説明

α−ケトアミド誘導体、その製造方法、及びその用途

【課 題】 経口吸収性が高く、適度な血中濃度持続性を有し、かつ強力なカルパイン阻害活性を有する化合物を開発することである。
【解決手段】 カルパイン阻害活性を有する、下記一般式(I)
【化1】


((式中、Rは低級アルコキシ基又は複素環基で置換された低級アルキル基を示すか、複素環基を示し、Rはフェニル基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Rはハロゲン、低級アルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい低級アルキル基を示すか、縮合多環式炭化水素基又は水素原子を示す。)で表される化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルパイン阻害活性を有する新規α−ケトアミド誘導体に関する。また、本発明は新規α−ケトアミド誘導体を含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
カルパインは生体内に広く分布する細胞質内のタンパク分解酵素の一つであり、カルシウムイオンで活性化される。現在では、このカルパインの異常な活性化が脳卒中、クモ膜下出血、アルツハイマー病、虚血性疾患、筋ジストロフィー、白内障、血小板凝集、関節炎等の種々の疾患に関与していることが明らかとなっている(非特許文献1参照。)。
一方、カルパイン阻害剤は水晶体培養による実験的白内障モデルにおいて、水晶体の透明維持に効果があり、白内障治療剤等として有用であることが分ってきている(非特許文献2、特許文献1参照。)。
これまで報告されているカルパイン阻害剤としては、ペプチドハロメタン誘導体、ペプチドジアゾメタン誘導体、ペプチジルアルデヒド誘導体、ペプチジルα−ケトアミド誘導体等が挙げられる(例えば、特許文献2〜6、非特許文献3〜4参照)。
【特許文献1】国際公開第93/23032号パンフレット
【特許文献2】特公平6−29229号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第0771565号明細書
【特許文献4】米国特許第6057290号明細書
【特許文献5】特開平10−147564号公報
【特許文献6】国際公開第92/12140号パンフレット
【非特許文献1】トレンド・イン・ファーマコロジカル・サイエンス(Trends in pharmacological sciences)、1994年、第15巻、p.412
【非特許文献2】カレント・アイ・リサーチ(Current eye research)、1991年、第10巻、p.657〜666
【非特許文献3】ザ・バイオケミカル・ジャーナル(The Biochemical journal)、1988年、第253巻、p.751〜758
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of medicinal chemistry)、1992年、第35巻、216〜220頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
経口吸収性が高く、適度な血中濃度持続性を有し、かつ強力なカルパイン阻害活性を有する化合物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、組織移行性及び吸収性、特に経口吸収性が高く適度な血中持続性を持つカルパイン阻害剤を創製することを目的に種々検討した。本発明者らは、分子中に両親媒性基を有するα-ケトアミド誘導体をデザインした。本発明者らは、これら化合物のなかにカルパインの酵素阻害活性を有し、かつ経口吸収性の高い化合物を見出し、さらに研究を進めて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 一般式(I)
【化1】

(式中、Rは低級アルコキシ基又は複素環基で置換された低級アルキル基を示すか、複素環基を示し、Rはフェニル基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Rはハロゲン、低級アルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい低級アルキル基を示すか、縮合多環式炭化水素基又は水素原子を示す。)で表される化合物、
(2) Rで示される低級アルコキシ基で置換された低級アルキル基が、式(IIa)
【化2】

(式中、Rは低級アルキル基、Rは低級アルキレン基、mは1〜6の整数を示す。)で示される基である上記(1)記載の化合物。
(3) Rで示される低級アルコキシ基で置換された低級アルキル基が、式(IIb)
【化3】

(nは1〜6の整数を示す。)で示される基である上記(1)記載の化合物、
(4) Rで示される低級アルキル基に置換した複素環基が、低級アルキル基を有していてもよいピリジルである請求項1記載の化合物。
(5) Rで示される複素環基のヘテロ原子が酸素原子である上記(1)記載の化合物、
(6) Rで示される低級アルキル基がシクロプロピル基である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物、
(7) ((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルエステル又は((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(ピリジン−2−イル)エチルエステル、
(8) 上記(1)又は(7)記載の化合物を含有してなる医薬、
(9) カルパイン阻害剤である上記(8)記載の医薬、
(10) カルパインが関与する疾患の予防及び/又は治療剤である上記(9)記載の医薬、及び
(11) カルパインが関与する疾患が、虚血性疾患、免疫疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳組織障害による疾患、白内障、緑内障、網膜疾患、網脈絡膜疾患、光凝固による眼球後眼部合併症又は血管新生を伴う疾患である上記(10)記載の医薬、
に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の化合物は、経口吸収性が高く適度な血中持続性を持つカルパイン阻害剤であるので、カルパインが関与する疾患、例えば虚血性疾患、免疫疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳組織障害による疾患、白内障、緑内障、網脈絡膜疾患(例えば糖尿病性網膜症、網膜血管閉塞症、黄斑変性症、網膜色素変性症、高血圧性網膜症、網膜剥離等)、光凝固による眼球後眼部合併症(例えば黄斑部浮腫、網膜剥離、視神経炎、視野異常、光覚異常、色覚異常等)又は血管新生を伴う疾患等の予防又は治療剤として用いることができる。
本発明の化合物は経口吸収性に優れているので、本発明を含有する医薬は経口投与できる。
また、本発明の化合物は、毒性も低く安全に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
上記一般式(I)中、Rで示される低級アルコキシ基又は複素環基で置換された低級アルキル基における低級アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状アルキル基が好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル又は1,1,2−トリメチルプロピル等が挙げられる。より好ましくは炭素数2又は3の直鎖状又は分枝状アルキル基である。Rで示される低級アルキル基としてはとりわけエチルが好ましい。
【0007】
上記Rで示される低級アルキル基に置換する低級アルコキシ基としては、炭素数1〜6の低級アルコキシ基が好ましく、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、tert−ペンチルオキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、1−メチルペンチルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、3−メチルペンチルオキシ、4−メチルペンチルオキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、1−エチルブトキシ、2−エチルブトキシ、1−エチル−2−メチルプロポキシ又は1,1,2−トリメチルプロポキシ等が挙げられる。該アルコキシ基は、更に上記した低級アルコキシ基で置換されているものも好ましく用いることができる。
で示される低級アルコキシ基で置換された低級アルキル基の好ましい基は、式(IIa)
【化4】

(式中、Rは低級アルキル基、Rは低級アルキレン基、mは1〜6の整数を示す。)であり、
さらに好ましい基は、式(IIb)
【化5】

(nは1〜6の整数を示す。)である。
上記式(IIa)のRで示される低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチル等が挙げられる。好ましくはメチル、イソプロピル又はtert−ブチルであり、より好ましくはメチルである。
【0008】
上記式(IIa)のRで示される低級アルキレン基としては、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、具体的にはメチレン、エチレン、トリメチレン又はテトラメチレンが挙げられる。より好ましくはエチレンである。Rで示される低級アルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えばメチル又はエチル等が挙げられる。
上記式(IIa)のmは、1〜6の整数であり、好ましくは2〜5の整数である。上記式(IIb)のnは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは2〜5の整数である。
【0009】
上記Rで示される低級アルキル基に置換する複素環基としては、低級アルキル基を有していてもよいピリジルが好ましい。ピリジルとしては、例えば2−ピリジル、3−ピリジル又は4−ピリジルが挙げられる。該ピリジルが有していてもよい低級アルキル基としては、炭素数1〜3の低級アルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルが挙げられる。
【0010】
で示される複素環基は、例えば、硫黄原子、酸素原子又は/及び窒素原子を1乃至3個含む5乃至7員芳香族、又は部分若しくは完全還元型の飽和複素環基を示し、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル又はテトラヒドロチオフェニル等であり、好ましくは、飽和複素環基であり、更に好ましくは、酸素原子を含む5乃至6員飽和複素環基であり、特に好ましくは、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルである。
【0011】
で示される低級アルキル基としては、上記したRで示される低級アルコキシ基又は複素環基で置換された低級アルキル基における低級アルキル基と同様であるが、好ましくは、メチル、エチル又はイソブチルである。Rで示される低級アルキル基は、フェニル基で置換されていることが好ましい。Rで示されるフェニル基で置換された低級アルキル基の好ましい例は、ベンジル又はフェニルエチルである。
【0012】
で示される低級アルキル基としては、上記したRで示される低級アルコキシ基又は複素環基で置換された低級アルキル基における低級アルキル基と同様である。Rで示される低級アルキル基は、シクロアルキル基であってもよい。シクロアルキル基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンであり、好ましくはシクロプロパン又はシクロブタンである。
該低級アルキル基が置換してもよいハロゲンは、フッ素、塩素又は臭素等が挙げられ、好ましくはフッ素である。
【0013】
で示される縮合多環式炭化水素基としては、例えばインダニル、インデニル、ナフチル、アントラニル、ペンタレニル又はアズレニル等が挙げられるが、インダニルが好ましい。
さらに、本発明は、本発明化合物の各種の溶媒和や結晶多形の物質ならびにプロドラッグをも包含する。
【0014】
本発明の化合物は、例えば以下の方法で合成できる。
【化6】

(式中Rは保護基を、その他の基は前記と同意義を示す。)
【0015】
工程aは、式(III)で示されるアミノ酸のアミノ基に保護基を付加し、これを混合酸無水物とした後、還元剤で還元し、式(V)で示される化合物〔以下、化合物(V)という。〕を得る工程である。上記保護基の付加、除去は公知の手段により行うことができる。上記保護基としては、例えば、ホルミル又はそれぞれ置換基を有していてもよいC1-6アルキルカルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル等)、フェニルカルボニル、C1-6アルキル−オキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等)、フェニルオキシカルボニル又はC7−10アラルキルオキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル等のフェニル−C1-4アルキルオキシカルボニル等)などが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)又はニトロ基等が用いられ、置換基の数は1ないし3個程度である。好ましくは、tert−ブトキシカルボニル(Boc)である。
上記反応で用いられる還元剤としては水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等が挙げられる。好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。反応温度は−40℃から30℃、好ましくは−20℃から0℃である。
化合物(V)は、式(IV)で示されるアミノアルコールに、上記アミノ基の保護基を同様に付加することによって得ることもできる(工程a’)。
【0016】
工程bは、化合物(V)をジメチルスルホキシド(DMSO)の活性化剤存在下、DMSO酸化することにより、式(VI)で示される化合物〔以下、化合物(VI)という。〕を得る工程である。DMSO酸化は、公知の方法により行うことができ、例えばDMSO単独、あるいはDMSOと酸化反応を阻害しない溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、エーテル等)の混合溶媒に溶解し、化合物(V)1モルに対し通常約1〜約10倍モルのジイソプロピルエチルアミンを添加する。上記におけるDMSOの使用量は、化合物(V)1gに対し約1〜約20mLである。上記DMSOの活性化剤としては、例えば三酸化硫黄ピリジン錯体、オキサリルクロリド、ジシクロヘキシルカルボジイミド又は無水酢酸等が有利に使用でき、特に三酸化硫黄ピリジン錯体が好適である。
【0017】
工程cは、化合物(VI)を亜硫酸水素ナトリウムで処理した後、シアン化ナトリウムと反応させてシアノヒドリン体とし、このものを精製することなく酸又はアルカリ触媒存在下で加水分解し、α−ヒドロキシ−β−アミノ酸をジアステレオマーの混合物とし、次いで、このα−ヒドロキシ−β−アミノ酸のアミノ基に上記したアミノ基の保護基を再度同様に付加し、式(VII)で示される化合物〔以下、化合物(VII)という。〕をジアステレオマーの混合物として得る工程である。
この加水分解は、酸(塩酸、硫酸、酢酸、ギ酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等)と共に加熱又は、加熱還流下で行う。加熱温度は、約50〜約100℃程度である。溶媒は、有機溶媒(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン等)と水の混合溶媒を好ましく用いることができる。
【0018】
工程dは、化合物(VII)を様々なアミンと縮合させて式(VIII)で示される化合物〔以下、化合物(VIII)という。〕を得る工程である。
アミンとしては、目的とする化合物に即して適宜好ましいアミンを選択すればよく、例えばエチルアミン、プロピルアミン、シクロプロピルアミン、ブチルアミン、シクロブチルアミン、メトキシエチルアミン、2−フェノキシエチルアミン、2−アミノインダン又は2,2,2−トリフルオロエチルアミン等が挙げられる。
上記縮合は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下で行うことが好ましい。縮合反応に使用される有機溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒等が挙げられるが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。反応温度は、氷冷下から室温の範囲である。
【0019】
工程eは、化合物(VIII)を塩酸酸性下でアミノ保護基の脱離反応により式(IX)で示されるアミン塩酸塩〔以下、化合物(IX)という。〕を得る工程である。アミノ保護基の脱離反応は、慣用的方法、例えば、通常使用される有機溶媒に溶解し、酸の存在下攪拌することによりアミノ保護基を脱離することができる。酸としては塩酸、トリフルオロ酢酸又はp−トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、市販されている塩酸の酢酸エチル溶液もしくはジオキサン溶液等を用いて脱離することもできる。反応温度は、氷冷下から室温の範囲である。
【0020】
工程fは、化合物(IX)と式(X)で示される化合物〔以下、化合物(X)という。〕をトリエチルアミン存在下に縮合することにより式(XI)で示される化合物〔以下、化合物(XI)という。〕を得る工程である。
【0021】
上記化合物(X)は、下記の一般的な反応ルートに従い製造することができる。
【化7】

(式中、各記号は前記と同意義である。)
式(XIII)で示されるアルコール〔以下、化合物(XIII)という。〕と炭酸ジ(N−スクシンイミジル)とを反応させることにより式(XIV)で示される混合炭酸エステル体とし、これをトリエチルアミン存在下、L−ロイシンエチルエステル塩酸塩と縮合すると、式(XV)で示される化合物が得られる。この化合物をアルカリでケン化することによって式(XVI)で示される化合物〔以下、化合物(XVI)という。〕が得られる。また、化合物(XVI)は、L−ロイシンとクロロギ酸エステルを直接反応させることによって得ることもできる。得られた化合物(XVI)はヒドロキシスクシンイミド(HOSu)と反応させ式(X)で示されるスクシンイミドエステル体〔以下、化合物(X)という。〕が製造できる。
【0022】
工程gは、化合物(XI)を酸化することによって式(XII)で示される化合物〔以下、化合物(XII)という。〕を得る工程である。該酸化方法としては、例えばクロム酸酸化に分類される二クロム酸ピリジニウム(PDC)酸化、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)酸化、ジョーンズ(Jones)酸化、コリンズ(Collins)酸化、又はDMSO酸化に分類されるスワン(Swern)酸化、DMSO−三酸化硫黄ピリジン錯体による酸化、DMSO−ジシクロヘキシルカルボジイミドによる酸化、DMSO−塩化オキサリルによる酸化、又はデス−マーチン試薬(Dess−Martin periodinane)を用いるデス−マーチン酸化、次亜ハロゲン酸による酸化、N−ハロゲノカルボン酸アミドによる酸化等、自体公知の方法を使用することができるが、とりわけデス−マーチン酸化が好ましい。デス−マーチン酸化を用いて酸化する場合は、化合物(XI)を通常使用される有機溶媒に溶解し、デス−マーチン試薬を加えることで行うことができる。通常使用される有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン又は酢酸エチル等のような反応に悪影響をおよぼさない慣用の溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくはジクロロメタンである。デス−マーチン試薬の使用量は化合物(XI)に対して約1〜約20倍モル当量で、好ましくは約1〜約3倍モル当量である。反応温度は、特に限定されず、氷冷下から室温付近である。このようにして得られる化合物(XII)は、例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、晶出、再結晶、転溶又はクロマトグラフィー等により公知の手段により単離精製することができる。
【0023】
上記、各工程は、通常使用される反応に悪影響を与えない慣用の溶媒又はそれらの混合溶媒の存在下で行われる。反応に悪影響を与えない溶媒としては、例えばジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン又は酢酸エチルが挙げられる。
【0024】
上記方法によって製造される一般式(I)で表される化合物としては、例えば
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(エチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物1)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(エチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物2)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(エチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルエステル(化合物3)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物4)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物5)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルエステル(化合物6)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(プロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物7)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロブチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物8)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−ブチルアミノ−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物9)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物10)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(2−インダニルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物11)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(2−メトキシエチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物12)、
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−エチルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物13)、
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−エチルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物14)、
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−シクロプロピルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物15)、
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−シクロプロピルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物16)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(化合物17)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル(化合物18)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルエステル(化合物19)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルエステル(化合物20)、
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−1−(2−メチルプロピル)−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物21)、
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−1−(2−メチルプロピル)−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(化合物22)、
((1S)−1−((((1RS)−3−アミノ−1−ベンジル−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(化合物23)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(ピリジン−2−イル)エチルエステル(化合物24)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルエステル(化合物25)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルエステル(化合物26)、
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−tert-ブトキシエチルエステル(化合物27)及び
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−イソプロポキシエチルエステル(化合物28)
等が挙げられる。好ましくは、化合物4、化合物17、化合物18、化合物19、化合物24である。
これら本発明化合物は文献未載の新規化合物であり、後記試験例に示すように優れたカルパイン阻害活性を有するため、それらを有効成分として、必要により後記の担体等を組み合わせることにより、カルパイン阻害剤としての医薬として有用である。
【0025】
本発明化合物を含有する医薬は、哺乳動物(例えばヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)のカルパインが関与する疾患、例えば虚血性疾患、免疫疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳組織障害による疾患、白内障、緑内障、網脈絡膜疾患(例えば糖尿病性網膜症、網膜血管閉塞症、黄斑変性症、網膜色素変性症、高血圧性網膜症、網膜剥離等)、光凝固による眼球後眼部合併症(例えば黄斑部浮腫、網膜剥離、視神経炎、視野異常、光覚異常、色覚異常等)又は血管新生を伴う疾患等の予防又は治療剤として有用である。
また、本発明化合物は組織移行性及び吸収性に優れ、かつ毒性も非常に低く安全性にも優れている。
本発明化合物を含有する医薬は全身的又は局所的に投与される。全身的には経口投与の他、静脈内注射、皮下注射又は筋肉内注射等非経口的にも投与される。局所的には、皮膚、粘膜、鼻又は眼等に投与される。
【0026】
本発明化合物を含有する医薬の製剤形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤又は坐剤等の固形剤、及びシロップ剤、注射剤、点眼剤又は点鼻剤等の液剤等が挙げられる。顆粒及び錠剤として製造する場合には、医薬上許容される添加剤、例えば賦形剤(乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、結晶セルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等)、崩壊剤(デンプン、カルメロースナトリウム、炭酸カルシウム等)又は結合剤(デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、カルメロース液、アラビアゴム液、ゼラチン液、アルギン酸ナトリウム液等)などを用いることにより任意の剤形を製造することができる。また、顆粒剤及び錠剤には、適当なコーティング剤(ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウ等)又は腸溶性コーティング剤(例えば酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース等)などで剤皮を施してもよい。
【0027】
カプセル剤として製造する場合には、公知の賦形剤、例えば流動性と滑沢性を向上させるためのステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は軽質無水ケイ酸、加圧流動性のための結晶セルロースや乳糖、或いは上記崩壊剤等を適宜選択し、本発明化合物と均等に混和又は粒状、もしくは粒状としたものに適当なコーティング剤で剤皮を施したものをカプセルに充填するか、適当なカプセル基剤(ゼラチン等)にグリセリン又はソルビトール等加えて塑性を増したカプセル基剤で被包成形してもよい。これらカプセル剤には必要に応じて、着色剤、保存剤[二酸化イオウ、パラベン類(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル)]等を加えることができる。カプセル剤は、通常のカプセル剤の他、腸溶性コーティングカプセル剤、胃内抵抗性カプセル剤又は放出制御カプセル剤とすることもできる。腸溶性カプセル剤とする場合、腸溶性コーティング剤でコーティングした本発明化合物又は本発明化合物に上記の適当な賦形剤を添加したものを通常のカプセルに充填する。あるいは、腸溶性コーティング剤でコーティングしたカプセル、もしくは腸溶性高分子を基剤として成形したカプセルに本発明化合物又は本発明化合物に上記の適当な賦形剤を添加したものを充填することができる。
坐剤として製造する場合には、坐剤基剤(例えばカカオ脂、マクロゴール等)を適宜選択して使用することができる。
シロップ剤として製造する場合には、例えば安定剤(エデト酸ナトリウム等)、懸濁化剤(アラビアゴム、カルメロース等)、矯味剤(単シロップ、ブドウ糖等)又は芳香剤等を適宜選択して使用することができる。
【0028】
注射剤、点眼剤又は点鼻剤として製造する場合、医薬上許容される添加剤、例えば等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコール等)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等)、保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等)、増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)又はpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等)などを適宜添加した溶液に、本発明化合物を溶解又は分散することによって製造することができる。
【0029】
上記注射剤、点眼剤又は点鼻剤における添加剤の添加量は、添加する添加剤の種類、用途等によって異なるが、添加剤の目的を達成し得る濃度を添加すればよく、等張化剤は、通常、浸透圧が約229〜約343mOsmとなるよう、約0.5〜約5.0w/v%を添加するのが好ましい。また、緩衝剤は約0.01〜約2.0w/v%程度、増粘剤は約0.01〜約1.0w/v%程度、安定化剤は約0.001〜約1.0w/v%程度添加するのが好ましい。pH調整剤は、適宜添加し、通常pH約3〜約9、好ましくは約4〜約8になるように添加する。
【0030】
本発明化合物の投与量は対象となる疾患、症状、投与対象又は投与方法等により異なるが、例えば内服剤として成人に投与する場合は、1日数回、1回量約1〜約200mg、好ましくは約10〜約100mgである。また、注射剤として成人に投与する場合は、1日1回、約0.1〜約50mg、好ましくは約1〜約30mgである。また、局所的に目に使用する場合には、本発明化合物を通常約0.001〜約1.0w/v%、好ましくは約0.01〜約0.5w/v%含有する点眼液を、1回約20〜約50μL、1日数回点眼するのがよい。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の参考例、実施例、試験例及び製剤例に従いさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、実施例で述べる化合物の分析値において、融点はYanaco社製MP−500V型(補正なし)を用いて測定した。核磁気共鳴スペクトル(NMR)はVarian製Gemini2000型(300MHz)を用いて測定した。マトリックス支援イオン化−飛行時間型マススペクトル(MALDI−TOF MS)は、PerSeptive社製Voyager DE質量分析装置を用いて測定し、質量数は標準物質(α―シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸)で補正した。比は容積比を示す。
【0032】
〔参考例1〕
(1) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
L−ロイシン(25g,0.19mol)を2M水酸化ナトリウム水溶液(0.12L)に溶解し、この溶液にクロロギ酸2−メトキシエチルエステル(30g,0.22mol)と1M水酸化ナトリウム水溶液を氷冷条件下で同時にゆっくりと加えた。この溶液を室温で18時間攪拌した後、水(600mL)を加え希釈し、ジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄した。水層をアイスバスで冷却し、6M塩酸を加えることでpH3に調整した。この溶液を酢酸エチル(5×150mL)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮しN−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシン(41g,92%)を無色オイル状物として得た。
(2) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシン(20g,86mmol)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(13g,0.11mmol)をテトラヒドロフラン(200mL)に溶解し、そこへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(21g,0.11mol)のジクロロメタン(200mL)懸濁液を加えた。この溶液を室温で18時間攪拌後、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(300mL)で溶解し、この溶液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮し表題化合物(27g,95%)を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.6),0.93(d,3H,J=6.6),1.57−1.84(m,3H),2.81(s,4H),3.26(s,3H),3.51(t,2H,J=4.7),4.10(t,2H,J=4.7),4.40(m,1H),8.04(d,1H,J=8.1).
【0033】
〔参考例2〕
(1) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(1.0g,11mmol)のアセトニトリル(50mL)溶液を攪拌しながら、N,N’−ジスクシンイミジルカルボナート(4.3g,17mmol)とトリエチルアミン(4.4g,17mmol,4.8mL)を室温で加えた。この溶液を室温で18時間攪拌した後、減圧濃縮した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加え、酢酸エチル(200mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮しN−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナート(2.6g)を定量的に褐色オイル状物として得た。
(2) L−ロイシンエチルエステル塩酸塩(2.7g,14mmol)とトリエチルアミン(2.9g,28mmol)のジクロロメタン溶液(50mL)にN−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナート(2.6g,11mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液を加えた。この反応液を室温で18時間攪拌し、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(200mL)で溶解し、この溶液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮した。残渣をヘキサンで洗浄しN−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステル(3.1g,98%)を白色固体として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステル(2.9g,11mmol)のエタノール(100mL)溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液(33mL)を加えた。この溶液を氷冷下で3時間攪拌した後、塩酸を加えることでpH3に調整した。エタノールを減圧留去し、酢酸エチルで抽出した。有機層を1M塩酸及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン混液で結晶化しN−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシン(2.6g,85%)を無色結晶として得た。
融点:94.9−96.0°C.
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.0),0.92(d,3H,J=6.3),1.55−1.82(m,3H),1.88(m,1H),2.12(m,1H),2.81(s,4H),3.64−3.84(m,4H),4.39(m,1H),5.15(m,1H),8.04(d,1H,J=7.8).
【0034】
〔参考例3〕
N−((テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりに4−ヒドロキシテトラヒドロ−4H−ピランを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、N−スクシンイミジルテトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルカルボナートを褐色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりにN−スクシンイミジルテトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色固体として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色固体として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色固体として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.0),0.92(d,3H,J=6.3),1.43−1.93(m,7H),2.80(s,4H),3.42(m,2H),3.78−3.82(m,2H),4.39(m,1H),4.72(m,1H),7.94(d,1H,J=7.8).
【0035】
〔参考例4〕
N−((5−メトキシ−3−オキサペンチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりにジエチレングリコールモノメチルエーテルを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、5−メトキシ−3−オキサペンチルN−スクシンイミジルカルボナートを無色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりに5−メトキシ−3−オキサペンチルN−スクシンイミジルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((5−メトキシ−3−オキサペンチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((5−メトキシ−3−オキサペンチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((5−メトキシ−3−オキサペンチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((5−メトキシ−3−オキサペンチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.90(dd,6H,J=9.5,6.5),1.56−1.80(m,3H),2.80(s,4H),3.24(s,3H),3.41−3.46(m,2H),3.50−3.54(m,2H),3.56−3.60(m,2H),4.08−4.11(m,2H),4.39(m,1H),8.05(d,1H,J=7.8).
【0036】
〔参考例5〕
N−((8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりにトリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルN−スクシンイミジルカルボナートを無色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりに8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルN−スクシンイミジルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.3),0.92(d,3H,J=6.3),1.56−1.82(m,3H),2.81(s,4H),3.24(s,3H),3.43(m,2H),3.52(m,6H),3.59(m,2H),4.10(m,2H),4.40(m,1H),8.06(d,1H,J=7.8).
【0037】
〔参考例6〕
N−((11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりにテトラエチレングリコールモノメチルエーテルを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルN−スクシンイミジルカルボナートを無色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりに11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルN−スクシンイミジルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.91(dd,6H,J=9.3,6.3),1.56−1.77(m,3H),2.81(s,4H),3.24(s,3H),3.41−3.44(m,2H),3.49−3.52(m,10H),3.59(t,2H,J=4.7),4.08−4.11(m,2H),4.38(m,1H),8.06(d,1H,J=7.8).
【0038】
〔参考例7〕
N−((14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりにペンタエチレングリコールモノメチルエーテルを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルN−スクシンイミジルカルボナートを無色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりに14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルN−スクシンイミジルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.6),0.92(d,3H,J=6.3),1.57−1.82(m,3H),2.81(s,4H),3.24(s,3H),3.43(m,2H),3.51(m,14H),3.59(m,2H),4.10(m,2H),4.40(m,1H),8.05(d,1H,J=7.8).
【0039】
〔参考例8〕
(3S)−3−アミノ−N−エチル−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド塩酸塩
(1) L−フェニルアラニノール(50g,66mmol)のテトラヒドロフラン(1.3L)と水(630mL)の溶液にジ−t−ブチルジカルボナート(140g,0.67mol)のテトラヒドロフラン(500mL)溶液と1M水酸化ナトリウム水溶液(660mL)を氷冷条件下で同時にゆっくりと加えた。この溶液を室温で18時間攪拌し、有機溶媒を減圧留去した後、酢酸エチル(1L)を加えた。この溶液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮した。得られた白色固体を酢酸エチル/ヘキサン(1:10)混液から再結晶しN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニノール(70g,84%)を無色結晶として得た。
(2) N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニノール(69g,0.28mol)をDMSO(280mL)とジクロロメタン(140 mL)に溶解し、この溶液をアイスバスで冷却した。そこへ、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(110g,0.82mol)と精製した三酸化イオウピリジン錯体の(130g,0.82mol)のDMSO(100mL)懸濁液を加えた。この溶液を氷冷下で1時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで(1.5L)で希釈し、1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン混液から結晶化しN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニナール(53g,77%)を無色結晶として得た。
(3) N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニナール(17g,67mmol)をメタノール(100mL)に溶解し、この溶液を5°Cに冷却した。亜硫酸水素ナトリウム(7.0g,67mmol)を水(150mL)に溶解し、5°Cに冷却した。この溶液をアルデヒド溶液に加え5°Cで18時間撹拌した。青酸ナトリウム(4.0g,81mmol)を水(100mL)に溶かし、酢酸エチル(300mL)とともに上記の反応液へ加えた。この反応液を室温で5時間撹拌した。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮し、シアノヒドリン体を無色オイル状物として得た。このシアノヒドリン体をジオキサン(250mL)と濃塩酸(250mL)に溶解し、これにアニソール(10mL)を加えた。この溶液を18時間緩やかに還流した。この反応液を室温に冷却後、減圧濃縮し褐色半固状物質を得た。これを水(100mL)に溶解し、ジエチルエーテル(3×50mL)で洗浄した。水層をDowex 50X8カラム(100−200mesh,H型;25×1.8cm)に付し、pH5.5になるまで水で洗浄し、2Mアンモニウム水(約1.5L)で溶出した。溶出したアンモニウム水を減圧濃縮して(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(12g,88%)を白色固体として得た。
(4) (3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(11g,56.34mmol)を1M水酸化ナトリウム水溶液(70mL)に溶解し、この溶液にジ−t−ブチルジカルボナート(12g,57mmol)のジオキサン(70mL)溶液を加えた。この溶液を、1M水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えることでpH10〜11に保持しながら、室温で18時間攪拌した。そこへ、水(600mL)を加え希釈し、ジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄した。この水層をアイスバスで冷却しながら、1M塩酸を加えることによりpH2に調整し、ジエチルエーテル(3×250mL)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮し(3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(12g,72%)を無色固体のジアステレオマーの混合物として得た。
(5) (3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(6.3g,21mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.0g,22.4mmol)をDMF(45mL)に溶解し、アイスバスで冷却した。そこへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(4.6g,24mmol)を加えた後、さらにエチルアミン水溶液(3.0mL)を加えた。この溶液を18時間攪拌した。この溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈した後、1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮し((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステル(5.8g,84%)を白色固体として得た。
(6) ((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステル(5.5g,17mmol)を4N塩酸/ジオキサン溶液(65mL)に溶解し、この溶液を室温で3時間攪拌した。この溶液を減圧濃縮して表題化合物(4.4g)を定量的に白色固体として得た。
融点:162.8−163.3°C.(Major),H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ1.02(t,3H,J=7.2),2.93(m,2H),3.05−3.20(m,2H),3.60(m,1H),3.88(m,1H),6.75(d,1H,J=6.0),7.19−7.37(m,5H),8.08(m,1H),8.17(br s,3H).(Minor),H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.97(t,3H,J=7.4),2.80(d,2H,J=6.9),3.00(m,2H),3.69(m,1H),4.26(m,1H),6.53(d,1H,J=5.4),7.19−7.37(m,5H),8.03(t,1H,J=5.7),8.17(br s,3H).
【0040】
〔参考例9〕
(3S)−3−アミノ−N−シクロプロピル−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにシクロプロピルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、表題化合物を白色固体として得た。
融点:162.9−163.3℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.44(m,2H),0.57(m,2H),2.50(m,0.5H),2.65(m,0.5H),2.82(d,1H,J=6.9),2.94(m,1H),3.60(m,0.5H),3.70(m,0.5H),3.87(m,0.5H),4.26(d,0.5H,J=2.4),6.45(br s,0.5H),6.69(br s,0.5H),7.23−7.35(m,5H),7.99(d,0.5H,J=4.2),8.08(br s,1.5H),8.09(d,0.5H,J=4.5),8.23(br s,1.5H).
【0041】
〔参考例10〕
(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル−N−プロピルブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにプロピルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−3−(プロピルアミノ)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−3−(プロピルアミノ)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、表題化合物を白色固体として得た。
融点:127.8−129.5℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.82(m,3H),1.35−1.47(m,2H),2.82(m,0.5H),2.95(m,3H),3.09(m,0.5H),3.58(m,0.5H),3.70(m,0.5H),3.92(m,0.5H),4.31(m,0.5H),6.55(d,0.5H,J=4.8),6.77(d,0.5H,J=6.6),7.21−7.36(m,5H),7.98−8.15(m,2.5H),8.24(br s,1.5H).
【0042】
参考例11.
(3S)−3−アミノ−N−シクロブチル−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにシクロブチルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−3−シクロブチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−3−シクロブチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、表題化合物を白色固体として得た。
融点:162.5−163.7℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ1.59(m,2H),1.88−2.18(m,4H),2.80(d,1H,J=6.6),2.91(m,1H),3.58(m,0.5H),3.69(m,0.5H),3.87(m,0.5H),4.08(m,0.5H),4.16−4.24(m,1H),6.50(d,0.5H,J=5.4),6.72(d,0.5H,J=6.0),7.21−7.33(m,5H),8.05(br s,1.5H),8.19(d,0.5H,J=7.8),8.20(br s,1.5H),8.29(d,0.5H,J=8.1).
【0043】
〔参考例12〕
(3S)−3−アミノ−N−ブチル−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにブチルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−3−ブチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−3−ブチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、表題化合物を白色固体として得た。
融点:141.0−141.4℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.86(m,3H),1.16−1.47(m,4H),2.80(m,0.5H),2.99(m,3H),3.13(m,0.5H),3.57(m,0.5H),3.70(m,0.5H),3.92(m,0.5H),4.30(m,0.5H),6.53(br s,0.5H),6.77(d,0.5H,J=6.6),7.19−7.39(m,5H),7.97−8.15(m,2.5H),8.22(s,1.5H).
【0044】
〔参考例13〕
(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりに2,2,2−トリフルオロエチルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ブタナミド塩酸塩を白色固体として得た。
融点:103.0−108.5℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ2.71−2.85(m,1H),2.88−2.97(m,1H),3.60−3.82(m,2.5H),3.91−4.05(m,1H),4.45(m,0.5H),6.75(d,0.5H,J=5.7),6.98(d,0.5H,J=6.3),7.20−7.35(m,5H),8.12(br s,1.5H),8.25(br s,1.5H),8.70(m,1H).
【0045】
〔参考例14〕
(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−N−(2−インダニル)−4−フェニルブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりに2−アミノインダンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−3−(2−インダニルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−3−(2−インダニルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−N−(2−インダニル)−4−フェニルブタナミド塩酸塩を白色固体として得た。
融点:183.0−184.8℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ2.76−2.96(m,4H),3.01−3.18(m,2H),3.62(m,0.5H),3.74(m,0.5H),3.92(m,0.5H),4.25−4.39(m,1H),4.49(m,0.5H),6.48(d,0.5H,J=5.7),6.72(d,0.5H,J=5.7),7.13−7.35(m,9H),8.15(m,3.5H),8.26(d,0.5H,J=7.2).
【0046】
〔参考例15〕
(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−N−(2−メトキシエチル)−4−フェニルブタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにメトキシエチルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシエチル)−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシエチル)−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−N−(2−メトキシエチル)−4−フェニルブタナミド塩酸塩を白色固体として得た。
融点:113.9−117.7℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ2.82(d,1H,J=6.6),2.95(m,1H),3.10−3.19(m,2H),3.22(s,1.5H),3.23(s,1.5H),3.28−3.34(m,2H),3.57(m,0.5H),3.70(m,0.5H),3.92(m,0.5H),4.32(m,0.5H),6.59(d,0.5H,J=4.5),6.87(d,0.5H,J=6.0),7.22−7.36(m,5H),7.92(t,0.5H,J=5.7),7.98(t,0.5H,J=5.1),8.09(br s,1.5H),8.24(br s,1.5H).
【0047】
〔参考例16〕
(3S)−3−アミノ−N−エチル−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタナミド塩酸塩
(1) Boc−L−ホモフェニルアラニン(20g,72mmol)のジメトキシエタン(100mL)溶液にN−メチルモルホリン(7.2g,72mmol)とクロロギ酸イソブチル(9.8g,72mmol)を氷冷条件下で加えた。攪拌1時間後、反応液をろ過し、ろ液をアイスバスで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(4.1g,107mmol)の水溶液(10mL)を加え、さらに水(300mL)を加えた。生じた沈殿物をろ取して、これを水及びメタノールで洗浄しN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ホモフェニルアラニノール(15g,79%)を無色結晶として得た。
(2) N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニノールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ホモフェニルアラニノールを用いて参考例8(2)と同様の反応を行い、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ホモフェニルアラニナールを無色オイル状物として得た。
(3) N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ホモフェニルアラニナールを用いて参考例8(3)と同様の反応を行い、(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸を白色固体として得た。
(4) (3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の代わりに(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸を用いて参考例8(4)と同様の反応を行い、(3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸を無色オイル状物として得た。
(5) (3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の代わりに(3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸を用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
(6) ((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、(3S)−3−アミノ−N−エチル−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタナミド塩酸塩を白色固体として得た。
融点:134.4−134.9℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.99−1.06(m,3H),1.65−1.96(m,2H),2.54−2.76(m,2H),3.07−3.23(m,2H),4.15(br s,0.5H),4.25(br s,0.5H),6.44(br s,0.5H),6.55(br s,0.5H),7.17−7.33(m,5H),7.99(br s,1.5H),8.15(t,1H,J=6.2),8.23(br s,1.5H).
【0048】
〔参考例17〕
(3S)−3−アミノ−N−シクロプロピル−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにシクロプロピルアミンを用いて参考例16(5)と同様の反応を行い、((1S)−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例16(6)と同様の反応を行い、(3S)−3−アミノ−N−シクロプロピル−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタナミド塩酸塩を白色固体として得た。
融点:140.2−141.3℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.46−0.64(m,4H),1.64−1.99(m,2H),2.54−2.78(m,3H),3.35(m,1H),4.13(br s,0.5H),4.26(br s,0.5H),6.37(br s,0.5H),6.51(br s,0.5H),7.17−7.33(m,5H),8.05(br s,1.5H),8.15(d,0.5H,J=4.5),8.20(d,0.5H,J=4.8),8.27(br s,1.5H).
【0049】
〔参考例18〕
(3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−5−メチル−N−(2−フェノキシエチル)ヘキサナミド塩酸塩
(1) L−フェニルアラニノールの代わりにL−ロイシノールを用いて、参考例8(1)と同様の反応を行い、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシノール(70g,84%)を無色オイル状物として得た。
(2) N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニノールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシノールを用いて参考例8(2)と同様の反応を行い、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシナールを無色オイル状物として得た。
(3) N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシナールを用いて参考例8(3),(4)と同様の反応を行い、(3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸を無色オイル状物として得た。
(4) (3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の代わりに(3S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸を用い、エチルアミン水溶液の代わりに2−フェノキシエチルアミンを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、((1S)−2−ヒドロキシ−1−(2−メチルプロピル)−3−オキソ−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(5) ((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに((1S)−2−ヒドロキシ−1−(2−メチルプロピル)−3−オキソ−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、表題化合物を白色固体として得た。
融点:93.6−96.2℃.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.71−0.89(m,6H),1.35−1.47(m,2H),1.72(m,1H),3.48−3.54(m,4H),4.00−4.07(m,2H),4.12(d,0.5H,J=3.6),4.33(d,0.5H,J=1.8),6.91−6.96(m,3H),7.27−7.32(m,2H),7.95(br s,1.5H),8.19−8.29(m,2.5H).
【0050】
〔参考例19〕
3−アミノ−2−ヒドロキシ−5−フェニルペンタナミド塩酸塩
エチルアミン水溶液の代わりにアンモニアガスを用いて参考例8(5)と同様の反応を行い、(1−ベンジル−3−アミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを白色固体として得た。
((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルの代わりに(1−ベンジル−3−アミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)カルバミン酸1,1−ジメチルエチルエステルを用いて参考例8(6)と同様の反応を行い、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ2.82(m,1H),2.93(m,1H),3.61(m,1H),3.85(m,0.5H),4.26(m,0.5H),6.48(d,0.5H,J=4.8),6.75(d,0.5H,J=5.7),7.24−7.35(m,5H),7.52(m,2H),8.04(brs,1.5H),8.17(brs,1.5H).
【0051】
〔参考例20〕
N−((2−(ピリジン−2−イル)エチル)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりに(2−ピリジル)エタノールを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、N−スクシンイミジル2−(ピリジン−2−イル)エチルカルボナートを褐色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりにN−スクシンイミジル2−(ピリジン−2−イル)エチルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((2−(ピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((2−(ピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((2−(ピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを白色固体として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((2−(ピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.82−0.91(m,6H),1.42−1.76(m,3H),2.76−2.81(m,4H),3.00−3.06(m,2H),4.30−4.40(m,3H),7.23(dd,1H,J=7.1,5.3),7.30(d,1H,J=7.8),7.71(m,1H),7.90(d,1H,J=8.1),8.50(d,1H,J=4.5).
【0052】
〔参考例21〕
N−((2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりに2−(6−メチル−2−ピリジル)エタノールを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、N−スクシンイミジル2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルカルボナートを褐色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりにN−スクシンイミジル2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.83−0.92(m,6H),1.49−1.77(m,3H),2.43(s,3H),2.81(s,4H),2.99(t,2H,J=6.5),4.29−4.42(m,3H),7.07−7.09(m,2H),7.58(t,1H,J=7.7),7.91(d,1H,J=8.4).
【0053】
〔参考例22〕
N−((2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりに(5−エチルピリジン−2−イル)エタノールを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、N−スクシンイミジル2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルカルボナートを褐色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりにN−スクシンイミジル2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエトキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.75−0.92(m,6H),1.12−1.25(m,3H),1.36−1.72(m,3H),2.54−2.63(m,2H),2.81−2.83(m,4H),2.96−3.02(m,2H),4.04(m,1H),4.29−4.37(m,2H),7.21(d,1H,J=7.8),7.53(m,1H),7.90(d,1H,J=7.8),8.34(m,1H).
【0054】
〔参考例23〕
N−((2−tert-ブトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりにエチレングリコールtert-ブチルエーテルを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、N−スクシンイミジル2−tert-ブトキシエチルカルボナートを無色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりにN−スクシンイミジル2−tert-ブトキシエチルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((2−tert-ブトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((2−tert-ブトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((2−tert-ブトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((2−tert-ブトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.3),0.92(d,3H,J=6.3),1.13(s,9H),1.61(m,1H),1.74 (m,2H),2.81(s,4H),3.48(t,2H,J=4.7),4.04(m,2H),4.40(m,1H),8.00(d,1H,J=7.8).
【0055】
〔参考例24〕
N−((2−イソプロポキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
(1) (S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの代わりにエチレングリコールイソプロピルエーテルを用いて参考例2(1)と同様の反応を行い、N−スクシンイミジル2−イソプロポキシエチルカルボナートを無色オイル状物として得た。
(2) N−スクシンイミジル(3S)−3−テトラヒドロフラニルカルボナートの代わりにN−スクシンイミジル2−イソプロポキシエチルカルボナートを用いて参考例2(2)と同様の反応を行い、N−((2−イソプロポキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを無色オイル状物として得た。
(3) N−(((3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルの代わりにN−((2−イソプロポキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンエチルエステルを用いて参考例2(3)と同様の反応を行い、N−((2−イソプロポキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを無色オイル状物として得た。
(4) N−((2−メトキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンの代わりにN−((2−イソプロポキシエチルオキシ)カルボニル)−L−ロイシンを用いて参考例1(2)と同様の反応を行い、表題化合物を無色オイル状物として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(d,3H,J=6.6),0.92(d,3H,J=6.3),1.08(d,6H,J=6.3),1.61(m,1H),1.74(m,2H),2.81(s,4H),3.53(m,2H),3.57(m,1H),4.07(m 2H),4.40(m,1H),8.02(d,1H,J=7.8).
【0056】
〔実施例1〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(エチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物1)
【化8】

参考例1の化合物(1.2g,3.6mmol)と参考例8の化合物(1.0g,4.0mmol)のDMF溶液にトリエチルアミン(1.1g,11mmol)を加えた。この溶液を室温で18時間攪拌し、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルで溶解し、この溶液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮した。得られた固体を酢酸エチル/ヘキサン(1:9)混液で洗浄し((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(0.75g,47%)を白色固体として得た。
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(0.7g,1.6mmol)のジクロロメタン(70mL)溶液にデス・マーチン試薬(1.0g,2.4mmol)を加えた。この溶液を室温で18時間攪拌した。そこへ、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(35mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(35mL)を加え、この溶液を室温で30分攪拌した。有機層を分離し、これを1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン混液で結晶化し表題化合物(0.62g,88%)を無色結晶として得た。
融点:138.0−138.3°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.83(d,3H,J=7.5),0.85(d,3H,J=7.2),1.04(t,3H,J=7.1),1.35(m,2H),1.56(m,1H),2.82(m,1H),3.14(m,3H),3.25(s,3H),3.47(t,2H,J=4.5),4.04(m,3H),5.19(m,1H),7.16−7.33(m,6H),8.24(d,1H,J=7.2),8.70(m,1H).MALDI−TOF−MS:C2233(M+Na),458.2267,実測値,458.2361.
【0057】
〔実施例2〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(エチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物2)
【化9】

参考例1の化合物の代わりに参考例2の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:158.9−160.7°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.83(d,3H,J=6.6),0.85(d,3H,J=6.9),1.04(t,3H,J=7.1),1.35(m,2H),1.55(m,1H),1.83(m,1H),2.08(m,1H),2.82(m,1H),3.14(m,3H),3.61−3.78(m,4H),4.01(m,1H),5.07(m,1H),5.19(m,1H),7.17−7.33(m,6H),8.22(d,1H,J=7.2),8.69(t,1H,J=5.7).MALDI−TOF−MS:C2333(M+H),448.2447,実測値,448.2509.
【0058】
〔実施例3〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(エチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルエステル(化合物3)
【化10】

参考例1の化合物の代わりに参考例3の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:140.0−141.8°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.84(m,6H),1.04(t,3H,J=7.2),1.35(m,2H),1.49(m,3H),1.79(m,2H),2.82(m,1H),3.14(m,3H),3.41(m,2H),3.78(m,2H),4.02(m,1H),4.66(m,1H),5.19(m,1H),7.15−7.33(m,6H),8.22(d,1H,J=7.2),8.69(t,1H,J=5.7).MALDI−TOF−MS:C2435(M+Na),484.2424,実測値,484.2486.
【0059】
〔実施例4〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物4)
【化11】

参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:112.4−113.5°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.83(d,3H,J=6.6),0.85(d,3H,J=6.6),1.35(m,2H),1.56(m,1H),2.68−2.88(m,2H),3.11(m,1H),3.25(s,3H),3.47(t,2H,J=4.5),4.04(m,3H),5.17(m,1H),7.17−7.34(m,6H),8.25(d,1H,J=7.2),8.73(d,1H,J=4.8).MALDI−TOF−MS:C2333(M+Na),470.2267,実測値,470.2441.[α]25+6.3°(c0.20,DMSO)
【0060】
〔実施例5〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物5)
【化12】

参考例1の化合物の代わりに参考例2の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:169.2−170.5°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.83(d,3H,J=8.1),0.85(d,3H,J=6.9),1.34(m,2H),1.55(m,1H),1.83(m,1H),2.08(m,1H),2.79(m,2H),3.12(m,1H),3.61−3.80(m,4H),4.02(m,1H),5.08(m,1H),5.17(m,1H),7.22−7.35(m,6H),8.24(d,1H,J=6.6),8.74(d,1H,J=5.1).MALDI−TOF−MS:C2433(M+Na),482.2267,実測値,482.2586.
【0061】
〔実施例6〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルエステル(化合物6)
【化13】

参考例1の化合物の代わりに参考例3の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:137.0−138.2°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.84(m,6H),1.35(m,2H),1.48(m,3H),1.80(m,2H),2.79(m,2H),3.11(m,1H),3.41(m,2H),3.79(m,2H),4.03(m,1H),4.65(m,1H),5.18(m,1H),7.15−7.30(m,6H),8.23(d,1H,J=6.9),8.73(d,1H,J=5.4).MALDI−TOF−MS:C2535(M+H),474.2604,実測値,474.2643.
【0062】
〔実施例7〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(プロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物7)
【化14】

参考例8の化合物の代わりに参考例10の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−3−(プロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:108.8−109.9°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.83(m,9H),1.35(m,2H),1.46(m,2H),1.55(m,1H),2.83(dd,1H,J=14.0,9.2),3.08(m,3H),3.25(s,3H),3.48(t,2H,J=4.4),4.04(m,3H),5.19(m,1H),7.22−7.28(m,6H),8.24(d,1H,J=6.9),8.68(t,1H,J=5.6).MALDI−TOF−MS:C2335(M+H),450.2604,実測値,450.2832.
【0063】
〔実施例8〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロブチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物8)
【化15】

参考例8の化合物の代わりに参考例11の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロブチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:114.2−115.3°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.84(m,6H),1.34(m,2H),1.49−1.72(m,3H),2.10(m,4H),2.81(dd,1H,J=13.8,9.3),3.10(m,1H),3.25(s,3H),3.47(m,2H),4.03(m,3H),4.22(m,1H),5.15(m,1H),7.24(m,6H),8.24(d,1H,J=7.2),8.91(d,1H,J=7.8).MALDI−TOF−MS:C2435(M+Na),484.2424,実測値,484.2400.
【0064】
〔実施例9〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−ブチルアミノ−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物9)
【化16】

参考例8の化合物の代わりに参考例12の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−ブチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:94.0−95.2°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.85(m,9H),1.25(m,2H),1.35(m,2H),1.42(m,2H),1.56(m,1H),2.83(dd,1H,J=13.8,9.0),3.10(m,3H),3.25(s,3H),3.47(t,2H,J=4.5),4.04(m,3H),5.18(m,1H),7.21−7.29(m,6H),8.23(d,1H,J=6.6),8.67(t,1H,J=6.0).MALDI−TOF−MS:C2437(M+H),464.2760,実測値,464.2870.
【0065】
〔実施例10〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物10)
【化17】

参考例8の化合物の代わりに参考例13の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:152.5−153.9°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.84(m,6H),1.34(m,2H),1.55(m,1H),2.86(dd,1H,J=14.0,8.6),3.10(dd,1H,J=14.1,4.8),3.25(s,3H),3.48(t,2H,J=4.7),3.90(m,2H),4.04(m,3H),5.14(m,1H),7.21−7.31(m,6H),8.34(d,1H,J=6.9),9.29(m,1H).MALDI−TOF−MS:C2230(M+H),490.2165,実測値,490.2434.
【0066】
〔実施例11〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(2−インダニルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物11)
【化18】

参考例8の化合物の代わりに参考例14の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−(2−インダニルアミノ)−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:141.9−143.5°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.83(d,3H,J=6.9),0.86(d,3H,J=6.9),1.36(m,2H),1.57(m,1H),2.80−2.96(m,3H),3.10−3.18(m,3H),3.24(s,3H),3.47(t,2H,J=4.7),4.04(m,3H),4.50(m,1H),5.19(m,1H),7.13−7.30(m,10H),8.29(d,1H,J=6.9),8.97(d,1H,J=7.2).MALDI−TOF−MS:C2937(M+H),524.2760,実測値,524.2810.
【0067】
〔実施例12〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(2−メトキシエチルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物12)
【化19】

参考例8の化合物の代わりに参考例15の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシエチルアミノ)−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:127.0−127.9°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.83(d,3H,J=6.9),0.86(d,3,J=6.9),1.35(m,2H),1.56(m,1H),2.83(dd,1H,J=13.8,9.0),3.11(dd,1H,J=14.0,4.4),3.24(s,3H),3.25(s,3H),3.16−3.34(m,2H),3.39(m,2H),3.48(t,2H,J=4.5),4.04(m,3H),5.20(m,1H),7.18−7.30(m,6H),8.21(d,1H,J=6.9),8.66(t,1H,J=5.4).MALDI−TOF−MS:C2335(M+Na),488.2373,実測値,488.2680.
【0068】
〔実施例13〕
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−エチルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物13)
【化20】

参考例8の化合物の代わりに参考例16の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:119.1−120.4°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(t,6H,J=6.3),1.03(t,3H,J=7.2),1.43(t,2H,J=7.2),1.61−1.85(m,2H),2.07(m,1H),2.56−2.74(m,2H),3.07−3.17(m,2H),3.25(s,3H),3.49(t,2H,J=4.7),4.05−4.14(m,3H),4.89(m,1H),7.16−7.36(m,5H),7.34(d,1H,J=8.4),8.33(d,1H,J=6.9),8.65(t,1H,J=5.9).MALDI−TOF−MS:C2335(M+H),450.2604,実測値,450.2701.
【0069】
〔実施例14〕
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−エチルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物14)
【化21】

参考例1の化合物の代わりに参考例2の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例16の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:111.9−114.5°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.89(t,6H,J=6.3),1.03(t,3H,J=7.2),1.43(t,2H,J=7.4),1.60−1.91(m,3H),2.09(m,2H),2.56−2.76(m,2H),3.07−3.17(m,2H),3.63−3.82(m,4H),4.02−4.13(m,1H),4.88(m,1H),5.09−5.13(m,1H),7.16−7.31(m,5H),7.34(d,1H,J=8.4),8.34(d,1H,J=6.9),8.66(t,1H,J=5.7).MALDI−TOF−MS:C2435(M+H),462.2604,実測値,462.2870.
【0070】
〔実施例15〕
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−シクロプロピルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物15)
【化22】

参考例8の化合物の代わりに参考例17の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:109.7−111.1°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.53−0.68(m,4H),0.87−0.91(m,6H),1.43(t,3H,J=7.2),1.59−1.85(m,2H),2.01−2.13(m,1H),2.56−2.74(m,3H),3.25(s,3H),3.48−3.51(m,2H),4.05−4.14(m,3H),4.87(m,1H),7.17−7.36(m,6H),8.34(d,1H,J=6.6),8.69(d,1H,J=5.1).MALDI−TOF−MS:C2435(M+H),462.2604,実測値,462.2742.
【0071】
〔実施例16〕
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−3−シクロプロピルアミノ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステル(化合物16)
【化23】

参考例1の化合物の代わりに参考例2の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例17の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソ−1−(フェニルエチル)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:115.8−116.2°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.56−0.59(m,4H),0.88(t,6H,J=6.3),1.42(t,2H,J=7.4),1.60−1.91(m,3H),2.09(m,2H),2.56−2.76(m,3H),3.63−3.81(m,4H),4.05−4.13(m,1H),4.87(m,1H),5.09−5.13(m,1H),7.20−7.35(m,6H),8.34(d,1H,J=6.9),8.69(d,1H,J=5.1).MALDI−TOF−MS:C2535(M+H),474.2604,実測値,474.2598.
【0072】
〔実施例17〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(化合物17)
【化24】

参考例1の化合物の代わりに参考例4の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:127.9−128.7°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.54−0.66(m,4H),0.81−0.86(m,6H),1.30−1.42(m,2H),1.57(m,1H),2.73(m,1H),2.82(dd,1H,J=14.3,9.2),3.11(dd,1H,J=13.8,4.2),3.24(s,3H),3.42−3.44(m,2H),3.50−3.57(m,4H),3.99−4.04(m,3H),5.17(m,1H),7.22−7.30(m,6H),8.22(d,1H,J=6.9),8.71(d,1H,J=4.8).MALDI−TOF−MS:C2537(M+Na),514.2530,実測値,514.2944.[α]25+13.9°(c0.20,DMSO)
【0073】
〔実施例18〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル(化合物18)
【化25】

参考例1の化合物の代わりに参考例5の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:116.0−117.2°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.83(d,3H,J=7.8),0.85(d,3H,J=6.9),1.35(m,2H),1.57(m,1H),2.73−2.86(m,2H),3.11(m,1H),3.24(s,3H),3.44(m,2H),3.51(m,6H),3.56(t,2H,J=4.7),4.04(m,3H),5.17(m,1H),7.22−7.31(m,6H),8.25(d,1H,J=6.9),8.73(d,1H,J=5.1).MALDI−TOF−MS:C2741(M+Na),558.2792,実測値,558.2717.[α]25+2.5°(c0.20,DMSO)
【0074】
〔実施例19〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルエステル(化合物19)
【化26】

参考例1の化合物の代わりに参考例6の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:97.5−98.5°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.54−0.66(m,4H),0.81−0.86(m,6H),1.32−1.37(m,2H),1.56(m,1H),2.73(m,1H),2.82(dd,1H,J=14.0,9.2),3.11(dd,1H,J=14.1,4.2),3.24(s,3H),3.41−3.44(m,2H),3.50−3.51(m,10H),3.54−3.57(m,2H),3.99−4.08(m,3H),5.16(m,1H),7.22−7.31(m,6H),8.25(d,1H,J=7.2),8.73(d,1H,J=5.1).MALDI−TOF−MS:C2945(M+Na),602.3054,実測値,602.3427.[α]25+6.9°(c0.20,DMSO)
【0075】
〔実施例20〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルエステル(化合物20)
【化27】

参考例1の化合物の代わりに参考例7の化合物を、参考例7の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−シクロプロピルアミノ−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸14−メトキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカニルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:98.5−99.9°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.83(d,3H,J=6.9),0.85(d,3H,J=7.8),1.35(m,2H),1.57(m,1H),2.73−2.86(m,2H),3.11(m,1H),3.24(s,3H),3.42(m,2H),3.51(m,14H),3.56(t,2H,J=3.3),4.04(m,3H),5.17(m,1H),7.22−7.30(m,6H),8.24(d,1H,J=6.9),8.72(d,1H,J=4.5).MALDI−TOF−MS:C314910(M+Na),646.3316,実測値,646.3404.
【0076】
〔実施例21〕
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−1−(2−メチルプロピル)−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル(化合物21)
【化28】

参考例8の化合物の代わりに参考例18の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−2−ヒドロキシ−1−(2−メチルプロピル)−3−オキソ−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:99.7−100.5°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.88(dd,12H,J=12.0,6.3),1.35−1.54(m,4H),1.58−1.75(m,2H),3.25(s,3H),3.46−3.53(m,4H),4.03−4.07(m,5H),5.06(m,1H),6.91−6.95(m,3H),7.26−7.31(m,3H),8.15(d,1H,J=7.2),8.81(t,1H,J=5.9).MALDI−TOF−MS:C2539(M+H),494.2866,実測値,494.2967.
【0077】
〔実施例22〕
((1S)−1−((((1S)−2,3−ジオキソ−1−(2−メチルプロピル)−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(化合物22)
【化29】

参考例1の化合物の代わりに参考例4の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例18の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1S)−2−ヒドロキシ−1−(2−メチルプロピル)−3−オキソ−3−(2−フェノキシエチル)アミノプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:53.3−54.1°C.H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.87(dd,12H,J=12.2,6.5),1.35−1.54(m,4H),1.58−1.75(m,2H),3.24(s,3H),3.41−3.45(m,2H),3.47−3.57(m,6H),4.03−4.07(m,5H),5.06(m,1H),6.91−6.96(m,3H),7.26−7.31(m,3H),8.17(d,1H,J=6.9),8.83(t,1H,J=5.7).MALDI−TOF−MS:C2743(M+H),538.3128,実測値,538.3140.
【0078】
〔実施例23〕
((1S)−1−((((1RS)−3−アミノ−1−ベンジル−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(化合物23)
【化30】

参考例1の化合物の代わりに参考例4の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例19の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、((1S)−1−((((1RS)−3−アミノ−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.77(d,3H,J=6.3),0.83(d,1.5H,J=6.6),0.86(d,1.5H,J=6.9),1.05−1.63(m,3H),2.68−2.85(m,1H),3.12(m,1H),3.23(s,3H),3.42(m,2H),3.51−3.56(m,4H),4.03(m,3H),5.22(m,1H),7.21−7.31(m,6H),7.81(d,1H,J=14),8.06(d,1H,J=18),8.19(d,0.5H,J=6.9),8.26(d,0.5H,J=7.5).
【0079】
〔実施例24〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(ピリジン−2−イル)エチルエステル(化合物24)
【化31】

参考例1の化合物の代わりに参考例20の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、(((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(ピリジン−2−イル)エチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58−0.66(m,4H),0.83(t,6H,J=7.1),1.31−1.35(m,2H),1.53(m,1H),2.74(m,1H),2.81(dd,1H,J=14.1,9.3),3.02(t,2H,J=6.3),3.11(dd,1H,J=14.0,4.1),4.01(m,1H),4.28−4.32(m,2H),5.17(m,1H),7.14−7.34(m,8H),7.75(t,1H,J=6.8),8.23(d,1H,J= 7.2), 8.51(d,1H,J=4.2),8.71(d,1H,J=4.5).
【0080】
〔実施例25〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルエステル(化合物25)
【化32】

参考例1の化合物の代わりに参考例21の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、(((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(6−メチルピリジン−2−イル)エチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:162.0−163.6℃.
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.54−0.66(m,4H),0.76−0.86(m,6H),1.54(m,1H),2.43(s,3H),2.73−2.86(m,2H),2.96(t,2H,J=6.5),3.11(m,1H),4.03(m,1H),4.21−4.34(m,2H),5.17(m,1H),7.07−7.30(m,8H),7.58(t,1H,J=7.7),8.23(d,1H,J=6.9),8.72 (d,1H,J=4.8).
【0081】
〔実施例26〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルエステル(化合物26)
【化33】

参考例1の化合物の代わりに参考例22の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、(((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(5−エチルピリジン−2−イル)エチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
融点:119.9−121.0℃.
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58−0.66(m,4H),0.75−0.85(m,6H),1.17(t,3H,J=7.7),1.33−1.36(m,2H),1.53(m,1H),2.58(dd,2H,J=15.5,8.3),2.74−2.85(m,2H),2.94−2.98(m,2H),3.12(m,1H),4.04(m,1H),4.28−4.29(m,2H),5.17(m,1H),7.13−7.26(m,7H),7.55(d,1H,J=8.1),8.22−8.35(m,2H),8.75(m,1H).
【0082】
〔実施例27〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−tert-ブトキシエチルエステル(化合物27)
【化34】

参考例1の化合物の代わりに参考例23の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、(((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−tert-ブトキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.83(d,3H,J=7.5),0.85(d,3H,J=6.9),1.12(s,9H),1.35(m,2H),1.57(m,1H),2.74(m,1H),2.82(m,1H),3.11(m,1H),3.45(m,2H),3.98(m,3H),5.17(m,1H),7.24(m,6H),8.23(d,1H,J=6.6),8.71(d,1H,J=4.8).
【0083】
〔実施例28〕
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−イソプロポキシエチルエステル(化合物28)
【化35】

参考例1の化合物の代わりに参考例24の化合物を、参考例8の化合物の代わりに参考例9の化合物を用いて実施例1と同様の反応を行い、(((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2−ヒドロキシ−3−オキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−イソプロポキシエチルエステルを経て表題化合物を無色結晶として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.58(m,2H),0.65(m,2H),0.83(d,3H,J=7.2),0.85(d,3H,J=6.9),1.07(d,6H,J=5.7),1.35(m,2H),1.57(m,1H),2.74(m,1H),2.82(m,1H),3.12(m,1H),3.50(m,2H),3.55(m,1H),4.01(m,3H),5.17(m,1H),7.24(m,6H),8.22(d,1H,J=6.9),8.71(d,1H,J=3.6).
【0084】
〔試験例1〕
(1) μ−カルパイン及びm−カルパイン阻害活性の測定
μ−及びm−カルパインの阻害活性は文献(Anal.Biochem.,1993年、第208巻,p.387−392)に記載された方法に準じて測定した。すなわち、種々の濃度の被験化合物を含むDMSO溶液(2.5μL)に、0.5mg/mLのカゼイン、50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、20mMのジチオスレイトール及び1.0nmolのμ−カルパイン(ヒト赤血球由来、コスモ・バイオ株式会社製)又はm−カルパイン(ブタ腎臓由来、コスモ・バイオ株式会社製)を含む反応液(200μL)を96穴プレート上で加えた。そこへ、20mMの塩化カルシウム水溶液(50μL)を加え、30℃で60分間反応させた。この反応液(100μL)を別の96穴プレートに移し、精製水(50μL)と50%のProtein Assay Dye Reagent(バイオラド社製;カタログNo.500−0006)水溶液(100μL)を加えて室温で15分間放置した後、595nMで吸光度を測定した。被験化合物を含まず同様に処理したものをコントロール値、20mM塩化カルシウム水溶液の代わりに1mM EDTA水溶液(50μL)を加え同様に処理したものをブランク値とし、下記の式より算出される阻害率を計算し、50%阻害に必要な濃度(IC50)を求めた。
阻害率(%)={1−(測定値−ブランク値)/(コントロール値−ブランク値)}×100
【0085】
カルパイン阻害活性を表1に示した。本発明化合物はμ−カルパイン及びm−カルパインの活性を強く阻害した。
【表1】

【0086】
〔試験例2〕 溶解度
本発明化合物について、10mMリン酸緩衝液(pH7)に対する溶解度を測定した。
表2に本発明化合物の溶解度を示す。
【0087】
【表2】

【0088】
〔試験例3〕 Caco−2を用いた透過性試験
カルチャーインサート(ポリカーボネート製多孔質フィルター:FALCONTM3096,孔径,3μm;面積,0.31cm)上でCaco−2細胞(Catalog No.HTB−37,入手先:ATCC,継代数:56)を1×10cells/cm播種し、22日間培養(37℃,5%CO)して単層膜を調製した。培地には10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL)、抗生物質−抗真菌剤,液体(GIBCO BRL)、非必須アミノ酸溶液(GIBCO BRL)及び2mmol/L L−グルタミン(GIBCO BRL)を含有したダルベッコ改変イーグル最小必須培地(GIBCO BRL)を用いた。あらかじめ、被験物質及び対照物質を含まないハンクス平衡塩溶液(頂端側,pH6.5:基底膜側,pH7.4)中、1時間37℃でプレインキュベーションした。頂端側(250μL)に10μMの被験物質又は対照物質のハンクス平衡塩溶液(pH6.5,37℃)を作用させ、基底膜側(950μL)に透過した被験物質を定量した。すなわち,1及び2時間後に基底膜側から、500μLを採取し、透過係数を求めた。陽性対照にはプロプラノロールを、また、陰性対照には14C−マンニトールを用いた。被験物質の定量にはLC−MS/MSを、また、14C−マンニトールの定量には液体シンチレーションカウンターを用いた。
被験物質あるいは対照物質のCaco−2細胞の単層膜を介した透過量を求め、以下の式より見かけの透過係数(Papp)を算出した。
app=(δQ/δt)×(1/60AC
app:見かけの透過係数(cm/sec)
δQ/δt:透過速度(pmol/min)
A:細胞単層膜面積=0.33(cm
:頂端膜側の初濃度(pmol/mL)
【0089】
〔試験例4〕 IAMカラムを用いた分配係数の測定
下記に示す条件でHPLCシステムにて分析を行い、それぞれの物質の保持時間を求めた。
カラム:IAM ファースト・スクリーン・ミニカラム(Regis Technologies,Inc.)
移動相:ダルベッコ・リン酸緩衝液(pH7.4)
検出波長:250nm
カラム温度:室温
注入量:5.0〜20μL
流速:0.5mL/min
試料溶液:被験物質(5mg)をアセトニトリル(100μL)に溶解し移動相で1mLとした。
さらに、下記式に測定結果を挿入し、分配係数(k’IAM)を算出した。
k’IAM=(t−t)/t
:アセトニトリル由来のピークの保持時間
:被験物質のピークの保持時間
【0090】
本発明化合物の膜透過性の評価は、Caco−2細胞透過性(Papp(頂端側→基底膜側))及び/又はそれと相関性があるIAMカラム分析での保持時間から求めた分配係数(k’IAM)によって行った。
Caco−2細胞透過性を測定したすべての化合物は透過が吸収律速とならないと考えられている値Papp=10−6以上の値を示しており、またIAMカラム分析を行った化合物がCaco−2細胞透過性Papp=10−6に相当すると考えられるk’IAM=0.7以上の値をしめした。これらの結果は、経口投与による吸収において、消化管での膜透過性に問題を生じないであろうと考えられた。
【表3】

【0091】
〔試験例5〕 血中移行性試験
カニクイザルに本発明化合物を経口投与(10mg/kg)し、経時的に採血し、血漿中の各化合物の濃度を測定した。最高血漿中濃度(Cmax)及び血中濃度曲線下面積(AUC)を表4に示した。
本発明化合物を経口投与した場合、試験例1で示した酵素阻害活性(IC50)より高い濃度の化合物が血中に移行しており、優れた薬物動態を示すことが分かった。
【表4】

【0092】
〔試験例6〕 ラット網膜虚血障害に対する効果
雄性SD系ラット(体重:150〜200g,日本チャールズリバーより購入)を使用した。麻酔は、虚血の15分前に50mg/mLケタミン注射液と20mg/mLキシラジン注射液の等量混合液をラットの大腿部筋肉内に1.0mL/kg体重投与した。虚血はスギタ式クリップミニタイプ(No.98)を用いて網膜中心動脈を含む視神経を結紮し、網膜への血流遮断により行った。前記結紮から55分経過後に結紮を解除し、網膜への血流を再開した(以下、虚血再灌流という。)ノーマル群には、網膜中心動脈の露出のみを行ない、虚血を行わなかった。虚血再潅流7日後に組織標本を作成した。組織標本を作成するために、過剰量のペントバルビタール溶液を腹腔内投与して屠殺し、眼球を摘出した。摘出眼球は2%パラホルムアルデヒド及び2.5%グルタルアルデヒド(0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4)の固定液に24時間浸透させて固定した。固定後、眼球のパラフィン包埋ブロックを作製し、ミクロトームを用いて視神経乳頭の中央を通る部位でパラフィン包埋された眼球を3μmの厚さに薄切し切片を作成した。前記切片は定法に従い、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色を施した。染色した切片を光学顕微鏡下で観察し、視神経乳頭中央より1〜2mmにおける網膜断面0.25mm幅あたりの、網膜の神経節細胞(ガングリオン細胞)数を計測した。
被験薬として化合物17を使用した。カルボキシメチルセルロースナトリウムを蒸留水に溶かして0.5%の濃度になるように調製した溶液(CMC溶液)に、化合物17を1.0%になるように懸濁させた溶液を化合物17が100mg/kg体重となるよう、虚血開始15分前及び虚血再灌流直後に経口投与した(化合物17投与群)。コントロール群及びノーマル群には、CMC溶液を同様に経口投与した。
その結果を図1に示した。虚血再灌流により、ガングリオン細胞数はノーマル群の約1/4に減少した(コントロール群)。これに対し、化合物17投与群では、虚血再灌流によるガングリオン細胞数の減少を有意に抑制した。
以上の結果は、本発明の化合物17が網膜虚血障害を改善する効果があることを示すものである。
【0093】
〔製剤例1〕 錠剤
化合物4 5g
デンプン 12g
乳糖 27.2g
ステアリン酸マグネシウム 0.4g
化合物4、乳糖及びデンプンを加えてよく混和し、湿性錠剤調製法に準じて打錠用顆粒とする。ステアリン酸マグネシウムを加えて打錠し、錠剤400錠とする。錠剤は、必要に応じて、腸溶性コーティング剤(メタアクリル酸コポリマー)でコーティングする。
【0094】
〔製剤例2〕 点眼剤
化合物18 100mg
ホウ酸 700mg
ホウ砂 適量
塩化ナトリウム 500mg
エデト酸ナトリウム 0.05mg
塩化ベンザルコニウム 0.0005mg
滅菌精製水 全量 100mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して点眼剤とする。
【0095】
〔製剤例3〕 注射剤
化合物17 100mg
塩化ナトリウム 900mg
1N水酸化ナトリウム 適量
注射用蒸留水 全量 100mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して注射剤とする。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、優れたカルパイン阻害活性を有し、かつ吸収性にも優れているため、カルパインが関与する種々の疾患、例えば虚血性疾患、免疫疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳組織障害による疾患、白内障、緑内障、網膜疾患、網脈絡膜疾患(例えば糖尿病性網膜症、網膜血管閉塞症、黄斑変性症、網膜色素変性症、高血圧性網膜症、網膜剥離等)、光凝固による眼球後眼部合併症、血管新生を伴う疾患等の予防及び治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、ラット網膜虚血再灌流7日後のガングリオン細胞層における生存細胞数を示すグラフである。各値は平均値±標準誤差を示す。図中ノーマルはノーマル群(n=8)を、コントロールはコントロール群(n=8)を、化合物17は化合物17投与群(n=9)を示す。図中、*はスチューデントのT検定(両側)によるコントロール群に対する有意差P<0.05を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは低級アルコキシ基又は複素環基で置換された低級アルキル基を示すか、複素環基を示し、Rはフェニル基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Rはハロゲン、低級アルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい低級アルキル基を示すか、縮合多環式炭化水素基又は水素原子を示す。)で表される化合物。
【請求項2】
で示される低級アルコキシ基で置換された低級アルキル基が、式(IIa)
【化2】

(式中、Rは低級アルキル基、Rは低級アルキレン基、mは1〜6の整数を示す。)で示される基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
で示される低級アルコキシ基で置換された低級アルキル基が、式(IIb)
【化3】

(式中、nは1〜6の整数を示す。)で示される基である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
で示される低級アルキル基に置換した複素環基が、低級アルキル基を有していてもよいピリジルである請求項1記載の化合物。
【請求項5】
で示される複素環基のヘテロ原子が酸素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
で示される低級アルキル基がシクロプロピル基である請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル、((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−2,3−ジオキソ−3−(シクロプロピルアミノ)プロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデカニルエステル又は((1S)−1−((((1S)−1−ベンジル−3−(シクロプロピルアミノ)−2,3−ジオキソプロピル)アミノ)カルボニル)−3−メチルブチル)カルバミン酸2−(ピリジン−2−イル)エチルエステル。
【請求項8】
請求項1又は7記載の化合物を含有してなる医薬。
【請求項9】
カルパイン阻害剤である請求項8記載の医薬。
【請求項10】
カルパインが関与する疾患の予防及び/又は治療剤である請求項9記載の医薬。
【請求項11】
カルパインが関与する疾患が、虚血性疾患、免疫疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳組織障害による疾患、白内障、緑内障、網膜疾患、網脈絡膜疾患、光凝固による眼球後眼部合併症又は血管新生を伴う疾患である請求項10記載の医薬。

【図1】
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【公開番号】特開2006−76989(P2006−76989A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354908(P2004−354908)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】