説明

ウエハ搬送装置、および、ウエハ搬送方法

【課題】高速分離処理に対応でき、かつ、水中でウエハ同士が部分的に重なって密着してしまった場合であっても、確実に分離させて後工程へ搬送することのできるウエハ搬送装置を提供する。
【解決手段】ウエハセパレータ装置によってウエハスタックWSから分離されて順次供給される水中のウエハWを水面上に搬送するウエハ搬送装置8であって、順次供給されるウエハWを水面上に搬送する第1の無限ベルト式搬送装置4と、第1の無限ベルト式搬送装置4のウエハ搬送方向下流にあって第1の無限ベルト式搬送装置4によって搬送されるウエハWを引き継いでさらに搬送する第2の無限ベルト式搬送装置5と、が設けられ、かつ、第2の無限ベルト式搬送装置5が、その無限ベルトを濡れた状態でかつウエハWのウエハスタック側とは反対側の面に密着させて、ウエハWを搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハスタックからウエハセパレータ装置によって分離されて順次供給される水中のウエハを水面上に搬送するウエハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池などに用いられるシリコンウエハは、シリコンインゴットから100〜200μmなどの所定の厚さに切り出され、多数枚重なった状態、すなわちウエハスタックとされ、次いで1枚ずつ分離されて、洗浄工程に送られる。
【0003】
この際、従来はウエハスタックから手作業で1枚ずつに分離して無限ベルト式搬送装置などの搬送装置に載置されていたが、特開2000−156396公報(特許文献1)などでは1枚ずつアームに吸着させながら移動させて分離する技術が提案されている。
【0004】
しかしながらこのような方法では、動作もスムーズでなく、往復動や急停止があるので高速分離処理を行った場合、ウエハの落下などの事故が生じやすく、このとき、ウエハは上述のように極めて薄く脆弱なために破損が生じ、全体の歩留まりが低下する、さらには、破片の除去のための運転休止などの問題が生じてしまうために、たとえば1秒あたり1枚などの高速分離処理への対応には困難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−156396公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ウエハスタック供給装置によって、ウエハスタックが水流、振動(超音波振動)、気泡流などを利用するウエハセパレータ装置に供給されて1枚ずつに分離されたウエハをベルト搬送する検討を行った。
【0007】
しかしながら、ウエハセパレータ装置によって一旦は分離されたウエハ同士が、ベルト搬送の初期段階で再度密着して複数のウエハが同時に搬送されることがしばしば生じ、このとき、後工程で洗浄不足などにより、そのウエハ自体のみならず、他のウエハにまで悪影響を及ぼし、歩留まり低下などの深刻な事態を引き起こすことがあり、この欠点を改善させるべく、鋭意、検討を行った。
【0008】
すなわち、本発明は、上記した従来の問題点を改善する、高速分離処理に対応でき、かつ、供給されるウエハ同士が搬送初期に重なって密着した場合であっても、確実に分離させて後工程へ搬送することのできるウエハ搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のウエハ搬送装置は上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、ウエハセパレータ装置によってウエハスタックから分離されて順次供給される水中のウエハを水面上に搬送するウエハ搬送装置であって、前記順次供給されるウエハを水面上に搬送する第1の無限ベルト式搬送装置と、該第1の無限ベルト式搬送装置の前記ウエハ搬送方向下流にあって該第1の無限ベルト式搬送装置によって搬送される前記ウエハを引き継いでさらに搬送する第2の無限ベルト式搬送装置と、が設けられ、かつ、前記第2の無限ベルト式搬送装置が、その無限ベルトを濡れた状態でかつ前記ウエハの前記ウエハスタック側とは反対側の面に密着させて、該ウエハを搬送するものであることを特徴とするウエハ搬送装置である。
【0010】
また、本発明のウエハ搬送装置は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のウエハ搬送装置において、前記第1の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを懸架する上端のローラ付近に、前記無限ベルトに接しかつ前記ウエハを前記無限ベルトとともに挟持する上端搬送補助ローラが、設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のウエハ搬送装置は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載のウエハ搬送装置において、前記第1の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを懸架する下端のローラ付近に、前記無限ベルトに接しかつ前記ウエハを該無限ベルトとともに夾持する引き上げ補助ローラと、前記第1の無限ベルト式搬送装置の下方にあって前記順次供給されるウエハの前記ウエハスタック側とは反対側の面に接して該ウエハを前記引き上げ補助ローラと前記無限ベルトとの接触部に供給するウエハ供給ローラと、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のウエハ搬送装置は、請求項4に記載の通り、請求項3に記載のウエハ搬送装置において、前記引き上げ補助ローラ付近に前記第1の無限ベルト式搬送装置によるウエハの搬送の開始を検知する第1のウエハセンサ、前記第1のウエハセンサの上方に前記引き上げ補助ローラと前記無限ベルトとの接触部によるウエハの上方への引き上げの終了を検知する第2のウエハセンサ、前記ウエハ供給ローラの下方にあって前記順次供給されるウエハの前記ウエハスタック側とは反対側の面に接して該ウエハを前記接触部に供給する正方向および該正方向とは逆の方向である逆方向に回転するウエハ供給補助ローラ、および、前記第1のウエハセンサでウエハの搬送開始を検出したときに前記ウエハ供給補助ローラを前記逆方向に回転させ、前記第2のウエハセンサでウエハの引き上げの終了を検出したときに前記ウエハ供給補助ローラを前記正方向に回転させるウエハ供給補助ローラ制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のウエハ搬送装置は、請求項5に記載の通り、請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のウエハ搬送装置において、前記ウエハに接するローラの該ウエハに接する部分が、連続気泡を有する親水性高分子材料からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のウエハ搬送装置は、請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のウエハ搬送装置において、前記ウエハに接する無限ベルトの該ウエハに接する部分が、連続気泡を有する親水性高分子材料からなることを特徴とする。
【0015】
本発明のウエハ搬送方法は、請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のウエハ搬送装置によるウエハ搬送方法であって、前記第2の無限ベルト式搬送装置による前記ウエハの搬送速度が、前記第1の無限ベルト式搬送装置による前記ウエハの搬送速度より大きいことを特徴とするウエハ搬送方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のウエハ搬送装置によれば、第2の無限ベルト式搬送装置が、その無限ベルトを濡れた状態でかつ前記ウエハの前記ウエハスタック側(ウエハセパレータ装置側)とは反対側の面に密着させて、該ウエハを搬送する構成により、第2の無限ベルト式搬送装置によるウエハの搬送速度を、第1の無限ベルト式搬送装置によるウエハの搬送速度より高くすることにより、部分的に重なり合ったウエハ同士であっても1枚ずつ分離させて搬送させることができる。
【0017】
請求項2にかかるウエハ搬送装置によれば、第1の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを懸架する上端のローラに無限ベルトを介して接する上端搬送補助ローラが設けられている構成により、より確実にウエハを分離させることができる。
【0018】
請求項3にかかるウエハ搬送装置によれば、第1の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを懸架する下端のローラに無限ベルトを介して接する引き上げ補助ローラと、順次供給されるウエハのウエハスタック側とは反対側の面に接してウエハを引き上げ補助ローラと無限ベルトとの接触部に供給するウエハ供給ローラと、が水中に設けられている構成により、簡単な構造でありながらウエハを第1の無限ベルト式搬送装置に供給させることができる。
【0019】
請求項4にかかるウエハ搬送装置によれば、引き上げ補助ローラ付近に前記第1の無限ベルト式搬送装置によるウエハの搬送の開始を検知する第1のウエハセンサ、前記第1のウエハセンサの上方に前記引き上げ補助ローラと前記無限ベルトとの前記接触部によるウエハの上方への引き上げの終了を検知する第2のウエハセンサ、引き上げ補助ローラの下方に順次供給されるウエハのウエハスタック側とは反対の面に接してウエハを引き上げ補助ローラと無限ベルトとの接触部に供給する正方向および該正方向とは逆の方向である逆方向に回転するウエハ供給補助ローラ、および、第1のウエハセンサでウエハの搬送開始を検出したときにウエハ供給補助ローラを逆方向に回転させ、前2のウエハセンサでウエハの引き上げの終了を検出したときにウエハ供給補助ローラを正方向に回転させるウエハ供給補助ローラ制御手段が設けられている構成により、より確実にウエハを分離させることができる。
【0020】
請求項5にかかるウエハ搬送装置によれば、ウエハに接するローラの該ウエハに接する部分が、連続気泡を有する親水性高分子材料からなる構成により、ローラ・ウエハ間の密着性が向上し、ウエハが確実に搬送される。
【0021】
請求項6にかかるウエハ搬送装置によれば、ウエハに接する無限ベルトの該ウエハに接する部分が、連続気泡を有する親水性高分子材料からなる搬送されるウエハに付着する水分で第2の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを濡れた状態に保つことができるので、より確実にウエハを分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかるウエハ搬送装置の例の運転状況(運転開始前)を示すモデル図である。図1(a)右側面図である。図1(b)正面図である。
【図2】本発明にかかるウエハ搬送装置の他の例のローラ配置を示すモデル右側面図である。
【図3】本発明にかかるウエハ搬送装置の例の運転状況(ウエハがウエハセンサ6による検知位置に搬送された状態)を示すモデル図である。図3(a)右側面図である。図3(b)正面図である。
【図4】本発明にかかるウエハ搬送装置の例の運転状況(ウエハがウエハセンサ7による検知位置に搬送された状態)を示すモデル図である。図4(a)右側面図である。図4(b)正面図である。
【図5】本発明にかかるウエハ搬送装置の例の運転状況(2枚のウエハが一部重なった状態で引き継ぎ部に搬送された状態)を示すモデル図である。図5(a)右側面図である。図5(b)正面図である。図5(c)引き継ぎ部付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のウエハ搬送装置の形態について、図を用いて説明する。
【0024】
図1に、本発明にかかるウエハ搬送装置の一例のモデル図を示す。図1(a)は側面図(右側面図)、図1(b)は正面図である。
【0025】
このウエハ搬送装置の例は、ウエハスタックWSから図示しないウエハセパレータ装置によって分離されて、ウエハ供給装置8によって順次供給される水中のウエハWを水面9上に搬送するウエハ搬送装置であって、順次供給されるウエハWを水面上に搬送する第1の無限ベルト式搬送装置4と、第1の無限ベルト式搬送装置4のウエハW搬送方向下流にあって第1の無限ベルト式搬送装置4によって搬送されるウエハWを引き継いでさらに搬送する第2の無限ベルト式搬送装置5と、が設けられ、かつ、第2の無限ベルト式搬送装置5が、その無限ベルト5aを濡れた状態で第1の無限ベルト式搬送装置4から引き継ぐウエハWのウエハスタックWS側とは反対の面に密着させて、ウエハWを搬送するものであるウエハ搬送装置である。
【0026】
さらにこのウエハ搬送装置は、第1の無限ベルト式搬送装置4の無限ベルト4aが、順次供給されるウエハWの前記ウエハスタックWS側と同じ面に接してウエハWを搬送するものである。
【0027】
さらに、このウエハ搬送装置には第1の無限ベルト式搬送装置4の無限ベルト4aを懸架する上端のローラ4c付近に、具体的にはローラ4cとともに無限ベルト4aを挟む位置に、無限ベルト4aに接し、かつ、ウエハWを無限ベルト4aとともに挟持する上端搬送補助ローラ3bが、設けられている。
【0028】
さらに、この例では、第1の無限ベルト式搬送装置4の無限ベルト4aを懸架する下端のローラ4b付近に、具体的にはローラ4bとともに無限ベルト4aを挟む位置に、無限ベルト4aに接し、かつ、ウエハWを無限ベルト4cとともに挟持する引き上げ補助ローラ3aと、順次供給されるウエハWの前記ウエハスタックWS側とは反対の面に接してウエハWを引き上げ補助ローラ3aと無限ベルト4aとの接触部に供給するウエハ供給ローラ2と、が設けられている。
【0029】
さらに、この例では、下端のローラ4b付近に第1の無限ベルト式搬送装置4によるウエハWの搬送開始を検知する第1のウエハセンサ(この例では光学式センサであって発光部と受光部との対により構成される)6、第1のウエハセンサ6の上方に前記引き上げ補助ローラ3aと無限ベルト4aとの接触部によるウエハW(一枚分)の上方への引き上げの終了を検知する第2のウエハセンサ(この例では光学式センサであって発光部と受光部との対により構成される)7、ウエハ供給ローラ2の下方に、順次供給されるウエハWのウエハスタックWS側とは反対側の面に接してウエハWを引き上げて補助ローラ3aと無限ベルト4aとの接触部に供給する正方向およびこの正方向とは逆の方向である逆方向に回転するウエハ供給補助ローラ1、および、第1のウエハセンサ6でウエハWの搬送開始を検出したときにウエハ供給補助ローラ1を逆方向に回転させ、第2のウエハセンサ7でウエハW(1枚分)の引き上げの終了を検出したときにウエハ供給補助ローラ1を正方向に回転させるウエハ供給補助ローラ制御手段K(図1(a)にのみ図示する)が設けられている。ここで、ウエハ供給補助ローラ制御手段K演算判断回路CPU、制御プログラムが収納されたROM、各種情報(たとえばそのときのウエハ供給補助ローラの回転方向情報)を一時的に保持するRAM、各種電気信号の入出力を行うI/Oポート等から構成されている。
【0030】
ここで、図1(a)および図1(b)に示した装置では、上端搬送補助ローラ3bは、ローラ4cとともに無限ベルト4aを挟む位置に、また、引き上げ補助ローラ3aはローラ4bとともに無限ベルト4aを挟む位置に、それぞれ設けられているが、これらは、それぞれ、無限ベルト4aによって搬送されるウエハを無限ベルト4aとともに夾持できる位置にあればよく、そのような位置に設けられた装置のモデル図(右側面図)を図2に示す。
【0031】
ただし、ウエハは上述のように極めて薄く強度が弱いので、これらローラによりウエハに折れが生じないように、図2に示すように、無限ベルト4aのこれらローラの対応箇所裏面側にはそれぞれ、背板4eおよび4dが設けられている。
【0032】
図1(a)および図1(b)は、ウエハWの引き上げ前の状態を示すモデル図である。各ベルトおよびローラはそれぞれ図中矢印方向に回転している(ウエハ供給補助ローラ1以外は回転方向が変わることはないので、以下、回転表記を略す)。
【0033】
次にこの搬送装置の機能について説明する。
【0034】
図示しないウエハセパレータ装置によって水流、気泡流、あるいは超音波振動などによりウエハスタックWSから1枚ずつに分離されたウエハWは図中矢印(左向き矢印)方向にわずかずつ移動するウエハ供給装置8によって図中左方向に搬送されて、そのウエハの最も右側のウエハWが、このウエハWに対してウエハスタックWS側とは反対側に設けられたウエハ供給補助ローラ1およびウエハ供給ローラに当接してこれらローラの回転により水中内を上方に引き上げられる。
【0035】
引き上げられたウエハWは引き上げ補助ローラ3aと無限ベルト4aとの接触部に供給され、これらによりさらに上方へと搬送される(図3(a)(右側面図)および図3(b)(正面図)参照)。
【0036】
可鍛のローラ4b付近に設けられた第1のウエハセンサ6により第1の無限ベルト式搬送装置4によるウエハWの搬送開始が図示しないウエハ供給補助ローラ制御手段に通知され、ウエハ供給補助ローラ制御手段Kはウエハ供給補助ローラ1を図3(a)に矢印で示すように逆方向に回転させ、搬送されるウエハWの右側にある他のウエハが、搬送されるウエハと重なって上方に引き上げられるのを防止する。
【0037】
さらに第1の無限ベルト式搬送装置4によりウエハWが上方に搬送され、図4(a)および図4(b)に示すように、引き上げ補助ローラ3aと無限ベルト4aとの接触部によるウエハWの上方への引き上げが終了し、このとき第1のウエハセンサ6の上方に設けられた第2のウエハセンサ7によって引き上げ補助ローラ3aと無限ベルト4aとの接触部によるウエハW(1枚分)の上方への引き上げが終了した信号が図示しないウエハ供給補助ローラ制御手段Kに送られ、ウエハ供給補助ローラ制御手段Kはウエハ供給補助ローラ1を図4(a)に矢印で示すように正方向に回転するようにさせ、次のウエハの引き上げに備えさせて図1の状態に戻す。
【0038】
図4(a)および図4(b)に示されるようにウエハWの大部分が水面9より上にある状態となると、ウエハWと無限ベルト4aとの間に存在する水の表面張力により、ウエハWは無限ベルト4aと密着するので、その後は、ウエハWの無限ベルト4aとは反対側にローラ等を設置しなくてもウエハWは落下やずれが生じることなく上方へ搬送される。
【0039】
このように第1の無限ベルト式搬送装置4により上方に搬送されたウエハWは第1の無限ベルト式搬送装置4前記ウエハ搬送方向下流に設けられた第2の無限ベルト式搬送装置に引き継がれてさらに上方に搬送される。このとき、その第2の無限ベルト式搬送装置の無限ベルト5aを濡れた状態に保つことにより、ウエハWはこの無限ベルト5aに密着して搬送される。図中、第2の無限ベルト式搬送装置5による搬送方向を変えるためのガイド5cが設けられているが、ベルト5aとウエハWとの間の密着性が損なわれないような太径のローラを用いてもよい。
【0040】
この搬送装置によって上方に搬送されたウエハはこの例では図示しない洗浄装置へ搬送する他の搬送手段10に引き継がれてさらに搬送される。
【0041】
次に、第1の無限ベルト式搬送装置4によるウエハWの搬送開始の際に、ウエハW1に他のウエハW2が付随し一部重なった状態で引き上げられた場合の、本装置の機能について説明する。
【0042】
図5(a)は側面図、図5(b)は正面図、図5(c)は、第1の無限ベルト式搬送装置4と第2の無限ベルト式搬送装置5との間のウエハ引き継ぎ部の拡大図である。
【0043】
ここで第2の無限ベルト式搬送装置5によるウエハの搬送速度が、第1の無限ベルト式搬送装置4によるウエハの搬送速度より大きくなるように設定されている。
【0044】
ウエハW1に他のウエハW2が付随して一部重なった状態で水面上に引き上げられてしまった場合、第1の無限ベルト式搬送装置4と第2の無限ベルト式搬送装置5との間のウエハ引き継ぎ部に第1のウエハW1が達し、そのウエハスタックWS側とは反対側の面が第2の無限ベルト式搬送装置5の濡れた状態の無限ベルト5aに密着したとき、ウエハW2はまだ第1の無限ベルト式搬送装置4によって搬送されている状態であり、このとき搬送速度の違いにより ウエハW1とW2とには互いに引き離す方向の力がかかる(図4(c)参照)。その結果、これらウエハW1とW2とは互いに分離されて第2の無限ベルト式搬送装置5によって順次搬送される。上記の力は第1の無限ベルト式搬送装置4の無限ベルト4aを懸架する上端のローラ4cに無限ベルト4aを介して接する上端搬送補助ローラ3bにより、より確実に発揮される。ここで、無限ベルト式搬送装置の速度比はウエハの大きさなどにより適宜調整するが、通常1:1.3〜1:2程度とする。
【0045】
このような第2の無限ベルト式搬送装置5の無限ベルト5aとウエハとの密着力は水の表面張力であり、無限ベルト5aが濡れた状態で発現する。
【0046】
このために、第2の無限ベルト式搬送装置5の無限ベルト5aには水を供給する必要があるが、連続使用の場合、ウエハが接する場所を連続気泡を有する親水性高分子材料により構成すると、運転当初の水補給のみでその後の水の補給は行わなくても、水面上に搬送されるウエハに付着している水によって上記密着力は維持される。
【0047】
ここで、第2の無限ベルト式搬送装置5の無限ベルト5aだけではなく第1の無限ベルト式搬送装置4の無限ベルト4a、および、その他ローラのウエハ接触部に用いることができ、そのとき、連続気泡を有する親水性高分子材料とウエハとの接触時に生じる安定した密着力により、ウエハ搬送時にずれ、落下などの事故がより効果的に防止される。
【0048】
また、ベルトなどで連続気泡を有する親水性高分子材料だけでは強度が不足する場合には、ウエハと直接接触しない部分に他の高強度な素材によって裏打ちするなどして必要な強度を確保することができる。
【0049】
上記のような連続気泡を有する親水性高分子材料としては、アイオン社のソフラス、グローリ産業社のエコロンとして知られるものが挙げられ、上記搬送装置ではウエハと直接接する部分にはアイオン社のソフラスを用いた。これら連続気泡を有する親水性高分子材料は柔軟であるために、非常に薄いウエハであっても破損、傷の発生なしに安全に搬送することができる。ここで、アイオン社のソフラスは柔軟であるために、水中であってもウエハとの密着性が良好であり、上述のようにウエハ供給補助ローラ1およびウエハ供給ローラによるウエハの水中の搬送が特にスムーズに行われる。
【0050】
以上の説明から理解されるように本発明のウエハ搬送装置は、アームなどの部材の往復動などなしに、ローラとベルトの回転運動だけで動作するものであり、このために1秒あたりウエハ1枚程度の高速連続搬送にも対応できるとともに、搬送の失敗によるウエハの落下(通常、落下したウエハは破損する)もあらかじめ防止されているために、信頼性が高い。
【符号の説明】
【0051】
W、W1、W2 ウエハ
WS ウエハスタック
1 ウエハ供給補助ローラ
2 ウエハ供給ローラ
3a 引き上げ補助ローラ
4 第1の無限ベルト式搬送装置
4a、5a 無限ベルト
4b 下端のローラ
5 第2の無限ベルト式搬送装置
6 第1のウエハセンサ
7 第2のウエハセンサ
8 ウエハ供給装置
9 水面
K ウエハ供給補助ローラ制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハセパレータ装置によってウエハスタックから分離されて順次供給される水中のウエハを水面上に搬送するウエハ搬送装置であって、
前記順次供給されるウエハを水面上に搬送する第1の無限ベルト式搬送装置と、該第1の無限ベルト式搬送装置の前記ウエハ搬送方向下流にあって該第1の無限ベルト式搬送装置によって搬送される前記ウエハを引き継いでさらに搬送する第2の無限ベルト式搬送装置と、が設けられ、かつ、
前記第2の無限ベルト式搬送装置が、その無限ベルトを濡れた状態でかつ前記ウエハの前記ウエハスタック側とは反対側の面に密着させて、該ウエハを搬送する
ものであることを特徴とするウエハ搬送装置。
【請求項2】
前記第1の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを懸架する上端のローラ付近に、前記無限ベルトに接しかつ前記ウエハを前記無限ベルトとともに挟持する上端搬送補助ローラが、設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウエハ搬送装置。
【請求項3】
前記第1の無限ベルト式搬送装置の無限ベルトを懸架する下端のローラ付近に、前記無限ベルトに接しかつ前記ウエハを該無限ベルトとともに夾持する引き上げ補助ローラと、
前記第1の無限ベルト式搬送装置の下方にあって前記順次供給されるウエハの前記ウエハスタック側とは反対側の面に接して該ウエハを前記引き上げ補助ローラと前記無限ベルトとの接触部に供給するウエハ供給ローラと、
が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウエハ搬送装置。
【請求項4】
前記引き上げ補助ローラ付近に前記第1の無限ベルト式搬送装置によるウエハの搬送の開始を検知する第1のウエハセンサ、
前記第1のウエハセンサの上方に前記引き上げ補助ローラと前記無限ベルトとの接触部によるウエハの上方への引き上げの終了を検知する第2のウエハセンサ、
前記ウエハ供給ローラの下方にあって前記順次供給されるウエハの前記ウエハスタック側とは反対側の面に接して該ウエハを前記接触部に供給する正方向および該正方向とは逆の方向である逆方向に回転するウエハ供給補助ローラ、および、
前記第1のウエハセンサでウエハの搬送開始を検出したときに前記ウエハ供給補助ローラを前記逆方向に回転させ、前記第2のウエハセンサでウエハの引き上げの終了を検出したときに前記ウエハ供給補助ローラを前記正方向に回転させるウエハ供給補助ローラ制御手段
が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のウエハ搬送装置。
【請求項5】
前記ウエハに接するローラの該ウエハに接する部分が、連続気泡を有する親水性高分子材料からなることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のウエハ搬送装置。
【請求項6】
前記ウエハに接する無限ベルトの該ウエハに接する部分が、連続気泡を有する親水性高分子材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のウエハ搬送装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のウエハ搬送装置によるウエハ搬送方法であって、前記第2の無限ベルト式搬送装置による前記ウエハの搬送速度が、前記第1の無限ベルト式搬送装置による前記ウエハの搬送速度より大きいことを特徴とするウエハ搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−54908(P2011−54908A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205123(P2009−205123)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(591218167)日本文化精工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】