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイトや、アンチモン、ビスマス、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(6)で示されるハイドロタルサイト及びビスマスの含水酸化物が好ましい。
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO (6)
(上記一般式(6)において、0<X≦0.5、mは正の整数。)
【0052】
陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオン等のイオン性不純物を捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、30質量部以下が好ましく、1質量部以上、10質量部以下がより好ましく、2質量部以上、5質量部以下がさらに好ましい。
配合量を上記下限値以上とすることにより、イオン性不純物の十分な捕捉ができる。また、上記上限値以下とすることにより、経済的とすることができる。
【0053】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のハロゲン原子、アンチ
モン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機又は無機の化合物、金属水酸化物などの難燃剤、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等及びこれらの誘導体、アントラニル酸、没食子酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アミノフェノール、キノリン等及びこれらの誘導体、脂肪族酸アミド化合物、ジチオカルバミン酸塩、チアジアゾール誘導体等の接着促進剤などを必要に応じて配合することができる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
【0055】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種有機溶剤に溶かして液状封止用エポキシ樹脂組成物として使用することもでき、この液状封止用エポキシ樹脂組成物を板又はフィルム上に薄く塗布し、樹脂の硬化反応が余り進まないような条件で有機溶剤を飛散させることによって得られるシートあるいはフィルム状のエポキシ樹脂組成物として使用することもできる。
【0056】
次に、本発明の電子部品装置について説明する。
本発明の電子部品装置は、以上に説明した本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で素子が封止されていることを特徴とする。
本発明で得られるエポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、銅製リードフレームの支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明のエポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。
このような電子部品装置としては、例えば、銅製リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤーボンディングやバンプで接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型ICが挙げられる。また、MCP(Multi Chip Stacked Package)等のチップが多段に積層されたパッケージも挙げられる。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物で封止されるリードフレームの材料は特に限定されず、銅、銅合金、42アロイ(Fe−42%Ni合金)等用いることができる。
リードフレームの表面は、例えば、純銅のストライクメッキ、銀メッキ(主にインナーリード先端のワイヤ接合部やダイパッド部)、又はニッケル/パラジウム/金多層メッキ(PPF(Palladium Pre−Plated Frame))等のメッキが施されていてもよい。
【0058】
図1は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して素子1が2段に積層されて固定されている。素子1の電極パッドと銅製リードフレーム5との間はボンディングワイヤ4によって接続されている。素子1は、エポキシ樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。エポキシ樹脂組成物が常温で液状又はペースト状の場合は、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【0060】
また、素子を直接樹脂封止する一般的な封止方法ばかりではなく、素子に直接封止用エポキシ樹脂組成物が接触しない形態である中空パッケージの方式もあり、中空パッケージ用のエポキシ樹脂組成物としても好適に使用できる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されない。
【0062】
実施例1〜6及び比較例1〜3で用いた成分について、以下に示す。
(A)成分のエポキシ樹脂:
エポキシ樹脂1:エポキシ当量185g/eq、融点108℃のビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製商品名YX−4000K)。一般式(2)において、R3〜R6が3,3’位と5,5’位に導入されたメチル基である構造を有するものである。
エポキシ樹脂2:エポキシ当量238g/eq、軟化点52℃のフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名NC‐2000)。一般式(3)において、R7〜R9が水素である構造を有するものである。
エポキシ樹脂3:エポキシ当量276g/eq、軟化点52℃のビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名NC‐3000L)。一般式(4)において、R10〜R18が水素である構造を有するものである。
【0063】
(B)成分のフェノール樹脂硬化剤:
フェノール樹脂硬化剤1:水酸基当量198g/eq、軟化点64℃のビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製商品名MEH−7851SS)。一般式(5)において、R19〜R27が水素である構造を有するものである。
【0064】
(C)成分の無機充填材:
無機充填材1:平均粒径10.8μm、比表面積5.1m/gの球状溶融シリカ
【0065】
(D)成分:
合成例1(シランカップリング剤1の調製法)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(江蘇省対外経済貿易株式有限公司製)1500gを減圧蒸留し、4mmHgで85℃の留分を回収し精製することで、不純物の含有量が極めて少ない3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1350gを得た。この蒸留3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1000gに1.8gのメタノールを添加してシランカップリング剤1を調製した。
得られたシランカップリング剤1をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの純度は99.0質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は7700ppm、メタノールの含有量は1800ppmであった。
【0066】
合成例2(シランカップリング剤2の調製法)
蒸留精製後に添加するメタノール量を2.5gに変更したことを除いては合成例1に記載の方法によってシランカップリング剤2を調製した。
得られたシランカップリング剤2をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの純度は98.9質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合
物の含有量は7700ppm、メタノールの含有量は2500ppmであった。
【0067】
合成例3(シランカップリング剤3の調製法)
蒸留精製後に添加するメタノール量を1.0gに変更したことを除いては合成例1に記載の方法によってシランカップリング剤3を調製した。
得られたシランカップリング剤3をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの純度は99.1質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は7700ppm、メタノールの含有量は1000ppmであった。
【0068】
合成例4(シランカップリング剤4の調製法)
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(江蘇省対外経済貿易株式有限公司製)1500gを減圧蒸留し、14mmHgで115℃の留分を回収し精製することで、不純物の含有量が極めて少ない3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン1350gを得た。
この蒸留3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン1000gに1.8gのエタノールを添加してシランカップリング剤4を調製した。
得られたシランカップリング剤4をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランの純度は99.0質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は7700ppm、エタノールの含有量は1800ppmであった。
【0069】
合成例5(シランカップリング剤6の調製法)
蒸留精製後に添加するメタノール量を3.0gに変更したことを除いては合成例1に記載の方法によってシランカップリング剤6を調製した。
得られたシランカップリング剤5をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの純度は98.9質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は7700ppm、メタノールの含有量は3000ppmであった。
【0070】
合成例6(シランカップリング剤7の調製法)
蒸留精製後にメタノールを添加しないことを除いては合成例1に記載の方法によってシランカップリング剤7を調製した。
得られたシランカップリング剤7をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの純度は99.2質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は7700ppm、メタノールの含有量は300ppmであった。
【0071】
合成例7(シランカップリング剤8の調製法)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(江蘇省対外経済貿易株式有限公司製)1500gを、ヘキサンを展開溶剤としたシリカゲルカラムクトマトグラフィー(ワコーゲルC−300)により精製し、得られた精製3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1000gに1.8gのメタノールを添加してシランカップリング剤8を調製した。
得られたシランカップリング剤8をGCで分析したところ、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの純度は98.8質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は10000ppm、メタノールの含有量は1800ppmであった。
【0072】
カップリング剤1(CA1):合成例1に記載の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤2(CA2):合成例2に記載の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤3(CA3):合成例3に記載の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤4(CA4):合成例4に記載の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン
カップリング剤5(CA5):フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製商品名KBM−573)
カップリング剤6(CA6):合成例5に記載の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤7(CA7):合成例6に記載の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤8(CA8):合成例7に記載の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤9(CA9):3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製商品名KBM−803)。GC分析による純度97.5質量%、分子内にメルカプト基を含まないシラン化合物の含有量は17000ppm、メタノールの含有量は300ppm。
【0073】
硬化促進剤:
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物
【0074】
その他の添加剤:
離型剤1:酸化ポリエチレンワックス(クラリアントジャパン株式会社製商品名リコワックスPED191)
着色剤1:カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名カーボン#5)
【0075】
上記成分をそれぞれ表1及び表2に示す質量部で配合し、混練温度100℃、混練時間30分間の条件で二軸混練して冷却後粉砕し、封止用エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0076】
作製した実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂組成物を、次の各試験により評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0077】
スパイラルフロー(SF):
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒間の条件で樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0078】
連続成形性(エアベントブロック):
低圧トランスファー自動成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間70秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物によりチップなどを封止して80ピンクワッドフラットパッケージ(80pQFP;銅製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を得る成形を、連続で400ショットまで行った。
エアベントブロックの評価については、50ショット毎に金型を目視により観察することで、エアベントブロック(エアベント(幅0.5mm、厚さ50μm)部に樹脂硬化物が固着してエアベントを塞いだ状態)の有無を確認し、次の4段階で評価した。好ましい順は、A、B、C、Dの順であるが、Cランク以上であれば実用可能範囲である。評価結果を下記に示した。
A:400ショットまで問題なし
B:300ショットまでにエアベントブロック発生
C:200ショットまでにエアベントブロック発生
D:100ショットまでにエアベントブロック発生
【0079】
耐半田性:
低圧トランスファー成形機(第一精工株式会社製、GP−ELF)を用いて、金型温度180℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間120秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、80pQFP(銅製リードフレーム、サイズは14×20mm×厚さ2.00mm、半導体素子は7×7mm×厚さ0.35mm、ダイパッドとインナーリードとに銀メッキが施され、半導体素子とリードフレームのインナーリードとは25μm径の金線でボンディングされている。)なる半導体装置を作製した。ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した半導体装置12個を、60℃、相対湿度60%で120時間加湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC・Level3条件に従う)を行った。これらの半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置(日立建機ファインテック株式会社製、mi−scope10)で観察し、剥離又はクラックのいずれか一方でも発生したものを不良とした。n=12中の不良半導体装置の個数を表示した。不良個数が1以下であれば実用可能範囲である。
【0080】
耐湿信頼性:
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で、得られたエポキシ樹脂組成物を注入して16ピンSOP(チップサイズ3.0mm×3.5mm)を成形した後、ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した。その後、プレッシャークッカー試験(130℃、圧力2.3×105Pa、240時間)を行い、回路のオープン不良を測定した。15個のパッケージ中の不良個数を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
実施例1〜7は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び、(D)純度98.5〜99.5質量%、炭素数1〜5の一価のアルコールを1000〜2500ppm含有し、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が8000ppm未満である3−メルカプトプロピルトリメトキシシランCA1、CA2、CA3、CA4を含む本発明のエポキシ樹脂組成物であり、(A)成分の種類と配合量、(D)成分の種類を変えたものを含むものであるが、いずれも、スパイラルフローが100cmを超え、連続成形性、耐半田性、耐湿信頼性に優れる結果が得られた。
【0084】
一方、(D)成分の代わりに、メタノールの含有量が3000ppmのCA6を使用した比較例1ではスパイラルフロー、連続成形性、耐湿信頼性は問題がなかったものの、耐半田性に劣り、パッケージ内部にボイドも見られた。
(D)成分の代わりに、メタノールの含有量が300ppmのCA7を使用した比較例2では耐半田性、耐湿信頼性に問題はなかったものの、スパイラルフローが短く、連続成形性も悪化する結果となった。
(D)成分の代わりに、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が10000ppmであるCA8を使用した比較例3、同様に17000ppmであるCA9を使用した比較例4では、ともにスパイラルフローと連続成形性に問題はなかったものの、比較例3では耐湿信頼性、比較例4では耐半田性、耐湿信頼性のいずれもが低下する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、上記実施例で示したようにメルカプトシランカップリング剤の分散性が向上しており、成形性、耐半田性、耐湿信頼性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができるため、この封止用エポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品装置等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 ボンディングワイヤ
5 銅製リードフレーム
6 封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び、(D)下記一般式(1)で示されるシラン化合物、を含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(D)成分が、純度が98.5〜99.5質量%であり、炭素数1〜5の一価のアルコールの含有量が1000〜2500ppmであり、分子内にメルカプト基を有しないシラン化合物の含有量が8000ppm未満であることを特徴とする、封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基である。R2は炭素数1〜5のアルキル基である。mは1〜6の整数である。nは1〜3の正数である。)
【請求項2】
上記(A)成分が、下記一般式(2)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。

【化2】

(上記一般式(2)において、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化3】

(上記一般式(3)において、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化4】

(上記一般式(4)において、R10〜R18は水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【請求項3】
上記(B)成分が、下記一般式(5)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のフェノール樹脂を含む、請求項1又は2に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化5】

(上記一般式(5)において、R19〜R27は水素原子及び炭素数1〜10の置換もしくは無置換の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で、素子が封止されていることを特徴とする電子部品装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−108024(P2013−108024A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256093(P2011−256093)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】