説明

アライメントマークの位置検出方法及び該方法を用いたレーザ加工装置

【課題】アライメントマークの位置検出精度を向上させる。
【解決手段】位置合わせを行う対象物を撮影した画像から前記対象物に存在する少なくとも1つのアライメントマークを検出するアライメントマークの位置検出方法において、前記画像から予め設定されたアライメントマークを取得するマーク取得ステップと、前記マーク取得ステップにより取得されたアライメントマークから少なくとも4つの基点となる点を検出する基点検出ステップと、前記基点検出ステップにより検出された基点から複数の線分を取得する線分取得ステップと、前記線分取得ステップにより得られる線分の交点から前記アライメントマークの位置を検出する位置検出ステップとを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメントマークの位置検出方法及び該方法を用いたレーザ加工装置に係り、特にアライメントマークの位置検出精度を向上させるためのアライメントマークの位置検出方法及び該方法を用いたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザ加工等の分野において、ステージ上に保持される加工対象物やステージ、レーザ光を加工対象物に照射した際に所望する形状に結像させるためのマスク等を適切な位置に合わせるために、加工対象物やステージ、マスク等の対象物に点や十字、星形等からなる少なくとも1つのアライメントマークを設け、そのアライメントマークを含む対象物の領域をカメラ等によりある程度離れた位置から撮影し、撮影した画像からアライメントマークの位置を検出して、対象物を適切な位置に合わせている。
【0003】
ここで、撮影等により得られた画像からアライメントマークを検出する手法としては、予め設定されたアライメントマークのテンプレートとマッチングを行うことで、その位置を検出するテンプレートマッチング手法が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
また、その他の手法として、プロジェクション法が知られている。ここで、図1は、従来技術であるプロジェクション法を説明するための一例の図である。図1に示すプロジェクション法は、撮影等により得られた画像10に存在する十字のアライメントマーク11に対し、画像中のX軸、Y軸方向にそれぞれ画像の輝度値を積分し、その値が連続して閾値以上となった区間のX軸、Y軸それぞれの中間点をアライメントの位置((X,Y)座標)として検出する。
【特許文献1】特開平06−151274号公報
【特許文献2】特開2003−156311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1,2に示される手法は、予め蓄積されたテンプレートと、現画像に含まれるアライメントマークとの類似度を算出してマッチングを行っている。このため、例えば対象物のサイズが大きい場合等には、カメラの撮影領域の端の方にあるアライメントマークは、撮影された2次元画像上では対象物とカメラとの角度等の原因により変形して表示される。そのため、テンプレートとのマッチング時にアライメントマークを正しく検出できないという問題があった。
【0006】
また、テンプレートマッチング手法では、テンプレートとの類似度でアライメントマークを検出しているため、交点の位置までは正確に検出できない。そのため、交点を取得する場合には、テンプレート上で交点位置を指定する必要があった。
【0007】
また、上述したプロジェクション法の場合、以下のような問題がある。図2は、プロジェクション法が適用できない場合を説明するための一例の図である。図2に示すように、アライメントマーク11の全ての領域が画像10中に収まっていない場合、上述したように輝度値が連続して閾値以上となった区間のそれぞれの中間点の座標が交点の座標にならないため、正確にアライメントマークの位置を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、アライメントマークの位置検出精度を向上させるためのアライメントマークの位置検出方法及び該方法を用いたレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、位置合わせを行う対象物を撮影した画像から前記対象物に存在する少なくとも1つのアライメントマークを検出するアライメントマークの位置検出方法において、前記画像から予め設定されたアライメントマークを取得するマーク取得ステップと、前記マーク取得ステップにより取得されたアライメントマークから少なくとも4つの基点となる点を検出する基点検出ステップと、前記基点検出ステップにより検出された基点から複数の線分を取得する線分取得ステップと、前記線分取得ステップにより得られる線分の交点から前記アライメントマークの位置を検出する位置検出ステップとを有することを特徴とする。これにより、マスク等の位置合わせを行う対象である加工対象物やステージ、マスク等の対象物に存在するアライメントマークから基点を検出し、検出した基点を用いることで、アライメントマークの位置検出精度を向上させることができる。
【0010】
更に、前記基点検出ステップは、前記アライメントマークを構成する領域中に存在する点であり、基点同士が所定距離以上離れており、更に3点以上が同一直線上に配置されていない点を、基点として検出することが好ましい。これにより、基点を求めることで、アライメントマークの全てが画像中に含まれていない場合でもアライメントマークの位置検出を行うことができる。
【0011】
更に、前記基点検出ステップは、前記アライメントマークが十字マークであり、前記画像の撮影領域の端と前記アライメントマークとの接触部分が存在する場合、前記接触部分から基点を検出することが好ましい。これにより、基点を容易に検出することができる。また、アライメントマークの全てが画像中に含まれていない場合でもアライメントマークの位置検出を行うことができる。
【0012】
更に、前記基点検出ステップは、少なくとも4つの基点が検出されていない場合、予め設定された探索領域により前記アライメントマークを構成する直線の一部を探索し、探索した結果から基点を検出することが好ましい。これにより、基点を高精度に検出することができる。
【0013】
更に、前記基点検出ステップは、同一直線上に3点以上の基点が検出された場合は、前記両端の点を基点として残し、それ以外の点を削除することが好ましい。これにより、基点間の距離を長くすることができるため、2つの基点を通る直線を正確に取得することができる。したがって、この直線を用いてアライメントマークの位置検出精度を向上させることができる。
【0014】
更に、前記マーク取得ステップは、前記画像中から前記アライメントマークを探索するために設定される探索領域をマーク領域、非マーク領域、高含有率領域の3種類のうち、何れか1つに分類することを特徴とすることが好ましい。これにより、各領域で異なる探索を行うことができるため、アライメントマークの取得を迅速且つ正確に行うことができる。
【0015】
また本発明は、前記アライメントマークの位置検出方法により、位置決めされた加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工装置において、光学系ユニットを前記レーザ光に対して光軸方向に移動して、前記加工対象物に結像されたレーザ光を照射させる光学系ユニット駆動手段と、前記光学系ユニットからのレーザ光をミラーの移動により走査させて前記加工対象物の所定位置に照射させるミラー駆動手段と、前記加工対象物及び/又は前記加工対象物を保持したステージの表面を撮影する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に対して前記アライメントマークの位置検出を行う画像処理装置と、前記画像処理装置により得られる前記アライメントマークの位置検出結果に基づいて、前記ミラー駆動手段により走査させるレーザ光の位置を調整するための制御手段とを有することを特徴とする。これにより、対象物の正確な位置を把握することができるため、高精度なレーザ加工を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アライメントマークの位置検出精度を向上させることができる。これにより、対象物の正確な位置を把握することができるため、高精度なレーザ加工を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、上述したような特徴を有する本発明におけるアライメントマークの位置検出方法及び該方法を用いたレーザ加工装置を好適に実施した形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明では、アライメントマーク11の一例として十字の形状を用いて説明するが、本発明においてはこの限りではなく、他の形状(マーク)であっても同様に対応することができる。
【0018】
<アライメントマークの位置検出>
本実施形態によるアライメントマークの位置検出は、例えば樹脂等からなる加工対象物や加工対象物を保持するステージ、レーザ光を対象物に照射した際に所望する形状に結像させるためのマスク等に印された十字マークをカメラ等の撮像手段によって撮影し、画像処理等によって十字マークを含む撮影画像から十字マークの基点(座標)を検出し、基点から十字マークの位置(交点)を検出する。
【0019】
ここで、図3は、本発明におけるアライメントマークの基点を説明するための図である。本実施形態では、画像10中に含まれているアライメントマーク11は、以下の(1)〜(3)の3項目を条件として基点12を定義する。
(1)十字マークを構成する直線上に存在する点であること。
(2)基点同士が十分に離れていること(画像を量子化した場合に、基点同士が近いと2つの基点を通る直線や傾き等が検出できないため)。
(3)3点以上が同一直線上に配置されていないこと。
【0020】
つまり、本実施形態における十字マークの交点検出は、例えば図3に示すように、まず、少なくとも4つの基点12−1〜12−4を検出し、それらが構成する直線式13を算出する。なお、図3では、基点12−1,12−3により1つの直線13−1が算出され、基点12−2,12−4により1つの直線13−2が算出されている。
【0021】
次に、この直線13−1,13−2の交点を求めることによってアライメントマーク11の位置を検出する。
【0022】
<十字マークの交点検出手順>
ここで、本実施形態における十字マークの交点検出手順についてフローチャートを用いて説明する。図4は、十字マークの交点検出手順の一例を示すフローチャートである。
【0023】
図4において、まず、アライメントマークである十字マークを検出するための画像を取得し(S01)、取得した画像から輝度値等の画素情報に基づいて十字マークに相当する領域を取得する(S02)。
【0024】
次に、S02の処理にて取得した十字マークが画像領域の端に接しているか否かを判断する(S03)。十字マークが画像領域の端に接している場合(S03において、YES)、その接している領域から接点を求め、その接点の座標を基点として記憶する(S04)。
【0025】
また、十字マークが画像領域の端に接していない場合(S03において、NO)、次に少なくとも4つの基点を検出したか否かを判断する(S05)。少なくとも4つの基点を検出していない場合(S05において、NO)、十字マークを構成する直線の一部(例えば、マーク端等)を探索し(S06)、探索した結果から基点(座標)を検出する(S07)。
【0026】
また、複数の基点から構成される直線方程式を算出する(S08)。更に、S08の処理にて算出した直線方程式により得られる直線(線分)から同一直線上に基点が3つ以上あるか否かを判断する(S09)。
【0027】
ここで、同一直線上に基点が3つ以上ある場合(S09において、YES)、両端の基点を残し、それ以外の基点を削除して(S10)、S05に戻り、上述したS05以降の処理を行う。また、S09の処理において、同一直線上に基点が3つ以上ない場合(S09において、NO)、S05に戻り、上述したS05以降の処理を行う。なお、S06の処理が繰り返される場合には、S06により探索される直線は、前回までに探索された直線を除く直線が探索される。
【0028】
また、上述したS05の処理において、少なくとも4つの基点を検出した場合(S05において、YES)、2つの基点を通る直線方程式を算出し(S11)、算出した直線方程式により得られた直線(線分)の組み合わせアのうち、2つの直線の交点の座標が画像領域内となる組み合わせを選択し(S12)、その交点を求める十字マークの位置とする(S13)。
【0029】
上述した処理手順により、十字マークの一部が画面からでている場合であっても基点に基づいて高精度に十字マーク等のアライメントマークの位置を検出することができる。
【0030】
次に、上述した基点の具体的な検出手法について具体的に説明する。
【0031】
<十字マークの領域検出手法>
基点を検出するにあたり、まず対象となる画像中に含まれる十字マークの領域を検出する。図5は、十字マークの領域検出手法を説明するための一例の図である。通常、アライメントマークは、ある一定の幅を有している。本実施形態では、図5に示すように、画像領域の各軸(X,Y)に対し、十字マークの直線を構成する帯状のオブジェクトの幅よりも細い探索区間[a,(a+D)]からなる探索領域を定義する。また、上述した探索領域を各軸に対して所定の間隔で移動させながらプロジェクション法により輝度値を積分し、その値を取得する(a,a+1,a+2,・・・)。また、各探索領域内に存在し、輝度値が所定の閾値を超える値を持つ画素の総数を取得し、探索領域内に対し閾値を超える画素の含有率αを算出する。
【0032】
また、得られた各軸に対するプロジェクションのデータから連続して閾値を超える画素の範囲(La,Lb,・・・)を取得し、その中で最大の値Lan及び2番目に大きい値Lbnを検出する。
【0033】
更に、得られたLan及びLbnの変化量及び含有率αより、探索区間内の画像を「(1)マーク領域、(2)非マーク領域、(3)高含有率領域」の3種類のうち、何れか1つに分類する。
【0034】
ここで、(1)マーク領域は、十字マークの一部を含んでいるとみなされる画像領域である。探索区間全域においてLan、Lbnの双方、又は、Lanの変化量が小さい結果が得られる場合に、この領域に分類され、その変化量の少なかった部分に十字マークを含んでいるとみなす。
【0035】
また、(2)非マーク領域は、探索区間には十字マークは含まれていないとみなされる画像領域である。含有率が設定値よりも低い時に分類され、その間に検出された閾値を超える画素値はノイズであるとみなす。
【0036】
更に、(3)高含有率領域は、含有率αが高いため、ノイズとしては無視できないが、Lan、Lbnの変化量も大きいため、十字マークが写っているとも断定できない領域である。ここで、図6は、高含有率領域を説明するための図である。高含有率領域は、ノイズが大きい領域の他に、図6(a)に示すような基点が検出できない十字マークの一部(例えば、先端等)や、図6(b)に示すような十字マークの交点付近に探索領域が設定された場合に分類される。
【0037】
<基点の探索と検出手法>
次に、上述した基点の探索と検出手法について図を用いて具体的に説明する。図7は、基点の探索と検出手法を説明するための図である。図7に示すように、まず上述した十字マークの領域検出手法を適用して撮影した画像領域の端に、十字マークが接しているか否かを判断する。
【0038】
ここで、探索時の探索領域が上述したマーク領域に分類された場合、図7(a)に示すように、探索区間[x,(x+D)]の中心軸(図7におけるx+D/2)上のマーク領域(ここでは、所定の閾値を超える輝度値を有する区間)の中心座標を基点とする。
【0039】
また、上述した画像領域の端を含む探索領域が高含有率領域に分類された場合、図7(b)に示すように探索領域を画像の中心方向にシフトし、再び上述した十字マークの領域検出手法を適用する。これにより、図7(b)に示すようにまとまった大きさを持ったノイズの誤検出を防止することができる。
【0040】
これを繰り返し行い、予め設定された回数までに探索領域が高含有率領域からマーク領域に変われば、その領域について上述した図7(a)に示される手法を用いて基点を検出する。また、予め設定された回数までに探索領域が高含有率領域から非マーク領域に変われば、その探索領域よりも内側に十字マークが存在するとみなす。更に、探索領域が予め設定された回数まで連続して高含有率領域に分類された場合、基点の検出は不可能となる。この場合には、基点の検出処理を中止すると共に、例えばその旨のエラーメッセージ等をオペレータ等に通知する等の処理を行うことができる。
【0041】
なお、上述の過程で検出できた基点が3点以下の場合、例えば、図7(c)に示すように、画像領域の上下及び左端が非マーク領域、右端がマーク領域である場合に、非マーク領域−マーク領域間(左右間)、又は非マーク領域−非マーク領域間(上下間)に十字マークの端点が存在することになる。このような場合には、非マーク領域−マーク領域間(左右間)で探索領域の移動による距離の収束を行い、端点の検出を行う。
【0042】
<マーク領域の検出>
ここで、上述した端点の検出には、まず、マーク領域の検出が必要となる。図8は、マーク領域の検出手法を説明するための一例の図である。なお、図8では、マーク領域の検出の一例としてY方向、X方向それぞれにおいて、まず両端に探索領域を設定して探索を行う。
【0043】
例えば、前処理の過程(相関演算やマニュアル操作等によって十字マークを撮影エリア内に含ませるような処理を行う過程)等で、予めアライメントマークの交点の大まかな座標がわかっている又は取得できた場合には、その座標付近にて上述した十字マークの領域検出手法を適用する。
【0044】
また、探索領域が非マーク領域に分類された場合、又は交点の大まかな座標がわからない場合には、図8に示すように探索が終了している画像領域の中心を新たな探索領域とし、上述した十字マークの領域検出手法を適用する。また、探索領域がマーク領域に分類された場合、探索を終了する。更に、探索領域が高含有率領域に分類された場合、上述した図7(b)と同様に、付近の画像領域に対し、上述した十字マークの領域検出手法を適用しマーク領域の検出を行う。
【0045】
<十字マーク端の検出>
次に、検出されたマーク領域からマーク端を検出する例について図を用いて説明する。図9は、十字マーク端の検出の一例を示す図である。十字マーク端を検出する場合、例えば、図9(a)、(b)に示すように画像領域中にあるマーク領域と非マーク領域との距離を収束することで、十字マーク端点を検出する。この場合、マーク領域と非マーク領域の中間付近の画像領域を探索領域に設定して、上述した十字マークの領域検出手法を適用する。
【0046】
ここで、上述したマーク領域と非マーク領域の中間の探索領域がマーク領域に分類された場合、次に、そのマーク領域と前回用いた非マーク領域の中間付近の画像領域を探索領域に設定して探索する。
【0047】
また、上述したマーク領域と非マーク領域の中間の探索領域が非マーク領域に分類された場合、次に、その非マーク領域と前回用いたマーク領域の中間付近の画像領域を探索領域に設定して探索する。
【0048】
具体的には、図9(a)に示すように、非マーク領域とマーク領域がある場合には、その中間の領域が次に探索する領域となり、その領域がマーク領域に分類された場合には、更にその中間の領域がその次に探索する領域となる。
【0049】
また、例えば、図9(b)に示すように、次に探索する領域に高含有率領域を含んでいる場合には、探索領域を非マーク領域側に所定幅分シフトして更にそのソフトした領域を基準に中間の領域がその次に探索する領域となる。
【0050】
ここで、図10は、探索領域が高含有率領域に分類された場合のシフト処理の内容を説明するための図である。図10に示すように、探索領域が高含有率領域に分類された場合、その探索領域から離れる方向(2方向)に探索領域をシフトし、上述した十字マークの領域検出手法を適用する。また、図10(a)、(b)に示すようにシフトした何れか一方の領域にてマーク領域又は非マーク領域を検出した場合、探索領域のシフトを終了し、その領域を基準に上述のマーク領域−非マーク領域間における距離の収束処理を行う。
【0051】
ここで、上述したマーク領域と非マーク領域における距離の収束による十字マーク端点付近の検出を繰り返し行うと、十字マークの両端に探索領域が収束される。マーク領域−非マーク領域間の距離が十分に接近したら、その時点でのマーク領域において、例えば上述した図7(a)に示す処理の同様の処理を行い、基点を検出する。また同様にして他の基点も求め、これにより、合計4点の基点を得ることができる。
【0052】
なお、上述の処理においては、ある1つの領域で2つの基点が検出される場合がある。ここで、図11は、2つの基点が検出される場合の一例を示す図である。図11に示すように、探索領域に2箇所のマーク領域が検出された場合についても上述したような収束処理を行い、非マーク領域とマーク領域との距離が十分に近づいても2箇所のマーク領域が検出される場合は、そこから2箇所の基点を決定する。
【0053】
また、探索の過程でマーク領域が1箇所になった場合、マークが2箇所存在するマーク領域と、1箇所存在するマーク領域間で同様の収束処理を行うことで、2点目の基点を検出する。
【0054】
<線分(直線)によるアライメントマーク交点の取得>
上述した手法により、少なくとも4つの基点を検出した場合、検出した基点のうち2つを用いて、その基点の座標から直線方程式により直線を求め、その直線の交点からアライメントマークの交点を取得する。なお、アライメントマークの交点は、4つの基点で囲まれた座標範囲内に存在する。
【0055】
ここで、図12は、4つの基点が取り得る線分のセットパターンの例を示す図である。図12に示すように、画面10中に表示されるアライメントマーク11に対して各基点21−1〜21−4が得られている場合、線分パターンは、図12(a)における線分22−1,22−2、図12(b)における線分22−3,22−4、図12(c)における線分22−5,22−6の3つのパターンとなる。
【0056】
ここで、マーク交点を算出する際には、図12(a)〜(c)の3通りの線分パターンのうち、4つの基点で囲まれた座標範囲内にある交点を選択することで、マークの交点を決定する(図12(b))。
【0057】
このようにして、アライメントマークを検出することで、アライメントマークの位置検出精度を向上させることができる。また、カメラとアライメントマークとに所定の角度を有する場合、具体的には画像に写る十字マークの交差直線に対して角度が直角でない場合でも十字マークの交点を検出することができる。
【0058】
更に、アライメントマークの全てが画像中に表示されていない状態であっても、例えば十字マークであれば、少なくとも交点の位置が画像中に含まれていることで正確な位置を検出することができる。
【0059】
<本発明における位置検出手法を用いた画像処理装置を有するレーザ加工装置>
次に、上述したアライメントマークの位置検出手法を行う画像処理装置の一例として、画像処理装置を備えたレーザ加工装置について、図を用いて説明する。なお、以下に説明するレーザ加工装置においては、加工対象物に設けたアライメントマークの位置を検出する例について説明するが、本発明についてはこれに限定されず、例えばステージを適切な位置に合わせるためにステージに設けられたレーザ光の断面を所定の形状にするためのマスクに設けたアライメントマークの位置を検出する場合にも適用できる。
【0060】
ここで、本発明におけるレーザ加工装置の機能構成例について、図を用いて説明する。図13は、本発明に適用されるレーザ加工装置の一構成例を示す図である。図13に示すレーザ加工装置30は、レーザ発振器31と、光学系ユニット駆動手段32と、光学系ユニット33と、ガルバノ駆動手段34と、ガルバノミラー35と、ハーフミラー36と、カメラ37と、画像処理装置38と、ステージ39と、表示手段40と、制御手段41と、を有するよう構成されている。
【0061】
レーザ発振器31は、制御手段41から得られる制御信号に基づいて、所定のタイミングで所定の強さのパルスレーザ光を出射する。ここで、本実施形態におけるレーザ光は、例えばCOレーザやエキシマレーザ、YAGレーザ等を用いることができるが、本発明におけるレーザ光の種類についてはこれに限定されず、例えば加工対象物42の材質や厚み、どのような加工(アニール、穴あけ等)を行うか等の各種加工条件等により任意に選択することができる。
【0062】
光学系ユニット駆動手段32は、制御手段41から得られる制御信号に基づいて、光学系ユニット33を通過するレーザ光を所定の位置で集光させるため、光学系ユニット33の位置を光軸方向(Z軸方向)に移動させる。なお、光学系ユニット駆動手段32は、光学系ユニット33内に複数の光学系レンズが存在する場合、それらのレンズのうちから選択される少なくとも1つのレンズについて、位置を移動させることもできる。
【0063】
光学系ユニット33は、光学系ユニット駆動手段32により所定の位置に位置付けられ、光学系ユニット33を通過するレーザ光を所定の位置で集光させる。具体的には、光学系ユニット33は、fθレンズや集光レンズ等の光学系レンズを少なくとも1つ有しており、レーザ発振器31からのレーザ光を集光(フォーカス)し、ガラス基板や樹脂基板等の加工対象物42の照射面に対して所定の結像を行う。
【0064】
ガルバノ駆動手段34は、制御手段41からの制御信号に基づいて、光学系ユニット33からのレーザ光の光軸に対して所定の方向に傾きを有するミラーの一例であるガルバノミラー35を所定の位置に移動及び整定させ、ガルバノミラー35による反射により方向を変えたレーザ光を加工対象物42の所定の加工位置に照射させるためのミラー駆動手段である。つまり、ガルバノ駆動手段34は、ガルバノミラー35を所定のタイミングで所定の位置に移動させることで、加工対象物42の加工面の水平方向(XY方向)に対するレーザ光の照射位置を変更し、加工対象物の所定の加工位置に走査しながらレーザ光を照射して、アニール処理等のレーザ加工等を行うことができる。なお、ガルバノ駆動手段34及びガルバノミラー35は、X方向の走査用と、Y方向の走査用との2つの機構を設けていてもよい。
【0065】
また、ハーフミラー36は、撮像手段としてのカメラ37によりレーザ発振器31から出射されるレーザ光の光軸上から加工対象物42及びステージ39の表面を撮影させるためのミラーである。つまり、ハーミラー36は、レーザ発振器31からのレーザ光は全透過し、加工対象物42及びステージ39の表面をカメラ37に撮像させる。
【0066】
カメラ37は、ハーフミラー36から加工対象物42及びステージ39の表面を撮影し、加工対象物42に存在する少なくとも1つの加工対象物用アライメントマーク43及び/又は加工対象物42を保持するステージ39に存在する少なくとも1つのステージ用アライメントマーク44を取得する。なお、加工対象物用アライメントマーク43及びステージ用アライメントマーク44の位置や数、形状等については特に制限されるものではない。また、加工対象物用アライメントマーク43及びステージ用アライメントマーク44の形状は、同一でも異なっていてもよい。
【0067】
なお、レーザ発振器31から出射されるレーザ光の光軸は、ガルバノ駆動手段34によるレーザ光の振りを効率的に行うため、通常加工対象物42及びステージ39の中心に合わせて位置付けられている。そのため、レーザ発振器31から出射されるレーザ光の光軸と同じ位置からの画像を取得することで、加工対象物42及びステージ39の中心からの表面画像を容易に取得することができる。また、カメラ37は、撮影した画像を画像処理装置38に出力する。
【0068】
画像処理装置38は、カメラ37から取得した画像から上述したアライメントマークの位置検出方法により加工対象物用アライメントマーク43及び/又はステージ用アライメントマーク44の位置(交点)情報を取得する。また、画像処理装置38は、取得した加工対象物用アライメントマーク43やステージ用アライメントマーク44の位置情報を制御手段41に出力する。
【0069】
ステージ39は、例えば真空吸着等により加工対象物42を所定の位置で保持する。また、表示手段40は、レーザ加工における加工状態や加工結果、上述したアライメントマークの位置検出に関する検出結果や検出処理の終了又は中止した場合に制御手段41により生成される各種メッセージ等を画像に表示する。
【0070】
更に、表示手段40は、例えばレーザ加工等における初期設定や、加工状態、加工結果等を表示させることができる。これにより、オペレータ等のユーザは、アライメントマークの位置を表示画面から容易に取得することができる。また、加工状態や加工結果を画面から容易に把握することができる。
【0071】
制御手段41は、レーザ発振器31、光学系ユニット駆動手段32、ガルバノ駆動手段34における駆動の制御を行う。具体的には、制御手段41は、画像処理装置38から得られるアライメントマークの位置検出結果等に基づいて、ガルバノ駆動手段34によりガルバノミラー35を移動させて、加工対象物42を所定の位置に移動させる。
【0072】
また、制御手段41は、光学系ユニット駆動手段32の光軸(Z軸)方向の調整を行い、光学系ユニット33による加工対象物42への焦点合わせを行う。また、制御手段41は、レーザ発振器31におけるレーザ光の出射タイミングや加工時におけるガルバノミラー35の反射面を所定方向に移動させるためのガルバノ駆動手段36の駆動タイミングの制御を行う。
【0073】
また、制御手段41は、カメラ37による画像の取得、画像処理装置38によるアライメントマークの位置検出、検出結果に伴う位置補正を加工対象物が変更される毎に行うことができ、更に、ある工程間の合間や一定の周期、メンテナンス時、又は装置の運転準備中等に行うこともできる。
【0074】
また、制御手段41は、予め設定された加工条件に対応させて光学系ユニット33、ガルバノミラー35、及び加工対象物42を所定位置に位置付け、その後所定の強さのレーザ光を照射させる。これにより、高精度に加工対象物42を位置付けられることができるため、高精度なレーザ加工を実現することができる。
【0075】
上述したように本発明によれば、アライメントマークの位置検出精度を向上させることができる。これにより、ステージや加工対象物、マスク等の対象物の正確な位置を把握することができるため、高精度なレーザ加工を実現することができる。具体的には、撮影された画像に含まれるアライメントマークの一部から基点を検出し、検出した基点からアライメントマークを探索することで、従来のパターンマッチングやプロジェクション法よりも高精度にアライメントの正確な位置を把握することができる。
【0076】
なお、上述したアライメントマークの検出手法は、レーザ加工装置に限定されず、例えば露光装置等の他の位置決め機構の分野に広く適用することができる。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】従来技術であるプロジェクション法を説明するための一例の図である。
【図2】プロジェクション法が適用できない場合を説明するための一例の図である。
【図3】本発明におけるアライメントマークの基点を説明するための図である。
【図4】十字マークの交点検出手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】十字マークの領域検出手法を説明するための一例の図である。
【図6】高含有率領域を説明するための図である。
【図7】基点の探索と検出手法を説明するための図である。
【図8】マーク領域の検出手法を説明するための一例の図である。
【図9】十字マーク端の検出の一例を示す図である。
【図10】探索領域が高含有率領域に分類された場合のシフト処理の内容を説明するための図である。
【図11】2つの基点が検出される場合の一例を示す図である。
【図12】4つの基点が取り得る線分のセットパターンの例を示す図である。
【図13】本発明に適用されるレーザ加工装置の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10 画像
11 アライメントマーク
12,21 基点
13 直線
22 線分
30 レーザ加工装置
31 レーザ発振器
32 光学系ユニット駆動手段
33 光学系ユニット
34 ガルバノ駆動手段
35 ガルバノミラー
36 ハーフミラー
37 カメラ
38 画像処理装置
39 ステージ
40 表示手段
41 制御手段
42 加工対象物
43 加工対象物用アライメントマーク
44 ステージ用アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置合わせを行う対象物を撮影した画像から前記対象物に存在する少なくとも1つのアライメントマークを検出するアライメントマークの位置検出方法において、
前記画像から予め設定されたアライメントマークを取得するマーク取得ステップと、
前記マーク取得ステップにより取得されたアライメントマークから少なくとも4つの基点となる点を検出する基点検出ステップと、
前記基点検出ステップにより検出された基点から複数の線分を取得する線分取得ステップと、
前記線分取得ステップにより得られる線分の交点から前記アライメントマークの位置を検出する位置検出ステップとを有することを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
前記基点検出ステップは、
前記アライメントマークを構成する領域中に存在する点であり、基点同士が所定距離以上離れており、更に3点以上が同一直線上に配置されていない点を、基点として検出することを特徴とする請求項1に記載の位置検出方法。
【請求項3】
前記基点検出ステップは、
前記アライメントマークが十字マークであり、前記画像の撮影領域の端と前記アライメントマークとの接触部分が存在する場合、前記接触部分から基点を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出方法。
【請求項4】
前記基点検出ステップは、
少なくとも4つの基点が検出されていない場合、予め設定された探索領域により前記アライメントマークを構成する直線の一部を探索し、探索した結果から基点を検出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の位置検出方法。
【請求項5】
前記基点検出ステップは、
同一直線上に3点以上の基点が検出された場合は、前記両端の点を基点として残し、それ以外の点を削除することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の位置検出方法。
【請求項6】
前記マーク取得ステップは、
前記画像中から前記アライメントマークを探索するために設定される探索領域をマーク領域、非マーク領域、高含有率領域の3種類のうち、何れか1つに分類することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の位置検出方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れか1項に記載のアライメントマークの位置検出方法により、位置決めされた加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工装置において、
光学系ユニットを前記レーザ光に対して光軸方向に移動して、前記加工対象物に結像されたレーザ光を照射させる光学系ユニット駆動手段と、
前記光学系ユニットからのレーザ光をミラーの移動により走査させて前記加工対象物の所定位置に照射させるミラー駆動手段と、
前記加工対象物及び/又は前記加工対象物を保持したステージの表面を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に対して前記アライメントマークの位置検出を行う画像処理装置と、
前記画像処理装置により得られる前記アライメントマークの位置検出結果に基づいて、前記ミラー駆動手段により走査させるレーザ光の位置を調整するための制御手段とを有することを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−241255(P2008−241255A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77756(P2007−77756)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】