説明

インピーダンス測定装置

【課題】プラズマチャンバのインピーダンスを高精度で測定することができる、小型、高精度かつ安価なインピーダンス測定装置を提供する。
【解決手段】高周波測定信号を発生する信号源1、3、4a、7を備える。また、プラズマ発生装置の測定部位が接続される測定端子を有し、高周波測定信号が測定部位に適用されたとき、測定部位の高周波電流信号および高周波電圧信号を検出し、高周波電流信号および高周波電圧信号をそれぞれ低周波電流信号および低周波電圧信号に変換する信号検出部2、3、4b、5、7を備える。さらに、1測定毎に、信号検出部から低周波電流信号および低周波電圧信号を交互に受信し、低周波電流信号および低周波電圧信号のベクトル比を求め、測定部位のインピーダンスを算出する演算部6、7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定装置、特に、プラズマ発生装置のプラズマチャンバのインピーダンスを測定するのに適した装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶ディスプレイ等の製造工程においては、エッチングや薄膜形成等のプラズマによる処理プロセスが多数存在し、そのため、高周波放電によって発生させたプラズマを用いる複数のプラズマ処理装置が使用されているが、この場合、製品の歩留りを向上させるためには、プラズマ処理装置間の機差をできるだけ小さくする必要がある。
【0003】
このプラズマ処理装置間の機差を評価する方法として、プラズマチャンバの電極と整合器の間にネットワークアナライザを配置し、ネットワークアナライザからプラズマチャンバに対して高周波信号を与え、プラズマチャンバからの反射波を測定してインピーダンスを測定すること、また、このネットワークアナライザを用いて、高周波信号の周波数を掃引することによって高周波特性の周波数特性を測定することにより、プラズマ処理装置の放電していない状態における装置インピーダンスを測定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、ネットワークアナライザ等の高周波回路に対するインピーダンス測定装置においては、通常、特性インピーダンスが50Ωの方向性結合器を用いて測定がなされる。このため、この種のインピーダンス測定装置によれば、インピーダンス値が50Ω近傍の測定に際しては、測定精度が高くなるが、50Ωから上下に離れたインピーダンス値の測定に際しては、測定精度が低下するという欠点を有している。
【0005】
一方、プラズマチャンバは、通常、0.1〜10Ωの範囲の非常に低いインピーダンス値をとる。このため、通常のインピーダンス測定装置によっては、プラズマチャンバのインピーダンスを高精度で測定することができないという問題を有していた。加えて、これらのインピーダンス測定装置は、大型で重量もあって持ち運びが容易でなく、また、非常に高価であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−296612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、プラズマチャンバのインピーダンスを高精度で測定することができる、小型、軽量かつ安価なインピーダンス測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、プラズマ発生装置の測定部位が接続される測定端子と、高周波測定信号を発生する信号源と、プラズマ発生装置の測定部位が接続される測定端子を有し、前記高周波測定信号が前記測定部位に適用されたとき、前記測定部位の高周波電流信号および高周波電圧信号を検出し、前記高周波電流信号および前記高周波電圧信号をそれぞれ低周波電流信号および低周波電圧信号に変換する信号検出部と、1測定毎に、前記信号検出部により前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号を交互に受信し、前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号のベクトル比を求め、前記測定部位のインピーダンスを算出する演算部と、を備えたことを特徴とするインピーダンス測定装置を構成したものである。
【0009】
上記構成において、前記信号検出部はヘテロダイン回路を有することが好ましい。
上記課題を解決するため、また好ましくは、前記信号源は、第1のダイレクト・ディジタル・シンセサイザ(DDS)と、前記第1のDDSを駆動する水晶発振子と、前記第1のDDSの動作を制御するCPUと、前記第1のDDSの出力端子に接続された第1の高周波用ローパスフィルタと、を有し、前記信号検出部は、第2のDDSと、前記第2のDDSを駆動させる前記水晶発振子と、前記第2のDDSの動作を制御する前記CPUと、前記第2のDDSの出力端子に接続された第2の高周波用ローパスフィルタと、前記第1の高周波用ローパスフィルタの出力端子に接続された抵抗網と、を有し、前記抵抗網には前記測定端子が接続され、前記信号検出部は、さらに、前記第2の高周波ローパスフィルタの出力端子および前記抵抗網にそれぞれ接続され、前記高周波測定信号が前記測定部位に適用されたとき、前記測定部位の高周波電流信号を低周波電流信号に変換し、前記低周波電流信号を出力する第1の混合器と、前記第2の高周波用ローパスフィルタの出力端子および前記抵抗網にそれぞれ接続され、前記高周波測定信号が前記測定部位に適用されたとき、前記測定部位の高周波電圧信号を低周波電圧信号に変換し、前記低周波電圧信号を出力する第2の混合器と、前記第1の混合器の出力端子に接続された第1のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタと、前記第2の混合器の出力端子に接続された第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタを有し、前記演算部は、前記CPUと、前記第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタの出力端子と前記CPUとの間に接続されたスイッチ回路を有し、前記CPUは、前記スイッチ回路の動作を制御し、1測定毎に、前記第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタから出力される前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号を交互に受信し、受信した前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号のベクトル比を求め、前記測定部位のインピーダンスを算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラズマ発生装置の測定部位(負荷)に高周波測定信号を適用したときの測定部位の高周波電流信号および高周波電圧信号をそれぞれ低周波信号に変換し、それらの低周波電流信号および低周波電圧信号を1測定毎に交互に受信し、受信した信号のベクトル比を求め、測定部位のインピーダンスを算出する構成とし、従来のネットワークアナライザ等のような反射係数測定法ではなく、RF I−V法によってインピーダンスを測定するようにしたので、プラズマチャンバのような低インピーダンス値を有する測定部位のインピーダンスを高精度で測定することができる。さらに、ヘテロダイン回路により高周波信号を低周波信号に変換できることとなり、信号検出回路が非常に簡単かつ高精度の測定が可能となり、インピーダンス測定装置を小型および高精度化することができる。
【0011】
また、本発明によれば、測定部位の高周波電流信号および高周波電圧信号を、RFトランスやダイオード検波器を使用せずに、抵抗網を用いて検出する構成としたので、原理上、検出信号の周波数帯域によらず、常に高精度のインピーダンス測定を行うことができる。さらに、RFトランスのようにリアクタンス補正の必要がなく、また、ダイオード検波器に固有の非線形問題を生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施例によるインピーダンス測定装置の回路構成を示す図である。
【図2】図1に示した回路の回路部分5の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例によるインピーダンス測定装置の回路構成を示す図であり、図2は、図1に示した回路の回路部分5の詳細を示す図である。
図1を参照して、本発明によれば、第1のダイレクト・ディジタル・シンセサイザ(DDS)1と、第2のDDS2と、第1および第2のDDS1、2を駆動する水晶発振子3が備えられる。そして、第1および第2のDDS1、2の動作がCPU7によって制御される。
【0014】
第1のDDS1の出力端子には、第1の高周波用ローパスフィルタ4aが接続される。なお、この実施例では、第1の高周波用ローパスフィルタ4aのカットオフ周波数fcは170MHzに設定される。こうして、第1のDDS1、水晶発振子3、CPU7および第1の高周波用ローパスフィルタ4aから、高周波測定信号(f1=0.1〜170MHz)を発生する信号源が構成される。
【0015】
また、本発明によれば、第2のDDS2が備えられる。第2のDDS2は、第1のDDS1と同様に、水晶発振子3によって駆動され、CPU7によって動作を制御される。この場合、第2のDDS2は、局部発振器として機能する。
第2のDDS2の出力端子には、第2の高周波用ローパスフィルタ4bが接続される。なお、この実施例では、第1の高周波用ローパスフィルタ4aのカットオフ周波数fcは170MHzに設定される。こうして、第2の高周波用ローパスフィルタ4bから、周波数がf2=f1+1kHzの変調信号が出力される。
【0016】
第1の高周波用ローパスフィルタ4aの出力端子には、抵抗網12が接続され、抵抗網12には、測定端子16が接続される。測定端子16には、プラズマ発生装置の測定部位が接続される。
さらに、第1の混合器13aが、第2の高周波ローパスフィルタ4bの出力端子および抵抗網16にそれぞれ接続される。第1の混合器13aは、高周波測定信号が測定部位に適用されたとき、測定部位の高周波電流信号を低周波電流信号に変換し、当該低周波電流信号を出力する。
また、第2の混合器13bが、第2の高周波用ローパスフィルタの出力端子4bおよび抵抗網16にそれぞれ接続される。第2の混合器13bは、高周波測定信号が測定部位に適用されたとき、測定部位の高周波電圧信号を低周波電圧信号に変換し、低周波電圧信号を出力する。
【0017】
そして、第1の混合器13aの出力端子には、第1のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ14aが接続され、第2の混合器13bの出力端子には、第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ14bが接続される。この実施例では、第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ14a、14bのカットオフ周波数fcはいずれも1kHzに設定される。
【0018】
第2のDDS2と、水晶発振子3と、CPU7と、第2の高周波用ローパスフィルタ4bと、抵抗網と12と、第1および第2の混合器13a、13bと、第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ14a、14bとから、高周波測定信号がプラズマ発生装置の測定部位に適用されたとき、測定部位の高周波電流信号および高周波電圧信号を、測定端子16を通じて検出し、高周波電流信号および高周波電圧信号をそれぞれ低周波電流信号(f=1kHz)および低周波電圧信号(f=1kHz)に変換するヘテロダイン方式の信号検出部が構成される。
【0019】
本発明によれば、さらに、第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ14a、14bの出力端子11a、11bとCPU7との間にスイッチ回路6が接続される。
CPU7は、スイッチ回路6の動作を制御し、1測定毎に、第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ14aから出力される低周波電流信号および低周波電圧信号を交互に受信し、受信した低周波電流信号および低周波電圧信号を、CPU7に内蔵されたA/D変換器によってディジタル信号に変換した後、それらの信号のベクトル比を求め、測定部位のインピーダンスを算出する。
【0020】
スイッチ回路6およびCPU7から、1測定毎に、信号検出部から低周波電流信号および低周波電圧信号を交互に受信し、低周波電流信号および低周波電圧信号のベクトル比を求め、測定部位のインピーダンスを算出する演算部が構成される。
CPU7によって算出されたインピーダンス値のデータは、パソコン8のディスプレイに表示される。
【0021】
こうして、測定端子16が、プラズマ発生装置の測定部位、例えば、プラズマチャンバに直接接続され、本発明のインピーダンス測定装置の信号源1、3、4a、7から、測定端子16を通して高周波測定信号がプラズマチャンバに適用される。そして、プラズマチャンバの高周波電流信号および高周波電圧信号が、インピーダンス測定装置のヘテロダイン方式の信号検出部2、3、4b、5、7によって検出され、低周波電流信号および低周波電圧信号に変換される。変換された低周波電流信号および低周波電圧信号は、演算部6、7によって、1測定毎に交互に受信され、演算部6、7は、それらのベクトル比を求め、プラズマチャンバのインピーダンスを算出する。
【符号の説明】
【0022】
1 第1のDDS
2 第2のDDS
3 水晶発振子
4a 第1の高周波用ローパスフィルタ
4b 第2の高周波用ローパスフィルタ
5 回路部分
6 スイッチ回路
7 CPU
8 パソコン
10a、10b 入力端子
11a、11b 出力端子
12 抵抗網
13a 第1の混合器
13b 第2の混合器
14a 第1のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ
14b 第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタ
16 測定端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波測定信号を発生する信号源と、
プラズマ発生装置の測定部位が接続される測定端子を有し、前記高周波測定信号を前記測定部位に適用したとき、前記測定部位の高周波電流信号および高周波電圧信号を検出し、前記高周波電流信号および前記高周波電圧信号をそれぞれ低周波電流信号および低周波電圧信号に変換する信号検出部と、
1測定毎に、前記信号検出部から前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号を交互に受信し、前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号のベクトル比を求め、前記測定部位のインピーダンスを算出する演算部と、を備えたことを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記信号検出部はヘテロダイン回路を有することを特徴とする請求項1に記載のインピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記信号源は、
第1のダイレクト・ディジタル・シンセサイザ(DDS)と、
前記第1のDDSを駆動する水晶発振子と、
前記第1のDDSの動作を制御するCPUと、
前記第1のDDSの出力端子に接続された第1の高周波用ローパスフィルタと、を有し、
前記信号検出部は、
第2のDDSと、
前記第2のDDSを駆動させる前記水晶発振子と、
前記第2のDDSの動作を制御する前記CPUと、
前記第2のDDSの出力端子に接続された第2の高周波用ローパスフィルタと、
前記第1の高周波用ローパスフィルタの出力端子に接続された抵抗網と、を有し、前記抵抗網には前記測定端子が接続され、
前記信号検出部は、さらに、
前記第2の高周波ローパスフィルタの出力端子および前記抵抗網にそれぞれ接続され、前記高周波測定信号が前記測定部位に適用されたとき、前記測定部位の高周波電流信号を低周波電流信号に変換し、前記低周波電流信号を出力する第1の混合器と、
前記第2の高周波用ローパスフィルタの出力端子および前記抵抗網にそれぞれ接続され、前記高周波測定信号が前記測定部位に適用されたとき、前記測定部位の高周波電圧信号を低周波電圧信号に変換し、前記低周波電圧信号を出力する第2の混合器と、
前記第1の混合器の出力端子に接続された第1のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタと、
前記第2の混合器の出力端子に接続された第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタと、を有し、
前記演算部は、
前記CPUと、
前記第1および第2のオペアンプ用いた低周波用ローパスフィルタの出力端子と前記CPUとの間に接続されたスイッチ回路と、を有し、
前記CPUは、前記スイッチ回路の動作を制御し、1測定毎に、前記第1および第2のオペアンプを用いた低周波用ローパスフィルタから出力される前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号を交互に受信し、受信した前記低周波電流信号および前記低周波電圧信号のベクトル比を求め、前記測定部位のインピーダンスを算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインピーダンス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−295573(P2009−295573A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110272(P2009−110272)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(392036326)株式会社アドテック プラズマ テクノロジー (24)
【Fターム(参考)】