説明

エアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料及びエアギャップ形成方法

【課題】CVD法を用いることなくエアギャップを形成可能なエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料を提供すること。
【解決手段】(a)所定のシロキサンポリマー、(b)アルカノールアミン、及び(c)有機溶剤を含むエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料は、スピン塗布法によりシリカ系被膜を形成する際に用いられるものである。このエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料によれば、スピン塗布法によって塗布される場合にも凹部を埋め込むことはなく、開口度の大きなエアギャップを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板又は半導体多層配線基板において絶縁構造として用いられるエアギャップを形成するためのエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料、及びその材料を用いたエアギャップ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化及び高性能化に伴って、素子間を結ぶ配線の間隔が狭小化している。このような配線の間隔の狭小化に伴って、寄生容量が生じることが知られており、斯かる寄生容量の低減化が求められている。一般に、層間絶縁膜を構成する材料としては、SOG材料やCVD系材料等が用いられているが、これらの材料において低い誘電率を実現するためには、ケイ素や炭素を含有する材料や、細孔を形成可能な材料等の低誘電率材料が用いられている。しかしながら、これらの低誘電率材料を用いた場合、機械的強度の低下や、プロセス耐性の低下等の問題が生じるものとされており、低誘電率材料を用いずに寄生容量を低減する手段を開発することが求められていた。
【0003】
低誘電率材料を用いる以外に寄生容量を低減する技術としては、配線間に意図的に空隙を形成する技術であるエアギャップ形成技術が知られている。例えば、特許文献1には、半導体基板上に形成された第一の絶縁膜上に、互いに隣接するように複数の配線を形成し、当該第一の絶縁膜上にプラズマCVD法により第二の絶縁膜を形成する工程、隣接する配線の配線間にエアギャップが形成されるように配線を第二の絶縁膜により被覆する工程等を有する半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−109043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CVD法によりエアギャップを形成する場合、開口部の内部にも絶縁膜の堆積が生じるため、この方法により形成されるエアギャップは開口度が低下し易いという問題がある。開口度の低いエアギャップが形成される場合には、配線間容量が必要とされるレベルまで低減化されないといった問題が生じる。
【0006】
従って、本発明は、CVD法を用いることなく、スピン塗布法によってエアギャップを形成可能なエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料、及びその材料を用いたエアギャップ形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った。その結果、所定のシロキサンポリマー、アルカノールアミン、及び有機溶剤を含むシリカ系被膜形成材料によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第一の態様は、(a)下記一般式(a−1)で示されるシラン化合物を加水分解縮合させてなるシロキサンポリマー、(b)アルカノールアミン、及び(c)有機溶剤を含有するエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料である。
【化1】

[一般式(a−1)中、Rは水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基であり、Rは一価の有機基であり、nは0以上2以下の整数を示す。]
【0009】
本発明の第二の態様は、凹部を有する半導体基板又は半導体多層配線基板上に、本発明のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料をスピン塗布法により塗布し、焼成してシリカ系被膜を形成するエアギャップ形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料は、スピン塗布法によりシリカ系被膜を形成する際に用いられるものである。ここで、上記エアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料は、(a)所定のシロキサンポリマー、(b)アルカノールアミン、及び(c)有機溶剤を含有するので、スピン塗布法によって塗布される場合にも、エアギャップを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図2】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図3】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図4】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図5】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図6】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図7】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図8】本発明の実施例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図9】本発明の比較例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【図10】本発明の比較例により形成されるシリカ系被膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<エアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料>
本発明のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料(以下、単に「シリカ系被膜形成材料」という。)は、(a)所定のシロキサンポリマー、(b)アルカノールアミン、及び(c)有機溶剤を含有する。また、本発明のシリカ系被膜形成材料は、必要に応じて(d)水及び(e)酸を含有する。本発明のシリカ系被膜形成材料を用いてスピン塗布法によりシリカ系被膜を形成する場合、半導体基板又は半導体多層配線基板上に形成された凹部が埋め込まれる前にシリカ系被膜形成材料の流動性が低下するため、スピン塗布法によってもエアギャップを形成することができる。
【0014】
[(a)シロキサンポリマー]
本発明のシリカ系被膜形成材料は、下記一般式(a−1)で示されるシラン化合物(以下、単に「シラン化合物」と言及することがある。)を加水分解縮合させてなるシロキサンポリマーを含有する。
【化2】

[一般式(a−1)中、Rは水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基であり、Rは一価の有機基であり、nは0以上2以下の整数を示す。]
【0015】
ここで、一価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等を挙げることができる。これらの中でも、アルキル基及びアリール基が好ましい。アルキル基の炭素数は1以上5以下が好ましく、具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。また、アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、アルキル基の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0016】
上記一般式(a−1)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0017】
((a−1−1)n=0の場合)
n=0の場合、上記一般式(a−1)で示されるシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。
【0018】
((a−1−2)n=1の場合)
n=1の場合、上記一般式(a−1)で示されるシラン化合物としては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、モノプロピルトリメトキシシラン、モノプロピルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン;モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0019】
((a−1−3)n=2の場合)
n=2の場合、上記一般式(a−1)で示されるシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0020】
(シロキサンポリマーの質量平均分子量)
本発明のシリカ系被膜形成材料に含有されるシロキサンポリマーは、ゲル濾過クロマトグラフィーでのポリスチレン換算で、質量平均分子量が3,000以上1,000,000以下であることが好ましい。シロキサンポリマーの質量平均分子量が上記範囲内のものであることにより、スピン塗布法によりシリカ系被膜を形成する場合にも、シリカ系被膜形成材料が半導体基板又は半導体多層配線基板に形成された凹部を埋め込みにくいものとなり、半導体基板又は半導体多層配線基板上に開口度の大きなエアギャップを形成することができる。上記質量平均分子量は、5,000以上100,000以下であることがより好ましく、5,500以上50,000以下であることが更に好ましく、6,000以上20,000以下であることが特に好ましい。
【0021】
(シロキサンポリマーの分散度)
本発明のシリカ系被膜形成材料に含有されるシロキサンポリマーは、分散度(質量平均分子量/数平均分子量)が1.0を超え10以下であることが好ましい。シロキサンポリマーの分散度が上記範囲内のものであることにより、半導体基板又は半導体多層配線基板上に開口度の大きなエアギャップを形成することができる。上記分散度は1.5以上8以下であることがより好ましく、2以上5以下であることが更に好ましい。
【0022】
上記一般式(a−1)で示されるシラン化合物の加水分解縮合物であるシロキサンポリマーは、重合モノマーとなる上記シラン化合物を、有機溶媒中、酸触媒又は塩基触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
なお、重合モノマーとなるシラン化合物は、単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよいが、二種以上を混合して用いることが好ましい。その際、上記一般式(a−1)でn=0のシラン化合物の割合が1〜50質量%であり、n=1又はn=2のシラン化合物の割合が99〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、n=0のシラン化合物の割合が5〜40質量%であり、n=1又はn=2のシラン化合物の割合が95〜60質量%である。
【0023】
また、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン;トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等のトリフェニルアルコキシシラン等を加水分解時に添加してもよい。
【0024】
上記シラン化合物を縮合させるためには、まず上記シラン化合物を加水分解する必要がある。添加する水の量は、一般的には、上記一般式(a−1)で示されるシラン化合物の合計モル数に対して、1.0倍モル以上10.0倍モル以下とすることが好ましく、1.5モル倍以上8.0倍モル以下とすることがより好ましい。水の添加量を1.0倍モル以上とすることにより、加水分解度を十分に大きくすることができ、被膜形成性を良好にすることができる。一方、水の添加量を10.0倍モル以下とすることによりゲル化を防止することができ、保存安定性を良好にすることができる。
【0025】
また、一般式(a−1)で示されるシラン化合物を加水分解縮合する場合、酸触媒及び塩基触媒を段階的に用いることが好ましい。具体的には、溶媒中に上記シラン化合物を投入し、酸触媒の存在下において撹拌することにより、加水分解縮合反応を進行させ、次いで所定の処理の後、塩基触媒の存在下において、上記シラン化合物の加水分解縮合物を撹拌することにより、更に加水分解縮合反応を進行させることが好ましい。
【0026】
加水分解縮合反応に用いられる酸触媒としては特に限定されるものではなく、従来慣用的に使用されている有機酸、無機酸のいずれをも使用することができる。ここで、有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機カルボン酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。酸触媒は、アルコキシシランと水との混合物に直接添加してもよいし、水とともに酸性水溶液として添加してもよい。
【0027】
上記シラン化合物の加水分解反応は、室温で通常5時間から100時間程度で完了する。また、室温以上の加熱温度において、上記一般式(a−1)で示される1種以上のシラン化合物を含む有機溶剤に酸触媒又は塩基触媒を添加して反応させることにより、短い反応時間で反応を完了させることも可能である。加水分解されたシラン化合物は、その後、縮合反応を起こしてSi−O−Siのネットワークを形成する。
【0028】
なお、加水分解縮合反応で用いられる水や副生成物としてのアルコールは、反応後に必要に応じて除去してもよい。これにより、余分な反応を抑え、シリカ系被膜形成材料の保存安定性を向上させることができる。
【0029】
[(b)アルカノールアミン]
本発明のシリカ系被膜形成材料は、上記塩基触媒としてアルカノールアミンを含有する。アルカノールアミンを含有することにより、スピン塗布法によりシリカ系被膜形成材料が塗布された直後からシロキサンポリマーの架橋反応が更に進行し、半導体基板又は半導体多層配線基板上に形成された凹部を埋め込む前にシリカ系被膜形成材料の流動性が失われる。このため、半導体基板又は半導体多層配線基板に形成された凹部を埋め込むことなく、半導体基板又は半導体多層配線基板上にシリカ系被膜形成材料を塗布することができる。
【0030】
アルカノールアミンとしては、特に限定されるものではなく、具体的には、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジグリコールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミン、等を挙げることができる。
これらの中でも、1級アミノ基を有するアルカノールアミンであるモノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ジグリコールアミン等、又は2級アミノ基を有するN−メチルエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン等を用いることが好ましい。
なお、以上のアルカノールアミンは、単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
(アルカノールアミンの含有量)
本発明のシリカ系被膜形成材料は、上記アルカノールアミンを0.01質量%以上10質量%以下含有することが好ましい。アルカノールアミンを上記の含有量で含有することにより、シリカ系被膜形成材料の塗布性を低下させず、且つ半導体基板又は半導体多層配線基板上に形成された凹部を埋め込むことなく、半導体基板又は半導体多層配線基板上にシリカ系被膜形成材料を塗布することができる。上記含有量は、0.1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
[(c)有機溶剤]
本発明のシリカ系被膜形成材料は、有機溶剤を含有する。有機溶剤を含有することにより、シリカ系被膜形成材料の塗布性及び膜厚均一性を良好なものとすることができる。斯かる有機溶剤としては、従来からシリカ系被膜形成材料に用いられるものとして一般に知られている有機溶剤を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−ブトキシ−1−ブタノール等の一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン等を挙げることができる。これらの中でも、一価アルコール、及び多価アルコールを好ましく用いることができる。また、これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
(高揮発性有機溶剤)
なお、本発明においては、揮発性が高い有機溶剤を添加することが好ましい。このような高揮発性有機溶剤を添加することにより、スピン塗布法によりシリカ系被膜形成材料を塗布した直後に溶剤の揮発が進み、シロキサンポリマーの架橋反応やこれに伴う流動性の低下をより促進することができる。その結果、シリカ系被膜形成材料を塗布することにより形成されるエアギャップの開口度や形状を良好なものとすることができる。以上の条件を充足する有機溶剤としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシプロパン)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類等を挙げることができる。これらの中でも、ジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシプロパン)、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノールが好ましい。
【0034】
(有機溶剤の含有量)
有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、シロキサンポリマーの濃度が0.5質量%以上15質量%以下となるように調整することが好ましく、1質量%以上10質量%以下となるように調整することがより好ましい。有機溶剤の含有量を上記範囲内のものとすることにより、シリカ系被膜形成材料の塗布性を向上させることができる。
なお、上記高揮発性有機溶剤を添加する場合、有機溶剤の含有量の0.1質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上40質量%以下とすることがより好ましい。
【0035】
[(d)水]
本発明のシリカ系被膜形成材料は、水を含有していてもよい。シリカ系被膜形成材料が水を含有することにより、シロキサンポリマーが有する加水分解性基の加水分解縮合を可能にし、半導体基板又は半導体多層配線基板上に開口度の大きなエアギャップを形成することができる。
【0036】
(水の含有量)
水の含有量は、0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。水の含有量が上記範囲内にあることにより、シリカ系被膜形成材料の塗布性を良好に保ちつつ、その塗布の際に半導体基板又は半導体多層配線基板に形成された凹部の埋め込みを防止することができる。上記含有量は、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
[(e)酸]
本発明のシリカ系被膜形成材料は、酸を含有することが好ましい。酸としては特に限定されるものではなく、従来慣用的に使用されている有機酸、無機酸のいずれをも使用することができる。ここで、有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸等の有機カルボン酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。シリカ系被膜形成材料が酸を含有することにより、保存時におけるシロキサンポリマーの過剰な架橋反応を防止し、シリカ系被膜形成材料の保存安定性を向上させることができる。
【0038】
本発明のシリカ系被膜形成材料における酸の含有量は、0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。酸の含有量が上記範囲内のものであることにより、シリカ系被膜形成材料の保存安定性を向上できるとともに、アルカノールアミンを添加することによる効果を阻害することがない。上記含有量は、0.001質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
また、酸は、本発明のシリカ系被膜形成材料のpHが3以上7以下となるように含有されることが好ましい。シリカ系被膜形成材料のpHが上記範囲内のものとなることにより、シリカ系被膜形成材料の保存安定性を向上できるとともに、アルカノールアミンを添加することによる効果を阻害することがない。
【0040】
[その他の成分]
本発明のシリカ系被膜形成材料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の樹脂成分や各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シラン化合物の加水分解縮合のための塩基触媒として、アルカノールアミン以外の従来慣用的に使用されている有機塩基や無機塩基を添加してもよい。
有機塩基としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム水酸化物;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等のシラザン化合物;トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のアミノシラン化合物;ヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン化合物;メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン;2−エチルヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミン、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、ヒドラジン等のその他の含窒素化合物を挙げることができる。
無機塩基としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
なお、以上の塩基触媒は、単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
また、シロキサンポリマーの構成単位となるシラン化合物を添加してもよい。そのようなシラン化合物としては、例えば、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0042】
更に、焼成後のシリカ系被膜の強度向上のために、元素周期表におけるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を添加してもよい。そのような金属化合物としては、例えば、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのシュウ酸塩、乳酸塩等を挙げることができる。
【0043】
<シリカ系被膜形成材料の調製方法>
本発明のシリカ系被膜形成材料の調製方法は、シロキサンポリマー及び有機溶剤を含有する母液を調製し(母液調製工程)、この母液に対してアルカノールアミンや上記添加剤等を添加した後(添加工程)、希釈溶剤として有機溶剤を添加する(希釈工程)方法である。また、本発明のシリカ系被膜形成材料の調製方法は、希釈工程の後に、酸添加工程を有していてもよい。
【0044】
[母液調製工程]
母液調製工程とは、有機溶剤中で上記シラン化合物を加水分解縮合させてシロキサンポリマーを合成し、シリカ系被膜形成材料の母液を調製する工程である。シロキサンポリマーの合成後には、加水分解縮合反応で用いられる水や副生成物としてのアルコールを除去してもよい。また、水やアルコールを除去した後、母液の濃度調整のために更に有機溶剤を添加してもよい。
【0045】
上記母液中の有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、シロキサンポリマーの濃度(母液ポリマー濃度)が5質量%以上30質量%以下となるように調整することが好ましく、8質量%以上25質量%以下となるように調整することがより好ましい。なお、有機溶剤としての高揮発性有機溶剤は、この母液調製工程ではなく、後段の希釈工程で添加することが好ましい。
【0046】
[添加工程]
添加工程とは、母液に対してアルカノールアミンを添加し、必要に応じて水、添加剤等を更に添加する工程である。添加工程では、母液に対してアルカノールアミン等を添加して撹拌する。撹拌時間は特に限定されるものではないが、20分以上120分以下であることが好ましい。
【0047】
[希釈工程]
希釈工程とは、アルカノールアミン等が添加された母液に有機溶剤を添加して希釈し、シリカ系被膜形成材料を調製する工程である。有機溶剤の添加量は、特に限定されるものではないが、シロキサンポリマーの濃度(最終ポリマー濃度)が0.5質量%以上15質量%以下となるように調整することが好ましく、1質量%以上10質量%以下となるように調整することがより好ましい。なお、後段で酸を添加する場合には、酸添加後の最終ポリマー濃度が上記の範囲内となることが好ましい。
【0048】
[酸添加工程]
本発明のシリカ系被膜形成材料の調製方法は、必要に応じて酸添加工程を有していることが好ましい。ここで、酸添加工程とは、希釈工程後のシリカ系被膜形成材料に対して酸を添加する工程である。このように酸を添加することにより、保存時におけるシロキサンポリマーの過剰な架橋反応を防止し、シリカ系被膜形成材料の保存安定性を向上させることができる。
【0049】
<エアギャップ形成方法>
本発明のエアギャップ形成方法は、凹部を有する半導体基板又は半導体多層配線基板上に、本発明のシリカ系被膜形成材料をスピン塗布法により塗布し(塗布工程)、焼成してシリカ系被膜を形成する(焼成工程)方法である。また、本発明のエアギャップ形成方法は、必要に応じて塗布工程と焼成工程との間に、加熱工程を有していてもよい。更に、焼成工程の前、又は焼成工程と並行して紫外線照射工程を有していてもよい。
【0050】
[塗布工程]
塗布工程とは、凹部を有する半導体基板又は半導体多層配線基板上に本発明のシリカ系被膜形成材料を塗布し、塗布膜を形成する工程である。ここで、基板上にシリカ系被膜形成材料を塗布して塗布膜を形成する方法としては、スピン塗布法が採用される。本発明のエアギャップ形成方法においては、所定のシリカ系被膜形成材料を用いているので、スピン塗布法によってもエアギャップを形成することができる。
【0051】
ここで、スピン塗布法としては、一般に半導体基板又は半導体多層配線基板を回転させた状態で塗布液を滴下し、塗布膜を形成するダイナミックディスペンス法と、半導体基板又は半導体多層配線基板を静止させた状態で塗布液を滴下し、次いで半導体基板又は半導体多層配線基板を回転させて塗布膜を形成するスタティックディスペンス法とが知られている。本発明のエアギャップ形成方法においては、スピン塗布法として、ダイナミックディスペンス法及びスタティックディスペンス法のいずれをも採用することができるが、半導体基板又は半導体多層配線基板上に形成された凹部の埋め込みをより回避する上ではダイナミックディスペンス法を採用することが好ましい。
【0052】
本発明のエアギャップ形成方法の適用対象となる半導体基板及び半導体多層配線基板は、シリコンウエハ上に、必要に応じて配線層や絶縁層等が形成されたものである。ここで、これらの半導体基板及び半導体多層配線基板に形成される凹部については、従来公知の手法により形成すればよい。
【0053】
[加熱工程]
本発明のエアギャップ形成方法は、必要に応じて加熱工程を有していることが好ましい。ここで、加熱工程とは、本発明のシリカ系被膜形成材料を半導体基板又は半導体多層配線基板に塗布した後、塗布膜を乾燥させる工程である。この加熱工程の際には、シロキサンポリマー内に含まれる水酸基同士の縮合反応も進行し、緻密な塗布膜が形成されることとなる。
【0054】
加熱工程における加熱温度は特に限定されるものではないが、80℃以上200℃以下であることが好ましい。加熱時間についても特に限定されるものではないが、30秒以上300秒以下であることが好ましく、60秒以上180秒以下であることがより好ましい。
【0055】
[焼成工程]
焼成工程とは、加熱後の塗布膜を焼成してシリカ系被膜を形成する工程である。焼成工程では、シロキサンポリマーが有する水酸基同士の縮合反応が進行し、緻密なSi−O−Siネットワークが形成される。なお、この縮合反応は上記加熱工程でも進行するが、焼成工程ではこの縮合反応がより進行し、より緻密なシリカ系被膜を形成することができる。
【0056】
焼成工程における焼成温度は特に限定されるものではないが、350℃以上700℃以下であることが好ましく、400℃以上600℃以下であることがより好ましい。焼成時間についても特に限定されるものではないが、通常の焼成炉を用いる場合には10分以上2時間以下であることが好ましく、20分以上1時間以下であることがより好ましい。また、高速熱処理装置を用いる場合には10秒以上10分以下であることが好ましい。
【0057】
[紫外線照射工程]
本発明のエアギャップ形成方法は、焼成工程の前、又は焼成工程と並行して紫外線照射工程を有していてもよい。紫外線を照射することで、より緻密で強固なシリカ系被膜を形成することができ、機械的強度を上げることができる。
【0058】
本発明のシリカ系被膜形成材料は、(a)所定のシロキサンポリマー、(b)アルカノールアミン、及び(c)有機溶剤を含有するので、スピン塗布法によって塗布される場合にも凹部を埋め込むことはなく、エアギャップを形成することができる。
【0059】
なお、本発明により形成されたエアギャップは、加工プロセス等でダメージを受けた場合、修復工程を実施してもよい。例えば、エッチングやアッシング等の加工プロセスにより塗布膜がダメージを受け、変質する場合がある。具体的には、シロキサンポリマーの疎水基(Si−CH等)が分解し、シラノール化することがある。そこで、修復工程では、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)等を用いたシリル化により、このようなダメージを修復することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
<実施例1から39、比較例2から6>
表1から表7に示されたシラン化合物を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP)中、表に示すモル比で混合して加水分解縮合を行い、質量平均分子量2000程度のシロキサンポリマーを調製した。そして、水及び副生成物のアルコールを除去するための濃縮調整を行った後、PGPを加えて、表1から表7に示されたポリマー濃度の母液を調製した。
これらの溶液に対して、表1から表7に示されたアルカノールアミン又は塩基触媒を表1から表7に示された最終濃度となるように加えて、40分ほど撹拌した。なお、実施例2,4,5,12,14,15,28では、アルカノールアミンの添加の際に、表1から表4に示されたその他の成分を添加した。
そして、これらの溶液に対して、表1から表7に示された希釈溶剤を表1から表7に示された最終濃度となるように加えて撹拌した。更に、これらの溶液に対して表1から表7に示された酸を表1から表7に示された最終濃度となるように加えて撹拌し、表1から表7に示された最終ポリマー濃度及びpHを有するシリカ系被膜形成材料を得た。なお、シロキサンポリマーの質量平均分子量及び分散度についても併せて表1から表7に示した。
【0062】
<比較例1>
市販のシリカ系被膜形成材料として「OCD T−7」(製品名、東京応化工業(株)製)を用意した。このシリカ系被膜形成材料は、アルカノールアミンを含有しないものである。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
なお、表1から表7で用いられている略称は下記のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
MTMS:メチルトリメトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
DMDMS:ジメチルジメトキシシラン
TMOS:テトラメトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
MEA:モノエタノールアミン
MMA:N−メチルメタノールアミン
AEEA:N−アミノエチルエタノールアミン
MIPA:モノイソプロパノールアミン
DGA:ジグリコールアミン
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
DEHA:ジエチルヒドロキシルアミン
TMSDMA:トリメチルシリルジメチルアミン
LS3380:メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル
LS3150:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
EtOH:エタノール
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DIBK:ジイソブチルケトン
DBE:ジブチルエーテル
MMPOM:プロピレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシプロパン)
AcOH:酢酸
【0071】
<評価1>
実施例1から39のシリカ系被膜形成材料、及び比較例1から6のシリカ系被膜形成材料を、50〜150nmのトレンチパターンを有する半導体基板上にダイナミックディスペンス法にて塗布した。具体的には、「SS8261」(製品名、東京応化工業(株)製)を用いて、半導体基板を500rpmで回転させながらシリカ系被膜形成材料を塗布し、1000〜2000rpmで20〜40秒間回転させた。そして、得られた塗布膜を150℃で60秒間加熱して乾燥させた後、「TS8000」(製品名、東京応化工業(株)製)を用いて、窒素雰囲気下400℃で30分間焼成した。この半導体基板を、トレンチパターンを垂直に切断するようにカッティングし、走査型電子顕微鏡で破断面を観察した。観察結果を以下の基準に従って判定した結果を表8に示す。また、実施例1から7及び17で観察されたトレンチパターンの断面の顕微鏡写真をそれぞれ図1から8に示し、比較例1及び3で観察されたトレンチパターンの断面の顕微鏡写真をそれぞれ図9及び10に示す。
○:エアギャップが形成された
×:エアギャップが形成されなかった
【0072】
【表8】

【0073】
表8及び図1から10より明らかなように、アルカノールアミンを使用した実施例1から39のシリカ系被膜形成材料を半導体基板上に塗布した場合、開口度の大きなエアギャップが形成されている。一方、アルカノールアミンを添加しなかった比較例1から6のシリカ系被膜形成材料を半導体基板上に塗布した場合、トレンチパターンが完全に埋め込まれ、エアギャップが形成されていない。以上の結果より、本発明のシリカ系被膜形成材料によれば、スピン塗布法によってもエアギャップを好適に形成できることが分かる。
【0074】
<評価2>
実施例24のシリカ系被膜形成材料をシリコンウエハ上にダイナミックディスペンス法にて塗布した。具体的には、「SS8261」(東京応化工業社製)を用いて、6インチのシリコンウエハを500rpmで回転させながらシリカ系被膜形成材料を塗布し、1000〜1500rpmで20〜40秒間回転させた。そして、得られた塗布膜を200℃で60秒間加熱して乾燥させた。同様の工程を繰返し、膜厚400nmの塗布膜が形成されたウエハを2枚作製した。そのうちの1枚については、「SS8261」(製品名、東京応化工業(株)製)を用いて、100℃のホットプレート上でブロードバンド波長の紫外線を2分間照射した。その後、2枚のウエハを「TS8000」(製品名、東京応化工業(株)製)を用いて、窒素雰囲気下400℃で30分間焼成し、「DCM−SA2」(製品名、MTSシステムズ・コーポレーション製)を用いてシリカ系被膜の弾性率及び硬度を測定した。結果を表9に示す。
【0075】
【表9】

【0076】
表9から明らかなように、焼成前に紫外線照射を行った場合には、紫外線照射を行わない場合よりも、シリカ系被膜の弾性率及び硬度が向上していた。この結果から、紫外線照射によりシリカ系被膜の機械的強度が上がることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(a−1)で示されるシラン化合物を加水分解縮合させてなるシロキサンポリマー、(b)アルカノールアミン、及び(c)有機溶剤を含むエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料。
【化1】

[一般式(a−1)中、Rは水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基であり、Rは一価の有機基であり、nは0以上2以下の整数を示す。]
【請求項2】
前記シロキサンポリマーの質量平均分子量が3,000以上1,000,000以下である請求項1に記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料。
【請求項3】
前記シロキサンポリマーの分散度が、1.0を超え10以下である請求項1又は2に記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料。
【請求項4】
pHが3以上7以下である請求項1から3のいずれかに記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料。
【請求項5】
更に、(d)水を含む請求項1から4のいずれかに記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料。
【請求項6】
更に、(e)酸を含む請求項1から5のいずれかに記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料。
【請求項7】
凹部を有する半導体基板上に、請求項1から6のいずれかに記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料をスピン塗布法により塗布し、焼成してシリカ系被膜を形成するエアギャップ形成方法。
【請求項8】
凹部を有する半導体多層配線基板上に、請求項1から6のいずれかに記載のエアギャップ形成用シリカ系被膜形成材料をスピン塗布法により塗布し、焼成してシリカ系被膜を形成するエアギャップ形成方法。
【請求項9】
前記スピン塗布法がダイナミックディスペンス法である請求項7又は8に記載のエアギャップ形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−181898(P2011−181898A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1510(P2011−1510)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】