説明

エレベータ監視装置

【課題】エレベータの利用者に対し、監視している印象を与えることによりセキュリティ機能を強化することができるエレベータ監視装置を提供する。
【解決手段】エレベータの乗りかご内を撮影するビデオカメラ2と、ビデオカメラ2により撮影された画像の任意の部分にマスク加工処理し、該画像を記憶する編集部4と、編集部から出力された該画像を表示する液晶表示器5とを有し、編集部4は、予め撮影された背景画像と現在の画像との色調を比較し、色調変化がない領域をマスクすることを特徴とする。このような構成によれば、ビデオカメラ2で撮影した映像情報中の色調変化があった部分を残し、他の部分をマスクする加工を施して画像を記憶し、その画像を表示しているので、例えば、乗客が監視されていることが強調される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの利用者に対し、監視している印象を与えることができるエレベータ監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかご内の映像を表示するエレベータ監視装置は、乗りかご内をビデオカメラで撮影し、撮影した映像を乗りかご内または乗場に設置した表示装置により表示する構成で、セキュリティ機能の向上を図るものがある。
【0003】
この構成において、プライバシーを保護するために、事前に登録した画像情報が撮影した映像に含まれていた場合、映像情報内の任意の人物情報等にマスクをかける技術(例えば、特許文献1参照)や、撮影した映像を簡易形状に加工し、表示する技術(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2004−48519号公報
【特許文献2】特開2002−3102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータの乗りかご内を撮影した映像を、乗りかご内または乗場に設置した表示装置に表示する方法によれば、エレベータ利用者は、表示装置に映像は流れているが実際に監視しているか否かが実感されない。このため、セキュリティ機能の強化を、エレベータ利用者に印象づけることができないのが問題である。
【0005】
特許文献1によれば、予め登録された人物情報に対してマスク加工しており、特許文献2によれば、乗りかご内の乗客を簡易図形に加工している。特許文献1および特許文献2は、ともにプライバシーを保護する観点を重視しているため、防犯上のセキュリティ機能を弱めることにつながり、最終的には、加工後の映像情報からは当該人物の特定が困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するための発明であって、エレベータの利用者に対し、監視している印象を与えることができるエレベータ監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、エレベータ監視装置は、エレベータの乗りかご内に露出して配置されて当該乗りかご内を撮影する撮影部(例えば、ビデオカメラ2)と、撮影部により撮影された画像の任意の部分にマスク加工処理し、該画像を記憶する編集部(例えば、編集部4)と、編集部から出力された該画像を表示する表示部(例えば、液晶表示器5)とを有し、編集部は、予め撮影された背景画像と現在の画像との色調を比較し、色調変化がある領域を残し他の領域をマスクすることを特徴とする。このような構成によれば、撮影部で撮影した映像情報中の色調変化があった部分を残し、他の部分をマスクする加工を施して画像を記憶し、その画像を表示しているので、例えば、乗客が監視されていることが強調される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エレベータの利用者に対し、監視している印象を与えることによりセキュリティ機能を強化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明の実施形態におけるエレベータ監視装置の概要について説明する。
エレベータの乗りかご内に設置し、撮影した乗りかご内の映像情報をプロセッサボード(編集部)に出力するビデオカメラ(撮影部)と、映像情報の書込みと読出しが可能なフラッシュメモリを搭載し、ビデオカメラから入力された映像情報を編集し、フラッシュメモリに書込みつつ、液晶表示器に出力する機能を有するプロセッサボード(編集部)と、乗りかご内または乗場に設置して、プロセッサボードから入力された映像情報を表示する液晶表示器(表示部)とを具備している。
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエレベータ監視装置を示す構成図である。図2は、エレベータ監視装置の機能を示す説明図である。エレベータ監視装置は、乗りかご1内に設置されたビデオカメラ(撮影部)2と、編集部(プロセッサボード)4と、液晶表示器(表示部)5より構成されている。ビデオカメラ2と編集部4とは、アナログ信号伝送ケーブル3aにより接続され、編集部4と液晶表示器5とは、アナログ信号伝送ケーブル3bにより接続される。
【0011】
図2に示すように、編集部4は、CPU41、入出力部42、出力画像用メモリ43、現画像用メモリ44、および背景画像用メモリ45を備え、バス46により接続されている。出力画像用メモリ43、現画像用メモリ44、および背景画像用メモリ45はフラッシュメモリ等が用いられる。なお、CPUは、Central Processing Unitの略であり、プログラムに従って動作する。
【0012】
ビデオカメラ2は、乗りかご1内に露出して(目立つように)配置され、乗りかご1内のエレベータの利用者6(図1参照)を撮影する。撮影された映像は、アナログ信号伝送ケーブル3aおよび入出力部42を介して編集部4に入力される。編集部4は、ビデオカメラ2から入力された映像に対し、後記する(図3参照)加工処理を行い、処理後の映像を、編集部4内のバス46を介して出力画像用メモリ43に書き込む。また、編集部4は、入出力部42およびアナログ信号伝送ケーブル3bを介して液晶表示器5に入力する。液晶表示器5は、乗りかご1内の利用者6が画面を見やすい位置に配置され、入力されたアナログ信号をRGB形式のデジタルデータに変換し、液晶画面に出力する。なお、RGBは、それぞれ赤 (red) 緑 (green) 青 (blue) の頭文字である。
【0013】
図3は、編集部の処理を示すフローチャートである。図2、図4および図5を参照して説明する。図4は、ビデオカメラで撮影された画像である。図4(a)は、乗りかごに利用者がいない場合を示す映像であり、図4(b)は、乗りかごに利用者がいる場合を示す映像である。図5は、編集部で画像処理後の画像を示す説明図である。図5(a)は、乗りかごに利用者がいない場合の画像処理後の画像であり、図5(b)は、乗りかごに利用者がいる場合の画像処理後の画像である。
【0014】
編集部4は、外部指令等により起動される(処理S10)。起動は、編集部4の電源投入または電源リセットを意味する。CPU41は、初期設定として、図4(a)に示すように乗りかご1が無人状態の場合の映像を、RGB形式のデジタルデータに変換して、背景画像として、背景画像用メモリ45に記録する(処理S11)。処理S11終了後、CPU41は、ビデオカメラ2から入力される現在の乗りかご1内の映像を、RGB形式のデジタルデータに変換して、現在の乗りかご1内の画像を作成し、現画像用メモリ44に記憶する(処理S12)。現在の画像を作成後、現画像用メモリ44に記憶されている現在の画像のRGB形式データと、背景画像用メモリ45に事前に記録してある背景画像のRGB形式データの色調を比較する(処理S13)。
【0015】
CPU41は、比較の結果、色調の変化を検出した場合(処理S14,Yes)、現在画像のRGB形式データに対し、色調変化を検出した領域以外をマスクする(処理S15a)。色調の変化を検出しなかった場合(処理S14,No)、現在画像のRGB形式データに対し、全領域をマスクする(処理S15b)。マスク処理後、処理S15aまたは処理S15bの処理で加工した画像情報を、出力画像用メモリ(フラッシュメモリ)43に書込む(処理S16)。
【0016】
処理S16においては、後に閲覧可能な形式でフラッシュメモリに書き込む処理であり、RGB形式データを記憶するのではなく、所定の圧縮方法、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)等へ圧縮することが望ましい。なお、処理S15aまたは処理S15bのマスクの方法は、単一色(白色等)で塗りつぶし、この際、色調変化領域(例えば、人物部分)に加工は加えず、人物が特定できる状態を維持することが望ましい。単一色を連続させることにより、JPEG圧縮した際の画像容量を削減することができる。
【0017】
CPU41は、加工した画像情報をアナログ信号に変換する(処理S17)。そののち、変換したアナログ信号を液晶表示器5に対して出力し(処理S18)、処理S12に戻る。
【0018】
乗りかご1内にエレベータの利用者6がいない場合、ビデオカメラ2から、図4(a)に示すように無人状態の映像が編集部4に入力されるため、現在の画像の全領域をマスクする処理S15bが実行され、図5(a)に示すように、単一色でマスクされた映像が出力画像用メモリ(フラッシュメモリ)43に記録されつつ、液晶表示器5に表示される。
【0019】
乗りかご1内にエレベータの利用者6がいた場合、ビデオカメラ2から、図4(b)に示すようにエレベータの利用者6が乗車している映像が編集部4に入力されるため、現在の画像の人物領域以外をマスクする処理15aが実行され、図5(b)に示すようにエレベータの利用者6aのみの映像が、出力画像用メモリ43に記録されつつ、液晶表示器5に表示される。
【0020】
本実施形態においては、液晶表示器5を、乗りかご1内に設置したが、各階の乗場に設置してもよい。この場合、各階の乗場で待っているエレベータの利用者に対して、編集部4は、乗りかご1内の加工された映像を放映でき、監視している印象を与えることができる。
【0021】
液晶表示器5に対し、乗りかご1内の映像を加工せずに出力した場合よりも、エレベータの利用者6に対して、監視されていることを強調することができ、防犯面での効果を期待できる。また、記録する映像の情報量を圧縮できるため、長時間の監視状況を、安価な記録装置(例えば、フラッシュメモリ)に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るエレベータ監視装置を示す構成図である。
【図2】エレベータ監視装置の機能を示す説明図である。
【図3】編集部の処理を示すフローチャートである。
【図4】ビデオカメラで撮影された画像である。
【図5】編集部で画像処理後の画像を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 乗りかご
2 ビデオカメラ
3a,3b アナログ信号伝送ケーブル
4 編集部(プロセッサボード)
5 液晶表示器
6,6a エレベータの利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご内に露出して配置されて当該乗りかご内を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された画像の任意の部分にマスク加工処理し、該画像を記憶する編集部と、前記編集部から出力された該画像を表示する表示部とを有するエレベータ監視装置であって、
前記編集部は、予め撮影された背景画像と現在の画像との色調を比較し、色調変化がある領域を残し他の領域をマスクする
ことを特徴とするエレベータ監視装置。
【請求項2】
前記編集部は、前記画像をマスクする場合に単一色でマスクする
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ監視装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記乗りかご内または乗場に設置する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ監視装置。
【請求項4】
前記編集部は、前記撮影部により撮影された画像のアナログ信号情報をRGB形式のデジタル情報に変換し、前記マスク加工処理ののち、所定の画像圧縮方法で画像圧縮する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ監視装置。
【請求項5】
前記編集部は、前記マスク加工処理した画像を、フラッシュメモリに記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−169018(P2008−169018A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5480(P2007−5480)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】