説明

アンダーフィル材料、半導体装置及びその製造方法

【課題】無機充填剤を高充填しても低粘度で、かつ、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を比較的低温且つ短時間で得ることができるアンダーフィル材料、及び、このものを用いて実装されてなる半導体装置及びその製造方法の提供。
【解決手段】式(I)で表される脂環式エポキシ樹脂AとビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤、マイクロカプセル型潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤、及び、平均粒径5μm以下の球状シリカを含有し、(脂環式エポキシ樹脂Aの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.2〜0.8であるアンダーフィル材料、並びに、該アンダーフィル材料を用いた半導体装置及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機充填剤を高充填した場合であっても、低粘度で、かつ、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を得ることができるアンダーフィル材料、このアンダーフィル材料を用いて実装されてなる半導体装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高度情報化社会の急激な進展、情報通信網の発達に伴い、情報処理速度の高速化、通信波長領域の高周波化を達成するために、半導体チップ等の電子部品と回路基板との接続配線距離を極力短縮して、伝送速度の高速化、高周波領域での伝送損失の低下を図る開発がなされている。
【0003】
半導体チップ等の電極と回路基板の電極とを接続する方法としては、金線や半田等を介して直接接続する方法(ベアチップ実装法)が広く用いられている。例えば、ベアチップ実装法の1つであるフリップチップボンディング技術では、半導体チップと回路基板とを、半導体チップ電極部に形成された半田バンプ等により回路基板上に形成された電極と直接接続を行う。
【0004】
ところで、この場合、得られる半導体回路をヒートサイクル試験に供すると、回路基板と半導体チップとの線膨張係数の差に起因して半田バンプ等に過剰な機械的応力が加わり、半田バンプ等にクラックが発生し、半導体回路の接続信頼性が損なわれることがあった。
この問題を解決すべく、回路基板と半導体チップとの空隙に、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の汎用型芳香族エポキシ樹脂を用いるアンダーフィル材料を充填する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は一般に粘度が高く流動性が低いため、この樹脂を用いるアンダーフィル材料は、回路の微細な隙間に対する浸透性や塗布作業性に劣るという問題があった。特に、アンダーフィル材料に充填剤を含有させる場合においては、さらに粘性が高くなるため、この問題はさらに顕著になる。
【0006】
上記エポキシ樹脂を用いるアンダーフィル材料の流動性を高める方法としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の溶剤で希釈する方法が考えられる。
しかしながら、この方法による場合、作業性、環境安全性等において問題がある。
【0007】
一方、粘度の低いエポキシ樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや1,2,8,9−ジエポキシリモネン等の、分子内に脂環骨格を持った脂環式エポキシ樹脂が知られている。また、特許文献1には、ビシクロへキシル−3,3’−ジエポキシドが開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの脂環式エポキシ樹脂を用いるアンダーフィル材料を硬化する場合には、上記脂環式エポキシ樹脂はグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に比して反応性が悪いため、ガラス転移温度が高く、線膨張率の低い硬化物を低温・短時間で得ることは困難であった。
【0009】
一方、本発明に関連して、特許文献2、3等にマイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−204228号公報
【特許文献2】特開平5−65392号公報
【特許文献3】特開平10−95835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、無機充填剤を高充填した場合であっても、低粘度で、かつ、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を比較的低温且つ短時間で得ることができるアンダーフィル材料、及び、このアンダーフィル材料を用いて実装されてなる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤、硬化促進剤及び無機充填剤を含有する樹脂組成物について鋭意研究した結果、エポキシ樹脂として、後述する式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂Aと、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤として、25℃で液体の酸無水物硬化剤、硬化促進剤として、マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤、及び、無機充填剤として、平均粒径5μm以下の球状シリカを含有し、前記脂環式エポキシ樹脂Aの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対する割合、(脂環式エポキシ樹脂Aの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.2〜0.8である樹脂組成物は、無機充填剤を高充填しても、ガラス転移温度(Tg)が高く、線膨張係数が小さい硬化物を容易に得ることができるものであるため、アンダーフィル材料として好適に用いることができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(8)のアンダーフィル材料、(9)の半導体装置、及び、(10)の半導体装置の製造方法が提供される。
(1)エポキシ樹脂として、式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を表す。)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂AとビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤として、25℃で液体の酸無水物硬化剤、硬化促進剤として、マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤、及び、無機充填剤として、平均粒径5μm以下の球状シリカを含有し、前記脂環式エポキシ樹脂Aの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対する割合、(脂環式エポキシ樹脂Aの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.2〜0.8であることを特徴とするアンダーフィル材料。
【0016】
(2)前記式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂Aが、ガスクロマトグラフィーにより検出される、2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式エポキシ樹脂であることを特徴とする(1)に記載のアンダーフィル材料。
【0017】
(3)前記脂環式エポキシ樹脂Aが、テトラヒドロインデンジエポキシドであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のアンダーフィル材料。
(4)前記酸無水物硬化剤が、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、又はメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
(5)前記球状シリカの含有量が、アンダーフィル材料全体に対して40重量%以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
【0018】
(6)前記球状シリカが、平均粒径3μm以下の球状シリカであり、かつその含有量がアンダーフィル材料全体に対して50重量%以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
(7)さらに、エポキシ基を有するアルコキシオリゴマーを含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
(8)前記エポキシ基を有するアルコキシオリゴマーの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対する割合、(エポキシ基を有するアルコキシオリゴマーの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.05〜0.3であることを特徴とする(7)に記載のアンダーフィル材料。
【0019】
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のアンダーフィル材料を用いて半導体素子と回路基板との間を封止成形して形成された半導体装置。
(10)(1)〜(8)のいずれかに記載のアンダーフィル材料を、60〜100℃に加温した半導体素子と回路基板との間の空隙部に注入し、次いで前記アンダーフィル材料を加熱・硬化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアンダーフィル材料は、高温(90℃)下でもキャピラリーフロー性に優れているため、半導体素子と半導体素子、半導体素子と回路基板等を接続するバンプ間の隙間に短時間でボイド無く浸透する。また、その硬化物はガラス転移温度が高く線膨張率が低いため、本発明のアンダーフィル材料を用いて実装した半導体素子は、ヒートサイクル試験における優れた接続信頼性を示す。
本発明の半導体装置は、本発明のアンダーフィル材料により封止されているため、半導体チップとの線膨張率差が比較的小さく、ヒートサイクル試験において優れた接続信頼性を示す。
本発明の半導体装置の製造方法によれば、本発明の半導体装置を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の半導体装置の断面図である。
【図2】実施例及び比較例においてキャピラリーフロー性の評価に用いた装置の模式図である。(A)は装置の斜視図、(B)は装置のXY断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、1)アンダーフィル材料、2)半導体装置、及び、3)その製造方法、に項分けして詳細に説明する。
【0023】
1)アンダーフィル材料
本発明のアンダーフィル材料は、以下の(a)〜(d)の成分を含有することを特徴とする。
(a)エポキシ樹脂:前記式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂A及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂
(b)エポキシ樹脂硬化剤:25℃で液体の酸無水物硬化剤
(c)硬化促進剤:マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤
(d)無機充填剤:平均粒径5μm以下の球状シリカ
【0024】
(a)エポキシ樹脂
本発明において用いるエポキシ樹脂は、前記式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂Aと、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(以下、両者を合わせて、「エポキシ樹脂(a)」ということがある。)とを含み、前記脂環式エポキシ樹脂Aの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対する割合、(脂環式エポキシ樹脂Aの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.2〜0.8であることを特徴とする。
【0025】
〈式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂A〉
本発明においては、少なくとも2種のエポキシ樹脂を用いる。
前記式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂A(以下、単に「脂環式エポキシ樹脂A」ということがある。)がその1つである。前記式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂Aは、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明においては、前記式(I)で表される化合物のうち、25℃で液体のものを使用する。
前記式(I)中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
前記R〜R12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等の炭素数2〜20のアルキリデン基;等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、R〜R12としては、光透過性と耐黄変性とにバランスよく優れる硬化物を得ることができることから、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又はメチル基であるのがより好ましく、すべて水素原子であるのが特に好ましい。
【0028】
すなわち、本発明においては、前記式(I)で表される化合物のうち、R〜R12がすべて水素原子である、25℃で液体の下記式(I−1)で表される化合物(テトラヒドロインデンジオキサイド)が特に好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
脂環式エポキシ樹脂Aは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記に示すように、下記式(II)で表される対応する環状オレフィン化合物を、酸化剤により酸化(エポキシ化)する方法が挙げられる。
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、R〜R12は前記と同じ意味を表す。)
酸化剤としては、過酸化水素、脂肪族過カルボン酸、有機過酸化物等が挙げられる。
酸化剤の使用量は、環状オレフィン化合物に対して当モル以上、好ましくは、1〜2倍モルである。
【0033】
エポキシ化反応は、溶媒中で行うのが好ましい。用いる溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;等が挙げられる。
【0034】
反応温度は、0℃以上用いる溶媒の沸点以下、好ましくは20〜70℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常1〜100時間、好ましくは2〜50時間である。
反応終了後は、例えば、貧溶媒で沈殿させる方法、エポキシ化物を熱水中に攪拌の下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、又は、直接脱溶媒法等を行うことにより、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
【0035】
本発明においては、脂環式エポキシ樹脂Aが、ガスクロマトグラフィーにより検出される、2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上、好ましくは95%以上である高純度脂環式エポキシ樹脂であるのが望ましい。
このような高純度脂環式エポキシ樹脂を用いることにより、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を効率的に得ることができる。また、当該硬化物は、光透過性と耐黄変性に優れるという特性を有する。エキソ−エキソ立体異性体はその立体構造の関係で他の3つの異性体に較べてエポキシ基の反応性が高いと考えられるが、かかる性質が寄与しているものと推定される。なお、高純度脂環式エポキシ樹脂中、エキソ−エキソ立体異性体以外の3つの立体異性体の存在割合は特に限定されるものではない。
【0036】
前記脂環式エポキシ樹脂Aの4つの立体異性体の、ガスクロマトグラフィーによる定量分析は、例えば、下記の測定条件で行うことができる。
【0037】
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−1(ヒューレットパッカード社製)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
液相 100%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0mL/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):40℃で3分間保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:200
サンプル:0.4μL
【0038】
また、ガスクロマトグラフィーで検出される脂環式エポキシ樹脂Aの4つの立体異性体の構造はH−NMRや13C−NMRで帰属することができる。
【0039】
前記4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソ立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式エポキシ樹脂は、前記式(I)で表される化合物の4つの立体異性体混合物を、蒸留やカラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法に供し、分離・精製することで得ることができる。なかでも、当該混合物を、後述の<脂環式エポキシ樹脂Aの精製例>に記載の方法に従って分離・精製するのが好ましい。
分離・精製することにより得られた4つの立体異性体は、1種の異性体を単独で、或いは2種以上の異性体を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
〈ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂〉
本発明において用いる少なくとも2種のエポキシ樹脂のうち、もう一方は、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂である。
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂は、ビスフェノールFから誘導される、常温で液状のエポキシ樹脂である。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、
【0041】
【化4】

【0042】
で表されるものが挙げられる。式中、nは正数であるが、平均値として1未満のものが常温において液状となる。
【0043】
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂としては、市販品(例えば、商品名:jER YL983U、三菱化学社製)をそのまま使用することができる。ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、エポキシ樹脂として、少なくとも、前記脂環式エポキシ樹脂AとビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を併用し、脂環式エポキシ樹脂Aの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対し、(脂環式エポキシ樹脂Aの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.2〜0.8、好ましくは、0.3〜0.7となるように使用することにより、より優れた本発明の効果を得ることができる。
【0044】
(b)25℃で液体の酸無水物硬化剤
本発明のアンダーフィル材料は、エポキシ樹脂(a)に加えて、エポキシ樹脂硬化剤として、25℃で液体の酸無水物硬化剤(以下、「酸無水物硬化剤(b)」ということがある。)を含有する。
酸無水物硬化剤(b)としては、エポキシ樹脂を、熱や光により硬化させ得るエポキシ樹脂用の、25℃で液体の酸無水物硬化剤であれば、特に制約はない。
酸無水物硬化剤(b)としては、分子中に脂肪族環又は芳香族環を1個又は2個有するとともに、酸無水物基を1個又は2個有する、炭素原子数4〜25個、好ましくは8〜20個の酸無水物が好適である。
【0045】
具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、グルタル酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、本発明の目的とする効果がより得られやすいことから、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
酸無水物硬化剤(b)は1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
また、本発明のアンダーフィル材料の含浸性に悪影響を与えない範囲で、常温で固体の酸無水物硬化剤、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等を併用することができる。常温で固体の酸無水物硬化剤は、酸無水物硬化剤(b)に溶解させ、常温で液状の混合物として使用するのが好ましい。
本発明においては、酸無水物硬化剤(b)として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、又は、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物の使用が好ましい。
【0047】
本発明においては、例えば、商品名「MH−700」、「HNA−100」(以上、新日本理化社製)、「HN−5500E」、「HN−7000」(以上、日立化成工業社製)、グルタル酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製)等の市販品を用いることができる。
【0048】
酸無水物硬化剤(b)の使用割合は、硬化剤としての効果を発揮しうる有効量であれば特に制限はないが、通常エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量1当量に対して、酸無水物当量として0.5〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.2当量の範囲である。
【0049】
(c)マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤
本発明のアンダーフィル材料は、前記エポキシ樹脂(a)及び酸無水物硬化剤(b)に加えて、さらにマイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤(以下、「硬化促進剤(c)」ということがある。)を含有する。硬化促進剤(c)は、エポキシ樹脂(a)が酸無水物硬化剤(b)によって硬化する際、硬化反応を促進する機能を有する。
【0050】
マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤は、エポキシ樹脂硬化促進剤をマイクロカプセル〔被覆膜(シェル)〕内に収容して潜在性にしたものである。加熱することによってシェルが溶解し、コア成分のエポキシ樹脂硬化促進剤による反応が開始する。すなわち、半導体素子の封止時のエポキシ樹脂の硬化温度未満では、シェルがコア成分と硬化剤との物理的接触を遮断しているので、貯蔵時等におけるエポキシ樹脂の所望されない硬化を抑制することができ(貯蔵安定性の向上)、常温での作業性に優れ、可使時間が長くなるという効果を奏する。
【0051】
前記コア成分のエポキシ樹脂硬化促進剤としては、例えばアミン類、ポリアミド類、イミダゾール類、尿素類、ヒドラジド類等、又はこれらの化合物のエポキシアダクト等が挙げられる。
【0052】
シェルの成分としては、例えば、高分子量のエポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0053】
マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤は、例えば、コアを形成するための出発材料となる粒子を分散媒に分散させ、この分散媒に、シェルを形成する成分を添加して出発材料粒子上に析出させる方法;コアを形成するための出発材料となる粒子を分散させた分散媒に、シェルを形成する成分となる材料を添加し、出発材料粒子の表面を反応の場として、そこでシェル形成成分を生成する方法;等の、従来公知の方法により製造することができる。後者の方法は、反応と被覆を同時に行うことができる。
【0054】
分散媒としては、溶媒、可塑剤、樹脂類等が挙げられる。
溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;メタノール、イソプロパノール等のアルコール類;水;等が挙げられる。可塑剤としては、フタル酸ジブチル等のフタル酸ジエステル系;アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系;リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系;ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系;等の可塑剤が挙げられる。樹脂類としては、シリコーン樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類等が挙げられる。
【0055】
シェルの形成反応温度は、通常、−10℃〜+150℃、好ましくは、0℃〜100℃である。反応時間は、通常10分間から24時間、好ましくは2〜10時間である。
【0056】
このような硬化促進剤(c)としては、例えば、旭化成のノバキュア(登録商標)HX3088、HX3721、HX3722、HX3613、HX3741、HX3742、HX3748、HX3921HP、HX3941HP等の市販品をそのまま使用することができる。
【0057】
硬化促進剤(c)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
硬化促進剤(c)の使用量は、硬化促進効果が得られる量であれば特に制限はないが、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、その有効成分が、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部となる量である。
【0058】
(d)無機充填剤
本発明のアンダーフィル材料は、前記エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)及び硬化促進剤(c)に加えて、さらに無機充填剤(d)として、平均粒径5μm以下の球状シリカを含有する。
【0059】
球状シリカとしては、溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶質シリカ、ゾルゲルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられる。なかでも、最密充填に適した粒度分布の設計が可能なことから、溶融球状シリカが好ましい。
【0060】
溶融球状シリカは、球状の非晶質シリカであって、最密充填に適した粒度分布の設計が可能なため、高充填が可能なシリカである。
溶融球状シリカは、製法によって、天然溶融球状シリカと合成溶融球状シリカに大別され、本発明においては、いずれも使用可能である。
【0061】
天然溶融球状シリカは天然ケイ石が原料として用いられる。水洗、破砕されたミクロンサイズのケイ石が、LPG/酸素火炎中に供給され、加熱されて軟化し表面張力によって球状になり、火炎を出たところで急冷されて非晶質の球状シリカとなる。原料の破砕ケイ石の粒度や溶融条件によって種々の平均粒径のものが製造される。
【0062】
合成溶融球状シリカは、金属ケイ素と塩化水素から合成された高純度四塩化ケイ素が原料として用いられる。水素/酸素火炎中に四塩化ケイ素が供給され、火炎中にて四塩化ケイ素の高温加水分解によりシリカが生成する。次いで火炎中でシリカが溶融し、表面張力によって球状になり、火炎を出たところで急冷されて非晶質の球状シリカとなる。溶融条件によって種々の平均粒径のものが製造される。
【0063】
用いる球状シリカの平均粒径は、凝集・沈降がしにくいことから、粒子を三次元的にみたときの長手方向と短手方向の長さの平均値で、5μm以下であり、3μm以下であるのがより好ましく、1μm以下であるのがさらに好ましい。より詳しくは、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましく、0.5〜1μmであるのがさらに好ましい。
また、用いる球状シリカに含まれる粗大粒子の粒径(最大粒径)は、通常50μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。この範囲のシリカを用いることで、微細バンプ間にも浸透容易な液状アンダーフィル材料を効率的に提供することが可能となる。
【0064】
球状シリカの使用割合は、アンダーフィル材料全体に対して、40重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上であるのがより好ましい。より詳しくは、40〜80重量%であるのが好ましく、50〜70重量%であるのがより好ましい。
【0065】
なかでも、微細バンプ間への浸透性と作業性を考慮すると共に、得られる半導体装置の接続信頼性を充分高める観点から、球状シリカが、平均粒径が5μm以下であり(下限は通常0.1μm)、かつその含有量がアンダーフィル材料中40重量%以上である(上限は通常80重量%)のが好適であり、平均粒径が3μm以下であり(下限は通常0.5μm)、かつその含有量がアンダーフィル材料中50重量%以上である(上限は通常70重量%)のが特に好適である。
【0066】
無機充填剤(d)として、前記球状シリカの他、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の無機充填剤を併用してもよい。他の無機充填剤としては、シリカバルーン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、及びストロンチウムフェライト等の無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、及びガラスバルーン等の無機ケイ酸塩;等が挙げられる。
【0067】
(e)シランカップリング剤
本発明のアンダーフィル材料には、樹脂成分と無機充填剤(d)との接着性を高めるために、所望によりシランカップリング剤(e)をさらに添加することができる。
シランカップリング剤(e)の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;γ−ウレイドメチルトリエトキシシラン等のウレイドシラン;等が挙げられる。
これらは1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤(e)の配合量は、無機充填剤(d)100重量部に対して0.05〜5重量部であるのが好ましく、0.1〜2.5重量部であるのがより好ましい。
【0068】
(f)エポキシ基を有するアルコキシオリゴマー
本発明のアンダーフィル材料においては、さらに、濡れ性改質剤として、エポキシ基を有するアルコキシオリゴマー(f)(以下、「アルコキシオリゴマー(f)」ということがある。)を含有するのが好ましい。
アルコキシオリゴマー(f)は、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物の部分加水分解縮合物であって、その重合度が、通常2〜100程度のものをいう。
エポキシ基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化5】

【0070】
式中、Xは、エポキシ基を有する有機官能基であり、Yは加水分解性基であり、nは、0、1又は2である。
Xのエポキシ基を有する有機官能基としては、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル基等の、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基;や、3−グリシドキシプロピル基等の、グリシドキシ基を有する基;などが得られる。
Yで示す加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;などが挙げられ、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、耐候性に優れることから、メトキシ基が特に好ましい。
【0071】
前記式(1)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;
2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;
2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルジメチルメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類;等が挙げられる。
【0072】
このような有機ケイ素化合物から得られるオリゴマーは、混合物であることが多く、唯一の構造を示すのは難しいが、市販品として、X−41−1056、X−41−1053、X−41−1059A(いずれも信越化学工業社製)等を例示することができる。
【0073】
アルコキシオリゴマー(f)は、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されたレジンであり、水分(湿気)がなければ安定に存在し、加水分解して初めて硬化するタイプであるため、無溶剤化が可能となる。
また、アルコキシオリゴマー(f)を配合することにより、硬化がより促進され、より接着性の高い硬化物を得ることができる。
【0074】
アルコキシオリゴマー(f)の配合量は、エポキシ樹脂(a)の全重量に対する割合、(アルコシキオリゴマー(f)の重量)/(エポキシ樹脂(a)の重量)で、0.05〜0.3となる量であるのが好ましい。
【0075】
(g)その他の成分
本発明のアンダーフィル材料においては、エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、無機充填剤(d)、及び、所望によりシランカップリング剤(e)、アルコキシオリゴマー(f)のほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、反応調整剤、他のエポキシ樹脂、他の添加剤等が挙げられる。
【0076】
反応調整剤としては、水酸基を有する化合物が挙げられる。水酸基を有する化合物を添加することでアンダーフィル材料の硬化反応を緩やかに進行させることができる。水酸基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。反応調整剤を使用する場合、その配合量としては、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0077】
他のエポキシ樹脂の具体例としては、前記脂環式エポキシ樹脂A以外の脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能型エポキシ樹脂が挙げられ、塩素含有率が低いものが特に好ましい。
【0078】
前記脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、リモネンジエポキシド、1−エポキシ−3,4−エポキシシクロヘキサン、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス3−シクロヘキセニルメチルエステル及びそのε−カプロラクトン付加物、並びに、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステル及びそのε−カプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0079】
上記以外にもフェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールとの重合物をエポキシ化したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェノールとフェノールとの縮合体をエポキシ化したフェノール・ビフェニレン型エポキシ樹脂、ナフトールとフェノール類との縮合物をエポキシ化したナフタレン型エポキシ樹脂等の変性ノボラック型エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
【0080】
これらの他のエポキシ樹脂は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、より本発明の目的とする効果が得られ易いことから、25℃で液状の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、又は脂環式エポキシ樹脂A以外の脂環式エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
他のエポキシ樹脂の配合量は、用いるエポキシ樹脂の全量中、通常50重量%以下であることが好ましい。他のエポキシ樹脂の配合量が、用いるエポキシ樹脂の全量中50重量%を超えると本発明の目的とする効果が得られにくくなる。
【0081】
他の添加剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、蛍光体、イオン吸着体、染料、顔料、低応力化剤、可撓性付与剤、離型剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤等が挙げられる。
他の添加剤の配合量は、それぞれ、アンダーフィル材料中、重量基準で、通常5%以下である。
【0082】
<アンダーフィル材料の調製>
本発明のアンダーフィル材料は、エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、無機充填剤(d)、並びに、所望により、シランカップリング剤(e)、アルコキシオリゴマー(f)、及び他の成分を、公知の方法に従って撹拌、混合することにより調製することができる。
【0083】
撹拌、混合の際の温度は、配合する硬化剤や硬化促進剤の種類等によっても異なるが、通常、10〜60℃程度が好ましい。調製時の設定温度が10℃未満では、粘度が高すぎて均一な撹拌、混合作業が困難になる場合がある。逆に、調製時の温度が高すぎると、硬化反応が起き、アンダーフィル材料の粘度が高くなるおそれがある。
【0084】
撹拌、混合するには、三本ロール、ニーダー、万能攪拌機、ボールミル、プラネタリミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパーザー等の、公知の攪拌・混合装置を用いればよく、撹拌、混合は、前記脂環式エポキシ樹脂と前記各成分とが均一になるまで行えばよい。
【0085】
本発明のアンダーフィル材料は、無機充填剤を高充填しても適度な粘度を有し、従来品に比して、より低温度・短時間で硬化しても、ガラス転移温度(Tg)が高く、線膨張係数が小さい硬化物を与えるものである。従って、作業性が良好である。
適度な粘度とは、通常、25℃において1〜20Pa・s、好ましくは3〜15Pa・sである。粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0086】
本発明のアンダーフィル材料の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、測定方法にもよるが、100℃以上であることが好ましく、100〜150℃であることがより好ましい。Tgが100℃に満たない場合、ヒートサイクル試験により、導通不良や樹脂クラックが発生する可能性がある。
【0087】
本発明のアンダーフィル材料は、後述するように、特に、フリップチップ実装パッケージ等において、チップの電極と回路基板の電極を接続する半田バンプ等の部分を封止するのに好適に用いられる。
【0088】
本発明のアンダーフィル材料は、半田バンプ等の空隙に容易に浸透し、当該空隙をボイド残り無く充填することができる。さらに線膨張率が低いため、本発明のアンダーフィル材料で封止してなる半導体装置は、優れた接続信頼性を発揮しうる。
【0089】
なお、本発明のアンダーフィル材料は、基板側の電極と電子部品側の電極とをワイヤによって接続するワイヤボンディング実装、リード線を設けたフィルムを用いて基板側の電極と電子部品側の電極とを接続するTAB(Tape Automated Bonding)実装における封止材料等としても好適に用いることができる。
【0090】
2)半導体装置
本発明の半導体装置は、本発明のアンダーフィル材料を用いて半導体素子と回路基板との間を封止成形して形成されたものである。
本発明の半導体装置としては、半導体チップ等の電子部品(半導体素子)と回路基板(インターポーザ)との間等が本発明のアンダーフィル材料を用いて封止されたものであれば、特に制約はない。
【0091】
回路基板は、少なくとも、絶縁層と導体回路と電極とを有し、電子部品の電極からの電気信号を他の電子部品等に伝送可能なものであれば特に限定はない。
回路基板としては、例えば、従来のガラスエポキシプリント配線基板、ガラスポリイミドプリント配線基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂回路基板、ポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンオキサイド)プリント配線基板、フッ素樹脂プリント配線基板、その他環状オレフィン系樹脂プリント配線基板等の低誘電率プリント配線基板等のプリント配線基板;ポリエチレンテレフタレートフレキシブルプリント配線基板、ポリイミドフレキシブルプリント配線基板等のフレキシブルプリント配線基板(FPC);シリコンウェハー基板;セラミック基板;感光性樹脂等を使用した高密度実装基板;樹脂付き金属箔やドライフィルム、接着性絶縁フィルム等のフィルム積層型の高密度実装基板;ポリフェニレンスルフィドや液晶ポリマー等の熱可塑性エンジアリングプラスチックフィルム等のフィルム配線基板等や、近年のパッケージ形態であるチップスケールパッケージ(CSP)に使用されるキャリアフィルム(ポリイミドキャリアフィルム等)や単層基板等が挙げられる。
【0092】
電子部品としては、ICチップ、LSIチップ等の半導体チップ、及び、複数の半導体部品を実装してなるマルチ・チップ・モジュール(MCM)等の半導体パッケージ等が挙げられる。電子部品は、プリント基板の電極に直接接続するための接続ワイヤ又は突起状電極(バンプ)を有する。突起状電極としては、例えば、半田バンプや金バンプ等が挙げられる
【0093】
電子部品を回路基板に実装する方法としては、例えば、基板側の電極と電子部品側の電極とをワイヤによって接続するワイヤボンディング実装、電子部品の電極を基板側の電極と直接接続するフリップチップ実装(図1参照)、及びリード線を設けたフィルムを用いて基板側の電極と電子部品側の電極とを接続するTAB(Tape Automated Bonding)実装等が挙げられる。本発明においては、フリップチップ実装によるものが好ましい。
【0094】
図1中、1は回路基板を、2は半田バンプを、3は半導体チップを、4は本発明のアンダーフィル材料の硬化物をそれぞれ示す。
フリップチップ実装では、電子部品は、突起状電極形成面を逆さまにして、フェースダウンの状態でプリント基板の電極上に搭載され直接接続されることになる。
【0095】
また、本発明の半導体装置は、半導体ベアチップ実装パッケージであってもよい。用いられる電子部品は、半導体部品の中でもCPU(中央演算装置)やメモリ(DRAM)等に使用されるような、微細配線が高度に集積された大規模集積回路(LSI)等である。半導体ベアチップ実装パッケージにおいても、少なくとも半導体素子の電極とプリント基板の電極との間の接続部分を、本発明のアンダーフィル材料を用いて封止することができる。
前記パッケージに、さらにマザーボードのプリント基板に接続する目的で半田ボール等の突起状電極を取付けた、ボールグリッドアレイ(BGA)、半導体チップが複数実装されたマルチチップパッケージ(マルチチップモジュール)は、コンピューターや通信機器に使用可能である。
本発明のアンダーフィル材料で電子部品と回路基板との間を封止成形して半導体装置を形成する方法としては、特に制約はないが、下記に示す本発明の半導体装置の製造方法が好ましい。
【0096】
3)半導体装置の製造方法
本発明の半導体装置の製造方法は、本発明のアンダーフィル材料を、予め60〜100℃に加温した半導体素子と回路基板の間の空隙部に注入し、次いでアンダーフィル材料を加熱・硬化させることを特徴とする。
具体的には、回路基板のパターン面に、多数のバンプを介して半導体チップが搭載されたワークを60〜100℃に加温しつつ、そのバンプ間の空隙に、本発明のアンダーフィル材料をディスペンサー等を用いて塗布し、毛細管現象を利用してアンダーフィル材料を充填(キャピラリーフローアンダーフィル法)した後加熱硬化する方法が挙げられる。その後は、半導体チップ全体の封止を行うなどの後工程を行い、フリップチップ実装による半導体装置を製造することができる。
また、トランスファー成形機等により、本発明のアンダーフィル材料を回路基板と半導体素子との空隙及び半導体素子上に充填し、一括して封止する方法(モールドアンダーフィル法)等を用いることもできる。
本発明のアンダーフィル材料をディスペンサーにより塗布する際には、塗布形状、塗布量は、用いる半導体素子の大きさ、半田バンプのピッチ、ギャップ等により変化する。
【0097】
加温の方法としては、ロボット一体型のディスペンサーを用いて本発明のアンダーフィル材料を塗布する場合には、回路基板のパターン面に多数のバンプを介して半導体チップが搭載されたワークをステージ上に配置し、ステージの温調機能を用いてワークを加温することが可能である。また、ロボット一体型以外のディスペンサーを使用する場合には、ワークを例えば所定の温度に加温したホットプレート上に配置した後、ディスペンサーにて本発明のアンダーフィル材料を塗布することで加温しながら注入することが可能となる。
【0098】
加熱・硬化は、例えば、電極間接続部分が前記アンダーフィル材料で充填された状態にある半導体素子付き回路基板ごと加熱炉内に静置することにより行われる。
加熱・硬化温度は、通常80〜200℃程度であり、加熱・硬化時間は、通常0.5〜4時間程度である。
硬化方法は、多段階のステップキュアとすることも可能であり、例えば、1次硬化を80〜120℃で0.5〜2時間程度行った後、2次硬化を120〜200℃で0.5〜2時間程度行って硬化することも可能である。
しかしながら、生産性を考慮すると、1段階且つ1時間以内にて硬化できる加熱条件が好ましく、例えば、加熱・硬化温度120〜180℃、加熱・硬化時間30〜60分の範囲内での1段階の加熱・硬化が好適な条件として挙げられ、そのような加熱条件にて硬化が可能であるアンダーフィル材を用いることが好ましい。
【0099】
回路基板に対して電子部品を取り付ける反対側の面に半田バンプが設けられている場合、上述のようにして回路基板と電子部品との電極間接続部分を封止した後(1次封止)、得られたプリント回路板をマザーボード(通常のプリント配線板)上にさらに搭載し接続してもよい。この場合、前記プリント回路板とマザーボードとの空隙に対して本発明のアンダーフィル材料をディスペンサー等を使用して流し込み、硬化させることにより、2次封止することができる。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0101】
なお、合成例におけるガスクロマトグラフィーの測定条件等は以下の通りである。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−1(ヒューレットパッカード社製)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
液相 100%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0mL/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):40℃で3分間保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:200
サンプル:0.4μL
【0102】
[合成例1]脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)の合成
温度計を備えた3つ口反応器において、窒素気流中、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン40.0g(0.333mol)をアセトン400mLに溶解させ、炭酸水素ナトリウム201.3g(2.396mol)と蒸留水400mLを加えた。その混合液を水浴で10℃に冷却した後、オキソン(登録商標)−過硫酸塩化合物327.4g(0.532mol)を加え、反応液の内温が20〜30℃の間になるように水浴温度を調整しながら2時間攪拌した。その後、反応液を0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液300mL、蒸留水300mL、飽和食塩水300mLを加え、ヘキサン500mLで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、真空乾燥させることで、脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)を41.5g得た(収率82%)。
【0103】
得られた脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、脂環式エポキシ樹脂Aが有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体(すなわち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体、エキソ−エンドの立体配置を有する立体異性体、エンド−エキソの立体配置を有する立体異性体、エンド−エンドの立体配置を有する立体異性体の4種の立体異性体)の重量比は、エキソ−エキソ体:エキソ−エンド体:エンド−エキソ体:エンド−エンド体=53.5:22.9:21.6:2.0であった(エキソ−エキソ立体異性体の含有量:53.5%)。
【0104】
[合成例2]脂環式エポキシ樹脂Aの精製
上記方法により得られた脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)41.5gを薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1(容積比))により分析した結果、R値=0.54とR値=0.44に2つのスポットを確認した。そこで、粗生成物41.5gをシリカゲル1200g(球状、中性、粒径;63−210μm、関東化学社製)と溶離液(ヘキサン:酢酸エチル=1:4(容積比))とを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。そして、前記薄層クロマトグラフィーによる分析でR値=0.44であった化合物を単離することで、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)を17.0g、収率41%で得た。
【0105】
得られた脂環式エポキシ樹脂A(精製物)をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量は99.2%であった。
以上より、脂環式エポキシ樹脂Aの4つの立体異性体のうちエキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%である高純度脂環式エポキシ樹脂が得られた。なお、立体異性体の構造はNMRで同定した(第1表)。
【0106】
【表1】

【0107】
[実施例1]
エポキシ樹脂(a)として、合成例2で得られた脂環式エポキシ樹脂A(精製物)50部とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂〔商品名:jER YL983U、三菱化学社製〕50部、硬化剤(b)として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物〔リカシッド(登録商標)MH−700G、新日本理化社製〕147部、硬化促進剤(c)として、マイクロカプセル型潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤〔ノバキュア(登録商標)HX−3088、旭化成イーマテリアルズ社製〕6部、無機充填剤(d)として、溶融球状シリカ〔商品名:MP−8FS、龍森社製、平均粒径0.5μm、最大粒径2.5μm〕411部、シランカップリング剤(e)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名:KBM−403、信越シリコーン社製〕4.1部、濡れ性改質剤として、アルコキシオリゴマー(f)〔商品名:X−41−1056、信越化学工業社製〕20部、及び、反応調整剤として、エチレングリコール1部を、プラネタリーミキサーにて10分間攪拌し、アンダーフィル材料を調製した。硬化剤の酸無水物とエポキシ樹脂の当量比は酸無水物当量/エポキシ当量として0.95、シリカの配合量は60%であった。
以上のようにして得られたアンダーフィル材料を、ポリイミドフィルム上にギャップ200μmのドクターブレードを用いて塗布し、150℃で30分硬化させた後、ポリイミドフィルム上から硬化物を剥離して、厚さ100μm前後のフィルムを作製した。
得られたアンダーフィル材料及びフィルムにつき、下記に示す試験を行い評価した。
【0108】
<粘度>
実施例1で得られたアンダーフィル材料の25℃における粘度を、ハイシェアレイト粘度計(ブルックフィールド社製、CAP2000+)にて、CAP−03コーンスピンドルを用いて測定した。
【0109】
<キャピラリーフロー性>
スライドガラス上に厚さ20μmのフォトレジストをラミネートし、フォトリソグラフィー法によりスライドガラスの長片方向に水平に幅6mmの溝を形成した。このようにして作製したパターン付きスライドガラス上に、10mm角のカバーガラスを、溝の中央とカバーガラスの中央が重なるように静置した。溝とカバーガラスの端部にできた隙間(幅6mm、高さ20μm)部分に、アンダーフィル材料をシリンジを用いて手作業で滴下し、毛細管現象によりアンダーフィル材料がカバーガラスと溝の反対側の隙間から滲み出してくるまでの時間を測定した。尚、本測定時にはスライドガラスを50℃または90℃に加温した。
図2にキャピラリーフロー性の評価に用いた装置の模式図を示す。(A)は装置の斜視図であり、10はカバーガラス、11はレジスト、12はスライドガラス、Sは半導体封止用エポキシ樹脂組成物の滴下部分を示す。(B)は(A)のXY断面図であり、a=20μm、b=6mmである。
【0110】
<ガラス転移温度(Tg)・平均線膨張率>
実施例1で得られたフィルムを、カッターを用いて4mm幅の短冊状に切り出し、TMA試験機(EXSTER TMA/SS7100、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)の引張モード、昇温速度10℃/分で測定し、得られたデータから、ガラス転移温度(Tg)、及びTg前後の平均線膨張率(α1、α2)を求めた。
【0111】
[実施例2]
実施例1において、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)50部の代わりに、合成例1で得られた脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)50部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアンダーフィル材料を調製し、フィルムを得た。実施例1で示した方法で評価を行った。
【0112】
[実施例3]
実施例1において、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)50部の代わりに、脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)を50部、MH−700Gを141部、MP−8FSを388部、X−41−1056を10部、KBM−403を3.9部用いたこと以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル材料を調製し、フィルムを得た。実施例1で示した方法で評価を行った。
【0113】
[実施例4]
実施例1において、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)50部の代わりに、脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)を50部、MH−700Gを136部、MP−8FSを364部、KBM−403を3.6部を用いたこと、及び、X−41−1056を加えないこと以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル材料を調製し、フィルムを得た。実施例1で示した方法で評価を行った。
【0114】
[比較例1]
実施例1において、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)50部の代わりに、脂環式エポキシ樹脂A(粗生成物)を50部、MH−700Gを136部、HX−3088の代わりに2−エチル−4−メチルイミダゾール〔キュアゾール(登録商標)2E4MZ 四国化成工業社製〕(第2表中、「硬化剤」と記載)を1部、MP−8FSを357部、KBM−403を3.6部を用いたこと、及び、X−41−1056を加えないこと以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル材料を調製し、フィルムを得た。実施例1で示した方法で評価を行った。
【0115】
[比較例2]
実施例1において、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)50部の代わりに、エポキシ樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート〔セロキサイド(登録商標)2021P、ダイセル化学工業社製〕(第2表中、「エポキシ樹脂B」と記載)50部を用いたこと、MH−700Gを105部、MP−8FSを319部、KBM−403を3.2部を用いたこと、及び、X−41−1056を加えないこと以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル材料を調製し、フィルムを得た。実施例1で示した方法で評価を行った。
【0116】
[比較例3]
実施例1において、脂環式エポキシ樹脂A(精製物)を用いずに、jER YL983Uを100部を用いたこと、MH−700Gを92部、MP−8FSを298部、KBM−403を3.0部用いたこと、及び、X−41−1056、エチレングリコールを加えないこと以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル材料を調製し、フィルムを得た。実施例1で示した方法で評価を行った。
【0117】
実施例1〜4、及び、比較例1〜3の評価結果を下記第2表に示す。
なお、下記第2表に記載の化合物は、以下のものを表す。
・ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂・・・商品名:jER YL983U
・エポキシ樹脂B・・・セロキサイド(登録商標)2021P
・硬化剤(b1)・・・リカシッド(登録商標)MH−700G
・硬化剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)・・・キュアゾール(登録商標)2E4MZ
・硬化促進剤(c1)・・・ノバキュア(登録商標)HX−3088
・無機充填剤(d1)・・・商品名:MP−8FS
・シランカップリング剤(e1)・・・商品名:KBM−403
・アルコキシオリゴマー(f1)・・・商品名:X−41−1056
・反応調整剤(g1)・・・エチレングリコール
【0118】
【表2】

【0119】
第2表より、本発明のアンダーフィル材料は、低温下(50℃)のみならず、高温下(90℃)においてもキャピラリーフロー性に優れている(すなわち、毛細管現象によりアンダーフィル材料がカバーガラスと溝の反対側の隙間から滲み出してくるまでの時間が短い)ため、半導体素子と半導体素子、及び、半導体素子と回路基板を接続するバンプ間の隙間に短時間でボイドなく浸透するものであることがわかる。また、その硬化物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、線膨張率が低いものであるため、本発明のアンダーフィル材料を用いて実装した半導体素子は、ヒートサイクル試験における接続信頼性向上が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特にバンプ間距離が短く、チップとパッケージ基板とのギャップが小さい高密度実装品の封止に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0121】
1・・・回路基板、2・・・半田バンプ、3・・・半導体チップ、4・・・本発明のアンダーフィル材料、10・・・カバーガラス、11・・・レジスト、12・・・スライドガラス、S・・・アンダーフィル材料の滴下部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂として、式(I)
【化1】

(式中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂AとビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤として、25℃で液体の酸無水物硬化剤、硬化促進剤として、マイクロカプセル型の潜在性エポキシ樹脂硬化促進剤、及び、無機充填剤として、平均粒径5μm以下の球状シリカを含有し、前記脂環式エポキシ樹脂Aの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対する割合、(脂環式エポキシ樹脂Aの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.2〜0.8であることを特徴とするアンダーフィル材料。
【請求項2】
前記式(I)で表される25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂Aが、ガスクロマトグラフィーにより検出される、2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のアンダーフィル材料。
【請求項3】
前記脂環式エポキシ樹脂Aが、テトラヒドロインデンジオキサイドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンダーフィル材料。
【請求項4】
前記25℃で液体の酸無水物硬化剤が、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、又はメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
【請求項5】
前記球状シリカの含有量が、アンダーフィル材料全体に対して40重量%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
【請求項6】
前記球状シリカが、平均粒径3μm以下の球状シリカであり、かつその含有量がアンダーフィル材料料全体に対して50重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
【請求項7】
さらに、エポキシ基を有するアルコキシオリゴマーを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアンダーフィル材料。
【請求項8】
前記エポキシ基を有するアルコキシオリゴマーの含有量が、エポキシ樹脂全体の重量に対する割合、(エポキシ基を有するアルコキシオリゴマーの重量)/(エポキシ樹脂全体の重量)で0.05〜0.3であることを特徴とする請求項7に記載のアンダーフィル材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のアンダーフィル材料を用いて半導体素子と回路基板との間を封止成形して形成された半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のアンダーフィル材料を、60〜100℃に加温した半導体素子と回路基板との間の空隙部に注入し、次いで前記アンダーフィル材料を加熱・硬化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72058(P2013−72058A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214055(P2011−214055)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】