説明

エンコーダ及びエンコーダのパターン検出方法

【課題】符号板の回転数が高くなった場合でも適切に誤動作を検出することができるエンコーダ及びエンコーダのパターン検出方法を提供すること。
【解決手段】パターンを有し、回転軸を中心として回転する回転部と、パターンを検出する第一パターン検出部と、当該第一パターン検出部とは別にパターンを検出する第二パターン検出部と、第一パターン検出部又は第二パターン検出部における検出異常の有無を検出する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ及びエンコーダのパターン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエンコーダ装置は、例えば、8ビットのM(最大周期)系列パターンが形成されたアブソリュートトラックと等間隔のパターンが形成されたインクリメンタルトラックとを有する符号板から信号を検出し、検出した信号を用いて絶対位置を検出する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−194185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、アブソリュートパターンの最小識別幅の1/2で形成された2組の検出素子が、交互にアブソリュートパターンの符号を検出していた。検出素子が隣接する符号間(1と0の間)に位置した場合、従来におけるエンコーダ装置は、不安定な符号値を検出することを防ぐために、インクリメンタルトラックに形成されているインクリメンタルパターンを検出した信号を用いて2組の検出素子の検出信号を切り替えていた。しかしながら、この切り替え信号は、インクリメンタルパターンの検出信号を増幅や二値化等の処理を行っている。このため、回路による遅延が発生する場合があった。このようなエンコーダ装置の場合、符号板の回転数が高くなり検出周波数が高くなるとこの遅延による影響が大きくなるため、適切な位置で符号を検出できずに誤動作検出部が誤検出してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、符号板の回転数が高くなった場合でも適切に誤動作を検出することができるエンコーダ及びエンコーダのパターン検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様に従えば、パターンを有し、回転軸を中心として回転する回転部と、パターンを検出する第一パターン検出部と、当該第一パターン検出部とは別にパターンを検出する第二パターン検出部と、第一パターン検出部又は第二パターン検出部における検出異常の有無を検出する制御部とを備えるエンコーダが提供される。
【0007】
本発明の第二の態様に従えば、測定対象の回転軸部材に固定される回転部に設けられたパターンを、第一パターン検出部及び第二パターン検出部によって検出するパターン検出工程と、第一パターン検出部又は第二パターン検出部における検出異常の有無を、制御部によって検出する異常検出工程とを有するエンコーダのパターン検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、符号板の回転数が高くなった場合でも適切に誤動作を検出することができるエンコーダ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る符号板の一例を示す図である。
【図2】同実施形態に係るインクリメンタルパターンと第1アブソリュートパターンと第2アブソリュートパターンの一例を示す図である。
【図3】同実施形態に係るエンコーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】同実施形態に係る検出素子の構成の一例と、検出素子の切り替え信号を説明する図である。
【図5】同実施形態に係る初期設定手順のフローチャートである。
【図6】同実施形態に係る異常検出手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図6を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は係る実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【0011】
図1は、本実施形態における符号板の一例を示す図である。図1のように、符号板1は、例えば、外周側から順番にインクリメンタルパターン11を有するインクリメンタルトラックと、第1アブソリュートパターン12を有する第1アブソリュートトラックと、第2アブソリュートパターン13を有する第2アブソリュートトラックとを備えている。各トラックのパターンについて、図2を用いて説明する。図2は、インクリメンタルパターン11と第1アブソリュートパターン12と第2アブソリュートパターン13との一例を示す図である。図2(a)のように、インクリメンタルパターン11は、例えば、論理状態を示すスリットが最小識別幅p1の等間隔で形成されている。また、第1アブソリュートパターン12は、インクリメンタルパターン11の最小識別幅p1より広い最小識別幅p2で、例えば、6ビットのM系列パターンのスリットが形成されている。第2アブソリュートパターン13は、第1アブソリュートパターン12の最小識別幅p2より広い最小識別幅p3で、図2(b)のように第1アブソリュートパターン12のアドレスを右にnビットシフト(図2(b)の場合、1ビットシフト)したアドレスを持つ5ビットのM系列の符号パターンのスリットが形成されている。例えば、p3=2×p2の場合、第1アブソリュートパターン12の現在位置が3(11)の場合、第2アブソリュートパターン13のアドレスは11を右に1ビットシフトした01の位置を示すパターンが形成されている。図2(b)は、第1および第2アブソリュートパターンのアドレスの関係を説明する図である。なお、各パターンはスリットではなく、符号板1上に反射パターンで形成しても良い。なお、本実施形態では、符号板1が回転するロータリータイプのエンコーダ装置について説明する。
【0012】
次に、図2〜図4を用いて、本実施形態におけるエンコーダ装置を説明する。図3は、エンコーダ装置の一例を示すブロック図である。図4は、検出素子の構成の一例を示す図と、検出素子の切り替え信号を説明する図である。図3のように、エンコーダ装置20は、符号板1と、インクリメンタル検出素子群21と、第1アブソリュート検出素子群22と、第2アブソリュート検出素子群23と、回転方向判定部24と、カウンター部25と、A/D(アナログ−デジタル)変換部26と、内挿部27と、位置検出部28と、位置情報出力部29と、回転判定部30と、第1信号読み込み部31と、第1パターン発生部32と、絶対位置デコード部33と、絶対位置エンコード部41と、第2パターン発生部42と、第2信号読み込み部43と、異常検出部44と、エラー出力部45と、を備えている。
【0013】
インクリメンタル検出素子群21(インクリメンタルパターン検出部)は、インクリメンタルパターン11の検出用素子であり、インクリメンタルパターン11に対向して配置されている。インクリメンタル検出素子群21は、図4(a)〜(b)のようにインクリメンタルパターン11の最小識別幅の1/2幅の検出素子101〜102を備えている。
また、インクリメンタル検出素子群21の各検出素子101〜102は、それぞれインクリメンタルパターン11を検出し、検出したインクリメンタルパターン11に対応する図4(c)〜(d)のように位相が90度ずれたA相信号とB相信号とを、回転方向判定部24とA/D変換部26とに出力する。また、インクリメンタル検出素子群21は、検出したA相信号を第1アブソリュート検出素子群22に出力する。なお、図4(b)では、インクリメンタルパターン11用の検出素子101、102を説明するために1組のみを抜き出して説明したが、検出素子101と102の組み合わせの素子群を複数備えていても良い。
【0014】
第1アブソリュート検出素子群22(第1アブソリュートパターン検出部)は、第1アブソリュートパターン12の検出用素子であり、第1アブソリュートパターン12に対向して配置されている。第1アブソリュート検出素子群22は、図4(e)〜(f)のように第1アブソリュートパターン12の最小識別幅の1/2幅(半分)の12個の検出素子111〜122を備えている。また、第1アブソリュート検出素子群22は、インクリメンタル検出素子群21からA相信号が入力され、入力されたA相信号を用いて2組の検出素子(図4(f)の検出素子111と113と115と117と119と121の組と、検出素子112と114と116と118と120と122の組)を、図4(g)のように切り替えて交互に検出を行う。さらに、第1アブソリュート検出素子群22の検出素子111〜122は、検出した第1アブソリュートパターン12に対応する図4(h)のように第1アブソリュート信号を第1信号読み取り部31に出力する。
【0015】
第2アブソリュート検出素子群23(第2アブソリュートパターン検出部)は、第2アブソリュートパターン13の検出用素子であり、第2アブソリュートパターン13に対向して配置されている。第2アブソリュート検出素子群23は、図4(i)〜(j)のように第2アブソリュートパターンの最小識別幅の1/2幅(半分)の2個の検出素子131と132を備えている。また、第2アブソリュート検出素子群23は、カウンター部25から所定の位(くらい)の値の切り替え信号が入力され、入力された該切り替え信号を用いて検出素子131と132とを図4(k)のように切り替えて交互に検出を行う。また、第2アブソリュート検出素子群23の検出素子131〜132は、検出した各信号を第2信号読み取り部41に出力する。
【0016】
回転方向判定部24は、インクリメンタル検出素子群21からA相信号とB相信号とが入力される。また、回転方向判定部24は、入力されたA相信号とB相信号とを用いて、インクリメンタル検出素子群21に対する回転方向とカウント値(増減値)とを検出し、検出した回転方向情報とカウント値とを、カウンター部25と第1パターン発生部32と第2パターン発生部42とに出力する。また、符号板1の回転方向の検出方法は、A相信号とB相信号との位相関係から判定する。また、この回転方向情報とカウント値とは、符号板1の回転に応じて、回転方向やカウント値が増減するために相対位置情報である。
【0017】
カウンター部25はカウンターを備え、初期設定動作時、絶対位置デコード部33から現在位置情報が入力され、入力された現在位置情報をカウンターにセットする。また、カウンター部25は、エンコード動作時、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値とが入力され、入力された回転方向情報とカウント値とに応じてカウンターを増減し、現在位置情報を生成する。また、カウンター部25は、生成した現在位置情報を位置検出部28と回転判定部30とに出力する。なお、カウンター部25が生成する現在位置情報は、符号板1の絶対位置を表しているために絶対位置情報である。また、カウンター部25は、所定の位の値を上述の切り替え信号として第2アブソリュート検出素子群23に出力する。一例として、カウンター部25は、符号板1がp3だけ移動する間に、「0→1→0」と1周期分変化する位の値を切り替え信号として第2アブソリュート検出素子群23に出力する。
【0018】
A/D変換部26は、インクリメンタル検出素子群21からA相信号とB相信号とが入力され、入力されたA相信号とB相信号とをそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換し、変換したA相信号とB相信号とを内挿部27に出力する。
【0019】
内挿部27は、A/D変換部26からデジタル化されたA相信号とB相信号とが入力され、入力されたA相信号とB相信号とを用いて内挿処理(例えば、図2(c)のように256(0〜255)分解能)を行い高分解能な相対位置情報を算出する。また、内挿部27は、算出した高分解能な相対位置情報を位置検出部28に出力する。内挿の原理は、例えば、位相の異なるA相信号とB相信号とを用い、内挿値θ=tan−1(A/B)(A/Bは、A相信号とB相信号との信号振幅の比)を算出する。この算出した内挿値θを、カウンター部25がカウントした現在位置に加えることにより、インクリメンタルパターンの最小識別幅より細かい精度の位置を算出することができる。なお、相対位置検出部とは、符号板1から相対位置を検出する機能部であり、第1インクリメンタル検出素子群21と、回転方向判定部24と、A/D変換部26と、内挿部27とを有する。
【0020】
位置検出部28は、カウンター部25から現在位置情報が入力され、内挿部27から高分解能な相対位置情報が入力される。また、位置検出部28は、入力された現在位置情報と高分解能な相対位置情報とを用いて、符号板1の現在位置を高精度に検出し、検出した位置情報を位置情報出力部29に出力する。
【0021】
位置情報出力部29は、位置検出部28から位置情報が入力され、入力された位置情報に基づいた位置情報を、エンコーダ装置20に接続されている装置、例えばロボット制御装置に出力する。
【0022】
回転判定部30は、カウンター部25から現在位置情報が入力され、入力された現在位置情報を用いて、回転速度(又は回転数)を算出することで符号板1が高速回転しているか低速回転しているかを判定する。例えば、低速回転とは6千回転/分未満であり、高速回転とは6千回転/分以上であり、第1アブソリュートトラックのM系列のビット数に応じて予め定められた回転数である。第1アブソリュートトラックのM系列のビット数に応じる理由を以下に説明する。ビット数が9ビットの場合、第1アブソリュートパターン12の最小識別幅である1パルスの角度は0.7度であり、ビット数が10ビットの場合、第1アブソリュートパターン12の最小識別幅である1パルスの角度は0.35度である。このため、第1アブソリュート検出素子群22に必要な切り替え信号は、9ビットのM系列では2万4千回転/分で200[kHz]に達するが、10ビットのM系列では1万2千回転/分で200[kHz]に達する。異常検出部44の誤動作は、第1アブソリュート検出素子群22の切り替え周波数に応じて生じるため、切り替え周波数は低い方が誤動作を防ぐことができる。このため、エンコーダ装置20は、低速回転時には第1アブソリュート検出素子群22の検出信号を用いてエラー検出を行い、高速回転時は第2アブソリュート検出素子群23の検出信号を用いてエラー検出を行い、回転数を検出する。なお、エンコーダ装置20は、低速回転時及び高速回転時において、第2アブソリュート検出素子群23の検出信号を用いてエラー検出を行うようにしてもよい。また、回転判定部30は、判定結果を異常検出部44に出力する。
【0023】
第1信号読み込み部31は、第1アブソリュート検出素子群22の検出素子111〜122から第1アブソリュート信号が入力され、入力された第1アブソリュート信号を所定のしきい値と比較して二値化し、二値化した検出信号に応じた第1符号を第1パターン発生部32と異常検出部44とに出力する。
【0024】
第1パターン発生部32は、例えば、シフトレジスタ等の回路により構成されている。
また、第1パターン発生部32は、第1アブソリュート検出素子群22から検出信号に応じた第1符号が入力され、入力された第1符号をシフトレジスタにセットして第1パターン情報を生成する。また、第1パターン発生部32は、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値とが入力され、入力された回転方向情報とカウント値とに応じて、シフトレジスタにセットした第1パターン情報を更新する。さらに、第1パターン発生部32は、生成した第1パターン情報を絶対位置デコード部33に出力し、または、更新した第1パターン情報を異常検出部44に出力する。
具体的には、電源投入時、第1パターン発生部32は、第1信号読み込み部31から検出信号に応じた符号が入力され、入力された検出信号に応じた符号をシフトレジスタにセットする。そして、第1パターン発生部32は、受け取った論理信号に基づく第1パターンを生成し、生成した第1パターン情報を絶対位置デコード部33に出力する。例えば、図4(e)において、第1パターン発生部32は、第1アブソリュート検出素子群22の各検出素子の検出信号を二値化した検出素子111の出力=1、検出素子113の出力=0、検出素子115の出力=1、検出素子117の出力=1、検出素子119の出力=0、検出素子121の出力=0が入力され、入力された検出信号に応じた符号をシフトレジスタの所定の位置にそれぞれセットしてパターン信号「101100」を生成する。
エンコード時、第1パターン発生部32は、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値が入力される。次に、第1パターン発生部32は、回転方向が正方向であればカウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して左へシフトする処理(又は加算する処理)を行い、回転方向が逆方向であればカウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して右へシフトする処理(又は減算する処理)を行うことでレジスタにセットされているパターンを更新する。
【0025】
絶対位置デコード部33は、第1パターン発生部32から第1パターン情報が入力され、入力された第1パターン信号を用いて絶対位置(絶対位置情報)を算出し、算出した絶対位置をカウンター部25と絶対位置エンコード部41とに出力する。具体的には、電源投入時、第1アブソリュートパターン12に6ビットのM系列パターンが形成されている場合、絶対位置デコード部33は入力された第1パターン信号、例えば「110100」を第1アブソリュートパターン12のM系列パターンに基づきアドレスを算出し、算出した値をカウンター部25と絶対位置エンコード部41とに出力する。
【0026】
絶対位置エンコード部41は、絶対位置デコード部33から上記絶対位置情報が入力され、入力された絶対位置情報に応じた第2アブソリュートパターン13の第2パターン信号を第2アブソリュートパターン13のM系列パターンに基づき生成し、生成した第2パターン信号を第2パターン発生部42に出力する。
【0027】
第2パターン発生部42は、例えば、シフトレジスタ等の回路により構成されている。
また、第2パターン発生部42は、絶対位置エンコーダ41から第2パターン信号が入力され、入力された第2パターン信号をシフトレジスタにセットして第2パターン情報を生成する。また、第2パターン発生部42は、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値とが入力される。次に、第2パターン発生部42は、回転方向が正方向であればカウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して左へシフトする処理(又は加算する処理)を行いレジスタにセットされているパターンを更新する。さらに、第2パターン発生部42は、回転方向が逆方向であればカウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して右へシフトする処理(又は減算する処理)を行うことでレジスタにセットされているパターンを更新する。さらにまた、第2パターン発生部42は、生成した第2パターン情報、または、更新した第2パターン情報を異常検出部44に出力する。
【0028】
第2信号読み込み部43は、第2アブソリュート検出素子群23の検出素子131〜132から検出信号が入力され、入力された検出素子を所定のしきい値と比較して二値化し、二値化した検出信号に応じた第2符号を異常検出部44に出力する。
【0029】
異常検出部44は、第1信号読み取り部31から検出信号に応じた第1符号が入力され、第1パターン発生部32から第1パターン情報が入力され、第2パターン発生部42から第2パターン情報が入力され、第2信号読み取り部43から検出信号に応じた第2符号が入力される。また、異常検出部44は、入力された検出信号に応じた第1符号と第1パターン情報とが一致しているか比較し、一致していない場合、エラー信号(異常信号)をエラー出力部45に出力する。また、異常検出部44は、入力された第2パターン情報と第2符号とが一致しているか比較し、一致していない場合、エラー信号(異常信号)をエラー出力部45に出力する。
【0030】
エラー出力部45は、異常検出部44からエラー信号が入力され、入力されたエラー信号に応じたエラー信号を、エンコーダ装置20に接続されている装置、例えばロボット制御装置に出力する。
【0031】
次に、エンコーダ装置20の初期設定手順について図5を用いて説明する。図5は、初期設定手順のフローチャートである。エンコーダ装置20に電源が投入された後、第1信号読み出し部31は、第1アブソリュート検出素子群22から検出信号が入力され、第1アブソリュートパターン12を読み込む(ステップS1)。次に、第1信号読み出し部31は、入力された検出信号を所定の閾値で二値化し、二値化した検出信号に応じた第1符号を第1パターン発生部32と異常検出部44とに出力する。次に、第1パターン発生部32は、第1信号読み取り部31から第1符号が入力され、入力された第1符号をシフトレジスタにセットして第1パターンを生成し(ステップS2)、生成した第1パターン情報を絶対位置デコード部33に出力する。
【0032】
次に、絶対位置デコード部33は、第1パターン発生部32から第1パターン情報が入力され、入力された第1パターン情報を第1アブソリュートパターン12のM系列に基づき絶対位置(絶対位置情報)を算出し(ステップS3)、算出した絶対位置情報をカウンター部25と絶対位置エンコード部41とに出力する。次に、カウンター部25は、絶対位置デコード部33から絶対位置情報が入力され、入力された絶対位置情報をカウンターにセットする(ステップS4)。
【0033】
次に、絶対位置エンコード部41は、絶対位置デコード部33から上記絶対位置情報が入力され、入力された絶対位置情報に対応する第2アブソリュートパターン13の第2パターン信号を生成し(ステップS5)、生成した第2パターン信号を第2パターン発生部42に出力する。次に、第2パターン発生部42は、絶対位置エンコード部41から第2パターン信号が入力され、入力された第2パターン信号をシフトレジスタにセットして第2パターン情報を生成する(ステップS6)。
以上で、初期設定手順を終了する。
【0034】
エンコーダ装置20の異常検出手順を、図6を用いて説明する。図6は、異常検出手順のフローチャートである。初期設定が終了後、カウンター部25には、第1アブソリュートパターン12の絶対位置(又は、絶対位置から見えるパターン)がセットされている。
また、第1パターン発生部32には、第1アブソリュートパターン12の絶対位置(又は、絶対位置から見えるパターン)がセットされ、第2パターン発生部42には、第2アブソリュートパターン13の絶対位置(現在位置)がセットされている。その後、符号板1が回転した場合、インクリメンタル検出素子群21の検出素子101〜102は、それぞれインクリメンタルパターン11を検出し(ステップS101)、検出したA相信号とB相信号とを回転方向判定部24とA/D変換部26とに出力する。
次に、回転方向判定部24は、インクリメンタル検出素子群21からA相信号とB相信号とが入力される。次に、回転方向判定部24は、入力されたA相信号とB相信号とを用いて、インクリメンタル検出素子群21に対する回転方向とカウント値とを検出し(ステップS102)、検出した回転方向情報とカウント値とをカウンター部25と、第1パターン発生部32と、第2パターン発生部42とに出力する。
【0035】
次に、カウンター部25は、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値とが入力される。次に、カウンター部25は、入力された回転方向情報が正方向の回転の場合、カウント値をカウンターの値に加算(左へシフト)し、回転方向情報が逆方向の回転の場合、カウント値をカウンターターの値から減算(右へシフト)し現在位置情報を生成する(ステップS103)。また、カウンター部25は、生成した現在位置情報を位置検出部28と回転判定部30とに出力する。
次に、A/D変換部26は、インクリメンタル検出素子群21からA相信号とB相信号とが入力され、入力されたA相信号とB相信号とをデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換したA相信号とB相信号とを内挿部27に出力する。次に、内挿部27は、A/D変換部26からデジタル信号に変換したA相信号とB相信号とが入力され、デジタル信号に変換したA相信号とB相信号とを用いて高分解能の相対位置情報を生成し(ステップS104)、生成した高分解能の相対位置情報を位置検出部28に出力する。
【0036】
次に、位置検出部28は、カウンター部25から現在位置情報が入力され、内挿部27から高分解能の相対位置情報が入力される。次に、位置検出部28は、入力された現在位置情報と高分解能な相対位置情報とを用いて、符号板1の現在位置を高精度に検出し(ステップS105)、検出した位置情報を位置情報出力部29に出力する。
次に、位置情報出力部29は、位置検出部28から位置情報が入力され、入力された位置情報に基づいた位置情報を、エンコーダ装置20に接続されている装置、例えばロボット制御装置に出力する。
【0037】
次に、第1パターン発生部32は、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値とが入力される。次に、回転方向が正方向の場合、第1パターン発生部32は、カウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して左へシフトする処理(又は加算する処理)を行って、第1パターン情報を更新する。または、回転方向が逆方向の場合、第1パターン発生部32は、カウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して右へシフトする処理(又は減算する処理)を行って、第1パターン情報を更新する(ステップS106)。そして、第1パターン発生部32は、更新したパターン情報を異常検出部44に出力する。
【0038】
次に、第1信号読み込み部31は、第1アブソリュート検出素子群22から検出信号が入力され、入力された検出信号を所定のしきい値と比較して二値化し、二値化した検出信号に基づく第1符号を異常検出部44に出力する。次に、第2信号読み込み部43は、第2アブソリュート検出素子群23から検出信号が入力され、入力された検出信号を所定のしきい値と比較して二値化し、二値化した検出信号に基づく第2符号を異常検出部44に出力する(ステップS107)。
【0039】
次に、第2パターン発生部42は、回転方向判定部24から回転方向情報とカウント値とが入力される。次に、回転方向が正方向の場合、第2パターン発生部42は、カウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して左へシフトする処理(又は加算する処理)を行って、第2パターン情報を更新する。または、回転方向が逆方向の場合、第2パターン発生部42は、カウント値をシフトレジスタにセットしたパターンに対して右へシフトする処理(又は減算する処理)を行って、第2パターン情報を更新する(ステップS108)。さらに、第2パターン発生部42は、更新した第2パターン情報を異常検出部44に出力する。
【0040】
次に、回転判定部30は、カウンター部25から入力された現在位置情報を用いて符号板1の回転数を算出し、算出した符号板1の回転数を所定のしきい値と比較し、比較の結果に基づき高速回転か低速回転かを判別する(ステップS109)。回転数がしきい値未満の場合(ステップS109;低速回転)、回転判定部30は、低速回転と判定し判定結果を異常検出部44に出力する。一方、回転数がしきい値以上の場合(ステップS109;高速回転)、回転判定部30は、高速回転と判定し判定結果を異常検出部44に出力する。
次に、異常検出部44は、回転判定部30から判定結果が入力され、入力された判定結果が低速回転の場合、判定結果に応じて、第1符号と第1パターン情報とが一致しているか否か、さらに、第2符号と第2パターン情報とが一致しているか否かを判定することで誤動作検出を行う(ステップS110)。
入力された判定結果が高速回転の場合、異常検出部44は、判定結果に応じて、第2符号と第2パターン情報とが一致しているか否かを判定することで誤動作検出を行う(ステップS111)。
【0041】
次に、異常検出部44は、ステップS110またはステップS111で誤動作を検出したか否かを判定し(ステップS112)、誤動作(異常)を検出した場合(ステップS112;Yes)、エラー信号を生成し(ステップS113)、生成したエラー信号をエラー出力部45に出力する。次に、エラー出力部45は、異常検出部44からエラー信号が入力され、入力されたエラー信号に応じて、エラー情報を、例えば、エンコーダ装置20に接続されているロボット制御装置に出力する。
一方、ステップS112で誤動作が検出されていないと判定された場合(ステップS112;No)、異常検出部44はエラー信号を生成しない。
以上の手順を、エンコード動作中、繰り返して行う。
【0042】
以上のように、符号板1に第1アブソリュートパターン12の最小識別幅λと第2アブソリュートパターン13の最小識別幅2λ(nは自然数)を形成し、第1アブソリュートパターン12から検出した信号を用いて絶対位置を算出してカウンター部25と第1パターン発生部32に保持するようにした。また、絶対位置エンコード部41は、第1パターン発生部32が生成したパターン情報を用いて第2アブソリュートパターン13の絶対位置を算出して第2パターン発生部42に保持するようにした。符号板1の回転時、インクリメンタル検出素子群21が検出した検出信号に応じて、カウンター部25のカウント値と、第1パターン発生部32の第1パターン情報と、第2パターン発生部42の第2パターン情報とを更新するようにした。そして、符号板1が高速回転時、第2アブソリュート検出素子群23が検出した検出信号に応じた第2符号と、第2パターン発生部42の第2パターン情報とを比較することで誤動作を検出するようにした。この結果、符号板1が高速回転しているときでも、誤動作を適切に検出することができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1アブソリュートパターン12の最小識別幅λと第2アブソリュートパターン13の最小識別幅2λ(nは自然数)の符号板1を有するエンコーダ装置20の例を説明したが、第1アブソリュートパターン12の最小識別幅と第2アブソリュートパターン13の最小識別幅の関係はこれに限らず、n倍(nは2以上の自然数)であっても良い。
【0044】
また、本実施形態では、第1アブソリュート検出素子群22の切り替え信号にインクリメンタル素子群21が検出したA相信号を用いる例を説明したが、p1=p2として、A相信号とB相信号とを二値化し、二値化した値の排他的論理和の演算により切り替えるようにしても良い。また、p3=2×p2として、第2アブソリュート検出素子群23の切り替えにA相信号を用いるようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、第2アブソリュート検出素子群23が検出素子131と132を有する例を説明したが、検出素子は131か132のどちらか1つだけでも良い。この場合、第2アブソリュート検出素子群23の検出素子が第2アブソリュートパターン13の2つのパルスを同時に読み出していない状態(隣接パルスの間にいない状態)のときの検出信号を異常検出に用いる。
【0046】
また、本実施形態では、符号板1の低速回転時は第1アブソリュート検出素子群22が検出した検出信号と第2アブソリュート検出素子群23が検出した検出信号とに基づき誤動作を検出する例を説明したが、遅延量の影響が少ない低速回転時は第1アブソリュート検出素子群22が検出した検出信号と第1パターン発生部32の符号との比較のみで検出しても良い。または、低速回転時は第2アブソリュート検出素子群23が検出した検出信号と第2パターン発生部42の符号との比較のみで検出しても良い。
【0047】
また、本実施形態では、符号板1が回転するロータリータイプのエンコーダ装置について説明したが、リニアタイプのエンコーダ装置であっても良い。この場合、符号板1が移動し、符号板1上の各パターンを検出することで、同様に異常検出を行うことができる。
【0048】
なお、実施形態の図3の各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD−ROM等の可搬媒体、USB(Universal Serial Bus) I/F(インタフェース)を介して接続されるUSBメモリー、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・・符号板
20・・・エンコーダ装置
21・・・インクリメンタル検出素子群
22・・・第1アブソリュート検出素子群
23・・・第2アブソリュート検出素子群
24・・・回転方向判定部
25・・・カウンター部
26・・・A/D変換部
27・・・内挿部
28・・・位置検出部
29・・・位置情報出力部
30・・・回転判定部
31・・・第1信号読み込み部
32・・・第1パターン発生部
33・・・絶対位置デコード部
41・・・絶対位置エンコード部
42・・・第2パターン発生部
43・・・第2信号読み込み部
44・・・異常検出部
45・・・エラー出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有し、回転軸を中心として回転する回転部と、
前記パターンを検出する第一パターン検出部と、
前記パターン検出部とは別に前記第一パターンを検出する第二パターン検出部と、
前記第一パターン検出部又は前記第二パターン検出部における検出異常の有無を検出する制御部と
を備えるエンコーダ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一パターン検出部の出力結果及び前記第二パターン検出部の出力結果に基づいて前記検出異常の有無を検出する異常判断手段を有する
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記第一パターン検出部及び前記第二パターン検出部は、互いに位相の異なる検出信号を出力可能である
請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記パターンは、インクリメンタルパターンを含み、
前記第一パターン検出部は、前記インクリメンタルパターンを検出する第一光検出部を有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記パターンは、アブソリュートパターンを含み、
前記第二パターン検出部は、前記アブソリュートパターンを検出する第二光検出部を有する
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一光検出部からの出力結果と前記第二光検出部からの出力結果とに基づいて前記検出異常の有無を検出する
請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
測定対象の回転軸部材に固定される回転部に設けられたパターンを、第一パターン検出部及び第二パターン検出部によって検出するパターン検出工程と、
前記第一パターン検出部又は前記第二パターン検出部における検出異常の有無を、制御部によって検出する異常検出工程と
を有するエンコーダのパターン検出方法。
【請求項8】
前記異常検出工程は、前記第一パターン検出部の出力結果及び前記第二パターン検出部の出力結果に基づいて前記検出異常の有無を検出することを含む
請求項7に記載のエンコーダのパターン検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47692(P2013−47692A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264605(P2012−264605)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2010−8931(P2010−8931)の分割
【原出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】