説明

アンダーフィル用液状樹脂組成物、フリップチップ実装体およびその製造方法

【課題】 加熱雰囲気で保持後に、真空工法により半導体チップと基板の間隙に充填が可能なアンダーフィル用樹脂組成物を提供することである。特に、減圧かつ加熱雰囲気でアンダーフィル用樹脂組成物を塗布する真空工法で使用可能なアンダーフィル用樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】
(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)無機充填剤を含む組成物であって、温度:25℃での粘度が1〜150Pa・sであり、かつ温度:100℃において粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分であることを特徴とする、アンダーフィル用液状樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリップチップボンディングと組み合わせて用いるアンダーフィル用液状樹脂組成物、およびこのアンダーフィル用液状樹脂組成物を用いてなるフリップチップ実装体および該実装体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、アンダーフィル工程を真空下で行う時に用いられるアンダーフィル用液状樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のさらなる配線等の高密度化、高周波化に対応可能な半導体チップの実装方式として、フリップチップボンディングが利用されている。一般的に、フリップチップボンディングでは、半導体チップと基板の間隙を、アンダーフィルと呼ばれる材料で封止する。
【0003】
通常、アンダーフィル工程では、半導体チップと基板の間隙に、アンダーフィルを充填する際に、半導体チップの一辺または二辺に低粘度の液状樹脂組成物を塗布する。この際、低粘度の液状樹脂組成物は、毛細管現象により半導体チップと基板の間隙に浸入する。
【0004】
より近年のフリップチップのバンプ密度のさらなる向上により、上記のアンダーフィル工程では、アンダーフィル中に気泡が残存することが問題となってきた。この問題を解決するために、真空雰囲気中で半導体チップの周辺の全域にわたり、液状樹脂組成物を塗布した後、真空雰囲気の真空度を低下して、または真空雰囲気を通常の大気圧雰囲気にして、差圧充填する方法(以下、真空工法という)が提案されている(特許文献1)。
【0005】
この真空工法を利用するに当たり、フリップチップ実装体1個当たりを製造するのにかかる時間を短縮するために、70〜110℃程度の加熱雰囲気で、液状樹脂組成物を塗布する工程が検討されている。この工程では、多数の半導体チップを一度に処理するために、塗布時間に5〜120分程度を要することがある。
【0006】
また、真空工法の別の態様として、半導体チップの周辺の全域にわたり、液状樹脂組成物を大気圧雰囲気で塗布した後に、真空雰囲気にし、その後、真空雰囲気の真空度を低下して、もしくは真空雰囲気を通常の大気圧雰囲気にして、差圧充填する方法も検討されている。このときにも、加熱雰囲気で液状樹脂組成物を塗布する工程が、考慮されている。
【0007】
しかしながら、現在、使用されているアンダーフィル用樹脂組成物としては、毛細管現象により、半導体チップと基板の間隙に浸入させるために、低粘度のものが使用されている。これを真空工法に使用すると、加熱雰囲気での5分〜120分程度の塗布中に、(1)アンダーフィル用樹脂組成物の一部が揮発し、発泡してしまう、(2)アンダーフィル用樹脂組成物の硬化が始まってしまい、塗布後に真空度を低下、または通常の大気圧雰囲気にしても、半導体チップと基板の間隙に充分に浸入しない、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−297902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、加熱雰囲気で保持した後であっても、真空工法により半導体チップと基板の間隙に充填が可能なアンダーフィル用樹脂組成物を提供することである。特に、減圧かつ加熱雰囲気でアンダーフィル用樹脂組成物を塗布する真空工法で使用可能なアンダーフィル用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決したアンダーフィル用液状樹脂組成物に関する。
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)無機充填剤を含む組成物であって、温度:25℃での粘度が1〜150Pa・sであり、かつ温度:100℃において粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分であることを特徴とする、アンダーフィル用液状樹脂組成物。
(2)圧力:100Pa、温度:100℃において、粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分である、上記(1)記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
(3)圧力:100Pa、温度:100℃において、2時間保持したときの平均揮発速度が0〜1.3質量%/時である、上記(1)または(2)記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
(4)圧力:100Pa、温度:100℃において、2時間保持したときの成分(B)の平均揮発速度が0〜10質量%/時である、上記(1)〜(3)のいずれか記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
(5)成分(B)が、1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物および/または2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物を含み、前記芳香族アミン化合物の合計100質量部に対して、2個のベンゼン環を有する芳香族アミン化合物が50〜100質量部である、上記(1)〜(4)のいずれか記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
(6)成分(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、上記(1)〜(5)のいずれか記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
(7)成分(A)100質量部に対して、成分(B)を30〜120質量部、成分(C)を160〜400質量部含む、上記(1)〜(6)のいずれか記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を用いて封止された、フリップチップ実装体。
(9)上記(1)〜(7)のいずれか記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を用いて封止する、フリップチップ実装体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明(1)によれば、加熱雰囲気での保持後に、半導体チップと基板の間隙に充填が可能なアンダーフィル用液状樹脂組成物が得られる。
【0012】
本発明(2)によれば、減圧かつ加熱雰囲気での保持後に、半導体チップと基板の間隙に充填ができるので、真空工法で利用可能なアンダーフィル用液状樹脂組成物が得られる。
【0013】
本発明(3)または(4)によれば、真空加熱雰囲気でも発泡が抑制されるアンダーフィル用液状樹脂組成物が得られる。
【0014】
本発明(8)によれば、本発明(1)〜(7)のアンダーフィル用液状樹脂組成物を用いて封止されたフリップチップ実装体が得られる。
【0015】
本発明(9)によれば、本発明(1)〜(7)のアンダーフィル用液状樹脂組成物で封止されるフリップチップ実装体を、容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】フリップチップ実装体の一例を示す図である。
【図2】フリップチップ実装体の真空工法による製造方法の一例を示す図である。
【図3】アミン系硬化剤Aとアミン系硬化剤Bの合計100質量部に対するアミン系硬化剤Aの質量部が、揮発速度に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)無機充填剤を含む組成物であって、温度:25℃での粘度が1〜150Pa・sであり、かつ温度:100℃において粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分であることを特徴とする。
【0018】
(A)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エーテル系またはポリエーテル系エポキシ樹脂、オキシラン環含有エポキシ樹脂等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が、アンダーフィル用液状樹脂組成物の粘度の観点から好ましい。
【0019】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、好ましくは、式(1):
【0020】
【化1】

【0021】
で示され、式中、nは平均値を表し、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜4である。エポキシ当量は、160〜900g/eqが好ましい。
【0022】
ナフタレン型エポキシ樹脂は、好ましくは、式(2)または式(3):
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
で示される。
【0026】
(A)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0027】
(B)成分としては、脂肪族ポリアミン;芳香族アミン;ポリアミノアミド、ポリアミノイミド、ポリアミノエステルおよびポリアミノ尿素等の変成ポリアミン;第三級アミン系;イミダゾール系;ヒドラジド系;ジシアンアミド系;メラミン系の化合物等が挙げられ、芳香族アミン系化合物が好ましい。
【0028】
芳香族アミン系化合物は、1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物および/または2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物を含むことが、より好ましい。ここで、1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物は、加熱雰囲気で塗布中のアンダーフィル用液状樹脂組成物の硬化を防ぎ、かつ加熱雰囲気での保持後であっても、アンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化可能であることが期待される。また、2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物は、加熱雰囲気で塗布中の発泡を抑制し、かつ加熱雰囲気での保持後であっても、アンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化可能であることが期待される。
【0029】
1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物としては、メタフェニレンジアミン等が挙げられ、式(4)または式(5):
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
で示されるものが好ましい。
【0033】
2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられ、式(6)または式(7):
【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
(式中、Rは、水素、または炭素数1〜5個のアルキル基を表す)で示されるものが好ましく、式(6)または式(7)でRが炭素数2個のアルキル基であるものが、より好ましい。
【0037】
(B)成分は、1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物および/または2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物を含み、前記芳香族アミン化合物の合計100質量部に対して、2個のベンゼン環を有する芳香族アミン化合物が50〜100質量部であるものが、加熱雰囲気での塗布中の発泡を抑制し、かつ加熱雰囲気での塗布中のアンダーフィル用液状樹脂組成物の硬化を防ぎ、さらに熱雰囲気で保持後であっても、アンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化可能である点から、より好ましい。ここで、芳香族アミン化合物中の1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物と2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物の質量比は、GC−MSによって測定するものとする。
【0038】
また、(B)成分の圧力:50〜200Pa(好ましくは、100Pa)、温度:100℃において、2時間保持したときの成分(B)の平均揮発速度が0〜10質量%/時であると、加熱雰囲気で塗布中のアンダーフィル用液状樹脂組成物の発泡を抑制する観点から、好ましい。(B)成分の該揮発速度を低下させる方法は、(B)成分の蒸留などの当業者に公知の方法でよい。ここで、揮発速度は、成分(B)を、乾燥機等の中に入れ、圧力:50〜200Pa(好ましくは、100Pa)、温度:100℃において、2時間保持した後に、室温で質量測定をすることにより求めるが、TG法で測定してもよい。ここで、測定時の圧力は、±100Paの精度で制御すればよい。本発明において、特に記載がないときの圧力は、この精度で制御することとする。
【0039】
(B)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0040】
(C)成分としては、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、マイカ、ホワイトカーボン等が挙げられ、硬化後のアンダーフィル用液状樹脂組成物の熱膨張係数の低下、およびコストの観点から、シリカが好ましい。シリカは、非晶質シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、粉砕シリカ等、当技術分野で使用される各種シリカを使用することができ、硬化後のアンダーフィル用液状樹脂組成物の熱膨張係数低下の点から非晶質シリカが好ましい。(C)成分の粒径は、半導体チップと基板の間隙への充填性の観点から0.1〜2.0μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。また、(C)成分の形状は、特に限定されず、球状、リン片状、不定形等が挙げられ、アンダーフィル用液状樹脂組成物の流動性の観点から、球状が好ましい。
【0041】
(C)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物は、成分(A)100質量部に対して、成分(B)を30〜120質量部含むことが、加熱雰囲気で塗布中の発泡を抑制し、かつ加熱雰囲気で塗布中のアンダーフィル用液状樹脂組成物の硬化を防ぎ、さらに熱雰囲気での保持後であっても、アンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化可能である観点から、好ましい。
【0043】
また、成分(A)100質量部に対して、成分(C)を160〜400質量部含むことが、アンダーフィル用液状樹脂組成物の流動性、および硬化後のアンダーフィル用液状樹脂組成物の熱膨張係数低下の観点から、好ましい。
【0044】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、カーボンブラックなどの顔料、染料、シランカップリング剤、消泡剤、酸化防止剤、その他の添加剤等、更に有機溶剤等を配合することができる。特に、カーボンブラックは、硬化後のアンダーフィル用液状樹脂組成物が光を遮断し、ICチップの誤動作を防ぐために、添加されることが好ましく、シランカップリング剤は、(C)成分と他の成分との濡れ性を向上させるために、添加されることが好ましい。ただし、本発明においては、加熱雰囲気で塗布するときにアンダーフィル用液状樹脂組成物の発泡を抑制する観点から、低沸点の有機溶媒は含まないことが好ましい。
【0045】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物は、例えば、(A)成分〜(C)成分およびその他の添加剤等を同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。特に、成分(B)が固形の場合には、そのまま配合すると樹脂粘度が上昇し、作業性が著しく悪くなるため、予め加熱により液状化して、成分(A)と混合することが好ましい。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物は、温度:25℃での粘度が1〜150Pa・sであり、かつ温度:100℃において粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分である。ここで、粘度は、HAAKE社製レオメーター(型番:MARS2)で測定する。
【0047】
また、アンダーフィル用液状樹脂組成物は、圧力:50〜200Pa(好ましくは、100Pa)、温度:100℃において、粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分であることが、好ましい。ここで、粘度は、アンダーフィル用液状樹脂組成物を、真空乾燥機等の中に入れ、圧力100±100Paにし、100℃で10分保持後に、上記レオメーターにより測定する。この測定を繰り返し、粘度が1Pa・sになるまでの時間を測定する。なお、本発明において、「真空」とは、圧力200Pa以下の減圧下をいう。
【0048】
また、アンダーフィル用液状樹脂組成物は、圧力:50〜200Pa、温度:100℃において、2時間保持したときの平均揮発速度が、0〜1.3質量%/時であると、加熱雰囲気で塗布するときにアンダーフィル用液状樹脂組成物の発泡を抑制する観点から、好ましい。ここで、揮発速度は、アンダーフィル用液状樹脂組成物またはアミン系硬化剤を、規定量アルミ製容器に取り、デシケーター中に入れた100℃のホットプレート上で、100±100Paで、2時間保持した後に、室温で質量測定をすることにより求めるが、TG法で測定してもよい。
【0049】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物の硬化は、150〜165℃で、90〜150分間行うことが好ましい。
【0050】
本発明に用いるフリップチップ実装体としては、例えば、図1に示すように、基板2の配線パターン面に複数個のバンプ3を介して半導体チップ1が搭載されているものであり、半導体チップ1と基板2との間隙であって、バンプ3の間隙に、アンダーフィル用液状樹脂組成物4が充填され、その側部にフィレット剤5が形成されている。ここで、本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物4は、特にアンダーフィル剤として使用する場合に有効であるが、フィレット剤5を兼ねることができる。
【0051】
図2に、このフリップチップ実装体の真空工法による製造方法の一例を示す。まず、基板1にバンプ3を介して接合された半導体チップ2を準備する(図2(A))。
【0052】
次に、アンダーフィル用液状樹脂組成物4を、半導体チップ1周辺の全域へ塗布する(図2(B))。このとき、作業効率を向上させるために、加熱雰囲気(例えば、70〜110℃)で、30〜120分間程度かけて、複数個の半導体チップ2周辺の全域に塗布してもよく、また、真空下(例えば、圧力50〜200Pa)で塗布してもよい。
【0053】
次に、塗布を真空下で行ったときには、真空雰囲気の真空度を低下して、もしくは真空雰囲気を通常の大気圧雰囲気にして、半導体チップ1と基板2の間隙に、アンダーフィル用液状樹脂組成物4を差圧充填する(図2(C)、(D)。ここで、図2(C)の矢印は、差圧がかかる方向を示す)。また、塗布を大気圧雰囲気で行ったときには、塗布された半導体チップ1等を真空雰囲気にした後に、真空雰囲気の真空度を低下して、もしくは真空雰囲気を通常の大気圧雰囲気にして、差圧充填する。なお、この場合には、塗布された半導体チップ1等を真空雰囲気にするときに、バンプ3周辺の大気は、アンダーフィル用液状樹脂組成物4を通過して、バンプ3周辺が真空雰囲気となる。ここで、アンダーフィル用液状樹脂組成物4は、大気が通過するときに、通気路を形成するが、その後、レベリングにより、半導体チップ1周辺の全域を再度覆うことができ、その後、差圧により、半導体チップ1と基板2の間隙を充填することができる。
【0054】
その後、アンダーフィル用液状樹脂組成物4を硬化させ、このフリップチップ実装体を製造することができる(図2(E))。ここで、基板には、エポキシ樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。バンプには、錫、鉛、銅、ビスマス、銀、亜鉛、インジウム等からなるハンダ合金等を使用することができ、環境問題から、鉛フリーハンダ合金が好ましいが、これらに限定されない。
【0055】
このように、本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物は、フリップチップ実装体を真空工法で製造することができる。
【実施例】
【0056】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、重量部、重量%を示す。
【0057】
〔実施例1〜6、比較例1〜4〕
表1に示す配合で、アンダーフィル用液状樹脂組成物を調整した。
【0058】
【表1】

【0059】
〔初期粘度の測定〕
得られた1gのアンダーフィル用液状樹脂組成物の初期粘度を、HAAKE社製レオメーター(型番:MARS2)を用い、25℃で測定した。結果を表2に示す。
【0060】
〔ポットライフの測定〕
1gのアンダーフィル用液状樹脂組成物の100℃での粘度変化をHAAKE社製レオメーター(型番:MARS2)で測定した。アンダーフィル用液状樹脂組成物が増粘し、1Pa・sに至るまでの時間(分)を「ポットライフ・大気中」とした。また、1gのアンダーフィル用液状樹脂組成物を、真空乾燥機の中に入れ、圧力100±100Paにし、100℃で10分保持後の粘度を、上記レオメーターにより測定した。この測定を繰り返し、粘度が1Pa・s以上になるまでの時間を「ポットライフ・真空中」とした。結果を表2に示す。
【0061】
〔揮発速度の測定〕
3gのアンダーフィル用液状樹脂組成物または硬化剤を、直径5cmの円筒形アルミ製容器に入れ、圧力100Pa、100℃で2時間放置後、質量測定を行った。
{(放置前の質量)−(放置後の質量)/(放置前の質量)}×100/2}を平均揮発速度(単位:質量%/時)とした。このとき、圧力は、100±50Paで制御した。但し酸無水物系硬化剤を用いた場合については硬化が早く、早期に揮発しなくなることから30分後に質量測定を行い、平均揮発速度を求めた。このときには、上記の式の「2」を「0.5」として計算をした。結果を表2に示す。また、表3に、硬化剤を変化させた参考例1〜7の配合と、それぞれの揮発速度を示す。図3に、このときのアミン系硬化剤Aとアミン系硬化剤Bの合計100質量部に対するアミン系硬化剤Aの質量部が、揮発速度に及ぼす影響を示す。
【0062】
〔ボイド試験〕
10gのアンダーフィル用液状樹脂組成物を、ディスペンサーに入れ、圧力130Pa、100℃に設定した東レエンジニアリング製真空ディスペンサー(型番:FS2500)中で、ディスペンスを行った。ボイドが発生しないでディスペンスできる時間を測定した。このとき、圧力は、130±5Paで制御した。ボイドの有無は、肉眼で観察した。ボイド試験では、ボイドがない時間が60分以上であると好ましい。結果を表2に示す。
【0063】
〔発泡試験〕
5gのアンダーフィル用液状樹脂組成物を、東レエンジニアリング製真空ディスペンサー(型番:FS2500中)に入れ、圧力130Pa、100℃で30分間保持したときの発泡の有無を肉眼で確認した。このとき、圧力は、130±5Paで制御した。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
表2からわかるように、実施例1〜6のすべてで、ポットライフ、揮発速度、ボイド試験、発泡試験において良好な結果であり、特に、実施例1〜4では、特に良好な結果であった。アミン系硬化剤Aより、アミン系硬化剤Bを多く含む実施例5、6では、揮発速度が1.2g/時であったが、ポットライフは120分であった。これに対して、アミン系硬化剤の代わりに酸無水系硬化剤を用いた比較例1〜3は、ポットライフが短く、揮発速度、およびボイドの発生が速く、発泡試験で発泡が観察された。初期粘度が高い比較例4は、真空中でのポットライフが短く、ボイド試験の結果が、50分であった。
【0067】
表3からわかるように、アミン系硬化剤の参考例1〜5では、酸無水物系硬化剤の参考例6、7より揮発速度が遅かった。また、アミン系硬化剤の中で、2個の芳香族環を有するアミンAは、2個の芳香族環を有するアミンと1個の芳香族環を有するアミンの混合物であるアミンBより、揮発速度が遅かった。図2からわかるように、アミン硬化剤Aが50質量%より少なくなると、揮発速度が速くなる傾向が強くなることがわかった。
【0068】
上記のように、本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物は、恒温でのポットライフが長く、減圧かつ加熱雰囲気での揮発速度が遅く、ボイドおよび発泡が発生しないので、真空工法に非常に適している。
【符号の説明】
【0069】
1 半導体チップ
2 基板
3 バンプ
4 アンダーフィル用樹脂組成物
5 フィレット剤
6 硬化後のアンダーフィル用樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)無機充填剤を含む組成物であって、温度:25℃での粘度が1〜150Pa・sであり、かつ温度:100℃において粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分であることを特徴とする、アンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項2】
圧力:100Pa、温度:100℃において、粘度が1Pa・sになるまでの時間が40〜180分である、請求項1記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項3】
圧力:100Pa、温度:100℃において、2時間保持したときの平均揮発速度が0〜1.3質量%/時である、請求項1または2記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項4】
圧力:100Pa、温度:100℃において、2時間保持したときの成分(B)の平均揮発速度が0〜10質量%/時である、請求項1〜3のいずれか1項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項5】
成分(B)が、1個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物および/または2個の芳香族環を有する芳香族アミン化合物を含み、前記芳香族アミン化合物の合計100質量部に対して、2個のベンゼン環を有する芳香族アミン化合物が50〜100質量部である、請求項1〜4のいずれか1項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項6】
成分(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項7】
成分(A)100質量部に対して、成分(B)を30〜120質量部、成分(C)を160〜400質量部含む、請求項1〜6のいずれか1項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を用いて封止された、フリップチップ実装体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を用いて封止する、フリップチップ実装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−239031(P2010−239031A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87286(P2009−87286)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】