説明

インバータ装置

【課題】インバータの空冷を効果的に行う。
【解決手段】複数のスイッチング素子18を有し、直流電力を交流電力に変換し第1モータの駆動を制御する第1インバータ16と、複数のスイッチング素子18を有し、直流電力を交流電力に変換し第2モータの駆動を制御する第2インバータ16とを設けるとともに、第1インバータ16のスイッチング素子18を搭載する第1平板型ヒートパイプ14と、第2インバータ16のスイッチング素子を搭載する第2平板型ヒートパイプ14とを設ける。そして、前記第1および第2平板型ヒートパイプ16に挟まれて配置された空冷用放熱フィン部12を設け、第1および第2インバータ16において発生された熱を、第1および第2平板型ヒートパイプ14を介し、空冷用放熱フィン部12により放熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプを用いた空冷の冷却機構を有するインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や、電気自動車では、モータの駆動力を用いて走行する。このために、車両はバッテリを搭載し、このバッテリからの直流電力をインバータで所定の交流に変換してモータに供給することでモータの駆動を制御している。
【0003】
ここで、インバータは、スイッチング素子としてIGBTなどのパワー半導体素子を利用し、電流を切り換えてモータに供給する。車両用のモータは高出力であり、スイッチング素子における発熱も大きなものになり、この冷却機構が必要になる。
【0004】
冷却機構としては、水冷、空冷などがあり、冷却能力としては水冷が好ましいが、機構を簡略化するためには空冷が好ましい。
【0005】
半導体素子の放熱装置として、ヒートパイプを利用するものも提案されている(特許文献1参照)。すなわち、特許文献1では、半導体素子を主受熱体に取り付け、主受熱体に放熱フィンを取り付け、さらに放熱フィンの中間部に副受熱体を配設する。そして、主受熱体と副受熱体との間にヒートパイプを配設し、主受熱体から副受熱体への熱移動を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−303969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、副受熱体を設けることによって、放熱フィン全体における放熱を達成している。しかし、副受熱体を設けるために、サイズが大きくなり、ヒートパイプも放熱フィンの側部に設けるため、構造が複雑化する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のスイッチング素子を有し、直流電力を交流電力に変換し第1モータの駆動を制御する第1インバータと、複数のスイッチング素子を有し、直流電力を交流電力に変換し第2モータの駆動を制御する第2インバータと、第1インバータのスイッチング素子を搭載する第1平板型ヒートパイプと、第2インバータのスイッチング素子を搭載する第2平板型ヒートパイプと、前記第1および第2平板型ヒートパイプに挟まれて配置された空冷用放熱フィン部と、を有し、第1および第2インバータにおいて発生された熱を、第1および第2ヒートパイプを介し、前記空冷用放熱フィン部により放熱することを特徴とする。
【0009】
また、前記空冷用放熱フィン部内に前記第1または第2の平板型ヒートパイプから伸びる管状のヒートパイプを設けることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの平板型ヒートパイプ間に放熱フィンを配置したため、放熱フィンは両側から伝達されてくる熱を放散することになり、全体としての放熱効果を向上することができる。また、2つのインバータにより2つのモータを別々に駆動することで、2つのインバータが離れていてもモータへの配線の引き回しを効率的に行うことができる。さらに、放熱フィン部12内に、ヒートパイプを埋め込むことで、放熱効果を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るインバータ装置10の全体構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るインバータ装置10の全体構成を示す平面図である。
【図3】実施形態に係るインバータ装置10の全体構成を示す正面図である。
【図4】電気的接続を示す図である。
【図5】変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図3は、実施形態に係るインバータ装置10の全体構成を示す図であり、図1は斜視図、図2は平面図、図3は正面図である。インバータ装置10は、放熱フィン部12を有している。この放熱フィン部12は、例えば多数のアルミなどの平板を配置した構成など空気流を通過させて放熱を行う公知の種々の放熱フィンを採用することができる。この放熱フィン部12の両側には、一対の平板型ヒートパイプ14が配置されている。
【0014】
この平板型ヒートパイプ14は、放熱フィン部12側が放熱部、外側が吸熱部となっている。ここで、ヒートパイプ14は、真空状態とした平板の内部空間に適量の水などの熱媒体(作動液)を注入したもので、吸熱した作動液を放熱側に還流するのを促進するために還流路の内面にウィックと呼ばれる毛細管構造を備えている。吸熱側で加熱蒸発した作動液がその圧力で放熱側に移動し、放熱した凝縮した作動液がウィックを介し吸熱側に還流し、効果的な熱伝達を行う。
【0015】
そして、本実施形態では、一対の平板型ヒートパイプ14の放熱側の面に放熱フィン部12を接続することで、放熱フィン部12の両側から挟み込み、一対のヒートパイプ14からの熱を両側から放熱フィン部12に供給する。
【0016】
一対の平板型ヒートパイプ14の吸熱側には、インバータ16をそれぞれ実装する。インバータ16は、例えばIGBTなどのパワー素子からなる複数のスイッチング素子18からなっている。この例では、直流電力を三相交流に変換するための6つのスイッチング素子18が平板型ヒートパイプ14の吸熱側の面に実装されている。スイッチング素子18は、ヒートシンクとしても機能するアルミ基板などを介して平板型ヒートパイプ14の吸熱側の面に実装することも好適である。
【0017】
なお、図示は省略したが、6つのスイッチング素子18は、2つずつが直列接続されたアームを構成し、各アームが正極母線および負極母線間に接続され、各アームの中点がモータの3つの端子に接続されており、モータにU,V,W相の三相交流を供給する。本実施形態では、2つのインバータ16がそれぞれ対応するモータの駆動を制御する。例えば、一方が主に発電を行うモータ・ジェネレータ、他方が主に駆動力を出力するモータとすることができる。このように、2つのインバータ16により2つのモータを別々に駆動するため、2つのインバータ16が位置的に離れていても、対応するモータへの配線の引き回しを効率的に行うことができる。
【0018】
また、各インバータ16の正極母線、負極母線はバッテリと接続されるバスバーで構成される。
【0019】
さらに、放熱フィン部12の中には、平板型ヒートパイプ14の放熱側の面から伸びる管状のヒートパイプ20が埋め込まれている。図示の例では、四角柱状としたが円筒状のヒートパイプで問題ない。このヒートパイプ20は、平板型ヒートパイプ14側が吸熱部となっており、先端側が放熱部となっており、放熱フィン部12のほぼ中央付近まで伸びている。ヒートパイプ20は、放熱フィン部12の放熱フィンと連結されることが好ましい。このヒートパイプ20によって、平板型ヒートパイプ14からの放熱をより促進することが可能となる。なお、放熱フィン部12に埋め込むヒートパイプ20の本数は、適宜決定すればよく、また一対の平板型ヒートパイプ14から伸びる本数が異なっていてもよい。
【0020】
図4には、本実施形態の回路構成を示してある。このように、バッテリ30の正極と負極からの配線は2つのインバータ16に接続されている。また、バッテリ30の正極と負極からの配線の間には、コンデンサ32が配置され、バッテリ30の出力を平滑化している。
【0021】
2つのインバータ16の出力は、2つのモータ34にそれぞれ接続されている。バッテリ30からの直流電力が2つのインバータ16において、それぞれに接続されているモータ34に駆動するための交流電力に変換されてモータ34の駆動が制御される。上述のように、モータ34は、主に発電を行うものでもよいし、主に動力を出力するが、回生制動も行うものでもよい。
【0022】
なお、バッテリ30からの出力をそのままインバータ16に入力するのではなく、DCDCコンバータによって電圧を変換した後インバータ16に入力するようにしてもよい。この場合、モータの出力に応じてインバータ16への入力電圧が制御される。
【0023】
図5には、変形例を示してあり、コンデンサ32を2つの平板型ヒートパイプ14を接続する板材として形成してある。このコンデンサ32に、配線としてのバスバーを一定的に形成することも好適である。これによって、コンデンサ32が補強材としても機能する。また、コンデンサ32によって、放熱フィン部12の一部がカバーされてしまうので、放熱フィン部12への風を遮らない位置にコンデンサ32を設置することが好適である。例えば、車両の走行時の風を取り入れるのであればその方向は基本的に一方向からに限定されるので、これを遮らない位置にコンデンサ32を取り付け、また冷却ファンなどを設けた場合には、冷却ファンからの風を遮らない位置にコンデンサを取り付けるとよい。
【0024】
本実施形態によれば、2つのインバータを取り付けた平板型ヒートポンプによって、放熱フィンを挟んだ。従って、放熱フィンは両側から伝達されてくる熱を放散することになり、全体としての放熱効果を向上することができる。また、平板型ヒートパイプを用いることで、複数のスイッチング素子からの熱を効率的に放熱フィンに伝達することができる。また、2つのインバータにより2つのモータを別々に駆動することで、2つのインバータが離れていてもモータへの配線の引き回しを効率的に行うことができる。さらに、放熱フィン部12内に、ヒートパイプを埋め込むことで、放熱効果を大きくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
10 インバータ装置、12 放熱フィン部、14 平板型ヒートパイプ、16 インバータ、18 スイッチング素子、20 ヒートパイプ、30 バッテリ、32 コンデンサ、34 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有し、直流電力を交流電力に変換し第1モータの駆動を制御する第1インバータと、
複数のスイッチング素子を有し、直流電力を交流電力に変換し第2モータの駆動を制御する第2インバータと、
第1インバータのスイッチング素子を搭載する第1平板型ヒートパイプと、
第2インバータのスイッチング素子を搭載する第2平板型ヒートパイプと、
前記第1および第2平板型ヒートパイプに挟まれて配置された空冷用放熱フィン部と、
を有し、
第1および第2インバータにおいて発生された熱を、第1および第2平板型ヒートパイプを介し、前記空冷用放熱フィン部により放熱することを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ装置であって、
前記空冷用放熱フィン部内に前記第1または第2の平板型ヒートパイプから伸びる管状のヒートパイプを設けることを特徴とするインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−120382(P2012−120382A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269773(P2010−269773)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】