インプリントモールド、及びプリント配線板の製造方法
【課題】貫通孔を高精度に形成することが可能なインプリントモールドを提供する。
【解決手段】インプリントモールド10は、例えば、シリコン(Si)から構成される熱インプリント用の金型である。支持部11と、支持部11から突出し、バイアホールに対応する突起部12と、突起部12の先端面141に形成された親油性膜16と、この先端面141を除く全ての表面に離型膜17を備えている。この親油性膜16は、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS,C6H19NSi2)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS,SiCl3C18H37)等から構成されている。一方、離型膜17としては、例えば、フッ素系単分子膜等を例示することができる。
【解決手段】インプリントモールド10は、例えば、シリコン(Si)から構成される熱インプリント用の金型である。支持部11と、支持部11から突出し、バイアホールに対応する突起部12と、突起部12の先端面141に形成された親油性膜16と、この先端面141を除く全ての表面に離型膜17を備えている。この親油性膜16は、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS,C6H19NSi2)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS,SiCl3C18H37)等から構成されている。一方、離型膜17としては、例えば、フッ素系単分子膜等を例示することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ナノインプリント法に用いられるインプリントモールド、及びそのインプリントモールドを用いたプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱インプリント法において、熱可塑性樹脂と下型との間に保護シート(犠牲層)を介在させて、突起を有する金型で熱可塑性樹脂をスタンピングすることで、突起が下型と接触するのを防止しつつ、熱可塑性樹脂に貫通孔を形成する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−7712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、突起の押圧に伴って保護シートが引き寄せられて比較的広い範囲で変形するので、熱可塑性樹脂もこの保護シートの変形に追従することで伸長したり破損したりする場合がある。このため、貫通孔を高精度に形成することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、貫通孔を高精度に形成することが可能なインプリントモールド、及びプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係るインプリントモールドは、支持部と、前記支持部から突出した突起部と、前記突起部の先端面に形成された親油性膜と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
[2]上記発明において、前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていてもよい。
【0008】
[3]また、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、インプリントモールドの突起部の先端面に親油性膜を形成する第1の工程と、前記インプリントモールドを被成形体に押し付けて、貫通孔を有する基材を形成する第2の工程と、前記貫通孔に導体を充填する第3の工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
[4]上記発明において、前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インプリントモールドの突起部の先端面に親油性膜が形成されているので、貫通孔の底部に残った残膜が突起部に密着する。そのため、離型の際に突起部と共に当該残膜を絶縁性基材から引き剥がすことができ、貫通孔を高精度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドを示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示すフローチャートである。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、図2の各ステップを示す図である(その1)。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、図2の各ステップを示す図である(その2)。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、図2の各ステップを示す図である(その3)。
【図6】図6は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、図7の各ステップを示す図である(その1)。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、図7の各ステップを示す図である(その2)。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、図7の各ステップを示す図である(その3)。
【図11】図11は、図8(c)のXI部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
先ず、本実施形態においてプリント配線板の製造に使用されるインプリントモールド10の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は本実施形態におけるインプリントモールドの断面図である。
【0014】
本実施形態におけるインプリントモールド10は、例えば、シリコン(Si)から構成される熱インプリント用の金型である。このインプリントモールド10は、図1に示すように、ベース11と、突起部12と、凸部15と、を備えている。
【0015】
なお、インプリントモールド10を、シリコン(Si)に代えて、石英(SiO2)、シリコンカーバイト(SiC)、グラッシーカーボン(GC)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)等で構成してもよい。
【0016】
突起部12は、ベース11の上面111から上方に向かって突出しており、台座部13と柱部14とを有している。台座部13は、ベース11の上面111に設けられている。そして、柱部14は、この台座部13の上面131から上方に向かって突出している。
【0017】
この突起部12は、プリント配線板40のバイアホール42(図6参照)に対応するように配置されており、この突起部12によってバイアホール42を形成するための貫通孔411(図6参照)が形成される。この突起部12の台座部13によって、バイアホール42のランド部43に対応する貫通孔411の大径部412(図6参照)が絶縁性基材41に形成される。また、突起部12の柱部14によって、バイアホール42の貫通部44に対応する貫通孔411の小径部413(図6参照)が絶縁性基材41に形成される。
【0018】
この突起部12の高さh1は、凸部15の高さh2よりも高くなっており(h1>h2)、突起部12の柱部14の先端面141がインプリントモールド10において最も高くなっている。特に限定されないが、一例を挙げれば、突起部12の高さh1が24[μm](=台座部13の高さ:6[μm]+柱部14の高さ:18[μm])であるのに対し、凸部15の高さh2は6[μm]となっている。
【0019】
また、インプリントモールド10を用いて熱インプリント法によって絶縁性基材41に貫通孔411を形成した際に、当該貫通孔411の底部に残膜411a(図8(b)参照)が残るように、突起部12の高さh1は、絶縁性基材41の厚さt0(図6参照)よりも若干低くなっている(h1<t0)。特に限定されないが、一例を挙げれば、上記のように突起部12の高さh1が24[μm]であるのに対し、絶縁性基材41の厚さt0は25[μm]となっている。
【0020】
凸部15は、上述の突起部12とは独立して、ベース11の上面111上に設けられている。この凸部15も、突起部12と同様に、ベース11の上面11から上方に向かって突出している。この凸部15は、プリント配線板40の配線パターン45(図6参照)に対応するように配置されており、この凸部15によって、配線パターン45を形成するための溝部414(図6参照)が、絶縁性基材41に形成される。
【0021】
なお、バイアホール42に対応する突起部12は、平面視において円形、矩形、或いは多角形等となっているのに対し、配線パターン45に対応する凸部15は、平面視においてベース11上に線状に延在している。また、図1に示すインプリントモールド10における突起部12や凸部15の配置は一例に過ぎず、後述するプリント配線板40のバイアホール42や配線パターン45の配置に応じて決定される。
【0022】
さらに、本実施形態では、この突起部12の柱部14の先端面141に親油性膜16が形成されていると共に、インプリントモールド10においてこの先端面141を除く全ての表面に離型膜17が形成されている。この親油性膜16は、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS,C6H19NSi2)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS,SiCl3C18H37)等から構成されている。一方、離型膜17としては、例えば、フッ素系単分子膜等を例示することができる。
【0023】
このように、本実施形態では、インプリントモールド10において、絶縁性基材41に貫通孔411を形成する突起部12の先端面141に、親油性膜16を形成する。これにより、後述するように、親油性膜16を介して、突起部12の先端面141と貫通孔411の残膜411aとの密着性が向上し、離型の際に突起部12と共に当該残膜411aを絶縁性基材41から引き剥がすことができるので、貫通孔411を高精度に形成することができる。
【0024】
なお、本実施形態におけるベース11が本発明における支持部の一例に相当し、本実施形態における突起部12が本発明における突起部の一例に相当し、本実施形態における親油性膜16が本発明における親油性膜の一例に相当する。
【0025】
次に、以上に説明したインプリントモールド10の製造方法について、図2〜図5を参照しながら説明する。
【0026】
図2は本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示すフローチャート、図3(a)〜図5(d)は図2の各ステップを示す図である。
【0027】
先ず、図2のステップS11において、図3(a)に示すように、シリコン基板21上に第1のマスク層22を形成する。本実施形態における第1のマスク層22は、シリコン酸化膜(SiO2)から構成されており、例えば、ウェット酸化、ドライ酸化、或いはパイロジェニック酸化によって形成される。
【0028】
なお、第1のマスク層22は、シリコン基板21をエッチングする際(後述のステップS13)に選択比を確保できる材料で構成されていれば特に限定されない。例えば、シリコン酸化膜に代えて、シリコン窒化膜(Si3N4)、金属膜、レジスト層等を、第1のマスク層22として用いてもよい。また、シリコン基板21に代えて、石英(SiO2)、シリコンカーバイト(SiC)、グラッシーカーボン(GC)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)等で構成される基板を用いてもよい。
【0029】
次いで、ステップS12において、図3(b)に示すように、この第1のマスク層22に対してパターニングを行う。具体的には、先ず、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィによって第1のマスク層22上にレジスト層(不図示)を形成し、次いで、バッファードフッ酸(BHF:Buffered Hydrogen Fluoride)を用いて、第1のマスク層22をウェットエッチングした後に、硫酸過水等を用いて当該レジスト層を除去する。なお、フォトリソグラフィに代えて、電子線描画装置やレーザ描画装置を用いてパターニングを行ってもよい。
【0030】
次いで、ステップS13において、図3(c)に示すように、フッ素含有ガスを用いて、シリコン基板21に対してドライエッチング(D−RIE)を行い、次いで、ステップS14において、図3(d)に示すように、BHFを用いたウェットエッチングによって第1のマスク層22をシリコン基板21上から除去する。これにより、インプリントモールド10の突起部12の柱部14が形成される。
【0031】
次いで、ステップS15において、図4(a)に示すように、シリコン基板21の表面に第2のマスク層23を形成する。この第2のマスク層23は、上述の第1のマスク層22と同様に、本実施形態では、シリコン酸化膜(SiO2)から構成されている。
【0032】
次いで、ステップS16において、図4(b)に示すように、第2のマスク層23に対してパターニングを行う。具体的には、上述のステップS12と同様に、第2のマスク層23上にレジスト層を形成し、次いで、第2のマスク層23をウェットエッチングした後に、当該レジスト層を除去する。
【0033】
次いで、ステップS17において、図4(c)に示すように、上述のステップS13と同様の要領で、シリコン基板21に対してドライエッチングを行う。次いで、ステップS18において、図4(d)に示すように、上述のステップS14と同様の要領で、第2のマスク層23をエッチングによって除去する。これにより、インプリントモールド10の突起部12の台座部13と凸部15とが形成される。
【0034】
なお、図2のステップS11〜S14や同図のステップS15〜S18のようなマスク層形成、フォトリソグラフィ、及びエッチングのステップを複数回繰り返すことで、任意の段数の突起部を形成することができる。
【0035】
次いで、ステップS19において、図5(a)に示すように、突起部12の柱部14の先端面141に、例えば、樹脂材料等から構成される保護フィルム24を貼り付けて、保護フィルム24によって先端面141を覆う。次いで、ステップS20において、図5(b)に示すように、インプリントモールド10の全面に離型剤をディッピングや蒸気によって付着させることで、離型膜17を形成する。
【0036】
次いで、ステップS21において、図5(c)に示すように、突起部12の先端面141を覆っていた保護フィルム24を剥離する。次いで、ステップS22において、インプリントモールド10の全面に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS,C6H19NSi2)をディッピングや蒸気によって付着させる。
【0037】
この際、インプリントモールド10の表面には、保護フィルム24を剥離した領域を除いて、フッ素系単分子膜からなる離型膜17が形成されているため、HMDSが付着せず、インプリントモールド10の表面において保護フィルム24を剥離した領域(すなわち、インプリントモールド10の突起部12の先端面141)のみに親油性膜16が形成され、インプリントモールド10が完成する。
【0038】
なお、ステップS22において、HMDSに代えて、オクタデシルトリクロロシラン(OTS,SiCl3C18H37)をインプリントモールド10の表面に付着させてもよい。
【0039】
また、インプリントモールド10において突起部12の先端面141のみ離型膜17を除去する方法としては、以下のような方法であってもよい。
【0040】
すなわち、ステップS19を省略して、ステップS20においてインプリントモールド10の全面に離型膜17を形成した後、当該突起部12の先端面141のみに、例えば10[Pa]以下の減圧下で、波長172[nm]のキセノンエキシマランプを3[J/cm2]以上照射することで、突起部12の先端面141から離型膜17を除去することができる。
【0041】
或いは、ステップS14及びS19を省略して、ステップS20において離型膜17を形成した後に、BHFを用いたウェットエッチングによって、第1のマスク層22と共に離型膜17を除去してもよい。
【0042】
また、上述の製法では、離型膜17を形成した後に親油性膜16を形成したが、特にこれに限定されず、親油性膜16を形成した後に離型膜17を形成してもよい。具体的には、インプリントモールド10の全面にHDMSを付着させ、突起部12の先端面141を除いて紫外線照射して変性させた後に、インプリントモールド10の全面に離型処理を行ってもよい。
【0043】
次に、上記のインプリントモールド10を用いて製造されるプリント配線板30の構成について、図6を参照しながら説明する。図6は本実施形態における多層プリント配線板30を示す断面図である。
【0044】
本実施形態におけるプリント配線板30は、図6に示すように、複数の(本例では2枚)のプリント配線板40,50を積層することで構成される多層フレキシブルプリント配線板である。なお、以下に説明する多層プリント配線板30は一例に過ぎず、例えば、多層プリント配線板を構成するプリント配線板の枚数、配線パターンやバイアホールの配置等は、特にこれに限定されない。
【0045】
第1のプリント配線板40は、絶縁性基材41と、バイアホール42と、配線パターン45,46と、を有している。第2のプリント配線板50も、絶縁性基材51と、バイアホール52と、配線パターン55と、を有しており、下側配線パターン46が形成されていない点を除いて、第1のプリント配線板40と同様の構成である。なお、図6に示す例では、プリント配線板40,50におけるバイアホールや配線パターンの配置が同一となっているが、特にこれに限定されず、プリント配線板40,50の間でバイアホールや配線パターンの配置を異ならせてもよい。
【0046】
以下に、第1のプリント配線板40を例にとって、多層プリント配線板30の各層の構成について説明する。
【0047】
絶縁性基材41は、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性樹脂材料から構成されており、電気絶縁性を有している。図6に示すように、この絶縁性基材41には、後述する熱インプリント法によって、バイアホール42に対応する貫通孔411や、配線パターン45に対応する溝部414が一体的に形成されている。この貫通孔411は、比較的大きな内径を有する大径部412を上部に有していると共に、大径部412よりも小さな内径を有する小径部413を下部に有している。
【0048】
本実施形態におけるバイアホール42は、ランド部43を上部に有すると共に、貫通部44を下部に有している。ランド部43は、絶縁性基材41の大径部412内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されている。このランド部43は、絶縁性基材41の上面415に埋設されていると共に、ランド部43の上面が絶縁性基材41から露出している。
【0049】
貫通部44も、絶縁性基材41の小径部413内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されており、ランド部43と貫通部44とは一体的に形成されている。この貫通部44は、ランド部43から絶縁性基材41の下面416まで絶縁性基材41を貫通している。
【0050】
上側配線パターン45も、絶縁性基材41の線状の溝部414内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されている。この配線パターン45は、ランド部43と同様に、絶縁性基材41の上面415に埋設されていると共に、その上面が絶縁性基材41の上面415から露出している。特に図示しないが、この配線パターン45は、バイアホール42のランド部43と繋がっている。
【0051】
一方、下側配線パターン46は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法によって、第1の絶縁性基板41の下面416上に形成されている。
【0052】
第1のプリント配線板40と第2のプリント配線板50とは相互に積層されており、第1のプリント配線板40の上側配線パターン45と、第2のプリント配線板50の配線パターン55とは、第2のプリント配線板50のバイアホール52を介して電気的に接続されている。また、第1のプリント配線板40において、上側配線パターン45は、バイアホール42を介して下側配線パターン46に電気的に接続されている。
【0053】
次に、以上に説明した多層プリント配線板30の製造方法について、図7〜図11を参照しながら説明する。
【0054】
図7は本実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャート、図8(a)〜図10(b)は図7の各ステップを示す図、図11は図8(c)のXI部の拡大図である。
【0055】
本実施形態では、図7に示すように、ステップS100,S200において第1及び第2のプリント配線板40,50を個別に形成した後に、ステップS300で第1のプリント配線板40と第2のプリント配線板50を相互に貼り合わせることで、多層プリント配線板30を製造する。
【0056】
第1のプリント配線板40を形成する工程S100では、先ず、ステップS110において、熱インプリント法によって、第1のプリント配線板40の絶縁性基材41を形成する。このステップS110は、同図に示すように、3つの工程S111〜S113から構成されている。
【0057】
図7のステップS111において、図8(a)に示すように、インプリント装置のステージ(下型)71の上に、絶縁性基材41を形成することとなる樹脂フィルム61を載置する。同図に示すように、インプリント装置のプレスヘッド72には、上述したインプリントモールド10が固定されている。なお、絶縁性基材41とステージ71との間に、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や離型処理されたガラス等のシートを介在させてもよい。
【0058】
次いで、ステージ71やプレスヘッド72に埋設されたヒータ(不図示)によって樹脂フィルム61やインプリントモールド10を加熱した後、図7のステップS112において、減圧下でプレスヘッド72をステージ71に向かって下降させることで、図8(b)に示すように、インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付ける。なお、本実施形態では、樹脂フィルム61及びインプリントモールド10の双方を加熱しているが、特にこれに限定されず、少なくとも一方を加熱すればよい。
【0059】
インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付けると、同図に示すように、インプリントモールド10の表面形状(突起部12及び凸部15の形状)が樹脂フィルム61に転写されて、絶縁性基材41が形成される。この絶縁性基材41は、上述のように、インプリントモールド10の突起部12及び凸部15に対応する貫通孔411及び溝部414を有している。
【0060】
上述のように、突起部12の高さh1は、絶縁性基材41の厚さt0よりも若干低く設定されているので(h1<t0)、図8(b)に示すように、このステップS112においてインプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付けた状態において、貫通孔411は絶縁性基材41を完全には貫通しておらず、当該貫通孔411の底部に残膜411aが残っている。
【0061】
例えば、厚さ25[μm]の液晶ポリマ(LCP)を樹脂フィルム61として用い、インプリントモールド10の突起部12の高さh1を24[μm]とし、ステージ71及びプレスヘッド72を290[℃]まで加熱して、0.25[MPa]の圧力でインプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し当てた場合、最大で0.3[μm]程度の残膜411aが貫通孔411の底部に残る。
【0062】
次いで、図7のステップS113において、図8(c)に示すように、絶縁性基材41を所定温度(例えば60℃程度)まで冷却した後に、プレスヘッド72をステージ71から上昇させることで、絶縁性基材41をインプリントモールド10から取り外す。
【0063】
この際、本実施形態では、インプリントモールドの突起部12の先端面141に親油性膜16が形成されているので、図11に示すように、当該親油性膜16を介して先端面141と残膜411aとが密着し、絶縁性基材41とステージ71との密着力や残膜411aの端裂強度よりも、突起部12の先端面141と残膜411aとの密着力の方が大きくなっている。このため、ステップS113において、インプリントモールド10を離型する際に、突起部12と共に当該残膜411aを絶縁性基材41から引き剥がすことができるので、貫通孔411を高精度に形成することができる。なお、端裂強度とは、フィルム等の端部に生じる欠損や破れに対する強度をいう。
【0064】
一方、突起部12の先端面141を除いてインプリントモールド10の表面には離型膜17が形成されているので、絶縁性基材41とステージ71とが密着したままで、インプリントモールド10が絶縁性基材41から離れる。
【0065】
なお、特に限定されないが、インプリントモールド10の突起部12の先端面141に付着した残膜411aは、離型の後に、例えば、エチレングリコール等によって除去される。
【0066】
次いで、図7のステップS120において、図9(a)に示すように、絶縁性基材41の表面に、無電解めっきによって給電層62を形成する。この給電層62は、例えば、銅(Cu)やニッケル(Ni)等から構成されており、0.2[μm]程度の厚さを有している。なお、無電解めっきに代えて、DPP(Direct Plating Process)、スパッタリング、真空蒸着、CVD等によって給電層を形成してもよく、給電層62を、例えばカーボンやパラジウム等で構成してもよい。
【0067】
次いで、図7のステップS130において、図9(b)に示すように、ステップS120で形成した給電層62を利用して、絶縁性基材41の貫通孔411及び溝部414内に、電解めっきによって銅(Cu)やニッケル(Ni)を充填してめっき層63を形成する。
【0068】
次いで、図7のステップS140において、図9(c)に示すように、絶縁性基材41の上面415が露出するまで、めっき層63をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって研磨して平坦化する。これにより、第1のプリント配線板40のバイアホール42や上側配線パターン45が形成される。なお、めっき層63の上面をエッチングすることで平坦化してもよい。
【0069】
次いで、図7のステップS150において、図10(a)に示すように、サブトラクティブ法によって下側配線パターン46を形成することで、第1のプリント配線板40が完成する。具体的には、めっき層63の下面に下側配線パターン46に対応したレジストパターン64を形成し、めっき層63において当該レジストパターン64から露出している部分をエッチングした後に、レジストパターン64を除去することで、下側配線パターン46が形成される。
【0070】
なお、下側配線パターン46をセミアディティブ法によって形成してもよい。具体的には、特に図示しないが、ステップS120で形成した給電層62の上に下側配線パターン46に対応したレジストパターンを形成し、ステップS130での電解めっきによって、下側配線パターン46を形成し、当該レジストパターンを除去した後に、給電層62の不要な部分をエッチングによって除去する。
【0071】
次いで、図7のステップS200において、特に図示しないが、上述したステップS100と同様の要領で、第2のプリント配線板50を形成する。すなわち、絶縁性基材51を熱インプリント法によって形成し、無電解めっきによって給電層を形成した後に、バイアホール52と配線パターン55を電解めっきによって形成し、めっき層を研磨して平坦化することで、第2のプリント配線板50を形成する。なお、第2のプリント配線板50の下面は、第1のプリント配線板40の上に積層されるため、めっき層が除去されており、配線パターンが形成されていない。
【0072】
次いで、図7のステップS300において、図10(b)に示すように、第1のプリント配線板40の上に第2のプリント配線板50を積層して、積層プレス装置80によって一括してプレスすることで、多層プリント配線板30が完成する。
【0073】
以上のように、本実施形態では、インプリントモールド10の突起部12の先端面141に親油性膜16が形成されているので、絶縁性基材41の貫通孔411の底部に残った残膜411aに突起部12が密着する。このため、離型の際に、突起部12と共に当該残膜411aを絶縁性基材41から引き剥がすことができるので、貫通孔411を高精度に形成することができる。
【0074】
また、本実施形態では、インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し当てた際に、突起部12が樹脂フィルム61を貫通せずステージ71に当接しないので、突起部12の損傷を防止することもできる。
【0075】
なお、本実施形態における図2のステップS19〜S22が本発明における第1の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS110が本発明における第2の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS120及びS130が本発明における第3の工程の一例に相当する。
【0076】
また、本実施形態における樹脂フィルム61が本発明における被成形体の一例に相当し、本実施形態における絶縁性基材41が本発明における基材の一例に相当し、本実施形態における貫通孔411が本発明における貫通孔の一例に相当する。
【0077】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0078】
10…インプリントモールド
11…ベース
12…突起部
13…台座部
14…柱部
141…先端面
15…凸部
16…親油性膜
17…離型膜
30…多層プリント配線板
40…第1のプリント配線板
41…絶縁性基材
411…貫通孔
411a…残膜
414…溝部
42…バイアホール
45,46…配線パターン
50…第2のプリント配線板
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ナノインプリント法に用いられるインプリントモールド、及びそのインプリントモールドを用いたプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱インプリント法において、熱可塑性樹脂と下型との間に保護シート(犠牲層)を介在させて、突起を有する金型で熱可塑性樹脂をスタンピングすることで、突起が下型と接触するのを防止しつつ、熱可塑性樹脂に貫通孔を形成する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−7712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、突起の押圧に伴って保護シートが引き寄せられて比較的広い範囲で変形するので、熱可塑性樹脂もこの保護シートの変形に追従することで伸長したり破損したりする場合がある。このため、貫通孔を高精度に形成することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、貫通孔を高精度に形成することが可能なインプリントモールド、及びプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係るインプリントモールドは、支持部と、前記支持部から突出した突起部と、前記突起部の先端面に形成された親油性膜と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
[2]上記発明において、前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていてもよい。
【0008】
[3]また、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、インプリントモールドの突起部の先端面に親油性膜を形成する第1の工程と、前記インプリントモールドを被成形体に押し付けて、貫通孔を有する基材を形成する第2の工程と、前記貫通孔に導体を充填する第3の工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
[4]上記発明において、前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インプリントモールドの突起部の先端面に親油性膜が形成されているので、貫通孔の底部に残った残膜が突起部に密着する。そのため、離型の際に突起部と共に当該残膜を絶縁性基材から引き剥がすことができ、貫通孔を高精度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドを示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示すフローチャートである。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、図2の各ステップを示す図である(その1)。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、図2の各ステップを示す図である(その2)。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、図2の各ステップを示す図である(その3)。
【図6】図6は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、図7の各ステップを示す図である(その1)。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、図7の各ステップを示す図である(その2)。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、図7の各ステップを示す図である(その3)。
【図11】図11は、図8(c)のXI部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
先ず、本実施形態においてプリント配線板の製造に使用されるインプリントモールド10の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は本実施形態におけるインプリントモールドの断面図である。
【0014】
本実施形態におけるインプリントモールド10は、例えば、シリコン(Si)から構成される熱インプリント用の金型である。このインプリントモールド10は、図1に示すように、ベース11と、突起部12と、凸部15と、を備えている。
【0015】
なお、インプリントモールド10を、シリコン(Si)に代えて、石英(SiO2)、シリコンカーバイト(SiC)、グラッシーカーボン(GC)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)等で構成してもよい。
【0016】
突起部12は、ベース11の上面111から上方に向かって突出しており、台座部13と柱部14とを有している。台座部13は、ベース11の上面111に設けられている。そして、柱部14は、この台座部13の上面131から上方に向かって突出している。
【0017】
この突起部12は、プリント配線板40のバイアホール42(図6参照)に対応するように配置されており、この突起部12によってバイアホール42を形成するための貫通孔411(図6参照)が形成される。この突起部12の台座部13によって、バイアホール42のランド部43に対応する貫通孔411の大径部412(図6参照)が絶縁性基材41に形成される。また、突起部12の柱部14によって、バイアホール42の貫通部44に対応する貫通孔411の小径部413(図6参照)が絶縁性基材41に形成される。
【0018】
この突起部12の高さh1は、凸部15の高さh2よりも高くなっており(h1>h2)、突起部12の柱部14の先端面141がインプリントモールド10において最も高くなっている。特に限定されないが、一例を挙げれば、突起部12の高さh1が24[μm](=台座部13の高さ:6[μm]+柱部14の高さ:18[μm])であるのに対し、凸部15の高さh2は6[μm]となっている。
【0019】
また、インプリントモールド10を用いて熱インプリント法によって絶縁性基材41に貫通孔411を形成した際に、当該貫通孔411の底部に残膜411a(図8(b)参照)が残るように、突起部12の高さh1は、絶縁性基材41の厚さt0(図6参照)よりも若干低くなっている(h1<t0)。特に限定されないが、一例を挙げれば、上記のように突起部12の高さh1が24[μm]であるのに対し、絶縁性基材41の厚さt0は25[μm]となっている。
【0020】
凸部15は、上述の突起部12とは独立して、ベース11の上面111上に設けられている。この凸部15も、突起部12と同様に、ベース11の上面11から上方に向かって突出している。この凸部15は、プリント配線板40の配線パターン45(図6参照)に対応するように配置されており、この凸部15によって、配線パターン45を形成するための溝部414(図6参照)が、絶縁性基材41に形成される。
【0021】
なお、バイアホール42に対応する突起部12は、平面視において円形、矩形、或いは多角形等となっているのに対し、配線パターン45に対応する凸部15は、平面視においてベース11上に線状に延在している。また、図1に示すインプリントモールド10における突起部12や凸部15の配置は一例に過ぎず、後述するプリント配線板40のバイアホール42や配線パターン45の配置に応じて決定される。
【0022】
さらに、本実施形態では、この突起部12の柱部14の先端面141に親油性膜16が形成されていると共に、インプリントモールド10においてこの先端面141を除く全ての表面に離型膜17が形成されている。この親油性膜16は、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS,C6H19NSi2)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS,SiCl3C18H37)等から構成されている。一方、離型膜17としては、例えば、フッ素系単分子膜等を例示することができる。
【0023】
このように、本実施形態では、インプリントモールド10において、絶縁性基材41に貫通孔411を形成する突起部12の先端面141に、親油性膜16を形成する。これにより、後述するように、親油性膜16を介して、突起部12の先端面141と貫通孔411の残膜411aとの密着性が向上し、離型の際に突起部12と共に当該残膜411aを絶縁性基材41から引き剥がすことができるので、貫通孔411を高精度に形成することができる。
【0024】
なお、本実施形態におけるベース11が本発明における支持部の一例に相当し、本実施形態における突起部12が本発明における突起部の一例に相当し、本実施形態における親油性膜16が本発明における親油性膜の一例に相当する。
【0025】
次に、以上に説明したインプリントモールド10の製造方法について、図2〜図5を参照しながら説明する。
【0026】
図2は本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示すフローチャート、図3(a)〜図5(d)は図2の各ステップを示す図である。
【0027】
先ず、図2のステップS11において、図3(a)に示すように、シリコン基板21上に第1のマスク層22を形成する。本実施形態における第1のマスク層22は、シリコン酸化膜(SiO2)から構成されており、例えば、ウェット酸化、ドライ酸化、或いはパイロジェニック酸化によって形成される。
【0028】
なお、第1のマスク層22は、シリコン基板21をエッチングする際(後述のステップS13)に選択比を確保できる材料で構成されていれば特に限定されない。例えば、シリコン酸化膜に代えて、シリコン窒化膜(Si3N4)、金属膜、レジスト層等を、第1のマスク層22として用いてもよい。また、シリコン基板21に代えて、石英(SiO2)、シリコンカーバイト(SiC)、グラッシーカーボン(GC)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)等で構成される基板を用いてもよい。
【0029】
次いで、ステップS12において、図3(b)に示すように、この第1のマスク層22に対してパターニングを行う。具体的には、先ず、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィによって第1のマスク層22上にレジスト層(不図示)を形成し、次いで、バッファードフッ酸(BHF:Buffered Hydrogen Fluoride)を用いて、第1のマスク層22をウェットエッチングした後に、硫酸過水等を用いて当該レジスト層を除去する。なお、フォトリソグラフィに代えて、電子線描画装置やレーザ描画装置を用いてパターニングを行ってもよい。
【0030】
次いで、ステップS13において、図3(c)に示すように、フッ素含有ガスを用いて、シリコン基板21に対してドライエッチング(D−RIE)を行い、次いで、ステップS14において、図3(d)に示すように、BHFを用いたウェットエッチングによって第1のマスク層22をシリコン基板21上から除去する。これにより、インプリントモールド10の突起部12の柱部14が形成される。
【0031】
次いで、ステップS15において、図4(a)に示すように、シリコン基板21の表面に第2のマスク層23を形成する。この第2のマスク層23は、上述の第1のマスク層22と同様に、本実施形態では、シリコン酸化膜(SiO2)から構成されている。
【0032】
次いで、ステップS16において、図4(b)に示すように、第2のマスク層23に対してパターニングを行う。具体的には、上述のステップS12と同様に、第2のマスク層23上にレジスト層を形成し、次いで、第2のマスク層23をウェットエッチングした後に、当該レジスト層を除去する。
【0033】
次いで、ステップS17において、図4(c)に示すように、上述のステップS13と同様の要領で、シリコン基板21に対してドライエッチングを行う。次いで、ステップS18において、図4(d)に示すように、上述のステップS14と同様の要領で、第2のマスク層23をエッチングによって除去する。これにより、インプリントモールド10の突起部12の台座部13と凸部15とが形成される。
【0034】
なお、図2のステップS11〜S14や同図のステップS15〜S18のようなマスク層形成、フォトリソグラフィ、及びエッチングのステップを複数回繰り返すことで、任意の段数の突起部を形成することができる。
【0035】
次いで、ステップS19において、図5(a)に示すように、突起部12の柱部14の先端面141に、例えば、樹脂材料等から構成される保護フィルム24を貼り付けて、保護フィルム24によって先端面141を覆う。次いで、ステップS20において、図5(b)に示すように、インプリントモールド10の全面に離型剤をディッピングや蒸気によって付着させることで、離型膜17を形成する。
【0036】
次いで、ステップS21において、図5(c)に示すように、突起部12の先端面141を覆っていた保護フィルム24を剥離する。次いで、ステップS22において、インプリントモールド10の全面に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS,C6H19NSi2)をディッピングや蒸気によって付着させる。
【0037】
この際、インプリントモールド10の表面には、保護フィルム24を剥離した領域を除いて、フッ素系単分子膜からなる離型膜17が形成されているため、HMDSが付着せず、インプリントモールド10の表面において保護フィルム24を剥離した領域(すなわち、インプリントモールド10の突起部12の先端面141)のみに親油性膜16が形成され、インプリントモールド10が完成する。
【0038】
なお、ステップS22において、HMDSに代えて、オクタデシルトリクロロシラン(OTS,SiCl3C18H37)をインプリントモールド10の表面に付着させてもよい。
【0039】
また、インプリントモールド10において突起部12の先端面141のみ離型膜17を除去する方法としては、以下のような方法であってもよい。
【0040】
すなわち、ステップS19を省略して、ステップS20においてインプリントモールド10の全面に離型膜17を形成した後、当該突起部12の先端面141のみに、例えば10[Pa]以下の減圧下で、波長172[nm]のキセノンエキシマランプを3[J/cm2]以上照射することで、突起部12の先端面141から離型膜17を除去することができる。
【0041】
或いは、ステップS14及びS19を省略して、ステップS20において離型膜17を形成した後に、BHFを用いたウェットエッチングによって、第1のマスク層22と共に離型膜17を除去してもよい。
【0042】
また、上述の製法では、離型膜17を形成した後に親油性膜16を形成したが、特にこれに限定されず、親油性膜16を形成した後に離型膜17を形成してもよい。具体的には、インプリントモールド10の全面にHDMSを付着させ、突起部12の先端面141を除いて紫外線照射して変性させた後に、インプリントモールド10の全面に離型処理を行ってもよい。
【0043】
次に、上記のインプリントモールド10を用いて製造されるプリント配線板30の構成について、図6を参照しながら説明する。図6は本実施形態における多層プリント配線板30を示す断面図である。
【0044】
本実施形態におけるプリント配線板30は、図6に示すように、複数の(本例では2枚)のプリント配線板40,50を積層することで構成される多層フレキシブルプリント配線板である。なお、以下に説明する多層プリント配線板30は一例に過ぎず、例えば、多層プリント配線板を構成するプリント配線板の枚数、配線パターンやバイアホールの配置等は、特にこれに限定されない。
【0045】
第1のプリント配線板40は、絶縁性基材41と、バイアホール42と、配線パターン45,46と、を有している。第2のプリント配線板50も、絶縁性基材51と、バイアホール52と、配線パターン55と、を有しており、下側配線パターン46が形成されていない点を除いて、第1のプリント配線板40と同様の構成である。なお、図6に示す例では、プリント配線板40,50におけるバイアホールや配線パターンの配置が同一となっているが、特にこれに限定されず、プリント配線板40,50の間でバイアホールや配線パターンの配置を異ならせてもよい。
【0046】
以下に、第1のプリント配線板40を例にとって、多層プリント配線板30の各層の構成について説明する。
【0047】
絶縁性基材41は、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性樹脂材料から構成されており、電気絶縁性を有している。図6に示すように、この絶縁性基材41には、後述する熱インプリント法によって、バイアホール42に対応する貫通孔411や、配線パターン45に対応する溝部414が一体的に形成されている。この貫通孔411は、比較的大きな内径を有する大径部412を上部に有していると共に、大径部412よりも小さな内径を有する小径部413を下部に有している。
【0048】
本実施形態におけるバイアホール42は、ランド部43を上部に有すると共に、貫通部44を下部に有している。ランド部43は、絶縁性基材41の大径部412内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されている。このランド部43は、絶縁性基材41の上面415に埋設されていると共に、ランド部43の上面が絶縁性基材41から露出している。
【0049】
貫通部44も、絶縁性基材41の小径部413内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されており、ランド部43と貫通部44とは一体的に形成されている。この貫通部44は、ランド部43から絶縁性基材41の下面416まで絶縁性基材41を貫通している。
【0050】
上側配線パターン45も、絶縁性基材41の線状の溝部414内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されている。この配線パターン45は、ランド部43と同様に、絶縁性基材41の上面415に埋設されていると共に、その上面が絶縁性基材41の上面415から露出している。特に図示しないが、この配線パターン45は、バイアホール42のランド部43と繋がっている。
【0051】
一方、下側配線パターン46は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法によって、第1の絶縁性基板41の下面416上に形成されている。
【0052】
第1のプリント配線板40と第2のプリント配線板50とは相互に積層されており、第1のプリント配線板40の上側配線パターン45と、第2のプリント配線板50の配線パターン55とは、第2のプリント配線板50のバイアホール52を介して電気的に接続されている。また、第1のプリント配線板40において、上側配線パターン45は、バイアホール42を介して下側配線パターン46に電気的に接続されている。
【0053】
次に、以上に説明した多層プリント配線板30の製造方法について、図7〜図11を参照しながら説明する。
【0054】
図7は本実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャート、図8(a)〜図10(b)は図7の各ステップを示す図、図11は図8(c)のXI部の拡大図である。
【0055】
本実施形態では、図7に示すように、ステップS100,S200において第1及び第2のプリント配線板40,50を個別に形成した後に、ステップS300で第1のプリント配線板40と第2のプリント配線板50を相互に貼り合わせることで、多層プリント配線板30を製造する。
【0056】
第1のプリント配線板40を形成する工程S100では、先ず、ステップS110において、熱インプリント法によって、第1のプリント配線板40の絶縁性基材41を形成する。このステップS110は、同図に示すように、3つの工程S111〜S113から構成されている。
【0057】
図7のステップS111において、図8(a)に示すように、インプリント装置のステージ(下型)71の上に、絶縁性基材41を形成することとなる樹脂フィルム61を載置する。同図に示すように、インプリント装置のプレスヘッド72には、上述したインプリントモールド10が固定されている。なお、絶縁性基材41とステージ71との間に、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や離型処理されたガラス等のシートを介在させてもよい。
【0058】
次いで、ステージ71やプレスヘッド72に埋設されたヒータ(不図示)によって樹脂フィルム61やインプリントモールド10を加熱した後、図7のステップS112において、減圧下でプレスヘッド72をステージ71に向かって下降させることで、図8(b)に示すように、インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付ける。なお、本実施形態では、樹脂フィルム61及びインプリントモールド10の双方を加熱しているが、特にこれに限定されず、少なくとも一方を加熱すればよい。
【0059】
インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付けると、同図に示すように、インプリントモールド10の表面形状(突起部12及び凸部15の形状)が樹脂フィルム61に転写されて、絶縁性基材41が形成される。この絶縁性基材41は、上述のように、インプリントモールド10の突起部12及び凸部15に対応する貫通孔411及び溝部414を有している。
【0060】
上述のように、突起部12の高さh1は、絶縁性基材41の厚さt0よりも若干低く設定されているので(h1<t0)、図8(b)に示すように、このステップS112においてインプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付けた状態において、貫通孔411は絶縁性基材41を完全には貫通しておらず、当該貫通孔411の底部に残膜411aが残っている。
【0061】
例えば、厚さ25[μm]の液晶ポリマ(LCP)を樹脂フィルム61として用い、インプリントモールド10の突起部12の高さh1を24[μm]とし、ステージ71及びプレスヘッド72を290[℃]まで加熱して、0.25[MPa]の圧力でインプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し当てた場合、最大で0.3[μm]程度の残膜411aが貫通孔411の底部に残る。
【0062】
次いで、図7のステップS113において、図8(c)に示すように、絶縁性基材41を所定温度(例えば60℃程度)まで冷却した後に、プレスヘッド72をステージ71から上昇させることで、絶縁性基材41をインプリントモールド10から取り外す。
【0063】
この際、本実施形態では、インプリントモールドの突起部12の先端面141に親油性膜16が形成されているので、図11に示すように、当該親油性膜16を介して先端面141と残膜411aとが密着し、絶縁性基材41とステージ71との密着力や残膜411aの端裂強度よりも、突起部12の先端面141と残膜411aとの密着力の方が大きくなっている。このため、ステップS113において、インプリントモールド10を離型する際に、突起部12と共に当該残膜411aを絶縁性基材41から引き剥がすことができるので、貫通孔411を高精度に形成することができる。なお、端裂強度とは、フィルム等の端部に生じる欠損や破れに対する強度をいう。
【0064】
一方、突起部12の先端面141を除いてインプリントモールド10の表面には離型膜17が形成されているので、絶縁性基材41とステージ71とが密着したままで、インプリントモールド10が絶縁性基材41から離れる。
【0065】
なお、特に限定されないが、インプリントモールド10の突起部12の先端面141に付着した残膜411aは、離型の後に、例えば、エチレングリコール等によって除去される。
【0066】
次いで、図7のステップS120において、図9(a)に示すように、絶縁性基材41の表面に、無電解めっきによって給電層62を形成する。この給電層62は、例えば、銅(Cu)やニッケル(Ni)等から構成されており、0.2[μm]程度の厚さを有している。なお、無電解めっきに代えて、DPP(Direct Plating Process)、スパッタリング、真空蒸着、CVD等によって給電層を形成してもよく、給電層62を、例えばカーボンやパラジウム等で構成してもよい。
【0067】
次いで、図7のステップS130において、図9(b)に示すように、ステップS120で形成した給電層62を利用して、絶縁性基材41の貫通孔411及び溝部414内に、電解めっきによって銅(Cu)やニッケル(Ni)を充填してめっき層63を形成する。
【0068】
次いで、図7のステップS140において、図9(c)に示すように、絶縁性基材41の上面415が露出するまで、めっき層63をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって研磨して平坦化する。これにより、第1のプリント配線板40のバイアホール42や上側配線パターン45が形成される。なお、めっき層63の上面をエッチングすることで平坦化してもよい。
【0069】
次いで、図7のステップS150において、図10(a)に示すように、サブトラクティブ法によって下側配線パターン46を形成することで、第1のプリント配線板40が完成する。具体的には、めっき層63の下面に下側配線パターン46に対応したレジストパターン64を形成し、めっき層63において当該レジストパターン64から露出している部分をエッチングした後に、レジストパターン64を除去することで、下側配線パターン46が形成される。
【0070】
なお、下側配線パターン46をセミアディティブ法によって形成してもよい。具体的には、特に図示しないが、ステップS120で形成した給電層62の上に下側配線パターン46に対応したレジストパターンを形成し、ステップS130での電解めっきによって、下側配線パターン46を形成し、当該レジストパターンを除去した後に、給電層62の不要な部分をエッチングによって除去する。
【0071】
次いで、図7のステップS200において、特に図示しないが、上述したステップS100と同様の要領で、第2のプリント配線板50を形成する。すなわち、絶縁性基材51を熱インプリント法によって形成し、無電解めっきによって給電層を形成した後に、バイアホール52と配線パターン55を電解めっきによって形成し、めっき層を研磨して平坦化することで、第2のプリント配線板50を形成する。なお、第2のプリント配線板50の下面は、第1のプリント配線板40の上に積層されるため、めっき層が除去されており、配線パターンが形成されていない。
【0072】
次いで、図7のステップS300において、図10(b)に示すように、第1のプリント配線板40の上に第2のプリント配線板50を積層して、積層プレス装置80によって一括してプレスすることで、多層プリント配線板30が完成する。
【0073】
以上のように、本実施形態では、インプリントモールド10の突起部12の先端面141に親油性膜16が形成されているので、絶縁性基材41の貫通孔411の底部に残った残膜411aに突起部12が密着する。このため、離型の際に、突起部12と共に当該残膜411aを絶縁性基材41から引き剥がすことができるので、貫通孔411を高精度に形成することができる。
【0074】
また、本実施形態では、インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し当てた際に、突起部12が樹脂フィルム61を貫通せずステージ71に当接しないので、突起部12の損傷を防止することもできる。
【0075】
なお、本実施形態における図2のステップS19〜S22が本発明における第1の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS110が本発明における第2の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS120及びS130が本発明における第3の工程の一例に相当する。
【0076】
また、本実施形態における樹脂フィルム61が本発明における被成形体の一例に相当し、本実施形態における絶縁性基材41が本発明における基材の一例に相当し、本実施形態における貫通孔411が本発明における貫通孔の一例に相当する。
【0077】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0078】
10…インプリントモールド
11…ベース
12…突起部
13…台座部
14…柱部
141…先端面
15…凸部
16…親油性膜
17…離型膜
30…多層プリント配線板
40…第1のプリント配線板
41…絶縁性基材
411…貫通孔
411a…残膜
414…溝部
42…バイアホール
45,46…配線パターン
50…第2のプリント配線板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
前記支持部から突出した突起部と、
前記突起部の先端面に形成された親油性膜と、を備えたことを特徴とするインプリントモールド。
【請求項2】
請求項1に記載のインプリントモールドであって、
前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていることを特徴とするインプリントモールド。
【請求項3】
プリント配線板の製造方法であって、
インプリントモールドの突起部の先端面に親油性膜を形成する第1の工程と、
前記インプリントモールドを被成形体に押し付けて、貫通孔を有する基材を形成する第2の工程と、
前記貫通孔に導体を充填する第3の工程と、を備えたことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項1】
支持部と、
前記支持部から突出した突起部と、
前記突起部の先端面に形成された親油性膜と、を備えたことを特徴とするインプリントモールド。
【請求項2】
請求項1に記載のインプリントモールドであって、
前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていることを特徴とするインプリントモールド。
【請求項3】
プリント配線板の製造方法であって、
インプリントモールドの突起部の先端面に親油性膜を形成する第1の工程と、
前記インプリントモールドを被成形体に押し付けて、貫通孔を有する基材を形成する第2の工程と、
前記貫通孔に導体を充填する第3の工程と、を備えたことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記親油性膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はオクタデシルトリクロロシラン(OTS)から構成されていることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−43415(P2013−43415A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184363(P2011−184363)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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