説明

イオン源およびイオン源の電磁石を動作させる方法

イオン源および制御可能なイオン電流密度分布を有するイオンビームを発生させるためにイオン源の電磁石を動作させる方法。イオン源(10)は、放電チャンバ(16)および放電チャンバ(16)の内側でプラズマ密度分布を変化させるために磁界(75)を発生させるようになっている電磁石(42;42a−d)を含む。方法は、放電空間(24)内でプラズマ(17)を発生させること、電流を電磁石(42;42a−d)に印加することによって、プラズマ密度分布を規定するのに有効である磁界(75)を放電空間(24)内に発生し形作ること、プラズマ(17)からイオンビーム(15)を抽出すること、イオンビーム密度について分布プロファイルを測定すること、および、イオンビーム密度について実際の分布プロファイルを所望の分布プロファイルと比較することを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2007年2月26日に出願された米国特許出願第11/678979号の一部継続出願であり、米国特許出願第11/678979号は、2004年2月4日に出願された米国特許出願第10/772132号(現在米国特許第7183716号)の一部継続出願であり、それぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。本出願は、2007年2月26日に出願された米国仮出願第60/891669号の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
【0002】
本発明は、イオン源、および調節された動作特性を有するイオンビームを発生するためにイオン源の電磁石を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオンビーム処理システムは、半導体およびデータ記憶デバイスなどの薄膜デバイスの作製中に基板の特性を修正するための種々の用途で使用される。特に、エッチングステップは、基板上の材料層を除去し形作るために使用されてもよい。従来のエッチングプロシジャは、低圧の(すなわち、約1mTorr未満の圧力の)プラズマ状態になるようにイオン化される作動ガスの使用を含み、ウェハ材料のイオンビームエッチング(IBE)用のイオンオプティクスによって、プラズマからイオンが抽出され加速される。
【0004】
デバイスクリティカルな寸法が縮むにつれて、ビーム指向性を犠牲にすることなくプロセス均一性を改善する必要性が、改良型イオン源についての研究を推し進めた。IBEの均一性は、イオンのビーム電流密度分布、および、ビーム輸送中の電荷交換イオン−原子衝突において荷電状態のイオンが中性に変換されることから生じるエネルギー的中性に直接関係する。集積化されたビーム粒子束は、基板上の衝当位置に独立であるべきである。基板における荷電および中性ビーム粒子の角度分布は、イオン源のオプティクスによってプラズマから抽出されるイオンの軌跡の角度特性に直接関係する。プロセスの均一性を最適化するために、基板を横切る入射粒子軌跡は、ほぼ平行であるべきである。
【0005】
従来のイオン源は、無線周波数(RF)電磁エネルギーなどの高周波電磁界エネルギーを使用して誘導結合プラズマ(ICP)を発生させるために、放電容器の周りに巻かれるヘリカルまたはコイルアンテナを一般に利用する。イオン源のアンテナは、振動性高周波電流を運ぶとき、放電容器の内側で時間変動性磁界を誘導する。ファラディの法則によれば、時間変動性磁界は、ソレノイド高周波電界を誘導し、ソレノイド高周波電界は、放電容器内でアジマス方向に電子を加速し、ICPを維持する。低圧ICPは拡散が支配的であるため、従来のブロードイオンビーム源の、プラズマ密度、それにより、イオンオプティクス平面における半径方向プラズマイオン束分布は、常に凸状である、すなわち、イオン源の中心で最も高く、イオン源の中心から距離が増すに伴って半径方向に減少する。これは、こうした従来のイオン源によって発生したブロードイオンビームのイオン電流密度分布に不均一性を導入する。
【0006】
典型的なブロードビームイオン源は、ビームになるようにイオンを形成し加速するためのマルチ電極加速器システムを利用する。このシステムの電極は、通常格子と呼ばれる、フラットまたはディッシュのマルチアパーチャ板である。上述したプラズマ不均一性がイオン密度プロファイルに及ぼす影響を補償する従来の方法は、中心におけるビーム電流密度を減少させるために格子の透過性を半径方向に変更することである。しかし、この補償法にはいくつかの制限がある。イオンオプティクスの透過性の変動は、異なるイオン源動作条件(すなわち、RF電力、ビーム電圧および電流、ガスタイプおよび圧力)についてのプラズマ密度プロファイルの変動、システム点検期間の間のこれら因子の任意の時間依存性、または、イオン源およびイオンオプティクスの変動を補償できない。イオン源およびイオンオプティクスの変動は、質量および熱負荷の作用による所与のエッチモジュールにおける短期および/または長期サービス条件の変化あるいはイオン源または格子構造の差によるモジュールごとの変動である可能性がある。さらに、凹状または凸状ビームイオン密度分布は、特定のプロセスが、ウェハへの輸送中のビーム広がり、基板の周辺におけるクランプ効果、エッチングされる材料層の厚さの変動またはエッチマスクフィーチャの幅の変動などの、基板の処理の他の態様の変動を補償するのに望ましいことがある。
【0007】
さらに、プラズマの半径方向および/またはアジマス方向密度分布の局所変動は、通常、IBEプロセスの均一性を制限する。これらの変動のロケーションおよび形状は動作条件に依存する。格子プティクスの透過性は、動作条件に対するこの依存性を補償するために容易に修正できない。
【0008】
イオン源は、イオンビームプロファイルの不均一性を減少させるのに役立つ物理構造を有しうる。しかし、イオン源は、イオンビーム密度において観測される不均一性をなくすための調整を必要とする可能性がある。調整は、イオン源が最初に使用されるときか、イオン源が長い期間使用された後か、プロセス条件が変更された場合か、または、イオン源点検の後に必要とされる可能性がある。これらのイベント後に効率的な調整を行うことができることで、イオン源動作によって生成される使用可能デバイスの収量を増加させ、廃棄物を減少させる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.R.Kahn等、「J.Vac.Sci.Technol.A14(4)」、Jul/Aug 1996、p.2106−2112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、必要とされるものは、イオン電流密度分布に対して向上した制御を有する、イオンなどの粒子のエネルギービームを発生させる改良型イオン源、および、調節された動作特性を有するイオンビームを発生するためにイオン源の性能を修正し、かつ/または、最適化する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、一般に、イオン源、および、調節された動作特性を有するイオンビームを発生するためにイオン源の性能を修正する方法を対象とする。一般に、イオン源は、プラズマ放電容器、プラズマ放電容器内に突出するカップ形状リエントラント容器、少なくとも1つの電磁石および少なくとも1つの管状極片を含んでもよい。電磁石および管状極片は、リエントラント容器の内側で同軸に配置されてもよい。各電磁石は、プラズマ放電容器の内側でプラズマの形状を変化させるために磁界を誘導するようになっている。
【0012】
一実施形態によれば、プラズマ処理装置用のイオン源は、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在する管状側壁とを含む放電チャンバを備える。アンテナは、放電チャンバの内側で作動ガスからプラズマを発生させるようになっている。電磁石は、放電チャンバに近接して配設される。電磁石は、磁気透過性材料から形成された第1極片および第1コイルを含む。第1コイルは、第1極片の管状側壁に近接して配設される。第1コイルは、管状側壁の内側でかつ閉鎖端と開放端との間で磁界を半径方向に発生するように励磁されるよう構成される。第1極片は、放電空間の内側でプラズマの分布を変化させるのに有効な磁界を形作るよう構成される。
【0013】
別の実施形態によれば、放電空間および電磁石を備える無線周波数イオン源の性能を修正する方法が提供される。方法は、放電空間内で作動ガスから特定のプラズマ密度分布を有するプラズマを発生させること、プラズマ密度分布を再形成する(reform)のに有効である磁界を放電空間内に発生させるために、電磁石に電流を印加すること、および、プラズマからイオンビームを抽出することを含む。方法は、さらに、ウェハ処理ロケーションに近接してイオンビーム密度の実際の分布プロファイルを確定すること、および、イオンビーム密度の実際の分布プロファイルを、イオンビーム密度についての所望の分布プロファイルと比較することを含む。比較に基づいて、磁界を修正し、それにより、プラズマ密度分布を変化させるために、電磁石に印加される電流が、手動でまたは自動で調整される。
【0014】
これらのまた他の利点は、以下の図および詳細な説明に照らして明らかになるであろう。
【0015】
本明細書に組込まれ、また、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の複数の実施形態を示し、先に行った本発明の一般的な説明および以下で行う実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電磁石組立体の実施形態をイオン源に組込む高真空処理システムの一部分の断面図である。
【図2】図1のイオン源および電磁石組立体のうちの電磁石組立体の拡大図である。
【図3A】図1および2のイオン源および電磁石組立体についてのアジマス軸に対する半径方向位置の関数としてのプラズマイオン束の線図であり、イオン束はイオン源のアジマス軸の近くで比較的高い。
【図3B】図1および2のイオン源および電磁石組立体についてのプラズマイオン束の線図であり、イオン束はイオン源のアジマス軸の近くで比較的低い。
【図4】代替の実施形態による、処理システムの一部分と一緒の、図2のイオン源および電磁石組立体と同様の拡大図である。
【図5】代替の実施形態による、図2の電磁石組立体と同様の拡大図である。
【図6】代替の実施形態による、図2および5の電磁石組立体と同様の拡大図である。
【図7】代替の実施形態による、図2、5および6の電磁石組立体と同様の拡大図である。
【図8】代替の実施形態による、図2および5〜7の電磁石組立体と同様の拡大図である。
【図9】正規化されたイオンビームエッチレートプロファイルに関する、本発明の実施形態のイオン源によって発生した電磁界の作用を示す線図である。
【図10】本発明の実施形態による、電磁石を有するイオン源について電磁石電流を最適化するプロセスのフローチャートである。
【図11】磁石電流の関数としての正規化されたイオンビームエッチプロファイルの凸性および凹性を示すグラフ表現である。
【図12】本発明の実施形態による、イオンビームエッチレートプロファイルが所望の限界内にないイオン源について電磁石電流を再び最適化するプロセスのフローチャートである。
【図13A】電磁石電流がゼロにセットされた状態で、実際の動作パラメータで本発明の実施形態のイオン源によって生成される実質的にフラットなイオンビームエッチプロファイルについての、イオン源のアジマス軸に対する位置の関数としての正規化されたエッチレートの線図である。
【図13B】イオンオプティクス格子半径方向透過性が調整されたときの、電磁石電流がゼロにセットされた状態で、実際の動作パラメータで図13Aのイオン源の一実施形態によって生成される凹状フラットなイオンビームエッチプロファイルの線図である。
【図13C】電磁石電流が低い値にセットされた状態で、実際の動作パラメータで図13Bのイオン源の一実施形態によって生成される実質的にフラットなイオンビームエッチプロファイルを示す線図である。
【図14A】図13Bに示す初期状態から、イオン源のアジマス軸の周りにプロファイルが過剰に凸状になる状態までの、使用中にイオン源が経年変化するときの、イオンビームエッチプロファイルの劣化を示す線図である。
【図14B】図14Aの経年変化状態から初期状態に似た動作状態まで、イオンビームエッチプロファイルを回復させるために電磁石電流を減少させることによって行われてもよい調整を示す線図である。
【図14C】図13Bに示す初期状態から、イオン源のアジマス軸の周りにプロファイルが過剰に凹状になる状態までの、使用中にイオン源が経年変化するときの、イオンビームエッチプロファイルの劣化を示す線図である。
【図14D】図14Cの経年変化状態から初期状態に似た動作状態、初期状態に似た状態まで、イオンビームエッチプロファイルを回復させるために電磁石電流を減少させることによって行われてもよい調整を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および2を参照すると、真空処理システム12で使用するためのイオン源10は、単一矢尻付き矢印15で図式的に表される作動ガスイオンのイオンビームを発生するようになっており、イオンビームは、少なくとも1つのウェハまたは基板向かって誘導される。真空処理システム12は、処理空間14を閉囲するチャンバ壁を有するプロセスチャンバ12aおよびプロセスチャンバ12aのチャンバ壁を貫通して処理空間14に連通するよう構成された高真空ポンプ13を含む。イオンビーム15は、イオン源10によってイオン化作動ガスから発生したプラズマ17から抽出され、プロセスチャンバ12aを通して基板11に向かって誘導される作動ガスイオンを含んでもよい。イオンビーム15による基板11の衝突は、基板11を処理して、意図される有益な結果をもたらす。他の有益な結果の中でもとりわけ、イオンビーム15は、イオンビームエッチングプロセスによって基板11の上部表面から材料を除去するために使用されてもよい。
【0018】
イオン源10は、アジマス軸19にほぼ集中した、管状側壁18によって画定される放電チャンバ16を含む。管状側壁18は、開放端31によって画定される開口および管状側壁18の対向端を閉鎖するバックフランジ20を有する。管状側壁18は、石英またはアルミナなどの誘電性材料から少なくとも部分的に形成される。高周波電磁エネルギー、特に、無線周波数電磁エネルギーは、材料内での損失が低い状態で、管状側壁18の誘電性材料部を浸透できる。イオン源10は、真空隔離のための密閉を提供する種々の高真空シール部材(図示せず)を含む。バックフランジ20を貫通して延在するガス入口22は、放電チャンバ16の内側に閉囲される放電空間24に連通する。ガス入口22は、作動ガスの調節された流量が、調量式ガス源23から放電空間24へ導入されることを可能にする。真空圧、通常、0.05mTorr〜5mTorrの範囲にあってよい大気圧以下の環境は、排気されるプロセスチャンバ12aとの流体連通によって、放電空間24内に維持される。
【0019】
コイルアンテナ26は、放電チャンバ16の外側の一部分の周りに巻かれる。電源28は、インピーダンス整合ネットワーク30を通してコイルアンテナ26と電気結合される。電源28は、約500kHz〜約15MHzの範囲の周波数の電力をコイルアンテナ26に供給してもよい。オプションのファラディシールド25は、コイルアンテナ26と管状側壁18との間に配設される。
【0020】
無線周波数(RF)電磁エネルギーなどの高周波電磁エネルギーは、プラズマ17を発生し維持するために、コイルアンテナ26から放電空間24内の作動ガスへ伝送される。より具体的には、電流がコイルアンテナ26において高周波で振動し、コイルアンテナ26が、オプションのファラディシールド25を通し、その後、管状側壁18を通して放電空間24に伝送される時間依存性磁界を発生する。時間依存性磁界は、コイルアンテナ26と同心の力線を有するアジマス電界を放電空間24の内側に誘導する。誘導されたアジマス電界は、放電空間24の内側の電子が円形軌跡に沿って移動するよう加速する。エネルギー電子と作動ガスの中性原子との間の衝突は、ガス原子をイオン化し、アジマス電界内で加速されるさらなる電子を生成する。これによって、放電空間24内でプラズマ17が発生され維持される。
【0021】
管状側壁18の開放端31に位置するマルチアパーチャイオンオプティックまたは格子組立体32が使用されて、放電空間24内で発生したプラズマ17から作動ガスイオンが抽出され、プロセスチャンバ12a内の基板11に伝播するイオンビーム15内に作動ガスイオンが形成される。格子組立体32は、イオン源10の開放端31において管状側壁18にまたがる複数の格子34、36、38を含む。適切にバイアスされると、格子34、36、38は、実質的に、放電空間24内にプラズマ17を収容し、放電空間24からのイオンビーム15の抽出を制御する。格子34、36、38はそれぞれ、荷電状態の粒子が格子組立体32を通過することを可能にするアパーチャ77のアレイによって穿孔される。通常、格子34、36、38のアパーチャ77は、円形でかつ互いに密に整列する。
【0022】
基板11は、格子組立体32と離間した関係でプロセスチャンバ12aの処理空間14の内側に支持される。基板11はまた、自分自身のアジマス軸の周りにまたはアジマス軸に対して傾斜する、オフセットする、かつ/または、回転してもよい。作動ガス圧、通常、0.05mTorr〜1mTorrの範囲にあってよい大気圧以下の環境は、格子組立体32および管状側壁18の開放端31を通した、排気されるプロセスチャンバ12aとの流体連通またはポンピング連通によって放電空間24内に維持される。
【0023】
格子電源40は、格子34、36、38に電気結合される。正イオンビームによる動作のための動作要件を有する実施形態では、抽出または「スクリーン」格子38は、調整可能な正電位を有する格子電源40の1つによってバイアスされて、放電からビームまでの正イオンビームの形成を可能にし、イオンエネルギーを増加させてもよい。「加速器」または「抑制器」格子36は、調整可能な負電位を有する格子電源40の1つによってバイアスされて、有効イオンビーム抽出電圧を増加させ、「減速器」格子34(通常、グラウンド電位にある)の格子アパーチャに浸透するビームプラズマ電子を抑制してもよい。
【0024】
カップ形状リエントラント容器44は、格子組立体32に向かってバックフランジ20から放電空間24内に突出する。アルミニウムなどの導体から形成されてもよいリエントラント容器44は、端壁56および端壁56からバックフランジ20へ軸方向に延在する側壁62を含む。リエントラント容器44の側壁62および放電チャンバ16の管状側壁18は、同心であり、アジマス軸19に同軸に整列してもよい。基板11は、基板11の上部表面が開放端31に向い合うように、プロセスチャンバ12a内に配設される基板支持体21上で受取られ保持される。
【0025】
図1および2を参照すると、イオン源10は、電磁石42を含み、電磁石42は、リエントラント容器44内に少なくとも部分的に設置され、また、少なくとも管状極片46、48の代表的な形態の極片を含む。この代表的な実施形態では、極片46、48は、直円柱の幾何形状を有し、アジマス軸19の周りに同心に配置される。代替の実施形態では、極片46、48は、限定はしないが、楕円柱、円錐台または角錐台を含む任意の適した管状幾何形状を有してもよく、それぞれが、中心ボアの周りに延在する側壁を有する。
【0026】
代表的な実施形態では、極片46は、極片48の半径方向内側に配設されるため、極片46の外側凹状表面は極片48の内側凸状表面に向い合う。極片46は、アジマス軸19に沿う高さによって分離された対向する開放端52、53を含み、極片48は、その高さによって同様に分離された対向する開放端49と51との間に延在する。極片46、48は、開放空間またはギャップ50によって分離される。
【0027】
格子組立体32に対する電磁石42の軸方向位置および/またはアジマス軸19に対する横方向位置が最適化されて、放電空間24内で電磁石42の電磁界の分布を制御することによって、プラズマ密度分布のプロファイル、それにより、格子34、36、38におけるプラズマイオン束の密度分布が調節されてもよい。特に、電磁石42は、アジマス軸19に対して横方向に非対称に位置決めされて、電磁石42の影響がない状態で本質的に存在する場合があるプラズマ密度分布の任意のシステム非対称性を補償してもよい。プラズマイオン束分布を調節することは、プラズマ17から抽出されるイオンビーム15の電流密度分布が最適化されることを可能にする。
【0028】
極片46の開放端52および極片48の開放端49は、従来の締結具(図示せず)によって電磁石42のリング形状磁気コア素子54に搭載される。極片46、極片48およびコア素子54は、低炭素鋼などの磁気透過性材料、鉄または任意の他の適した強磁性材料から形成され、電気的に接地される。代替の実施形態では、コア素子54は、非磁性材料から作製されてもよい。
【0029】
電磁石42は、コア素子54と、バックフランジ20と周辺でオーバラップする非導電性搭載板58との間に従来の締結具によって固定される。搭載板58は、従来の締結具(図示せず)によってバックフランジ20に固定されてもよい。搭載板58の電気絶縁強度は、コア素子54および極片46、48がバックフランジ20に短絡することなく電気的に接地されることを可能にし、コア素子54および極片46、48は、プラズマの電位に対して電気的にフローティングになることが可能になる。電磁石42およびリエントラント容器44の最適な位置および寸法は、プラズマの特性、ならびに、要求される均一性ゾーン、RF電力およびビームパラメータなどのアプリケーションに依存する可能性がある。
【0030】
電磁石42の位置は、リング60によってリエントラント容器44の内側に(例えば、中心に)配置されてもよい。リング60は、搭載板58と同じ理由で電気絶縁性材料から作製され、搭載板58と同じ電気的要件を有する。適した電気絶縁性材料は、ガラスエポキシ積層材またはフェノル樹脂を含むがそれに限定されない。リング60は、極片48と側壁62との間に配設される。リング60は、厳しい寸法公差によるすべりばめを確立するための、リエントラント容器44の側壁62の内径にほぼ等しい外径および極片48の外径より少し大きな内径を有する。リング60は、従来の締結具によって極片48に固定される。
【0031】
絶縁材料の板64は、リエントラント容器44の端壁56と電磁石42の極片46、48との間に挿入される。板64を構成する絶縁材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、商標名TEFLON(登録商標)の下でDuPont社から商業的に入手可能なテトラフルオロエチレンのホモポリマーなどのポリマーフルオロカーボン材料であってよい。
【0032】
電磁石42は、ワイヤボビンまたはスプール66、ワイヤコイル72、74および極片46、48を含む。ワイヤコイル72、74はそれぞれ、適したソレノイド巻回パターンによってワイヤスプール66の周りに巻かれた絶縁導体の連続巻線を備える。特定の例示的な実施形態では、ワイヤコイル72、74の巻き数は、300巻き〜3000巻きの範囲にあってよい。
【0033】
ポリマー樹脂または他の非磁性材料から形成されてもよいワイヤスプール66は、極片46と48との間のギャップ50内に位置する。ワイヤスプール66の高さは、極片46、48の高さより小さい。極片46は、アジマス軸19に沿ってワイヤスプール66の軸方向位置を固定するために締め付けられる止めねじ67を受取る大きさに作られた穴68を含む。止めねじ67が緩められると、ワイヤスプール66の軸方向ロケーションは、リエントラント容器44の端壁56の方に、また、反対方向でコア素子54に向かって偏移されうる。ワイヤスプール66は、コア素子54から遠い軸方向位置で、かつ、端壁56に非常に接近して偏移したものとして、例示だけのために、図1および2に示される。ワイヤスプール66の対向端には、半径方向に延在するフランジ76、78が配置される。
【0034】
代替の実施形態では、コア素子54は、適切な機械的強度の搭載板58(図示せず)上の搭載機構の選択によって、電磁石42の構成から省略されてもよい。別の代替の実施形態では、ワイヤスプール66の軸方向位置は、端壁56に対して異なるロケーションを決定する適切なサイズの複数の開口の列の1つの開口にピンが受取られるなど、異なる方法で調整されてもよい。なお別の代替の実施形態では、ワイヤスプール66の軸方向ロケーションは、ワイヤスプール66の軸方向位置が制御変数になるような軸方向ロケーションにおいて端壁56に対して固定されてもよい。
【0035】
代替の実施形態では、バックフランジ20の形状は、板またはドームの幾何形状(リエントラントまたは非リエントラント)を含む任意の実用的な幾何形状であってよい。こうした代替の実施形態では、電磁石42は、電磁石組立体によって放電空間24の内側で発生した電磁界の振幅が有意である(すなわち、少なくとも地球磁界の強度程度である)作動距離内で、格子組立体32に対向するバックフランジ20の外側に配設されてもよい。一般に、電磁石42の極片46および48の正確な形状は、バックフランジ20の形状に一致する、かつ/または、リエントラント容器44の内側で磁界分布を最適化するように形作られてもよい。
【0036】
引き続き図1および2を参照すると、電磁石42のワイヤコイル72、74は、フランジ76と78との間に位置決めされ、アジマス軸19の周りに半径方向中心を持つ(すなわち、アジマス軸19と同軸である)。第1磁気ワイヤコイル72の連続絶縁導体は、第1端部端子またはタップ80と第2端部端子またはタップ82との間に延在する。第2磁気ワイヤコイル72の連続絶縁導体は、ワイヤコイル74上の第3端部端子またはタップ84と、磁気ワイヤコイル72に関して共有される第2端部タップ82との間に延在する。
【0037】
電磁石42のワイヤコイル72、74は、コントローラ87に電気結合する電源86に電気結合する。電源86の正および負の電圧極性端子は、タップ80、82に電気結合されて、ワイヤコイル72の連続導体だけを含む第1動作範囲を提供し、タップ80、84に電気結合されて、ワイヤコイル72、74の連続導体が直列に接続される第2動作範囲を提供し、タップ82、84に電気結合されて、ワイヤコイル74の連続導体だけを含む第3動作範囲を提供する。切換えデバイス(図示せず)が、電源86内に設けられて、ワイヤコイル72、74に関する閉回路を調整し、それにより、3つの範囲のそれぞれを選択的に確立してもよい。穴88が、ワイヤスプール66のフランジ76内に設けられて、タップ80、82、84と電源86との間で閉回路を確立する導体に対するアクセスを提供する。導体は、コア素子54および搭載板58内に画定されたワイヤ通路96を通って経路指定される。ガイドポスト92は、導体を電源86に経路指定するためのフィードの役をする。
【0038】
代替の実施形態では、電磁石42は、単一の動作範囲だけが存在するように、2つのコイル72、74の一方を省略してもよい。ワイヤコイル72、74の残りの1つワイヤコイルのタップは、閉回路内で電源86に結合し、電源86からの電流によって励磁される。電源86は、直流(DC)電源である、あるいは別法として、パルスDC電源または交流(AC)電源を備えてもよい。電源設定は、コントローラ87によって制御され、コントローラ87は、手動で動作されるか、または、自動化システムの一部であってよい。
【0039】
コントローラ87は、ビーム特性または基板処理プロセスに対する電磁石42の観測可能な影響に関してイオン源10の動作、特に、電磁石42の動作を協調させる。コントローラ87は、当業者によって理解されるように、プログラム可能ロジックコントローラ(PLC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、または、メモリに格納されたソフトウェアを実行し、本明細書で述べる機能を実施することが可能な中央処理ユニットを有する別のマイクロプロセッサベースコントローラを含んでもよい。ヒューマンマシンインターフェース(HMI)デバイス(図示せず)は、知られている方法でコントローラ87に動作可能に接続される。HMIデバイスは、英数字ディスプレイ、タッチスクリーンおよび他の視覚インジケータなどの出力デバイスと、オペレータからコマンドまたは入力を受容し、入力された入力を、コントローラ87の中央処理ユニットに送信することが可能な、英数字キーボード、ポインティングデバイス、キーパッド、プッシュボタン、コントロールノブなどのような入力デバイスおよびコントロールを含んでもよい。コントローラ87は、生産ラインで利用される他の自動化機器に適合する標準的な通信バスを備えてもよい。
【0040】
コントローラ87は、ワイヤコイル72、74の一方または両方に対して電流を調整するアルゴリズムを含んでもよい。一実施形態では、アルゴリズムは、電磁石電流調整量を確定し、電磁石42の半径方向作用、電磁石電流設定の関数としての採取される性能データ、および/または、ワイヤコイル72、74に対する以前の磁石電流設定などの考慮事項に基づいてもよい。別の実施形態では、アルゴリズムは、以下の実施例に述べるように、実験マトリクス(例えば、ルックアップテーブル)から導出されてもよい。なお別の実施形態では、電磁石42は、ファジーロジックを使用する人工インテリジェント回路および電磁石電流設定の関数として採取される性能データによって調節されてもよい。1つの代替の実施形態では、コントローラ87は、イオンビームのエッチ深さまたはイオンビーム電流密度分布を測定する機器(すなわち、ファラディプローブのアレイ)に直接接続されてもよく、コントローラ87が、望ましくないエッチ深さまたはビーム電流密度分布を検出することに応じて、電源86からの電流を自動的に調整することが可能になる。
【0041】
電磁石42は、図1に図式で示す磁気誘導線を含む磁界75を発生し、磁界75は、ワイヤコイル72、74に供給される電流にほぼ比例する磁界強度を有する。アジマス軸19の周りにアジマス方向に対称である磁界75は、放電空間24内のプラズマ密度分布を変化させ、それが、イオンビーム15のイオン電流密度の均一性を変更する。磁界75は、かなり不均質であり、極片46および48のそれぞれの開放端51と53との間の領域で最大磁界強度を有し、開放端51および53からの距離が増すに伴って減少し、格子38およびコイルアンテナ26に近接して最小磁界強度を有する。磁力線は、アジマス軸19の周りに集中し、そのことは、磁界強度が放電空間24のこの領域で増加し、そのため、磁界75が、磁気ミラーとして周辺領域から到来するプラズマ電子に作用する可能性があることを示す。こうした磁界構成は、RFイオン化効率の減少が最小になり(すなわち、放電空間24の領域が、コイルアンテナ26の近くで低磁界強度を特徴とする)、かつ、イオンオプティクス動作歪が最小になった(すなわち、放電空間24の領域が、格子組立体32の近くで低磁界強度を特徴とする)状態で、プラズマ密度分布修正を可能にしうる。
【0042】
磁界75は、イオン源10内のプラズマ密度分布に、したがって、プラズマ17から格子組立体32によって画定された格子平面に誘導されるプラズマイオン束分布に直接影響を及ぼす。こうして、電磁石42によって発生した磁界75は、基板11上のイオンビームエッチ深さまたは電流密度分布の特性に影響を及ぼす。イオンビームエッチプロファイルは、イオン源10から抽出されたイオンビーム15によるエッチング後の、基板11上の位置座標(例えば、半径)の関数としてのエッチ深さ(例えば、厚さ変化)の依存性の尺度である。エッチングプロセスの終了後に(または、別法として、エッチングプロセスの部分的な終了後に)、代表的なイオンビームエッチ深さ分布(本明細書で簡潔に「エッチプロファイル」と呼ばれる)が、アジマス軸19に関して、(例えば、基板径に沿う)基板11の位置座標の関数としてまたは材料のエッチレートの関数として、エッチングされた材料の厚さ変化の測定値から生成されてもよい。あるいは、上述したエッチング間隔後に、平均厚さ変化分布が、同じ基板および/または2つ以上の基板に関して測定された個々の厚さ変化分布の統計的平均に基づいて評価されてもよい。
【0043】
より一般的には、ビームイオン束分布(本明細書では簡潔に「ビーム密度分布」または「ビームプロファイル」と呼ばれる)は、イオン源の動作中にイオンビーム電流密度を直接測定するように働く複数のファラディプローブ(図示せず)を使用して確定されてもよい(簡潔にするために、ここでは、単一イオン電荷状態の場合が考えられ、したがって、イオン束および電流密度分布は同等である。しかし、個々のイオン電荷状態の電流密度分布を分析するために適切な機器改変を用いて、同じ方法が、複数の電荷状態イオンビームについて使用されてもよい)。アジマス軸19に関してイオンビーム電流密度分布の確定を可能にする相対的な空間配置を有するファラディプローブは、基板処理ロケーションに近接する位置でイオンビーム15の経路内に挿入され、ある時間間隔の間、ファラディプローブのそれぞれによって電荷が蓄積され、電流測定値が計算される。ファラディプローブは、コントローラ87に結合されてもよく、コントローラ87は、イオンビーム15の経路内へのファラディプローブの挿入および電流測定値の採取を管理する。
【0044】
格子間隔ならびに格子組立体32内のアパーチャ77のサイズおよび分布が比較的均一であるとき、イオン源10の凹状または凸状プラズマイオン束分布は、イオン源10と基板11との間に凹状または凸状イオンビームプロファイルをもたらすことになる。しかし、ビームプロファイルは、個々のビームレットの分散およびオーバラップのために、イオン源内のプラズマイオン束分布に比べて均一になる(凹状または凸状が少ない)傾向がある可能性がある。理想的な凹状ビームイオン電流密度プロファイルは、本明細書では、イオン源10の縁部(すなわち、アジマス軸19からより遠い)において最大イオン電流密度を有し、イオン源10の中心からの半径が減少するに伴って大きさが減少するものと規定される。理想的な凸状ビームプロファイルは、まさに逆の方法で規定される(すなわち、アジマス軸19において最大イオン電流密度を有する)。
【0045】
測定されるイオンビーム電流密度分布は、これらの理想的な場合より複雑であるが、「凹状ビームプロファイル」を、対象とするビーム径の中心半分の外側に実質的に大きなイオンビーム電流平均密度が存在するプロファイルとして、また、「凸状ビームプロファイル」を、対象とするビーム径の中心半分内に実質的に大きな平均電流密度が存在するプロファイルとして一般に規定することが本発明者等の目的にとって有用である。イオンビームが、垂直に基板に入射するときで、かつ、基板11の表面が比較的平滑でかつフラットである(すなわち、任意の表面の不規則性は、エッチ深さと比較して無視できる)と仮定すると、イオンビームによるイオン侵食の結果として得られる基板11におけるエッチプロファイルは、イオンビームプロファイルと同じであり、イオンビーム処理システムのユーザが利用可能な通常の機器によって所望の精度で容易に測定可能である。
【0046】
図3Aは、図1および2のイオン源10によって生成されてもよいイオンビーム15についての、格子平面32におけるプラズマイオン束分布180の線図である。イオン束プロファイル180は、アジマス軸19(すなわち、「0」で表示される軸に垂直な位置の基準点)の周りに凸状半径方向分布を有する。理論によって制限されたいと思わないが、電磁石42によって導入される容積的な不均質磁界75は、イオン束の半径方向分布に対して2つの特異な作用を及ぼす可能性があり、2つの作用は、エッチプロファイルに対する作用における2つの異なる傾向に対応すると思われる。低い磁界強度(すなわち、電磁石のコイルにおける低い電磁石電流)において、磁界75は、アジマス軸19の近くのプラズマ電子を主に磁化すると思われる。このことが、磁気誘導線の周りの長いヘリカル軌道にプラズマ電子を閉じ込め、そのため、この領域内の作動ガスイオン化効率を上げると思われる。これは、イオン束が、アジマス軸19でまたはアジマス軸19の近くで高く、アジマス軸19からの半径方向距離の増加に伴って減少するプロファイル180の場合の凸状分布をもたらす。イオン束プロファイル180における得られる凸状分布は、アジマス軸19上に中心を持ち、アジマス軸19の周りに対称であってもよいが、本発明はそのように限定されない。
【0047】
一実施形態では、イオン源10は、ワイヤコイル72、74に対する低い電流レベルでイオン束プロファイル180を生成するよう構成されてもよい。このイオン源動作モードでは、格子組立体32の格子平面に到来するプラズマイオン束の半径方向分布は凸状である。
【0048】
図3Bは、図1および2のイオン源10によって生成されてもよいイオンビーム15についての、格子平面32におけるプラズマイオン束プロファイル190の線図である。イオン束プロファイル190は、アジマス軸19の周りに凹状半径方向分布を有する。高い磁界75強度(すなわち、ワイヤコイル72、74内で循環する高い電流)において、コイル近傍から到来する熱いプラズマ電子の一部は、アジマス軸19および開放端51、53(すなわち、極)の近くなどのプラズマ発生器ミラーリング磁界領域から放電空間24の周辺に向かって反射されると思われる。結果として、作動ガスイオン化効率は、プラズマ発生器中心(すなわち、イオン源10のアジマス軸19の近く)において減少し、周辺において増加すると思われ、格子34、36、38に到来するプラズマイオン束の半径方向分布は、元の磁界なしの分布と比較して凸状が少なくなる可能性がある。これは、プラズマイオン束が、アジマス軸19でまたはアジマス軸19の近くで低く、アジマス軸19からの半径方向距離の増加に伴って増加するプロファイル190によって示される凹状分布をもたらす。イオン束プロファイル190における凸状分布は、アジマス軸19上に中心を持ち、アジマス軸19の周りに対称であってもよいが、本発明はそのように限定されない。
【0049】
再び図1および2を参照すると、イオン源10の電磁石42のワイヤコイル72、74に対する磁石電流は、所望のエッチプロファイルを提供するのに適した磁界75を生成するよう調整されてもよい。電磁石42の有効動作範囲は、イオン源10デザインの他の態様ならびに特定のエッチプロセス条件および所望のエッチプロファイルに依存する可能性がある。代表的な実施形態においてイオンオプティクスを供給する格子組立体32は、電磁調整能力を最適に利用するために、可変透過性を持つようにデザインされてもよい。例えば、格子組立体32についての調整可能な透過性は、格子組立体32内のアパーチャ77の密度を変更すること、および/または、格子組立体32を横切るアパーチャ77のサイズを変更することによって達成されうる。アパーチャ77に関連するこれらの変数のいずれかを操作することは、格子組立体32の幅にわたって放出されるイオン電流の分布、最終的には、ビームプロファイルおよび基板11におけるエッチ深さプロファイルの形状を調整しうる。
【0050】
電磁石42の磁界75は、個々の基板の基板処理中に、または、基板処理ごとに変更されて、イオンビーム電流密度分布が制御され、それにより、所望の基板エッチレートまたはエッチ深さ分布が維持される。この変更は、イオンビーム電流密度分布(ビームプロファイル)または基板エッチレートまたはエッチ深さ分布(エッチプロファイル)を、インサイチュでまたはエクスサイチュで監視し、次に、目標とするビーム電流密度分布および/または基板11におけるエッチプロファイルを達成するために磁界75を調整するかまたは変更することによって実施されてもよい。インサイチュで監視する場合、基板エッチプロファイルを監視するハードウェアまたはビームプロファイルを監視するハードウェアが、プロセスチャンバ12aの内側に配設され、連続監視およびリアルタイム調整のオプションを提供する。代替の実施形態では、この機能は、基板エッチプロファイルを「セミインサイチュで(semi−in−situ)」監視することによって実施されてもよい。すなわち、基板エッチプロファイルが、真空エッチング機器の構成の一部として組込まれた測定ステーションから取得される間、イオン源は真空下のままである。「セミインサイチュでの」監視では、監視システムは、イオン源10と同じ処理ステーション内に配設されるが、別個のモジュールにおいて、真空および測定されるエッチプロファイルを乱すことなく基板11が搬送されうるように、真空輸送システムを介してプロセスチャンバ12aに接続される。
【0051】
磁界75を変更するために、電源86からワイヤコイル72、74への電流は可変であってよく、それにより、電磁石の42の磁界強度が選択的に制御され、さらに、放電空間24内のプラズマ密度分布が選択的に修正されてもよい。基板処理機器または真空エッチング機器の構成は、ユーザによるアクションをまったく必要とすることなく、全体の動作が実施されるように、自動電磁石電源コントローラおよびエッチプロファイル測定システム(インサイチュか、エクスサイチュかまたは「セミインサイチュ」の)を含んでもよい。
【0052】
この構成における極片46、48によって示される軟磁性片の残りの磁化すなわち残留磁化によるヒステリシス作用は、所望のイオン源電磁界動作範囲と比較して無視できない可能性がある。ヒステリシスによって、正味の磁界強度、そのため、エッチプロファイルの繰返し性が、悪い影響を受ける可能性がある。この作用は、コンポーネントの材料の注意深い指定によって最小になる可能性があるが、電磁石を脱磁し、残留磁界を消去するために、設定と設定との間でワイヤコイル72、74の電流を逆にするための対策も講じられうる。一実施形態では、ワイヤコイル72、74に対する電流がゼロにセットされ、イオンビームエッチプロファイルが測定される。イオンビームエッチプロファイルがヒステリシス作用を示すと判定される場合、通常使用される振幅と逆の振幅の電流が、ワイヤコイル72、74を通して送られる。ある時間後に、逆電流は遮断され、別のイオンビームエッチプロファイルが測定される。このプロセスは、ヒステリシスが認められなくなるまで、さらなる反復によって継続してもよい。
【0053】
図2を特に参照すると、一実施形態では、磁界プローブまたはセンサ89が、極片46に隣接してリエントラント容器44の内側に、例えば、アジマス軸19に垂直な磁界強度を測定するための向きに設置されてもよい。センサ89は、測定値が、少なくともその読みの大きな部分(例えば、約50%以上)であり、磁石電流の所望の範囲にわたってその読みにほぼ比例する限り、リエントラント容器44内で再位置決めされてもよい。磁石電流設定を変化させるとき、または、ヒステリシスをなくすプロセス中、ワイヤコイル72、74に対する電流は、最初にスイッチオフされ、残留磁界強度の大きさが磁界センサ89上で測定されてもよい。
【0054】
残留磁界強度が、実験結果または履歴性能に基づいて許容可能な閾値を越える場合、残留磁界強度を低減するという目的で、小さな逆電流がワイヤコイル72、74に印加される。ワイヤコイル72、74内の小さな磁石電流は、最後に印加された電流に対して、大きさの数分の1で、かつ、極性が逆である。電磁石42に対する磁石電流は、その後、スイッチオフされ、残留磁界大きさが、磁界センサ89を使用して再測定される。残留磁界強度の大きさが、許容可能な閾値を越えたままであるとき、補正プロセスが繰返され、残留磁界強度の大きさが、許容可能な閾値より減少するまで、逆電流が調整される。補正プロセスが、過剰補償のために反対極性の残留磁界をもたらすとき、補正プロセスは逆にされてもよい。磁石電流が、同じ極性の大きな大きさに調整される場合、ヒステリシス作用による影響はまったく存在せず、補正プロセスによって提供される脱磁動作は必要でない可能性がある。
【0055】
磁界センサ89はまた、プロセス制御の改善のために磁界強度の閉ループ制御を提供するのに有用である可能性がある。この代替の実施形態では、磁界センサ89は、コントローラ87に電気結合される。しかし、磁界センサ89がイオン源10に組込まれない場合、脱磁プロセスが依然として適用される可能性がある。この例では、一定で逆の磁石電流強度の大きさが、脱磁のために適用されてもよく、その値は、例えば実験によって確定され、通常、前のプロセス中に使用された最大電流の約10%〜約30%の範囲に制限される。
【0056】
図4を参照し、また、本発明の代替の実施形態によれば、イオン源10はさらに、参照数字100で全体が示される単一段または多段ポジショナを含んでもよく、ポジショナは、電磁石42が、端壁56によって制限されるが、アジマス軸19に平行な軸方向に移動することを可能にするか、または、リエントラント容器44の管状側壁18の径によって制限されるが、横に移動することを可能にするよう構成される。ポジショナ100は、放電空間24内のプラズマ容積に対する電磁石42の位置を調整可能にする。
【0057】
電磁石42をバックフランジ20に搭載するポジショナ100は、イオン源10、この実施形態ではリエントラント容器44に対して電磁石42のX、Y、Z位置の独立した調整を可能にする一連のブラケットおよび調整機構を含んでもよい。具体的には、ポジショナ100は、ボルト円上に等間隔に配置された複数のボルト104によってバックフランジ20に搭載されるフランジ103を有する、全体が円柱であってよいブラケット102を含む。別のブラケット106は、少なくとも1つのねじ付きロッド108および少なくとも1つのさらなる支持ロッド110(ばねなどの柔軟性があるが構造的に支持するスペーサ112を組込む)によってブラケット102上に支持される。ねじ付きロッド108は、ブラケット102に連通する場合、玉軸受組立体などの回転機構114によって支持される。この回転式支持配置構成は、ブラケット102のロケーションが、つまみねじ116を使用してロッド108を回転させることによって、アジマス軸19に平行(第1位置決め軸「Z」を規定する)に位置決めされることを可能にする。
【0058】
ブラケット106上には、別のブラケット118が搭載され、別のブラケット118の位置は、つまみねじ122を使用してねじ付きロッド120を介して軸に垂直な横方向(第1位置決め軸「z」と整列しない第2位置決め軸「x」を規定する)に調整可能である。別のブラケット124が、ねじ付きロッド125を介してブラケット118上に搭載されるため、ブラケット124の位置は、つまみねじ126を介して2つの他の軸に垂直な方向(第1位置決め軸「z」または第2位置決め軸「x」と整列しない第3位置決め軸「y」を規定する)に調整可能である。電磁石42はブラケット124に搭載される。
【0059】
(x,y,z)位置決め軸は、バックフランジ20に対して電磁石42を位置決めするために少なくとも3自由度を提供する互いに直交する軸を有するデカルト座標系を含んでもよい。しかし、バックフランジ20に対して電磁石42を位置決めするために、異なる参照フレーム内でブラケット102、106、118、124の動きの方向を記述し実施するための、種々の他の参照フレームが使用されてもよいことが理解される。
【0060】
ポジショナ100は、当業者によって理解される他の機械的構造を有してもよい。代替の実施形態では、ポジショナ100は、例えば、手動操作式つまみねじ116、122、126を、コントローラ87に電気結合された、ステッパモータ、サーボモータなどのようなパワードドライブシステムと置換えることによって自動化されてもよい。パワードドライブシステムは、例えばコントローラ87上に存在するソフトウェアアルゴリズムからのプログラム命令から導出される電気信号によって動作することになる。
【0061】
同じ参照数字が図2の同じ機構を指す図5を参照し、また、本発明の代替の実施形態によれば、電磁石42aは、電磁石42を改変して、極片46、48と結合し、かつ、ワイヤ通路96以外は破断していない中実のディスク形状コア素子98を含む。コア素子54を置換えるコア素子98は、極片48の開放端49と極片46の開放端52との間のギャップを埋める。コア素子98はまた、極片46の開放端52の半径方向内側のボアを閉じる。コア素子98は、磁気透過性材料から形成され、搭載板58に従来のように固定される。
【0062】
同じ参照数字が図2の同じ機構を指す図6を参照し、また、本発明の代替の実施形態によれば、電磁石42aと同じ電磁石42bは、さらなる極片130を含む。極片130は、極片48が極片46と130との間に半径方向に配設されるように、極片46、48と同心に配置される。極片46、48、130は、環状コア素子107から軸方向に延在する。極片130およびコア素子107はまた、低炭素鋼などの磁気透過性材料、鉄または任意の他の適した材料から形成される。極片48と130との間のギャップまたは開放空間134には、さらなるワイヤコイル138および140ならびにワイヤボビンまたはスプール136が配設され、それらが、ワイヤコイル72、74およびワイヤスプール66と共に、電磁石42aをひとまとめに画定する。ワイヤスプール136は、ワイヤスプール66と実質的に同じであり、ワイヤコイル138、140の対は、ワイヤコイル72、74と実質的に同じである。
【0063】
ワイヤコイル138、140は、電磁石42のワイヤコイル72、74に比べてアジマス軸19(図1)に対して大きな半径で配設される。ワイヤコイル138、140は、ワイヤコイル72、74と独立に励磁されてもよいため、プラズマ17(図1)に対する磁界75の影響は、アジマス軸19に対してより大きな径またはより小さな径にわたって分散されうる。半径方向分布はエッチ要件によって決まる可能性がある。独立した磁界発生は、コイル72、74だけを励磁することによって、ワイヤコイル138、140だけを励磁することによって、ワイヤコイル72、74の1つのセットとワイヤコイル138、140の他のセットを切換えることによって、または、独立の磁石電流設定を利用しながらすべてのコイル72、74、138、140を同時に励磁することによって行われうる。
【0064】
代替の実施形態では、電磁石42bは、各コイルセットについて単一の動作範囲だけが存在するように、2つのワイヤコイル72、74の一方、および/または、2つのワイヤコイル138、140の一方を省略してもよい。この代替の実施形態では、ワイヤコイル72、74の残りの1つのコイルの2つのタップは、電源86と閉回路で結合され、電源86からの電流によって励磁される。同様に、ワイヤコイル138、140の残りの1つのコイルの2つのタップは、電源86と閉回路で結合され、電源86からの電流によって励磁される。
【0065】
同じ参照数字が図2の同じ機構を指す図7を参照し、また、本発明の代替の実施形態によれば、電磁石42cは、ワイヤコイル72、74が極片46の半径方向外側に配設されるように極片48を省略する。結果として、ワイヤコイル72、74は、励磁されるワイヤコイル72、74から放出される磁界を形作り、集中させる磁気透過性材料によって、(アジマス軸19(図1)に対して)その内径上でだけ半径方向に守られる。
【0066】
同じ参照数字が図2の同じ機構を指す図8を参照し、また、本発明の代替の実施形態によれば、電磁石42dは、ワイヤコイル72、74が極片48の半径方向内側に配設されるように極片46を省略する。結果として、ワイヤコイル72、74は、励磁されるワイヤコイル72、74から放出される磁界を形作り、誘導し、集中させるのに有効な磁気透過性材料によって(アジマス軸19に対して)その外径上でだけ半径方向に守られる。
【0067】
本発明のさらなる詳細および実施形態が、以下の実施例によって述べられるであろう。
【実施例1】
【0068】
内側および外側コイルがそれぞれ970巻きの単一コイルを含むが、その他の点では電磁石42b(図6)に実質的に同じである電磁石組立体を有するイオン源は、この電磁石42bの半径方向最も外側のコイルに供給される電流を測定するために、電磁石の半径方向最も内側のコイルと電源との間に電流計を装備した。電磁石の半径方向最も外側のコイルは、電源からはずされたため、電磁石42bの最も内側のコイルだけが励磁された。電気プローブは、ビーム内に挿入され、ビーム入射方向に垂直な基板平面内に位置した。基板処理状況下で荷電した電気プローブから電圧が測定された。この電圧は、ブロードイオンビーム中性化の尺度と考えられた。
【0069】
正に荷電したイオンの1200V、650mAビームが、アルゴンガスプラズマから抽出された。基板に向かって伝播している間に、イオンビームは、プラズマブリッジニュートラライザを利用して中性化された。一連のシリコン酸化物をコーティングされたシリコンウェハは、異なるイオン源電磁石電流設定IMAGにおいて垂直入射でエッチングされた。電磁石電流設定IMAGは、0.1アンペア(A)増分でシステム的に変更された。イオン源からのイオンビームは、シリコン酸化物層の一部分をエッチングするために、静的に保持された基板に対して垂直入射で誘導された。基板上の異なるロケーションにおけるエッチレートは、測定されたエッチ深さ(酸化物層厚の変化)とエッチ時間の比として計算された。表1に示す相対エッチレートは、ゼロ磁石コイル電流による平均エッチレートで割った平均エッチレートを示す。選択されたプロセスパラメータおよびイオン源エッチングシステム構成における電磁石の作用についての任意の知識を展開する前に、ゼロ磁石コイル電流の値を用いてエッチレートを測定することが有利である。酸化物層厚の変化は、プリエッチおよびポストエッチ光学スペクトロフォトメトリ測定によって確定された。RF電力およびプローブ電圧は、磁石電流IMAGのそれぞれの値について測定され、ゼロ磁石コイル電流における対応する値に正規化された。プローブ電圧は、ブロードイオンビームの中性化のレベルを表す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、基板を均一にエッチングすることが望まれるときに適切であるエッチ深さプロファイルの形状を評価するための1つのメトリックは、パーセンテージとして表現される、エッチレートにおける「3シグマ」エッチレート「均一性」(平均(mean)で割った、平均すなわち平均値からの標準偏差の3倍)変動である。表にしたデータから明らかなように、エッチレートの均一性は、磁石電流が0A〜0.4Aへ上昇するにつれて悪化する。0.4Aを超えると、磁界がエッチプロファイルをフラットにするため、均一性は徐々に改善する。表にしたデータから明らかなように、1.2A、1.3Aおよび1.4Aの磁石電流におけるエッチ均一性は、0Aの電磁石電流におけるエッチ均一性と比較して改善される。静的に保持される基板上でこの方法(3%未満の3シグマ)によって達成される可能性がある高い程度のエッチ均一性は、電磁石組立体が調整されると、本発明の電磁石による外部磁界の導入が、プラズマ密度の局所変動を平滑化除去することを示す。
【0072】
表1から明らかなように、測定されたエッチレートは電磁石電流に弱く依存する。必要である場合、例えばエッチ時間の適切な調整によって、補償されうるわずかな作用が存在する。この作用はまた、例えば1つのモジュールのエッチレートを別のモジュールのエッチレートに整合させるために、エッチプロファイルではなくイオン源のエッチレートを調整するのに有効に使用されてもよいが、こうした方法の実際の使用は、得られるエッチプロファイルの変化に対するプロセスの感度に依存することになる。磁石組立体からの磁界の存在は、磁界強度の増加(すなわち、電磁石電流の増加)に伴ってRF電力を増加させる。しかし、観測されるRF電力の増加は、電磁石電流の全範囲にわたってイオン源効率を大幅に減少させることなく許容されうる。
【0073】
エッチレートプロファイルの均一性は、エッチプロファイルを生成するのに使用されるイオンビームの形状および/または均一性に関連する可能性がある。結果として、イオンビームのプロファイルの変動は、エッチレートまたはエッチ深さプロファイルの形状に関係付けられる。
【実施例2】
【0074】
制御された状況下での電磁石の動作がイオンビームの指向性を低下させないことの証明として、イオンの角度分布の「局所分散角度(local divergence angle)」が、ビームの異なる位置での最適電磁石電流設定について評価され、同じプロセスパラメータについて電磁石がない状態で得られた等価な結果と比較された。「局所分散角度」は、二酸化珪素をコーティングされたシリコンウェハが基板として使用され、高分解能なエッチ深さおよび横位置測定が可能なナノスペクトロフォメトリック測定装置(Nanometrics Nanospec(商標)8000)がエッチ深さプロファイルを確定するのに使用されたことを除いて、本質的に、非特許文献1(図1参照)によって述べられたように、マスキングアパーチャの下の基板をエッチングし、エッチスポットのサイズを測定することによって確定された。この出版物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。基板は、1.3Aの磁石電流で動作する実施例1のイオン源を使用してエッチングされた。
【0075】
表2に示すように、分散角度は、エッチングされた二酸化珪素層上の2つの異なる位置で、共に、ビームに対して垂直入射でかつ約9インチだけ格子平面の下流で評価された。1つの位置は、ビームの中心軸上の半径R=0においてであり、第2の位置は、ビームの中心から2.5インチだけずれる半径R=2.5’’においてである。分散角度測定値の推定誤差は約±0.5°である。表2に示すように、ビーム指向性の著しい低下が、選択された動作条件について電磁石動作から生じることの証明は存在しない。
【0076】
【表2】

【実施例3】
【0077】
提示のために正規化された一連のイオンエッチプロファイルは、実施例1の(電磁石に印加される電流を除く)イオン源および動作パラメータを使用して生成され、図9に示される。電磁石のコイルに電流が印加されない(したがって、磁界強度がない)場合、プラズマ密度分布およびプラズマイオン束の分布は、曲線200のイオンエッチプロファイルに反映される凸状プロファイルを特徴とする。比較的低い磁界強度Bにおいて、プラズマ密度分布およびプラズマイオン束の分布は、曲線210のイオンエッチプロファイルに反映されるように、磁界強度の増加に伴って凸性が増加する。比較的高い磁界強度Bにおいて、プラズマ密度分布およびプラズマイオン束の分布は、磁界強度の増加に伴ってより凹状になるように形状を変化させる。最終的に、プラズマ密度分布およびプラズマイオン束の分布は、曲線220のイオンエッチプロファイルに反映されるように、凹形状に変化する。
【0078】
比較的低い磁界強度Bと比較的高い磁界強度Bとの間の磁界強度Bにおいて、プラズマ密度分布およびプラズマイオン束の分布は、曲線230のエッチプロファイルに反映されるように、実質的にフラットである、すなわち、凸状でもなく凹状でもないことになる。この挙動は、エッチプロファイルの全体の形状ならびにプラズマ密度分布およびプラズマイオン束の分布が、所望の形状に調節されることを可能にし、特に、非常に均一なエッチング特性を生成することができることにとって非常に有利である。従来技術の無線周波数イオンビーム源制御法の実施形態と比較すると、電磁石磁界を使用してプラズマ密度分布を調節するという本発明のイオン源の能力は、イオン源が、より広い範囲のビームパラメータにわたって使用されるか、または、異なる格子デザインを用いて使用されることを可能にする、すなわち、より広い範囲の所望のビームプロファイルを達成する。
【実施例4】
【0079】
以下は、動作条件の変動の作用についてイオンビーム密度プロファイルを再最適化するように、所与のイオンビーム処理構成についてイオンビーム密度プロファイルを「再調整」するために、電磁石によって発生した磁界がどのように使用されうるかの実施例である。「イオンビーム処理構成」は、イオンビーム処理システムデザインおよび動作パラメータを指す。「イオンビーム処理システムデザイン」は、イオン源10の実施形態、格子組立体32デザイン、プロセスチャンバおよび真空ポンプシステムデザインを含むイオンビーム処理システムコンポーネントの機械的および電気的構成を含む。「動作パラメータ」は、本明細書では、イオンビーム格子電圧、ビーム電流、エッチ角度およびガス流量、ならびに電磁石設定自体以外の対象とする処理エリア(例えば、使用可能基板径)を含む機器設定のすべてを指す。「動作条件」は、任意特定の時間に任意特定の処理ツールに関連する密度プロファイルに影響を及ぼす可能性がある特定の状況のセットを指す。例えば、変動は、特定の電磁石ユニット、特定ユニットの格子セットおよび特定の真空ポンプを含む特定のプロセスチャンバを含む、特定のイオン発生器ユニット(プラズマ源)の構築における公差変動による可能性がある。あるいは、変動は、これらのコンポーネントが始めて設置され、最後に修理点検されて以来の、これらのコンポーネントに対する「経年(aging)」作用による可能性がある。電磁石電流IMAGは、動作条件の参照セットで動作する特定のイオンビーム構成について、電磁石42の典型的な相対的影響についての知識ベースを生成することによって最初に最適化されてもよい。知識ベースは、参照条件で所望のイオンビームエッチレートプロファイルを達成する可能性がある、電磁石電流についての名目値INOMを選択するのに使用されてもよい。
【0080】
図10は、本発明の実施形態による、他の動作条件について、イオン源10用の電磁石電流IMAGを最適化するのに使用されてもよい方法400を図式で示す。ブロック402にて、代表的な形態の分布プロファイルの形状係数Kが、イオンビームエッチプロファイルの凸性または凹性の尺度として規定される。この形状係数は、例えば、ある内側半径「r」内の測定点についてのビームの平均イオンビーム電流密度と、rと最大使用可能半径との間の半径における測定点についての平均電流密度の比であってよい。形状係数Kは、実質的にフラットなエッチプロファイルが存在するときに1に相当し、1より増加する値(K>1)は徐々に凸状になるエッチプロファイルに相当し、1より減少する値(K<1)は徐々に凹状になるエッチプロファイルに相当すると規定されてもよい。所与のイオンビーム処理構成および所与の動作パラメータのセットの場合、形状係数Kは、条件の参照セットについて、IMAGの関数(すなわち、K=K(IMAG))として提供されてもよい。
【0081】
ブロック404にて、正規化された形状係数Kは、参照電磁石電流Iにおける形状係数の値Kで割った、それぞれの異なる電磁石電流IMAGにおける形状係数の値Kとして規定される。Iは、ゼロ電流として規定され、電磁石がターンオフされている状態に相当する。こうして、正規化された形状係数Kは、
=K(IMAG)/K(I
として規定されてもよい。
【0082】
ブロック406にて、イオン源10のイオンビームエッチプロファイルは、電磁石電流IMAGの種々の値に関して参照動作条件で測定される。ブロック406の一実施形態では、基板11は、電磁石電流IMAGの種々の値において参照動作条件を用いてイオン源10によってエッチングされ、各基板の得られるイオンビームエッチプロファイルが測定され、各イオンビームエッチプロファイルは、その対応する電磁石電流IMAGに関連付けられる。代替の実施形態では、複数のファラディプローブが使用されて、参照動作条件を用いかつ電磁石電流IMAGの種々の値で、イオン源10のイオンビーム電流密度プロファイルについての空間分布が直接測定される。ブロック406にて、電磁石電流IMAGの1つの値が参照電磁石電流Iであるように選択されてもよい。ブロック408にて、形状係数Kについての値および正規化された形状係数Kが、ブロック406で測定された各イオンビームエッチプロファイルについて計算される。コントローラ87は、各イオンビームエッチプロファイルについて、形状係数Kについての値および正規化された形状係数Kを計算するのに使用されてもよい。
【0083】
ブロック410にて、所与のイオンビーム処理システムおよび動作パラメータのセットについて、イオンビームエッチレートプロファイルに対する電磁石電流の相対的な作用に関する情報を含む知識ベースが生成される。知識ベースは、テーブルまたはグラフィック表現の形態(すなわち、図11に示し、また、後で述べる形態など)をとってもよい。知識ベースは、コントローラ87のメモリ内に存在してもよい。
【0084】
ブロック412にて、イオン源10の1つまたは複数のイオンビームエッチプロファイルは、特定のイオンビーム処理ユニットおよび対象とする時間におけるその特定の状態に相当する「実際の」動作条件下で、参照電磁石電流値Iで測定される。ブロック414にて、実際の形状係数KACTUAL(I)は、実際の動作条件を用いた、参照電磁石電流Iにおける形状係数Kの値として規定される。ブロック416にて、実際の形状係数KACTUAL(I)は、イオンビームエッチプロファイルが参照電流Iにおいて所望の限界内にあることを示しているかどうかを判定するために評価される(すなわち、実際の形状係数KACTUAL(I)がほぼ1である場合、イオンビームエッチプロファイルが本質的に凹状でも凸状でもないことを示しており、均一なエッチプロセスが所望される)。イオンビームエッチプロファイルが参照電流Iにおいて望ましいことを、実際の形状係数KACTUAL(I)が示すとき、ブロック418にて、名目電磁石電流INOMが参照電磁石電流Iにセットされる(INOM=I)。ブロック420にて、電磁石電流最適化法400が終了する。
【0085】
コントローラ87は、電磁石電流を最適化するプロセスを実施するのに使用されてもよい。コントローラ87は、コントローラ87のCPU上で実行される、適したアルゴリズムに基づいて実際の形状係数と所望の形状係数の評価をしてもよい。
【0086】
好ましくないイオンビームエッチプロファイルが参照電流において得られる(すなわち、均一なエッチプロセスが所望されるときに、KACTUAL(I)が1にほぼ等しくない)ことを、参照電流Iにおける実際の形状係数KACTUAL(I)が示すとき、参照条件から得られる知識ベースが利用されて、ブロック422にて、所望のイオンビームエッチプロファイルをもたらす電磁石電流IMAGの設定が確定される(そのため、実際の動作条件について密度プロファイルを最適にするために、異なる磁石電流で形状係数を再評価する必要が回避される)。知識ベースが利用されて、所望の正規化された形状係数KNDが、参照電流における実際の形状係数KACTUAL(I)で割った所望の形状係数KDESIREDの比に等しい電磁石電流IMAGの値が見出されてもよい。一般に、均一なエッチプロセスが所望されるとき、所望の形状係数KDESIRED=1であるが、本発明はそのように制限されない。所望の正規化された形状係数KNDは、
ND=KDESIRED/KACTUAL(I
として規定されてもよい。
【0087】
図11は、イオンビームエッチプロファイルに対する磁石電流の相対作用の知識ベースのグラフ表現であり、電磁石電流IMAGと正規化された形状係数Kの関係をグラフで示す。このグラフ表現が利用されて、所望の形状係数KNDが(KDESIRED/KACTUAL(I))に等しい(すなわち、均一なエッチプロセスが所望されるときKDESIRED=1である)電磁石電流IMAGの値が参照されてもよい。電磁石電流IMAGの得られる値が、電磁石42または電源86の実用的な動作範囲内にないとき、名目電磁石電流INOMは、正規化された形状係数Kが所望の正規化された形状係数KNDに最も近い(すなわち、似ている)値にセットされてもよい。所望のエッチプロファイルをもたらす、電磁石電流IMAGまたは正規化された形状係数Kの2つ以上の値が存在するとき、この条件を与える任意の電磁石電流IMAGが、名目電磁石電流INOMのために選択されてもよい。
【0088】
例えば、図11に示す知識ベースは、実際の形状係数KACTUAL(I)が0.98に等しく(例えば、イオンビームエッチレートプロファイルが凹状であることを示し)、所望の形状係数KDESIREDがIにおいて(均一のエッチプロセスが所望されるとき)1に等しいとき、名目電磁石電流INOMを見出すために参照されてもよい。そのため、所望の正規化された形状係数KNDは、KND=(1)/(0.98)になるように計算される、すなわち、所望の形状係数KNDは、1.02に等しいことになる。図11に示すように、データベース内に、K=1.02に対応する電磁石電流IMAGの少なくとも2つの値が存在する。電磁石電流IMAGのこれらの値のいずれかが、名目電磁石電流INOMとして選択され(すなわち、IMAGは0.345アンペアまたは0.5アンペアにセットされてよい)、均一なエッチプロセスが所望される実質的にフラットなエッチレートプロファイルをもたらすとが考えられてもよい。
【0089】
再び図10を参照すると、ブロック424にて、名目電磁石電流INOMは、イオンビームエッチプロファイルのフラット性を最適化するために、所望の形状係数KNDが(KDESIRED/KACTUAL)に等しい電磁石電流IMAGにセットされる。ブロック420にて、電磁石最適化プロセスが終了する。
【実施例5】
【0090】
一実施形態では、電磁石電流IMAGは、所望のエッチプロファイル(すなわち、均一のエッチプロセスが所望されるときに実質的にフラットなプロファイル)を生成するように、離散的な段で電磁石電流IMAGを調整することによって最適化されてもよい。図12は、電磁石電流を増分し、増分調整に関連する作用を測定することによって、離散的な段で電磁石電流IMAGを最適化するルーチン450の例示である。ブロック452にて、イオン源10についての動作パラメータがセットされる。動作パラメータは、実施例4で述べるように生成された知識ベースから導出されてもよい電磁石電流IMAGの初期値を含んでもよい。ブロック454にて、イオン源10が、基板11を部分的にエッチングするのに使用される。ブロック456にて、イオンビームエッチプロファイルが測定される。
【0091】
ブロック462にて、ブロック456で採取された測定値に基づいてエッチングプロセスが終了したかどうかを判定するために、イオンビームエッチプロファイルが解析される。好ましくは、これは、エッチプロファイルと同時の実際のエッチ深さの測定によって判定されるが、平均エッチレートおよび累積エッチ時間に基づいて判定されてもよい。エッチングプロセスが終了しなかったと判定される場合、ブロック454にて、基板は再び部分的にエッチングされ、上記シーケンスが繰返される。エッチングプロセスが終了すると、制御が、ブロック462からブロック464に移されて、離散的なステップでの電磁石電流IMAGの調整が終了され、おそらく、同じ技法によって別の基板がエッチングされる。
【0092】
エッチングプロセスが終了しない場合、イオンビームエッチプロファイルは、望ましいかどうか(すなわち、均一のエッチプロセスが所望されるとき、イオンビームエッチプロファイルがほぼフラットであるかどうか)を判定するためのブロック458にて解析される。イオンビームエッチプロファイルが望ましくない場合、ブロック460にて、動作設定が調整される。動作設定の調整は、電磁石電流IMAGを徐々に増加させることまたは減少させることを含んでもよい。イオンビームエッチプロファイルが望ましい場合、動作設定において変更は行われず、基板のエッチングは、元の動作パラメータまたは調整された動作パラメータであってよいその時の動作パラメータで継続される。
【0093】
ブロック466にて、別の基板を処理すべきかどうかの決定が行われる。処理すべきでない場合、制御はブロック468に移り、ルーチン450は停止する。動作設定に対する調整または補正が、基板について必要とされた場合、ルーチン450を受ける次の基板について、動作設定に対して調整が行われるべきかどうかを判定するためのクエリーが、ブロック470にて生成される。調整が行われるべきでない場合、制御は、ブロック452に戻り、次の基板についての動作設定は初期動作設定に戻る。あるいは、調整が所望される場合、制御はブロック472に移り、その時の基板の補正の結果に基づいてイオンビームエッチプロファイルの形状を改善するための新たな初期動作設定が生成される。制御は、ブロック454へのエントリ地点に戻り、新しい基板について、反復的な電流調整および部分的なエッチプロセスが繰返される。
【実施例6】
【0094】
一実施形態では、イオン源10は、(電磁石設定以外の)選択された動作パラメータにおいて、電磁石電流が磁石電流の「使用可能な」範囲内でゼロから増加するにつれて、イオンビームエッチプロファイルだけが凸状になるかまたは凹状になるようにデザインされてもよい。磁石電流の「使用可能な」範囲は、最初は電源および磁石デザインの調整可能な範囲を指すが、表1および2に関して述べるように、ビーム分散および/またはビーム中性化に対する磁界の影響などのエッチ性能要件によって制限される可能性がある。
【0095】
凹状または凸状ビームプロファイルの補償を一般に必要とする可能性がある場合に、エッチプロファイルを微調するように、より完全に電磁石を利用できるために、イオンオプティクスを表す格子組立体32の半径方向透過性は、電磁界が存在しない(すなわち、ワイヤコイル72、74に供給される電磁石電流IMAGがゼロにセットされている)状態で、対象とする(電磁石電流設定を除く)動作パラメータにおいて、イオンビームエッチプロファイルが、磁石の作用に対して凸性が反転させられるようにデザインされてもよい(磁界の作用が凸性を増加させる場合、より凹状であり、また、その逆の場合も同じである)。全体的なこの変化の量的な程度が最適化されて、推定される最も広い範囲の潜在的な動作条件および磁石電流設定について、最も望ましいプロファイルが得られることが可能になってもよい。最適な場合、最も望ましい密度プロファイルは、平均して、ゼロと許容される最大設定との間の中間のある磁石電流で達成されることになる。
【0096】
例えば、図11は、電磁石電流IMAGが、0〜0.3Aの低磁界範囲で増加すると、イオンビームエッチプロファイルがより凸状になるような、正規化された形状プロファイルKに対する電磁石電流の作用をグラフで示す。
【0097】
図13Aは、電磁石電流IMAGがゼロに等しくなるようセットされた状態での、図1および2のイオン源の先の実施形態によって生成された動作パラメータの所与のセットについてのわずかに凸状のイオンビームエッチプロファイル510を予言的に示す。このプロファイルは、磁石電流のわずかの増加がプロファイルをより凹状にするだけであるということによって、低磁界強度で動作する電磁石によってより均一になることができない。図13Bは、電磁石電流IMAGがゼロにセットされた状態での、同じ動作パラメータにおける同じイオン源、および、得られるプロファイルがより凹状になるように凸性を低減するよう調整されたデザインにおける格子組立体32の半径方向透過性によって生成されたイオンビームエッチプロファイル520を予言的に示す。
【0098】
図13Cで予言的に示されるように、ワイヤコイル72、74に対する電磁石電流IMAGは、この場合、比較的低い値までわずかに増加して、イオンビームエッチプロファイル520(図13B)の凹性を低減し、より均一なイオンビームエッチプロファイル530をもたらしてもよい。図11の場合、この方法は、有利には、電磁石動作を低磁界範囲に制限するのに使用されてもよく、そのことは、イオンオプティクス動作に関する磁界の干渉(すなわち、大きな磁界は、格子38の近傍における磁界プラズマ歪のために、イオンビーム15の分散を増加させる可能性がある)および/または基板11に対する下流伝播におけるイオンビーム15の中性化を最小にするのに望ましい可能性がある。
【0099】
電磁石電流IMAGに対する調整は、同様に、イオン源10が経年変化するときの、イオンビームエッチプロファイルの劣化を制御するのに利用されてもよい。図14Aは、イオン源10が経年変化するにつれて、フラットなプロファイル530(図13C)が凸性を増加させられる、(均一なエッチプロセスが所望される場合に)図13Cで得られたイオンビームエッチプロファイルの劣化を予言的に示す。具体的には、凸性が増加したイオンビームエッチプロファイル600は、イオン源10が使用に伴って経年変化するときに観察される可能性がある。図14Bは、イオンビームエッチプロファイルをフラットにするために、電磁石に供給される電磁石電流IMAGを減少させることによって行われてもよい調整の作用を予言的に示す。その後、電磁石電流IMAGの減少は、イオン束の分布をフラットにして、プロファイルよりも少ない凸性を有し、また、プロファイル530(図13C)により厳密に似るイオンビームエッチプロファイル610(図14B)を生成する。
【0100】
その逆で、図14Cおよび14Dは、形状プロファイル530(図13C)が、イオン源10の経年変化に伴って凹性が増加させられる、図13Cのフラットプロファイルの劣化、および、イオンビームエッチをフラットにするために、電磁石電流IMAGを増加させることによって行われてもよい調整を予言的に示す。具体的には、イオンビームエッチプロファイル650は、イオン源10が動作に伴って経年変化すると、徐々に凹性が増加する。その後、電磁石電流IMAGの増加は、イオン束の分布をフラットにして、少ない凹性を有し、また、プロファイル530(図13C)により厳密に似るイオンビームエッチプロファイル660(図14D)を生成する。
【0101】
処理されるべき異なる基板について磁界75を異なって最適化することが望ましい場合、コイル72、74に対する磁石電流設定86に通信される。上述したように、変動を補償するよう磁石電流を調整するために、レシピ制御ソフトウェアが使用されて、プロセスレシピが自動的に書き直されうる。
【0102】
アジマス軸19を中心としてイオン源10に垂直なアジマス非対称によるイオンビームエッチプロファイルの任意の不均一性は、無視できるか、または、半径方向不均一性と比べて少なくとも小さい可能性がある。しかし、イオン源10のアジマス軸19に垂直なアジマス非対称によるイオンビームエッチプロファイル不均一性が無視できない場合、電磁石42の位置に対する他の調整が、上述した方法を使用する前に行われてもよい。
【0103】
本発明が種々の実施形態および実施例の説明によって示され、また、これらの実施形態がかなり詳細に述べられたが、添付特許請求項の範囲をこうした詳細に制限するか、または、とにかく限定することは、本出願人の意図ではない。さらなる利点および修正が当業者に容易に明らかになるであろう。したがって、本発明は、その幅広い態様において、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに、示され、述べられる例証的な実施例に限定されない。相応して、本出願人の一般的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、こうした詳細からの逸脱が行われてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 イオン源
11 基板
12 真空処理システム
12a プロセスチャンバ
13 真空ポンプ
14 処理空間
15 イオンビーム
16 放電チャンバ
17 プラズマ
18 管状側壁
19 アジマス軸
20 バックフランジ
21 基板支持体
22 ガス入口
23 ガス源
24 放電空間
25 ファラディシールド
26 コイルアンテナ
28 電源
30 インピーダンス整合ネットワーク
31、49、51、52、53 開放端
32 格子組立体
34、36、38 格子
40 格子電源
42、42a、42b、42c 電磁石
44 リエントラント容器
46、48、130 極片
50、134 ギャップ
54、98、107 コア素子
56 端壁
58 搭載板
60 リング
62 側壁
64 絶縁材料の板
66、136 ワイヤスプール
67 止めねじ
68 穴
72、74、138、140 ワイヤコイル
76、78 フランジ
77 アパーチャ
80、82、84 タップ
86 電源
87 コントローラ
89 センサ
92 ガイドポスト
96 ワイヤ通路
100 ポジショナ
102、106、118、124 ブラケット
103 フランジ
104 ボルト
108、120、125 ねじ付きロッド
110 支持ロッド
112 スペーサ
114 回転機構
116、122、126 つまみねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置用のイオン源であって、
作動ガスを収容するように構成された放電空間を有する放電チャンバと、
前記放電空間の内側で前記作動ガスからプラズマを発生させるように構成されたアンテナと、
前記放電チャンバに近接して配設された電磁石とを備え、前記電磁石は、磁気透過性材料から形成された第1極片および第1コイルを含み、前記第1極片は管状側壁を含み、前記第1コイルは、前記第1極片の前記管状側壁に近接して配置され、前記第1コイルは、励磁され前記放電空間内で磁界を発生するように構成され、前記第1極片は、前記放電空間の内側で前記プラズマの分布を変化させるのに有効な磁界を形作るよう構成されるイオン源。
【請求項2】
前記第1コイルは、前記第1極片の前記管状側壁に対して半径方向に離間した関係で配置される請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記電磁石は、前記磁気透過性材料から形成された第2極片をさらに備え、前記第2極片は管状側壁を有し、前記第1コイルは、前記第1極片の前記管状側壁と前記第2極片の前記管状側壁との間に半径方向に配置される請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記第1コイルは、格子組立体に対して前記第1コイルの軸方向位置を変更するために、第1環状空間内で移動可能である請求項3に記載のイオン源。
【請求項5】
前記電磁石は、前記磁気透過性材料から形成されたコア素子をさらに備え、前記コア素子は、前記第1極片の前記管状側壁と前記第2極片の前記管状側壁を接続する請求項3に記載のイオン源。
【請求項6】
前記第1および第2極片は同軸に配置される請求項3に記載のイオン源。
【請求項7】
前記電磁石は、前記磁気透過性材料から形成された第3極片および第2コイルをさらに備える請求項3に記載のイオン源。
【請求項8】
前記第3極片は管状側壁を有し、前記第2コイルは、前記第2極片の前記管状側壁と前記第3極片の前記管状側壁との間に半径方向に配置される請求項7に記載のイオン源。
【請求項9】
前記磁気透過性材料から形成されたコア素子をさらに備え、前記コア素子は、前記第1極片の前記管状側壁と前記第2極片の前記管状側壁を接続し、前記コア素子は、前記第2極片の前記管状側壁と前記第3極片の前記管状側壁を接続する請求項8に記載のイオン源。
【請求項10】
前記第1コイルは、前記第1極片に対して前記コイルの位置を変更するために移動可能である請求項1に記載のイオン源。
【請求項11】
前記電磁石は第2コイルをさらに含み、前記第1コイルは第1タップを含み、前記第2コイルは第2タップを含み、前記第1および第2コイルは、前記第1タップと前記第2タップとの間の中間の第3タップにおいて直列に結合される請求項1に記載のイオン源。
【請求項12】
前記第1タップと結合した第1極性の第1端子、および、前記第2タップまたは前記第3タップと選択的に結合するように構成された第2極性の第2端子を含む電源をさらに備える請求項11に記載のイオン源。
【請求項13】
前記放電空間に対する前記電磁石の位置を調整するよう構成されたポジショナをさらに備える請求項1に記載のイオン源。
【請求項14】
前記放電チャンバは、閉鎖端、開放端および前記閉鎖端から前記放電空間内に突出する管状側壁を有するカップ形状リエントラント容器を備え、前記電磁石は、前記リエントラント容器内に少なくとも部分的には配設される請求項1に記載のイオン源。
【請求項15】
前記リエントラント容器の前記管状側壁の前記開放端に近接した少なくとも1つの格子をさらに備え、前記少なくとも1つの格子は、前記放電空間内でプラズマからイオンを抽出するように構成された請求項14に記載のイオン源。
【請求項16】
前記リエントラント容器の前記管状側壁は、前記放電チャンバの前記閉鎖端から前記格子組立体に向かって突出する請求項15に記載のイオン源。
【請求項17】
前記格子組立体はアパーチャを含み、前記アパーチャは、前記放電空間の内側でプラズマの分布と協働するために配置されかつその大きさに作られ、それにより、前記格子組立体内の前記アパーチャを通してプラズマから抽出されるイオンビームが、実質的に空間的に均一であるイオン電流を有する請求項15に記載のイオン源。
【請求項18】
前記リエントラント容器の前記管状側壁に対して前記リエントラント容器内の前記電磁石の位置を調整するよう構成されたポジショナをさらに備える請求項14に記載のイオン源。
【請求項19】
前記ポジショナは、前記リエントラント容器の前記管状側壁に対して横方向に前記電磁石の前記位置を調整するよう構成される請求項18に記載のイオン源。
【請求項20】
前記ポジショナは、前記リエントラント容器の前記開放端に対して軸方向に前記電磁石の位置を調整するよう構成される請求項18に記載のイオン源。
【請求項21】
前記第1極片は、前記第1コイルと前記リエントラント容器の前記管状側壁との間に半径方向に配設される請求項14に記載のイオン源。
【請求項22】
前記第1コイルは、前記第1極片と前記リエントラント容器の前記管状側壁との間に配設される請求項14に記載のイオン源。
【請求項23】
前記放電チャンバは開口を備え、
前記放電チャンバの前記開口に近接する少なくとも1つの格子をさらに備え、前記少なくとも1つの格子は、前記放電チャンバ内の前記開口を通して前記放電空間の内側でプラズマからイオンを抽出するように構成された請求項1に記載のイオン源。
【請求項24】
プラズマ処理装置用のイオン源であって、
第1端、第2端、前記第1端と前記第2端との間の放電空間、および、前記第2端の開口を含む放電チャンバを備え、前記放電空間は作動ガスを収容するように構成され、
前記放電空間の内側で前記作動ガスからプラズマを発生させるように構成されたアンテナと、
前記放電チャンバの前記第1端に近接し、励磁され前記放電空間内で磁界を発生するように構成されたコイルを含む電磁石と、
前記放電チャンバ内の前記開口を通して前記放電空間内のプラズマからイオンを抽出するように構成された少なくとも1つの格子とを備えるイオン源。
【請求項25】
前記少なくとも1つの格子は、複数のアパーチャを含み、前記複数のアパーチャを通して、プラズマからイオンが抽出される請求項24に記載のイオン源。
【請求項26】
前記少なくとも1つの格子は、前記放電空間内のプラズマからイオンを抽出するために、互いに対して電気的にバイアスされるように構成された複数の格子を備える請求項24に記載のイオン源。
【請求項27】
前記アンテナは、前記放電チャンバの外に配設される請求項24に記載のイオン源。
【請求項28】
プラズマ処理装置用のイオン源であって、
作動ガスを収容するように構成された放電空間を有し、開口を含む放電チャンバと、
前記プラズマ容器の外に配設され、前記放電空間の内側で前記作動ガスからプラズマを発生するように構成されたアンテナと、
前記放電チャンバに近接して配設され、励磁され前記放電空間内で磁界を発生するように構成されたコイルを含む電磁石と、
前記放電チャンバ内の前記開口を通して前記放電空間内のプラズマからイオンを抽出するように構成された少なくとも1つの格子とを備えるイオン源。
【請求項29】
前記少なくとも1つの格子は、複数のアパーチャを含み、前記複数のアパーチャを通して、プラズマからイオンが抽出される請求項28に記載のイオン源。
【請求項30】
前記少なくとも1つの格子は、前記放電空間内のプラズマからイオンを抽出するために、互いに対して電気的にバイアスされるように構成された複数の格子を備える請求項28に記載のイオン源。
【請求項31】
放電空間および電磁石を含む無線周波数イオン源を動作させる方法であって、
前記放電空間内で作動ガスからプラズマ密度分布を有するプラズマを発生させるステップと、
前記プラズマ密度分布を形成するのに有効である磁界を前記放電空間内に発生させるために、前記電磁石に電流を印加するステップと、
前記プラズマからイオンビームを抽出するステップと、
ウェハ処理ロケーションに近接する前記イオンビーム密度の実際の分布プロファイルを確定するステップと、
前記イオンビーム密度の前記実際の分布プロファイルを、前記イオンビーム密度についての所望の分布プロファイルと比較するステップと、
前記比較に基づいて、磁界を修正し、それにより、前記プラズマ密度分布を変化させるために、前記電磁石に印加される電流を調整するステップとを含む方法。
【請求項32】
前記電磁石に印加される電流を調整するステップは、
前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルと前記イオンビーム密度についての前記所望の分布プロファイルとの差を低減するために、前記プラズマ密度分布を変化させるステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電磁石に印加される電流を調整するステップは、
ユーザの介入なしで、前記電磁石に印加される電流を自動的に調整するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記イオンビーム密度の実際の分布を確定するステップは、
前記イオン源に結合したプロセスチャンバの内側でウェハエッチレート分布またはビームプロファイルを測定するステップをさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記実際の密度分布プロファイルは、前記イオン源のアジマス軸の周りに半径方向依存性を示し、前記イオンビーム密度についての前記所望の密度分布を前記実際の密度分布と比較するステップは、
前記電磁石のコイルに印加される電流の大きさに対する、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルの前記半径方向依存性に関連する知識ベースを作成するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記知識ベースを作成するステップは、
前記電磁石のコイルに複数の異なる電流を供給するステップと、
前記異なる電流のそれぞれにおいて、イオンビームを抽出するステップと、
前記異なる電流のそれぞれにおいて、前記イオンビーム密度の参照分布プロファイルを確定するステップと、
前記異なる電流と関係付けられたデータベースに、前記異なる電流のそれぞれにおける前記イオンビーム密度についての前記参照分布プロファイルを収集するステップとをさらに含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記異なる電流のそれぞれにおいて、前記イオンビーム密度の前記参照分布プロファイルを確定するステップは、
前記異なる電流のそれぞれにおいて前記イオン源から抽出される前記イオンビームによって、複数のウェハをエッチングするステップと、
前記ウェハのそれぞれにわたってエッチ深さプロファイルを測定するステップと、
前記ウェハのそれぞれについての前記エッチ深さプロファイルを、前記異なる電流のそれぞれ1つの電流における、前記イオンビーム密度の前記参照分布プロファイルに関係付けるステップとをさらに含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記半径方向依存性は、前記アジマス軸の周りに対称である請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記電磁石に印加される電流を調整するステップは、
前記イオンビーム密度について前記所望の分布プロファイルを提供する前記知識ベースから前記電流の大きさを選択するステップをさらに含む請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記電磁石に印加される電流を調整するステップは、
前記イオン源のアジマス軸の周りの前記実際の分布プロファイルの凹性または凸性を増加させるまたは減少させるために、前記電流を選択するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記電磁石に印加される電流を調整するステップは、
前記イオンビーム密度について前記実際の分布プロファイルの均一性を改善するために、前記電流を選択するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記イオンビーム密度について前記実際の分布プロファイルを確定するステップは、
前記イオン源から抽出される前記イオンビームによってウェハをエッチングするステップと、
前記ウェハにわたってエッチレートプロファイルを測定するステップと、
前記エッチレートプロファイルを、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルに関係付けるステップとをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記イオンビーム密度について前記実際の密度分布プロファイルを確定するステップは、
複数の位置においてイオン電流密度を測定するために、複数のファラディプローブを前記イオンビーム内に挿入するステップと、
前記複数の位置のそれぞれにおける前記イオン電流密度から、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルを生成するステップとをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記イオンビーム密度について前記実際の分布プロファイルを確定するステップは、
前記抽出されたイオンビームによってウェハを部分的にエッチングするステップと、
前記部分的にエッチングされたウェハにわたってエッチレートプロファイルを測定するステップと、
前記部分的にエッチングされたウェハについての前記エッチレートプロファイルを、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルに関係付けるステップとをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記コイルに印加される電流を調整するステップは、
前記比較に基づいて、前記コイルに印加される電流が徐々に変化するようにさせるステップをさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
本プロセスは、前記プラズマから抽出された前記イオンビームによる単一ウェハの処理中に反復的に実施される請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記エッチレートプロファイルは、前記イオン源に結合されたプロセスチャンバ内でインサイチュで測定される請求項44に記載の方法。
【請求項48】
エッチ深さプロファイルを測定するために、前記イオン源に結合したプロセスチャンバから測定モジュールへ前記ウェハを移動させるステップと、
前記エッチ深さプロファイルを、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルに関係付けるステップと、
前記エッチ深さプロファイルが測定された後に、さらなる処理のために、前記ウェハを前記プロセスチャンバに戻すステップとをさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記電磁石に印加される電流を調整するステップは、
前記調整される電流を指示する制御信号を、コントローラから前記電磁石のコイルに結合した電源へ通信するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項50】
前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルを、前記イオンビーム密度についての前記所望の分布プロファイルと比較するステップは、
前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルおよび前記イオンビーム密度についての前記所望の分布プロファイルを、コントローラのメモリに格納するステップと、
前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルを、前記イオンビーム密度についての前記所望の分布プロファイルと比較するアルゴリズムを前記コントローラ上で実行するステップとをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記イオン源は、前記コイルに隣接する磁気透過性材料の極片を含み、
前記プラズマを分散させるために、前記極片によって前記放電空間内の前記磁界の力線を形作るステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項52】
前記プラズマから前記イオンビームを抽出するステップは、
前記プラズマから前記イオンビームを抽出するために、1つまたは複数の電圧を格子組立体イオンオプティクスに印加するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項53】
前記実際の密度分布プロファイルは、前記イオン源のアジマス軸の周りに半径方向依存性を示し、
前記半径方向依存性に影響を及ぼす可変の半径方向透過性を有するように、前記格子組立体イオンオプティクスをデザインするステップをさらに含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記格子組立体イオンオプティクスの前記可変の半径方向透過性は、動作パラメータの差または動作条件の差を補償するために、前記イオンビーム密度について前記実際の分布プロファイルの形状を調整するための前記電磁石の能力を最大にするようデザインされる請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記格子組立体イオンオプティクスの前記可変の半径方向透過性は、前記磁界の作用が、前記イオンビーム密度についての前記所望の分布プロファイルからの、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルの凹形状偏移または凸形状偏移を補償することを可能にするようデザインされる請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記格子組立体イオンオプティクスは、イオン源デザインと、電流だけを増加させる作用が、前記イオンビーム密度についての前記実際の分布プロファイルの凸性または凹性を増加させるまたは減少させる、磁石電流動作の使用可能範囲と共に使用される請求項55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【公表番号】特表2010−519710(P2010−519710A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551065(P2009−551065)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/055016
【国際公開番号】WO2008/106448
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(507414535)ビーコ・インスツルメンツ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】