説明

インホイールモータユニット

【課題】車輪を個々の電動モータにより駆動するインホイールモータユニット内の減速機が、車輪からの横力によってもギヤの片当たりを生ずることのないようにする。
【解決手段】ロータ7から入力軸8への回転は、遊星歯車組式減速機5を経て出力軸9、ホイールハブ22およびホイールボルト25に達し、車輪に至る。入出力軸8,9を、入力軸中心孔8a、これに貫入させた出力軸中心ロッド部9a、および、出力軸内端面の環状窪み9bにより、相互に同軸に貫入させ合って径方向オーバーラップ領域を設定し、当該領域の軸線方向2箇所のベアリング15,16で軸8,9を軸受することにより、軸8,9を軸ユニットとなし、この軸ユニットを、軸線方向2箇所のベアリング17,18でケース3に回転自在に支承する。車輪への横力で軸9の倒れが発生したとき、軸8も軸9に伴われて傾き、軸8,9間の減速機5を成すギヤの片当たりを生ずることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のうち、車輪を個々の電動モータにより駆動して走行可能な電気自動車に関し、特に、車輪ごとの駆動ユニットであるインホイールモータユニットの耐久性に関した改良提案に係わる。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータユニットとしては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
このインホイールモータユニットは、同軸に対向した入力軸および出力軸を有する遊星歯車組式の減速機を具え、かかる減速機の軸線方向一方側において上記入力軸に電動モータを結合し、軸線方向他方側において上記出力軸に車輪を結合したものである。
【0003】
かかるインホイールモータユニットを駆動車輪ごとに具える電気自動車にあっては、電動モータを駆動するとき、その回転が減速機による減速下で車輪に伝達され、車両を走行させることができる。
【0004】
ところで、減速機の同軸対向配置した入力軸および出力軸を回転自在に支承するに際しては、先ず出力軸を軸線方向に離間した2箇所で、インホイールモータユニットのケースに軸受し、他方で入力軸は、出力軸側の端部を出力軸の突き合わせ端部内に軸受し、入力軸の反対側端部をインホイールモータユニットのケースに軸受する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−099106号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる減速機入出力軸の支持構造にあっては、入力軸の出力軸側端部を出力軸の突き合わせ端部内に軸受し、入力軸の反対側端部をインホイールモータユニットケースに軸受するため、以下のような問題が発生する。
【0007】
つまり、出力軸が軸線方向に離間した2箇所でインホイールモータユニットケースに軸受されているため、車輪接地面から車輪への横力(車幅方向荷重入力)による出力軸の倒れに対する抗力、つまり出力軸の倒れ剛性が大きくなり、横力による出力軸の倒れ量を抑制し得るものの、
車両の旋回走行時などにおいては路面から車輪への横力が1トンを超える大きなものになることがあり、これによる出力軸の倒れ量が無視できないほど大きなものとなる。
【0008】
ところで、出力軸は、入力軸側端部を入力軸の突き合わせ端部内に軸受され、反対側端部をインホイールモータユニットケースに軸受されていたため、上記出力軸の倒れは、入力軸と関わりなく単独で発生する。
よって上記した出力軸の倒れは、入力軸との間に相対的な傾きを惹起し、これら入出力軸間に介在させた遊星歯車組式減速機を成すギヤ相互間の噛み合い部においてギヤの片当たりが発生し、減速機の作用に支障が及ぶだけでなく、その耐久性を低下させるという懸念があった。
【0009】
本発明は、上記の理由により出力軸の倒れ量を無視できる程度まで抑制するのが困難であるとの事実認識から発想の転換を図り、出力軸の倒れによっても入力軸との間における相対的な傾きが問題となるほど大きくなることのないようにし、これにより上記の問題を解消し得るようにしたインホイールモータユニットを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明によるインホイールモータユニットは、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となるインホイールモータユニットを説明するに、これは、
同軸に対向した入力軸および出力軸を有する変速機を具え、該変速機の軸線方向一方側において前記入力軸に電動モータを結合し、前記変速機の軸線方向他方側において前記出力軸に車輪を結合したものである。
【0011】
本発明は、かかるインホイールモータユニットに対し、以下の改良を施した構成に特徴づけられる。
先ず、前記入力軸および出力軸を相互に同軸に貫入させ合って径方向オーバーラップ領域を設定すると共に、該径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した少なくとも2箇所で前記入出力軸を相対回転可能に軸受することにより、これら入出力軸を1個の軸ユニットとなす。
そしてかかる軸ユニットを、軸線方向に離間した少なくとも2箇所で、インホイールモータユニットのケースに回転自在に支承する。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明のインホイールモータユニットによれば、変速機の同軸対向配置された入出力軸を、上記の特異な構成により1個の軸ユニットとなし、この軸ユニットを、軸線方向に離間した少なくとも2箇所で、インホイールモータユニットケースに回転自在に支承したため、
車輪への横力で出力軸の倒れが発生したとき、入力軸も出力軸に伴われて傾くこととなり、これら出力軸および入力軸間における相対的な傾きが理論上は殆ど生じない。
【0013】
従って、これら出力軸および入力軸間に介在させた変速機を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりが発生せず、かかるギヤの片当たりで変速機の作用に支障が及んだり、その耐久性が低下するという前記の懸念を払拭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【図2】本発明の第2実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【図3】本発明の第3実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【図4】本発明の第4実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【図5】図4に示す第4実施例になるインホイールモータユニットの減速機入出力軸に関した支持構造の模式図である。
【図6】本発明の第5実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【図7】本発明の第6実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【図8】本発明の第7実施例になるインホイールモータユニットを示す半部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す第1実施例〜第7実施例に基づき順次、詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図である。
この図において、1は、インホイールモータユニットのケース本体、2は、該ケース本体1のリヤカバーをそれぞれ示し、
これらケース本体1およびリヤカバー2でインホイールモータユニットのケース3を構成する。
【0016】
図1に示す第1実施例のインホイールモータユニットは、ケース3内に電動モータ4および遊星歯車組式減速機5(以下、端に「減速機」と言う)を収納して構成する。
電動モータ4は、ケース本体1の内周に嵌合して固設した円環状のステータ6と、かかる円環状ステータ6の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配したロータ7とで構成する。
減速機5は本発明における変速機に相当するもので、同軸に対向させて配置した入力軸8および出力軸9と、サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し軸線方向へずらせて同心配置したリングギヤ12と、これらサンギヤ11およびリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14とにより構成する。
【0017】
入力軸8は、前記のサンギヤ11を一体成形して具え、この入力軸8をサンギヤ11からリヤカバー2に向かう後方へ延在させる。
出力軸9は、減速機5から反対方向(前方)に延在させて、ケース本体1の前端(図の右側)開口より突出させ、この突出箇所において出力軸9に後述のごとく車輪(図示せず)を結合する。
ケース本体1の前端開口内に前記のリングギヤ12を回転止め、且つ抜け止めして固設し、プラネタリピニオン13は、サンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、およびリングギヤ12に噛合する小径ギヤ部13bを一体に有した段付きピニオンとする。
【0018】
段付きプラネタリピニオン13は、3個一組として円周方向等間隔に配置し、この円周方向等間隔配置を保って段付きプラネタリピニオン13を共通なキャリア14により回転自在に支持する。
ここでキャリア14は、入力軸8に近い出力軸9の内端に設けてこれに一体化させ、減速機5の出力回転メンバとする。
【0019】
上記のごとくキャリア14を一体化させた出力軸9の内端面に、リヤカバー2へ向けて後方へ延在する中心ロッド部9aを一体成形する。
この出力軸中心ロッド部9aは入力軸8の中心孔8a内に貫入させて、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定する。
かようにして設定した径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間する2箇所で、ベアリング15,16により入出力軸8,9を相互に相対回転可能に軸受する。
かくして入出力軸8,9は、相対回転可能であるが、相互に一体化されて1個の軸ユニットとなり、この軸ユニットは同時にキャリア14および段付きプラネタリピニオン13をも一体的に具える。
【0020】
入出力軸間相互軸受部を成すベアリング15,16のうち、電動モータ側ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)は、出力軸9から遠い入力軸8の端部付近において出力軸中心ロッド部9aの外周と入力軸中心孔8aの内周との間に介在させ、また、
車輪側ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)は、出力軸中心ロッド部9aの基端を包囲するよう出力軸9の内端面に穿った環状窪み9bの外周と入力軸8の外周との間に介在させる。
かくしてベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)は、減速機5の車輪側軸線方向位置に配置されることとなる。
【0021】
上記のようにして一体化させた入出力軸8,9の軸ユニットをインホイールモータユニットケース3に対し回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した2箇所でベアリング17,18により当該支承を行う。
ケース3に対する軸ユニット支承部を成すベアリング17,18のうち、電動モータ側ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)は、ベアリング15と略同じ軸線方向位置においてリヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させ、また、
車輪側ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)は、ケース本体1の前端開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ケース本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させる。
【0022】
かくして、車輪側軸ユニット支承部を成すベアリング18、および、車輪側入出力軸間相互軸受部を成すベアリング16の軸線方向相対位置は、
後者のベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が、前者のベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)よりも減速機5に近い側に位置することとなる。
【0023】
ここで電動モータ4の結合要領を詳述するに、そのロータ7は、電動モータ結合部材23を介して入力軸8に結合し、この結合位置を、減速機5とベアリング15,17との間における軸線方向位置とする。
【0024】
次に、図示せざる車輪の出力軸9への結合要領を詳述する。
ホイールハブ22に同心に、ブレーキドラム24を一体結合して設け、これらホイールハブ22およびブレーキドラム24を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト25を植設する。
図示せざる車輪の取り付けに際しては、そのホイールディスクに穿ったボルト孔にホイールボルト25が貫通するようホイールディスクをブレーキドラム24の側面に密接させ、この状態でホイールボルト25にホイールナットを緊締螺合させることにより、出力軸9に対する車輪の取り付けを行う。
【0025】
<第1実施例の作用効果>
電動モータ4のステータ6に通電すると、これからの電磁力で電動モータ4のロータ7が回転され、この回転は電動モータ結合部材23および入力軸8を介して減速機5のサンギヤ11に伝達される。
これによりサンギヤ11は、大径ギヤ部13aを介して段付きプラネタリピニオン13を回転させるが、このときリングギヤ12が反力受けとして機能するため、段付きプラネタリピニオン13は小径ギヤ部13bがリングギヤ12に沿って転動するような遊星運動を行う。
かかる段付きプラネタリピニオン13の遊星運動はキャリア14を介して出力軸9に伝達され、出力軸9を入力軸8と同方向に回転させる。
【0026】
上記の伝動作用により減速機5は、電動モータ4から入力軸8への回転を、サンギヤ11の歯数およびリングギヤ12の歯数により決まる比で減速して出力軸9に伝達する。
出力軸9への回転は、これに結合したホイールハブ22およびホイールボルト25を介して図示せざる車輪に伝達され、車両を走行させることができる。
なお車両の制動に際しては、ブレーキドラム24の内周面をブレーキシュー26により摩擦制動させて所期の目的を達成し得る。
【0027】
ところで図1に示す第1実施例においては、入力軸8および出力軸9を、入力軸中心孔8a、出力軸中心ロッド部9a、および、出力軸9の内端面に穿った環状窪み9bにより、相互に同軸に貫入させ合って径方向オーバーラップ領域を設定すると共に、この径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所のベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)で入出力軸8,9を相対回転可能に軸受することにより、これら入出力軸8,9を1個の軸ユニットとなし、
この軸ユニットを、軸線方向に離間した2箇所のベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)で、インホイールモータユニットケース3に回転自在に支承したため、
車輪への横力で出力軸9の倒れが発生したとき、入力軸8も出力軸9に伴われて傾くこととなり、これら出力軸9および入力軸8間における相対的な傾きを理論上は殆ど生じなくし得る。
【0028】
従って、これら出力軸9および入力軸8間に介在させた減速機5を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりが発生せず、かかるギヤの片当たりで減速機5の作用に支障が及んだり、減速機5の耐久性が低下するという問題を解消することができる。
【0029】
なお本実施例においては上記オーバーラップ領域の設定に際し、入力軸中心孔8a内に出力軸中心ロッド部9aを貫入させて当該オーバーラップ領域を設定するようにしたため、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)と、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)との間の軸線方向距離、つまり、ケース3に対する出力軸9の支承スパンが大きくなって、出力軸9の倒れ剛性を高め得て上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0030】
また本実施例においては、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、入力軸8の電動モータ結合部に関し、減速機5と反対側の軸線方向位置に配置し、また、
ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を、減速機5に関し、入力軸8の電動モータ結合部と反対側の軸線方向位置に配置したため、以下の作用効果を奏し得る。
【0031】
つまりかかる本実施例の構成によれば、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)間の距離、つまり入出力軸8,9間の相互軸受スパンを長くし得ることとなり、また、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が、入力軸8の電動モータ結合部に関し、その軸線方向両側に配置されていることとも相まって、
入力軸8の倒れ剛性を向上させることができ、入出力軸8,9間の相対倒れ量が一層小さくなって、上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0032】
更に本実施例においては、軸ユニット8,9をケース3に支承するベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)のうち、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)は、出力軸9(ハブ22)をケース3に対し回転自在に支承するものとし、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)は、入力軸8をケース3に対し回転自在に支承するものとしたため、
入出力軸8,9が径方向オーバーラップ領域を設定すべく貫入し合っていても、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)およびベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)間の間隔、つまりケース3に対する軸ユニット8,9の支承スパンを短くすることができ、インホイールモータユニットを軸線方向に小型化することができる。
【0033】
<第1実施例の変形例>
上記した第1実施例においては、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の軸線方向位置を、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)の軸線方向位置よりも、減速機5に近い位置としたが、
環状窪み9bをもっと深くし、その分だけ、ここに侵入する入力軸8の先端を延長して、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の軸線方向位置を、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)の軸線方向位置よりも、減速機5から遠い位置にするようにベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を配置してもよい。
【0034】
この場合、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)の剛性により、これらを支点として傾斜する軸ユニット8,9の傾斜領域の外側にベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が位置することとなる。
このため、当該ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の軸線方向位置において生ずる入出力軸8,9の相対倒れ量を更に減ずることができて、前記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0035】
<第2実施例の構成>
図2は、本発明の第2実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図であり、図中、図1におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においても、インホイールモータユニットケース3内に電動モータ4および減速機5を収納してインホイールモータユニットを構成し、
これら電動モータ4および減速機5を、図1における第1実施例と同様に構成、配置する。
【0036】
また第1実施例の場合と同様、キャリア14を一体化させた出力軸9の内端面に、リヤカバー2へ向けて後方へ延在する中心ロッド部9aを一体成形し、
この出力軸中心ロッド部9aを入力軸8の中心孔8a内に貫入させると共に、入力軸8の先端を出力軸9の環状窪み9b内に侵入させて、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定する。
更に、当該径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所でベアリング15,16により入出力軸8,9を相互に相対回転可能に軸受し、これらにより、入出力軸8,9を相互に一体化された1個の軸ユニットとなすが、このユニット化に際し本実施例では特に以下の構成を採用する。
【0037】
つまり、出力軸中心ロッド部9aの先端を入力軸中心孔8aから突出させ、この出力軸中心ロッド部9aの先端突出部にローディングナット27を緊締、螺合させる。
かかるローディングナット27の緊締、螺合に際しては、その緊締力がベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)のインナレースに対し図2の右方向に作用するよう、また、
その反力が出力軸中心ロッド部9a、図1に前述したと同様配置のベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)、および入力軸8を介して、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)のアウタレースに作用するよう、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を配置する。
【0038】
かくして出力軸中心ロッド部9aの先端突出部に緊締、螺合させたローディングナット27は、入出力軸8,9に対し上記のように作用して、これら入出力軸8,9にスラストを付与するスラスト構造部の用をなし、
当該スラストによりベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)に軸線方向のプリロードを与える。
このため本実施例では、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)をそれぞれ、上記のスラストを支え得るアンギュラ型ベアリングまたはテーパローラベアリングとするのがよい。
本実施例において、上記以外は、図1におけると同様な構成とする。
【0039】
<第2実施例の作用効果>
上記した本実施例の構成によれば、第1実施例の前記した作用効果を奏し得るのに加え、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を介し相対回転可能にユニット化された入出力軸8,9の軸ユニットを、ローディングナット27による緊締力(スラスト)で、第1実施例の場合よりも更に頑丈な軸ユニットにすることができる。
【0040】
このため、旋回走行時などにおける車輪への横力で出力軸9の倒れが発生したとき、入力軸8が第1実施例の場合よりも更に確実に出力軸9に伴われて一緒に傾くこととなり、これら出力軸9および入力軸8間における相対的な傾きを理論上は殆ど生じなくし得る。
このため、減速機5を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりを一層確実に回避することができ、かかるギヤの片当たりで減速機5の作用に支障が及んだり、減速機5の耐久性が低下するという問題を更に確実に解消し得るようになる。
【0041】
<第3実施例の構成>
図3は、本発明の第3実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図であり、図中、図1,2におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においても、インホイールモータユニットケース3内に電動モータ4および減速機5を収納してインホイールモータユニットを構成し、
これら電動モータ4および減速機5を、図1,2における第1,2実施例と同様に構成、配置する。
【0042】
そして、キャリア14を一体化させた出力軸9の内端面に、リヤカバー2へ向けて後方へ延在する中心ロッド部9aを一体成形し、この出力軸中心ロッド部9aを入力軸8の中心孔8a内に貫入させると共に、キャリア14の外周縁および電動モータ結合部材23の内周部にそれぞれ径方向に重合する円筒部14a,23aを設けて、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定する。
また、当該径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所でベアリング15,16により入出力軸8,9を相互に相対回転可能に軸受し、これらにより、入出力軸8,9を相互に一体化された1個の軸ユニットとなすが、このユニット化に際し本実施例では特に以下の構成を採用する。
【0043】
つまり、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)は、キャリア14に設けた円筒部14aの内周と、電動モータ結合部材23に設けた円筒部23aの外周との間に介在させ、これによりベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を、入力軸8の電動モータ結合部と減速機5との間における軸線方向位置に配置する。
そして、図2に示した第2実施例と同様、出力軸中心ロッド部9aの先端を入力軸中心孔8aから突出させ、この出力軸中心ロッド部9aの先端突出部にローディングナット27を螺合させる。
【0044】
かかるローディングナット27の螺合に際し本実施例では、その緊締力がベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)のインナレースに対し図3の右方向に作用するよう、また、
その反力が出力軸中心ロッド部9a、キャリア14、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)、電動モータ結合部材23、および入力軸8を介してベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)のアウタレースに作用するよう、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を配置する。
【0045】
かくして出力軸中心ロッド部9aの先端突出部に螺合させたローディングナット27は、入出力軸8,9に対し上記のように作用して、これら入出力軸8,9にスラストを付与するスラスト構造部の用をなし、
当該スラストによりベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)に軸線方向のプリロードを与える。
このため本実施例でも、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)をそれぞれ、上記のスラストを支え得るアンギュラ型ベアリングまたはテーパローラベアリングとするのがよい。
本実施例において、上記以外は、図1,2におけると同様な構成とする。
【0046】
<第3実施例の作用効果>
上記した本実施例の構成によれば、第1,2実施例の前記した作用効果を奏し得るのに加え、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)が第2実施例と同様な軸線方向位置であるのに対し、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が、入力軸8の電動モータ結合部と減速機5との間の軸線方向位置にあって、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)に近いことから、その分だけ入力軸8の軸長を短縮させることができる。
【0047】
また、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を、減速機5の出力回転メンバであるキャリア14に設けた円筒部14aの内周と、電動モータ結合部材23に設けた円筒部23aの外周との間に介在させたため、
ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の直径が大きくなり、かように大径化されたベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)により出力軸9の傾斜を抑止することから、出力軸9の倒れ剛性が更に高まって入出力軸8,9間の相対倒れ量をより小さくすることができ、前記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0048】
なお、第3実施例におけるベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の大径化が可能な配置は、図1の第1実施例にも採用可能であり、
これによれば、第1実施例においても同様に出力軸9の倒れ剛性を更に高め得るのは言うまでもない。
【0049】
<第4実施例の構成>
図4は、本発明の第4実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図であり、図中、図1,2,3におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例は、基本的に図3に示す第3実施例と同様に構成するが、これに対し以下の変更を加えたものである。
【0050】
つまり、入力軸中心孔8aから突出した出力軸中心ロッド部9aの先端にローディングナット27を螺合させるに際し本実施例では、その緊締力がカラー28を介しベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)のインナレースに対して図3の右方向に作用するよう、また、
その反力が出力軸中心ロッド部9a、キャリア14、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)、電動モータ結合部材23、および入力軸8を介してベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)のアウタレースに作用するようになす。
【0051】
そして、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)をカラー28の外周と、リヤカバー2の中心開口内周面との間に介在させ、
これによりベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)が、軸ユニット8,9をケース3に回転自在に支承するに際し、カラー28を介して出力軸中心ロッド部9a(出力軸9)をリヤカバー2(ケース3)に支承するようになす。
【0052】
他方でベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)は第3実施例と同様に、ケース本体1の前端開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ケース本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させたものである。
よってベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)も、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)と同様、軸ユニット8,9をケース3に回転自在に支承するに際し、出力軸9をケース3に支承するものである。
【0053】
以上のことから明らかなように、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)は、出力軸9をその両端においてケース3に対し回転自在に支承し、
入力軸8は、これらベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)間においてベアリング15,16で出力軸9上に回転自在に軸受される。
本実施例において、上記以外は、図3に示した第3実施例におけると同様な構成とする。
【0054】
<第4実施例の作用効果>
上記した本実施例の構成によれば、第1〜3実施例の前記した各作用効果を奏し得るのに加え、以下の作用効果をも達成することができる。
つまり図5に模式的に示すように、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)が、出力軸9をその両端においてケース3に対し回転自在に支承するため、
入力軸8が、これらベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)間においてベアリング15,16で出力軸9上に回転自在に軸受されることとなる。
【0055】
よって、車輪への横力で出力軸9の倒れが発生したとき、入力軸8が出力軸9と一体的に傾くこととなり、これら出力軸9および入力軸8間における相対的な傾きを完全に無くすことができる。
ちなみに、入出力軸8,9の撓み剛性が十分あるとすれば、車輪への横力による変形は、ケース3の剛性分のみとなるが、この場合、入力軸8全体が出力軸9上に回転自在に支持されているため、出力軸9がケース3に対し傾いても入出力軸8,9間に相対的な傾きが発生することはない。
このため、これら出力軸9および入力軸8間に介在させた減速機5を成すサンギヤ11と段付きプラネタリピニオン13との間の相対傾き量を零にすることができる。
よって、減速機5を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりが発生することがなく、かかるギヤの片当たりで減速機5の作用に支障が及んだり、減速機5の耐久性が低下するという問題を確実に解消することができる。
【0056】
<第5実施例の構成>
図6は、本発明の第5実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図であり、図中、図1,2,3,4におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においても、インホイールモータユニットケース3内に電動モータ4および減速機5を収納してインホイールモータユニットを構成し、
これら電動モータ4および減速機5を、図1,2,3,4における各実施例と同様に構成、配置する。
【0057】
しかし本実施例においては、図1,2,3,4における各実施例と異なり、入力軸8に、キャリア14を貫通して車輪側へ向け前方へ延在する中心ロッド部8bを一体成形し、
この入力軸中心ロッド部8bを出力軸9の中心孔9c内に貫入させると共に、キャリア11の内周縁に円筒部14bを設けて、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定する。
また、当該径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所でベアリング15,16により入出力軸8,9を相互に相対回転可能に軸受することにより、入出力軸8,9を相互に一体化された1個の軸ユニットとなすが、
このユニット化に際し本実施例では特に、ベアリング15,16を以下のようにして配置する。
【0058】
つまり、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)は、キャリア14に設けた円筒部14bの内周と、入力軸8の外周面との間に介在させ、
これによりベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、入力軸8の電動モータ結合部と減速機5との間における軸線方向位置に配置する。
他方でベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)は、入力軸中心ロッド部8bの先端外周面と、出力軸9に設けた中心孔9cの内周面との間に介在させ、
これによりベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を、減速機5よりも車輪側の軸線方向位置に配置する。
【0059】
上記により一体化した入出力軸8,9の軸ユニットをインホイールモータユニットケース3に対し回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した図3と同様な2箇所でベアリング17,18により当該支承を行う。
ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)は、リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させる。
また、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)は、ケース本体1の前端開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ケース本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させる。
【0060】
なお本実施例においては、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を前記したごとく、減速機5よりも車輪側の軸線方向位置に配置するが、好ましくはベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)よりも、減速機5から遠い車輪側(外側)の軸線方向位置に配置する。
本実施例において、上記以外は、図3におけると同様な構成とする。
【0061】
<第5実施例の作用効果>
本実施例においては、入力軸8および出力軸9を、出力軸中心孔9c、入力軸中心ロッド部8b、および、キャリア14に設けた円筒部14bにより、相互に同軸に貫入させ合って径方向オーバーラップ領域を設定すると共に、この径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所のベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)で入出力軸8,9を相対回転可能に軸受することにより、これら入出力軸8,9を1個の軸ユニットとなし、
この軸ユニットを、軸線方向に離間した2箇所のベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)で、インホイールモータユニットケース3に回転自在に支承したため、
車輪への横力で出力軸9の倒れが発生したとき、入力軸8も出力軸9に伴われて傾くこととなり、これら出力軸9および入力軸8間における相対的な傾きを理論上は殆ど生じなくし得る。
【0062】
従って、これら出力軸9および入力軸8間に介在させた減速機5を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりが発生せず、かかるギヤの片当たりで減速機5の作用に支障が及んだり、減速機5の耐久性が低下するという問題を解消することができる。
【0063】
なお本実施例においては上記オーバーラップ領域の設定に際し、出力軸中心孔9c内に入力軸中心ロッド部8bを貫入させて当該オーバーラップ領域を設定するようにしたため、
入力軸8を小径化することができ、その分だけ、入力軸8に設けるサンギヤ11を小径にし得て、減速機5のギヤ比(減速比)大きくすることができる。
【0064】
また本実施例においては、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を前記したごとく、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)よりも、減速機5から遠い車輪側(外側)の軸線方向位置に配置したため、
ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)の剛性により、これらを支点として傾斜する軸ユニット8,9の傾斜領域の外側に、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が位置することとなる。
このため、当該ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の軸線方向位置において生ずる入出力軸8,9の相対倒れ量を更に減ずることができて、前記の作用効果をより顕著なものにすることができる。
【0065】
更に本実施例においては、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、入力軸8の電動モータ結合部と減速機5との間における軸線方向位置に配置し、
ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を、減速機5よりも車輪側の軸線方向位置に配置して、
これらベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を減速機5の軸線方向両側に位置させたため、
減速機5の構成ギヤが全てベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)間に両持ち梁型式に支持されることとなる。
このため本実施例においてはこの点でも、減速機5を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりを回避することができ、かかるギヤの片当たりで減速機5の作用に支障が及んだり、減速機5の耐久性が低下する事態の発生を確実に防止することができる。
【0066】
また本実施例においては、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、キャリア14に設けた円筒部14bの内周と、入力軸8の外周面との間に介在させて、入力軸8の電動モータ結合部と、減速機5の出力部材であるキャリア14との間に配置したため、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、入力軸中心ロッド部8bおよび出力軸中心孔9c間に介在させる場合よりも、大径にすることができ、
かかるベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)の大径化により、入出力軸8,9間の相互軸受強度を高めて、前記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0067】
更に、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)が、リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在されて、入力軸8をケース3に対し回転自在に支承し、また、
ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)が、ケース本体1の前端開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ケース本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在されて、出力軸9をケース3に対し回転自在に支承するため、
入出力軸8,9が径方向オーバーラップ領域を設定すべく貫入し合っていても、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)間の間隔、つまりケース3に対する軸ユニット8,9の支承スパンを短くすることができ、インホイールモータユニットを簡単な構成で軸線方向に小型化することができる。
【0068】
<第6実施例の構成>
図7は、本発明の第6実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図であり、図中、図1〜6におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においても、インホイールモータユニットケース3内に電動モータ4および減速機5を収納してインホイールモータユニットを構成し、
これら電動モータ4および減速機5を、図1〜4,6における各実施例と同様に構成、配置する。
【0069】
また、図6に示す第5実施例の場合と同様、入力軸8に、キャリア14を貫通して車輪側へ向け前方へ延在する中心ロッド部8bを一体成形し、この入力軸中心ロッド部8bを出力軸9の中心孔9c内に貫入させると共に、キャリア11の内周縁に円筒部14bを設けて、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定する。
更に、当該径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所でベアリング15,16により入出力軸8,9を相互に相対回転可能に軸受し、これらにより、入出力軸8,9を相互に一体化された1個の軸ユニットとなすが、このユニット化に際し本実施例では特に以下の構成を採用する。
【0070】
つまり、入力軸中心ロッド部8bの先端を出力軸中心孔9cから突出させ、この入力軸中心ロッド部8bの先端突出部にローディングナット31を緊締、螺合させる。
かかるローディングナット31の緊締、螺合に際しては、その緊締力がベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)のインナレースに対し図7の左方向に作用するよう、また、
その反力が入力軸中心ロッド部8b、図6につき前述したと同様配置のベアリング15(電動モータ入出力軸間相互軸受部)、キャリア14、出力軸9、およびホイールハブ22を介してベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)のアウタレースに作用するようベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を配置して、ホイールハブ22の内周と入力軸中心ロッド部8bの外周との間に介在させる。
【0071】
かくして入力軸中心ロッド部8bの先端突出部に緊締、螺合させたローディングナット31は、入出力軸8,9に対し上記のように作用してスラストを付与するスラスト構造部の用をなし、
当該スラストによりベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)に軸線方向のプリロードを与える。
このため本実施例では、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)をそれぞれ、上記のスラストを支え得るアンギュラ型ベアリングまたはテーパローラベアリングとするのがよい。
本実施例において、上記以外は、図6におけると同様な構成とする。
【0072】
<第6実施例の作用効果>
上記した本実施例の構成によれば、図6に示した第5実施例の前記した作用効果を奏し得るのに加え、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を介し相対回転可能にユニット化された入出力軸8,9の軸ユニットを上記ローディングナット31の緊締力(プリロード)によって、第5実施例の場合よりも更に頑丈な軸ユニットにすることができる。
【0073】
このため、旋回走行時などにおいて作用する車輪への横力で出力軸9の倒れが発生したとき、入力軸8が第5実施例の場合よりも更に確実に出力軸9に伴われて傾くこととなり、これら出力軸9および入力軸8間における相対的な傾きを理論上は殆ど生じなくし得る。
よって、減速機5を成すギヤ相互間の噛み合い部におけるギヤの片当たりを一層確実に回避することができ、かかるギヤの片当たりで減速機5の作用に支障が及んだり、減速機5の耐久性が低下するという問題を更に確実に解消することができる。
【0074】
更に、上記したベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の配置によれば、このベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が、図6に示す第5実施例の場合に比し、ベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)よりも、減速機5から更に遠い車輪側(外側)の軸線方向位置に配置されることになる。
従って、ベアリング17(電動モータ側軸ユニット支承部)およびベアリング18(車輪側軸ユニット支承部)の剛性により、これらを支点として傾斜する軸ユニット8,9の傾斜領域の遙か外側にベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)が位置することになる。
このため、当該ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の軸線方向位置において生ずる入出力軸8,9の相対倒れ量を更に減ずることができて、前記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0075】
<第7実施例の構成>
図8は、本発明の第7実施例になるインホイールモータユニットの半部縦断側面図であり、図中、図1〜4,6,7におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においても、インホイールモータユニットケース3内に電動モータ4および減速機5を収納してインホイールモータユニットを構成し、
これら電動モータ4および減速機5を、図1〜4,6,7における各実施例と同様に構成、配置する。
【0076】
そして入力軸8に、キャリア14を貫通して車輪側へ向け前方へ延在する中心ロッド部8bを一体成形し、この入力軸中心ロッド部8bを出力軸9の中心孔9c内に貫入させると共に、キャリア14の外周縁および電動モータ結合部材23の内周部にそれぞれ径方向に重合する円筒部14a,23aを設けて、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定する。
また、当該径方向オーバーラップ領域の軸線方向に離間した2箇所でベアリング15,16により入出力軸8,9を相互に相対回転可能に軸受し、これらにより、入出力軸8,9を相互に一体化された1個の軸ユニットとなすが、このユニット化に際し本実施例では特に以下の構成を採用する。
【0077】
つまり、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)は、キャリア14に設けた円筒部14aの内周と、電動モータ結合部材23に設けた円筒部23aの外周との間に介在させ、
これによりベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、入力軸8の電動モータ結合部と減速機5の出力回転メンバであるキャリア14との間における軸線方向位置に配置する。
そして、図7に示した第6実施例と同様、入力軸中心ロッド部8bの先端を出力軸中心孔9cから突出させ、この入力軸中心ロッド部8bの先端突出部にローディングナット31を緊締、螺合させる。
【0078】
かかるローディングナット31の緊締、螺合に際し本実施例では、そのナット緊締力がベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)のインナレースに対し図8の左方向に作用するよう、また、
その反力が入力軸中心ロッド部8b、電動モータ結合部材23、上述の配置としたベアリング15(電動モータ入出力軸間相互軸受部)、キャリア14、出力軸9、およびホイールハブ22を介してベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)のアウタレースに作用するよう、ベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)を配置して、ホイールハブ22の内周と入力軸中心ロッド部8bの外周との間に介在させる。
【0079】
かくして入力軸中心ロッド部8bの先端突出部に緊締、螺合させたローディングナット31は、入出力軸8,9に対し上記のように作用してスラストを付与するスラスト構造部の用をなし、
当該スラストによりベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)に軸線方向のプリロードを与える。
このため本実施例でも、ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)をそれぞれ、上記のスラストを支え得るアンギュラ型ベアリングまたはテーパローラベアリングとするのがよい。
本実施例において、上記以外は、図7におけると同様な構成とする。
【0080】
<第7実施例の作用効果>
上記した本実施例の構成によれば、図1〜4,6,7に示した各実施例による前記した作用効果を奏し得るのに加え、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)を、減速機5の出力回転メンバであるキャリア14に設けた円筒部14aの内周と、電動モータ結合部材23に設けた円筒部23aの外周との間に介在させたため、
ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)の直径を、図6,7に示した第5,6実施例よりも更に大きくすることができ、かように更に大径化されたベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)により出力軸9の傾斜を更に確実に抑止し得ることから、出力軸9の倒れ剛性が高まって入出力軸8,9間の相対倒れ量をより小さくすることができ、前記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0081】
<その他の実施例>
なお上記した各実施例においてはいずれも、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定するに際し、出力軸9に一体的に設けた中心ロッド部9aを入力軸8の中心孔8a内に貫入させたり、入力軸8に一体的に設けた中心ロッド部8bを出力軸9の中心孔9c内に貫入させることにより、入出力軸8,9間に径方向オーバーラップ領域を設定することとしたが、
上記出力軸中心ロッド部9aまたは入力軸中心ロッド部8bの代わりに、これらと同様に機能する中心軸(図示せず)を入出力軸8,9とは別体に設け、この中心軸を入力軸8および出力軸9の対向端部における中心孔内に挿置、貫入させることにより、当該中心軸を介し入力軸8および出力軸9を相互に同軸に貫入させ合って径方向オーバーラップ領域を設定するようにしてもよい。
【0082】
この場合、出力軸9に中心ロッド部9aを一体成形したり、入力軸8に中心ロッド部8bを一体成形するする必要がなく、出力軸9および入力軸8の形状を簡単にし得て、コスト的に大いに有利である。
【0083】
また、図2〜4におけるローディングナット27、および図7,8におけるローディングナット31がそれぞれ、緊締力およびその反力を直接ベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)に作用させるようにしたが、
皿バネなどの弾性手段を介してベアリング15(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)およびベアリング16(車輪側入出力軸間相互軸受部)の内外レース間に軸線方向のプリロードを付与するように構成してもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 ケース本体
2 リヤカバー
3 インホイールモータユニットケース
4 電動モータ
5 遊星歯車組式減速機(変速機)
6 ステータ
7 ロータ
8 入力軸
8a 入力軸中心孔
8b 入力軸中心ロッド部
9 出力軸
9a 出力軸中心ロッド部
9b 環状窪み
9c 出力軸中心孔
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 段付きプライマリピニオン
14 キャリア(減速機の出力回転メンバ)
15 ベアリング(電動モータ側入出力軸間相互軸受部)
16 ベアリング(車輪側入出力軸間相互軸受部)
17 ベアリング(電動モータ側軸ユニット支承部)
18 ベアリング(車輪側軸ユニット支承部)
19 端蓋
21 ベアリングサポート
22 ホイールハブ
23 電動モータ結合部材
24 ブレーキドラム
25 ホイールボルト
26 ブレーキシュー
27 ローディングナット(スラスト構造部)
28 カラー(スラスト構造部)
31 ローディングナット(スラスト構造部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に対向した入力軸および出力軸を有する変速機を具え、該変速機の軸線方向一方側において前記入力軸に電動モータが結合され、前記変速機の軸線方向他方側において前記出力軸に車輪が結合されるインホイールモータユニットにおいて、
前記入力軸および出力軸を相互に同軸に貫入させ合って径方向オーバーラップ領域を設定すると共に、該径方向オーバーラップ領域における軸線方向に離間した少なくとも2箇所の入出力軸間相互軸受部で前記入力軸および出力軸を相対回転可能に軸受することにより、これら入力軸および出力軸を1個の軸ユニットとなし、
前記軸ユニットを、軸線方向に離間した少なくとも2箇所の軸ユニット支承部で、インホイールモータユニットのケースに回転自在に支承したことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記出力軸を前記入力軸の中心孔内に貫入させたことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち車輪側における入出力軸間相互軸受部の軸線方向位置を、前記軸ユニット支承部のうち車輪側における軸ユニット支承部の軸線方向位置よりも、前記変速機から遠い位置としたことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項4】
請求項2または3に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち電動モータ側における入出力軸間相互軸受部は、前記入力軸および電動モータ間の結合部を挟んで、前記変速機と反対側の軸線方向位置に配置し、
前記入出力軸間相互軸受部のうち車輪側における入出力軸間相互軸受部は、前記変速機を挟んで、前記入力軸および電動モータ間の結合部と反対側の軸線方向位置に配置したことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項5】
請求項2または3に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち電動モータ側における入出力軸間相互軸受部は、前記入力軸および電動モータ間の結合部を挟んで、前記変速機と反対側の軸線方向位置に配置し、
前記入出力軸間相互軸受部のうち車輪側における入出力軸間相互軸受部は、前記入力軸および電動モータ間の結合部と前記変速機との間の軸線方向位置に配置したことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入力軸および出力軸にスラストを付与するスラスト構造部を設定し、該スラストにより前記入出力軸間相互軸受部に軸線方向のプリロードを与えるよう構成したことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち車輪側における入出力軸間相互軸受部を、前記電動モータおよび入力軸間の電動モータ結合部材と、前記変速機の出力回転メンバとの間に介在させたことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項8】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記軸ユニット支承部のうち車輪側における軸ユニット支承部は、前記出力軸を前記ケースに対し回転自在に支承するものであり、
前記軸ユニット支承部のうち電動モータ側における軸ユニット支承部は、前記入力軸を前記ケースに対し回転自在に支承するものであることを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記軸ユニット支承部のうち車輪側における軸ユニット支承部は、前記出力軸を前記ケースに対し回転自在に支承するものであり、
前記軸ユニット支承部のうち電動モータ側における軸ユニット支承部も、前記出力軸を前記ケースに対し回転自在に支承するものであることを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項10】
請求項1に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入力軸を前記出力軸の中心孔内に貫入させたことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項11】
請求項10に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち車輪側における入出力軸間相互軸受部の軸線方向位置を、前記軸ユニット支承部のうち車輪側における軸ユニット支承部の軸線方向位置よりも前記変速機から遠い軸線方向位置としたことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項12】
請求項10または11に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち車輪側における入出力軸間相互軸受部および電動モータ側における入出力軸間相互軸受部を、前記変速機の軸線方向両側に配置したことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入力軸および出力軸にスラストを付与するスラスト構造部を設定し、該スラストにより前記入出力軸間相互軸受部に軸線方向のプリロードを与えるよう構成したことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項14】
請求項13に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入出力軸間相互軸受部のうち電動モータ側における入出力軸間相互軸受部を、前記電動モータおよび入力軸間の電動モータ結合部材と、前記変速機の出力回転メンバとの間に介在させたことを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記軸ユニット支承部のうち電動モータ側における軸ユニット支承部は、前記入力軸を前記ケースに対し回転自在に支承するものであり、
前記軸ユニット支承部のうち車輪側における軸ユニット支承部は、前記出力軸を前記ケースに対し回転自在に支承するものであることを特徴とするインホイールモータユニット。
【請求項16】
請求項1に記載のインホイールモータユニットにおいて、
前記入力軸および出力軸の対向端部における中心孔内に挿置した中心軸を介し前記入力軸および出力軸を相互に同軸に貫入させたことを特徴とするインホイールモータユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−31792(P2011−31792A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181367(P2009−181367)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】