説明

エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】吸湿時の硬化性、流動性及び耐リフロークラック性に優れるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物を必須成分とし、成形品のガラス転移温度が155℃未満であるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料、積層板用又は接着剤の材料として好適なエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形材料、積層板用、接着剤用材料等にエポキシ樹脂が広範囲に使用され、トランジスタ、IC等の電子部品の素子封止の分野ではエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。特に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノールノボラック硬化剤の組み合わせはこれらのバランスに優れており、IC封止用成形材料のベース樹脂として主流になっている。また、硬化促進剤としては3級アミン、イミダゾール等のアミン化合物、ホスフィン類、ホスホニウム等のリン化合物が一般に使用されている。
【0003】
近年、電子部品のプリント配線板への高密度実装化が進んでおり、これに伴い電子部品は従来のピン挿入型のパッケージから、表面実装型のパッケージが主流になりつつある。IC、LSIなどの表面実装型ICは、実装密度を高くするために素子のパッケージに対する占有体積がしだいに大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきた。さらに、ピン挿入型パッケージは、ピンを配線板に挿入した後に配線板裏面からはんだ付けが行われるためパッケージが直接高温にさらされることがなかったのに対し、表面実装型ICは配線板表面に仮止めを行った後、はんだバスやリフロー装置などで処理されるため、直接はんだ付け温度にさらされる。この結果、ICパッケージが吸湿した場合、はんだ付け時に吸湿水分が急激に膨張しパッケージクラックに至り、これが大きな問題になっている。
このはんだ付け時のパッケージクラックに対する耐性、いわゆる耐リフロークラック性を改良するために、無機充填剤を多く含むエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、無機充填剤量の増加は成形時の流動性の低下を招き、充填不良、ボイド発生等の成形上の障害やICチップのボンディングワイヤが断線し導通不良が発生するなど、成形品の性能低下を招くため、無機充填剤の増加量には限界があり、結果として耐リフロークラック性の著しい向上が望めないという問題があった。特にトリフェニルホスフィン等のリン系硬化促進剤や1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のアミン系硬化促進剤を用いた場合、流動性が低く、耐リフロークラック性の著しい向上が望めないのが実情である。
【0004】
このような問題点を改善するために、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を硬化促進剤として用いる方法(特開平9−157497公報)、電子供与性置換基を有するフェニル基を3つ有するホスフィンと無水マレイン酸又はキノン類との付加反応物を硬化促進剤として用いる方法(特開平7−228672号公報)等が提案されているが、吸湿時の硬化性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−157497公報
【特許文献2】特開平7−228672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、吸湿時の硬化性、流動性及び耐リフロークラック性に優れるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも一つの置換基を有するホスフィン化合物とキノン化合物を配合し、成形品のガラス転移温度を155℃未満にすることにより、吸湿時の硬化性、流動性及び耐リフロークラック性に優れるエポキシ樹脂組成物が得られ、上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物を必須成分とし、成形品のガラス転移温度が155℃未満であるエポキシ樹脂組成物、
(2)(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物が、下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物と下記一般式(II)で示されるキノン化合物との付加反応物である上記(1)記載のエポキシ樹脂組成物、
【化1】

(ここで、式(I)中のR1は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。また、式(II)中のR4〜R6は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R4とR5が結合して環状構造となっていてもよい。)
(3)(D)無機充填剤をさらに含有し、その配合量がエポキシ樹脂組成物に対して55〜90体積%である上記(1)又は(2)記載のエポキシ樹脂組成物、
(4)(A)エポキシ樹脂が2官能のエポキシ樹脂及び/又はエポキシ当量が190以上のエポキシ樹脂を含有してなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)(A)エポキシ樹脂が下記一般式(III)〜(VIII)のいずれかで示されるエポキシ樹脂の少なくとも1種を含有してなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、及び
【化2】

(ここで、一般式(III)〜(VIII)中のR7〜R16は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数、pは1又は0を示し、l、mはそれぞれ0〜11の整数で(l+m)が1〜11の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
(6)(B)フェノール樹脂が下記一般式(IX)〜(XIII)のいずれかで示されるフェノール樹脂の少なくとも1種を含有してなる上記(1)〜(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、並びに
【化3】

(ここで、一般式(IX)〜(XIII)中のR17〜R26は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示し、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数、rは0〜4の整数を示す。)
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明になるエポキシ樹脂組成物は、吸湿時の硬化性及び流動性に優れ、このエポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば、実施例で示したように耐リフロークラック性が良好で、信頼性に優れる電子部品装置を得ることができるので、その工業的価値は大である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂としては特に制限はないが、例えば、一般に使用されている1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂で、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル、ブタンジオ一ル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル、アニリン、イソシアヌール酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型またはメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのエポキシ樹脂の中で、2官能のエポキシ樹脂が流動性及び耐リフロークラック性の点で好ましく、エポキシ当量が190以上のエポキシ樹脂が耐リフロークラック性の点で好ましい。なかでも、下記一般式(III)〜(VIII)のいずれかで示されるエポキシ樹脂が耐リフロークラック性及び流動性の点で好ましく、特に耐リフロークラック性の観点からは4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3',5,5'−テトラメチルビフェニルがより好ましく、成形性及び耐熱性の観点からは4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−ビフェニルがより好ましい。これら一般式(III)〜(VIII)のいずれかで示されるエポキシ樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、その性能を発揮するために、(A)成分のエポキシ樹脂全量に対して、合わせて30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。
【0010】
【化4】

(ここで、一般式(III)〜(VIII)中のR7〜R16は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数、pは1又は0を示し、l、mはそれぞれ0〜11の整数で(l+m)が1〜11の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
上記一般式(III)〜(VIII)中のR7〜R16について、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよいの意味は、例えば式(III)中の8個のR7の全てが同一でも異なっていてもよいの意味である。他のR8〜R16についても式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいとの意味である。また、R7〜R16はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えばR7とR8の全てについて同一でも異なっていてもよい。また、i、j及びkは、それぞれが同一でも異なっていてもよく、他の式中のものと同一でも異なっていてもよい。上記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明において用いられる(B)フェノール樹脂としては特に制限はないが、例えば、一般に使用されている1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂で、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐リフロークラック性の観点からは下記一般式(IX)〜(XIII)のいずれかで示されるフェノール樹脂が好ましい。これら一般式(IX)〜(XIII)のいずれかで示されるフェノール樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、その性能を発揮するためには、(B)成分のフェノール樹脂全量に対して合わせて30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。
【0012】
【化5】

(ここで、一般式(IX)〜(XIII)中のR17〜R26は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示し、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数、rは0〜4の整数を示す。)
上記一般式(IX)〜(XIII)中のR17〜R26について、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよいの意味は、例えば式(IX)中のi個のR17の全てが同一でも相互に異なっていてもよいの意味である。他のR18〜R26についても式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいとの意味である。また、R17〜R26はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えばR17とR18の全てについて同一でも異なっていてもよく、R19とR23の全てについて同一でも異なっていてもよい。また、i、j、k及びrは、それぞれが同一でも異なっていてもよく、他の式中のものと同一でも異なっていてもよい。上記一般式(IX)〜(XIII)中のnは0〜10の範囲であることが必要で、10を超えた場合は(B)成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは1〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0013】
本発明において(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂との配合比率は、全エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する全フェノール樹脂の水酸基当量の比率(フェノール樹脂中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)で0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.7〜1.5がより好ましく、0.8〜1.3がさらに好ましい。この比率が0.5未満ではエポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が劣る傾向があり、2.0を超えるとフェノール樹脂成分が過剰なため硬化が不充分となったり、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため電気特性及び耐湿性が悪くなったりする傾向がある。
【0014】
本発明において用いられる(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物としては、硬化促進剤として働くものであれば特に制限されるものではないが、なかでも、硬化性の観点から下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物と下記一般式(II)で示されるキノン化合物との付加反応物が好ましい。
【化6】

(ここで、式(I)中のR1は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。また、式(II)中のR4〜R6は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R4とR5が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0015】
上記一般式(I)中のR1は、炭素数1〜12のアルキル基を示すが、炭素数1〜12のアルキル基としては特に制限はなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デキル基、ドデキル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基等が挙げられる。また、R2、R3は、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示すが、炭素数1〜12の炭化水素基としては特に制限はなく、例えば、炭素数1〜12の置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の置換又は非置換の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。炭素数1〜12の置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デキル基、ドデキル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基等が挙げられる。炭素数1〜12の置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものなどが挙げられる。炭素数1〜12の置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基等のハロゲン置換アリール基、フェノキシ基、クレゾキシ基等のアリーロキシ基、フェニルチオ基、トリルチオ基、ジフェニルアミノ基など、及びこれらにアミノ基、ハロゲン等が置換したものなどが挙げられる。なかでも、置換又は非置換のアルキル基及びアリール基が好ましい。
【0016】
上記一般式(II)中のR4〜R6は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を示すが、炭素数1〜18の炭化水素基としては特に制限はなく、例えば、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の置換又は非置換の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。炭素数1〜12の置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デキル基、ドデキル基等のアルキル基、アリル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシル基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアルキルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ドデキルチオ基等のアルキルチオ基、アミノ基置換アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、アリール基置換アルキル基等の置換アルキル基、アミノ基置換アルコキシ基、水酸基置換アルコキシ基、アリール基置換アルコキシ基等の置換アルコキシ基などが挙げられる。炭素数1〜18の置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものなどが挙げられる。炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基、フェノキシ基、クレゾキシ基等のアリーロキシ基、フェニルチオ基、トリルチオ基、ジフェニルアミノ基など、及びこれらにアミノ基、ハロゲン等が置換したもの等が挙げられる。なかでも、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアリーロキシ基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアルキルチオ基及び置換又は非置換のアリールチオ基が好ましい。
【0017】
上記一般式(I)で示されるホスフィン化合物の中でも、吸湿時の硬化性の観点からは、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィンが好ましい。耐リフロークラック性の観点からは、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、オクチルジフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン等のアルキルジフェニルホスフィン及びジアルキルフェニルホスフィンが好ましい。
【0018】
また、上記一般式(II)で示されるキノン化合物は、R4とR5が結合し環状構造となっていてもよい。本発明において用いられる、R4とR5が結合して環状構造をとる多環式のキノン化合物としては、特に制限はないが、例えば、置換したテトラメチレン基、テトラメチン基等が結合した下記一般式(XIV)〜(XVI)のいずれかで示される多環式キノン化合物等が挙げられる。
【化7】

【0019】
上記一般式(II)で示されるキノン化合物のなかでも、ホスフィン化合物との反応性の観点からは1,4−ベンゾキノン及びメチル−1,4−ベンゾキノンが好ましく、吸湿時の硬化性の観点からは、2,3−ジメトキシ−1,4ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、メトキシ−1,4−ベンゾキノン等のアルコキシ基置換1,4−ベンゾキノン、及び2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン等のアルキル基置換1,4−ベンゾキノンが好ましく、保存安定性の観点からは、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノンが好ましい。
【0020】
下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物と下記一般式(II)で示されるキノン化合物との付加反応物の構造としては、例えば、下記一般式(XVII)で示される化合物が挙げられる。
【化8】

(ここで、R1は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R4〜R6は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R4とR5が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0021】
(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物のなかでも、吸湿時の硬化性の観点からは、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等のトリアルキルホスフィンとキノン化合物との付加反応物が好ましい。耐リフロークラック性の観点からは、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等のアルキルジフェニルホスフィン又はジアルキルフェニルホスフィンとキノン化合物との付加反応物が好ましく、なかでも、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等のアルキルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物がより好ましい。また、保存安定性の観点からは、トリシクロヘキシルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシル−p−トリルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチル−p−トリルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチル−p−トリルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジ−p−トリルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジ−p−トリルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジ−p−トリルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシル−p−トリルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチル−p−トリルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチル−p−トリルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジ−p−トリルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジ−p−トリルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジ−p−トリルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等が好ましく、なかでも、トリシクロヘキシルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジブチルフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジオクチルフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等の少なくとも一つのアルキル基を有するホスフィン化合物とt−ブチル基を有するキノン化合物との付加反応物がより好ましい。上記のなかでも、ホスフィン化合物とキノン化合物との反応性の観点からは、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ブチルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、オクチルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等のリン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物と1,4−ベンゾキノン又はメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物がより好ましい。
【0022】
(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、原料として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物とを両者が溶解する有機溶媒中で付加反応させて単離する方法、(B)成分のフェノール樹脂中で付加反応させる方法等が挙げられ、後者の方法においては単離せずにそのままフェノール樹脂中に溶解した状態で、エポキシ樹脂組成物の配合成分として用いることができる。(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、本発明の樹脂組成物には、(C)成分以外に、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を促進する硬化促進剤として一般に用いられているものを1種以上併用することができる。これらの硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンなどのシクロアミジン化合物、その誘導体、それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、これら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体、トリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン等のアリールホスフィンと1,4−ベンゾキノン等の上記キノン化合物とのベタイン型付加反応物などが挙げられる。
【0024】
これらの硬化促進剤を併用する場合、(C)成分の配合量は、全硬化促進剤量に対して30重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上である。(C)成分の配合量が30重量%未満であると吸湿時の硬化性又は流動性が低下し、本発明の効果が少なくなる傾向がある。(C)成分を含む全硬化促進剤の合計配合量は、硬化促進効果が得られれば特に制限はないが、吸湿時硬化性及び流動性の観点からは(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、1〜7重量部がより好ましい。0.1重量部未満では短時間で硬化させることが困難で、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合が生じる傾向がある。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、(D)無機充填剤を必要に応じてさらに配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、(D)無機充填剤を配合することが好ましい。本発明において用いられる(D)無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるもので特に限定はないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズなどが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これらの無機充填剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(D)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に対して55〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が55体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向があり、90体積%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。また、(D)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下したりする傾向がある。流動性の観点からは、(D)無機充填剤の粒子形状は角形より球形が好ましく、(D)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70重量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいため配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、下記一般式(XVIII)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【化9】

(0<X≦0.5、mは正の整数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充項剤との接着性を高めるためのカップリング剤として、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。また、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合してもよい。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができるが、例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01重量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10重量%を超えると接着性が阻害されるおそれがある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。本発明において用いられる難燃剤としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機若しくは無機の化合物、金属水酸化物などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して1〜30重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。
【0032】
本発明で得られるエポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明のエポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明のエポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物を、成形後必要に応じて後硬化して成形品を作製することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物の成形品のガラス転移温度は、耐リフロークラック性の観点から155℃未満に設定されることが必要で、145℃未満が好ましく、135℃未満がより好ましい。ここで、ガラス転移温度とは、TMA測定法によるものをいう。ガラス転移温度の測定方法はTMA測定法であれば特に限定はなく、常法により測定することができるが、例えば、本発明のエポキシ樹脂を180℃、7MPa、90秒の条件で3mm×3mm×19mm厚にトランスファ成形し、必要に応じて175℃、6時間の条件で後硬化を行って作製した成形品を、熱機械分析装置を用いて測定し、昇温速度5℃/分の条件で得られた線膨張係数の屈曲点(℃)をガラス転移温度として求めることができる。本発明においては、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物及びその他の成分の組み合わせやそれらの配合量を調整することによって、成形品のガラス転移温度が155℃未満となるエポキシ樹脂成形材料を得ることができる。(A)成分として用いるエポキシ樹脂、(B)成分として用いるフェノール樹脂及び(C)成分として用いる付加反応物の選定が特に重要である。
【実施例】
【0035】
次に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜64、比較例1〜60
エポキシ樹脂としてはエポキシ当量196、融点106℃のビフェニル骨格型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:油化シェルエポキシ株式会社製商品名YX−4000H)、エポキシ当量210、融点120℃のスチルベン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:住友化学工業株式会社製商品名ESLV−210)、エポキシ当量192、融点79℃のジフェニルメタン骨格型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:新日鐡化学株式会社製商品名YSLV−80XY)、エポキシ当量217、軟化点64℃のナフトールオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4:日本化薬株式会社製商品名NC−7300L)、エポキシ当量264、軟化点64℃のジシクロペンタジエン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂5:大日本インキ化学工業株式会社製商品名HP−7200)、エポキシ当量195、軟化点62℃のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂6:住友化学工業株式会社製商品名ESCN−190−2)、硬化剤としては水酸基当量176、軟化点70℃のフェノールアラルキル樹脂(硬化剤1:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL−225)、水酸基当量199、軟化点89℃のビフェニル骨格型フェノール樹脂(硬化剤2:明和化成株式会社製商品名MEH−7851)、水酸基当量183、軟化点79℃のナフトールアラルキル樹脂(硬化剤3:新日鐵化学株式会社製商品名SN−170)、水酸基当量170、軟化点93℃のジシクロペンタジエン変性フェノールノボラック樹脂(硬化剤4:日本石油化学株式会社製商品名DPP)、水酸基当量106、軟化点80℃のフェノールノボラック樹脂(硬化剤5:日立化成工業株式会社製商品名HP−850N)、実施例の硬化促進剤としてはトリブチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)、トリブチルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤2)、トリブチルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤3)、トリブチルホスフィンとtert-ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤4)、トリブチルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤5)、ジブチルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤6)、ブチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤7)、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤8)、トリシクロヘキシルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤9)、トリシクロヘキシルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤10)、トリシクロヘキシルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤11)、トリシクロヘキシルホスフィンとtert-ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤12)、トリシクロヘキシルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤13)、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤14)、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤15)、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤16)、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとtert-ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤17)、トリオクチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤18)、トリオクチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤19)、トリオクチルホスフィンとtert-ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤20)、比較例の硬化促進剤としてはトリフェニルホスフィン(硬化促進剤A)、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤B)、トリ−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤C)、トリシクロヘキシルホスフィン(硬化促進剤D)、シクロヘキシルジフェニルホスフィン(硬化促進剤E)、トリブチルホスフィン(硬化促進剤F)、トリオクチルホスフィン(硬化促進剤G)、DBUのフェノールノボラック塩(硬化促進剤H:サンアプロ株式会社製商品名SA-841)、無機充填剤としては平均粒径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカを用い、その他の添加成分としてはカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)、離型剤としてカルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)、難燃剤として三酸化アンチモン及びエポキシ当量393、軟化点80℃、臭素含有量48重量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(臭素化エポキシ)を用い、表1〜表8に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行い、実施例1〜64、比較例1〜60のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
【表7】

【0043】
【表8】

【0044】
実施例、比較例のエポキシ樹脂組成物を、次の各試験により評価した。評価結果を表9〜表16に示す。なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力7MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、上記条件でエポキシ樹脂組成物を成形して流動距離(cm)を測定した。
(2)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(3)吸湿時熱時硬度
上記(2)で成形したエポキシ樹脂組成物を25℃/50%RHの条件で72時間放置後、ショアD型硬度計を用いて測定した。
(4)ガラス転移温度(Tg)
エポキシ樹脂組成物を上記条件で3.0mm×3.0mm×19mmの試験片に成形、後硬化を行い、熱機械分析装置(理学電機株式会社製TMA8140)を用いて昇温速度5℃/分の条件で線膨張曲線の測定を行い、その屈曲点をガラス転移温度Tg(℃)とした。
(5)耐リフロークラック性1
42アロイフレームに寸法8×10×0.4mmのテスト用シリコンチップを銀ペーストを用いて搭載した、外形寸法14×20×2.0mmのQFP80ピンのパッケージを、エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、85℃、60%RHの条件で168時間吸湿させた後、ベーパーフェーズリフロー装置により、215℃、90秒の条件でリフロー処理を行って、クラックの発生の有無を確認し、試験パッケージ数(5)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
(6)耐リフロークラック性2
吸湿条件を85℃、85%RHの条件で72時間、96時間及び168時間とした以外は、上記(5)と同様にして評価した。
【0045】
【表9】

【0046】
【表10】

【0047】
【表11】

【0048】
【表12】

【0049】
【表13】

【0050】
【表14】

【0051】
【表15】

【0052】
【表16】

【0053】
実施例1〜64は、いずれも流動性、熱時硬度、吸湿時熱時硬度に優れ、耐リフロークラック性も良好である。特に、ガラス転移温度が135℃未満の実施例1〜38及び49〜64は、85℃、85%RHという厳しい吸湿条件下においても168時間後までクラック発生がなく、耐リフロークラック性に著しく優れる。これに対して、本発明の(C)成分を含まない比較例1〜60では、同じ樹脂組成の実施例と比較して、流動性、吸湿時熱時硬度の少なくともいずれかに劣っている。また、本発明の成形品のガラス転移温度が155℃以上である比較例57〜60では、耐リフロークラック性に劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物を必須成分とし、成形品のガラス転移温度が155℃未満であるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(C)リン原子に少なくとも一つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物が、下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物と下記一般式(II)で示されるキノン化合物との付加反応物である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(ここで、式(I)中のR1は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。また、式(II)中のR4〜R6は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R4とR5が結合して環状構造となっていてもよい。)
【請求項3】
(D)無機充填剤をさらに含有し、その配合量がエポキシ樹脂組成物に対して55〜90体積%である請求項1又は請求項2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂が2官能のエポキシ樹脂及び/又はエポキシ当量が190以上のエポキシ樹脂を含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(A)エポキシ樹脂が下記一般式(III)〜(VIII)のいずれかで示されるエポキシ樹脂の少なくとも1種を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

(ここで、一般式(III)〜(VIII)中のR7〜R16は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数、pは1又は0を示し、l、mはそれぞれ0〜11の整数で(l+m)が1〜11の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
【請求項6】
(B)フェノール樹脂が下記一般式(IX)〜(XIII)のいずれかで示されるフェノール樹脂の少なくとも1種を含有してなる請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】

(ここで、一般式(IX)〜(XIII)中のR17〜R26は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示し、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数、rは0〜4の整数を示す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。

【公開番号】特開2011−179008(P2011−179008A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101505(P2011−101505)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2000−232204(P2000−232204)の分割
【原出願日】平成12年7月31日(2000.7.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】