説明

アリールグアニジンF1F0−ATPアーゼ阻害剤およびそれと関連する方法

本発明は、たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤など一連の、アリールグアニジンを用いたF−ATPアーゼ阻害剤、その発見方法、およびある種の障害を処置する治療薬としてのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
関連出願
本出願は、その内容を参照によって本明細書に援用する、2008年9月11日に出願された米国仮特許出願第61/096,184号明細書に対する優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、F−ATPアーゼ(たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼ)の阻害剤、その発見方法、およびその治療用途に関する。特に、本発明は、F−ATPアーゼを阻害するアリールグアニジン化合物、および多くの状態を処置する治療薬としてのグアニジン化合物の使用方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
多細胞生物は細胞数を正確に制御している。このホメオスタシスは、細胞増殖と細胞死とのバランスにより達成される。細胞死は、壊死により、あるいは、アポトーシスと呼ばれる自殺型の細胞死によりほぼすべての種類の脊椎動物細胞で起こる。アポトーシスは、遺伝的にプログラムされた共通の死機構に関与する様々な細胞外および細胞内シグナルによって引き起こされる。
【0004】
多細胞生物はアポトーシスを用いて、損傷した細胞または不必要な細胞に生体のために自らを破壊するように命令する。このため、アポトーシスの過程を制御することは正常な発生にとって非常に重要であり、たとえば、胎仔の手および足の指の発生においては、脳内の神経シナプスの形成と同様、過剰に相互連結した組織の除去をアポトーシスにより制御する必要がある。同様に、アポトーシスの制御は、月経の開始時の子宮の内壁(子宮内膜)の剥脱にも関わっている。アポトーシスは組織の形成および正常な細胞の維持に重要な役割を果たしている一方で、生体の健康状態を脅かす細胞および侵入者(たとえば、ウイルス)の主要な防御要素でもある。
【0005】
当然のことながら、多くの疾患はアポトーシス細胞死の調節不全と関連している。実験モデルから、アポトーシスの異常な調節と、種々の腫瘍性疾患、自己免疫疾患およびウイルス性疾患の病原性(pathagenicity)との因果関係が確認されている。たとえば、細胞性免疫応答において、エフェクター細胞(たとえば、細胞傷害性Tリンパ球「CTL」)は、ウイルス感染細胞にアポトーシスを誘導することにより感染細胞を破壊する。生体はその後、エフェクター細胞が必要でなくなると、アポトーシスの過程を利用してエフェクター細胞を破壊する。自己免疫は通常、CTLが相互に、さらにはそれ自身にアポトーシスを誘導することにより抑制される。この過程の欠陥は、紅斑性狼瘡および関節リウマチなど様々な免疫疾患と関連している。
【0006】
また、多細胞生物はアポトーシスを用いて、損傷した核酸(たとえば、DNA)を持つ細胞に癌性になる前に自らを破壊するように命令する。癌の原因となるウイルスによっては、正常なアポトーシスの過程が止まるように感染(形質転換)細胞を再プログラムすることによりこの保護に打ち勝つものもある。たとえば、ヒトパピローマウイルス(HPV)の中には、p53アポトーシスプロモーターを不活化するタンパク質(E6)を産生することによりアポトーシスによる形質転換細胞の除去を抑えて子宮頸癌の原因に関係すると考えられているものもある。同様に、単核球症およびバーキットリンパ腫の病原体であるエプスタインバーウイルス(EBV)は、正常なアポトーシスによる異常な細胞の除去を妨げるタンパク質を産生するように感染細胞を再プログラムして、癌性細胞が増殖し生体全体に広がることができるようにする。
【0007】
さらに他のウイルスは、直接癌の発症に至ることがないが、細胞のアポトーシス機構を破壊的に操作する。たとえば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した個体における免疫系の破壊は、感染CD4T細胞(100,000個に約1個)を介して進行し、未感染の姉妹細胞にアポトーシスを命令すると考えられる。
【0008】
また、非ウイルス性の手段によって起こる癌には、アポトーシスによる破壊を免れるメカニズムが発生するものもある。たとえば、メラノーマ細胞は、Apaf−1をコードする遺伝子の発現を阻害することによりアポトーシスを回避する。他の癌細胞、特に肺および結腸癌細胞は、CTLによる異常な細胞の排除の開始を阻害する高レベルの可溶性のデコイ分子を分泌する。アポトーシス機構の不完全な調節も種々の変性状態および血管疾患に関係していると考えられている。
【0009】
アポトーシスの過程および細胞機構の調節制御が多細胞生物の生存にとって重要であることは明らかである。典型的には、アポトーシスの実行を命令された細胞内で起こる生化学的変化は、秩序正しく進行する。しかしながら、上述のように、アポトーシスの調節の欠陥は、生体に重篤な有害作用を引き起こす恐れがある。
【0010】
異常な細胞(たとえば、癌細胞)のアポトーシス機構の調節を制御および修復するための様々な試みがなされている。たとえば、異常な細胞が増殖する前にこれを破壊する細胞傷害性薬物を開発すべく、多くの研究がなされている。このため、細胞傷害性薬物はヒトと動物との健康に広く役立っており、ほぼすべての形態の癌ならびに紅斑性狼瘡および関節リウマチのような過剰増殖による免疫障害の第一選択治療剤となっている。
【0011】
臨床で用いられる多くの細胞傷害性薬物は、DNAを損傷する(たとえば、シス−ジアミノジクロロプラタニウム(II)はDNAに架橋結合し、ブレオマイシンは鎖の切断を誘導する)ことによりその効果を発揮する。こうした核の損傷の結果がp53系のような細胞因子により認識されると、損傷細胞の死を引き起こすアポトーシスカスケードが開始される。
【0012】
しかしながら、既存の細胞障害性化学療法剤には大きな問題がある。たとえば、知られている細胞傷害性薬物の多くは、健康な細胞と疾患細胞とをほとんど識別できない。この特異性の欠如により重度の副作用が起こることも珍しくなく、その副作用により有効性が限定され、および/または、早期死亡に至る恐れがある。さらに、既存の多くの細胞傷害性薬物は長期間投与すると、耐性遺伝子(たとえば、bcl−2ファミリーまたは多剤耐性(MDR)タンパク質)が発現し、それ以上投与しても効果が低下するか、あるいは、無駄になるかいずれかになる。細胞傷害性薬物によっては、p53および関連するタンパク質に突然変異を引き起こすものもある。これらの事項を踏まえると、理想的な細胞傷害性薬物は、疾患細胞のみを死滅させ、化学療法耐性の影響を受けにくいものでなければならない。
【0013】
疾患細胞を選択的に死滅させるか、またはその増殖を阻止する1つの戦略は、疾患細胞に発現した分子を選択的に認識する薬剤を開発することである。このため、効果的な細胞傷害性化学療法剤は、疾患を示唆する分子を認識し、(直接的あるいは間接的に)疾患細胞の死を誘導すると考えられる。一部の種類の癌細胞のマーカーについては同定され、治療用抗体および小分子の標的となっているとはいえ、大部分の癌では診断上および治療上利用できる特有の特色が知られていない。さらに、ループスのような疾患の場合、薬剤開発のための特異的な分子標的も同定されていない。
【0014】
アポトーシスの過程の制御の欠陥を特徴とする疾患および状態(たとえば、ウイルス感染症、過剰増殖による自己免疫障害、慢性炎症性状態および癌)に罹患している被検体のアポトーシスの過程を調節する改良された組成物および方法が求められている。
【0015】
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、F−ATPアーゼ(たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼ)の阻害剤、F−ATPアーゼの阻害剤を発見する方法、およびそうした阻害剤を用いて種々の状態を処置する方法を提供する。
【0016】
一態様では、本発明は、下記式Iで表される化合物であって:
【0017】
【化1】

【0018】
その塩、エステルおよびプロドラッグ(これらの変化体(variables)については発明を実施するための形態で定義される)を含む、一連の化合物を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、下記式IIで表される化合物であって:
【0020】
【化2】

【0021】
その塩、エステルおよびプロドラッグ(これらの変化体(variables)については発明を実施するための形態で定義される)を含む、一連の化合物を提供する。
【0022】
前述の化合物は、本明細書に記載の化合物および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在してもよい。
【0023】
別の態様では、本発明は、医学的状態に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載の1種または複数種のグアニジンを用いた化合物を患者投与することを含む、方法を提供する。本明細書に記載のグアニジン化合物を用いて多くの疾患を処置することができる。たとえば、本明細書に記載の化合物を用いて、細胞または組織内の壊死および/またはアポトーシス過程の調節不全を特徴とする疾患、異常な細胞増殖および/または過剰増殖などを特徴とする疾患、またはループス、関節リウマチ、乾癬、移植片対宿主病、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、循環器疾患、骨髄腫、リンパ腫、癌および細菌感染症を処置することができる。
【0024】
ある種の実施形態では、本発明の組成物を用いて免疫性/慢性炎症性状態(たとえば、乾癬、自己免疫障害、臓器移植拒絶反応、上皮過形成、クローン病、炎症性腸疾患および多発性硬化症)を処置する。なおさらなる実施形態では、本発明の組成物を狭窄症治療と併用して、傷害された(たとえば、閉塞された)血管を処置する。いくつかの実施形態では、グアニジン化合物を含む組成物を、F−ATPアーゼに作用する所望の効果を最大化する条件(たとえば、時期、用量、他の薬との併用投与、投与モード、被検体の選択、標的化剤の使用など)下で投与する。いくつかの実施形態では、本被検体にBz−423または関連する化合物(たとえば、米国特許第7,144,880号明細書および同第7,125,866号明細書、米国特許出願第11/586,097号明細書、同第11/585,492号明細書、同第11/445,010号明細書、同第11/324,419号明細書、同第11/176,719号明細書、同第11/110,228号明細書、同第10/935,333号明細書、同第10/886,450号明細書、同第10/795,535号明細書、同第10/634,114号明細書、同第10/427,211号明細書、同第10/217,878号明細書および同第09/767,283号明細書ならびに米国仮特許出願第60/878,519号明細書、同第60/812,270号明細書、同第60/802,394号明細書、同第60/732,045号明細書、同第60/730,711号明細書、同第60/704,102号明細書、同第60/686,348号明細書、同第60/641,040号明細書、同第60/607,599号明細書および同第60/565,788号明細書を参照されたい)をさらに投与する。
【0025】
別の態様では、本発明は、ループス、関節リウマチ、乾癬、移植片対宿主病、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、循環器疾患、骨髄腫、リンパ腫、癌および細菌感染症からなる群から選択される障害を処置する方法であって、治療有効量の本明細書に記載するような式IまたはIIの化合物を、それを必要としている患者に投与して障害の症状を軽減させることを含む、方法を提供する。
【0026】
ある種の実施形態では、本化合物は上述の式Iに包含される。他のある種の実施形態では、本化合物は表I〜Vに記載される化合物の1つである。ある種の実施形態では、障害はクローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、移植片対宿主病、ループス、関節リウマチまたは乾癬である。他のある種の実施形態では、障害は骨髄腫、リンパ腫、循環器疾患または癌である。他のある種の実施形態では、障害は細菌感染症である。
【0027】
別の態様では、本発明は、F−ATPアーゼ、たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼを阻害する方法を提供する。この方法は、F−ATPアーゼを本明細書に記載するような式IまたはIIの化合物に曝露することを含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、F−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)(i)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含むサンプル、(ii)本明細書に記載するような式IまたはIIのグアニジン化合物を含む第1の組成物、および(iii)候補F−ATPアーゼ阻害剤を含む第2の組成物を得るステップ;(b)サンプルを第1の組成物および第2の組成物と接触させるステップ;(c)グアニジン化合物および候補F−ATPアーゼ阻害剤のミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を測定するステップ;(d)グアニジン化合物および候補F−ATPアーゼ阻害剤のミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を比較するステップ;および(e)候補F−ATPアーゼ阻害剤の結合親和性およびサンプルの細胞生存率を評価することにより候補F−ATPアーゼ阻害剤をF−ATPアーゼ阻害剤として同定するステップを含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)(i)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含む第1および第2のサンプル、(ii)本明細書に記載するような式IまたはIIのグアニジン化合物を含む第1の組成物、および(iii)候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を含む第2の組成物を得るステップ;(b)第1のサンプルを第1の組成物と接触させるステップ;(c)第2のサンプルを第2の組成物と接触させるステップ;(d)第1および第2のサンプルのミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定するステップ;(e)第1および第2のサンプルのミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を比較するステップ;および(f)ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を評価することにより候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤をミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤として同定するステップを含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)本明細書に記載するような式IまたはIIで表される1種または複数種の化合物を得るステップ;(b)式IまたはIIの1種または複数種の化合物の化学構造を改変して候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤のライブラリーを作成するステップ;(c)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含むサンプルにライブラリーを曝露するステップ;および(d)それぞれのサンプルにおいてミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害する候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤をミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤として同定するステップを含む。
【0031】
定義
本発明を理解しやすくするため、以下にいくつかの用語および語句を定義する。
【0032】
「化学部分」という語は、少なくとも1個の炭素原子を含む任意の化学化合物をいう。化学部分の例として、芳香族化学部分、硫黄を含む化学部分、窒素、酸素を含む化学部分、親水性化学部分、および疎水性化学部分があるが、これに限定されるものではない。
【0033】
本明細書で使用する場合、「グアニジン」という用語は、薬学的に許容される塩の形を含む、以下のコア構造を持つ化合物をいう:
【0034】
【化3】

【0035】
「アルキル」という語は当該技術分野で知られており、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基などの飽和脂肪族基が挙げられる。ある種の実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルはその骨格に約30個以下の炭素原子(たとえば、直鎖C〜C30、分枝鎖C〜C30)を持つか、あるいは、約20個以下の炭素原子を持つ。同様に、シクロアルキルはその環構造に約3〜約10の炭素原子を持つか、あるいは、その環構造に約5、6または7個の炭素を持つ。
【0036】
「ハロアルキル」という語は、少なくとも1個のハロゲンで置換されているアルキル基をいう。たとえば、−CHF、−CHF、−CF、−CHCF、−CFCFおよび同種のもの。
【0037】
「ヒドロキシアルキル」という語は、−OH基で置換されているアルキル基をいう。たとえば、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHOH、−CHC(H)(OH)CH、−CHCHCHOHおよび同種のもの。
【0038】
「アラルキル」という語は、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0039】
「ヘテロアラルキル」という語は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0040】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は当該技術分野で知られており、長さが上述のアルキルに類似しており、上述のアルキルへの置換が可能であるが、それぞれ少なくとも1個の二重結合または三重結合を含む不飽和脂肪族基をいう。
【0041】
「アリール」という語は当該技術分野で知られており、炭素環式芳香族基をいう。代表的なアリール基として、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよび同種のものがある。芳香環は、1つまたは複数の環位置で、たとえば、ハロゲン部分、アジド部分、アルキル部分、アラルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、シクロアルキル部分、ヒドロキシル部分、アルコキシル部分、アミノ部分、ニトロ部分、スルフヒドリル部分、イミノ部分、アミド部分、カルボン酸、−C(O)アルキル部分、−COアルキル部分、カルボニル部分、カルボキシル部分、アルキルチオ部分、スルホニル部分、スルホンアミド部分、スルホンアミド部分、ケトン部分、アルデヒド部分、エステル部分、ヘテロシクリル部分、アリール部分またはヘテロアリール部分、−CF、−CN、または同種のもので置換されていてもよい。また、「アリール」という語は、隣接する2つの環で2個以上の炭素が共通する2つ以上の炭素環(環は「縮合環」である)を持つ多環系も含み、環の少なくとも1つは芳香族であり、たとえば、他の環状環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよび/またはアリールであってもよい。「ハロアリール」という語は、少なくとも1個のハロゲンで置換されているアリール基をいう。
【0042】
「ヘテロアリール」は当該技術分野で知られており、少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む芳香族基をいう。場合によっては、ヘテロアリール基は、1、2、3または4個の環ヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基の代表的な例としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニルおよびピリミジニルならびに同種のものが挙げられる。ヘテロアリール環は、1つまたは複数の環位置で、たとえば、ハロゲン部分、アジド部分、アルキル部分、アラルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、シクロアルキル部分、ヒドロキシル部分、アルコキシル部分、アミノ部分、ニトロ部分、スルフヒドリル部分、イミノ部分、アミド部分、カルボン酸部分、−C(O)アルキル部分、−COアルキル部分、カルボニル部分、カルボキシル部分、アルキルチオ部分、スルホニル部分、スルホンアミド部分、スルホンアミド部分、ケトン部分、アルデヒド部分、エステル部分、ヘテロシクリル部分、アリール部分またはヘテロアリール部分、−CF、−CN、または同種のもので置換されていてもよい。また、「ヘテロアリール」という語は、隣接する2つの環で2個以上の炭素が共通する2つ以上の環(環は「縮合環」である)を持つ多環系も含み、環の少なくとも1つは複素環式芳香族化合物であり、たとえば、他の環状環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよび/またはアリールであってもよい。「ハロヘテロアリール」という語は、少なくとも1個のハロゲンで置換されているヘテロアリール基をいう。
【0043】
オルト、メタおよびパラという用語は当該技術分野で知られており、それぞれ1,2−、1,3−および1,4−二置換ベンゼンをいう。たとえば、1,2−ジメチルベンゼンおよびオルト−ジメチルベンゼンという名称は同義である。
【0044】
本明細書で使用する場合、「置換アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香環からなる芳香環または縮合芳香環系をいい、環炭素上の水素原子の少なくとも1個が、たとえば、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、脂環式または置換脂環式)で置換されている。このような例として、ヒドロキシフェニルおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本明細書で使用する場合、「脂環式」という用語は、縮合環系を含む脂肪族構造をいう。このような例として、デカリンおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本明細書で使用する場合、「置換脂環式」という用語は、脂肪族水素原子の少なくとも1個がハロゲン、ニトロ、チオ、アミノ、ヒドロキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、脂環式または置換脂環式)で置換されている脂環式構造をいう。このような例として、1−クロロデカリル、ビシクロ−ヘプタン、オクタンおよびノナン(たとえば、ノンルボルニル(nonrbornyl))および同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0047】
本明細書で使用する場合、「複素環」という用語は、たとえば、1個または複数個のヘテロ原子を含む芳香環または非芳香環を表す。ヘテロ原子は、相互に同一でも、異なっていてもよい。ヘテル原子の例として、窒素、酸素および硫黄があるが、これに限定されるものではない。芳香族および非芳香族の複素環式環は、当該技術分野においてよく知られている。芳香族の複素環式環の非限定的な例の一部として、ピリジン、ピリミジン、インドール、プリン、キノリンおよびイソキノリンがある。非芳香族の複素環化合物の非限定的な例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリジンおよびピラゾリジンがある。酸素を含む複素環式環の例として、フラン、オキシラン、2H−ピラン、4H−ピラン、2H−クロメンおよびベンゾフランがあるが、これに限定されるものではない。硫黄を含む複素環式環の例として、チオフェン、ベンゾチオフェンおよびパラチアジンがあるが、これに限定されるものではない。窒素を含む環の例として、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、トリアゾールおよびトリアジンがあるが、これに限定されるものではない。2種類のヘテロ原子を含む複素環式環の例として、フェノチアジン、モルホリン、パラチアジン、オキサジン、オキサゾール、チアジンおよびチアゾールがあるが、これに限定されるものではない。複素環式環は任意選択として、1つまたは複数の環位置で、たとえば、ハロゲン部分、アジド部分、アルキル部分、アラルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、シクロアルキル部分、ヒドロキシル部分、アルコキシル部分、アミノ部分、ニトロ部分、スルフヒドリル部分、イミノ部分、アミド部分、カルボン酸部分、−C(O)アルキル部分、−COアルキル部分、カルボニル部分、カルボキシル部分、アルキルチオ部分、スルホニル部分、スルホンアミド部分、スルホンアミド部分、ケトン部分、アルデヒド部分、エステル部分、ヘテロシクリル部分、アリール部分またはヘテロアリール部分、−CF、−CN、または同種のものでさらに置換されている。
【0048】
化合物の「誘導体」という語は、本明細書で使用する場合、化合物の官能基(たとえば、芳香環)、あるいは、グアニジン骨格上のいずれかで起こる化学修飾を施された化合物をいう。こうした誘導体としては、アルコール含有化合物のエステル、カルボキシ含有化合物のエステル、アミン含有化合物のアミド、カルボキシ含有化合物のアミド、アミノ含有化合物のイミン、アルデヒド含有化合物のアセタール、カルボニル含有化合物のケタールおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0049】
「IC40」という語は当該技術分野で知られており、その標的を40%阻害するのに必要な化合物の濃度をいう。
【0050】
「EC50」という語は当該技術分野で知られており、その最大効果の50%が観察される化合物の濃度をいう。
【0051】
本明細書で使用する場合、「被検体」および「患者」という用語は、本発明の方法による処置の対象となる生体をいう。こうした生体としては、好ましくは哺乳動物(たとえば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよび同種のもの)、最も好ましくはヒトが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明の文脈では、「被検体」および「患者」という用語は一般に、アポトーシスの過程の調節不全を特徴とする状態の処置(たとえば、本発明の化合物および任意選択として1種または複数種の他の薬の投与)を受けるか、あるいは、受けている個体をいう。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法の「標的細胞」は、以下に限定されるものではないが、リンパ系細胞または癌細胞をいう。リンパ系細胞としては、B細胞、T細胞および顆粒球がある。顆粒球(granulocyctes)は、好酸球およびマクロファージを含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は、連続培養した細胞または患者の生検標本から得られた非培養(uncultered)細胞である。
【0053】
1つの特定の実施形態では、標的細胞は病的成長または増殖を示す。本明細書で使用する場合、「病的に増殖するまたは成長する細胞」という用語は、動物において正常な成長の通常制御に支配されずに増殖する、局在した細胞群をいう。
【0054】
本明細書で使用する場合、「不活性な標的細胞」という用語は、G期にある細胞、または、刺激を与えていない細胞をいう。
【0055】
本明細書で使用する場合、「活性化標的リンパ系細胞」という用語は、シグナル伝達カスケードを始動させる適切な刺激を受けたリンパ球細胞、あるいは、G期にないリンパ系細胞をいう。活性化リンパ系細胞は増殖するか、活性化による細胞死が起きるか、あるいは、1種または複数種の細胞毒、サイトカインまたは細胞型を特徴とする他の関連する膜結合タンパク質(たとえば、CD8またはCD4)を産生する場合がある。活性化リンパ系細胞はさらに、表面に特定の抗原を提示する任意の標的細胞を認識し、結合した後にエフェクター分子を放出する場合もある。
【0056】
本明細書で使用する場合、「活性化癌細胞」という用語は、適切な刺激を受けてシグナル伝達を始動させる癌細胞をいう。活性化癌細胞はG期にあってもなくてもよい。
【0057】
活性化剤とは、標的細胞との相互作用の際にシグナル伝達カスケードを始動する刺激物である。活性化刺激物の例として、小分子、放射エネルギー、および細胞活性化細胞表面受容体(cell activation cell surface receptor)に結合する分子があるが、これに限定されるものではない。活性化刺激物により誘発される反応は、特に細胞内Ca2+、スーパーオキシドまたはヒドロキシルラジカルのレベルの変化;キナーゼまたはホスファターゼのような酵素の活性;あるいは細胞のエネルギー状態を特徴とする場合がある。癌細胞の場合、活性化剤は、トランスフォーミング癌遺伝子も含む。
【0058】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、有益な結果または所望の結果が得られるのに十分な化合物(たとえば、本発明の化合物)の量をいう。有効量については1回もしくは複数回の投与、塗布で、または単一もしくは複数の用量で投与してもよく、特定の製剤または投与経路に限定することを意図するものではない。
【0059】
本明細書で使用する場合、「細胞死の過程の調節不全」という用語は、細胞が壊死あるいはアポトーシスにより細胞死する能力(たとえば、素因)における任意の異常をいう。細胞死の調節不全は、たとえば、免疫障害(たとえば、全身性紅斑性狼瘡、自己免疫障害、関節リウマチ、移植片対宿主病、重症筋無力症、シェーグレン症候群など)、慢性炎症性状態(たとえば、乾癬、喘息およびクローン病)、過剰増殖性障害(たとえば、腫瘍、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫など)、ウイルス感染症(たとえば、疱疹、パピローマ、HIV)、および変形性関節症およびアテローム性動脈硬化症のような他の状態など、様々な状態と関連するか、あるいは、それにより引き起こされる。
【0060】
調節不全がウイルス感染症により引き起こされるか、それに関連する場合、調節不全が起こるか、あるいは観察される時点ではそのウイルス感染症が検出可能であることもあれば、そうでない場合もあることに留意されたい。すなわち、ウイルスによる調節不全は、ウイルス感染症の症状が消失した後でも起こる恐れがある。
【0061】
本明細書で使用する場合、「過剰増殖性障害」とは、動物において増殖する局在した細胞群が正常な成長の通常の制御に支配されない任意の状態をいう。過剰増殖性障害の例として、腫瘍、新生物、リンパ腫および同種のものがある。新生物は、浸潤または転移が起きていない場合、良性とされ、そのどちらかが起きている場合、悪性とされる。転移細胞または転移組織とは、細胞が周辺の身体構造を浸潤し破壊できることを意味する。過形成は、構造または機能は大きく変化することなく、組織または臓器内の細胞数が増加する細胞増殖の一形態である。化成は、ある種の完全に分化した細胞が別の種の分化した細胞と置き換わる、制御された細胞成長の一形態である。化成は、上皮細胞でも、結合組織細胞でも起こることがある。典型的な化成としては、やや無秩序な上皮化成がある。
【0062】
活性化リンパ系細胞の病的成長が起こると、免疫障害または慢性炎症性状態が生じることが多い。本明細書で使用する場合、「免疫障害」という用語は、生体が生体自身の分子、細胞または組織を認識する抗体または免疫細胞を産生する任意の状態をいう。免疫障害の非限定的な例として、自己免疫障害、免疫溶血性貧血、免疫肝炎、ベルガー病またはIgA腎症、セリアックスプルー、慢性疲労症候群、クローン病、皮膚筋炎、線維筋痛症、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性紅斑性狼瘡、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、白斑、結核および同種のものが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「慢性炎症性状態」という用語は、生体の免疫細胞が活性化されている状態をいう。こうした状態は病理学的続発症を伴う持続性の炎症反応を特徴とする。この状態は、単核細胞の浸潤、線維芽細胞および微小血管の増殖、結合組織の増加、および組織の破壊を特徴とする。慢性炎症性疾患の例として、クローン病、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、多発性硬化症および喘息があるが、これに限定されるものではない。関節リウマチおよび全身性紅斑性狼瘡などの免疫疾患も、慢性炎症性状態に至る恐れがある。
【0064】
本明細書で使用する場合、「併用投与」という用語は、少なくとも2種類の薬(たとえば、本発明の化合物)または治療剤を被検体に投与することをいう。いくつかの実施形態では、2種以上の薬/治療剤の併用投与は同時である。他の実施形態では、第1の薬/治療剤を第2の薬/治療剤の前に投与する。当業者であれば、使用される種々の薬/治療剤の製剤および/または投与経路は異なってもよいことを理解するであろう。併用投与に適切な投与量については当業者により容易に判定できる。いくつかの実施形態では、薬/治療剤を併用投与する場合、単独投与に適切である量よりも少ない投与量でそれぞれの薬/治療剤を投与する。したがって、併用投与は、薬/治療剤の併用投与により、有害である可能性が分かっている(たとえば、毒性)薬の要求される投与量が低下する実施形態において特に望ましい。
【0065】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、インビボまたはエキソビボでの診断または治療用途において組成物を特に好適なものにする、有効成分と不活性または活性なキャリアとの組み合わせをいう。
【0066】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(たとえば、油/水または水/油エマルジョン)および種々のタイプの湿潤剤などの標準的な薬学的キャリアのいずれかをいう。この組成物はまた、安定剤および防腐剤を含んでいてもよい。キャリアの例として、安定剤およびアジュバントがある。(たとえば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照されたい)。
【0067】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、被検体への投与時に本発明の化合物またはその活性代謝物または残基(residue)を与えることができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(たとえば、酸または塩基)をいう。当業者には周知のように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から得ることができる。酸の例として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸および同種のものがあるが、これに限定されるものではない。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩を得るうえで中間体として有用な塩の調製に使用してもよい。
【0068】
塩基の例として、アルカリ金属(たとえば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(たとえば、マグネシウム)、水酸化物、アンモニア、および式NW(式中、WはC1〜4アルキル)の化合物および同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0069】
塩の例として、アセタート、アジパート、アルギナート、アスパルタート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート、ビスルファート、ブチラート、シトラート、カンホラート、ショウノウスルホナート、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコナート、ドデシルスルファート、エタンスルホナート、フマラート、フルコヘプタノアート、グリセロホスファート、ヘミスルファート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2−ヒドロキシエタンスルホナート、ラクタート、マレアート、メタンスルホナート、2−ナフタレンスルホナート、ニコチナート、オキサラート、パルモアート、ペクチナート、ペルスルファート、フェニルプロピオナート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、スクシナート、タルトラート、チオシアナート、トシラート、ウンデカノアートおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。塩の他の例として、Na、NHおよびNW(式中、WはC1〜4アルキル基)などの好適なカチオンを配合した本発明の化合物のアニオンおよび同種のものが挙げられる。
【0070】
治療用途の場合、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものであることを企図している。しかしながら、たとえば、薬学的に許容される化合物の調製または精製の際には薬学的に許容されない酸および塩基の塩を使用してもよい。
【0071】
「サンプル」という語は、本明細書で使用する場合、最も広義に使用される。アポトーシスの機能の調節不全を特徴とする状態を示唆すると思われるサンプルとして、細胞、組織または体液、細胞から単離した染色体(たとえば、分裂中期の染色体の広がり)、ゲノムDNA(溶液中、あるいは、サザンブロット解析用に固体支持体に結合したものなど)、RNA(溶液中、あるいは、ノーザンブロット解析用に固体支持体に結合したものなど)、cDNA(溶液中、あるいは、固体支持体に結合したもの)および同種のものを挙げることができる。タンパク質を含むと思われるサンプルとして、細胞、組織の一部、1種または複数種のタンパク質を含む抽出物および同種のものを挙げることができる。
【0072】
本明細書で使用する場合、「精製された」または「精製する」という用語は、目的としない成分をサンプルから除去することをいう。本明細書で使用する場合、「実質的に精製された」という用語は、分子が通常結び付く他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは75%含まない、最も好ましくは90%またはそれ以上含まないことをいう。
【0073】
「特異的結合」または「特異的に結合している」という用語は、抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用について使用する場合、相互作用がタンパク質上の特定の構造(すなわち、抗原決定基またはエピトープ)の存在により左右されること、言い換えれば、抗体が原則としてタンパク質ではなく特異的なタンパク質の構造を認識し結合することを意味する。たとえば、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識「A」および抗体を含む反応においてエピトープAを含むタンパク質(すなわち遊離の非標識A)が存在すれば、抗体に結合する標識Aの量が減少する。
【0074】
本明細書で使用する「非特異的結合」および「バックグラウンド結合」という用語は、抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用について使用する場合、相互作用が特定の構造の存在に左右されない(すなわち、抗体が原則としてエピトープなどの特定の構造ではなくタンパク質に結合する)ことをいう。
【0075】
本明細書で使用する場合、「調節する」という用語は、化合物(たとえば、本発明の化合物)の活性が、以下に限定されるものではないが、細胞成長、増殖、アポトーシスおよび同種のものなど細胞の機能面に影響を与える(たとえば、促進する、または遅延させる)ことをいう。
【0076】
本明細書で使用する場合、「結合において競合する」という用語は、第1の分子(たとえば、本発明の第1の化合物)が、第2の分子(たとえば、本発明の第2の化合物、またはミトコンドリアATPシンターゼのオリゴマイシン感受性付与タンパク質に結合する他の分子など)と同様に、同じ標的(たとえば、ミトコンドリアATPシンターゼのオリゴマイシン感受性付与タンパク質)に結合する活性を持つことに関して使用される。第1の分子による結合の効率(たとえば、速度論または熱力学)は、第2の分子に結合する標的の効率より高くても低くてもよい。たとえば、2つの分子の基質に対する結合の平衡結合定数(K)は、異なっていてもよい。
【0077】
「被検化合物」という語は、身体機能の疾患、疾病、病気または障害を処置または予防するか、あるいは、サンプルの生理的状態または細胞の状態(たとえば、細胞または組織内のアポトーシスの調節不全のレベル)を別の方法で変化させるのに使用できる任意の化学物質、医薬品および同種のものをいう。被検化合物は、既知の治療用化合物と有望な治療用化合物とを共に含む。被検化合物は、本発明のスクリーニング方法により治療的であると判定することができる。「既知の治療用化合物」とは、(たとえば、動物試験またはヒトへの投与によるこれまでの経験から)こうした処置または予防に有効であることが示されている治療用化合物をいう。いくつかの実施形態では、「被検化合物」は細胞内のアポトーシス調節する薬である。
【0078】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、F−ATPアーゼ(たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼ)の阻害剤、その発見方法、およびその治療用途に関する。特に、本発明は、F−ATPアーゼ阻害剤として有用な一連のグアニジン化合物、およびこうした化合物を治療薬として使用して多くの様々な状態を処置する方法を提供する。
【0079】
本発明の例示的な組成物および方法については、以下のセクション:I.F−ATPアーゼ活性のモジュレーター;II.グアニジン化合物;III.グアニジンを用いた化合物の治療への応用、IV.医薬組成物、製剤および例示的な投与経路ならびに投与の留意事項;およびV.薬剤スクリーニングでより詳細に記載する。
【0080】
本発明の実施には、他に記載がない限り、当該技術分野の技術の範囲内である有機化学、薬理学、分子生物学(組換え技法など)、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技法を利用する。こうした技法については、「Comprehensive Organic Synthesis」(B.M.Trost & I.Fleming,eds.,1991−1992);「Molecular cloning:a laboratory manual」Second Edition(Sambrook et al.,1989);「Oligonucleotide synthesis」(M.J.Gait,ed.,1984);「Animal cell culture」(R.I.Freshney,ed.,1987);the series「Methods in enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of experimental immunology」(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.);「Gene transfer vectors for mammalian cells」(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);「Current protocols in molecular biology」(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987 and periodic updates);「PCR:the polymerase chain reaction」(Mullis et al.,eds.,1994);および「Current protocols in immunology」(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)などの文献に詳細に説明されており、各々を参照によってその全体を本明細書に援用する。
【0081】
I.F−ATPアーゼ活性のモジュレーター
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞を本発明の化合物に曝露することによりF−ATPアーゼ活性(たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性)を調節する。いくつかの実施形態では、本化合物は、ATP合成およびATP加水分解を阻害する。化合物の作用については、何らかの細胞の変化を検出することにより測定することができる。たとえば、本明細書および当該技術分野に記載されるようにミトコンドリアF−ATPアーゼ活性および/または細胞死を評価してもよい。いくつかの実施形態では、細胞株を適切な細胞培養条件(たとえば、ガス(CO)、温度および培地)下、適切な期間維持して密度依存性の制約を受けない指数関数的な増殖を達成する。細胞の数およびまたは生存率は、トリパンブルー排除/血球計算法またはMTT色素変換アッセイなどの標準的な技法を用いて測定する。あるいは、細胞について、アポトーシスまたは壊死の異常に関連する遺伝子または遺伝子産物の発現を解析してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物を細胞に曝露してアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、本発明により、ミトコンドリアF−ATPアーゼとの相互作用を介してアポトーシスまたは細胞増殖の停止を誘導する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、OSCPへの結合によりミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ミトコンドリアF−ATPアーゼのOSCPとFサブユニットとの接合部分に結合する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、Fサブユニットに結合する。ある種の実施形態では、本発明のスクリーニングアッセイにより、OSCP、FまたはOSCP/F接合部分の結合パートナーを検出できる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明を細胞に曝露してアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞のROSレベル(たとえば、O)の初期増加を引き起こす。さらなる実施形態では、本発明の化合物を細胞に曝露して細胞のOレベルを増加させる。なおさらなる実施形態では、本発明の化合物に起因する細胞のOレベルの増加は、Oと特異的に反応するレドックス感受性薬(たとえば、ジヒドロエチジウム(DHE))により検出可能である。
【0084】
他の実施形態では、本発明の化合物に起因して増加した細胞のOレベルは一定の時間(たとえば、10分)後に減少する。他の実施形態では、本発明の化合物に起因して増加した細胞のOレベルは一定の時間後に減少し、しばらく経って(たとえば、10時間)再び増加する。さらなる実施形態では、本発明の化合物に起因して細胞のOレベルは1時間で減少し、4時間後に再び増加する。
【0085】
いくつかの実施形態では、初期に細胞のOレベルが増加し、続いて細胞のOレベルが減少し、その後本発明の化合物に起因して細胞のOレベルが増加するのは、異なる細胞プロセス(たとえば、二峰性の細胞メカニズム)による。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞のミトコンドリア膜電位(ΔΨ)を崩壊させる。いくつかの実施形態では、本発明に起因する細胞のミトコンドリアΔΨの崩壊は、ミトコンドリア選択性電位差測定プローブ(たとえば、3,3’−ジヘキシルオキサカルボシアニンヨージド、DiOC)により検出可能である。さらなる実施形態では、本発明に起因する細胞のミトコンドリアΔΨの崩壊は、細胞のOレベルの初期増加後に起こる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明によりカスパーゼの活性化が可能になる。他の実施形態では、本発明は、ミトコンドリアからチトクロムcを放出させる。さらなる実施形態では、本発明は、チトクロムcの収縮期レベル(cystolic cytochrome c level)を変化させる。なお他の実施形態では、本発明に起因して変化したチトクロムcの収縮期レベル(cystolic cytochrome c level)は、細胞質画分の免疫ブロットにより検出可能である。いくつかの実施形態では、本発明に起因して減少したチトクロムcの収縮期レベル(cystolic cytochrome c level)は、一定の時間(たとえば、10時間)後に検出可能である。さらに好ましい実施形態では、本発明に起因して減少したチトクロムcの収縮期レベル(cystolic cytochrome c level)は、5時間後に検出可能である。
【0088】
他の実施形態では、本発明は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔を開口させる。いくつかの実施形態では、本発明に起因する細胞のチトクロムcの放出は、ミトコンドリアΔΨの崩壊と整合する。なおさらに好ましい実施形態では、本発明は、ミトコンドリアΔΨの崩壊後に細胞のOレベルを増加させ、チトクロムcを放出させる。さらに好ましい実施形態では、細胞のOレベルの上昇は、本発明に起因するミトコンドリアΔΨの崩壊およびチトクロムcの放出により起こる。
【0089】
他の実施形態では、本発明は細胞のカスパーゼ活性化を起こす。いくつかの実施形態では、本発明に起因するカスパーゼ活性化は、パンカスパーゼ感受性蛍光基質(たとえば、FAM−VAD−fmk)により測定可能である。なおさらなる実施形態では、本発明に起因するカスパーゼ活性化は、ミトコンドリアのΔΨの崩壊により追跡される。他の実施形態では、本発明は、低二倍体DNAを出現させる。いくつかの実施形態では、本発明に起因する低二倍体DNAの出現は、カスパーゼ活性化に対してやや遅れる。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明の分子標的は、ミトコンドリア内に確認される。さらなる実施形態では、本発明の分子標的は、ミトコンドリアATPアーゼを含む。細胞のROSの主な供給源は、レドックス酵素およびミトコンドリア呼吸鎖(以下MRC:mitochondrial respiratory chain)を含む。いくつかの実施形態では、チトクロムcオキシダーゼ(MRCの複合体IV)阻害剤(たとえば、NaN)は、細胞のROSレベルの本発明依存性の増加を妨げる。他の好ましい実施形態では、MRC複合体III阻害剤(たとえば、FK506)のユビキノール−チトクロムcレダクーゼ成分は、ROSレベルの本発明依存性の増加を妨げる。
【0091】
いくつかの実施形態では、細胞のROSレベルの増加は、ミトコンドリア内の標的に対する本発明の化合物の結合によるものである。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレシン(以下DCF)ジアセタートをDCFに酸化する。DCFは、ROSを検出できるレドックス活性化学種である。さらなる実施形態では、本発明に起因するDCFの産生速度は、遅滞期後に増加する。
【0092】
アンチマイシンAは、ユビキノール−チトクロムcレダクーゼを阻害することによりOを生成する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞のROSを増加させる化合物を提供するが、このROSはユビキノール−チトクロムcから生じると考えられる。さらなる実施形態では、本発明は、状態3の呼吸を支持する好気条件下で細胞のROS産生を増加させる。さらなる実施形態では、本発明の化合物は、MPT孔を直接標的としない。別の実施形態では、本発明の化合物は、S15細胞下画分(たとえば、サイトゾル;ミクロソーム)で実質的にROSを生成しない。なおさらなる実施形態では、本発明の化合物は、ミトコンドリアが状態4の呼吸にある場合、ROSを刺激しない。
【0093】
MRC複合体I〜IIIは、ミトコンドリア内のROSの主な供給源である。いくつかの実施形態では、本発明の化合物に起因する細胞のROSレベルの増加の主な供給源は、F−ATPアーゼの阻害によりこれらの複合体から生じる。実際、なおさらなる実施形態では、本発明は、ウシ亜ミトコンドリア粒子(以下SMP)のATPアーゼ活性を阻害する。特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、F−ATPアーゼのOSCP成分に結合する。
【0094】
オリゴマイシンはマクロライド天然物であり、F−ATPアーゼに結合し、状態3から4への移行を誘導し、その結果、ROS(たとえば、O)を生成する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、F−ATPアーゼのOSCP成分に結合する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、F−ATPアーゼのOSCPとFサブユニットとの接合部分に結合する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、Fサブユニットに結合する。ある種の実施形態では、本発明のスクリーニングアッセイにより、OSCP、FまたはOSCP/F接合部分の結合パートナーを検出できる。OSCPは、内因性蛍光タンパク質である。ある種の実施形態では、本発明の被検化合物の溶液を、蛍光標識を付けたOSCPおよび/またはOSCPアナログを過剰発現している大腸菌(E.coli)サンプルに滴定すると、内因性のOSCP蛍光がクエンチする。他の実施形態では、蛍光または放射性被検化合物を直接結合アッセイに使用してもよい。他の実施形態では、競合結合実験を行ってもよい。この種のアッセイでは、被検化合物について、たとえば、OSCPへの結合において既知の結合化合物と競合する被検化合物の能力を評価する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、OSCP遺伝子を制御する(たとえば、OSCP遺伝子の発現を変化させる)ことにより、細胞のROSレベルを増加させ細胞内のアポトーシスを促進する。さらなる実施形態では、本発明は、ATPアーゼのモーターの分子運動を変化させることにより機能する。
【0095】
II.グアニジン化合物
一態様では、本発明は、下記式Iで表される化合物であって:
【0096】
【化4】

【0097】
その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【0098】
【化5】

【0099】
であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【0100】
【化6】

【0101】
であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物である、一連の化合物を提供する。
【0102】
ある種の実施形態では、Rは、
【0103】
【化7】

【0104】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0105】
【化8】

【0106】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0107】
【化9】

【0108】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0109】
【化10】

【0110】
である。
【0111】
ある種の実施形態では、Rは、
【0112】
【化11】

【0113】
である。ある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−N(H)−、−N(アルキル)−または−N(ヒドロキシアルキル)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−N(H)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−N(2−ヒドロキシエチル)−、−N(2−ヒドロキシプロピル)−または−N(3−ヒドロキシプロピル)−などの−N(ヒドロキシアルキル)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、XはOである。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−C(H)(アルキル)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、XはSである。
【0114】
ある種の実施形態では、Rは、
【0115】
【化12】

【0116】
である。ある種の実施形態では、Rは水素である。
【0117】
ある種の実施形態では、Rは、
【0118】
【化13】

【0119】
である。ある種の実施形態では、Xは−N(R)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Rは水素である。ある種の実施形態では、RおよびRは水素である。
【0120】
ある種の実施形態では、Rは、
【0121】
【化14】

【0122】
である。ある種の実施形態では、Rは水素である。
【0123】
ある種の実施形態では、Rは、
【0124】
【化15】

【0125】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0126】
【化16】

【0127】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0128】
【化17】

【0129】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0130】
【化18】

【0131】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0132】
【化19】

【0133】
である。ある種の実施形態では、Rはアルキルまたはハロアルキルである。他のある種の実施形態では、Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはトリフルオロメチルである。ある種の実施形態では、Rは水素、ハロゲンまたはアルキルである。ある種の実施形態では、mは1である。
【0134】
ある種の実施形態では、RおよびRは水素である。
【0135】
ある種の実施形態では、Rはハロゲンである。ある種の実施形態では、nは0、1または2である。他のある種の実施形態では、nは0である。
【0136】
ある種の実施形態では、Rは、
【0137】
【化20】

【0138】
であり;Xは−N(R)−であり;Rはハロゲンであり;Rはアルキルまたはハロアルキルであり;Rは水素であり、mは1であり;nは0、1または2である。
【0139】
ある種の実施形態では、本化合物は、式Iで示される構造を持つ化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0140】
別の態様では、本発明は、下記式IIで表される化合物であって:
【0141】
【化21】

【0142】
その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【0143】
【化22】

【0144】
であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、一連の化合物を提供する。
【0145】
ある種の実施形態では、R、RおよびRは水素である。ある種の実施形態では、Rは、
【0146】
【化23】

【0147】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0148】
【化24】

【0149】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0150】
【化25】

【0151】
であり、Rは(C〜C)アルキルである。他のある種の実施形態では、Rは、
【0152】
【化26】

【0153】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0154】
【化27】

【0155】
である。ある種の実施形態では、Rはハロゲンである。ある種の実施形態では、Rは(C〜C)アルキルである。ある種の実施形態では、Rは水素である。ある種の実施形態では、nは1、2または3である。ある種の実施形態では、mは1である。
【0156】
ある種の実施形態では、R、RおよびRは水素であり;Rは、
【0157】
【化28】

【0158】
であり;Rはハロゲンであり;Rは(C〜C)アルキルであり;Rは水素またはハロゲンであり;nは2であり;mは1である。
【0159】
ある種の実施形態では、本化合物は、式IIで示される構造を持つ化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0160】
他のある種の実施形態では、本化合物は、本明細書の下記表I〜Vに記載される化合物の1つである。当然のことながら、前述の化合物は、薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて医薬組成物を製造してもよい。
【0161】
ある種の実施形態では、本化合物は、以下の表に記載されているような化合物であり、表には各化合物のClogP値も記載してある。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
【表5】

【0167】
【表6】

【0168】
【表7】

【0169】
【表8】

【0170】
【表9】

【0171】
III.グアニジンを用いた化合物の治療への応用
式IおよびIIのグアニジン化合物とこれに関連するグアニジンを用いた化合物は、たとえば、F−ATPアーゼ活性の調節不全を特徴とする疾患、細胞または組織内の壊死および/またはアポトーシス過程の調節不全を特徴とする疾患、異常な細胞増殖および/または過剰増殖を特徴とする疾患など多くの状態の任意の1つまたは複数に罹患している患者に治療効果を与えることを意図している。本明細書に記載の化合物はまた、本明細書の別の箇所で記載したような細胞の死に関連する様々な調節不全障害を処置するのに使用してもよい。加えて、本明細書に記載の化合物は、ATP合成および加水分解の両方を阻害するのに使用してもよい。
【0172】
本明細書に記載のグアニジン化合物を用いれば、多くの疾患を処置することができる。たとえば、本明細書に記載の化合物を用いて、細胞または組織内の壊死および/またはアポトーシス過程の調節不全を特徴とする疾患、異常な細胞増殖および/または過剰増殖などを特徴とする疾患、すなわちループス、関節リウマチ、乾癬、移植片対宿主病、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、循環器疾患、骨髄腫、リンパ腫、癌および細菌感染症を処置することができる。特定の理論に拘泥するわけではないが、本化合物は、患部細胞または組織のF−ATPアーゼ複合体(たとえば、ミトコンドリアF−ATPアーゼ複合体)の活性を調節する(たとえば、阻害または促進する)ことにより治療効果が得られると考えられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物を用いて、免疫性/慢性炎症性状態(たとえば、乾癬、自己免疫障害、臓器移植拒絶反応および上皮過形成)を処置する。さらなる実施形態では、本発明の組成物を狭窄症治療と併用して、傷害された(たとえば、閉塞された)血管を処置する。
【0173】
ある種の実施形態では、グアニジンを用いた化合物を含む組成物を、F−ATPアーゼに作用する所望の効果を最大化する条件(たとえば、時期、用量、他の薬との併用投与、投与モード、被検体の選択、標的化剤の使用など)下で投与する。
【0174】
ある種の実施形態では、本発明は、ループス、関節リウマチ、乾癬、移植片対宿主病、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、循環器疾患、骨髄腫、リンパ腫、癌および細菌感染症からなる群から選択される障害を処置する方法であって、治療有効量の式IまたはIIの化合物を、障害の症状を軽減させるためそれを必要としている患者に投与することをを含み、式Iは下記式で表され:
【0175】
【化29】

【0176】
その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【0177】
【化30】

【0178】
であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【0179】
【化31】

【0180】
であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり;
式IIは下記式で表され:
【0181】
【化32】

【0182】
その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【0183】
【化33】

【0184】
であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、方法を提供する。
【0185】
ある種の実施形態では、前記化合物は、上述の式Iの化合物である。ある種の実施形態では、Rは、
【0186】
【化34】

【0187】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0188】
【化35】

【0189】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0190】
【化36】

【0191】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0192】
【化37】

【0193】
である。
【0194】
ある種の実施形態では、Rは、
【0195】
【化38】

【0196】
である。ある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−N(H)−、−N(アルキル)−または−N(ヒドロキシアルキル)−である。ある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−N(H)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−N(2−ヒドロキシエチル)−、−N(2−ヒドロキシプロピル)−または−N(3−ヒドロキシプロピル)−などの−N(ヒドロキシアルキル)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、XはOである。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Xは−C(H)(アルキル)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、XはSである。他のある種の実施形態では、Rは、
【0197】
【化39】

【0198】
である。ある種の実施形態では、Rは水素である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0199】
【化40】

【0200】
である。ある種の実施形態では、Xは−N(R)−である。他のある種の実施形態では、Xは−N(R)−であり、Rは水素である。ある種の実施形態では、RおよびRは水素である。ある種の実施形態では、Rは、
【0201】
【化41】

【0202】
である。ある種の実施形態では、Rは水素である。
【0203】
ある種の実施形態では、Rは、
【0204】
【化42】

【0205】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0206】
【化43】

【0207】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0208】
【化44】

【0209】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0210】
【化45】

【0211】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0212】
【化46】

【0213】
である。
【0214】
ある種の実施形態では、Rはアルキルまたはハロアルキルである。他のある種の実施形態では、Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはトリフルオロメチルである。ある種の実施形態では、Rは水素、ハロゲンまたはアルキルである。ある種の実施形態では、mは1である。ある種の実施形態では、RおよびRは水素である。ある種の実施形態では、Rはハロゲンである。ある種の実施形態では、nは0、1または2である。他のある種の実施形態では、nは0である。
【0215】
ある種の実施形態では、Rは、
【0216】
【化47】

【0217】
であり;Xは−N(R)−であり;Rはハロゲンであり;Rはアルキルまたはハロアルキルであり;Rは水素であり、mは1であり;nは0、1または2である。ある種の実施形態では、本化合物は式Iで示される構造を持つ化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0218】
ある種の実施形態では、前記化合物は上記のような式IIの化合物である。ある種の実施形態では、R、RおよびRは水素である。ある種の実施形態では、Rは、
【0219】
【化48】

【0220】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0221】
【化49】

【0222】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0223】
【化50】

【0224】
であり、Rは(C〜C)アルキルである。他のある種の実施形態では、Rは、
【0225】
【化51】

【0226】
である。他のある種の実施形態では、Rは、
【0227】
【化52】

【0228】
である。ある種の実施形態では、Rはハロゲンである。ある種の実施形態では、Rは(C〜C)アルキルである。ある種の実施形態では、Rは水素である。ある種の実施形態では、nは1、2または3である。ある種の実施形態では、mは1である。ある種の実施形態では、R、RおよびRは水素であり;Rは、
【0229】
【化53】

【0230】
であり;Rはハロゲンであり;Rは(C〜C)アルキルであり;Rは水素またはハロゲンであり;nは2であり;mは1である。ある種の実施形態では、本化合物は、式IIで示される構造を持つ化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0231】
ある種の実施形態では、前記化合物は表I〜Vに記載される化合物の1つである。ある種の実施形態では、前記化合物は表Iに記載される化合物の1つである。
【0232】
他のある種の実施形態では、障害はクローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、移植片対宿主病、ループス、関節リウマチまたは乾癬である。他のある種の実施形態では、障害は循環器疾患、骨髄腫、リンパ腫または癌である。他のある種の実施形態では、障害はループス、関節リウマチ、乾癬、移植片対宿主病、骨髄腫またはリンパ腫である。他のある種の実施形態では、障害は循環器疾患または癌である。他のある種の実施形態では、障害はクローン病、炎症性腸疾患または多発性硬化症である。他のある種の実施形態では、障害は移植片対宿主病である。さらなる実施形態では、障害は細菌感染症である。ある種の実施形態では、患者はヒトである。
【0233】
加えて、本明細書に記載のグアニジン化合物は、医薬組成物において薬学的に許容されるキャリアまたは希釈液と共に、Bz−423(米国特許第7,144,880号明細書および同第7,125,866号明細書、米国特許出願第11/586,097号明細書、同第11/585,492号明細書、同第11/445,010号明細書、同第11/324,419号明細書、同第11/176,719号明細書、同第11/110,228号明細書、同第10/935,333号明細書、同第10/886,450号明細書、同第10/795,535号明細書、同第10/634,114号明細書、同第10/427,211号明細書、同第10/217,878号明細書および同第09/767,283号明細書、ならびに米国仮特許出願第60/878,519号明細書、同第60/812,270号明細書、同第60/802,394号明細書、同第60/732,045号明細書、同第60/730,711号明細書、同第60/704,102号明細書、同第60/686,348号明細書、同第60/641,040号明細書、同第60/607,599号明細書、同第60/565,788号明細書に記載されているようなベンゾジアゼピン化合物)、カリウムチャネル開口薬、カルシウムチャネル遮断薬、ナトリウム水素交換輸送体阻害剤、抗不整脈薬、抗アテローム性動脈硬化剤、抗凝固薬、抗血栓薬、血栓溶解促進剤、フィブリノゲン拮抗剤、利尿薬、降圧薬、ATPアーゼ阻害剤、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、ホスポジエステラーゼ阻害剤、抗糖尿病薬、抗炎症薬、酸化防止剤、血管新生調節剤、抗骨粗鬆症剤、ホルモン補充療法剤、ホルモン受容体調節薬、経口避妊薬、抗肥満薬、抗鬱薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗増殖剤、抗腫瘍薬、抗潰瘍薬および胃食道逆流症薬、成長ホルモン剤および/または成長ホルモン分泌促進因子、甲状腺模倣体(thyroid mimetics)、抗感染症薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、コレステロール/脂質低下薬および脂質プロファイルの治療剤(lipid profile therapies)、および虚血プレコンディショニングおよび/または心筋気絶を模倣した薬、抗アテローム性動脈硬化剤、抗凝固薬、抗血栓薬、降圧薬、抗糖尿病薬、およびACE阻害剤、AT−1受容体拮抗薬、ET受容体拮抗薬、ET/AII受容体二重拮抗薬およびバソペプシダーゼ阻害剤から選択される降圧薬、またはGPIIb/IIIa遮断薬、P2YおよびP2Y12拮抗楽、トロンボキサン受容体拮抗薬およびアスピリンから選択される抗血小板薬)など少なくとも1種の他の治療薬と組み合わせて使用してもよい。
【0234】
加えて、これらの化合物の任意の1つまたは複数は、患者のF−ATP加水分解酵素関連障害(たとえば、心筋梗塞、心室肥大、冠動脈疾患、非Q波MI、鬱血性心不全、心不整脈、不安定狭心症、慢性安定狭心症、プリンツメタル狭心症、高血圧症、間欠性跛行、閉塞性末梢動脈疾患、血栓塞栓性卒中の血栓または血栓塞栓症状、静脈血栓症、動脈血栓症、脳血栓症、肺塞栓症、脳塞栓症、血栓形成傾向、播種性血管内凝固、再狭窄、心房細動、心室拡大、アテローム硬化性血管疾患、動脈硬化プラーク破綻、動脈硬化プラーク形成、移植片アテローム性動脈硬化症(transplant atherosclerosis)、血管リモデリングを伴うアテローム性動脈硬化症(vascular remodeling atherosclerosis)、癌、手術、炎症、全身感染症、人工心肺の影響(artificial surfaces)、心臓インターベンション、不動、投薬、妊娠および胎児死亡、ならびに網膜症、腎症およびニューロパチーを含む糖尿病合併症)を処置するのに使用してもよい。
【0235】
前述の通り、本明細書に記載のグアニジン化合物は、細菌感染症の処置に使用してもよい。様々な細菌が、グアニジン化合物に対して感受性を示すと考えられる。代表的な細菌としては、ブドウ球菌(Staphylococci)種、たとえば、黄色ブドウ球菌(S.aureus);腸球菌(Enterococci)種、たとえば、E.フェカリス(E.faecalis)およびE.フェシウム(E.faecium);連鎖球菌(Streptococci)種、たとえば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)およびS.ニューモニエ(S.pneumoniae);エシェリキア(Escherichia)種、たとえば、毒素原性、腸管病原性、腸管組織侵入性、腸管出血性および腸管凝集性大腸菌(E.coli)株などの大腸菌(E.coli));ヘモフィルス(Haemophilus)種、たとえば、インフルエンザ菌(H.influenza);およびモラクセラ(Moraxella)種、たとえば、M.カタラーリス(M.catarrhalis)が挙げられる。他の例としては、マイコバクテリア(Mycobacteria)種、たとえば、M.ツベルクローシス(M.tuberculosis)、M.アビアンイントラセルラーレ(M.avian−intracellulare)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.ボビス(M.bovis)、M.アフリカヌム(M.africanum)、M.ゲナベンス(M.genavense)、ライ菌(M.leprae)、M.ゼノピ(M.xenopi)、M.シミエ(M.simiae)、M.スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、M.マルモエンス(M.malmoense)、M.セラータム(M.celatum)、M.アブセサス(M.abscessus)、M.ケロネー(M.chelonae)、M.ツルガイ(M.szulgai)、M.ゴルドナエ(M.gordonae)、M.ヘモフィルム(M.haemophilum)、M.フォルトゥーニ(M.fortuni)およびM.マリヌム(M.marinum);コリネバクテリウム(Corynebacteria)種、たとえば、C.ジフセリエ(C.diphtheriae);ビブリオ(Vibrio)種、たとえば、V.コレレ(V.cholerae);カンピロバクター(Campylobacter)種、たとえば、C.ジェジュニ(C.jejuni);ヘリコバクター(Helicobacter)種、たとえば、H.ピロリ(H.pylori);シュードモナス(Pseudomonas)種、たとえば、P.エルジノーサ(P.aeruginosa);レジオネラ(Legionella)種、たとえば、L.ニューモフィラ(L.pneumophila);トレポネーマ(Treponema)種、たとえば、梅毒トレポネーマ(T.pallidum);ボレリア(Borrelia)種、たとえば、ライム病ボレリア(B.burgdorferi);リステリア(Listeria)種、たとえば、L モノサイトゲネス(L monocytogenes);バチルス(Bacillus)種、たとえば、B.セレウス(B.cereus);ボルダテラ(Bordatella)種、たとえば、B.パータシス(B.pertussis);クロストリジウム(Clostridium)種、たとえば、C.パーフリンジェンス(C.perfringens)、C.テタニ(C.tetani)、C.ディフィシル(C.difficile)およびC.ボツリヌム(C.botulinum);ナイセリア(Neisseria)種、たとえば、N.メニンギティディス(N.meningitidis)およびN.ゴノレア(N.gonorrhoeae);クラミジア(Chlamydia)種、たとえば、オウム病クラミジア(C.psittaci)、C.ニューモニエ(C.pneumoniae)およびC.トラコマティス(C.trachomatis);リケッチア(Rickettsia)種、たとえば、R.リケッチイ(R.rickettsii)および発疹チフスリケッチア(R.prowazekii);シゲラ(Shigella)種、たとえば、S.ソネイ(S.sonnei);サルモネラ(Salmonella)種、たとえば、S.チフィリウム(S.typhimurium);エルシニア(Yersinia)種、たとえば、Y.エンテロコリチカ(Y.enterocolitica)およびY.シュードツベルクローシス(Y.pseudotuberculosis);クレブシエラ(Klebsiella)種、たとえば、K.ニューモニエ(K.pneumoniae);マイコプラズマ(Mycoplasma)種、たとえば、M.ニューモニエ(M.pneumoniae);およびブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)が挙げられる。ある種の実施形態では、本明細書に記載のグアニジン化合物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、E.フェカリス(E.faecalis)、E.フェシウム(E.faecium)、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ニューモニエ(S.pneumonia)およびP.エルジノーサ(P.aeruginosa)からなる群から選択される細菌感染症に罹患している被検体を処置するのに使用される。ある種の実施形態では、本明細書に記載のグアニジン化合物は、ブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)感染症に罹患している被検体を処置するのに使用される。
【0236】
本明細書に記載の化合物の抗菌活性は、マイクロブロス希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)アッセイなど当該技術分野において公知の標準的なアッセイを用いて評価することができ、MICアッセイについてはNational Committee for Clinical Laboratory Standards.Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Fourteenth Informational Supplement.NCCLS document M100−S14{ISBN 1−56238−516−X}に詳述されている。このアッセイを用いれば、溶液中で目視可能な細菌増殖を阻止するのに必要な化合物の最小濃度を判定することができる。一般に、試験対象の薬剤をウェルに段階希釈し、細菌培養液のアリコートを加える。この混合物を適切な条件下でインキュベートし、次いで細菌の増殖について検査する。抗菌活性が低いか、あるいはない(高MIC)化合物では化合物が高濃度でも増殖が可能であるのに対し、抗菌活性が高い化合物では、細菌はより低い濃度(低MIC)でしか増殖できない。
【0237】
このアッセイでは、選択した細菌株に適した細菌培養保存条件を使用する。永久的な保存培養株コレクションの保存培養株を−70℃で凍結懸濁液として保存することができる。培養物は、ドライアイス/エタノールで急速凍結する前に10%脱脂乳(BD)に懸濁してから−70℃のフリーザーに入れてもよい。培養物は、5%Sheep Bloodを含むTryptic Soy Agarで室温(20℃)にて維持することができ、各培養物を凍結形態から解凍し、MIC試験までの時間さらに継代してもよい。試験の前日に新しいプレートに接種し、一晩インキュベートし、純度および同一性の確認を行う。
【0238】
保存培養株から回収した培養物の同一性および純度を確認すれば、コンタミネーションの可能性を排除できる。株の同一性については、標準的な微生物学的方法(たとえば、Murray et al., Manual of Clinical Microbiology, Eighth Edition.ASM Press{ISBN 1−55581−255−4}を参照されたい)により行えばよい。一般に、純度、予想されるコロニーの形状および溶血パターンを可視化するため、培養物を適切な寒天プレートに画線培養する。また、グラム染色を利用してもよい。同一性は、MicroScan WalkAway 40 SI Instrument(Dade Behring、West Sacramento、California)を用いて確認される。この装置は、自動インキュベーター、リーダーおよびコンピューターを利用して各生物が行う生化学反応を評価して同定する。また、MicroScan WalkAwayは予備的なMICの判定にも使用できるが、予備的なMICについては以下に記載する方法を用いて確認してもよい。
【0239】
凍結保存培養株は、マイクロブロス希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)試験を行うための最初の生物源として使用してもよい。保存培養株は、使用する前にその標準的な増殖培地で少なくとも1増殖サイクル(18〜24時間)培養する。大部分の細菌は、適切なブロス培地のアリコート10mLにより寒天プレートから直接調製することができる。細菌培養物は、McFarland標準濁度0.5(波長を600nmとしたPerkin−Elmer Lambda EZ150分光光度計、Wellesley、Massachusettsによる光学密度値0.28〜0.33)に調整する。次いで調節した培養物を増殖培地で400倍希釈(0.25mLの接種材料+100mLのブロス)して出発懸濁液約5×105コロニー形成単位(CFU)/mLを作製する。大部分の菌株は、カチオン調整Mueller Hintonブロス(CAMHB)を用いて試験すればよい。
【0240】
被検化合物(「薬剤」)は、DMSOなどアッセイに好適な溶媒に可溶化する。薬剤原液については、試験の当日に調製してもよい。マイクロブロス希釈保存プレートは、64〜0.06μg薬剤/mLおよび0.25〜0.00025μg薬剤/mLの2つの希釈系列で調製すればよい。高濃度系列では、200μLの原液(2mg/mL)を96ウェルマイクロタイタープレートに2列ずつ加える。これを希釈系列の第1のウェルとして使用する。残りの11ウェルのうち10ウェルを用いてBioMek FX robot(Beckman Coulter Inc.、Fullerton、CA)により2倍段階希釈系列を作製し、各々に100μLの適切な溶媒/希釈液を加える。列12には、溶媒/希釈液のみを加え、対照とする。低濃度系列の第1のウェルでは、8μg/mLの保存液200μLを96ウェルプレートに2列ずつ加える。2倍希釈系列を上記のように作製する。
【0241】
BioMek FXロボットにより上述の保存プレートから娘96ウェルプレートにスポット(3.2μL/ウェル)するが、これは直ちに使用しても、あるいは、使用時まで−70℃で凍結してもよい。BioMek FXロボットにより、解凍したプレートに好気性生物を接種(100μL量)する。接種したプレートを重ねて置き、空のプレートで蓋をする。次いでCLSIガイドライン(National Committee for Clinical Laboratory Standards, Methods for Dilution, Antimicrobial Tests for Bacteria that Grow Aerobically; Approved Standard−Sixth Edition.NCCLS document M7−A6{ISBN1−56238−486−4})に従って、これらのプレートを周囲雰囲気で16〜24時間インキュベートする。
【0242】
接種およびインキュベーション後、暗室でマイクロブロストレーの上から単一の光を透過させると、Test Reading Mirror(Dynex Technologies 220 16)を利用して細菌増殖の程度を視覚的に推定することができる。MICは、本試験の条件下、肉眼で見える増殖を阻止する薬剤の最低濃度とする。
【0243】
IV.医薬組成物、製剤および例示的な投与経路ならびに投与の留意事項
以下、検討された種々の薬物および医薬組成物の例示的な実施形態について記載する。
【0244】
A.薬物の調製
本発明の化合物は、細胞死の調節不全、異常な細胞増殖および過剰増殖に関連する様々な状態を処置したり、あるいは研究したりする薬物の調製に有用である。
【0245】
さらに、本化合物はまた、化合物の有効性が知られているか、または予想される他の障害を処置したり、あるいは研究したりする薬物の調製にも有用である。こうした障害として、神経障害(たとえば、癲癇)または神経筋障害があるが、これに限定されるものではない。本発明の化合物の薬物を調製する方法および技法は、当該技術分野においてよく知られている。以下に、例示的な医薬製剤および送達経路について記載する。
【0246】
当業者であれば、標準的な医薬品製造の手順を応用することにより、多くの具体的な実施形態を含む、任意の1種または複数種の本明細書に記載の化合物が調製されることを理解するであろう。こうした薬物は、医薬品技術分野によく知られた送達方法により被検体に送達することができる。
【0247】
B.例示的な医薬組成物および製剤
本発明のいくつかの実施形態では、本組成物を単独投与するのに対し、いくつかの他の実施形態では、本組成物は、好ましくは固体支持体と共に、あるいは、1種または複数種の薬学的に許容されるキャリアおよび任意選択として他の治療薬(たとえば、本明細書の上記セクションIIIにされた治療薬)と共に、上記で論じたような少なくとも1種の活性成分/薬を含む医薬製剤中に存在する。各キャリアは、製剤の他の成分との適合性があり、被検体に有害でないという意味で「許容可能な」ものなければならない。
【0248】
意図される製剤として、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(経皮投与、頬粘膜投与および舌下投与など)、経膣、非経口(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与および皮内投与)および経肺投与に好適なものがある。いくつかの実施形態では、製剤は、単位剤形中に存在すると都合がよく、薬学分野において公知の任意の方法により調製される。こうした方法は、活性成分を、1種または複数種の副成分を構成するキャリアと一緒にする工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体キャリアもしくは微粉化した固体キャリアまたはその両方と一緒にして(たとえば、混合)して、必要に応じて製品に成形することにより均一かつ均質に調製される。
【0249】
経口投与に好適な本発明の製剤は、好ましくは各々が、所定量の活性成分を含むカプセル剤、カシェまたは錠剤;散剤または顆粒剤;水性または非水性液体に溶かした溶液または懸濁液;または水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンなど個別の単位として存在してもよい。他の実施形態では、活性成分は、巨丸剤、舐剤またはペースト剤などとして提供する。
【0250】
いくつかの実施形態では、錠剤は、少なくとも1種の活性成分および任意選択として1種または複数種の補助薬/キャリアを含み、それぞれの薬に圧縮または成形することにより製造される。いくつかの実施形態では、圧縮錠は、好適な機械で活性成分を散剤または顆粒剤などさらさらしたものに圧縮し、任意選択としてバインダー(たとえば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、錠剤分解物質(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)界面活性剤または分散剤と混合して調製される。湿製錠剤は、不活性な液体希釈液で湿らせた粉体化合物(たとえば、活性成分)の混合物を好適な機械で成形して製造される。錠剤は任意選択としてコーティングしても、または割線を入れてもよく、さらに、たとえば、様々な割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いてその活性成分を遅延または制御放出するように製剤化しても構わない。錠剤には任意選択として腸溶コーティングを施し、胃ではなく腸の各部で放出されるようにしてもよい。
【0251】
口の局所投与に好適な製剤として、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガントなどの風味を付けた基剤に活性成分を含ませたロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤に活性成分を含ませた香錠;および好適な液体キャリアに活性成分を含ませた含嗽剤がある。
【0252】
本発明による局所投与用の医薬組成物は任意選択として、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液、ペースト剤、ゲル、噴霧剤、エアロゾルまたは油として製剤化する。代替の実施形態では、局所製剤は、活性成分および任意選択として1種または複数種の賦形剤または希釈液を含浸させた包帯または絆創膏などのパッチまたは包帯剤を含む。いくつかの実施形態では、局所製剤は、皮膚または他の患部を通じた有効成分の吸収または浸透を促進する化合物を含む。こうした皮膚浸透促進剤の例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)および関連するアナログがある。
【0253】
必要に応じて、クリーム基剤(base)の水相は、たとえば、少なくとも約30%w/wの多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールなど2つ以上のヒドロキシル基を持つアルコールおよびこれらの混合物を含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、本発明の油相エマルジョンは、既知の方法により周知の成分で構成される。この相は典型的には、乳化剤(あるいはエマルジェント(emulgent)とも呼ばれる)のみを含み、さらにいくつかの実施形態では、この相は少なくとも1種の乳化剤と、脂肪または油との混合物、あるいは、脂肪および油の両方との混合物をさらに含むことが望ましい。
【0255】
好ましくは、安定剤として働くように親水性乳化剤を親油性乳化剤と共に加える。いくつかの実施形態では、油および脂肪を共に加えるのも好ましい。以上のように、乳化剤は、安定剤とともに、あるいは、それなしで、いわゆる乳化ワックスを構成し、このワックスが油および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤(base)を構成する。
【0256】
本発明の製剤に用いるのに好適なエマルジェント(emulgent)およびエマルジョン安定剤としては、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0257】
薬学的エマルジョン製剤に使用される可能性が高い大部分の油に対する活性化合物/剤の溶解性は非常に低いため、本製剤に好適な油または脂肪の選択は、所望の特性(たとえば、化粧料特性)の達成に基づいて行われる。このため、クリーム剤は好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏れを抑えるのに好適な稠度を有すると共に油性感がなく、洗浄可能な非着色製品とすべきである。直鎖または分枝鎖の一塩基性または二塩基性アルキルエステル、たとえばジ−イソアジパート、ステアリン酸イソセチル、ヤシ油脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、2−パルミチン酸エチルヘキシル、またはCrodamol CAPと呼ばれる分枝鎖エステルのブレンドを使用してもよく、最後の3つが好ましいエステルである。これらのエステルは、求められる特性に応じて単独で使用しても、あるいは組み合わせて使用してもよい。あるいは、白色軟パラフィンおよび/もしくは流動パラフィンまたは他の鉱油などの高融点脂質を使用してもよい。
【0258】
また、眼への局所投与に好適な製剤として、その薬に好適なキャリア、特に水性溶媒に活性成分を溶解または懸濁した点眼薬がある。
【0259】
直腸投与用の製剤は、たとえば、カカオバターまたはサリチラートを含む好適な基剤(base)の坐剤として提供してもよい。
【0260】
膣内投与に好適な製剤は、その薬に加えて当該技術分野において適切であることが公知のキャリアを含むペッサリー、クリーム剤、ゲル、ペースト剤、泡状物質または噴霧製剤として提供してもよい。
【0261】
キャリアが固体である場合、鼻腔投与に好適な製剤としては、粒度が、たとえば、約20〜約500ミクロンである粗末があり、鼻から吸う方法で、すなわち、鼻に近付けた散剤容器から鼻腔を通して(たとえば、強制的に)急速吸入することにより投与される。キャリアが液体である場合、投与に好適な他の製剤として、以下に限定されるものではないが、鼻スプレー、滴剤またはネブライザーエアロゾルがあり、さらにその薬の水性または油性溶液が挙げられる。
【0262】
非経口投与に好適な製剤として、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、および製剤を予定の被投与者の血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性の等張無菌注射溶液;および、懸濁化剤および粘度付与剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液、および化合物が血液成分または1つまたは複数の臓器を標的にするように設計されたリポソームまたは他の微粒子系がある。いくつかの実施形態では、製剤は、単一用量または複数用量の密封容器、たとえば、アンプルおよびバイアル中に入れられ/処方されており、使用の直前に無菌液体キャリア、たとえば注射用蒸留水を加えるだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。必要に応じて調合される注射溶液および懸濁液は、前述したような無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製してもよい。
【0263】
好ましい単位用量製剤は、本明細書に上述した、薬の1日用量または1日当たり数回の分割用量、またはその適切な画分を含む製剤である。
【0264】
本発明の製剤は、具体的に上述した成分以外にも、対象となる製剤の種類を考慮して当該技術分野における従来の他の薬を含んでもよく、たとえば、経口投与に好適な製剤は、甘味料、増粘剤および着香剤のような薬をさらに含んでもよいことを理解すべきである。また、本発明の薬、組成物および方法は、他の好適な組成物および治療剤と組み合わせることも意図している。さらに他の製剤は任意選択として、食品添加物(好適な甘味料、矯味矯臭剤、着色剤など)、植物栄養素(たとえば、亜麻油)、ミネラル(たとえば、Ca、Fe、Kなど)、ビタミン、ならびに他の許容可能な組成物(たとえば、共役リノール酸(linoelic acid))、増量剤および安定剤などを含む。
【0265】
C.例示的な投与経路および投与の留意事項
たとえば、リポソーム、微小粒子、マイクロカプセルへの封入、受容体を介したエンドサイトーシスおよび同種のものなど種々の送達系が知られており、これを利用して本発明の治療薬(たとえば、上記のような例示的な化合物)を投与することができる。送達の方法としては、動脈内経路、筋肉内経路、静脈内経路、鼻腔内経路および経口経路があるが、これに限定されるものではない。特定の実施形態では、処置を必要とする領域に本発明の医薬組成物を局所投与することが望ましい場合があり、これは、たとえば、以下に限定されるものではないが、術中の局所注入、注射、あるいは、カテーテルにより達成することができる。
【0266】
同定された薬は、標的細胞の病的成長およびこれに関連した状態に罹患しやすいか、あるいは、そのリスクがある被検体または個体に投与することができる。薬をマウス、ラットまたはヒト患者などの被検体に投与する場合、薬学的に許容されるキャリアに加えて、被検体に全身投与しても、または局所投与してもよい。処置を有利に行える患者を特定するには、患者から組織サンプルを採取し、細胞について薬に対する感受性を評価する。
【0267】
治療量は経験的に決定されるものであり、処置対象の病態、処置対象の被検体、および薬の有効性および毒性によって異なる。動物に送達する場合、薬の有効性を詳細に確認する方法が有用である。動物モデルの一例としては、MLR/MpJ−lpr/lpr(「MLR−lpr」)(Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineから入手可能)がある。MLR−lprマウスは全身性自己免疫疾患を発症する。あるいは、腫瘍の増殖を誘導することにより、たとえば、本明細書に定義したような過剰増殖性の癌細胞または標的細胞を約10〜約10個ヌードマウスに皮下接種することにより、他の動物モデルを開発してもよい。腫瘍が樹立したら、本明細書に記載の化合物を、たとえば、皮下注射により腫瘍の周囲に投与する。腫瘍の大きさの縮小を判定する腫瘍の測定は、バーニアカリパスにより週に2回二次元で行う。必要に応じて他の動物モデルを使用してもよい。上記の疾患および状態のこうした動物モデルは当該技術分野において公知である。
【0268】
いくつかの実施形態では、処置の全過程を通して一用量で連続的にまたは断続的にインビボ投与を行う。投与の最も効果的な手段および投与量を判定する方法は、当業者によく知られており、治療に使用する組成物、治療の目的、処置対象の標的細胞および処置対象の被検体によって異なる。処置する医師が選択する用量レベルおよびパターンにより単回投与または反復投与を行う。
【0269】
本薬の投与に好適な投与量製剤および方法は、当業者により容易に決定される。好ましくは、約0.01mg/kg〜約200mg/kg、一層好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg、さらに一層好ましくは約0.5mg/kg〜約50mg/kgで本化合物を投与する。本明細書に記載の化合物を別の薬と(たとえば、感作剤として)併用投与する場合、有効量は本薬を単独使用する場合より少なくてもよい。
【0270】
本医薬組成物は、経口投与しても、鼻腔内投与しても、非経口投与しても、あるいは吸入療法により投与してもよく、錠剤の形をとっても、ロゼンジの形をとっても、顆粒剤の形をとっても、カプセル剤の形をとっても、ピルの形をとっても、アンプルの形をとっても、坐剤の形をとっても、あるいはエアロゾル形態の形をとってもよい。さらに本医薬組成物は、活性成分を水性または非水性希釈液に溶かした懸濁液、溶液およびエマルジョンの形をとっても、シロップ剤の形をとっても、顆粒薬の形をとっても、あるいは散剤の形をとってもよい。本医薬組成物は、本発明の薬に加えて、他の薬学的に活性な化合物または本発明の複数の化合物をさらに含んでもよい。
【0271】
より詳細には、本明細書で活性成分とも呼ばれる本発明の薬は治療のため、以下に限定されるものではないが、経口、直腸、経鼻、局所(以下に限定されるものではないが、経皮、エアロゾル、頬粘膜および舌下)、経膣、非経口(以下に限定されるものではないが、皮下、筋肉内、静脈内および皮内)および経肺など任意の好適な経路により投与してもよい。また、好ましい経路は、処置対象の被投与者および疾患の状態および年齢によって異なることも理解されよう。
【0272】
理想的には、本薬は、疾患の部位で活性化合物がピーク濃度になるように投与すべきである。これは、たとえば、任意選択として食塩水に溶かして本薬を静脈内注射することにより、または、たとえば、活性成分を含む錠剤、カプセル剤またはシロップ剤として経口投与することにより達成することができる。
【0273】
本薬の望ましい血中レベルは、持続注入を行い疾患組織内に治療量の活性成分を与えることにより維持することができる。個々の治療用化合物または薬剤を単独で使用する際に必要とされ得るよりも、全体を構成する各抗ウイルス薬の総投与量が少なくてすむ治療剤の組み合わせを得て、それにより有害作用を抑制する有効な組み合わせを使用することを意図している。
【0274】
D.例示的な併用投与の経路および投与の留意事項
本発明はさらに、本明細書に記載の化合物と1種または複数種の他の有効成分との併用投与に関する方法も含む。実際、本発明の化合物を併用投与することにより従来技術の治療剤および/または医薬組成物を改良する方法を提供することは、本発明のさらなる態様である。併用投与の手順では、本薬を同時投与しても、または連続的に投与しもよい。一実施形態では、他の有効成分の前に本明細書に記載の化合物を投与する。本医薬製剤および投与モードは、上述のもののいずれであってもよい。さらに、併用投与する2種以上の化学薬品、生物学的治療薬または放射線は各々、異なるモードまたは異なる製剤を用いて投与してもよい。
【0275】
併用投与する1種または複数種の本薬は、処置対象の状態によって異なる。たとえば、処置する状態が癌である場合、他の薬は化学療法剤でも、または放射線でもよい。処置する状態が免疫障害である場合、他の薬は免疫抑制剤でも、または抗炎症薬でもよい。処置する状態が慢性炎症である場合、他の薬は抗炎症薬でもよい。抗癌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤などの併用投与する他の薬は、以下に限定されるものではないが、現在臨床で用いられている薬など当該技術分野においてよく知られた薬のいずれでもよい。放射線処置の適切な種類および投与線量の判定も、当該技術分野の技術の範囲内にあるか、または比較的容易に判定することができる。
【0276】
異常なアポトーシスに伴う種々の状態の処置は一般に、以下の2つの主な要因:(1)薬剤耐性の発生および(2)既知の治療薬の毒性により制限される。ある種の癌では、たとえば、化学物質および放射線療法に対する耐性は、アポトーシスの阻害に関連していることが示されている。一部の治療薬には非特異的なリンパ球毒性、腎毒性および骨髄毒性など有害な副作用がある。
【0277】
本明細書に記載の方法は、こうしたの問題のどちらにも対応する。薬剤耐性の場合、治療効果の達成には投与量を増やす必要があるが、本明細書に記載の化合物を既知の薬と併用投与するにより解決される。本明細書に記載の化合物は、既知の薬に対する標的細胞の感受性を高め(その逆の場合もある)、したがって、治療効果の達成に必要とされるこれらの薬の量が少なくなる。
【0278】
特許請求の範囲に記載される化合物の感作機能は、既知の治療剤の毒性作用に伴う問題にも対応する。既知の薬が毒性である例では、すべての場合において、特に薬剤耐性により必要投与量が増加している場合には、投与される投与量を制限することが望ましい。特許請求の範囲に記載される化合物を既知の薬と併用投与すると、必要とされる投与量が減少し、その結果、有害作用が抑制される。
【0279】
IV.薬剤スクリーニング
いくつかの態様では、本発明の化合物および有用性が期待される他の化合物について、F−ATPアーゼのオリゴマイシン感受性付与タンパク質(OSCP)部分(または他の部分)に対するその結合親和性、および/または、F−ATPアーゼ活性またはそれに関連する生物学的プロセスを変化させる能力をスクリーニングする。特に好ましい実施形態では、組換えOSCPタンパク質に対するその結合親和性を測定して本発明の方法に使用する化合物を選択する。受容体に対する薬剤および他の小分子の結合親和性を測定するための多くの好適なスクリーニングが当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、結合親和性スクリーニングをインビトロ系で行う。他の実施形態では、こうしたスクリーニングをインビボまたはエキソビボ系で行う。いくつかの実施形態では本発明の化合物を投与後に細胞内のATPのレベルを定量して本方法の有効性の指標とするのに対し、本発明の好ましい実施形態では細胞内のATPまたはpHレベルを定量する必要はない。
【0280】
さらなる実施形態は、細胞および/または組織内のスーパーオキシドのレベル(たとえば、細胞内)を測定し、本発明の意図した特定の方法および化合物の有効性を判定することに関する。これについては、当業者であれば、細胞および/または組織内のスーパーオキシドレベルを測定するのに有用な多くのアッセイおよび方法を理解し、行うことができるであろう。
【0281】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物とOSCPとの結合親和性を予測するための、構造に基づくバーチャルスクリーニング法を意図している。
【0282】
本明細書に記載のグアニジンを用いた化合物のOSCPに対する結合速度または親和性の測定が可能であれば、どのような好適なアッセイを使用してもよい。例としては、グアニジン化合物を使用した競合結合、表面プラズマ共鳴(SPR)および放射性免疫沈降アッセイ(Lowman et al.,J.Biol.Chem.266:10982[1991])があるが、これに限定されるものではない。表面プラズモン共鳴法は、表面プラズモン共鳴角と呼ばれる特定の角度で金属ガラス界面に入射する光線により、金、銀、クロムまたはアルミニウムなど導電性金属の薄膜でコーティングした表面に表面プラズモンと呼ばれる電磁波を誘導することができる。捕捉される巨大分子が結合すると、溶液と金属表面との界面領域の屈折率が変化することでSPR角も変化するが、この変化は直接測定できるか、あるいは、金属表面の下側からの反射光の量を変化させる。こうした変化は、SPR装置表面に結合した分子の質量および他の光学特性と直接関連付けることができる。こうした原理に基づくいくつかのバイオセンサー系が開示されている(たとえば、国際公開第90/05305号パンフレットを参照されたい)。さらに、SPRバイオセンサーもいくつか市販されている(たとえば、BiaCore、Uppsala、Sweden)。
【0283】
いくつかの実施形態では、細胞培養物を用いてまたはインビボ(たとえば、非ヒトまたはヒト哺乳動物)で、化合物についてATPシンターゼ活性を調節する能力をスクリーニングする。以下に限定されるものではないが、細胞増殖アッセイ(たとえば、Promega、Madison、WIおよびStratagene、La Jolla、CAから市販されている)、および細胞ベースの二量体化アッセイなど任意の好適なアッセイを用いてもよい。(たとえば、Fuh et al.,Science,256:1677[1992];Colosi et al.,J.Biol.Chem.,268:12617[1993]を参照されたい)。本発明に使用される別のアッセイフォーマットとして、細胞のATPレベルおよび細胞のスーパーオキシドレベルを測定するアッセイがあるが、これに限定されるものではない。
【0284】
加えて、本化合物については、ATP合成およびATP加水分解を測定することによりF−ATPアーゼに対する活性を試験してもよい。F−ATPアーゼによるATP合成および加水分解の阻害は、参照によって本明細書に援用するK.M.Johnson et al.Chemistry & Biology 2005,12,485−496に記載されているように行えばよい。
【0285】
本発明はまた、本発明の組成物を改変し、誘導体化して望ましい特性(たとえば、結合親和性、活性および同種のもの)を向上させるか、または望ましくない特性(たとえば、非特異的な反応性、毒性および同種のもの)を最小限に抑える方法を提供する。化学誘導体化の原理は、よく理解されている。いくつかの実施形態では、反復設計および化学合成アプローチを使用して、親化合物から誘導体化した子化合物のライブラリーを作成する。他の実施形態では、合理的設計方法を用いて、通常の実験による結果を確認する前にインシリコでリガンド−受容体相互作用を予測し、モデルを作製する。
【0286】
本発明は、F−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)(i)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含むサンプル、(ii)式IまたはIIのグアニジン化合物を含む第1の組成物および(iii)候補F−ATPアーゼ阻害剤を含む第2の組成物を得ること;(b)サンプルを第1の組成物および第2の組成物と接触させること;(c)グアニジン化合物および候補F−ATPアーゼ阻害剤のミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を測定すること;(d)グアニジン化合物および候補F−ATPアーゼ阻害剤とミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を比較すること;および(e)候補F−ATPアーゼ阻害剤の結合親和性および前記サンプルの細胞生存率評価することにより候補F−ATPアーゼ阻害剤をF−ATPアーゼ阻害剤として同定することを含む。
【0287】
ある種の実施形態では、ミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を測定するステップは、ミトコンドリアF−ATPアーゼのOSCPの結合を測定することを含むことが理解されよう。
【0288】
さらに、本発明は、ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)(i)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含む第1および第2のサンプル、(ii)式IまたはIIのグアニジン化合物を含む第1の組成物、および(iii)候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を含む第2の組成物を得ること;(b)第1のサンプルを第1の組成物と接触させること;(c)第2のサンプルを第2の組成物と接触させること;(d)第1および第2のサンプルのミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定すること;(e)第1および第2のサンプルのミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を比較すること;および(f)ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を評価することにより候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤をミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤として同定することを含む。
【0289】
ある種の実施形態では、ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定するステップは、グアニジン化合物および候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤のOSCP結合親和性を測定することを含む。ある種の実施形態では、ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定するステップは、第1および第2のサンプル中のスーパーオキシドレベルを測定する。
【0290】
さらに、本発明は、ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)式Iで表される1種または複数種の化合物を得ること、(b)式IまたはIIの1種または複数種の化合物の化学構造を改変して候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤のライブラリーを作成すること;(c)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含むサンプルに前記ライブラリーを曝露すること;および(d)それぞれのサンプルにおいて前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害する候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤をミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤として同定することを含む。
【0291】
ある種の実施形態では、ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害するステップは、それぞれのサンプル中にスーパーオキシドフリーラジカルを生成することを含む。ある種の実施形態では、ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害するステップは、それぞれのサンプル中に細胞死を起こすことを含む。
【0292】
前述の各方法では、グアニジンを用いた組成物は、本明細書に記載するような式IまたはIIの化合物を含む。
【0293】
〔実施例〕
本発明を全般的に記載してきたが、次に以下の実施例を参照すれば、本発明がさらに理解しやすくなるであろう。実施例は、本発明のある種の態様および実施形態の説明のみを目的として記載するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0294】
〔実施例1〕
グアニジンを調製する一般的な手順。
方法A:
【0295】
【化54】

【0296】
グアニジンは、3段階手順を用いて酸クロリド、アニリンおよびアミンから調製することができる。第1に、チオシアン酸カリウムを有機溶媒に溶かした懸濁液に、不可欠な酸クロリドを(未希釈でまたは適切な溶媒に溶かした溶液として)滴下して加え、この混合物を周囲温度で1〜4時間撹拌する。得られた混合物を減圧濃縮し、直ちに使用する。
【0297】
第2ステップでは、適切なアニリンを塩化メチレンなどの有機溶媒に周囲温度で溶解させ、第1のステップのイソチオシアン酸アシルを加える。得られた混合物を周囲温度で8〜16時間撹拌する。溶媒を減圧蒸発させ、得られた残渣を加温無極性有機溶媒で処理してから、放冷し、濾過により集める。集めた残渣を無極性有機溶媒でリンスし、乾燥させる。得られた残渣は、さらに精製することなく使用できる。あるいは、適切なアニリンヒドロクロリド塩を有機溶媒に溶解させ、トリエチルアミンなどの有機塩基で処理してから、周囲温度で1〜4時間撹拌する。次いでステップ1のイソチオシアン酸アシルを加え、この反応混合物を周囲温度で8〜16時間撹拌する。溶媒を減圧除去し、得られた残渣をクロマトグラフィーにより精製する。
【0298】
第3のステップでは、ステップ2のアシルチオウレアをジメチルホルムアミドなどの極性有機溶媒に周囲温度で溶解させ、1−エチル−2’,2’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを加える。得られた反応混合物を20〜60分間撹拌し、次いで適切なアミンを加える。この反応混合物を周囲温度でさらに8〜16時間撹拌し、有機溶媒の混合物で希釈し、さらに30〜120分間撹拌する。次いでこの有機溶液を水で洗浄し、水層を極性有機溶媒で再抽出し、合わせた有機層を適切な乾燥剤で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去する。所望の生成物は、必要に応じてクロマトグラフィーにより精製してもよい。
【0299】
置換ベンゾイルイソチオシアナートを調製するための代表的な手順。
【0300】
KSCN(1当量)をフラスコに加え、続いて無水アセトンをN下で加えて懸濁液を形成する。4−ブロモベンゾイルクロリド(1当量)を(たとえば、液体あるいは1Mのアセトン溶液として)滴下して加える。次いでこの反応混合物を室温で約2時間撹拌する。反応物を濾過し、濃縮して、以下の反応に直ちに使用する。
チオ尿素を調製するための代表的な手順。
【0301】
2−トリフルオロメチルアニリン(1当量)を室温で塩化メチレンに溶解させる。これに、4−ブロモベンゾイルイソチオシアナート(1当量)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させ、得られた残渣を、たとえば、加温ヘキサンまたはベンゼンなどの有機溶媒で洗浄する。この混合物を冷却し、濾過する。フィルター中の残渣をヘキサンで洗浄し、乾燥させる。この固体生成物をさらに精製することなくチオ尿素とアミンとのカップリングに使用する。
【0302】
チオ尿素をアミンとカップリングするための代表的な手順。
【0303】
N−(2−トリフルオロメチルフェニルカルバモチオイル)−4−ブロモベンズアミド(1当量)を1mLのDMFに室温で溶解させる。これに、EDCI(1.2当量)を加え、反応混合物を撹拌する。約30分後、ヒスタミン(1.2当量)を加え、反応物を一晩室温で撹拌する。反応物に1:1酢酸エチル/水の溶液を加え、1時間撹拌する。有機層を水で洗浄し、次いで水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させる。この反応生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製してもよい。
方法B:
【0304】
【化55】

【0305】
チオシアン酸カリウムのアリコート(6.6mmol、1.1当量)を、氷浴で冷却したアセトニトリル(20mL)にアシルクロリド(6mmol、1当量)を溶かした撹拌溶液に一度に加える。10分後、氷浴を除去し、反応混合物を周囲温度で撹拌させる。6時間後、アニリン化合物(6.6mmol、1.1当量)を加え、この混合物を周囲温度で撹拌する。反応の進行は、HPLC−MSで反応混合物のサンプルを解析することによりモニターできる(Onyx monolithic C18カラム、4.6×50mm;1.5mL/分;9.6分で5%〜100%MeCN/HO、0.1%TFAまでのグラジエント)。反応が十分に終了したら、反応混合物を減圧濃縮し、残渣を水(50mL)と酢酸エチル(50mL)に分配する。有機層(organic later)を水層から分離し、次いで水層を酢酸エチル(25mL)で抽出する。有機層を合わせて無水NaSOで乾燥させ、減圧濃縮してチオ尿素を得る。化合物によっては反応収率が93%を超える場合もある。
【0306】
チオ尿素(0.06mmol、1当量)およびトリエチルアミン(0.12mmol、2当量)をバイアル中のアセトニトリル(0.5mL)に溶かした撹拌溶液に、ビスマス酸ナトリウム(0.06mmol、1当量)、ヨウ化ビスマス(III)(0.003mmol、0.05当量)およびRNHに対応するアミン化合物を加える。バイアルの蓋を閉め、撹拌しながら加熱する(たとえば、65℃に加熱する)。反応の進行は、HPLC−MSを用いて反応混合物のサンプルを解析することによりモニターできる。反応が十分に終了したら、反応混合物を減圧濃縮し、残渣をDMSO(0.5mL)に溶解させ、遠心し、上清を取り除き、HPLCにより精製する。好適なHPLCプロファイルの1つは、Phenomenex Gemini C−18カラム、110Å、30×100mmを使用、流量:20mL/分、移動相A:0.1%TFA/水、移動相B:0.1%TFA/ACN、30分かけて20%Bから60%Bまでのグラジエント溶出、MS検出を行うものである。十分な純度を持つ所望の化合物を含む画分を合わせて凍結乾燥させると、トリフルオロ酢酸塩として生成物を得ることができる。置換グアニジン化合物の合成するための他の手順については、各々を参照によって本明細書に援用するS.Cunha et al.Tetrahedron Letters 47(2006)6955およびS.Cunha et al.Tetrahedron Letters 43(2002)49−52に記載されている。
【0307】
上記の代表的な手順に基づき、表Iの化合物I−1〜I−32、およびI−85〜I−138と、表II〜IIIの化合物とを調製した。出発材料は、商業的供給源(たとえば、酸クロリド:4−クロロベンゾイルブロミド、4−クロロベンゾイルクロリド、3−クロロベンゾイルクロリドおよび4−フルオロベンゾイルクロリド;アニリン:2−トリフルオロメチルアニリン、2−tert−ブチルアニリン、ナフタレン−2−アミンおよびビフェニル−4−アミン;およびアミン:5−アミノ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン、6−アミノベンゾ[d]オキサゾール−2(3H)−オン、5−アミノ−3−エチルインドリン−2−オン、1H−インダゾール−5−アミン、2−(1H−イミダゾール−4−イル)エタンアミン)および5−(2−アミノエチル)ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン)から得てもよいし、または市販されている材料から容易に調製してもよい。
【0308】
上記の合成手順は、表Iの化合物I−33〜I−84、および表IV〜Vの化合物の調製に使用できることを意図している。いくつかのアミノ化合物の調製手順を以下に記載する。たとえば、市販されている3−フルオロ−4−ニトロアニリンから6−アミノ−1−(3−ヒドロキシプロピル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オンを製造する手順をスキーム3に示す。合成の第1のステップでは、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で3−フルオロ−4−ニトロアニリンをジ−tert−ブチルジカルボナートと反応させてアミノ基を保護してカルバマートを得る。このフルオロフェニルカルバマート中間体を3−アミノプロパノールと反応させてヒドロキシプロピル−ニトロ−アニリン中間体を得る。合成の次のステップでは、アンモニウムクロリド水の存在下で鉄を用いてイミダゾリジン−2−オン環を構築し、次いで1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)と反応させる必要がある。合成の最終ステップでは、このカルバマートをトリフルオロ酢酸(TFA)に曝露してBoc保護基を除去する。
【0309】
【化56】

【0310】
市販されている3−フルオロ−4−ニトロアニリンから6−アミノ−1−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オンを製造する手順をスキーム4に示す。
【0311】
【化57】

【0312】
市販されている3−フルオロ−4−ニトロアニリンから6−アミノ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2(1H)−オンを製造する手順をスキーム5に示す。
【0313】
【化58】

【0314】
市販されている3−フルオロ−4−ニトロアニリンから6−アミノベンゾ[d]チアゾール−2(3H)−オンを製造する手順をスキーム6に示す。
【0315】
【化59】

【0316】
例示的な化合物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製し、質量分析法(MS)により特徴付けを行った。HPLC法および保持時間を質量スペクトルデータと共に以下の表VIに示す。使用するHPLC法は以下の通りである:方法Aの条件は、Phenomenex Chromolith SpeedRod RP−18e C18(4.6mm×50mm)、1.5mL/分、5%MeCN/HO(0.1%TFA)〜100%MeCN(0.1%TFA)まで10分のグラジエント、次いで100%MeCN(0.1%TFA)で1分;方法Bの条件は、Phenomenex Gemini NX C18(3.0mm×50mm)、40℃、1.5mL/分、5%MeCN/HO(0.1%TFA)〜100%MeCN(0.1%TFA)まで4分のグラジエント、次いで100%MeCN(0.1%TFA)で1分;方法Cの条件は、Zorbax C−18カラム、4.6×50mm、3.5ミクロン、1.0mL/分、25%MeCN/HO(0.1%TFA)で1分、25%〜95%MeCN/HO(0.1%TFA)まで5分のグラジエント、次いで95%MeCN/HO(0.1%TFA)で2分;および方法Dの条件は、Waters C−18カラム、4.6×150mm、3.5ミクロン、1.0mL/分、25%MeCN/HO(0.1%TFA)で2分、25%〜95%MeCN/HO(0.1%TFA)まで10分のグラジエント、次いで95%MeCN/HO(0.1%TFA)で5分とした。
【0317】
【表10】

【0318】
【表11】

【0319】
【表12】

【0320】
【表13】

【0321】
〔実施例2〕
表VIIに記載した化合物についてRamos細胞の細胞毒性を試験した。アッセイについては、K.M.Johnson et al.Chemistry & Biology 2005,12,485−496に記載されているように行った。
【0322】
【表14】

【0323】
【表15】

【0324】
【表16】

【0325】
【表17】

【0326】
文献の引用
本明細書に記載した特許文書および科学論文はそれぞれ、あらゆる面で開示内容全体を参照によって援用する。
【0327】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態で実施してもよい。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点で例示と解釈すべきものであり、本明細書に記載の本発明を限定するものではない。このため、本発明の範囲は、明細書本文ではなく添付の特許請求の範囲により示されるものであり、さらに特許請求の範囲の均等範囲に属する変更はすべて、特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで表される化合物であって:
【化1】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【化2】

であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化3】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物である、
化合物。
【請求項2】
は、
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、
【化5】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、
【化6】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
は、
【化7】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
は−N(R)−であり、Xは−N(H)−、−N(アルキル)−または−N(ヒドロキシアルキル)−である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
は−N(R)−であり、XはOである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
は−N(R)−であり、Xは−C(H)(アルキル)−である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
およびRは水素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
は、
【化8】

である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
はアルキルまたはハロアルキルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
は水素、ハロゲンまたはアルキルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
mは1である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
はハロゲンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
nは0、1または2である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
は、
【化9】

であり;Xは−N(R)−であり;Rはハロゲンであり;Rはアルキルまたはハロアルキルであり;Rは水素であり、mは1であり;nは0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
下記式IIで表される化合物であって:
【化10】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化11】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、
化合物。
【請求項18】
、RおよびRは水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
は、
【化12】

である、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項20】
は、
【化13】

であり、Rは(C〜C)アルキルである、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項21】
は、
【化14】

である、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項22】
は、
【化15】

である、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項23】
はハロゲンである、請求項17〜22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
nは1、2または3である、請求項17〜23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
mは1である、請求項17〜24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
、RおよびRは水素であり;Rは、
【化16】

であり;Rはハロゲンであり;Rは(C〜C)アルキルであり;Rは水素またはハロゲンであり;nは2であり;mは1である、請求項17に記載の化合物。
【請求項27】
前記化合物は表I〜Vに記載した化合物の1つである、請求項1または17に記載の化合物。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物および薬学的に許容されるキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項29】
ループス、関節リウマチ、乾癬、移植片対宿主病、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、循環器疾患、骨髄腫、リンパ腫、癌および細菌感染症からなる群から選択される障害を処置する方法であって、治療有効量の式IまたはIIの化合物をそれを必要としている患者に投与して前記障害の症状を軽減させることを含み、式Iは下記式で表され:
【化17】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【化18】

であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化19】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり;
式IIは下記式で表され:
【化20】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化21】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、
方法。
【請求項30】
前記化合物は式Iの化合物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
は、
【化22】

である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
は、
【化23】

である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
は、
【化24】

である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
は、
【化25】

であり;Xは−N(R)−であり;Rはハロゲンであり;Rはアルキルまたはハロアルキルであり;Rは水素であり、mは1であり;nは0、1または2である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物は式IIの化合物である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
は、
【化26】

である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
は、
【化27】

であり、Rは(C〜C)アルキルである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
は、
【化28】

である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
は、
【化29】

である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
、RおよびRは水素であり;Rは、
【化30】

であり;Rはハロゲンであり;Rは(C〜C)アルキルであり;Rは水素またはハロゲンであり;nは2であり;mは1である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物は表I〜Vに記載される化合物の1つである、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記障害はクローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、移植片対宿主病、ループス、関節リウマチまたは乾癬である、請求項29〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記障害は骨髄腫、リンパ腫、循環器疾患または癌である、請求項29〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記障害は細菌感染症である、請求項29〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
−ATPアーゼを阻害する方法であって、F−ATPアーゼを請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物に曝露することを含む、方法。
【請求項46】
前記F−ATPアーゼはミトコンドリアF−ATPアーゼである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法であって:
a)以下を得ること、
i)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含むサンプル、
ii)式IまたはIIのグアニジン化合物を含む第1の組成物であって、式Iは下記式で表され:
【化31】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【化32】

であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化33】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり;
式IIは下記式で表され:
【化34】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化35】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、化合物;
iii)候補F−ATPアーゼ阻害剤を含む第2の組成物;
b)前記サンプルを前記第1の組成物および前記第2の組成物と接触させること;
c)前記グアニジン化合物および前記候補F−ATPアーゼ阻害剤の前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を測定すること;
d)前記グアニジン化合物および前記候補F−ATPアーゼ阻害剤の前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を比較すること;および、
e)前記候補F−ATPアーゼ阻害剤の前記結合親和性および前記サンプルの細胞生存率を評価することにより前記候補F−ATPアーゼ阻害剤をF−ATPアーゼ阻害剤として同定すること、
を含む、方法。
【請求項48】
前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ結合親和性を測定する前記ステップは前記ミトコンドリアF−ATPアーゼのOSCPの結合を測定することを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法であって:
a)以下を得ること:
i)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含む第1および第2のサンプル、
ii)式IまたはIIのグアニジン化合物を含む第1の組成物であって、式Iは下記式で表され:
【化36】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【化37】

であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化38】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり;
式IIは下記式で表され:
【化39】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化40】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、化合物;および、
iii)候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を含む第2の組成物;
b)前記第1のサンプルを前記第1の組成物と接触させること;
c)前記第2のサンプルを前記第2の組成物と接触させること;
d)前記第1および第2のサンプルの前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定すること;
e)前記第1および第2のサンプルの前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を比較すること;および、
f)ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を評価することにより前記候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤をミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤として同定すること、
を含む、方法。
【請求項50】
ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定する前記ステップは前記グアニジン化合物および前記候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤の前記OSCP結合親和性を測定することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を測定する前記ステップは前記第1および第2のサンプル中のスーパーオキシドレベルを測定することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定する方法であって:
a)式IまたはIIで表される1種または複数種の化合物であって、式Iは下記式で表され:
【化41】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
は、
【化42】

であり;
は−N(R)−、Oまたは−C(R−であり;
は−N(H)−、−N(アルキル)−、−N(ヒドロキシアルキル)−、O、Sまたは−C(R−であり;
は−N(R)−、−C(R−または−C(RC(R−であり;
およびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化43】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、−NOまたは−CNを表し;
は出現するごとに独立に水素またはアルキルを表し;
は出現するごとに独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式Iで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり;
式IIは下記式で表され:
【化44】

その塩、エステルおよびプロドラッグを含み、式中、
、RおよびRは出現するごとに独立に水素または(C〜C)アルキルを表し;
は、
【化45】

であり;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に(C〜C)アルキルまたはハロアルキルを表し;
は出現するごとに独立に水素、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルを表し;
nは0、1、2、3または4であり;
mは出現するごとに独立に1または2を表し;
式IIで表される化合物の立体中心の立体配置はR、Sまたはこれらの混合物であり、ただしRがハロゲンである場合、Rはハロアルキルではない、化合物を得ること;
b)式Iの前記1種または複数種の化合物の化学構造を改変して候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤のライブラリーを作成すること;および、
c)ミトコンドリアF−ATPアーゼを含むサンプルに前記ライブラリーを曝露すること;および、
d)前記それぞれのサンプルの前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害するミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤として前記候補ミトコンドリアF−ATPアーゼ阻害剤を同定すること、
を含む、方法。
【請求項53】
前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害する前記ステップは前記それぞれのサンプル中にスーパーオキシドフリーラジカルを生成することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ミトコンドリアF−ATPアーゼ活性を阻害する前記ステップは前記それぞれのサンプル中に細胞死を起こすことを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記化合物は式Iの化合物である、請求項45〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
は、
【化46】

である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
は、
【化47】

であり;Xは−N(R)−であり;Rはハロゲンであり;Rはアルキルまたはハロアルキルであり;Rは水素であり、mは1であり;nは0、1または2である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物は式IIの化合物である、請求項45〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
【化48】

、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
、RおよびRは水素であり;Rは、
【化49】

であり;Rはハロゲンであり;Rは(C〜C)アルキルであり;Rは水素またはハロゲンであり;nは2であり;mは1である、請求項58に記載の方法。

【公表番号】特表2012−502111(P2012−502111A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526999(P2011−526999)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/056675
【国際公開番号】WO2010/030891
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(510041142)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (20)
【Fターム(参考)】