説明

イメージセンサ、分光装置、及びイメージセンサの作動方法

【課題】受光する光の強度にばらつきが生じたとしても、高精度に測定することができるイメージセンサ、分光装置、及びイメージセンサの作動方法を提供する。
【解決手段】イメージセンサ1は、入力用スイッチ22を介して受光素子21の接続された積分回路23、その出力電圧値が検出閾値を越えたときに検出信号Sを出力する電圧検出回路24、及び出力用スイッチ25を有する複数の光電変換部10と、ADC11と、入力用スイッチ22を閉状態に制御して検出信号Sが出力されたときにその入力用スイッチ22を開状態に制御し、入力用スイッチ22を閉状態に維持させた時間を電荷蓄積時間として測定すると共に、出力用スイッチ25を制御して光電変換部10ごとの出力電圧値を測定電圧値としてADC11から読み込み、各光電変換部10への入射光の強度を、電荷蓄積時間及び測定電圧値に基づいて演算する制御部12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受光素子を備えるイメージセンサ、イメージセンサと分光器とを備える分光装置、及びイメージセンサの作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサは、複数の受光素子が配列され、各受光素子に入射される光の強度を電気信号に変換して出力するものであり、例えば分光装置に組み込まれて用いられている。このようなイメージセンサが、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたイメージセンサは、複数の受光素子(フォトダイオード)が各々スイッチを介して1つの積分回路(信号処理部)に接続されているものである。この各スイッチは、互いに異なる期間に閉状態に制御されると共に、各スイッチを閉状態にする間隔が基準時間の整数倍となるように制御される。このため、受光素子が電荷を蓄積する電荷蓄積時間が基準時間の整数倍となる。この整数倍の倍数値を受光素子ごとに予め設定することで、受光素子が飽和しない電荷蓄積時間になる。また、このイメージセンサは、積分回路が電荷を蓄積する可変容量部を有していて、各受光素子から出力される電荷を蓄積する際に、その受光素子の電荷蓄積時間に比例させて可変容量部の容量値を設定変更している。このため、受光素子ごとに積分回路から出力される電圧は、電荷積分時間や容量値の相違の影響が除かれた電圧値となる。
【0004】
この特許文献1のイメージセンサは、測定対象光の強度に合わせて、各受光素子の電荷蓄積時間を予め設定しておく必要がある。例えば、このイメージセンサを用いた分光装置で、同種の多数の発光体(例えば発光ダイオードや蛍光灯)を順次取り換えつつ、繰り返し発光体の発光波長を検査する場合、発光体ごとの発光強度やピーク波長のばらつき、分光装置と発光体との距離のばらつきにより、各受光素子に入射する光の強度に想定以上の大きなばらつきが生じてしまうことがある。イメージセンサの電荷蓄積時間が予め決められていると、このようなばらつきが生じたときに、光の強度が強すぎて受光素子や積分回路が飽和したり、光の強度が弱すぎて信号がノイズに埋もれたりするため、測定の精度が悪くなるという問題がある。
【0005】
また、このイメージセンサでは、電荷蓄積時間を長く設定すると可変容量部の容量も大きく設定されるが、積分回路から出力される電圧は可変容量部の容量に反比例するので、蓄積された電荷量によっては積分回路の出力電圧が小さくなってしまう範囲がある。小さな出力電圧を精度よく測定することは難しいため、測定の精度が悪くなるという問題がある。
【0006】
さらに、複数の受光素子からの電荷を1つの積分回路で電圧変換しているため、全ての受光素子の出力を電圧変換するのに時間が掛かるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−349623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、受光する光の強度にばらつきが生じたとしても、高精度に測定することができるイメージセンサ、分光装置、及びイメージセンサの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたイメージセンサは、入射光の強度に応じた量の電荷を発生する受光素子と、該受光素子に一端が接続された入力用スイッチと、該入力用スイッチの他端に接続され、該入力用スイッチを介して入力する該電荷を蓄積してその電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、該積分回路の出力する電圧値が検出閾値を越えたときに検出信号を出力する電圧検出回路と、該積分回路の出力に一端が接続された出力用スイッチとを各々有する複数の光電変換部と、
該複数の光電変換部の各々の該出力用スイッチの他端同士を接続する共通配線に入力端子が接続されているアナログ/デジタル変換器と、
各々の該入力用スイッチを開状態から閉状態に制御して閉状態を維持させ、各々の該電圧検出回路から該検出信号が出力されたときにその検出信号を出力した該光電変換部の該入力用スイッチを閉状態から開状態に制御する入力制御手段と、
該入力制御手段が各々の該入力用スイッチを閉状態に維持させた経過時間を電荷蓄積時間として該入力用スイッチごとに測定する時間測定手段と、
該入力制御手段が閉状態から開状態に制御した該入力用スイッチを有する該光電変換部の該出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値をそれぞれの測定電圧値として該アナログ/デジタル変換器から読み込む電圧測定手段と、
各々の該光電変換部への該入射光の強度を、該光電変換部に対応する該電荷蓄積時間及び該測定電圧値に基づいて演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載されたイメージセンサは、請求項1に記載されたイメージセンサであって、前記検出閾値は、前記アナログ/デジタル変換器が変換可能な最大の入力電圧値の10〜90%の値であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載されたイメージセンサは、請求項1又は2に記載されたイメージセンサであって、前記検出閾値を、各々の前記電圧検出回路ごとに可変設定可能な閾値設定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載されたイメージセンサは、請求項1又は2に記載されたイメージセンサであって、前記積分回路は、前記電荷を蓄積する可変容量部を有しており、該可変容量部の容量値を可変設定可能な容量設定手段をさらに備え、前記演算手段は、該可変容量部の容量値、前記電荷蓄積時間、及び前記測定電圧値に基づいて前記入射光の強度を演算することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載された分光装置は、分光器と、該分光器により分光された各波長の光を前記入射光として受光する請求項1〜4のいずれかに記載のイメージセンサとを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載されたイメージセンサの作動方法は、
入射光の強度に応じた量の電荷を発生する受光素子と、該受光素子に一端が接続された入力用スイッチと、該入力用スイッチの他端に接続され、該入力用スイッチを介して入力する該電荷を蓄積してその電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、該積分回路の出力する電圧値が検出閾値を越えたときに検出信号を出力する電圧検出回路と、該積分回路の出力に一端が接続された出力用スイッチとを各々有する複数の光電変換部と、
該複数の光電変換部の各々の該出力用スイッチの他端同士を接続する共通配線に入力端子が接続されているアナログ/デジタル変換器とを備えるイメージセンサの作動方法であって、
各々の該入力用スイッチを開状態から閉状態に制御して閉状態を維持させ、各々の該電圧検出回路から該検出信号が出力されたときにその検出信号を出力した該光電変換部の該入力用スイッチを閉状態から開状態に制御する入力制御ステップと、
該入力制御ステップで各々の該入力用スイッチを閉状態に維持させた経過時間を電荷蓄積時間として該入力用スイッチごとに測定する時間測定ステップと、
該入力制御ステップで閉状態から開状態に制御した該入力用スイッチを有する該光電変換部の該出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値をそれぞれの測定電圧値として該アナログ/デジタル変換器から読み込む電圧測定ステップと、
各々の該光電変換部への該入射光の強度を、該光電変換部に対応する該電荷蓄積時間及び該測定電圧値に基づいて演算する演算ステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載されたイメージセンサの作動方法は、請求項6に記載されたものであって、
前記積分回路が前記電荷を蓄積する可変設定可能な可変容量部を各々有しており、この可変容量部の容量値を、測定対象光に最適化するために、
所望する最大の電荷蓄積時間である最大電荷蓄積時間を入力設定する蓄積時間入力ステップと、
可変容量部の容量値を最大容量値に制御する最大容量設定ステップと、
該測定対象光の基準となる基準光を前記入射光として前記複数の光電変換部に入射させる基準光入射ステップと、
前記各々の入力用スイッチを開状態から閉状態に制御してこの閉状態を該最大電荷蓄積時間だけ維持させ、該最大電荷蓄積時間が経過した時に該各々の入力用スイッチを開状態に制御する基準電荷蓄積ステップと、
前記各々の出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値を容量設定用電圧値として前記アナログ/デジタル変換器から読み込む容量設定用電圧測定ステップと、
この容量設定用電圧値が、前記検出閾値を越えているか否かを判別し、該容量設定用電圧値が該検出閾値を越えていないと判別された該光電変換部の該可変容量部の容量値を、さらに小さな容量値に設定変更する容量変更ステップとをさらに備え、
全ての該容量設定用電圧値が該検出閾値を越えるまで、該基準光入力ステップと、該電圧比較ステップと、該容量変更ステップとを繰り返し行うことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載されたイメージセンサの作動方法は、請求項6に記載されたものであって、
前記検出閾値が各々可変設定可能になっており、この該検出閾値を、測定対象光に最適化するために、
所望する最大の電荷蓄積時間である最大電荷蓄積時間を入力設定する蓄積時間入力ステップと、
該測定対象光の基準となる基準光を前記入射光として前記複数の光電変換部に入射させる基準光入射ステップと、
前記各々の入力用スイッチを開状態から閉状態に制御してこの閉状態を該最大電荷蓄積時間だけ維持させ、該最大電荷蓄積時間が経過した時に該各々の入力用スイッチを開状態に制御する基準電荷蓄積ステップと、
前記各々の出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値を閾値設定用電圧値として前記アナログ/デジタル変換器から読み込む閾値設定用電圧測定ステップと、
各々の該検出閾値を、各々の該閾値用電圧値よりも小さな値に設定変更する閾値変更ステップとをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のイメージセンサ及びイメージセンサの作動方法によれば、閉状態の入力スイッチを介して受光素子の電荷が直ちに積分回路に蓄積されることで、受光素子の飽和を防止でき、高精度な測定を行うことができる。また、受光素子に入力用スイッチを介して積分回路が接続されており、積分回路の出力電圧が検出閾値を越えたときに、入力用スイッチが開状態に制御されて受光素子から切り離されるため、どのような強度の光を受光したとしても、積分回路の飽和を防止することができると共に積分回路後段のアナログ/デジタル変換器のオーバーフローを防止することができ、高精度な測定を行うことができる。また、受光する光の強弱によらず、積分回路の出力電圧は検出閾値を越えるので、出力電圧が小さくなりすぎず、高精度な測定を行うことができる。さらに、受光素子と同数の積分回路を有しているので、特許文献1のイメージセンサのように1つの積分回路を切り換えて用いるよりも、遥かに短時間で測定を行うことができる。
【0018】
本発明のイメージセンサによれば、検出閾値を、アナログ/デジタル変換器が変換可能な最大の入力電圧値の10〜90%の値とすることで、アナログ/デジタル変換器の測定可能範囲を確実に使用して測定することができるので、高精度な測定を確実に行うことができる。
【0019】
本発明のイメージセンサによれば、各々の電圧検出回路ごとに検出閾値を可変設定可能な閾値設定手段をさらに備えていることにより、各受光素子が受光する測定対象光の強度に応じて検出閾値を最適化することができる。また、本発明のイメージセンサの作動方法によれば、所望の最大電荷蓄積時間の経過時に出力される積分回路の出力電圧よりも小さな値に検出閾値を設定することで、最適な検出閾値に自動的に設定することができる。例えば、測定対象光の強度が弱いことにより、所望する最大電荷蓄積時間内に積分回路の出力電圧が検出閾値に達しない場合、検出閾値を予め小さく設定変更して所望する最大電荷蓄積時間内に電荷の蓄積が完了するようにできる。また、測定対象光の強度が強い場合、積分回路から出力される大きな電圧に対応させて検出閾値を予め大きく設定変更することで、積分回路やアナログ/デジタル変換器の測定可能レンジを十分に使用できるようになる。
【0020】
本発明のイメージセンサによれば、積分回路は、可変容量部を有し、可変容量部の容量値を可変設定可能な容量設定手段をさらに備えることで、各受光素子が受光する測定対象光の強度に応じて電荷を蓄積する容量値を最適化することができる。また、本発明のイメージセンサの作動方法によれば、積分回路の出力電圧が所望の最大電荷蓄積時間内に所定の電圧を越えるように、可変容量部の容量値を最大値から小さくしていくことで、最適な容量値に自動的に設定することができる。積分回路の出力電圧は容量値に反比例するため、光の強弱に応じて容量値を予め最適化することで積分回路の出力電圧が最適化されて、一層高精度な測定を行うことができる。
【0021】
本発明の分光装置によれば、どのような強度の測定対象光についても、波長の測定を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用するイメージセンサを示す構成図である。
【図2】本発明を適用するイメージセンサに用いる積分回路を示す回路図である。
【図3】本発明を適用するイメージセンサに用いる電圧比較回路の回路図である。
【図4】本発明を適用するイメージセンサの作動方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明を適用する別のイメージセンサの作動方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明を適用するさらに別のイメージセンサの作動方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用する分光装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施形態の一例であるイメージセンサを図1に示す。このイメージセンサ1は、複数の光電変換部10、アナログ/デジタル変換器11(以下、ADC11ともいう)、及び制御部12を有し、各光電変換部10に入射される光の強度を測定可能に構成されている。なお、各光電変換部10を区別するときは、同図に示すように各符号「10」の末尾に1〜n(nは整数)の添え字を付して区別するものとする。
【0025】
複数の光電変換部10は、フォトダイオード21、入力用スイッチ22、積分回路23、電圧検出回路24、及び出力用スイッチ25を各々有している。なお、これらを光電変換回路10ごとに区別するときは、同図に示すように、各符号の末尾に光電変換回路10の添え字と同様の添え字を付して区別するものとする。
【0026】
フォトダイオード21は、本発明における受光素子の一例であって、入射光の強度に応じた量の電荷を発生するものである。フォトダイオード21〜21として、全て同種のものを用いてもよいし、例えば、広い波長域の光を測定対象とする分光装置にイメージセンサ1を用いる場合には、測定対象光の波長に対応させて各々の検出波長域が異なっているものを用いてもよい。フォトダイオード21は、カソードが基準電位となるグランド電位に接続され、アノードが入力用スイッチ22の一端に接続されている。
【0027】
入力用スイッチ22は、制御部12の開閉制御により開閉動作するものである。入力用スイッチ22は、所望する応答速度で開閉動作し、漏れ電流の少ないものであることが好ましい。入力用スイッチ22の他端は、積分回路23の入力端子に接続されている。
【0028】
積分回路23は、入力用スイッチ22を介してフォトダイオード21から入力する電荷を蓄積してその電荷の量に応じた電圧値を出力するものである。図2に、積分回路23の一例を示す。
【0029】
同図に示す積分回路23は、増幅器31及び可変容量部32を有し、増幅器31の入出力間に可変容量部32が接続されている。増幅器31は、一例として演算増幅器であり、この演算増幅器の反転入力端子を同図に示す入力端子とし、非図示の非反転入力端子を基準電位となるグランド電位に接続したものである。可変容量部32は、コンデンサ33〜33、及び容量用スイッチ34〜34を有している。この可変容量部32は、容量用スイッチ34、直列接続されたコンデンサ33及び容量用スイッチ34、直列接続されたコンデンサ33及び容量用スイッチ34、並びに直列接続されたコンデンサ33及び容量用スイッチ34同士が並列接続されて構成されている。容量用スイッチ34〜34は、制御部12による開閉制御により開閉動作するものである。容量用スイッチ34〜34は、所望する応答速度で開閉動作し、漏れ電流の少ないものであることが好ましい。
【0030】
可変容量部32は、容量用スイッチ34〜34の各々の開閉状態により容量値が可変設定される。また、可変容量部32は、容量用スイッチ34を閉状態にすると、それまで可変容量部32に蓄積されていた電荷が放電される。積分回路23は、可変容量部32で可変設定された容量値をCとして、そこに蓄積された電荷の量をQとすると、Q/Cに応じた電圧を出力する。
【0031】
コンデンサ33〜33の容量値は、フォトダイオード21の検出感度や受光する光の強度、所望する測定時間等に基づいて適宜定める。一例としてコンデンサ33の容量値をCとしたときにコンデンサ33〜33の各容量比を、コンデンサ33:コンデンサ33:コンデンサ33がC:2C:4Cのように倍数的な関係になるように定めたり、C:10C:100Cのように指数関数的な関係になるように定めたりすると、可変容量部32の容量可変幅を大きくできるので好ましい。コンデンサ33〜33の容量比をC:2C:4Cに定めたときには、可変設定可能な容量値Cは、C、2C、3C、4C、5C、6C、及び7Cとなる。また、コンデンサ33〜33の容量比をC:10C:100Cに定めたときには、可変設定可能な容量値Cは、C、10C、11C、100C、101C、110C、及び111Cとなる。
【0032】
なお、同図では、3つのコンデンサで容量値を可変する構成を例示したが、容量可変幅をさらに大きくしたり、設定の変化幅をより細かく可変したりするために、並列接続するコンデンサ及びスイッチの数を3つよりもさらに多く設けてもよい。また、容量を可変する必要がなければ、可変容量部32に換えて、1つのコンデンサ及び放電用の容量用スイッチ34を並列接続したものを備えて、容量値を固定してもよい。
【0033】
図1に示すように、積分回路23の出力端子には、電圧検出回路24及び出力用スイッチ25の一端が接続されている。
【0034】
電圧検出回路24は、積分回路23の出力する電圧が検出閾値を越えたときに検出信号Sを出力するものである。なお、検出信号Sを光電変換回路10ごとに区別するときは、同図に示すように、各符号の末尾に光電変換回路10の添え字と同様の添え字を付して区別するものとする。
【0035】
図3(a)に、電圧検出回路24の一例を示す。同図に示すように、電圧検出回路24は、コンパレータ26で構成されている。コンパレータ26は、一例として、同図に「+」で表した非反転入力端子が、積分回路23の出力端子に接続されている。また、コンパレータ26は、同図に「−」で表した反転入力端子が、本発明における閾値設定手段に相当する制御部12に接続されている。この反転入力端子には、制御部12から検出閾値の電圧値が入力される。コンパレータ26の出力端子は、入力制御手段である制御部12に接続されている。このコンパレータ26は、積分回路23から出力される電圧が、検出閾値以下の場合、ロウレベルの信号を出力し、検出閾値を超える場合、検出信号Sとして、ハイレベルの信号を出力する。
【0036】
なお、電圧検出回路24に入力する検出閾値を可変設定する必要の無い場合には、一例として、図3(b)に示す電圧検出回路24´のように、電源電圧Vccとグランド電位との間に直列接続された抵抗R1及び抵抗R2で電圧Vccを分圧し、その分圧電圧を、検出閾値としてコンパレータ26の反転入力端子に入力する構成としてもよい。この場合には、制御部12は、検出閾値の電圧値を出力する必要がない。また、図3(a)(b)に示したコンパレータ26に、ヒステリシス回路を付加してもよい。
【0037】
出力用スイッチ25は、制御部12の開閉制御により開閉動作するものである。出力用スイッチ25は、所望する応答速度で開閉動作し、漏れ電流の少ないものであることが好ましい。
【0038】
図1に示すように、光電変換部10〜10の出力用スイッチ25〜25の他端同士は全て共通配線に接続されている。この共通配線に、ADC11の入力端子が接続されている。
【0039】
ADC11は、入力されるアナログ信号の電圧値を、例えば24ビットの分解能で量子化して、その値をデジタル信号で出力するものである。このADC11には、基準電圧Vrefが入力されている。この基準電圧Vrefは、ADC11がアナログ/デジタル変換可能な最大の入力電圧値を定めるものであり、ADC11は、グランド電位から基準電圧Vrefまでの電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換可能になっている。ADC11の出力端子は、電圧測定手段である制御部12に接続されている。
【0040】
ADC11は、電圧検出回路24の電圧の検出精度よりも高い精度で電圧値をデジタル変換可能なものであることが好ましい。また、ADC11は、短時間で変換を行うことができるものであることが好ましい。
【0041】
制御部12は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、CPU動作用のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、各可変容量部32を設定するための容量値及び各検出閾値を記憶するフラッシュROM、測定値や演算値などを記録するRAM(Random Access Memory)、動作用クロックの基準信号を発振する発振器、時間測定可能なタイマ、入出力インタフェース、及びデジタル/アナログ変換器(DAC)などを備えている。この制御部12は、入力用スイッチ22〜22、出力用スイッチ25〜25、各容量用スイッチ34〜34、を別個に開閉制御可能に構成されている。また、制御部12は、電圧検出回路24〜24と同数のDACを有していて、これらDACから電圧検出回路24〜24に別個に設定した検出閾値の電圧値を出力可能に構成されている。さらに、制御部12は、ADC11から出力される電圧値を読み込み可能に構成されている。また、制御部12は、電圧検出回路24〜24から検出信号S〜Sが出力されたことを判別可能に構成されている。さらに、制御部12は、タイマによって経過時間を測定可能に構成されている。このような構成の制御部12及びその動作用のプログラムによって、本発明における入力制御手段、時間測定手段、電圧測定手段、演算手段、閾値設定手段、及び容量設定手段が実現されている。
【0042】
入力制御手段は、各々の入力用スイッチ22を開状態から閉状態に制御して閉状態を維持させ、各々の電圧検出回路24から検出信号Sが出力されたときにその検出信号Sを出力した光電変換部10の入力用スイッチ22を閉状態から開状態に制御する。時間測定手段は、入力制御手段が各入力用スイッチ22を閉状態にしてから開状態にするまでの閉状態を維持させた時間を測定して、入力用スイッチ22に対応させて電荷蓄積時間としてRAMに記憶する。電圧測定手段は、入力制御手段によって閉状態に維持された後に開状態に制御された入力用スイッチ22を有する光電変換部10の出力用スイッチ25を開状態から閉状態に制御して、光電変換部10ごとの出力電圧値をそれぞれの測定電圧値としてADC11から読み込んでRAMに記憶する。演算手段は、各々の光電変換部10への入射光の強度を、光電変換部10に対応する可変容量部32の容量、電荷蓄積時間、及び測定電圧値に基づいて演算する。
【0043】
なお、演算手段は、各可変容量部32の容量が全て同じ容量、又は可変容量部32に換えて各々全て同じ容量のコンデンサにした場合には、各々の光電変換部10への入射光の強度を、各光電変換部10に対応する電荷蓄積時間及び測定電圧値に基づいて演算してもよい。
【0044】
閾値設定手段は、前記の検出閾値を、各々の電圧検出回路24ごとに設定して出力する。各検出閾値は、積分回路の出力が飽和する出力電圧値よりも小さな値であり、かつADC11の基準電圧Vrefよりも小さな値である。さらに、検出閾値は、ADC11の測定可能範囲を有効に使用するために、基準電圧Vrefの10〜90%であることが好ましく、基準電圧Vrefの20〜80%であることがより好ましい。各電圧検出回路24の検出閾値は、全て同じ電圧値に設定してもよく、測定対象光の強弱に対応させて、異なる電圧に設定してもよい。
【0045】
容量設定手段は、各々の可変容量部32の容量用スイッチ34〜34を開閉制御することで、可変容量部32の容量値の設定を行う。また、容量設定手段は、容量用スイッチ34を開閉制御することで、可変容量部32に蓄積された電荷の放電を行う。
【0046】
次に、本発明のイメージセンサの作動方法の一例について図4のフローチャート、並びにすでに説明した図1及び図2を参照して詳細に説明する。
【0047】
イメージセンサ1の制御部12は、光の測定の前に初期設定を行う(ステップ101〜103)。なお、図4〜図6では「ステップ」を「S」と省略して示す。
【0048】
初期設定として制御部12は、全ての入力用スイッチ22及び全ての出力用スイッチ25を開状態に制御する(ステップ101)。次に、制御部12は、閾値設定手段により、フラッシュROMに予め記憶された各検出閾値の電圧値を電圧検出回路24に出力する(ステップ102)。また、制御部12は、容量設定手段により、容量用スイッチ34〜34を全て閉状態に制御してコンデンサ33〜33の電荷を放電させてから、容量用スイッチ34〜34を開閉制御して各可変容量部32の容量値をフラッシュROMに予め記憶された容量値に設定する(ステップ103)。以上で初期設定が終了する。
【0049】
なお、閾値設定手段や容量設定手段を有しないイメージセンサ1では、閾値や容量値の設定を省略する。
【0050】
続いて、測定対象光を各フォトダイオード21に入射させる(ステップ104)。これとほぼ同時に制御部12は、入力制御手段により、全ての入力用スイッチ22を閉状態に制御して閉状態を維持させる(ステップ105)。入力制御手段は、入力用スイッチ22を閉状態に制御した時から検出信号Sの出力が有るか否かの監視を開始して(ステップ107)、検出信号Sを検出したときに、直ちに、その検出信号Sを出力した光電変換部10の入力用スイッチ22を開状態に制御する(ステップ108)。これらステップ105、107、108が本発明における入力制御ステップに相当する。
【0051】
ステップ105で入力用スイッチ22が閉状態になることで、測定対象光によってフォトダイオード21に発生する電荷は、積分回路23の可変容量部32に直ちに蓄積されていく。このため、フォトダイオード21は飽和しない。積分回路23の出力電圧は、蓄積される電荷の量に応じて上昇し、電圧検出回路24の検出閾値を越えたときに、電圧検出回路24から制御部12に直ちに検出信号Sが出力される。ステップ107で検出信号Sが検出されたときに、ステップ108でフォトダイオード21と積分回路23とが切り離され、積分回路23の出力電圧は保持される。保持された積分回路23の出力電圧は、検出閾値とほぼ同じ電圧値であり、検出閾値は積分回路23の飽和出力電圧値よりも小さい電圧値に設定されていることから、積分回路23は飽和しない。
【0052】
一方、制御部12は、時間測定手段により、各々の入力用スイッチ22が閉状態に維持された時間を電荷蓄積時間として入力用スイッチ22ごとに測定する(時間測定ステップ)。具体的には、時間測定手段は、ステップ105で入力用スイッチ22を閉状態に制御した時から経過時間の測定を開始し(ステップ106)、ステップ108で入力用スイッチを開状態に制御した時に、その開状態にした入力用スイッチについての経過時間の測定を終了して、測定された経過時間を電荷蓄積時間として記憶する(ステップ109)。
【0053】
続いて、制御部12は、電圧測定手段により、ステップ108で閉状態から開状態に制御した入力用スイッチ22を有する光電変換部10の出力用スイッチ25を閉状態に制御して(ステップ110)、その光電変換部10の積分回路23からの出力電圧をADC11から読み込んで測定電圧値として記憶する(ステップ111)。このステップ110及び111が本発明における電圧測定ステップに相当する。電圧測定手段は、電圧値の読み込み終了後、その光電変換部10の出力用スイッチ25を、直ちに開状態に戻す(ステップ112)。
【0054】
積分回路23から出力される電圧は検出閾値とほぼ同程度の電圧値であり、検出閾値はADC11の基準電圧Vrefよりも小さい電圧値に設定されていることから、ADC11はオーバーフローしない。また、ADC11が積分回路23から出力される電圧値を高精度に測定するので、各電圧検出回路24の電圧値の検出精度は高くなくてもよい。このため、各電圧検出回路24として、コンパレータ26のように簡便で安価な回路を用いることができる。さらに、各電圧検出回路24が基準とする検出閾値の可変可能な値は、高い分解能で設定する必要がなく、例えば、基準電圧Vrefの10%、30%、50%、70%のように4段階(2ビット分解能)、又は8段階(3ビット分解能)のように、ADC11よりも低い分解能で設定が行えればよい。このため、制御部12の閾値設定手段を簡便で安価な回路とすることができる。
【0055】
続いて、制御部12は、演算手段により、その光電変換部10に設定した可変容量部32の容量値、並びに、その光電変換部10について記憶した電荷蓄積時間及び測定電圧値に基づいて、その光電変換部10のフォトダイオード21への入射光の強度を演算する(ステップ113)。具体的には、電荷蓄積時間T、測定電圧値V、可変容量部32の容量C、蓄積された電荷Qとしたときに、
光の強度I=Q/T=(V×C)/T
の関係が成り立つ。Cは制御部12(容量設定手段)にとって既知の値であるので演算手段は、光の強度を演算することができる。演算手段は、演算した光の強度を、その光電変換部10に対応させて記憶する。
【0056】
なお、演算手段は、各可変容量部32の容量が全て同じ容量に設定されている場合、又は可変容量部32に換えて全て同じ容量のコンデンサにした場合には、各光電変換部10の入射光の相対的な強度は容量に依拠しなくなるので、光の強度を電荷蓄積時間及び測定電圧値に基づいて演算してもよい。
【0057】
制御部12は、全ての光電変換部10について光の強度の演算が終了していないときにはステップ107に戻り、全ての光電変換部10について光の強度の演算が終了したときには、測定を終了する(ステップ114)。
【0058】
以上で、イメージセンサ1への入射光の強度測定が終了する。
【0059】
同種の測定対象光についての測定を繰り返し行う場合には、ステップ103に戻って同様に測定を行えばよい。
【0060】
次に、本発明のイメージセンサの作動方法の別の一例について図5を参照して説明する。
【0061】
同図に示すイメージセンサの作動方法は、図5を用いて説明したイメージセンサの作動方法よりも前に予め実行して、各可変容量部32の容量値を測定対象光に最適化するために行うものである。例えば、同種の多数の発光体を順次取り換えつつ、繰り返し発光体の光を測定対象光として測定する場合、その発光体の光に各可変容量部32の容量値を最適化しておくことで、所望の電荷蓄積時間内に高精度の測定を行えるようになる。
【0062】
最初に、各検出閾値を入力設定する(検出閾値入力ステップ201)。この設定は、一例として測定者が、非図示のキーボードから制御部12に数値入力して設定する。例えば、全ての検出閾値を基準電圧Vrefの10%の値、又は50%の値に設定したり、測定対象光に対応させて光電変換部10ごとに異なる値を設定したりする。制御部12は、入力された検出閾値を記憶する。この入力設定が終了すると、制御部12は、検出閾値の電圧値を電圧検出回路24に出力する。なお、検出閾値がすでに設定されている場合にはこの入力設定を省略してもよい。また、検出閾値が可変設定可能でなく固定値である場合、この入力設定は行わない。
【0063】
次に、所望する最大電荷蓄積時間を入力設定する(蓄積時間入力ステップ202)。この最大電荷蓄積時間とは、積分回路23に電荷を蓄積するのに許容される最大の時間である。つまり、積分回路23に電荷が蓄積されて積分回路23の出力電圧が検出閾値を越えるまでに許容される最大の時間である。この入力設定は、例えば、制御部12に接続された非図示のキーボードなどを測定者が操作して、所望する最大電荷蓄積時間を数値入力して設定を行う。制御部12は、入力された最大電荷蓄積時間を記憶する。
【0064】
次に、制御部12は、可変容量部34の電荷を放電させてから、容量値を設定可能な最大容量値に制御する(最大容量設定ステップ203)。
【0065】
続いて、測定対象光の基準となる基準光を入射させる(基準光入射ステップ204)。この基準光の入射とほぼ同時に、制御部12は、基準電荷蓄積ステップとして、全ての入力用スイッチ22を開状態から閉状態に制御し(ステップ205)、この閉状態を最大電荷蓄積時間だけ維持させ、最大電荷蓄積時間が経過した時(ステップ206)に、直ちに全ての入力用スイッチ22を開状態に制御する(ステップ207)。
【0066】
続いて、制御部12は、出力用スイッチ25を1つずつ順次閉状態に制御して、各光電変換部10の出力電圧をADC11から読み込んで容量設定用電圧値としてRAMに記憶する(容量設定用電圧測定ステップ208)。なお、制御部12は、容量設定用電圧値の測定が終了した光電変換部10の出力スイッチ25を直ちに開状態に戻す。
【0067】
次に、制御部12は、全ての容量設定用電圧値が、各々の検出閾値を越えているか否かを判別し(ステップ209)、容量設定用電圧値が検出閾値を越えていないと判別された光電変換部10の可変容量部32の容量値を、さらに小さな容量値に設定変更する(容量変更ステップ210)。この場合、制御部12は、さらに小さな容量として、例えば、それまで設定されていた容量値よりも一段小さい容量値や、それまで設定されていた容量値の1/2以下になるような容量値に設定変更する。
【0068】
制御部12は、全ての容量設定用電圧値が検出閾値を越えるまで、基準光入力ステップ204〜容量変更ステップ210を繰り返し行う。
【0069】
制御部12は、ステップ209で全ての容量設定用電圧値が各々の検出閾値を越えていると判別したときには、処理を終了する。以上で、各々の可変容量部32の容量値を最適化するための処理が終了して、各可変容量部32の容量値が自動的に設定される。
【0070】
次に、本発明のイメージセンサの作動方法の別の一例について図6を参照して説明する。
【0071】
同図に示すイメージセンサの作動方法は、図5を用いて説明したイメージセンサの作動方法よりも前に予め実行して、各検出閾値を測定対象光に最適化するために行うものである。また、図6を用いて説明した可変容量部32の容量値を最適化するためのイメージセンサの作動方法の後に実行することが好ましい。
【0072】
最初に、各々の可変容量部32で設定する容量値を入力設定する(容量入力ステップ301)。この設定は、一例として測定者が、非図示のキーボードから制御部12に数値入力して設定する。制御部12は、入力された容量値を記憶する。この入力設定が終了すると、制御部12は、可変容量部32の電荷を放電した後に、入力設定された容量値に設定する。なお、可変容量部32の容量値がすでに設定されている場合にはこの入力設定を省略してもよい。また、容量値が可変設定可能でなく固定値である場合、この入力設定は行わない。
【0073】
次に、所望する最大電荷蓄積時間を、先に説明した蓄積時間入力ステップ202と同様に入力設定する(蓄積時間入力ステップ302)。
【0074】
続いて、測定対象光の基準となる基準光を入射させる(基準光入射ステップ303)。この基準光の入射とほぼ同時に、制御部12は、基準電荷蓄積ステップとして、全ての入力用スイッチ22を開状態から閉状態に制御し(ステップ304)、この閉状態を最大電荷蓄積時間だけ維持させ、最大電荷蓄積時間が経過した時(ステップ305)に、直ちに全ての入力用スイッチ22を開状態に制御する(ステップ306)。
【0075】
続いて、制御部12は、出力用スイッチ25を1つずつ順次閉状態に制御して、各光電変換部10の出力電圧をADC11から読み込んで閾値設定用電圧値としてRAMに記憶する(閾値設定用電圧測定ステップ307)。なお、制御部12は、閾値設定用電圧値の測定が終了した光電変換部10の出力用スイッチ25を直ちに開状態に戻す。
【0076】
次に、制御部12は、各々の検出閾値を、各々の閾値設定用電圧値よりも小さな値に設定変更する(閾値変更ステップ308)。この場合、制御部12は、閾値用電圧値よりも小さな値として、例えば、閾値設定用電圧値の50%の値に検出閾値を設定する。以上で、各々の検出閾値の最適化のための処理が終了して、各検出閾値が自動設定される。
【0077】
次に、本発明の実施形態の一例である分光装置について説明する。図7に示す分光装置40は、本発明の実施形態の一例であるイメージセンサ1を組み込んだものである。
【0078】
分光装置40は、一例として、発光ダイオード50(以下、LED50ともいう)の製造後の検査工程において、LED50の発光波長が所期の帯域となるように製造されているか否かを検査する検査装置である。この分光装置40は、同種の多数のLED50が1つずつセットされて、LED50の光を測定対象光として、その発光波長の検査を行うものである。
【0079】
この分光装置40は、同図に示すように、レンズ41、シャッタ42、分光器43、及びイメージセンサ1を備えている。レンズ41は、セットされたLED50が発光する光を集光する。シャッタ42は、イメージセンサ1の制御部12によって開閉制御され、測定時に開状態に制御されて光を後段の分光器43へ入射させる。分光器43は、光の波長成分を分光して光をスペクトルにする。分光器43として、例えばプリズムや回折格子など公知のものを用いることができる。イメージセンサ1は、分光器43で分光された光のスペクトルを、フォトダイオード21〜21に入射光として受光して、各波長の光の強度を測定する。
【0080】
イメージセンサ1は、フォトダイオード21〜21に入射される光の強度にばらつきがあってもフォトダイオード21〜21、積分回路32〜32(図1参照)が飽和したり、ADC11(図1参照)が飽和したりしない。したがって、この分光装置40によれば、検査を行うLED50の発光強度や発光帯域にばらつきがあったり、LED50をセットする位置にばらつきが生じてイメージセンサ1との距離がばらついたりしても、分光装置40は、LED50の波長を高い精度で測定することができる。
【0081】
なお、この分光装置40は、LEDの波長の測定だけでなく、蛍光灯、白熱電球、又はネオン管などの発光体の波長や、LEDディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、又はCRTディスプレイなどのディスプレイの波長、プロジェクタによって投射されてスクリーンで反射された光の波長、元素の輝線スペクトルの測定など、様々な光の分光測定に用いることができる。また、分光装置40に光源及び試料台をさらに備えて、試料台にセットした試料に光源からの光を照射して、試料を透過した光のスペクトルをイメージセンサ1で測定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1はイメージセンサ、10(10〜10)は光電変換部、11はアナログ/デジタル変換器、12は制御部、21(21〜21)はフォトダイオード、22(22〜22)は入力用スイッチ、23(23〜23)は積分回路、24(24〜24)・24´は電圧検出回路、25(25〜25)は出力用スイッチ、26はコンパレータ、31は増幅器、32は可変容量部、33〜33はコンデンサ、34〜34は容量用スイッチ、40は分光装置、41はレンズ、42はシャッタ、43は分光器、50は発光ダイオード、R1・R2は抵抗、S101〜S114・S201〜S210・S301〜S308はフローチャートにおける各ステップ、Vccは電源電圧、Vrefは基準電圧である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の強度に応じた量の電荷を発生する受光素子と、該受光素子に一端が接続された入力用スイッチと、該入力用スイッチの他端に接続され、該入力用スイッチを介して入力する該電荷を蓄積してその電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、該積分回路の出力する電圧値が検出閾値を越えたときに検出信号を出力する電圧検出回路と、該積分回路の出力に一端が接続された出力用スイッチとを各々有する複数の光電変換部と、
該複数の光電変換部の各々の該出力用スイッチの他端同士を接続する共通配線に入力端子が接続されているアナログ/デジタル変換器と、
各々の該入力用スイッチを開状態から閉状態に制御して閉状態を維持させ、各々の該電圧検出回路から該検出信号が出力されたときにその検出信号を出力した該光電変換部の該入力用スイッチを閉状態から開状態に制御する入力制御手段と、
該入力制御手段が各々の該入力用スイッチを閉状態に維持させた経過時間を電荷蓄積時間として該入力用スイッチごとに測定する時間測定手段と、
該入力制御手段が閉状態から開状態に制御した該入力用スイッチを有する該光電変換部の該出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値をそれぞれの測定電圧値として該アナログ/デジタル変換器から読み込む電圧測定手段と、
各々の該光電変換部への該入射光の強度を、該光電変換部に対応する該電荷蓄積時間及び該測定電圧値に基づいて演算する演算手段とを備えることを特徴とするイメージセンサ。
【請求項2】
前記検出閾値は、前記アナログ/デジタル変換器が変換可能な最大の入力電圧値の10〜90%の値であることを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記検出閾値を、各々の前記電圧検出回路ごとに可変設定可能な閾値設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記積分回路は、前記電荷を蓄積する可変容量部を有しており、該可変容量部の容量値を可変設定可能な容量設定手段をさらに備え、前記演算手段は、該可変容量部の容量値、前記電荷蓄積時間、及び前記測定電圧値に基づいて前記入射光の強度を演算することを特徴とする請求項1又は2に記載のイメージセンサ。
【請求項5】
分光器と、該分光器により分光された各波長の光を前記入射光として受光する請求項1〜4のいずれかに記載のイメージセンサとを備えていることを特徴とする分光装置。
【請求項6】
入射光の強度に応じた量の電荷を発生する受光素子と、該受光素子に一端が接続された入力用スイッチと、該入力用スイッチの他端に接続され、該入力用スイッチを介して入力する該電荷を蓄積してその電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、該積分回路の出力する電圧値が検出閾値を越えたときに検出信号を出力する電圧検出回路と、該積分回路の出力に一端が接続された出力用スイッチとを各々有する複数の光電変換部と、
該複数の光電変換部の各々の該出力用スイッチの他端同士を接続する共通配線に入力端子が接続されているアナログ/デジタル変換器とを備えるイメージセンサの作動方法であって、
各々の該入力用スイッチを開状態から閉状態に制御して閉状態を維持させ、各々の該電圧検出回路から該検出信号が出力されたときにその検出信号を出力した該光電変換部の該入力用スイッチを閉状態から開状態に制御する入力制御ステップと、
該入力制御ステップで各々の該入力用スイッチを閉状態に維持させた経過時間を電荷蓄積時間として該入力用スイッチごとに測定する時間測定ステップと、
該入力制御ステップで閉状態から開状態に制御した該入力用スイッチを有する該光電変換部の該出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値をそれぞれの測定電圧値として該アナログ/デジタル変換器から読み込む電圧測定ステップと、
各々の該光電変換部への該入射光の強度を、該光電変換部に対応する該電荷蓄積時間及び該測定電圧値に基づいて演算する演算ステップとを備えることを特徴とするイメージセンサの作動方法。
【請求項7】
前記積分回路が前記電荷を蓄積する可変設定可能な可変容量部を各々有しており、この可変容量部の容量値を、測定対象光に最適化するために、
所望する最大の電荷蓄積時間である最大電荷蓄積時間を入力設定する蓄積時間入力ステップと、
可変容量部の容量値を最大容量値に制御する最大容量設定ステップと、
該測定対象光の基準となる基準光を前記入射光として前記複数の光電変換部に入射させる基準光入射ステップと、
前記各々の入力用スイッチを開状態から閉状態に制御してこの閉状態を該最大電荷蓄積時間だけ維持させ、該最大電荷蓄積時間が経過した時に該各々の入力用スイッチを開状態に制御する基準電荷蓄積ステップと、
前記各々の出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値を容量設定用電圧値として前記アナログ/デジタル変換器から読み込む容量設定用電圧測定ステップと、
この容量設定用電圧値が、前記検出閾値を越えているか否かを判別し、該容量設定用電圧値が該検出閾値を越えていないと判別された該光電変換部の該可変容量部の容量値を、さらに小さな容量値に設定変更する容量変更ステップとをさらに備え、
全ての該容量設定用電圧値が該検出閾値を越えるまで、該基準光入力ステップと、該電圧比較ステップと、該容量変更ステップとを繰り返し行うことを特徴とする請求項6に記載のイメージセンサの作動方法。
【請求項8】
前記検出閾値が各々可変設定可能になっており、この該検出閾値を、測定対象光に最適化するために、
所望する最大の電荷蓄積時間である最大電荷蓄積時間を入力設定する蓄積時間入力ステップと、
該測定対象光の基準となる基準光を前記入射光として前記複数の光電変換部に入射させる基準光入射ステップと、
前記各々の入力用スイッチを開状態から閉状態に制御してこの閉状態を該最大電荷蓄積時間だけ維持させ、該最大電荷蓄積時間が経過した時に該各々の入力用スイッチを開状態に制御する基準電荷蓄積ステップと、
前記各々の出力用スイッチを開状態から閉状態に制御して、該光電変換部ごとの出力電圧値を閾値設定用電圧値として前記アナログ/デジタル変換器から読み込む閾値設定用電圧測定ステップと、
各々の該検出閾値を、各々の該閾値用電圧値よりも小さな値に設定変更する閾値変更ステップとをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のイメージセンサの作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−257296(P2011−257296A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132852(P2010−132852)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】