説明

エンジンのオイルポンプ配置構造

【課題】比較的簡素な構成で優れた機能を実現するエンジンのオイルポンプ配置構造を提供する。
【解決手段】オイルパン内のオイルを吸い上げ、エンジン内各部に圧送する低圧用オイルポンプ24と、低圧用オイルポンプ24よりも高圧のオイルを圧送する高圧用オイルポンプ25とを備える。高圧用オイルポンプ25の吸込口は、低圧用オイルポンプ24の下流側に接続される。高圧用オイルポンプ25の吸込口は、オイルフィルタ33の下流に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等をはじめとする車両のエンジンにおけるオイルポンプの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば二輪車用エンジンのオイルポンプは、1つ設けられているだけであった。この場合、オイル通路の圧力は、このポンプの能力とオイル通路の最大圧力を制御するリリーフ弁とによって決まっている。オイルポンプは一般に、エンジン各部の潤滑が可能なできるだけ低い圧力と流量に設定できると、オイルポンプの仕事量が減り、メカロス低減ができ、結果としてエンジン出力の向上や低燃費化を図ることができる。
【0003】
一方、高出力、高回転エンジンにおいては、特にピストンをオイルジェットで効率よく冷却することが、ピストンの軽量化ひいてはエンジン高出力化、低燃費化に繋がる。この場合、シリンダ内を高速で上下動するピストンにオイルを常に当てるためには、噴射するオイルジェットのスピードを上げる、即ち高圧にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−152920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オイルポンプが1つの場合、ピストンに係わる特にその冷却等の要請と、各部の潤滑に係わる要請とを両立させるのが必ずしも容易でない。
なお、特許文献1には低圧用オイルポンプと高圧用オイルポンプとが同一駆動軸によって駆動されるオイルポンプ集合体が開示される。この場合、構成が複雑化する等の問題があった。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、比較的簡素な構成で優れた機能を実現するエンジンのオイルポンプ配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるエンジンのオイルポンプ配置構造は、オイルパン内のオイルを吸い上げ、エンジン内各部に圧送する低圧用オイルポンプと、この低圧用オイルポンプよりも高圧のオイルを圧送する高圧用オイルポンプとを備えたエンジンにおいて、前記高圧用オイルポンプの吸込口は、前記低圧用オイルポンプの下流側に接続されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、前記高圧用オイルポンプの吸込口は、オイルフィルタの下流に接続されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、下面視で前記高圧用オイルポンプと前記低圧用オイルポンプとの間に、オイル吸入通路及びオイル吐出通路が配置されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、前記高圧用オイルポンプと前記低圧用オイルポンプはオイルポンプロータ側面視で、それぞれの吸込口と吐出口とが互いに逆側に配置されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、前記高圧用オイルポンプの吐出口は、前記エンジンの前側に配置したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、前記高圧用オイルポンプのロータ軸と前記低圧用オイルポンプ用のロータ軸とを同軸としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、前記高圧用オイルポンプの吸込口は、メインギャラリに接続されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のエンジンのオイルポンプ配置構造において、前記高圧用オイルポンプの下流には、ピストン冷却用オイル通路が接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通常のオイルポンプ(低圧用)とは別に、高い油圧を必要とする箇所のみにオイルを圧送するための高圧用オイルポンプを有し、高圧用オイルポンプ側では圧力脈動が小さくなることからキャビテーションが抑制されてポンプ効率が改善されるため、エンジン全体としてのメカロスは低減する。
また、別途高圧の油圧系統を必要とする部品にのみ設けることで、主要油圧系統の油圧を実質的に下げることができ、機械的損失(所謂、メカロス)の低減等を図ると共に、ピストンジェット等の油圧を更に高圧にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の全体構成例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエンジンユニットの構成例を示す右側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るエンジンユニットの構成例を示す左側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエンジンユニットにおいてオイルパンを取り外した状態でのクランクケース下面視図である。
【図5】図4のI−I線に沿う断面図である。
【図6】図3のII−II線に沿う断面図である。
【図7】図3のIII−III線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明におけるエンジンのオイルポンプ配置構造の好適な実施の形態を説明する。
先ず、本発明を適用した車両全体構造について説明する。この実施形態においては図1に示すような自動二輪車100とし、この自動二輪車100に搭載したエンジンには後述するようにオイルポンプが配置される。なお、以下の説明中で用いる各図において、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
【0018】
自動二輪車100において車両の前後方向に伸びる車体フレームの前端に、左右に回動自在に支承されたフロントフォーク101を備え、このフロントフォーク101に前輪102が取り付けられる。車体フレームは、略車両前半部を構成するメインフレーム103と車両後半部を構成するシートレール104からなり、メインフレーム103の下方にはエンジンユニット10が、メインフレーム103に対して取り付けられる。
【0019】
エンジンユニット10の後上方には、エンジンユニット10へ供給する空気量を調整するスロットルボディ105と、このスロットルボディ105に空気を供給するエアクリーナ106が上方に向かって連続して接続されている。エアクリーナ106の上方にて、燃料タンク107がメインフレーム103に対して取り付けられおり、前述のスロットルボディ105に取り付けられた燃料噴射装置及びフューエルホース(共に図示せず)に接続して、燃料を供給するようになっている。
【0020】
また、車両前部にはフロントカウル108が取り付けられる。フロントカウル108には、前照灯109や左右一対の方向指示器110が備えられている。フロントカウル108の下端には、車両側面を覆うサイドカウル111が接続され、これらのフロントカウル108及びサイドカウル111は相互に滑らかに繋がり、エンジンユニット10が含まれる車両の略前半部を覆う。
【0021】
メインフレーム103の後部には、遥動自在にスイングアーム112が取り付けられ、このスイングアーム112の後端に後輪113が取り付けられ、公知の技術と同様にエンジンユニット10の動力が伝えられ、これにより後輪113が駆動される。シートレール104は、メインフレーム103の後部上側に接続され、後方且つ上方に向けて延出して設けられる。燃料タンク107の後方において、運転者が着座するフロントシート114がリアカウル115の上面にて配置される。フロントシート114は、シートレール104に固定される。
【0022】
フロントシート114の後方且つ上方には、同乗者が着座するリアシート116が取り付けられている。また、リアシート116の下方には、同乗者がその足を乗せるためのピリオンステップ117がシートレール104の下部にて固定して設けられる。ピリオンステップ117は、そのステー118がシートレール104との取付け位置から後方下方に延出して設けられ、ステー118の先端に足を乗せるピリオンステップ117が支持される。自動二輪車100は、概略上記のように構成される。
【0023】
次に、自動二輪車100に搭載されるエンジンユニット10を説明する。エンジンユニット10はこの例では水冷式直列4気筒4サイクルガソリンエンジンを使用する。なお、エンジン気筒数等は必要に応じて適宜変更可能であり、この例に限定されるものではない。図1及び図2を参照して、エンジンユニット10においてクランクケース11、シリンダ12、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドカバー14が順次重なるように一体的に結合し、最下部にオイルパン15が付設される。
【0024】
クランクケース11は、クランクケースアッパ11A及びクランクケースロア11Bが上下に重ね合わさってなり、それらの合せ面にてクランクシャフト16がエンジンユニット10の車幅方向(左右方向)に沿って配置支持される。クランクケース11の後部にはトランスミッションケース17が結合し、このトランスミッションケース17内には図示しないカウンタシャフトや複数のトランスミッションギアは配設される。エンジンユニット10の動力はクランクシャフト16からトランスミッションを経て最終的にドライブスプロケット18へ伝達され、このドライブスプロケット18が後輪113(図1)を回転駆動するようになっている。
【0025】
なお、クランクケース11及びトランスミッションケース17、更にはシリンダ12の一部は相互に一体的に結合し、全体としてエンジンユニット10のケーシングアセンブリを構成される。このケーシングアセンブリの適所にはエンジン始動用のスタータモータやクラッチ装置等をはじめとする複数の補機類19が搭載もしくは結合し、これらを含めたエンジンユニット10全体がマウント部20を介して車体フレームに搭載支持される。
【0026】
前述したように本実施形態においてエンジンユニット10には水冷式直列4気筒4サイクルガソリンエンジンが使用される。エンジン冷却系において詳細な図示は省略するが、シリンダ12を含むシリンダブロックの周囲には冷却水が循環するようにしたウォータジャケットが構成されると共に、該ウォータジャケットに送給される冷却水を冷却するラジエータを装備する。なお、ラジエータはエンジンユニット10の前部にて車体フレームの適所に支持される。
【0027】
また、エンジンユニット10の可動部に潤滑油を供給して、それらを潤滑するための潤滑系が構成される。この潤滑系には、なお同様に詳細な図示は省略するが、クランクシャフト16やシリンダヘッド13内に構成される動弁装置、そしてこれらを連結するカムチェーン、トランスミッション等々が含まれる。本実施形態において潤滑系に対して、後述するように通常のオイルポンプ(低圧用)を使用するが、この低圧用オイルポンプを含めて更に高圧用オイルポンプを有し、これらの油圧ポンプにより油圧系統が構成される。
【0028】
さて次に、本発明に係る油圧系統について説明する。先ず図4は、エンジンユニット10からオイルパン15を取り外した状態でのクランクケース11(クランクケースロア11B)の底面視もしくは下面視を示している。なお、オイルパン15には図2等に示されるようにオイルストレーナ21が配設されており、このオイルストレーナ21を介してオイルパン15内のオイルがオイルポンプへと吸い込まれる。また、クランクシャフト16の前側下方且つこれと平行に、オイルポンプのロータ軸となる回転軸22が設定される。回転軸22は図4のように左右方向に延設され、その右端部に取り付けたスプロケット23がクランクシャフト16の取り付けたスプロケット(図示せず)とチェーンを介して連結され、これによりクランクシャフト16により回転駆動される。
【0029】
この例では回転軸22の右側寄りに低圧用オイルポンプ24が配置され、またその左側寄りに高圧用オイルポンプ25が配置される。つまり単一の回転軸22により、低圧用オイルポンプ24のロータ軸と高圧用オイルポンプ25のロータ軸とが同軸且つ一体に構成される。低圧用オイルポンプ24はオイルストレーナ21を介して、オイルパン15内のオイルを吸い上げ、潤滑を要するエンジン内各部にオイルを圧送する。高圧用オイルポンプ25は後述するようにピストンジェットを形成すべく、低圧用オイルポンプ24よりも更に高い圧力のオイルを圧送する。
【0030】
オイルパン15内のオイルは吸込口26から吸い上げられ、矢印のように低圧用オイルポンプ24へ供給される。この例では吸込口26は回転軸22の後側に配置され、吐出口27は回転軸22の前側に配置され、つまり吸込口26及び吐出口27は回転軸22を挟んでその前後に配置される。吐出口27には低圧用リリーブバルブ28(圧力調整弁)が配設され、更にオイル通路29を通ってオイルクーラ32の配管接続口30へと接続される。一対の配管接続口30,31の間にはオイルクーラ32が接続され、オイルクーラ32で冷却されたオイルが配管接続口31へ還流される。配管接続口31はオイルフィルタ33に接続され、オイルフィルタ33は更にその下流側でオイル通路34を介してメインギャラリ35へと接続される。
【0031】
メインギャラリ35は図4に図示のように、クランクケース11(クランクケースロア11B)の左右方向に略その全幅に亘って延設される。また、メインギャラリ35は図5に図示されるように、クランクケースロア11Bの底部付近に配置される。メインギャラリ35からは、クランクシャフト16や動弁装置等を含む潤滑系へオイルを送給するために複数のオイル通路が分岐する。図5の例では、クランクシャフト16のジャーナル部へ潤滑オイルを供給するためのオイル通路36がメインギャラリ35から延出する。
【0032】
本発明では更に高圧用オイルポンプ25とメインギャラリ35の間はオイル通路37により接続される。オイル通路37は図5に示されるように一旦、メインギャラリ35よりも下方を通るように形成され、高圧用オイルポンプ25の吸込口38へと接続される。吸込口38から高圧用オイルポンプ25へ吸い込まれたオイルは加圧後、吐出口39から吐出される。この場合、図4に示されるように吸込口38は回転軸22の前側に配置され、吐出口39は回転軸22の後側に配置され、つまり吸込口38及び吐出口39は回転軸22を挟んでその前後に配置される。吐出口39には高圧用リリーブバルブ40(圧力調整弁)が配設される。
【0033】
図5のようにクランクケースロア11Bにおいて吐出口39から略上方へ向けてオイル通路41が形成され、またクランクケースアッパ11Aにおいてオイル通路42が形成される。これらのオイル通路41,42はクランクケースアッパ11A及びクランクケースロア11Bの合せ面にて相互に連通する。オイル通路42は、クランクケースアッパ11Aの前寄り上部付近に形成されたピストンジェット用のオイルデリバリ通路43に接続される。ここで、図5においてクランクケースアッパ11Aの上部にはシリンダ12が結合し、シリンダ12内でピストン44が矢印のように上下動するようになっている。
【0034】
ピストンジェット用のオイルデリバリ通路43(前側)は図6のように、クランクケース11(クランクケースアッパ11A)の左右方向に略その全幅に亘って延設される。オイルデリバリ通路43はクランクケースアッパ11Aの左外側に設けた連結パイプ45を介して、ピストンジェット用のオイルデリバリ通路46(後側)と接続される。これらのオイルデリバリ通路43,46は図6のように平面視で、左右方向のシリンダ12列の前後に相互の平行に配置される。
【0035】
更に図7に示されるようにそれぞれのオイルデリバリ通路43,46には、シリンダ12に収容される各ピストン44に対してそのピストンスカート側から点線矢印のようにピストンジェットを噴射するジェットノズル47が接続配置される。ジェットノズル47はクランクケースアッパ11Aの上部付近にて、各ピストン44の下死点近傍で前後一対が対向配置される。
【0036】
本発明によるエンジンのオイルポンプ配置構造は上記のように構成されており、次にその主要な作用効果等について説明する。
本発明のエンジンユニット10の特に油圧系統において、エンジン始動により回転するクランクシャフト16によって回転軸22が回転駆動され、低圧用オイルポンプ24の作動によりオイルパン15内のオイルが吸込口26から吸い上げられる。低圧用オイルポンプ24の吐出口27から吐出されたオイルは、オイルクーラ32、更にはオイルフィルタ33を経由してメインギャラリ35へ送給される。オイルはその後メインギャラリ35からクランクシャフト16や動弁装置等を含む潤滑系へ送給される。
【0037】
本発明ではオイルは更にメインギャラリ35から高圧用オイルポンプ25へ送給され、高圧用オイルポンプ25からオイル通路41,42を通ってオイルデリバリ通路43,46へ送給される。オイルデリバリ通路43,46に沿って配設されたジェットノズル47から各ピストン44に対してピストンジェットが噴射され、このピストンジェットによりピストン44を冷却する。
【0038】
本発明によれば上述のように潤滑系及びピストン冷却系を含む油圧系統において、エンジン内各部にオイルを圧送する低圧用オイルポンプ24と、更に高い圧力のオイルを圧送する高圧用オイルポンプ25とを備える。この場合、高圧用オイルポンプ25の吸込口38は、低圧用オイルポンプ24により加圧された側のオイル通路の下流側に接続される。
【0039】
これにより高圧用オイルポンプ25の吸込側には常に低圧用オイルポンプ24による圧力が加えられているため、高圧用オイルポンプ25がすべき仕事量は小さくなる。一方、低圧用オイルポンプ24の仕事量は高圧用オイルポンプ25側で低減された分だけ増加することになるが、高圧用オイルポンプ25側では圧力脈動が小さくなることからキャビテーションが抑制されてポンプ効率が改善されるため、エンジン全体としてのメカロスは低減する。また、このことは、オイル圧力の脈動による騒音低減に対しても有効である。
【0040】
また、高圧用オイルポンプ25の吸込口38は、オイルフィルタ33の下流側に接続される。
このようにオイルフィルタ33で濾過された後のオイル経路、即ちメインギャラリ35に高圧用オイルポンプ25を接続することで、低圧用オイルポンプ24及び高圧用オイルポンプ25の2つのオイルポンプを持ちながら、単一のオイルフィルタ33で足りる。
【0041】
また、図4の下面視等から明らかなように左右方向で低圧用オイルポンプ24と高圧用オイルポンプ25との間に、吸込口26や吐出口27を含むオイル吸入通路及びオイル吐出通路が配置される。
例えば極低温時(−20℃以下)でエンジン始動する場合、粘度の大きなオイルを吸い込むためには少しでも吸込みの経路が短い方が有利である。また、オイルストレーナ21は加速又は旋回時の偏りを考慮してオイルパン15の中央に置くことが望ましく、オイル吸込み経路も内側からオイルポンプに向かうのが好ましい。オイルポンプに対して吐出通路を吸入通路と逆側に配置すると部品が集約されないので、部品レイアウト上の面から吐出通路も吸入通路と同じように低圧用オイルポンプ24及び高圧用オイルポンプ25両オイルポンプの間に配置する構成になっている。
【0042】
また、高圧用オイルポンプ25と低圧用オイルポンプ24は、それらのポンプロータ側面視でそれぞれの吸込口38及び吐出口39と吸込口26及び吐出口27とが互いに逆側に配置される。
これにより高い油圧が必要な部品、本実施形態では特にピストンジェット用のジェットノズル47等の取付け箇所に適した吸込口38や吐出口39のレイアウトが可能になる。
【0043】
また、高圧用オイルポンプ25の吐出口39は図4及び図5等に示されるように、エンジンの前部側にて吸込口38よりもエンジン内側に配置される。
これにより吐出口39からエンジン内部のピストンジェット用油圧経路までオイル通路41,42を略上方に接続できるため、オイル通路41,42を最短にすることができ、通路抵抗を小さくすることができる。また、エンジン外部に吐出口39が配置されないので外部配管を不要とし、構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、高圧用オイルポンプ25のロータ軸と低圧用オイルポンプ24のロータ軸とが、同軸の回転軸22として構成される。
これにより高圧用オイルポンプ25と低圧用オイルポンプ24のそれぞれポンプロータを同軸に回転させることができるため、効率良くこれらのオイルポンプ24,25の回転駆動することができる。また、同軸であることから、構成の簡素化や配設スペースの省スペース化等を図ることができる。
【0045】
また、高圧用オイルポンプ25の吸込口38は、メインギャラリ35に接続される。
これによりメインギャラリ35からの高油圧系統をピストン44の冷却やターボ潤滑などに利用することができる。
【0046】
また、高圧用オイルポンプ25の下流には、ピストン44冷却用のオイル通路41,42が接続される。
ピストン冷却用のピストンジェットからオイルを噴出させて、ピストン44の裏側を冷却する必要があるため、他の箇所よりも高い油圧が必要とされる。そこで必要な箇所のみ高圧の油圧系統を設けることで、エンジン全体のメカロスの増加を最低限に抑えることができる。
【0047】
ここで更に、本発明の特徴的な構成及び技術的効果を説明すると、先ずピストンジェット等、高い油圧を必要とする箇所のみにオイルを圧送するための高圧用オイルポンプ25を、通常のオイルポンプ(低圧用)とは別に有し、高圧用オイルポンプ25の吸込口38をメインギャラリ35に接続する。
これは、上述のように高圧用オイルポンプ25側では圧力脈動が小さくなることからキャビテーションが抑制されてポンプ効率が改善されるため、エンジン全体としてのメカロスは低減する。
【0048】
また、別途高圧の油圧系統を必要とする部品にのみ設けることで、メインの油圧系統の油圧を下げることができ、メカロス低減や主要のオイルポンプ(本発明では低圧用オイルポンプ24)のキャビテーション発生を抑制することができる。また、メインの油圧で低減されたメカロス分でピストンジェット等の油圧を更に高圧にすることができる。
更に、ピストンジェットはエンジンの高出力化に有効なアイテムで、高圧化がされることでオイルの噴出速度が上がり、高回転域でもピストン裏を冷却することができる。また、同じオイル流量でも狙った箇所を効率良く冷却することができる。
【0049】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において、高圧用オイルポンプ25をピストンジェットに対して用いる例を説明したが、ピストンジェット以外にも適用可能である。例えば、特に四輪車エンジンの場合においてターボチャージャーや、VVT(可変バルブタイミング機構)のオイルコントロールバルブ作動油圧等に対しても有効に適用可能である。
また、本発明の効果として、オイルの圧力脈動を抑制することでオイルポンプ自体の騒音も改善される等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0050】
10 エンジンユニット、11 クランクケース11、12 シリンダ、13 シリンダヘッド、14 シリンダヘッドカバー、15 オイルパン、16 クランクシャフト、17 トランスミッションケース、18 ドライブスプロケット、19 補機類、20 マウント部、21 オイルストレーナ、22 回転軸、23 スプロケット、24 低圧用オイルポンプ、25 高圧用オイルポンプ、26 吸込口、27 吐出口、28 低圧用リリーブバルブ、29 オイル通路、30,31 配管接続口、32 オイルクーラ、33 オイルフィルタ、35 メインギャラリ、38 吸込口、39 吐出口、40 高圧用リリーブバルブ、43,46 オイルデリバリ通路、44 ピストン、45 連結パイプ、47 ジェットノズル、100 自動二輪車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパン内のオイルを吸い上げ、エンジン内各部に圧送する低圧用オイルポンプと、この低圧用オイルポンプよりも高圧のオイルを圧送する高圧用オイルポンプとを備えたエンジンにおいて、
前記高圧用オイルポンプの吸込口は、前記低圧用オイルポンプの下流側に接続されたことを特徴とするエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項2】
前記高圧用オイルポンプの吸込口は、オイルフィルタの下流に接続されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項3】
下面視で前記高圧用オイルポンプと前記低圧用オイルポンプとの間に、オイル吸入通路及びオイル吐出通路が配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項4】
前記高圧用オイルポンプと前記低圧用オイルポンプはオイルポンプロータ側面視で、それぞれの吸込口と吐出口とが互いに逆側に配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項5】
前記高圧用オイルポンプの吐出口は、前記エンジンの前側に配置したことを特徴とする請求項4に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項6】
前記高圧用オイルポンプのロータ軸と前記低圧用オイルポンプ用のロータ軸とを同軸としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項7】
前記高圧用オイルポンプの吸込口は、メインギャラリに接続されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。
【請求項8】
前記高圧用オイルポンプの下流には、ピストン冷却用オイル通路が接続されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンジンのオイルポンプ配置構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−117423(P2012−117423A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266822(P2010−266822)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】