説明

エンジンの制御装置

【課題】減速時の目標吸入空気量を吸気バルブのバルブタイミングで補正するエンジンにおいて、バルブタイミングの相違による減速性の不具合やサージングを抑制することを課題とする。
【解決手段】エンジン1の制御装置100は、吸気バルブ12の動作を可変とする可変動弁機構41、42と、エンジン筒内への吸入空気量を調節するスロットルバルブ14と、エンジン1の冷却水温を測定する水温センサ26と、スロットルバルブ14の開度を制御する信号を送るECU27と、を備え、ECU27は、エンジン1の減速時に水温センサ26により測定される温度が0℃より低いと判断する場合に、バルブ開閉タイミングの実測値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出して制御し、測定される温度が0℃以上であると判断する場合に、バルブ開閉タイミングの目標値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に、減速時の吸入空気量の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの減速時の吸入空気量は、エンジンの回転数とエンジンの冷却水温度に基づき補正されている。一方、エンジンの吸気バルブ、排気バルブといったバルブの動作を運転状態に応じて可変制御するバルブ作用角可変制御装置が提案されている(特許文献1)。このような吸気バルブ、排気バルブの動作を可変制御する装置を備えたエンジンでは、減速時の目標吸入空気量を吸気バルブのバルブタイミングの実測値(実VVT値)で補正するのが望ましい。
【0003】
【特許文献1】特開2007−162664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減速時の目標吸入空気量をVVT値で補正する場合、エンジンの負荷が小さい領域では、VVT値により筒内の残留ガス量が変化し、エンジン内における失火の生じる範囲が変わる。このような失火は、VVT値が大きいほど、生じ易くなるため、VVT値が大きい場合に吸入空気量を増加させて失火を回避する。
【0005】
このように、VVT値に応じて吸入空気量を変化させて、減速時の失火を回避することができるが、暖機完了後の定常走行時では、VVT値の変位量が大きく、定常走行から減速する際のVVT戻し量が大きくなる。この結果、定常走行時から減速する場合における減速開始前のVVT値によって、減速時のVVT戻し特性が異なり、減速時の吸入空気量を実VVT値で補正すると、減速前のVVT値によって減速性が異なるという不具合が生じる。
【0006】
また、油圧式の可変バルブ制御装置の場合、暖機後のVVT応答性が速い反面、ハンチングが生じ易い。制御バルブ開閉タイミングにハンチングが生じ、実VVT値で補正すると、減速時の吸入空気量が変動し、サージングが生じる問題がある。
【0007】
そこで、減速時の目標吸入空気量を吸気バルブのバルブタイミングで補正するエンジンにおいて、バルブタイミングの相違による減速性の不具合やサージングを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決する本発明のエンジンの制御装置は、少なくとも吸気バルブの動作を可変とする可変動弁機構と、エンジン筒内への吸入空気量を調節する吸入空気調整弁と、エンジンの冷却水温を測定する温度測定手段と、前記吸入空気調整弁の開度を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、エンジンの減速時に前記温度測定手段により測定される温度がT℃より低いと判断する場合に、前記可変動弁機構により制御されるバルブ開閉タイミングの実測値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、エンジンの減速時に前記温度測定手段により測定される温度がT℃以上であると判断する場合に、前記可変動弁機構により制御されるバルブ開閉タイミングの目標値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、制御することを特徴とする。
【0009】
このような構成とすることにより、減速時の失火を回避するとともに、減速性の不具合やサージングを抑制する。油圧式の可変動弁機構では、暖機によりオイル粘性が低下するため、暖機後の応答性が速くなる。これにより、目標に対して追従性がよいので、実VVT値による減速Ga補正をしなくても目標VVTに素早く収束するので問題ない。これにより実VVT値差による減速性差、減速時のハンチングのおそれを回避できる。一方、油圧式の可変動弁機構の冷間時動作はオイル粘性の高粘度により応答性が遅い。したがって、低温域の減速時は実VVT値で減速Gaを補正して、失火を回避することができる。また、低温域では、VVT応答性が遅いのでハンチングの可能性も低い。
【0010】
このようなエンジンの制御装置において、前記制御手段は、エンジンの減速時にエンジン冷却水温が高温であると判断する場合、前記可変動弁機構により制御されるバルブ開閉タイミングの実測値と目標値との差が閾値以上であると判断するとき、実測値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、制御する構成とすることができる。
【0011】
このような構成とすることにより、可変動弁機構の応答性が大幅に低下した際、減速時に生じる失火を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるエンジンの制御装置はエンジン冷却水温が低い場合、減速時の目標吸入空気量をバルブタイミングの実測値に基づき補正し、エンジン冷却水温が高い場合、減速時の目標吸入空気量をバルブタイミングの目標マップ値に基づいて補正することにより、減速性を改善するとともにサージングを回避する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例のエンジン1の制御装置100の概略構成を示した説明図である。エンジン1は、筒内噴射式のガソリンエンジンである。エンジン1は、シリンダ2、ウォータジャケット3の形成されたシリンダブロック4、シリンダ2内を往復運動するピストン5、コネクティングロッド6を介してピストン5に連結されたクランクシャフト7を備えている。
【0015】
さらに、エンジン1には、吸気ポート8、排気ポート9の形成されたシリンダヘッド10が備えられている。そして、シリンダ2、ピストン5、シリンダヘッド10とにより燃焼室11が形成されている。また、エンジン1には、燃焼室11内へ燃料を噴射する燃料噴射弁18と、燃料点火用の点火プラグ19とが備えられている。
【0016】
吸気ポート8と燃焼室11との接続部分に吸気バルブ12が配置されており、吸気バルブ12の開閉状態にあわせ、空気が燃焼室11内へ取り込まれる。また、吸気ポート8には、スロットルバルブ14の設置された吸気通路15が接続されている。スロットルバルブ14は吸気通路15に回動可能に設けられており、電動モータ等からなるアクチュエータ16に駆動連結されている。アクチュエータ16は、運転者によるアクセルペダルの踏込み操作等に応じて作動し、スロットルバルブ14を回動させる。吸気通路15を流れる空気の量(吸入空気量)は、スロットルバルブ14の回動角度(スロットル開度)に応じて変化する。
【0017】
排気ポート9と燃焼室11との接続部分に排気バルブ13が配置されており、排気バルブ13の開閉状態にあわせ、排気ガスが燃焼室11から排出される。排気ポート9には、排気浄化用の触媒装置等の設置された排気管17が接続されている。
【0018】
次に、吸気バルブ12を動作する構成について説明する。吸気バルブ12は、バルブスプリングによって、吸気ポート8と燃焼室11との連通を遮断する方向、すなわち、閉弁方向へ付勢されている。また、吸気バルブ12の上側、すなわち、燃焼室11と反対の側に、吸気カム21を有する吸気カムシャフト20が設けられている。吸気カムシャフト20は、クランクシャフト7の回転が伝達されて回転する。この回転に伴い吸気カムシャフト20は、吸気バルブ12を押し下げて開弁させる。
【0019】
エンジン1には、吸気バルブ12のバルブ特性を可変とする可変動弁機構として、バルブタイミング可変機構41及び作用角可変機構42が設けられている。バルブタイミング可変機構41は、クランクシャフト7に対する吸気カムシャフト20の相対回転位相を変更することにより、吸気バルブ12の開弁期間を一定に保持した状態で、吸気バルブ12の開弁時期及び閉弁時期をともに進角又は遅角させる機構である。作用角可変機構42は、吸気バルブ12の作用角を連続的に可変とする機構である(特開2007−162664号公報参照)。なお、排気バルブ13側にも、吸気バルブ12と同様の駆動機構が備えられており、排気バルブ13の開弁期間、作用角を可変とする。
【0020】
さらに、エンジン1は、クランク角センサ22、回転角センサ23、エアフロメータ24、スロットルセンサ25、水温センサ26を備えている。ここで、回転角センサ23は、吸気バルブ12のバルブ特性(作用角及び最大リフト量)を検出するべく、作用角可変機構42における電動モータの回転角度を検出するセンサである。水温センサ26は、ウォータジャケット3内のエンジン冷却水の温度を検出するセンサである。また、エンジン1は、ECU(Electronic Control Unit)27を備えている。ECU27は、クランク角センサ22、回転角センサ23、エアフロメータ24、スロットルセンサ25、水温センサ26のそれぞれと電気的に接続されており、各センサ類が検出する各情報を取得する。
【0021】
また、ECU27は、アクチュエータ16、燃料噴射弁18、点火プラグ19の各機器と電気的に接続されており、各機器は、ECU27による電気信号に基づいて、動作を行う。
【0022】
次に、エンジン1の制御装置100における制御について説明する。可変制御機構による吸気バルブ12の動作制御は、目標VVT値に基づいて行われる。ここで、VVT値とは、可変バルブタイミング(Variable Valbe Timing)の略であり、可変動弁機構により変化させられる吸気バルブ12の開弁期間の進角度を示した値である。目標VVT値の算出は、ECU27により行われる。
【0023】
図2は、目標VVT値を算出するためのマップを示した説明図であって、図2(a)は、エンジン冷却水温T1〜T2時に用いるマップを示し、図2(b)は、エンジン冷却水温T2〜T3時に用いるマップを示した説明図である。このように、ECU27は、エンジンの冷却水温度の範囲に応じて異なるマップを複数記憶しており、図2に示したのはその一部である。
【0024】
ECU27は、水温thwを水温センサ26から取得し、取得した水温thwに基づき、使用するマップを選択する。ECU27は、エアフロメータ24、スロットルセンサ25とから取得される情報からエンジン負荷を算出し、クランク角センサ22からエンジン回転数を取得する。そして、ECU27は、算出したエンジン1の負荷とエンジン回転数とを図2のマップに適用して、目標VVT値を算出する。
【0025】
ECU27は、算出した目標VVT値に基づいて、可変動弁機構を駆動し、吸気バルブ12の動作を制御する。
【0026】
次に、エンジン1の減速時における目標吸入空気量の制御について説明する。本発明の制御装置100は、吸気バルブ12の動作を制御することにより、エンジン1の減速時における目標吸入空気量を制御する。この制御は、ECU27により行われる。
【0027】
図3は、本実施例においてECUが処理する制御のフローである。図4は、図3のフローにおいてアイドルGaを算出するためのマップを示した説明図である。図5は、図3のフローにおいて回転補正Gaを算出するためのマップを示した説明図である。
【0028】
以下、図3のフローを参照してECU27による制御を説明する。ECU27はステップS11で、エンジン1が減速されているか否かを判断する。ECU27は、エンジン1が減速されていると判断すると、ステップS12へ進む。ECU27はステップS12で、水温thw、エンジン回転数NEを取得するとともに、目標VVT値、実VVT値を算出する。具体的には、ECU27は、水温thwを水温センサ26から取得し、エンジン回転数NEをクランク角センサ22から取得する。ECU27は、上記の説明のように、図2のマップに基づいて目標VVT値を算出する。また、ECU27は、回転角センサ23から取得される情報から算出したカム角と、クランク角センサ22から取得されたクランク角とから実VVT値を算出する。ECU27は、ステップS12の処理を終えるとステップS13へ進む。
【0029】
ECU27はステップS13で、図4のマップを用いて、アイドルGa(Gai)を算出する。ここで、アイドルGaとは、アイドル運転中に筒内へ供給する目標吸入空気量を示している。具体的に、ECU27は、水温センサ26で取得したエンジン冷却水温を、図4のマップに適用し、アイドルGaを算出する。ECU27は、ステップS13の処理を終えると、ステップS14へ進む。
【0030】
ECU27はステップS14で、エンジン冷却水の温度がT℃(本実施例では0℃)を下回るか否かを判断する。ECU27は、エンジン冷却水の温度がT℃(本実施例では0℃)を下回ると判断した場合、ステップS15へ進む。
【0031】
ECU27はステップS15で、実VVT値に基づき、回転補正Ga(Gane)を算出する。ここで、回転補正Gaとは、エンジン冷却水温度、エンジン回転数、VVT値の各情報に基づく吸入空気の補正量を示している。具体的に、ECU27は、その時点におけるVVT変位量、すなわち、実VVT値と、エンジン回転数NEに基づいて、回転補正Ga(Gane)を算出する。
【0032】
一方、ECU27は、エンジン冷却水の温度がT℃(本実施例では0℃)以上であると判断した場合、ステップS16へ進む。ECU27はステップS16で、目標VVT値に基づき、図5のマップを用いて、回転補正Ga(Gane)を算出する。具体的に、ECU27は、その時点におけるVVT変位量、ここでは、目標VVT値と、エンジン回転数NEを図5のマップに適用し、回転補正Ga(Gane)を算出する。
【0033】
ECU27は、ステップS15の処理を終えると、ステップS17へ進む。また、ECU27は、ステップS16の処理を終えると、ステップS17へ進む。ECU27はステップS17で、減速Gaを算出し、算出した減速Gaとなるようにスロットルバルブ14、吸気バルブ12の動作を制御する。ここで、減速Gaとは、減速時に筒内へ供給すべき目標吸入空気量を示している。減速Gaは以下の算出式で求められる。
減速Ga = Gai + Gane (1)
ECU27はステップS17の処理を終えるとリターンする。
【0034】
ところで、ECU27はステップS11で、エンジン1が減速されていないと判断すると、処理を終えてリターンする。
【0035】
以上より、制御装置100は、減速時の目標吸入空気量を、エンジン冷却水温が低い場合、実VVT値に基づき補正し、エンジン冷却水温が高い場合、目標VVTのマップ値に基づいて補正する。これにより、制御装置100はエンジン1の減速性を改善するとともに失火を回避する。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例は、実施例1の制御処理に加えて、減速時の点火時期を補正する制御を行う点で実施例1と相違する。なお、本実施例の冷却装置の構成は実施例1と同一である。
【0037】
図6は、本実施例においてECU27が処理する制御のフローである。図7は、図6のフローにおいてアイドル時の点火時期を算出するためのマップを示した説明図である。図8は、図6のフローにおいて点火時期の回転補正値を算出するためのマップを示した説明図である。
【0038】
以下、図6のフローを参照してECU27による制御を説明する。なお、図6のフロー中、図3のフローにおける処理と同一の処理については、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0039】
ECU27はステップS11からステップS13の処理を行う。ECU27はステップS13の処理を終えると、ステップS21へ進む。
【0040】
ECU27はステップS21で、図7のマップを用いて、アイドルSA(SAi)を算出する。ここで、アイドルSAとは、アイドル運転中の点火時期を示している。具体的に、ECU27は、水温センサ26で取得したエンジン冷却水温を、図7のマップに適用し、アイドルSA(SAi)を算出する。ECU27は、ステップS21の処理を終えると、ステップS14へ進む。
【0041】
ECU27は、ステップS14の判断に基づき、ステップS15、または、ステップS16へ進む。ECU27がステップS15へ進んだ場合、ECU27はステップS15の処理を終えると、ステップS22へ進む。
【0042】
ECU27はステップS22で、実VVT値に基づき、回転補正SA(SAne)を算出する。ここで、回転補正SAとは、エンジン冷却水温度、エンジン回転数、VVT値の各情報に基づく点火時期の補正値を示している。具体的に、ECU27は、その時点におけるVVT変位量、すなわち、実VVT値と、エンジン回転数NEに基づいて、回転補正SA(SAne)を算出する。
【0043】
一方、ECU27は、ECU27がステップS16へ進んだ場合、ECU27はステップS16の処理を終えると、ステップS23へ進む。ECU27はステップS23で、目標VVT値に基づき、図8のマップを用いて、回転補正SA(SAne)を算出する。具体的に、ECU27は、その時点におけるVVT変位量、ここでは、目標VVT値と、エンジン回転数NEを図8のマップに適用し、回転補正SA(SAne)を算出する。
【0044】
ECU27は、ステップS22の処理を終えると、ステップS17へ進む。また、ECU27は、ステップS23の処理を終えると、ステップS17へ進む。ECU27はステップS17の処理を終えると、ステップS24へ進む。ECU27は、ステップS24で、減速SAを算出し、算出した減速SAとなるように点火時期を制御する。ここで、減速SAとは、減速時の点火時期を示している。減速SAは以下の算出式で求められる。
減速SA = SAi + SAne (2)
ECU27はステップS24の処理を終えるとリターンする。
【0045】
以上より、制御装置100は、減速時の点火時期を、エンジン冷却水温が低い場合、実VVT値に基づき補正し、エンジン冷却水温が高い場合、目標VVTのマップ値に基づいて補正する。これにより、制御装置100はエンジン1の減速性を改善するとともに失火を回避する。
【実施例3】
【0046】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例は、実施例1の制御処理に加えて、減速時の空燃比を補正する制御を行う点で実施例1と相違する。なお、本実施例の冷却装置の構成は実施例1と同一である。
【0047】
図9は、本実施例においてECU27が処理する制御のフローである。図10は、図9のフローにおいて減速目標A/Fを算出するためのマップを示した説明図である。図11は、図9のフローにおいて減速目標A/Fの補正係数を算出するためのマップを示した説明図である。
【0048】
以下、図9のフローを参照してECU27による制御を説明する。なお、図9のフロー中、図3のフローにおける処理と同一の処理については、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0049】
ECU27はステップS11からステップS13の処理を行う。ECU27はステップS13の処理を終えると、ステップS31へ進む。
【0050】
ECU27はステップS31で、図10のマップを用いて、減速目標A/F(AFi)を算出する。ここで、減速目標A/Fとは、バルブタイミングを進角しない場合の減速時の目標空燃比を示している。具体的に、ECU27は、水温センサ26で取得したエンジン冷却水温を、図10のマップに適用し、減速目標A/F(AFi)を算出する。ECU27は、ステップS31の処理を終えると、ステップS14へ進む。
【0051】
ECU27は、ステップS14の判断に基づき、ステップS15、または、ステップS16へ進む。ECU27がステップS15へ進んだ場合、ECU27はステップS15の処理を終えると、ステップS32へ進む。
【0052】
ECU27はステップS32で、実VVT値に基づき、目標A/F補正係数(AFne)を算出する。ここで、目標A/F補正係数とは、エンジン回転数、VVT値の各情報に基づく目標空燃比の補正係数を示している。具体的に、ECU27は、その時点におけるVVT変位量、すなわち、実VVT値と、エンジン回転数NEに基づいて、目標A/F補正係数(AFne)を算出する。
【0053】
一方、ECU27は、ECU27がステップS16へ進んだ場合、ECU27はステップS16の処理を終えると、ステップS33へ進む。ECU27はステップS33で、目標VVT値に基づき、図11のマップを用いて、目標A/F補正係数(AFne)を算出する。具体的に、ECU27は、その時点におけるVVT変位量、ここでは、目標VVT値と、エンジン回転数NEを図11のマップに適用し、目標A/F補正係数(AFne)を算出する。
【0054】
ECU27は、ステップS32の処理を終えると、ステップS17へ進む。また、ECU27は、ステップS33の処理を終えると、ステップS17へ進む。ECU27はステップS17の処理を終えると、ステップS34へ進む。ECU27は、ステップS34で、減速A/Fを算出し、算出した減速A/Fとなるように空燃比を制御する。減速A/Fは以下の算出式で求められる。
減速A/F = AFi × AFne (3)
ECU27はステップS34の処理を終えるとリターンする。
【0055】
以上より、制御装置100は、減速時の空燃比を、エンジン冷却水温が低い場合、実VVT値に基づき補正し、エンジン冷却水温が高い場合、目標VVTのマップ値に基づいて補正する。これにより、制御装置100はエンジン1の減速性を改善するとともに失火を回避する。
【実施例4】
【0056】
次に、本発明の実施例4について説明する。本実施例は、実施例1の制御処理実行時に、可変動弁機構の応答性が大幅に低下した場合の対処を行う点で実施例1と相違する。なお、本実施例の冷却装置の構成は実施例1と同一である。
【0057】
図12は、本実施例においてECUが処理する制御のフローである。本実施例の制御では、実VVT値と目標VVT値との差が大きい場合、可変動弁機構の応答性が悪化しているとして、実VVT値に基づいて目標吸入空気量の補正を行う。
【0058】
以下、図12のフローを参照してECU27による制御を説明する。なお、図12のフロー中、図3の実施例1のフローにおける処理と同一の処理については、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0059】
ECU27はステップS11からステップS14の処理を行う。ECU27はステップS14で、エンジン冷却水の温度が0℃以上であると判断した場合、ステップS41へ進む。
【0060】
ECU27はステップS41で、VVT変位差(ΔVT)を算出する。ここで、VVT変位差とは、実VVT値と目標VVT値との差分であり、次式で示される。
ΔVT = 実VVT値 − 目標VVT値 (4)
ECU27はステップS41の処理を終えると、ステップS42へ進む。
【0061】
ECU27はステップS42で、ΔVTが閾値未満である否かを判断する。ここで、閾値は10°CAとしているが、他の数値を採用することもできる。
【0062】
ECU27はステップS42でΔVTが10°CA未満であると判断する場合は、ステップS16へ進む。すなわち、ECU27は、目標VVT値に基づき、図5のマップを用いて、回転補正Ga(Gane)を算出する処理へ進む。一方、ECU27はステップS42でΔVTが10°CA以上であると判断する場合は、ステップS15へ進む。すなわち、ECU27は、実VVT値に基づき、回転補正Ga(Gane)を算出する処理へ進む。
【0063】
以上の制御処理を行うことにより、制御装置100は、故障などの理由により、可変動弁機構の応答性が大幅に低下した場合の減速時に生じる失火を回避する。
【0064】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例のエンジンの制御装置の概略構成を示した説明図である。
【図2】目標VVT値を算出するためのマップを示した説明図であって、(a)は、エンジン冷却水温T1時に用いるマップを示し、(b)は、エンジン冷却水T2時に用いるマップを示した説明図である。
【図3】実施例1においてECUが処理する制御のフローである。
【図4】図3のフローにおいてアイドルGaを算出するためのマップを示した説明図である。
【図5】図3のフローにおいて回転補正Gaを算出するためのマップを示した説明図である。
【図6】実施例2においてECUが処理する制御のフローである。
【図7】図6のフローにおいてアイドル時の点火時期を算出するためのマップを示した説明図である。
【図8】図6のフローにおいて点火時期の回転補正値を算出するためのマップを示した説明図である。
【図9】実施例3においてECUが処理する制御のフローである。
【図10】図9のフローにおいて減速目標A/Fを算出するためのマップを示した説明図である。
【図11】図9のフローにおいて減速目標A/Fの補正係数を算出するためのマップを示した説明図である。
【図12】実施例4においてECUが処理する制御のフローである。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
12 吸気バルブ
13 排気バルブ
14 スロットルバルブ
18 燃料噴射弁
19 点火プラグ
22 クランク角センサ
23 回転角センサ
24 エアフロメータ
25 スロットルセンサ
26 水温センサ
27 ECU
41 バルブタイミング可変機構
42 及び作用角可変機構
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも吸気バルブの動作を可変とする可変動弁機構と、
エンジン筒内への吸入空気量を調節する吸入空気調整弁と、
エンジンの冷却水温を測定する温度測定手段と、
前記吸入空気調整弁の開度を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、エンジンの減速時に前記温度測定手段により測定される温度がT℃より低いと判断する場合に、前記可変動弁機構により制御されるバルブ開閉タイミングの実測値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、
エンジンの減速時に前記温度測定手段により測定される温度がT℃以上であると判断する場合に、前記可変動弁機構により制御されるバルブ開閉タイミングの目標値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、制御することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの制御装置において、
前記制御手段は、エンジンの減速時にエンジン冷却水温が高温であると判断する場合、前記可変動弁機構により制御されるバルブ開閉タイミングの実測値と目標値との差が閾値以上であると判断するとき、実測値に基づいて減速時の目標吸入空気量を算出し、制御することを特徴とするエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−150932(P2010−150932A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326920(P2008−326920)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】