説明

インバータ発電機

【課題】エンジンで駆動される発電部を備えたインバータ発電機において、発電部を利用してエンジンを始動できると共に、全体として軽量化および小型化するようにしたインバータ発電機を提供する。
【解決手段】発電部14に巻回される第1巻線22aと、第1巻線に接続される第1コンバータ24と、第1コンバータに接続されるインバータ36と、制御部42とを備えたインバータ発電機10において、生じる線間電圧Vbが第1巻線より小さい値に設定される第2巻線22bと、第2巻線に接続される第2コンバータ26と、入力側が第2コンバータに接続される一方、出力側が第1コンバータの正負の出力端子24c,24dの間に並列接続されると共に、第2コンバータから出力される直流の電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータ34と、バッテリ20とを備え、制御部はバッテリの出力を第2巻線に供給させて発電部を回転駆動させてエンジン12を始動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はインバータ発電機に関し、より詳しくはエンジンで駆動される発電部を備えたインバータ発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンで駆動される発電部を備えたインバータ発電機において、スタータモータ(セルモータ)でエンジンをクランキングして始動させる技術は広く知られているが、そのように構成した場合、スタータモータを配置する分だけ発電機全体が大きくなってしまうという不都合があった。
【0003】
そこで、下記の特許文献1記載の技術にあっては、スタータモータを除去すると共に、バッテリの出力を発電部に供給して回転駆動させてエンジンを始動させる、即ち、発電部をスタータモータとして機能させてエンジンを始動させることで、発電機をコンパクト化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開20004−340055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の技術の如く構成した場合、バッテリ電圧を発電部をスタータモータとして回転駆動可能な電圧までコンバータで昇圧して供給する必要がある。しかしながら、この回転駆動可能な電圧は、発電部の出力電圧の設定値、換言すれば、発電部に巻回された巻線に発電時に生じる線間電圧の設定値に比例する。そのため、例えば巻線の線間電圧が比較的高く設定されている場合、回転駆動可能な電圧が増加し、よってコンバータの昇圧比も高くなってコンバータサイズが大きくなり、結果として発電機全体の重量が増加すると共に、大型化するという不具合があった。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、エンジンで駆動される発電部を備えたインバータ発電機において、発電部を利用してエンジンを始動できると共に、全体として軽量化および小型化するようにしたインバータ発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、エンジンで駆動される発電部に巻回される第1巻線と、前記第1巻線に接続されて前記第1巻線から出力される交流を直流に変換する第1コンバータと、前記第1コンバータに接続されて前記第1コンバータから出力される直流を交流に変換して出力するインバータと、前記第1コンバータと前記インバータの動作を制御する制御部とを備えたインバータ発電機において、前記発電部に巻回され、生じる線間電圧が前記第1巻線より小さい値に設定される第2巻線と、前記第2巻線に接続されて前記第2巻線から出力される交流を直流に変換する第2コンバータと、入力側が前記第2コンバータに接続される一方、出力側が前記第1コンバータの正負の出力端子の間に並列接続されると共に、前記第2コンバータから出力される直流の電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータと、バッテリとを備えると共に、前記制御部は前記バッテリの出力を前記第2巻線に供給させて前記発電部を回転駆動させて前記エンジンを始動可能とする如く構成した。
【0008】
請求項2に係るインバータ発電機にあっては、前記第2巻線に生じる線間電圧が前記第1巻線の約50%の値に設定される如く構成した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るインバータ発電機にあっては、エンジンで駆動される発電部に巻回され、生じる線間電圧が第1巻線より小さい値に設定される第2巻線と、バッテリとを備えると共に、制御部はバッテリの出力を第2巻線に供給させて発電部を回転駆動させてエンジンを始動可能とするように構成、即ち、発電部の巻線を第1巻線と第2巻線に分けると共に、第2巻線の線間電圧を小さく設定するように構成したので、発電部を利用してエンジンを始動できる、具体的には、第2巻線への比較的低い電圧の供給によって発電部を回転駆動させてエンジンを始動させることができるため、例えばバッテリ電圧を昇圧して第2巻線に供給するコンバータの昇圧比を抑制でき、よってコンバータの効率を向上できると共に、コンバータサイズも小さくでき、結果として発電機全体を軽量化および小型化することができる。さらに、始動用のスタータモータなどを不要にできるため、発電機全体をより小型化できる。
【0010】
また、第2巻線から出力される交流を直流に変換する第2コンバータと、入力側が第2コンバータに接続される一方、出力側が第1コンバータの正負の出力端子の間に並列接続されると共に、第2コンバータから出力される直流の電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータとを備えるように構成、即ち、第2巻線から出力される交流を第2コンバータで直流に変換し、その直流の電圧を昇圧コンバータで昇圧して第1コンバータの正負の出力端子の間に出力するように構成したので、第1コンバータから出力される直流と昇圧コンバータから出力される直流は重畳されてインバータに入力されることとなり、そこで交流に変換されて出力されるため、第2巻線に生じる線間電圧を小さく設定しても発電機の定格出力が低下することはない。また、第2巻線の線間電圧を上記の如く設定したので、第2巻線から第2コンバータに入力される電圧も低くなり、それによって第2コンバータの部品耐圧(電圧耐圧値)を下げることができると共に、コスト的にも有利となる。
【0011】
請求項2に係るインバータ発電機にあっては、第2巻線に生じる線間電圧が第1巻線の約50%の値に設定されるように構成したので、上記した効果に加え、バッテリ電圧を昇圧して第2巻線に供給するコンバータの昇圧比も約50%にすることができるため、コンバータの効率をより一層向上できると共に、コンバータサイズも確実に小さくでき、よって発電機全体をより一層軽量化および小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例に係るインバータ発電機を全体的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す発電部を構成するステータなどを示す平面図である。
【図3】図1に示す制御部の動作を示すフロー・チャートである。
【図4】従来技術に係るインバータ発電機を全体的に示す、図1と同様なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に即してこの発明に係るインバータ発電機を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0014】
図1はこの発明の実施例に係るインバータ発電機を全体的に示すブロック図である。
【0015】
図1の説明に入る前に、従来のインバータ発電機の構成を説明する。図4は従来技術に係るインバータ発電機を全体的に示す、図1と同様なブロック図である。
【0016】
図4に示すように、インバータ発電機100はエンジン102で駆動される発電部(スタータ・ジェネレータ)104を備え、交流400Vの定格出力電圧(最大電圧750V)を有する。発電部104には出力巻線106が巻回され、発電時に出力巻線106に生じる線間電圧Vl(即ち発電部104の出力電圧)はインバータ発電機100の定格出力電圧によって規定され、具体的には500Vとされる。尚、以下において、上記の如く発電機の定格出力電圧に応じて規定される線間電圧を「規定線間電圧値」という。
【0017】
エンジン102は、発電部104の回転駆動によって始動させられる。具体的には、CPUなどを備えた制御部108は、バッテリ110から出力される直流電圧(12V)をDC/DCコンバータ112で500Vまで昇圧させ、昇圧させた出力を平滑コンデンサ114を介してスタータドライバとして機能するコンバータ116に入力する。制御部108は、コンバータ116に入力されたバッテリ出力を発電部104に巻回された出力巻線106に供給することで、発電部104においてエンジン102のフライホイールを兼用するロータ(図示せず)を回転駆動させてエンジン102を始動させる。
【0018】
エンジン102が始動して発電部104で発電が開始されると、制御部108は発電部104の出力巻線106から出力される交流(線間電圧Vlは500V)をコンバータ116で直流に変換し、それを平滑コンデンサ114で平滑してインバータ120に入力し、所定周波数(具体的には50Hzまたは60Hz)の交流400Vに変換して出力端子122を介して電気負荷124に供給する。尚、平滑コンデンサ114には比較的高い電圧が印加されるため、電圧耐圧値は比較的高い値(例えば800V)に設定される。
【0019】
上記した従来のインバータ発電機100の構成を踏まえつつ図1を説明すると、図において符号10はインバータ発電機(以下、単に「発電機」という)を示す。発電機10はエンジン(内燃機関)12と、エンジン12で駆動される発電部(スタータ・ジェネレータ)14と、操作者(ユーザ)によって操作自在な位置に配置される操作部16とを備え、比較的大きな定格出力で交流400Vの定格出力電圧を有する。
【0020】
エンジン12は火花点火式の空冷ガソリンエンジンで、例えば排気量390ccを備える。エンジン12には、定格12Vの直流電圧を出力するバッテリ20が接続され、図示しないスロットルモータや点火プラグなどの動作電源として使用される。
【0021】
図2は発電部14を構成するステータなどを示す平面図である。
【0022】
発電部14は、エンジン12のクランクケース(図示せず)に固定されるステータ14aと、ステータ14aの周りに回転自在に配置され、エンジン12のフライホイールを兼用するロータ14bとからなる。
【0023】
ステータ14aはステータコア14a1を備えると共に、ステータコア14a1には放射状に延びる複数個、具体的には30個の突起(ティース)14a2が形成される。図示の如く、30個の突起14a2の内、半分の15個の突起14a2には1組のU,V,W相からなる三相の第1の出力巻線(以下「第1巻線」といい、図では一点鎖線で囲んで示す)22aが巻回されると共に、残余の15個の突起14a2にも同様に、1組のU,V,W相からなる三相の第2の出力巻線(以下「第2巻線」といい、図では二点鎖線で囲んで示す)22bが巻回される。
【0024】
第1巻線22aは、発電機10の定格出力電圧に応じて規定される線間電圧(規定線間電圧)Vaが発電時に生じるように設計され、具体的には例えば従来の出力巻線106と同じ500V(最大電圧750V)に設定される。一方、第2巻線22bに生じる線間電圧Vbは第1巻線22aより小さい値に設定され、具体的には第1巻線22aの約50%(正確には50%)の値に設定される。即ち、第2巻線22bに生じる線間電圧Vbは、従来の出力巻線106の約50%にあたる250V(最大電圧375V)とされる。
【0025】
上記したような巻線に生じる線間電圧Vbの低減は、例えば第2巻線22bの巻き数を第1巻線22aに対して減少させることで行う。このように、発電部12の巻線は、線間電圧が相違する第1、第2巻線22a,22bの2系統に分けられる(分割される)。
【0026】
ロータ14bの内部には、第1、第2巻線22a,22bと対向する位置に永久磁石14b1が、図示の如く、径方向に着磁された磁極を交互させつつ、10対(20個)取着される(図2で一部のみ示す)。永久磁石14b1は2個(例えば14b11と14b12)で1対を構成し、3個の突起14a2当たり1対の永久磁石14b1が配置される。
【0027】
ステータ14aの回りをロータ14bの永久磁石14b1が回転することにより、第1、第2巻線22a,22bからそれぞれ三相(U,V,W相)の交流電力が出力(発電)される。
【0028】
図1の説明に戻ると、発電機10はさらに、第1巻線22aに接続される第1コンバータ(整流器)24と、第2巻線22bに接続される第2コンバータ(整流器)26と、第1、第2コンバータ24,26にそれぞれ接続される第1、第2平滑コンデンサ30,32と、第2平滑コンデンサ32の後段に接続される昇圧コンバータ34と、第1コンバータ24と昇圧コンバータ34の後段に接続されるインバータ36と、バッテリ20に接続されるDC/DCコンバータ40と、第1コンバータ24やインバータ36などの動作を制御する制御部42を備える。尚、この明細書において「後段」とは、発電がなされている発電部14から出力される電流の流れ方向における後段(下流側)を意味する。
【0029】
第1コンバータ24はブリッジ接続された3組のサイリスタ24aとダイオード24bを備え、サイリスタ24aのゲート端子24a1は制御部42を介してバッテリ20に接続される。第1コンバータ24は、制御部42によってサイリスタ24aの導通角が制御されることで、第1巻線22aから出力された交流を直流に変換し、正負の出力端子24c,24dを介して出力する。
【0030】
第1平滑コンデンサ30は、第1コンバータ24の後段に接続され、第1コンバータ24から出力される直流を平滑する。第1平滑コンデンサ30の電圧耐圧値は比較的高い値とされ、具体的には例えば従来の平滑コンデンサ114と同じ800Vに設定される。
【0031】
第2コンバータ26は、ボディダイオード26aを有するFET(電界効果トランジスタ。スイッチング素子)26bが6個、ブリッジ接続された回路を備え、FET26bのゲート端子26b1はバッテリ20に接続される。第2コンバータ26は、制御部42によってFET26bの動作が制御される、具体的には通電(オン(導通))と通電停止(オフ(非導通))が制御され、ボディダイオード26aを用いることで、第2巻線22bから出力された交流を直流に変換し、正負の出力端子26c,26dを介して出力する。
【0032】
また、第2コンバータ26は、第2巻線22bを発電機(ジェネレータ)としての動作に加えてエンジン12の始動装置(スタータ)として動作させる、スタータドライバ(スタータ・ジェネレータ・ドライバ)としても機能する。即ち、この実施例においては第2巻線22bに通電して発電部14を回転駆動させてエンジン12を始動させる、換言すれば、発電部14を電動機(スタータモータ)として機能させるように構成される。
【0033】
具体的には、第2コンバータ(スタータドライバ)26は、制御部42によってFET26bの動作が制御されることで、バッテリ20の出力を第2巻線22bに供給して発電部14を回転駆動させてエンジン12を始動させる。尚、このようなエンジン12の始動時においては、出力端子26c,26dからバッテリ出力が入力されることとなる、即ち、出力端子26c,26dは入力端子とされる。
【0034】
第2平滑コンデンサ32は、第2コンバータ26の後段に接続され、第2コンバータ26から出力される直流を平滑する。第2平滑コンデンサ32は、線間電圧Vbが比較的小さい値に設定された第2巻線22bの出力が入力されるため、電圧耐圧値は第1平滑コンデンサ30のそれよりも低い値で足り、例えば約50%に相当する400Vとされる。別言すれば、第2平滑コンデンサ32の電圧耐圧値は、図4に示す従来の平滑コンデンサ114の約50%に設定される。
【0035】
昇圧コンバータ34は、入力側が第2コンバータ26の正負の出力端子26c,26dに並列接続される一方、出力側が第1コンバータ24の正負の出力端子24c,24dの間に並列接続される。また、図1から分かるように、この昇圧コンバータ34の入力側と出力側の接続点はそれぞれ第1、第2平滑コンデンサ30,32の後段とされる。
【0036】
昇圧コンバータ34は、FET34aとチョークコイル34bとダイオード34cを備えたチョッパ方式のDC/DCコンバータからなり、FET34aのゲート34a1がバッテリ20に接続される。昇圧コンバータ34は、制御部42によってFET34aの動作が制御されることで、第2コンバータ26から出力される直流の電圧を昇圧して出力する。
【0037】
インバータ36は、入力側が第1コンバータ24と昇圧コンバータ34に接続される。インバータ36は、4個のFET36aがブリッジ接続された回路を備え、同様にFET36aのゲート36a1がバッテリ20に接続される。インバータ36は、各FET36aの導通/非導通が制御部42によって制御されることで、第1コンバータ24と昇圧コンバータ34から出力される直流を所定周波数(具体的には50Hzあるいは60Hzの商用周波数)の単相交流に変換する。
【0038】
インバータ36から出力される交流は、交流電流の高調波成分を除去するフィルタ(図示せず)を介して出力端子44から出力され、図示しないコネクタなどを介して電気負荷46に供給自在とされる。
【0039】
DC/DCコンバータ40は、入力側がバッテリ20に接続される一方、出力側が第2コンバータ26の正負の出力端子26c,26d(ここでは前述した如く入力端子とされる)に接続される。
【0040】
DC/DCコンバータ40は、ブリッジ接続された4個のFET40aとトランス40bとダイオード40cを備えた絶縁型DC/DCコンバータからなり、FET40aのゲート40a1がバッテリ20に接続される。DC/DCコンバータ40は、制御部42によってFET40aの動作が制御されることで、エンジン始動時はバッテリ20から出力される直流電圧を昇圧して出力すると共に、エンジン始動後は発電部14の第2巻線22bで発電されて第2コンバータ26から出力される直流の電圧を降圧してバッテリ20に供給して充電する。
【0041】
制御部42はCPUなどを備え、前述の如く第1コンバータ24や第2コンバータ(スタータドライバ)26、インバータ36などの動作を制御する。制御部42にはバッテリ20が接続されて動作電源が供給される。尚、図示は省略するが、第1巻線22aから出力されるU,V,W相からなる三相の内、任意の一つの相の出力段にはトランスや整流回路が接続され、そこで降圧されて整流された電力も制御部42などに供給される。即ち、バッテリ出力と第1巻線22aで発電される電力の一部が制御用電源として利用される。
【0042】
操作部16は、操作者からの発電機10の始動指示(オン)あるいは停止指示(オフ)を出力する始動/停止スイッチ16aと、発電機10の運転状態などを表示する表示部(例えば出力表示灯や過負荷警告灯、液晶パネルなど)16bを備える。始動/停止スイッチ16aの出力は制御部42に入力されると共に、表示部16bの作動(例えば出力表示灯の点灯/消灯など)は制御部42によって制御される。
【0043】
また、エンジン12のフライホイール、即ち、ロータ14bの付近には電磁ピックアップからなるクランク角センサ50が配置され、所定クランク角度ごとにパルス信号を制御部42へ出力する。また、図示は省略するが、発電機10はインバータ36から出力される発電電力の電圧と電流を検出する各種センサを備え、それらのセンサ出力も制御部42に入力される。
【0044】
図3は、発電機10の制御部42の動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは始動/停止スイッチ16aがオンされて実行される。
【0045】
以下説明すると、先ずS(ステップ)10においてバッテリ20の出力を第2巻線22bに供給(通電)させて発電部14を回転駆動させてエンジン12を始動させる。
【0046】
具体的には、バッテリ20の出力直流電圧(12V)をDC/DCコンバータ40において250V程度まで昇圧して第2コンバータ(スタータドライバ)26に出力させる。第2コンバータ26はスタータドライバとして動作させられ、昇圧されたバッテリ出力を第2巻線22bに供給し、発電部14のロータ14bをステータ14aに対して回転させることでエンジン12を始動させる。
【0047】
ここで、DC/DCコンバータ40の昇圧について詳説すると、例えば第2巻線22bの線間電圧Vbが図4で説明した従来の出力巻線106と同じ500V(規定線間電圧)に設定された場合、発電部14を回転駆動可能な電圧(換言すれば、発電部14をスタータモータとして機能させるときに十分なトルクを得ることができる電圧)も500V程度となる。そのような場合、前記した従来のDC/DCコンバータ112(本発明のコンバータ40に相当)の如く、バッテリ電圧(12V)を500Vまで昇圧させる必要があるため、昇圧比が高くなってコンバータサイズも大きくなってしまう。
【0048】
しかしながら、この実施例にあっては、第2巻線22bの線間電圧Vbが従来の出力巻線106の約50%、換言すれば、第1巻線22aの約50%の250Vに設定されるため、発電部14を回転駆動可能な電圧も250V程度となり、よってDC/DCコンバータ40ではバッテリ電圧を250Vまで昇圧させれば足りる。これにより、DC/DCコンバータ40の昇圧比を抑制でき、コンバータサイズも小さくなる。
【0049】
図3の説明を続けると、次いでS12に進み、クランク角センサ50の出力パルスをカウントしてエンジン回転数NEを検出(算出)し、検出されたエンジン回転数NEが完爆回転数に達したか否か判断、換言すればエンジン12の始動が終了したか否か判断する。
【0050】
S12で否定されるときはS12の処理を繰り返す一方、肯定されるときはS14に進み、発電部14で発電を開始すると共に、発電された電力を第1コンバータ24やインバータ36などの動作を制御して電気負荷46に供給する。
【0051】
具体的には、発電部14の第1巻線22aから出力(発電)された三相の交流電力(500V)は第1コンバータ24に入力され、第1コンバータ24においてその交流を直流(700V)に変換して出力させる。第1コンバータ24から出力される直流は第1コンデンサ32で平滑されてインバータ36に入力される。
【0052】
一方、発電部14の第2巻線22bから出力(発電)された三相の交流電力(250V)は第2コンバータ26に入力される。第2コンバータ26では入力された交流をボディダイオード26aを用いて直流(350V)に変換して出力させる。
【0053】
第2コンバータ22から出力される直流は第2コンデンサ32で平滑され、昇圧コンバータ34に入力される。昇圧コンバータ34では、第2コンバータ26から出力される直流の電圧を2倍の700Vまで昇圧してインバータ36に出力させる。従って、インバータ36には、第1コンバータ24から出力される直流と昇圧コンバータ36から出力される直流とが重畳されて入力される。
【0054】
インバータ36では、入力された直流を所定周波数の単相交流(AC400V)に変換して出力させ、フィルタ(図示せず)を介して出力端子44から電気負荷46に供給する。
【0055】
次いでS16に進み、表示部16bを作動、例えば出力表示灯を点灯させるなどして発電が開始されたことを操作者に報知する。次いでS18に進み、操作者から発電機10の停止指示がなされたか否か判断、具体的には始動/停止スイッチ16aがオフされたか否か判断する。
【0056】
S18で否定されるときはS18の処理に戻る一方、肯定されるときはS20に進み、点火カットなどを行ってエンジン12を停止させ、発電部14での発電を終了する。次いでS22に進み、表示部16bの作動を停止、例えば出力表示灯を消灯させる。
【0057】
以上の如く、この発明の実施例にあっては、エンジン12で駆動される発電部14に巻回される第1巻線22aと、前記第1巻線に接続されて前記第1巻線から出力される交流を直流に変換する第1コンバータ24と、前記第1コンバータに接続されて前記第1コンバータから出力される直流を交流に変換して出力するインバータ36と、前記第1コンバータと前記インバータの動作を制御する制御部42とを備えたインバータ発電機10において、前記発電部に巻回され、生じる線間電圧Vbが前記第1巻線より小さい値(250V)に設定される、具体的には巻き数が第1巻線より少なく設定される第2巻線22bと、前記第2巻線に接続されて前記第2巻線から出力される交流を直流に変換する第2コンバータ26と、入力側が前記第2コンバータに接続される一方、出力側が前記第1コンバータの正負の出力端子24c,24dの間に並列接続されると共に、前記第2コンバータから出力される直流の電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータ34と、バッテリ20とを備えると共に、前記制御部42は前記バッテリ20の出力を前記第2巻線22bに供給させて前記発電部14を回転駆動させて前記エンジン12を始動可能とする如く構成した。
【0058】
このように、エンジン12で駆動される発電部14に巻回され、生じる線間電圧Vbが第1巻線22aより小さい値に設定される第2巻線22bと、バッテリ20とを備えると共に、制御部42はバッテリ20の出力を第2巻線22bに供給させて発電部14を回転駆動させてエンジン12を始動可能とするように構成、即ち、発電部14の巻線を第1巻線22aと第2巻線22bに分けると共に、第2巻線22bの線間電圧Vbを小さく設定するように構成したので、発電部14を利用してエンジン12を始動できる、具体的には、第2巻線22bへの比較的低い電圧の供給によって発電部14を回転駆動させてエンジン12を始動させることができるため、例えばバッテリ電圧を昇圧して第2巻線22bに供給するDC/DCコンバータ40の昇圧比を抑制でき、よってコンバータ40の効率を向上できると共に、コンバータサイズも小さくでき、結果として発電機全体を軽量化および小型化することができる。さらに、始動用のスタータモータなどを不要にできるため、発電機全体をより小型化できる。
【0059】
また、第2巻線22bから出力される交流を直流に変換する第2コンバータ26と、入力側が第2コンバータ26に接続される一方、出力側が第1コンバータ24の正負の出力端子24c,24dの間に並列接続されると共に、第2コンバータ26から出力される直流の電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータ34とを備えるように構成、即ち、第2巻線22bから出力される交流を第2コンバータ26で直流に変換し、その直流の電圧を昇圧コンバータ34で昇圧して第1コンバータ24の正負の出力端子24c,24dの間に出力するように構成したので、第1コンバータ24から出力される直流と昇圧コンバータ34から出力される直流は重畳されてインバータ36に入力されることとなり、そこで交流に変換されて出力されるため、第2巻線22bに生じる線間電圧Vbを小さく設定しても発電機10の定格出力が低下することはない。また、第2巻線22bの線間電圧Vbを上記の如く設定したので、第2巻線22bから第2コンバータ26に入力される電圧も低くなり、それによって第2コンバータ26や第2平滑コンデンサ32の部品耐圧(電圧耐圧値)を下げることができると共に、コスト的にも有利となる。
【0060】
また、前記第2巻線22bに生じる線間電圧Vbが前記第1巻線22aの約50%の値に設定されるように構成、具体的には、第2巻線22bの巻き数が第1巻線22aの約50%となるように構成したので、バッテリ電圧を昇圧して第2巻線22bに供給するDC/DCコンバータ40の昇圧比も約50%にすることができるため、コンバータ40の効率をより一層向上できると共に、コンバータサイズも確実に小さくでき、よって発電機全体をより一層軽量化および小型化することができる。
【0061】
尚、上記においては、第2コンバータ26などのスイッチング素子としてFETを用いたが、それに限られるものではなく、IGBT(insulated gate bipolar transistor)などであっても良い。
【0062】
また、第2巻線22bに生じる線間電圧Vbを巻き数の減少によって小さくするように構成したが、それに限られるものではなく、ステータ14aにおける占有巻き枠の数を変更して小さくしても良い。即ち、上記では第1巻線22aと第2巻線22bの巻き枠の数を15ずつとして巻き数を減少させたが、各巻線の巻き数を同じにすると共に、例えば第1巻線22aの巻き枠の数を21、第2巻線22bのそれを9とすることで、第2巻線22bに生じる線間電圧Vbを第1巻線22aの線間電圧Vaより小さくするようにしても良い。
【0063】
また、第1、第2巻線22a,22bの線間電圧Va,Vbやインバータ発電機10の定格出力電圧などを具体的な値で示したが、それらは例示であって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
10 インバータ発電機、12 エンジン(内燃機関)、14 発電部、20 バッテリ、22a 第1巻線、22b 第2巻線、24 第1コンバータ、24c,24d (第1コンバータの)正負の出力端子、26 第2コンバータ、34 昇圧コンバータ、36 インバータ、42 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動される発電部に巻回される第1巻線と、前記第1巻線に接続されて前記第1巻線から出力される交流を直流に変換する第1コンバータと、前記第1コンバータに接続されて前記第1コンバータから出力される直流を交流に変換して出力するインバータと、前記第1コンバータと前記インバータの動作を制御する制御部とを備えたインバータ発電機において、前記発電部に巻回され、生じる線間電圧が前記第1巻線より小さい値に設定される第2巻線と、前記第2巻線に接続されて前記第2巻線から出力される交流を直流に変換する第2コンバータと、入力側が前記第2コンバータに接続される一方、出力側が前記第1コンバータの正負の出力端子の間に並列接続されると共に、前記第2コンバータから出力される直流の電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータと、バッテリとを備えると共に、前記制御部は前記バッテリの出力を前記第2巻線に供給させて前記発電部を回転駆動させて前記エンジンを始動可能としたことを特徴とするインバータ発電機。
【請求項2】
前記第2巻線に生じる線間電圧が前記第1巻線の約50%の値に設定されることを特徴とする請求項1記載のインバータ発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−244689(P2012−244689A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110565(P2011−110565)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】