説明

エネルギ分散X線低減に対するブラッグ散乱の寄与を評価することによる材料の検査

放射線伝送データおよび特に対象物の画像を取得する方法および装置であって、この方法は、X線またはガンマ線などの放射線ソース、およびそのソースから間隔を置かれたX線またはガンマ線検出システムなどの放射線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定する、検出器システムを提供する工程であって、この検出器システムは、入射放射線についての、分光的に分解可能な情報を検出し収集することができる、工程と、この検出器において入射する放射線と、ならびに、対象物を介して伝送され、この検出器システムにおいて受け取られる放射線から、少なくとも1つ、および好ましくは複数のスキャン位置において、スキャン領域におけるこの対象物の透過率とについての情報のデータセットを収集する工程と、そのソースのスペクトル内にて、複数の周波数帯に亘り、分光的にその各々のデータセットを分解する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にイメージングにより、三次元空間にある材料の検査および特徴解析のための方法および装置に関する。
【0002】
本発明は特に、対象物を、その内部の中身および/または構成についての情報を得ることが望ましい場合に、スキャンするために、X線またはガンマ線などの高エネルギ放射を利用する装置および方法に関する。この原理は、例えば、警備産業において広く利用されているが、他の分野においても、例えば、限定せずに、医学画像、品質管理目的のイメージング、または、構造物の整合性(integrity)を決定する目的などにおいて用いられる場合がある。
【背景技術】
【0003】
X線の吸収は、対象物を、3次元空間において、互いに関連したその中身または構成の描写画像の一部の形を生成するために、スクリーニングするための基礎として用いられている。対象物がより厚いか、またはより濃密であればあるほど、X線ビームをより減衰することができる。適切な検出器および適切なソースを使用することによって、対象物または一連の対象物の吸収に基づき、画像の形式でのスクリーニング下で、その物の放射線写真を生成できる。
【0004】
通常、X線ソースは、実質的には二次元ビームを生成し、伝送されたX線の検出器はその伝送されたX線に基づき断面において連続した画像のスライスを形成する(そして吸収によって差異化させる)ために用いられる。コンピュータが、その対象物の断面の複数の画像を生成するために用いられ、その結果、それらの画像を一度に閲覧することができる。それらの断面は次いで、少なくとも一部の3次元的な手がかりを反映する画像を形成するために集められる。例えば、ラインスキャンの原理を用いることは公知であり、ここで3次元の対象物はスキャン領域へと動かされ、それが動くと画像化情報が収集され、一枚の画像が直線的に連続したスライスから形成される。また、例えば、コンピュータ体軸断層撮影(CATまたはCT)を用いることも公知であり、ここで画像は、単一の回転軸周囲で撮影された一連の2次元画像から形成される。画像が伝送された放射線から生成され得る正確な方法は、本発明に関することではない。
【0005】
これらの公知の装置および方法は、材料の中身については限定された情報しか与えない傾向にある。要するに、最も簡潔にいえば、測定される全てはそのソースの放射線に対する対象物の透過率である。検出器は単に振幅(amplitude)の情報のみを収集し、伝送された放射線を分光的に弁別しない。最も実用的なシステムにおいてさえ、これは間接的に測定される。最も簡潔的にいえば、通常の線形アレイX線検出器は、伝送されたX線に反応するシンチレータ材料を組み合わせで備えており、これは、次いで、低周波放射および例えば光を、例えばこの低周波放射に反応するシリコンまたはガリウムヒ素ベースの検出器などの半導体検出器と組み合わせて、可視領域中に、または可視領域周囲に放射する。
【0006】
しかしながら、伝送されたX線からの分光学的情報は、対象物の材料の中身またはスキャンされる構成についての追加情報を与えるために利用可能であることは公知である。任意の材料のX線吸収性質は分光学的に可変であり得、その吸収性質が可変となる量は、とりわけ原子番号に依存することは公知である。これは、X線放射のフルスペクトルから低エネルギ領域(band)および高エネルギ領域を別個に識別可能である、デュアル領域または二重エネルギ検出器の開発に繋がった。かような二重エネルギセンサは、通常、低エネルギシンチレータおよび高エネルギシンチレータと共に、半導体フォトダイオードの光線などのサンドイッチ状の対(sandwich pair)を備え、個々の検出器は低エネルギおよび高エネルギのX線の送信を検出する。異なる吸収効果が二重エネルギ検出器によって利用されて、低原子番号の元素および高原子番号の元素を優位にする対象物の間で略差異化する。
【0007】
警備の一部として、または同様の材料識別システムとして利用される場合、有機材料が前者のカテゴリとなり、多くの無機材料が後者のカテゴリとなるような非常に大雑把な概算がなされ得る。これについての実際的な係わり合いとしては、警備産業において、例えば、空港のX線スキャナにおいて、手荷物内の金属製物品を別個の画像として生成する(隠された金属製物品、および特に、銃やナイフなどといった武器を見つけ出す)ために、またはプラスチック爆弾を識別するためのいずれかのために、かかる検出器を使用する。
【0008】
多くの爆発物は、通常、窒素含有度の高い密度のある有機材料である。それゆえ、二重エネルギ検出器の使用においては一部の限られたメリットが存在するが、しかし、石鹸、クリーム、革製品など、手荷物内の他の多くの物品もまた密度のある有機材料であるために、精度の高い爆発物検出器というには程遠い。
【0009】
二重エネルギシステムは構成について限られた情報しか与えない。有機/無機の区別は大雑把で概算のものである。従来の検出器は、伝送されたX線のスペクトルについて、そのスペクトルの2つの異なる領域内のX線が存在するか否かを検出するけれども、何ら本当の分光学的な情報を与えない。最終的には、物品の形状および他の対象物とそれら物品との近接性に基づいた減衰放射線写真に基づいて決定が行われる。
【0010】
伝送されたX線についての分光学的情報をより効果的に分解(resolve)することができる検出器の最近の開発は、広範囲の領域に亘って弁別し、大量の画像を生成する装置を開発することを導いている。例えば、特許文献1は、少なくとも3つのエネルギ領域に亘って画像化し、少なくとも3つの画像を生成する、テルル化カドミウム検出器を利用するシステムを記載する。浜松ホトニクス株式会社は、5つのエネルギ領域に亘って画像化するテルル化カドミウム検出器を利用する、モデル番号C10413というラインセンサシステムを開発している。これらは、異なる材料による異なるスペクトル吸収の効果をより良く利用し、透過性と構成との間でより良い概算をすることが可能である。
【0011】
この解決策をもってしても、かかる装置は、いまだに、X線経路に通された対象物によって区別ができなくなることがあり、対象物の結晶性質または多結晶性質に関する情報を与えないであろう。
【0012】
多結晶材料はX線を散乱し、その結果としてのX線画像は、かかる多結晶材料を殆ど検出し得ない。なぜならば、その多結晶材料によって吸収されなかったX線の大部分が散乱されて、検出器には受信されないからである。これは警備上のX線のスクリーニングの場合には残念なことであり、脅威を有する多くの物品は、本来多結晶であり、特に、例えばCP4、RDX、PETN、それらの独占的な剤形(proprietary formulation)などのプラスチック爆弾、薬などは、それゆえ、従来のX線システムを用いることによって検出することは困難である。
【0013】
結晶または多結晶の対象物は、特定の条件が満たされた場合に、X線ビームを回折することができる。
【0014】
この状況について、ブラッグの法則を用いて概要を以下に述べる。
nλ=2dsinθ
nは整数である(回折次数)
λは回折光線の波長
dは原子格子パラメータ
θは回折角度
【0015】
特定の波長(エネルギ)において、その効果はほぼ100%である。
【0016】
回折ビームを模索することによって、特徴的なブラッグの反射に関連する検出における問題を克服する企てがなされている。脅威を有する材料が特定された場合、次いで、回折角度θ、格子パラメータd、およびX線波長λに関する情報が利用可能となるだろう。それゆえ、さらに、所定の標的材料に対して、適切な散乱角度にて、散乱検出器を含むことによって、特徴的な回折を利用するスキャナが提案されている。初期の、特許文献2および特許文献3はまさにこのような企てについて言及する。回折されたフォトン(光子)のエネルギは以下の式によって与えられる。
【数1】

ここで、hはプランクの定数であり、cは光の速度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5943388号明細書
【特許文献2】英国特許第2360685号明細書
【特許文献3】英国特許第2329817号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、従来技術のスキャンシステムおよび方法の上述の不利点の一部または全てを軽減することである。
【0019】
本発明の目的は、特に、X線スキャン、好ましくは、さらに、対象物のイメージング、および、とりわけ複数の対象物または複数の構成品を含む対象物の入れ物のイメージング(これによりそれらの構成品についての追加情報を提供する)のための方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
それゆえ、本発明の一態様によれば、放射線伝送データおよび、好ましくは対象物の画像を取得する方法が提供され、X線またはガンマ線などの放射線ソース、およびそのソースから間隔を置かれたX線またはガンマ線検出システムなどの放射線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定する、検出器システムを提供する工程を含み、上記検出器システムは、入射放射線についての、分光的に分解可能な情報を検出し収集することができる、工程と、この検出器において入射する放射線と、ならびに、対象物を介して伝送され、この検出器システムにおいて受け取られる放射線から、少なくとも1つ、および好ましくは複数のスキャン位置において、スキャン領域におけるこの対象物の透過率とについての情報のデータセットを収集する工程と、好ましくは、上記スキャン領域において対象物の画像を生成し、好ましくは、上記対象物が上記スキャン領域を通過すると、連続する画像を生成する工程と、そのソースのスペクトル内にて、複数の周波数帯に亘り、分光的にその各々のデータセットまたは画像を分解する工程と、を含み、その複数の周波数帯のうちの少なくとも1つが、識別される標的種の特徴的な、散乱した波長に対応し、その周波数帯での伝送された信号の強度の不在または著しい低減が、その標的種の存在として解釈される。
【0021】
この放射線ソースは、好ましくは、イオン化放射などの高エネルギ放射線、たとえば、X線および/またはガンマ線などの高エネルギ電磁放射線、または亜原子粒子放射線を運搬するためのソースを備え、この検出システムは、このスペクトルにおける放射線を検出するように適合される。この放射線ソースは、たとえば、広範囲のX線またはガンマ線エネルギに亘り、広いスペクトルの放射を生成することができる、広帯域X線またはガンマ線ソースである。このようなソースはよく知られており、かつ広く利用されている。この検出器システムは、伝送される放射線についての分光学的情報を生成するように適合されている。すなわち、この検出器は、少なくとも一部分に亘って、そしてより好ましくは、分光学的な情報を取り出すことを可能にする放射線ソースのスペクトルの実質的な部分に亘って、分光的に可変な反応を示す。この検出器システムは、非常に特定された周波数/エネルギ領域を検出するために利用されることが可能であり、本明細書において用いられるような事項としては、事実上、単一の別個の周波数/エネルギでの検出を含む。特定のエネルギEphの回折ビーム角度θを検出するために、適切な位置に検出器を配置する代わりに、この検出器システムは、本発明に従って、問題となる特定のエネルギが一次ビーム内に存在しないことを示すために用いられる。
【0022】
多くの標的となる材料は構造において結晶または多結晶であることに留意されたい。このような結晶性材料は、典型的には、X線領域において、高エネルギ電磁放射線の特徴的な散乱を示す。高エネルギ電磁ソースおよび例えばX線ソースを用いる従来の装置では、このことは問題を呈する場合がある。一次ビームは、これらの特徴的な周波数にて散乱され得るので、検出をより困難にさせる場合がある。しかしながら、従来技術のシステムがこのことを1つの問題として取り扱い、散乱した二次ビームを検出しようとすることで取り組まれている一方で、本発明は、その代わりに、一次ビームにおける不在を検出しようとしている点で大いに異なるアプローチを取っている。
【0023】
このアプローチは、多くの利点を受けている。散乱した二次ビームは検出するのが困難である場合があり、非常に精密に配置された二次検出器を必要とする。本発明は、このような二次検出器に対する必要性を完全になくすものである。その代わり、一次検出器システムは、伝送される一次ビームにおける伝送されたデータを検出し、適切な数値分析技術により、これを、特徴的な散乱が、特徴的な散乱角度における二次ビームの存在によってではなく、むしろ、特徴的なエネルギの一次ビームにおける不在によって識別可能であるという方法において解決する。
【0024】
従って、この方法に従い、特定の標的種に対して、少なくとも1つの周波数帯が割り当てられ、特徴的なブラッグ散乱条件に対応する。特に、これは、特定の標的種に対して、一次ブラッグ散乱条件に対応してもよいが、さらに(例えば、確認を提供するために)、または代替的に、1つの周波数帯が特定の低次散乱に割り当てられてもよい。
【0025】
収集された伝送データは、複数の周波数帯に亘って分光的に分解される。特徴的な特定の標的種に割り当てられたその周波数帯または各々の周波数帯において、散乱は、その周波数帯内において特徴的なエネルギにて、ブラッグの法則に従って生じ、伝送された信号の振幅を低減させる。その周波数帯が、その特徴的な散乱周波数に十分に接近して対応するように十分に狭い場合、伝送された振幅の測定可能な著しい低減が、検出器によって分解される。
【0026】
スペクトル全体に亘る伝送データに対して、特徴的な散乱周波数を含む、特定的に規定された周波数帯における振幅のこの低減は、特に標的の材料に特徴的なものであり、または、少なくともその標的の材料と同じブラッグの散乱特性を有する材料の種類に特徴的なものである。従って、その周波数帯における、伝送された一次ビームの、伝送された信号強度における特徴的な不在または著しい低減は、その標的種の存在として解釈され得、その効果に対する結果が生成され得る。
【0027】
実際には、このような振幅の低減は、伝送されたスペクトル全体との比較、および/または公知の、例えば、前もって記録されたソーススペクトルと比較することによって数値的に決定される。例えば、伝送されたスペクトル全体に亘る公知のソース強度および測定された、伝送された強度から、おおまかな推定(補外)予測は、そのデータを標準的な指数減衰の法則(the standard exponential attenuation law)に適合させることに基づいて、エネルギスペクトル全体に亘る、予測された特定の伝送された強度からなされ得る。測定された、伝送された強度と推定(補外)予測された、伝送された強度との数値比較は、標的種に対するブラッグの散乱条件に対応して、標的の周波数における振幅の低減を数値的に測定する。例えばこの低減が所定の閾値レベルを超える場合、その標的種の存在が識別されたと考えられる。
【0028】
便宜上、本明細書においては、対象物のスキャンについて述べているが、これは、本発明の用途が、単一で均質な対象物のスキャンに限定されると考えられるべきではないことは理解されるだろう。実際には、多くの予測された用途に対して、「対象物」は、多数の不均一の材料からなる可能性が高く、および/あるいは、容器、または複数の物品の寄せ集めである可能性が高く、任意の伝送された放射線経路は、多様な特性を有する複数の異なる材料を通過する可能性が高い。本発明の特定の利点の1つは、そのような多様な材料の分解能を容易にできることである。
【0029】
本発明の方法は、スキャナにおけるスキャン領域を通過する対象物のスキャンおよび/または画像化(イメージング)への用途に限定されない。特定のスキャン・イベントに対しての、伝送されたデータセットに固有の特徴的な散乱、および、伝送経路における対象物または複数の対象物の材料組成に関連する情報は、例えば、固定された対象物が、適切な形状の単一のビーム(例えば、ペンシル・ビームまたは円錐ビームなど)によってスキャンされるなどの単一のスキャン・イベントによって取得され得る。このような状況において、本方法は、単に、スキャン領域にその対象物を配置して、単一のスキャンおよび強度データについての単一のデータセットを取得することを含む。
【0030】
しかしながら、好ましい実施形態において、その対象物が移動され、および/または回転される複数のスキャン位置において、スキャン領域中での試験下の対象物の透過性に関する情報が収集される。本方法のこの実施形態によれば、この方法は、強度データについての複数のそのようなデータセットが収集されるとき、対象物を、そのスキャン領域に対して移動させ、通過させる、さらなる工程を含む。
【0031】
その最も基礎において、本発明は、特定の用途において見られる可能性が高い、少なくとも1つの標的材料、および好ましくは、様々な標的材料に対して、特徴的な散乱周波数の適切なデータライブラリを参照して、材料の中身の指示を提供する数値分析に基づいて、収集され分解された伝送データから材料の識別を可能にする。このデータライブラリは、本発明に従い、分解されたエネルギ領域(複数のエネルギ領域)に亘って収集されたデータに、数値分析の方法にて、関連させることが可能である任意の適切な形態における情報を含んでよい。このデータライブラリは、標準的なプリセットの基準材料および/またはユーザ入力の基準材料を含んでよく、ならびに/あるいは、基準データは、前述の方法に従い、公知の材料から生成されてもよい。すなわち、データライブラリは、経時的に、材料の特徴を実際に「学習」することができるシステムによって構築されてよい。このデータライブラリは、電子的に保存されたデータおよび/または、例えば印刷されたソースなど、紙媒体で保存されたデータを含んでよく、かつローカルおよび/または遠隔にて、手動および/または自動にて、保持およびアクセスされてよく、これらのうちのいずれもが、本発明の方法の動作には直接に関係しない。
【0032】
このように、その最も基礎において、本発明は、スペクトル内の特徴的な位置における、振幅の特徴的な低減に基づいて、収集された伝送データから材料の識別を可能にする。それは画像を生成する必要がない。特定の伝送ビーム形状が強制されることもない。シンプルな単一の検出器に入射する、シンプルで効率的な、一次元のビーム形状で十分であってよい。
【0033】
しかしながら、実際的な目的に対しては、本発明は、スキャン画像化システムによって提供される情報の一部を形成し、その情報を補完することが好ましい場合もある。この好ましい実施形態に従い、その検出器にて収集された放射線入射についての情報のデータセットは、そのスキャン領域における対象物の画像を生成するために用いられる。特に、動作の好ましい方法においては、連続した画像が生成され、その各々の画像は、ソースのスペクトル内の複数の周波数帯に亘って分光的に分解され、その周波数帯のうちの少なくとも1つは、標的種の特徴的な散乱周波数に対応し、その周波数帯の少なくとも1つは従来の方法において画像を生成するために用いられる。より好ましくは、ソースのスペクトル内の複数の周波数帯は、複数の特徴的な散乱周波数に対応するように別個で規定され、そのソース内のさらなる複数の周波数帯は、例えば、従来の二重エネルギまたはさらに十分に差異化された画像化システムを用いて類推される公知の方法において、一連のエネルギ差異化された画像を生成するために割り当てられる。
【0034】
本発明の方法は、好都合なことに、そのような生成された画像または複数の画像を表示するさらなる工程をさらに提供し、かつ、複数の画像の場合には、同時に、または順次に、そのような画像を表示することを含んでもよい。
【0035】
明瞭化のために、本明細書において用いられる場合、画像の生成への言及は、例えば、調査中の対象物の基本的な構造の視覚的表示が生成可能である、適切に保存されかつ操作可能なデータファイルの形態での、情報のデータセットの生成への言及のことであり、この画像を表示することへの言及は、例えば、適切な表示手段上において、視覚的にアクセス可能な形態にて、そのようなデータセットから生成される画像を提示することへの言及のことである。
【0036】
本発明への手掛かりは、検出器が、伝送された放射線についての分光学的な情報を生成することができ、例えば、伝送された放射線についての分光学的な情報を生成することができる、1つ以上のアレイ検出器を含む。すなわち、検出器は分光学的情報を取り出すことを可能にする、ソースの放射線スペクトルの少なくとも一部に亘って、分光学的に可変の反応を示す。
【0037】
分光学的情報の適切な分解能は、2つの利点を有する。それは、ある程度、材料の異なる反応を反映することができるいくつかの画像を生成するために、一連の相対的に広い領域に亘って画像化することによって、そして、各々相対的に広い領域に亘る各画像を区別することによって、例えば、結果としての組み合わされた画像においてそれらを異なるように(例えば異なる色で)表示することによって、有望な能力(potential)を提供し、それは、異なる対象物、構成、画像の一部の分解能を支援する。しかしながら、1つ以上の特定の標的の結晶種に対する、相対的に狭い領域に亘り、ブラッグの散乱条件に特徴的であるデータを収集する有望な能力をも提供することによって、それは、本発明に従い、標的の材料または複数の材料の狭い部類の、真の、かつさらに特定的な識別を達成することができる。
【0038】
それらが分解される限り、その正確な帯域幅は本発明に直接には関係なく、有用な結果は、スペクトルを、その全体または一部において、別個の帯域に分割するという、任意の適切なアプローチによって取得可能である。例えば、スペクトル全体またはその実質的な部分は、その複数の帯域幅の間で、単に分割されてもよく、各々のデータ項目は、全体の領域に亘る強度および例えば平均強度を示す評価基準として考えてもよい。あるいは、複数の相対的に広い領域ではあるが、それらの間に別個の間隔を有する領域は、同じ基準にて予測および分析され得る。あるいは、「領域(帯域)」は、それらが単一のエネルギでの強度の評価と実質的に近い点にまで狭くてもよい。本明細書において用いられるように、エネルギ「領域」における強度の概念は、そのような別個の単一のエネルギにおける強度の評価、ならびに狭い、または広い帯域幅に亘るエネルギでの強度の評価を含む。しかしながら、画像化領域は、相対的に広く、特徴的な帯域は相対的に狭いことが一般的に好まれる。
【0039】
同様に、ソースは、単一の広いスペクトルソースであってよく、そのスペクトルソースに亘り、複数の帯域幅または単一のエネルギが識別されてもよい。代替的に、または追加的に、本発明の方法に従った比較のため、エネルギの一部を提供するために、狭い帯域幅を有するか、または1つ以上の別個のエネルギでの入射放射線を生成するソースが提供されてもよい。この場合、放射線ソースは、必要なスペクトル全体の広がり(spread)を提供し、複数のエネルギ/エネルギ領域に亘る検出器による分解能を可能とするために、異なるエネルギでのソースの組み合わせを含む複数のソースである。
【0040】
例えば、複数のソースは、例えば、60keV以下、および例えば、10keVから50keVで動作する、相対的に低いエネルギスペクトルを有するX線ソース、および、例えば100keV以上のより高いエネルギでの放射線を生成する放射線同位体ソースなどの1つ以上の他のソースを含んでもよい。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、各々の収集された画像は、複数の相対的に狭い「特徴的な(characteristic)」周波数帯を含むソースのスペクトル内の複数の周波数帯に亘って分光的に分解され、その各々は、その帯域内に、特定の標的種の特徴的な散乱周波数および/または複数の相対的に広い「イメージング(画像化)」領域に対応し、かつそれを含み、その各々はスペクトル全体のより広い部分に亘って画像を生成することが意図され、その結果、その複数の画像化領域は共に、エネルギ差異化された複合画像または連続した画像の生成を可能にする。特徴的な周波数帯域の数は、標的種の数、および標的種が1つ以上の特徴的な散乱周波数にマッピングされるかどうかによって決定される。画像化周波数帯域の数は、有利には、2から10、例えば4から8の間である。
【0042】
分光検出器は、エネルギ選択的な方法において動作可能であり、標準的な従来技術の二重エネルギ検出器から利用可能である2つのエネルギ帯域と比較して、著しく増加した数の「画像化」エネルギ帯域に分解された画像を提示する能力を生じる。この情報は、異なる構成の対象物の分解性を改善するために用いることができる。
【0043】
このことは、そのような各々の相対的に広い領域における伝送された放射線の分光的な分解能が生成された画像において示される点において、この好ましい実施形態に従って達成される。例えば、収集されたデータにおける分光学的な差異化は、異なった色、陰影付け、またはマーキングとして、画像内に示される。領域ごとに分ける(banded)マッピングは、ソーススペクトルが、例えば、4つから8つなどの複数の領域に分割され、異なる色を用いて、表示された画像内にそのような領域を示すことに用いられる。本装置は、有利にも、このマッピングを達成するための適切な画像処理手段を含む。
【0044】
このように生成された1つの画像または複合画像、あるいは連続した画像は、好ましくは、適切な表示手段上に表示される。
【0045】
類推的に、本発明の更なる態様に従い、対象物をスキャンし、かつ、好ましくは、対象物の画像から放射線伝送データを取得するための装置が提供され、この装置は、放射線のソース、およびそのソースから間隔を置かれた放射線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定するシステムであって、使用時に、その検出器において入射する放射線、ならびに、少なくとも1つ、および好ましくは複数のスキャン位置において、そのスキャン領域における対象物の透過率についての情報のデータセットを収集し、ならびに、好ましくは、使用時に、スキャン領域における対象物の画像に対するデータを収集し、ならびに、好ましくは、対象物がそのスキャン領域に対して動かされるときに連続した画像を収集する、ソースおよびシステムと、そのソースのスペクトル内において、複数の周波数帯に亘り、その各々のデータセットまたは画像を分光的に処理し分解するためのデータ処理装置であって、その複数の周波数帯のうちの少なくとも1つは、識別される標的種の特徴的な散乱波長に対応する、装置と、その周波数帯での伝送された信号の強度の不在または著しい低減を識別し、その標的種の存在の指示として、その結果を出力する比較器と、を備える。
【0046】
必要に応じて、この装置は、使用時に、単一のスキャン位置における対象物を用いて伝送強度データを収集するように適合され、例えば、対象物が配置可能な容器などのスキャン位置において対象物を保持する手段を含む。さらに、または代替的に、この装置は、そのようなスキャン位置へ、およびその位置から対象物を運搬するためのコンベイヤを含んでもよい。
【0047】
必要に応じて、この装置は、対象物ハンドラを備えて、対象物を、使用時に、スキャン領域に対して動かし、および例えば、スキャン領域を通過させるので、使用時に、対象物がそのスキャン領域に対して動かされ、例えば、そのスキャン領域を通過するときに、複数のスキャン位置において、対象物を用いて伝送強度データを収集するように適合され、好ましくは、使用時に、スキャン領域における対象物の画像に対するデータを収集するように適合され、好ましくは、その対象物がスキャン領域を通過するときに、連続した画像を収集するように適合される。
【0048】
本発明のこの装置は、その周波数帯での伝送された信号の強度の不在または著しい低減を識別し、その標的種の存在の指示として、その結果を出力する比較器を含むデータ処理装置を有する。適切なハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせ、ならびに、自動およびユーザ入力の計算処理を組み合わせた任意の適切な形態のcデータ処理装置が想定可能である。例えば、本発明の装置は、適切なプログラミングされた汎用目的または特定用途目的のコンピュータなどの、適切にプログラミングされたデータ処理装置を備える。
【0049】
本発明の方法における数値に関わる工程は適切なセットの機械可読命令またはコードによって実施可能であることは一般的に理解される。これらの機械可読命令は、汎用目的のコンピュータ、特定用途目的のコンピュータ、または、特定の数値に関わる工程を実施するための手段を生成するための他のプログラム可能なデータ処理装置(これにより、本明細書において記載された計算手段を生成することができる)においてロードされてもよい。
【0050】
これらの機械可読命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に、特定の方法において機能するように命令可能である、コンピュータ可読媒体に保存されてよく、その結果、コンピュータ可読媒体内に保存された命令は、命令手段を含む製造品を製造し、本発明の方法における数値に関わる工程の一部または全部を実施する。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置においてロードされてよく、コンピュータによって実行される処理を実施可能な機械を生成し、その結果、それらの命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上において実行され、本発明の方法における数値に関わる工程の一部または全部を実施する工程を提供する。工程、および、特定の目的のハードウェアおよび/またはコンピュータ命令の任意の適切な組み合わせにおいて構成されたそのような工程を実行するための装置の手段は、特定の目的のハードウェアおよび/またはコンピュータ命令の任意の適切な組み合わせよって実施可能であることは理解される。
【0051】
必要に応じて、この装置は、さらに、検出器システムの出力から、少なくとも第1の画像を生成するための画像生成装置、および、必要に応じて、少なくともその第1の画像を表示するように適合された画像ディスプレイをさらに含む。
【0052】
この表示手段は、有利にも、二次元表示スクリーン、例えば、従来のビデオディスプレイスクリーン(この用語は、任意のカソード線管、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、シリコンディスプレイ上の液晶、発光ダイオードディスプレイまたは同様の技術を利用した、任意の直接型ディスプレイまたは投写型ディスプレイを含むことが意図されている)である。本方法は、警備または医療画像診断の領域などにおいて匹敵する既存のシステムの標準的な表示スクリーンと共に用いられることが想定可能であり、かつその表示スクリーンに組み込まれる形での本発明のための装置と共に用いられることが想定可能であることは特別な利点である。
【0053】
放射線ソースは、特徴的な散乱に対して、適切なスペクトル範囲に亘り、エネルギの分散を生成しなければならず、典型的には、X線ソースである。タングステンが、最も適切な標的であるが、他のものもまた利用可能である。
【0054】
ソースは、単一の広いスペクトルソースであってもよく、それに亘って、複数の帯域幅(この用語は、上述のように、本明細書において、単一のエネルギを含む)が識別されてもよい。代替的に、または追加的に、本発明の方法に従った比較のため、エネルギの一部を提供するために、狭い帯域を有するか、または、1つ以上の別個のエネルギにおける入射放射線を生成するソースが提供されてもよい。この場合、放射線ソースは、複数のソースであり、必要なスペクトル全体の広がりを提供し、複数のエネルギ/エネルギバンドに亘る検出器によって分解能を可能にするために、異なるエネルギにおけるソースの組み合わせを含む。
【0055】
例えば、複数のソースは、例えば、60keV以下、および例えば、10keVから50keVで動作する、相対的に低いエネルギスペクトルを有するX線ソース、および、例えば100keV以上のより高いエネルギでの放射線を生成する1つ以上の放射線同位体ソースなどを含んでもよい。
【0056】
本発明に従った検出器システムは、単一の検出器、または、多要素システムを構成する複数の別個の検出器要素を備えてもよい。特に、効果的にゼロ次元の強度を操作し、分析のみを操作する非画像化用途に対しては、単一の検出器が好ましい場合がある。画像化用途に対しては、線形または領域アレイが好ましい場合がある。
【0057】
検出器システムは、分光的に分解可能である方法において、放射線を検出することができることが必要である。好ましくは、検出器システム、または、多要素システムを構成する一部または全部の別個の検出器要素は、直接の分光的反応を示すので、分光的な分解を生成するように適合される。特に、システムまたは要素は、ソーススペクトルの異なる部分に対して、直接の材料の特性として、直接の可変の電子的および例えば光電子的反応を固有のものとして示すように選択された材料から製造される。例えば、検出器のシステムまたは要素は、広い直接のバンドギャップ半導体材料を含む。例えば、検出器のシステムまたは要素は、好ましくは、バルク結晶として、および例えばバルク単結晶として形成された、半導体材料または複数の材料を含む(ここで、この文脈でのバルク結晶は、少なくとも500μm、および好ましくは少なくとも1mmの厚さを意味する)。半導体を構成する材料は、好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、ゲルマニウム、臭化ランタン、臭化トリウムより選択される。II−VI族の半導体材料、特に、挙げられたそれらが、この点で特に好ましい。半導体を構成する材料は、好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、およびそれらの合金より選択され、ならびに、例えば、結晶性のCd1-(a+b)MnaZnbTeを含む(ここで、aおよび/またはbはゼロである場合がある)。
【0058】
これらおよび任意の他の材料の組み合わせが想定されてもよく、それらは、単に伝送された放射線の振幅を検出するのではなく、分光的なX線または他の放射線の検出を与え、従って、特徴的な標的種の存在を示す、伝送された放射線における、少なくとも特徴的な不在/振幅の低減の分解能を可能にする。
【0059】
この装置は、上述のように、データを分光的に分解するために、データセットおよび例えば画像データを処理するためのデータプロセッサを含む。この装置は、プリセットまたはユーザがプログラム可能であってもよい、周波数帯のパラメータを保存するために、データセットとデータ通信をするデータレジスタを含んでもよい。データレジスタは、さらに、ソースについての分光的な情報を保存してもよく、特徴的な不在を識別するために、特徴的な帯域における振幅とソーススペクトルとを比較するために比較器が提供されてもよい。
【0060】
上述のように、各々の収集されたデータセットおよび例えば各々の収集された画像は、複数の相対的に狭い「特徴的な(characteristic)」周波数帯を含むソースのスペクトル内の複数の周波数帯に亘って分光的に分解されてもよく、その各々は、その帯域内に、特定の標的種の特徴的な散乱周波数および/または複数の相対的に広い「イメージング(画像化)」領域に対応し、かつそれを含み、その各々はスペクトル全体のより広い部分に亘って画像を生成することが意図され、その結果、その複数の画像化領域は共に、よく知られた方法にて、エネルギ差異化された複合画像または連続した画像の生成を可能にする。
【0061】
画像生成器は、そのような画像を生成するために提供されてもよい。特に、データプロセッサから、複数の「画像化(イメージング)」領域からの分光的に分解された画像を受信し、上述のように、対象物の差異化のために、連続的にまたは同時にこれらの画像を表示するように適合されてもよい。例えば、収集されたデータにおける分光的な差異化は、異なる色、陰影付け、またはマーキングとして、単一の組み合わされた画像において示される。
【0062】
本発明は、特に、3次元の対象物をスキャン領域に通過させ、画像化情報を収集する、ラインスキャンの原理に則って動作する装置および方法に関する。
【0063】
ラインスキャンの原理を用いる画像化装置は周知である。典型的には、このような装置は、X線ソースからなり、X線ソースのビームは、通常、「カーテンビーム」と呼ばれるカーテンにコリメートされてもよく、次いで、例えば、線形光ダイオードアレイを備える線形アレイ検出器によって検出される。画像情報は、問題となる対象物を、例えば、ビームに対して直角において、直線的に移動させ、線形アレイから導かれるX線伝送情報の連続したスキャン(これから完全な画像フレームがコンパイル可能である)を保存することによって取得される。
【0064】
従って、この実施形態において、この方法は、X線ソース、およびそのソースから間隔を置かれたX線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定する、X線検出器システムを提供する工程を含み、前記検出器システムは、入射X線についての、分光的に分解可能な情報を生成する工程、対象物をそのスキャン領域に対して移動させる工程、通過させ、上述の方法において、結果としての伝送されたデータを分解する工程ができる、少なくとも1つ、および好ましくは複数の線形アレイ検出器を備える。
【0065】
従って、この実施形態において、この装置は、X線ソース、およびそのソースから間隔を置かれたX線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定する、X線検出器システムを備え、前記検出器システムは、入射X線についての、分光的に分解可能な情報を生成することができる、少なくとも1つ、および好ましくは複数の線形アレイ検出器を備える。
【0066】
この実施形態に従い、放射線ソースは、好ましくは、従来のラインスキャン装置から良く知られているように、カーテンビームのX線ソースである。X線ソースは、適切なビーム分割装置によって、適切な角度分離において、横方向に間隔を置かれた一連のアレイにおいて、各線形検出器に、位置合わせされて入射するカーテンビームなどのビームを生成するように適合された単一の一次ソースを含んでもよい。単一のビームが生成されてもよい。あるいは、複数のビームが単一のソースから生成されてもよい。あるいは、複数のソースが提供されてもよく、その各々は、一連のアレイにおける線形検出器上に入射するカーテンビームなどのビームを生成する。X線ソースは、前述の原理の任意または全てを組み合わせたソースを含んでもよい。
【0067】
この実施形態における、分光的に分解を行う検出器に基づく画像化システムにおいて、多数の広いエネルギ領域が選択可能であり、画像および概略的な材料識別を提供し、他方で、その1つ以上は、より狭く設定可能であり、例えばPETN、RDX、またはそれらの剤形を含む、プラスチック爆弾などの危険な物品に特徴的である、特定の回折されたビームエネルギの不在を検出する。
【0068】
そのような物品が存在する場合、ラインスキャンアレイにおいて、多くの画素に影響を与えるのに、確実に十分に大きいものとなるであろう。重要な利点は、シート爆弾を検出可能であることであろう。これは、その存在を示す放射線写真に、恐らくは、なんら形状的な情報が存在しないので、非常に現実的な問題である。
【0069】
実際の状況において、このラインスキャン装置は、X線ソースから、X線スペクトルの従来の知識を有して設定することができ、通常のスクリーニングの通過の際に、特定の狭いエネルギ領域の殆ど完全な不在を識別することができる。
【0070】
本発明は、添付の図面を参照して、例示のみの方法により本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明を実施するための可能な装置の概略図である。
【図2】図2は、典型的な放射線ソーススペクトルを示し、本発明を実施するために、その放射線ソーススペクトルがどのように分割されたかを示す。
【図3】図3は、本発明の動作のための概略的なプロトコルである。
【図4】図4は、本発明の実施形態において用いるのに適切なスキャン装置の簡略化された概略の側面図である。
【図5】図5は、図4の実施形態によって提供された複数の光線経路によって生成された画像によって生成可能である効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
まず図1の一般的な略図を参照すると、X線ソース1および横方向に間隔を置いた検出器アレイ2が共に、それらの間のスキャン領域Zを画定している。使用する場合、スキャンされる対象物は、通常の方法、例えば、適切なコンベヤーベルト(図示せず)上にて、スキャン領域に持ち込まれ、通過される。
【0073】
図に示された例において、結晶材料5のサンプルは、スキャン領域Zに置かれる。X線ソースからの入射ビーム11が示されている。この例において、回折ビーム12は、ブラッグの法則に従って特性角度において回折し、吸収のみに起因する低減のほかに、伝送されたビーム13の強度を低減する。これは、本発明によって利用される効果を示す。
【0074】
その伝送されたビーム13は、検出器アレイ21上に入射するが、この検出器アレイ21は、好ましい実施形態においては、複数のテルル化カドミウム検出器ユニットの直線アレイを含む。
【0075】
検出器アレイ21は、プロセッサ22とデータ通信をする。この検出器アレイは、よく知られた方法にて、2次元「スライス」を生成するために用いられる。このアレイにおける材料の固有のスペクトル分解能により、プロセッサ22は、データレジスタ23に保存されたエネルギ領域境界(boundary)を参照することによって、本発明の原理に従い、複数のプリセットの周波数/エネルギ領域に亘って、異なってこの画像を分解することができる。
【0076】
図2および図3に詳細に示されるように、これらの分解されたエネルギ領域の一部は、ディスプレイ手段27への送信のための、エネルギ差異化された(energy−differentiated)画像を形成するために用いられる。この点で、この装置は、従来のエネルギ差異化のためのイメージング装置と同様な基本原理に従う。これは、識別された周波数帯(周波数帯の各々は標的種の特徴的なブラッグ散乱に関連している)の一部に関連して動作する比較器24によって提供されるさらなる機能性において異なっており、特徴的な散乱を示す特性周波数帯内において、伝送された振幅13における異常な低減を識別する。これは、データレジスタ25におけるソース1に対して、以前に保存されたスペクトルとの比較によって達成可能である。この特性により識別された種は、任意の適切な方法において、ディスプレイ27上に表示された画像内に含まれるか、別の適切な警報システムによるかのいずれかによって、スキャンシステムのユーザに対して識別されてもよい。この装置のデータ処理装置または記憶装置、例えば、プロセッサ22、データレジスタ23、比較器24、およびデータレジスタ25の1つ以上を含むいずれかが、特定用途向けコンピュータまたは汎用コンピュータなどの適切にプログラミングされたデータプロセッサ手段によって提供されてもよい。
【0077】
ソース1は、エネルギの相対的に広いスペクトルに亘るX線を生成し、その結果、この分解能が利用されてもよい。それは、必要な広がり(spread)を有する複数のソースまたは単一のソースであってもよい。ソース1は、好ましくはタングステン源であり、これは、図2に示されるように、X線強度(I)対波長(λ)の特性プロットを与える。図2は、本発明の原理に従ったシステムを動作するためにこのスペクトルがどのように分割され得るかを示す。図2aにおいて、スペクトル全体は、連続した、相対的に広い領域(b1からb5)へと分割される。これらは、相対的に、従来のエネルギ差異化された画像を作成するために用いられるイメージング領域である。図2bにおいて、スペクトルは、さらに、特定の狭い周波数帯(c1からc3)を標的とするために処理される。これらは、「特徴的な」領域であり、各々は、特定の標的種に対して、特徴的なブラッグ散乱波長に関連される。特定の標的種は、識別される2つ以上の特徴的な領域を有してもよい。
【0078】
図1によって識別されたプロセッサ22によって、図2に示された方法にて適切に分解されたスペクトルを用いて、画像が生成され、他の情報が、図3に示されるフローチャート処理に従って取り出される。
【0079】
上から下へ読むと、収集されたデータセットは、図2に示された方法において、一連の画像領域へ、および一連の特徴的な領域への両方に分解される。画像領域の分解能は、一連の画像b1、b2、b3、b4、およびb5を生成し、これらは共に、相対的に広い領域幅に亘る、伝送されたX線の強度を表すが、そのスペクトルに亘り、エネルギに対して差異化されている。このように、異なる構成の対象物間の有る程度の差異化が可能である。異なる構成の対象物、および、特に、異なる原子番号は、様々な反応を見せるであろう。異なる画像b1からb5が、例えば、連続して表示される場合、または、より好ましくは、異なる配色が与えられ、および単一の複合画像において同時に表示される場合、そのスキャンから対象物のさらなる分解能が提供可能である。この処理は適度に従来のものである。
【0080】
本発明がとりわけ異なる点は、特徴的な領域c1からc3の更なる分解能にある。これらの特徴的な領域は、相対的に狭く、その各々は、特定の標的種に対して、特徴的なブラッグ散乱波長に焦点を当て、それに対応することが意図されている。レジスタ25におけるこれらの領域に対する分解された送信データは、比較器によって処理され、例えば保存されたスペクトルおよび/または特徴的な領域付近における強度データを参照して、特徴的な散乱が存在することを示す特徴的な領域、すなわち、標的種の存在内における任意の著しい低減を識別する。そのようにして識別された存在または不在は、次いで、例えば、画像化領域分解能から生成された複合的な画像と組み合わされて、または、その画像に関連する追加情報ディスプレイとして、あるいは特注ディスプレイ上において表示される。
【0081】
好ましい実施形態において、この装置は、X線画像を生成するために、ラインスキャン原理を用いる。空港会社の警備用途において、その原理は、特に、手荷物スキャナに関連してよく見られる。X線イメージングはまた、原則として、手荷物のための補助的なシステムとして用いられてもよいが(検出用途の縮小版のCTスキャンは画像化性能に関して限定されている)、あまり一般的ではない。
【0082】
図4は適切な装置を示す。図示された実施形態は、コリメートされた単一のX線ソースを用いて、3つの線形検出器3aから3c(この実施形態において、各々は検出器要素の直線アレイを含む)に入射するカーテンビームを生成する。このように、複数の光線経路5aから5cは、このような線形検出器の直線的に間隔を置かれるかまたは角度を有して間隔を置かれたアレイ上に入射された複数のカーテンビームによってスキャン領域において生成される。入射する光線経路5aから5cは、X線ソース1と検出器3aから3cの各々との間のスキャン領域を介して示される。
【0083】
この実施形態において、線形アレイ検出器3aから3cは、入射X線の分光的な分解能を可能にする材料を含み、この特定の例においては、テルル化カドミウムを含むが、当業者は他の材料選択もまた適切であってよいことを理解する。このスペクトル分解能を利用するために、X線ソースは、広いエネルギスペクトルに亘ってX線を放射する。この例において、タングステン源が用いられるが、当業者は他の材料もまた適切であってよいことを理解する。
【0084】
エンドレス・ベルトコンベヤー7によって、d方向に動かされ、スキャン領域において光線経路5aから5cを遮るようにして、対象物9がスキャンされる。本発明のこの実施形態の予測される用途は警備用のスキャナとしてであり、対象物9は、通常、様々な区別される対象物を含むことが予期される容器として考えることができ、それは(例えば、航空機用の手荷物の物品)、構成的に特徴付けられ、3次元において効果的に閲覧するために有用であり、かつ所望される。しかしながら、同様な原理が、例えば、内部調査や内診のための対象物のスキャン、医療用スキャン、および類似の用途に対しても適用可能であることを当業者は容易に理解する。
【0085】
伝送された強度情報のデータセットは、3つの検出器3aから3cの各々からの送られる情報を組み上げることによって生成される。入射エネルギ/波長と、本発明の原理に従った数値分析および分光的に分解される画像化の目的の両方のための、送られる強度との間の関係を、少なくともある程度解決することによって、情報のデータセットの処理が上述のように実行される。
【0086】
本発明は、特に、動作における非画像化の方法において、単一の光線のみを必要とするが、図4の実施形態は、対象物への複数の光線経路を提示する。図5は、提供された情報をさらに向上させることができる図4の実施形態によって提供される複数の光線経路によって生成される画像によって生成可能であるさらなる効果を示す。
【0087】
対象物9が入射経路5aから5cを通過すると(図5aを参照)、3つの画像が生成され、ここでその対象物はX線ソース1に対して異なる向きに配置される。これらの画像の連続表示によって、その対象物は、図5bに示されるように、回転しているようにみえる。
【0088】
3次元において実際に回転可能である対象物の表示を実際に得るこの能力は、いくつかの点で、CTスキャンに類似するように、みることができる。従来のCTスキャナにおいて、スキャナとスキャン対象との間の相対的な回転運動により(通常、スキャナの軌道運動により)、回転可能な画像が収集可能である。この例において生成された複数の画像は、この装置によって提供される複数の光線経路の結果として、より複雑でない形状、かつ、例えば、警備用スキャンシステムにおいて通常利用されるようなシンプルな直線コンベヤー上を用いて、これらの特徴の一部を提供する。これは、さらなる画像の機能性を提供する。
【0089】
このようにして、本発明に従い、特徴付けられた散乱領域の不在または低減によって材料を識別するための、分解されたエネルギ検出およびデータ処理に基づき、特定の材料特徴を提供することができる装置および方法が記載される。この情報全ては、分光的な分解能による、伝送された一次ビームから、およびその収集された一次データセットの処理から、特徴付けられた散乱信号の特定の検出の必要がなく、得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の放射線伝送データを取得する方法であって、高エネルギイオン化電磁放射線のソース、およびそのソースから間隔を置かれた放射線検出器システムを、それらの間にあるスキャン領域を画定するために、提供する工程であって、前記検出器システムは、入射放射線についての、分光的に分解可能な情報を検出し収集することができる、工程と、前記検出器において入射する放射線と、ならびに、対象物を介して伝送され、前記検出器システムにおいて受け取られる放射線から、少なくとも1つ、および好ましくは複数のスキャン位置において、前記スキャン領域における前記対象物の透過率とについての情報のデータセットを収集する工程と、前記ソースのスペクトル内にて、複数の周波数帯に亘り、分光的にその各々のデータセットを分解する工程と、を含み、前記複数の周波数帯のうちの少なくとも1つが、識別される標的種の特徴的な、散乱した波長に対応し、前記周波数帯での伝送された信号の強度の不在または著しい低減が、前記標的種の存在として解釈される、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの周波数帯が割り当てられ、これが、特定の標的種に対して、特徴的な一次ブラッグ散乱条件に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの周波数帯が割り当てられ、これが、特徴的な低次ブラッグ散乱に対応する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
特徴的な周波数帯における振幅の低減が、伝送されたスペクトル全体との比較によって、および/または、公知の、および例えば、事前に記録されたソーススペクトルとの比較によって、数値的に決定され、前記標的種の存在を示す結果が、その結果として生成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出器において収集された放射線入射についての情報の前記データセットが、前記スキャン領域において、対象物の画像を生成するために用いられる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
生成された画像または複数の画像を表示するさらなる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
連続した画像が生成され、その各々の画像が、前記ソースのスペクトル内において、複数の周波数帯に亘り、分光的に分解され、その複数の周波数帯のうちの少なくとも1つは、標的種の、特徴的な散乱周波数に対応し、その複数の周波数帯のうちの少なくとも1つは画像を生成するために用いられる、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ソースのスペクトル内において、複数の周波数帯は、複数の特徴的な周波数帯に対応するように別個に規定され、各々は、その周波数帯内で、特定の標的種の特徴的な散乱周波数に対応し、かつそれを含み、前記ソース内で、さらなる複数の周波数帯が割り当てられ、一連のエネルギ差異化された画像を生成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
画像化周波数帯の数は、有利には、2から10である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ラインスキャンの原理で動作する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法であって、X線ソース、およびそのソースから間隔を置かれたX線検出器システムを、それらの間にあるスキャン領域を画定するために、提供する工程であって、前記検出器システムは、入射X線についての、分光的に分解可能な情報を生成することができる、少なくとも1つ、および好ましくは複数の線形アレイ検出器を備える、工程と、対象物を、前記スキャン領域に対して移動させ、通過させる工程と、請求項1から請求項9のいずれか一項に従って、前記結果として伝送されたデータを分解する工程と、を含む方法。
【請求項11】
対象物をスキャンし、放射線伝送データを取得する装置であって、高エネルギイオン化電磁放射線のソース、およびそのソースから間隔を置かれた放射線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定する、システムであって、使用時に、前記検出器において入射する放射線、ならびに、少なくとも1つ、および好ましくは複数のスキャン位置において、前記スキャン領域における対象物の透過率についての情報のデータセットを収集する、ソースおよびシステムと、前記ソースのスペクトル内において、複数の周波数帯に亘り、その各々のデータセットを分光的に処理し分解するためのデータ処理装置であって、前記複数の周波数帯のうちの少なくとも1つは、識別される標的種の特徴的な散乱波長に対応する、装置と、前記周波数帯での伝送された信号の強度の不在または著しい低減を識別し、前記標的種の存在の指示として、その結果を出力する比較器と、を備える、装置。
【請求項12】
スキャン位置に対象物を保持する手段ならびに/またはそのスキャン位置へおよびそのスキャン位置から対象物を運搬するコンベヤーを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
使用時に、対象物を前記スキャン領域に対して移動させ、通過させるための対象物ハンドラを含む、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
使用時に、前記スキャン領域において、対象物の少なくとも1つの画像のデータを収集し、前記検出器システムの前記出力から少なくとも第1の画像を生成するために、前記検出器と共動可能なように適合された画像生成装置をさらに含む、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも前記第1の画像を表示するように適合された画像表示手段をさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
検出器は、本質的に、直接的な材料の性質として、前記ソーススペクトルの異なる部分への直接の可変の電気的反応を示すように選択された材料から作られ、分光的な分解能を生成するように適合されている、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記検出器は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、ゲルマニウム、臭化ランタン、臭化トリウムより選択される半導体材料を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器は、II−VI族の半導体材料を含むバルク結晶として形成される半導体材料または複数の半導体材料を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記検出器は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)より選択される半導体材料を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
ラインスキャンの原理で動作する、請求項11から請求項19のいずれか一項に記載の装置であって、X線ソース、およびそのソースから間隔を置かれたX線検出器システムであってそれらの間にあるスキャン領域を画定する、X線検出器システムを備え、前記検出器システムは、入射X線についての、分光的に分解可能な情報を生成することができる、少なくとも1つ、および好ましくは複数の線形アレイ検出器を備える、請求項11から請求項19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記放射線ソースはカーテンビームX線ソースである、請求項20に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate


【公表番号】特表2010−527446(P2010−527446A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507991(P2010−507991)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050360
【国際公開番号】WO2008/142448
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507282783)ダーハム サイエンティフィック クリスタルズ リミテッド (23)
【氏名又は名称原語表記】DURHAM SCIENTIFIC CRYSTALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】NetPark Incubator, Thomas Wright Way, Sedgefield, County Durham TS21 3FD (GB)
【Fターム(参考)】