説明

ウレタン樹脂組成物、光学用接着剤、光学成形体及び光半導体装置

【課題】十分に高い光透過性と、低応力性とを両立する硬化物を形成できるウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の2液型ウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分及び無機酸化物粒子を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液と、からなる2液型ウレタン樹脂組成物であって、ポリオール成分は、水酸基価が550〜900mgKOH/gである3官能以上のポリオールを含有し、ポリイソシアネート成分は、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物を含有し、波長589.3nmにおけるA液から無機酸化物粒子を除いた液及びB液を混合することによって硬化して得られる硬化物の屈折率と、無機酸化物粒子の屈折率との差が、0.02以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、それを用いた光学用接着剤、光学成形体及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置では、光半導体素子を保護するために樹脂組成物を硬化することによって封止部材を成型する。樹脂組成物の硬化、成型は、通常、ケース内やリードフレームのキャビティ内に注型するポッティング法や、成型装置内の成型金型によって形成されるキャビティ内に樹脂組成物を充填する液状トランスファー成型法や、コンプレッション成型法等で行われる。このとき、透明樹脂とリードフレームのみで光半導体装置の形状を形成する構造や、透明樹脂でレンズ形状を形成する構造においては、硬質な透明樹脂が求められる。
【0003】
光半導体装置の封止部材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が用いられる。例えば、特許文献1には、光電変換素子封止材用ウレタン系樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−278941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、光半導体素子を封止する封止部材や光学素子を接着する光学用接着剤では、適用する構造に含まれる異種材料、例えば、光学素子やリードフレームとの熱膨張係数の差から応力が生じて剥離してしまい、光半導体装置の信頼性が低下することがある。そこで、無機充填材を樹脂組成物中に充填して熱膨張係数を下げ、低応力化を図る手法が提案されている。
【0006】
しかし、無機充填材として一般に用いられているシリカは、樹脂より屈折率が低いため、充填量にしたがって光透過性が低下しやすい傾向にある。また、封止部材としてエポキシ樹脂を用い、無機充填剤として酸化ホウ素(B)を含有する酸化物充填剤を使用した場合、エポキシ樹脂組成物中にホウ素イオンが溶出し、光透過性や機械強度を低下させることがある。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、十分に高い光透過性と、低応力性とを両立する硬化物を形成できるウレタン樹脂組成物、それを用いた光学用接着剤、光学成形体及び光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオール成分及び無機酸化物粒子を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液とからなる2液型ウレタン樹脂組成物であって、ポリオール成分は、水酸基価が550〜900mgKOH/gである3官能以上のポリオールを含有し、ポリイソシアネート成分は、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が、脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物を含有し、波長589.3nmにおけるA液から無機酸化物粒子を除いた液及びB液を混合することによって硬化して得られる硬化物の屈折率と、無機酸化物粒子の屈折率との差が、0.02以下である、2液型ウレタン樹脂組成物を提供する。
【0009】
上記本発明の2液型ウレタン樹脂組成物は、十分に高い光透過性と、低応力性とを両立する硬化物を形成でき、光半導体素子を封止する封止部材や光学素子を接着する光学用接着剤として有用である。
【0010】
硬化物及び無機酸化物粒子の波長589.3nmにおける屈折率が、1.52以下であると、上記ウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の光透過性をより一層向上させることができる。
【0011】
また、上記無機酸化物粒子が、二酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)及び酸化カルシウム(CaO)を含有することにより、ウレタン樹脂組成物の硬化物の線膨張係数を低減し、応力をより一層低減することができる。
【0012】
さらに、ウレタン樹脂組成物の硬化物の光透過性及び低応力性のバランスを良好に保つ観点から、無機酸化物粒子の含有量は、A液及びB液の合計量を基準として、30質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記本発明の2液型ウレタン樹脂組成物を含有する光学用接着剤、2液型ウレタン樹脂組成物を硬化して得られる光学成形体を提供する。本発明はさらに、上記2液型ウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物からなる封止部材を備える、光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分に高い光透過性と、低応力性とを両立する硬化物を形成できるウレタン樹脂組成物、それを用いた光学用接着剤、光学成形体及び光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態のウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分及び無機酸化物粒子を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液とからなる2液型ウレタン樹脂組成物であって、ポリオール成分は、水酸基価が550〜900mgKOH/gである3官能以上のポリオールを含有し、ポリイソシアネート成分は、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が、脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物を含有し、波長589.3nmにおけるA液から無機酸化物粒子を除いた液及びB液を混合することによって硬化して得られる硬化物の屈折率と、無機酸化物粒子の屈折率との差が、0.02以下である。なお、589.3nmは、ナトリウムランプの波長であり、一般に、光学材料の屈折率の測定に用いられる波長である。また、本樹脂組成物を適用した光半導体装置の光源と近い波長である。
【0018】
(ポリオール成分)
本発明に係るポリオール成分は、3つ以上のアルコール性水酸基を有する化合物を含有し、その水酸基価が550〜900mgKOH/gである。
【0019】
このような水酸基価を有するポリオール成分は、ポリイソシアネート成分との相溶性に優れ、均一でガラス転移温度が高い硬化物を得ることが可能となる。ポリオール化合物の水酸基価が900mgKOH/gより大きいとポリイソシアネート成分との相溶性が低下する傾向にあり、550mgKOH/gより小さいとポリイソシアネート成分との相溶性は得られるものの、硬化物のガラス転移温度(以下、場合により「Tg」と表記する)が低下する傾向にある。
【0020】
ポリオール化合物の水酸基価は、ポリオール化合物をアセチル化試薬である無水酢酸を含むピリジン溶液に添加して、水酸基をアセチル化させた後、過剰のアセチル化試薬を水によって分解し、生成した酢酸を水酸化カリウムで滴定することで求めることができる。
【0021】
本明細書において「相溶性が優れる」とは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを室温にて混合した際に、透明で均一な樹脂組成物となることを意味する。また、「ガラス転移温度が高い硬化物」とは、Tgが100℃以上の硬化物を意味する。
【0022】
上記ポリオール化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びアクリル樹脂ポリオールを用いることができる。ウレタン樹脂組成物の硬化物の屈折率を1.52以下に調節することが容易になることから、ポリオール化合物は、短鎖長の脂肪族ポリオールであることが好ましく、具体的には、トリメチロールプロパン1モルに対しプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドを1〜3モル付加した化合物であることが好ましい。
【0023】
トリメチロールプロパンが固体であるのに対し、トリメチロールプロパンにプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドを付加した化合物は液状であり、取り扱いが容易である。さらに、トリメチロールプロパンにプロピレンオキサイドを付加した化合物の場合、そのメチル基の立体障害によってエチレンオキサイドを付加した化合物に比べ、硬化体のTgをより高めることができる。
【0024】
トリメチロールプロパン1モルに対し、プロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドを1〜3モルの配合で付加反応を行った場合、反応生成物中には原料のトリメチロールプロパン、プロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドの1モル付加品、2モル付加品、3モル付加品、4モル付加品等の複数のポリオール化合物の混合物が得られる。ポリオール化合物はこれら混合物であってもよく、この場合、水酸基価は、上記混合物から算出される値となる。
【0025】
ポリオール化合物は、1種を単独で用いてもよいが、架橋密度や粘度を調整するために、他のポリオールを併用することも可能である。その場合、他のポリオール化合物の含有量は、ポリオール成分の全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。このような範囲に設定することで、ポリオールを数種併用した場合でも、ポリオール化合物間の反応性差によって生ずる、ウレタン樹脂組成物の硬化物の不均一性を防ぐことができる。
【0026】
上記ポリオール成分には、水酸基残存プレポリマーが含まれてもよい。ポリオール成分に、水酸基残存プレポリマーを含むことにより、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との相溶性を更に向上させることができる。水酸基残存プレポリマーは、上記ポリオール成分と後述するポリイソシアネート成分とを、上記ポリオール成分中の水酸基が、上記ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基に対して過剰になるように反応させることにより得られる。ポリオール成分中の水酸基当量をX、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基当量をYとしたときの比をX/Yとすると、水酸基残存プレポリマーは、X/Yが3を超え20未満となるように、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合、反応させて得ることが好ましい。X/Yを3より大きい値とすることにより、上記水酸基残存プレポリマーの分子量の増大を抑制し、取り扱いやすい粘度に保つことが可能となる。X/Yを20より小さい値とすることにより、プレポリマーの効果が有効に得られる傾向にある。また、水酸基残存プレポリマーの合成の反応時間は、触媒を添加することによって短縮することもできるが、ポリマーの着色を避けるために、無触媒下で、室温で又は加熱しながら反応させることが好ましい。
【0027】
(ポリイソシアネート成分)
本発明に係るポリイソシアネート成分は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物からなる成分であり、脂環式ポリイソシアネート及び該脂環式ポリイソシアネートのイソシアネート基が残存したプレポリマーを含む。ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は30.0%以下であることが好ましい。
【0028】
脂環式ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ又は3つ有するものが好ましく、少なくとも1個のイソシアネート基が、脂環基を構成する第二級炭素に結合している。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、又はノルボルネンジイソシアネート(2,5−(2,6)−ビス−イソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン)等が挙げられ、イソホロンジイソシアネートが好ましい。このような脂環式ポリイソシアネートを用いることによって、無機酸化物粒子を除いたウレタン樹脂組成物の硬化物の589.3nmにおける屈折率を、1.52以下に調整することが容易になる。
【0029】
ポリイソシアネート成分が、脂環式ポリイソシアネートと共にイソシアネート基残存プレポリマーを含有することによって、ポリオール成分との極性差を縮められるため、ポリオール成分との相溶性に優れ、均一でガラス転移温度が高い硬化物を得ることが可能になる。特に、脂環式ポリイソシアネートとして、第一級炭素に結合したイソシアネート基と第二級炭素に結合したイソシアネート基を有するイソホロンジイソシアネートを用いた場合、剛直性と柔軟性のバランスにも優れ、ガラス転移温度の高い硬化物を得ることができる。
【0030】
イソシアネート基残存プレポリマーは、上記脂環式ポリイソシアネートの単量体とポリオールの単量体とを、ポリイソシアネート中のイソシアネート基が、ポリオール中の水酸基に対して過剰になるように反応させることにより得られる。イソシアネート基残存プレポリマーは、ポリオールの水酸基当量をX、ポリイソシアネートのイソシアネート基当量をYとしたとき、X/Yを0.05を超え0.3未満となる比で反応させて得ることが好ましい。X/Yを0.3より小さい値とすることにより、該イソシアネート基残存プレポリマーの分子量の増大を抑制し、取り扱いやすい粘度に保つことが可能となる。また、X/Yを0.05より大きい値をとすることにより、プレポリマーの効果を有効に得ることができる傾向にある。また、イソシアネート基残存プレポリマーの合成の反応時間は、触媒を添加することによって短縮することもできるが、ポリマーの着色を避けるために、無触媒下で、室温で又は加熱しながら反応させることが好ましい。
【0031】
イソシアネート基残存プレポリマーの合成に用いるポリオール化合物は特に限定されないが、上述のポリオール成分との相溶性を向上する観点から、上述のポリオール成分と同一のポリオール化合物を用いることが好ましい。
【0032】
ポリイソシアネートの単量体とポリオールの単量体を反応させた場合、反応生成物中には原料のポリイソシアネート単量体及び複数の反応生成物の混合物が得られる。例えば、ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンのような3官能のポリオール化合物とをジイソシアネート化合物が過剰となるモル比で反応させた場合、ポリオール化合物1モルに対してジイソシアネート化合物が1モル、2モル、3モル反応した化合物及び原料のジイソシアネート化合物等の混合物が得られる。イソシアネート基残存プレポリマーはこれらの混合物であってもよい。
【0033】
ポリイソシアネート成分は、脂環式ポリイソシアネート及びイソシアネート基残存プレポリマーの混合物であり、イソシアネート基含有率とは、この混合物のイソシアネート基含有率を意味する。ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は、ポリイソシアネート成分をメチルエチルケトンに溶解し、ジ−n−ビチルアミンを加え、指示薬にブロムフェノールブルー溶液を用い塩酸溶液で逆滴定することで求めることができる。
【0034】
ポリイソシアネート成分は、架橋密度や粘度を調整するために、更に他のポリイソシアネート化合物を併用させてもよい。その場合、他のポリイソシアネート化合物の含有量は、ポリイソシアネート成分の全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。このような範囲に設定することで、ポリイソシアネート化合物を数種併用した場合でも、ポリイソシアネート化合物間の反応性差によって生ずる、ウレタン樹脂組成物の硬化物の不均一性を防ぐことができる。
【0035】
併用可能な他のポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネートを原料としたイソシアヌレート型、ビゥレット型、又はアダクト型のポリイソシアネートが挙げられる。これらのようなポリイソシアネートを用いることで、得られるウレタン樹脂組成物の硬化物のTgを向上させることができる。
【0036】
(無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子は、SiO、Al及びCaOを含有し、更に酸化ホウ素(B)、フッ素(F)、酸化亜鉛(ZnO)等を含有した組成が好ましく、その屈折率を1.50〜1.52に調整したものであることが好ましい。これにより、無機酸化物粒子と、無機酸化物粒子を除いたウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物との、屈折率の差を0.02以下に設定することが可能になる。
【0037】
無機酸化物粒子は、ポリオール成分を含むA液に分散する。ポリイソシアネート成分を含むB液に分散した場合、無機酸化物粒子表面の水酸基がイソシアネート基と反応することを防ぐためである。
【0038】
A液に分散する無機酸化物粒子の量は、A液及びB液の合計量を基準として、30質量%以下であることが望ましい。これによりウレタン樹脂組成物の光透過性の低下を抑制することができる。無機酸化物粒子の量が30質量%を超えると、光透過性が著しく小さくなる場合がある。
【0039】
無機酸化物粒子の粒子径は平均粒子径で0.1〜100μmの範囲に設定することが好ましい。最小粒子径が0.1μm以下であると表面積が大きいため、A液に充填した際にその粘度が著しく増大する場合がある。一方、最大粒子径が100μmを超えると、金型成型時の樹脂の金型流路や注型成型時のシリンジで粒子が詰まる場合がある。また、平均粒子径の異なる複数の無機酸化物粒子を合わせて用いることで粘度や光透過性を調整してもよい。
【0040】
無機酸化物粒子はウレタン樹脂組成物との濡れ性を向上するため、カップリング剤処理してもよい。カップリング剤としては、エポキシ基、ウレイド基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0041】
無機酸化物粒子をA液に分散させるには、無機酸化物粒子を上記のポリオール成分に所定量加え、回転攪拌法によって分散処理することができる。このとき、無機酸化物粒子の凝集体が無くなるよう十分に分散処理することが好ましく、ポリオール成分中やポリオール成分と無機酸化物粒子の隙間に存在する空気を脱泡するために、減圧で回転攪拌法によって分散処理することが望ましい。
【0042】
(その他材料)
本実施形態のA液又はB液は、上記以外に、酸化防止剤、硬化触媒、カップリング剤、接着性付与剤、離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、有機充填材、重合禁止剤等を含んでもよい。また、成型性の観点から、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を含んでもよい。
【0043】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダード型フェノール系、硫黄系、リン系等の酸化防止剤が挙げられる。これらの中でも特にヒンダード型フェノール系、硫黄系酸化防止剤を、1種を単独で又は複数種を組み合わせて使用することが好ましい。酸化防止剤として、具体的には、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤の含有量は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の全量に対し、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.05〜0.3質量%であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量が0.05質量%以上であるとき、酸化防止剤としての効果が有効に得られやすい傾向にあり、5質量%以下であるとき、溶解性や硬化時の硬化物表面への析出等の問題が生じにくくなる傾向にある。酸化防止剤を加えることで、ウレタン樹脂組成物の硬化物の、熱や光による劣化を抑制することができる。
【0045】
(硬化触媒)
ウレタン樹脂組成物の硬化性を高めるために、硬化触媒を含有させても良い。硬化触媒は上記B液に含有させることが好ましい。硬化触媒としては、亜鉛、ジルコニウム、若しくはアルミニウム等の有機金属系、ジブチルスズラウレート等のスズ系、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカン−7−エン)のフェノール塩、オクチル酸塩、アミン、イミダゾール等の触媒を使用することができる。これらの中でも、ステアリン酸亜鉛が耐熱着色性及びウレタン樹脂組成物の室温での粘度安定性に優れるため好ましい。硬化物の透明性の観点から、硬化触媒として、かさ密度が0.12g/ml以下のステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0046】
硬化触媒の含有量は、ウレタン樹脂組成物全量に対して、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.002〜0.1質量%であることがより好ましい。硬化触媒の含有量が0.001質量%以上であるとき、硬化促進の効果が現れる傾向にあり、1質量%以下であるとき、硬化物の白濁を抑制できる傾向にある。
【0047】
(カップリング剤)
ウレタン樹脂組成物と被着体との接着性を高めるために、各種カップリング剤を含有させてもよい。カップリング剤としては、エポキシ基、ウレイド基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。ウレタン樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の全量に対して、0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0048】
(接着性付与剤)
ウレタン樹脂組成物と銀メッキやパラジウムメッキ等との接着性を高めるため、前記ウレタン樹脂組成物にチオール基を有する化合物を接着性付与剤として含有させてもよい。チオール基を有する化合物としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基含有シランカップリング剤や、2つ以上のチオール基を有する化合物(以下、ポリチオールという。)が好ましく、例えばチオール基が第一級炭素に結合している化合物、チオール基が第二級炭素に結合している化合物、1つ以上のチオール基が第一級炭素に結合し、1つ以上のチオール基が第二級炭素に結合している化合物等が挙げられる。
【0049】
(離型剤)
ウレタン樹脂組成物を成型して硬化物を得る際に、成型金型からの離型性を向上させる観点から、各種離型剤を含有させても良い。離型剤としては、脂肪酸系離型剤やシリコーン系離型剤を、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。脂肪酸系離型剤としては、下記一般式(1)で表される飽和脂肪酸が挙げられる。
−COOH (1)
【0050】
式中、Rは炭素数7〜28の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。
【0051】
上記飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸が挙げられる。また、一般式(1)においてRの炭素数は、通常7〜28であり、10〜22であることが好ましく、14〜18であることがより好ましい。中でも、炭素数が17のイソステアリン酸は、液体であり、ウレタン樹脂組成物の粘度を調整できる点で特に好ましい。
【0052】
シリコーン系離型剤としては、各種変性シリコーンを用いることができる。例えば、下記一般式(2)で表されるシリコーン−カプロラクトンブロック共重合体が挙げられる。
【0053】
【化1】

【0054】
式中、m及びnはm/nが0.5〜1.0を満たす正の整数を示す。R及びRは、それぞれ独立に、2価の炭化水素基又はポリエーテル鎖を示す。
【0055】
式(2)において、m/nの比が0.5以上であれば、他の材料との相溶性が高く、硬化体に白濁が生じる等の不具合を抑制できる。また、m/nの比が1.0以下であれば、成型金型との優れた離型性を得ることができる。上記シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体は、溶解性に優れる観点から、重量平均分子量が16000以下であることが好ましい。
【0056】
上記飽和脂肪酸及び上記シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体は、溶解性の観点から、ポリイソシアネート成分を含むB液に添加することが好ましい。
【0057】
上記離型剤の含有量は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の全量に対し、0.01質量%を超え、5.0質量%未満であることが好ましい。離型剤の含有量が0.01質量%より大きいとき、成型金型との離型性に優れる傾向があり、5.0質量%より小さいとき、硬化物のガラス転移温度等の耐熱性が低下することを抑制する傾向にある。
【0058】
(光学用接着剤)
本実施形態のウレタン樹脂組成物は2液型の接着剤として使用できる以外に、2液混合後に冷凍保管した1液型の接着剤としても使用できる。接着剤は、被着体と被着体との接着に用いるが、本樹脂の特徴である光透過性が高く、低応力であるという特徴から、光学用途の接着剤に適している。
【0059】
(硬化物)
本実施形態のウレタン樹脂組成物の硬化物は、ポリオール成分を含むA液とポリイソシアネート成分を含むB液とを混合し、これを加熱して反応させることにより製造することができる。ポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合比、及び水酸基残存プレポリマーとイソシアネート基残存プレポリマーの混合比は、ウレタン樹脂組成物中の(ポリオールと水酸基残存プレポリマーの合計の水酸基等量)/(ポリイソシアネートとイソシアネート基残存プレポリマーの合計のイソシアネート基等量)が0.7〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.1であることがより好ましい。上記混合比が0.7〜1.3の範囲にあることにより、硬化物の耐熱性、光学特性及び機械特性が向上する傾向にある。
【0060】
本実施形態のウレタン樹脂組成物を用いて、注型法、ポッティング法によって硬化物を製造する場合は、各成分の種類、組み合わせ、添加量にもよるが、60〜150℃で1〜10時間程度加熱硬化することが好ましく、特に80〜150℃で1〜10時間程度であることが好ましい。また、急激な硬化反応により発生する内部応力を低減するために、硬化温度を段階的に昇温することが望ましい。
【0061】
本実施形態のウレタン樹脂組成物を用いて、金型成型法によって硬化物を製造する場合は、液状トランスファー成型又はコンプレッション成型を用いることが望ましい。この場合は、樹脂組成物のゲル化時間が成型温度にて25〜200秒であることが好ましい。ゲル化時間がこれより短いと、ウレタン樹脂組成物が成型金型(以下、単に「金型」という。)内の流路を十分に満たす前に硬化し、硬化物の成型物に未充填部位やボイドが発生しやすくなる傾向にある。一方、ゲル化時間が200秒より長いと、硬化不十分な成型物となる傾向がある。ゲル化時間の調整は硬化促進剤の処方量にて調整することができる。
【0062】
実施形態の2液型ウレタン樹脂組成物を用いて液状トランスファー成型を行う場合、ウレタン樹脂組成物のA液及びB液を混合後、成型装置のポット内に充填し、プランジャーを起動させてウレタン樹脂組成物をポット内からランナ、ゲート等の流路を経由して、所定の温度に加熱した金型のキャビティ内に圧入する。金型は、通常、分離可能な上金型及び下金型から構成されており、それらを連結することによって、キャビティが形成される。その後、ウレタン樹脂組成物をキャビティ内に一定時間保持することによって、キャビティ内に充填したウレタン樹脂組成物を上記構造体上で硬化する。これによりウレタン樹脂組成物の硬化物が、目的とする形状に成型される。
【0063】
金型温度は、上記流路においてウレタン樹脂組成物の流動性が高く、キャビティ内ではウレタン樹脂組成物が短時間で硬化できるような温度に設定することが好ましい。この温度は、ウレタン樹脂組成物の組成にも依存するが、例えば120〜200℃であることが好適である。また、キャビティ内にウレタン樹脂組成物を圧入する際の射圧は、キャビティ内全体にウレタン樹脂組成物を隙間なく充填できるような圧力を設定することが好ましく、具体的には2MPa以上であることが好ましい。射圧が2MPa以上であるとき、キャビティ内の未充填部位や、ボイドが発生しにくくなる傾向にある。
【0064】
ウレタン樹脂組成物の硬化物を金型から取り出しやすくするために、キャビティを形成する金型内壁面に離型剤を塗布又は噴射することもできる。さらに、硬化物におけるボイドの発生を抑制するために、キャビティ内を減圧できる公知の減圧成型装置を用いてもよい。
【0065】
以上説明した液状トランスファー成型やコンプレッション成型法では、硬化時間を短く設定でき、硬化物作製の生産性が向上する。
【0066】
(光学成形体)
本実施形態のウレタン樹脂組成物は注型成型やポッティング成型、金型成型等の方法で任意の形状に成形できるため、レンズやシート等の光学成形体として使用できる。
【0067】
(半導体装置)
図1は光半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示す光半導体装置100は、発光ダイオード素子2と、発光ダイオード素子2が封止されるように設けられた透明な封止部材1とを備える表面実装型の発光ダイオードである。発光ダイオード素子2は、ケース部材5に形成されたキャビティ10の底部に配置されている。発光ダイオード素子2は、接着部材20を介してケース部材5に接着されており、ワイヤ8を介してリードフレーム7と接続されている。
【0068】
封止部材1は、発光ダイオード素子2を覆うとともにキャビティ10を充填している。封止部材1は、例えば、上記実施形態のウレタン樹脂組成物をキャビティ10内に流し込み、キャビティ10内のウレタン樹脂組成物を加熱によって硬化する方法により形成される。
【0069】
図2は、光半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。図2に示す光半導体装置200は、一対のリードフレーム102(102a,102b)と、一方のリードフレーム102a上に設けられた接着部材103と、接着部材103上に備えられた光半導体素子104と、光半導体素子104と他方のリードフレーム102bとを電気的に接続するワイヤ105と、一対のリードフレーム102の一部、接着部材103、光半導体素子104及びワイヤ105を封止する封止部材106とを有している。光半導体装置200は、表面実装型と呼ばれるものである。
【0070】
リードフレーム102は、一方のリードフレーム102aと他方のリードフレーム102bとからなる。このリードフレーム102は、金属等の導電材料からなる部材であり、その表面は通常銀メッキによって被覆されている。また、一方のリードフレーム102aと他方のリードフレーム102bとは、互いに分離している。接着部材103は、一方のリードフレーム102aと光半導体素子104とを接着して互いに固定すると共に、それらを電気的に接続するための部材である。接着部材103は、例えば銀ペーストから形成される。
【0071】
光半導体素子104には、順方向に電圧を加えた際に発光する発光ダイオード素子等が挙げられる。また、ワイヤ105は光半導体素子104と他方のリードフレーム102bとを電気的に接続できる金属細線等の導電ワイヤである。
【0072】
封止部材106は、上記実施形態のウレタン樹脂組成物の硬化物で形成される。封止部材106は、光半導体素子104を外気から保護すると共に、光半導体素子104から発せられた光を外部に取り出す役割を担っているため、高い光透過性を有するものである。本実施形態において、封止部材106は凸レンズ形状であるレンズ部106bによって光半導体素子104から発せられた光が集約される。
【0073】
以上説明した本実施形態の光半導体装置200は、その製造工程の一部に液状トランスファー成型又はコンプレッション成型を採用することができ、これによって成型時間を短くして生産性を高めることが可能となる。また、液状トランスファー成型又はコンプレッション成型を採用することで、図2のような光の取り出し効率が向上するようなレンズ形状を付与する効果も得られる。
【0074】
光半導体装置200は、光半導体素子と、これを封止する封止部材とを備えていればよく、上述のような表面実装型に代えて砲弾型であってもよい。
【0075】
以上説明した本実施形態に係るウレタン樹脂組成物の硬化物は、光透過性が高く、応力が低減されているため、被着体から剥離し難く、接続信頼性に優れる光半導体装置を作製することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。配合割合は、特にことわりのない限り質量部で表す。
【0077】
(樹脂組成A)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン1モルにプロピレンオキサイドを2モル付加し水酸基価が670(mg/gKOH)のポリオール(A2)を作製し、ポリオール成分A’液とした。
【0078】
一方、イソホロンジイソシアネート(Degussa社製 VESTANAT IPDI)(B1)88.80質量部、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製)8.93質量部を窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃で8時間反応させて、イソシアネート基残存のプレポリマ(P1)を作製した。このイソシアネート基残存プレポリマ(P1)52.3質量部にイソホロンジイソシアネート(B1)11.9質量部を加え、更にヒンダード型フェノール系酸化防止剤として、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(住友化学株式会社製、商品名スミライザーGA−80)(D)0.1質量部を混合し、イソシアネート基含有率28.02%のポリイソシアネート成分を含むB液を得た。
【0079】
上記ポリオール成分A’液37.1質量部とB液64.3質量部とを、室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を作製し、その硬化物の589.3nmでの屈折率を測定したところ1.50であった。
【0080】
(樹脂組成B)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン1モルにプロピレンオキサイドを3モル付加し水酸基価が550(mg/gKOH)のポリオール(A3)を作製し、ポリオール成分A’液とした。
【0081】
一方、実施例1のイソシアネート基残存プレポリマ(P1)48.3質量部にイソホロンジイソシアネート(B1)11.0質量部を加え、更にヒンダード型フェノール系酸化防止剤(住友化学株式会社製、商品名スミライザーGA−80)(D)0.1質量部を混合し、イソシアネート基含有率28.02%のポリイソシアネート成分を含むB液を得た。
【0082】
上記ポリオール成分を含む液40.6質量部とB液59.4質量部とを、室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を作製し、その硬化物の589.3nmでの屈折率を測定したところ1.50であった。
【0083】
(樹脂組成C)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン1モルにプロピレンオキサイドを1モル付加し、分子量が192、水酸価が880(mg/gKOH)のポリオール(A1)61.81質量部を作製し、さらに接着性付与剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM−803)(F)1.06質量部を加え均一になるまで攪拌し、ポリオール成分A’液とした。
【0084】
一方、トリメチロールプロパン1.56質量部、及び4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)(Degussa社製、商品名H12MDI)22.93質量部を混合し、窒素雰囲気下80℃で10時間加熱撹拌し、イソシアネート基残存プレポリマー(P2)を得た。ポリイソシアネート成分として、上記イソシアネート基残存プレポリマー(P2)24.49質量部、4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)(B2)22.93質量部、ノルボルネンジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製、商品名コスモネートNBDI)(B3)41.8質量部、イソホロンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート型ポリイソシアネートの75質量%酢酸ブチル溶液(Degussa社製、商品名Vestanat T1890ME)(B4)82.00質量部、及びヒンダード型フェノール系酸化防止剤(住友化学株式会社製、商品名スミライザーGA−80)(D)0.1質量部を混合し、酢酸ブチルを減圧下で加熱脱溶した。一方、離型剤としてイソステアリン酸(高級アルコール工業株式会社製、商品名イソステアリン酸EX)(E1)5.34質量部及びシリコーン−カプロラクトン共重合体(E2)1.07質量部をポリイソシアネート成分に加え、80℃で2時間加熱混合した。シリコーン−カプロラクトン共重合体(E2)は両末端ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名X−22−4952)1モルにカプロラクトンを22モル付加して作製し、上記一般式(2)において、m/n=0.6、重量平均分子量Mw=4,000であった。その後、室温まで冷却後に硬化触媒として、ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製、商品名MZ−2)(C)0.11質量部を加え、均一になるまで撹拌し、ポリイソシアネート成分を含むB液を調製した。
【0085】
上記ポリオール成分を含む液62.87質量部とB液157.44質量部とを室温にて均一となるまで撹拌して、ウレタン樹脂組成物を作製し、その硬化物の589.3nmでの屈折率を測定したところ1.51であった。
【0086】
表1に、樹脂組成A、B、Cの組成を示す。
【0087】
【表1】

【0088】
(実施例1)
樹脂組成AのA’液32.0質量部に、SiO、Al、B、CaO及びFを含み、589.3nmでの屈折率が1.50である、平均粒子径35μmの無機酸化物粒子α(日本フリット株式会社製、商品名CF0093)10.0質量部を、減圧回転攪拌処理で分散させ、A液を調製した。A液42.0質量部に、樹脂組成AのB液58.0質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0089】
(実施例2)
樹脂組成AのA’液26.8質量部に、無機酸化物粒子α25.0質量部を、減圧回転攪拌処理で分散させ、A液を調製した。A液51.8質量部に、樹脂組成AのB液48.2質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0090】
(実施例3)
樹脂組成Aのポリオール成分を含む液26.8質量部に、SiO、Al、B、CaO及びFを含み、589.3nmでの屈折率が1.51である、平均粒子径20μmの無機酸化物粒子β(ポッターズバロティーニ株式会社製)25.0質量部を、減圧回転攪拌処理で分散させ、A液を調製した。A液51.8質量部に、樹脂組成AのB液48.2質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0091】
(実施例4)
樹脂組成BのA’液36.5質量部に、無機酸化物粒子α10.0質量部を、減圧回転攪拌処理で分散させ、A液を調製した。A液46.5質量部に、樹脂組成BのB液53.5質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0092】
(実施例5)
樹脂組成CのA’液25.7質量部に、無機酸化物粒子α10.0質量部を、減圧回転攪拌処理で分散させ、A液を調製した。A液35.7質量部に、樹脂組成CのB液64.3質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0093】
(比較例1)
樹脂組成AのA’液35.7質量部に、樹脂組成AのB液64.3質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0094】
(比較例2)
樹脂組成AのA’液32.1質量部に、589.3nmでの屈折率が1.45である、平均粒子径25μmの溶融シリカである無機酸化物粒子γ(株式会社電気化学工業製、商品名FB950)10.0質量部を、減圧回転攪拌処理で分散させ、A液を調製した。A液42.1質量部に、樹脂組成AのB液57.9質量部を室温にて混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0095】
実施例及び比較例のウレタン樹脂組成物を下記方法にしたがって評価した。
【0096】
<光半導体パッケージ(光半導体装置)の作製>
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られたウレタン樹脂組成物を、外形が5mm×5mm×1mm、キャビティの直径が4mmである発光素子実装済の表面実装型パッケージのキャビティ内にポッティング法によって充填し、100℃で1時間、125℃で1時間、150℃で4時間、加熱、硬化して、図1に示したような光半導体パッケージを作製した。
【0097】
また、実施例5で得られたウレタン樹脂組成物を、液状トランスファー成型機を用い、金型温度165℃、射圧9.8MPa、注入時間30秒、硬化時間120秒の条件で成型し、さらに150℃のオーブン中で4時間、後硬化して、図2に示したような光半導体パッケージを作製した。
【0098】
<熱膨張係数>
上記ウレタン樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数を熱機械分析装置を用いて測定した。ガラス転移温度以下の温度域での熱膨張係数(α1)を表2に示す。
【0099】
<光束比>
作製した光半導体パッケージの光学特性として光束比を評価した。光束比は、実施例1〜4及び比較例2の光半導体パッケージの光束量を、比較例1の光半導体パッケージの光束量で規格化して求めた。一方、実施例5の光半導体パッケージの光束比は、実施例5の光半導体パッケージの光束量を、比較例1のウレタン樹脂組成物を用いて実施例5の光半導体パッケージと同様に作製した光半導体パッケージの光束量で規格化して求めた。結果を表2に示す。
【0100】
<熱衝撃性試験>
作製した光半導体パッケージの信頼性として耐熱衝撃性を評価した。評価条件は、−40℃:5分間、室温:30秒間、110℃:5分間の条件で、500サイクル時に樹脂硬化物と、素子やリードフレームとの剥離の有無を調べた。結果を表2に示す。サンプル数8個の光半導体パッケージにおいて、剥離が認められなかった場合は「A」、1個でも剥離があった場合は「B」と記した。
【0101】
【表2】

【0102】
実施例1〜5の光半導体パッケージは、比較例1の光半導体パッケージと比較して、光束比の低下が小さく、耐熱衝撃性試験での剥離は認められなかった。したがって、実施例1〜5のウレタン樹脂組成物の硬化物は、光透過性が十分に高く、応力を十分に低減できていることが確認された。一方、比較例2の光半導体パッケージは、耐熱衝撃性試験での剥離はなかったものの、光束比の低下が大きく、光透過性が十分ではないことが確認された。
【符号の説明】
【0103】
1,106…封止部材、2…発光ダイオード素子、5…ケース部材、7,102,102a,102b…リードフレーム、8,105…ワイヤ、10…キャビティ、20,103…接着部材、100,200…光半導体装置、104…光半導体素子、106a…平板状部、106b…レンズ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分及び無機酸化物粒子を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液と、からなる2液型ウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリオール成分は、水酸基価が550〜900mgKOH/gである3官能以上のポリオールを含有し、
前記ポリイソシアネート成分は、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が前記脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物を含有し、
波長589.3nmにおける前記A液から前記無機酸化物粒子を除いた液及び前記B液を混合することによって硬化して得られる硬化物の屈折率と、前記無機酸化物粒子の屈折率との差が、0.02以下である、2液型ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化物及び前記無機酸化物粒子の波長589.3nmにおける屈折率が、1.52以下である、請求項1に記載の2液型ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子が、二酸化珪素、酸化アルミニウム及び酸化カルシウムを含有する、請求項1又は2に記載の2液型ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子の含有量が、前記A液及び前記B液の合計量を基準として、30質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の2液型ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の2液型ウレタン樹脂組成物を含有する、光学用接着剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の2液型ウレタン樹脂組成物を硬化して得られる、光学成形体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の2液型ウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物からなる封止部材を備える、光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193238(P2012−193238A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56648(P2011−56648)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】