説明

エーテル化硬化剤を含有するフェノール樹脂組成物

本発明は、得られる複合体中の空洞を無くすか、又は最小限にしながら熱硬化することができる樹脂組成物で、低い温度での長いポット寿命及び高い温度での速い硬化速度の両方を有し、(a)フェノール−ホルムアルデヒドレゾール樹脂、及び(b)エーテル化硬化剤で、アルコキシル化ポリオール又はモノエポキシ官能性希釈剤から調製されたエーテル化硬化剤、の混合物を含む樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化複合体中の空洞を最小にしながら、長いポット寿命及び硬化条件下での充分な硬化速度を有するフェノール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールレゾール樹脂(phenolic resole resin)は、硫酸及び有機スルホン酸のような強酸を用いて以前から硬化されてきた。これらの酸は、単独で用いると、周囲温度でさえも殆どのレゾール樹脂の硬化を急速に起こし、多くの用途、特に繊維補強プラスチック(FRP)及び他の樹脂複合体及び成形樹脂物品を製造するのに、そのような樹脂の使用を面倒にしている。従って、従来法は、そのような樹脂系のポット寿命を長くする方法として、希望の硬化条件よりも低い温度で樹脂硬化速度を遅延させる方法が以前から求められてきた。しかし、有用であるためには、そのような硬化速度遅延を、上昇させた硬化温度での樹脂の最終的硬化速度を許容できない程度まで悪化することなく、達成されなければならない。
【0003】
米国特許第5,243,015号明細書では、第一級又は第二級アミンの塩及び強酸を含む潜在触媒を用いている。この潜在触媒は、レゾール樹脂組成物の貯蔵安定性(ポット寿命)を、慣用的強酸触媒を用いて得られる速度に匹敵する上昇させた温度での硬化速度を与えながら、改良する。強酸は、潜在触媒と相乗的に作用して反応速度を加速する程度までは組成物に添加してもよいが、それ自身で商業的に有用な速度で樹脂を硬化するような量にはなっていないのが好ましい。
【0004】
米国特許第5,378,793号(欧州特許出願No.539,098)明細書は、別の方法を提示している。この特許は、フェノールレゾール樹脂のための硬化剤として部分的燐酸エステルを用いることを開示している。部分的燐酸エステルは、オルト燐酸、ピロ燐酸、テトラ燐酸、又は五酸化燐のような縮合燐酸を温度及び真空の厳密な条件下で、グリセロール、ペンタエリトリトール、スクロース、等のようなポリオールと一定の遊離酸性度値まで反応(部分的エステル化)することにより製造される。
【0005】
部分的燐酸エステル硬化剤は、遅延された作用を示し、即ち、その硬化剤は低い温度で比較的ゆっくりレゾールを硬化するが、温度を上昇させると速い硬化を起こすことが報告されている。この特許は、この結果を、硬化剤として働き、硬化反応を促進する遊離酸を放出する上昇させた温度でのエステルの解離に起因するものとしている。しかし、低い温度では、部分的エステルは安定であり(即ち、比較的低い酸値を有し)、レゾールの速過ぎる硬化に寄与することはない。
【0006】
全体的にここに組込む米国特許第5,864,003号明細書は、別の方法を提示している。この特許は、燐酸又は亜燐酸から形成された窒素含有酸性燐化合物の特定の種類のものから選択された潜在硬化剤を用いることを開示している。燐酸源としてピロ燐酸、テトラ燐酸、又は五酸化燐のような燐酸同等物を用いてもよい。
【0007】
繊維補強プラスチック(FRP)及び他の樹脂複合体及び成形樹脂物品を製造する場合のような用途ではフェノールレゾール樹脂を硬化する。繊維補強プラスチック(FRP)及び他の樹脂複合体及び成形樹脂物品を使用することは、比較的大きな強度及び耐久性を有する製品のための複合体の新規な用途が考えられるに従って実質的な発展を経験してきている。建築材料、装置、ボート、又はスポーツ用品のようなFRP及び他の樹脂複合体を用いて多くの製品が製造されている。例えば、フェノール樹脂に基づく複合体は、構造材料から大量輸送列車に亙る種々の製品で適用されており、金属と競合し、屡々選択材料として金属に置き換えられている。
【0008】
フェノール樹脂複合体のようなFRP強化材料は難燃性を有し、FRPで強化された材料は、崩壊が起きるまで火災状態で長時間耐えることができことが研究で示されている。難燃性の外に、火災状態中のフェノール樹脂が発生する煙り又は毒性の煙霧は少なく、延焼しにくい。それら複合体のそのような難燃性の品質は、フェノール樹脂組成物の重要性及び適用性を増大してきている。従って、フェノール樹脂組成物は、複合体物品を製造する場合、特に公共の安全性が必須である場合には選択材料となりつつある。
【0009】
製造業者は、それら複合体を用いた製品を製造するために、多くの製造方法を利用することができる。例えば、圧縮成形では、製造業者はそれら化合物を加熱整合鋳型表面の間で圧縮し、化合物を形成することができる。また、触媒を入れた樹脂を整合鋳型中へ注入し、特定の温度で硬化する樹脂トランスファー成形(RTM)を用いてもよい。
【0010】
しかし、硬化フェノール樹脂組成物を与える複合体製造方法は、得られる複合体に望ましくない空洞を発生することがある。米国特許第5,864,003号明細書の潜在硬化剤を用いると、空洞の発生に遭遇する。フェノール樹脂の多くの用途では、空洞は最小限にしなければならない。従って、硬化条件よりも低い温度で長いポット寿命を与えるが、上昇させた硬化温度で迅速な硬化を示し、空洞を最小限にした複合体を与える結果になる硬化挙動を示すフェノール樹脂組成物を開発することは依然として重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、得られる複合体中の空洞又はピンホールを無くすか、最小限にしながら、硬化条件より低い温度での長いポット寿命、及び高い硬化温度での迅速な硬化(curing, hardening)速度の両方を有する熱硬化可能なフェノールレゾール樹脂組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、今後別の言い方としてエーテル化燐酸エステル潜在触媒(etherified phosphate ester latent catalyst)としても言及する、或るエーテル化燐酸エステルが、フェノールレゾール樹脂組成物の硬化挙動を望ましい仕方で変化すると言う発見に基づいている。特に、本発明は、アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル、又はモノエポキシの燐酸エステルを含む或るエーテル化燐酸エステルを使用することに関する。
【0013】
そのようなエーテル化燐酸エステル潜在触媒の一つの種類には、ポリ燐酸とエトキシル化トリメチロールプロパンとの反応生成物として形成されたエトキシル化トリメチロールプロパンの燐酸エステルが含まれる。エトキシル化トリメチロールプロパンは、市販されており、エチレンオキシドとトリメチロールプロパンとを反応させることにより既知の技術を用いて製造することができる。一つの適当なエトキシル化トリメチロールプロパンは、トリメチロールプロパン1モル当たり3モルのエチレンオキシドを反応させることにより製造する。エーテル化燐酸エステルを製造するためには、燐酸を先ず反応器へ導入し、65〜80℃(150〜175°F)へ加熱する。次に或る量のエトキシル化トリメチロールプロパンを撹拌しながらポリ燐酸へ添加し、燐酸3モル当たりエトキシル化トリメチロールプロパン1モルを与え、エトキシル化トリメチロールプロパンの燐酸エステルを形成する。反応は大気圧条件で行うことができる。温度は通常問題にはならないが、安全のためには冷却することが望ましいであろう。
【0014】
そのようなエーテル化燐酸エステル潜在触媒の別の種類には、燐酸とモノエポキシとを反応させることにより形成した生成物が含まれる。例えば、エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、燐酸と、長さが主にC12及びC14のアルキル鎖を含む脂肪族モノグリシジルエーテルとを用いて製造することができる。脂肪族モノグリシジルエーテルは、燐酸と反応するとエーテル化燐酸エステル潜在触媒を形成する。また、エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、高度に分岐したC10異性体の合成飽和モノカルボン酸混合物のグリシドールエステルを用いて製造することもできる。
【0015】
好ましい実施法として、本発明は、そのようなエーテル化燐酸エステル潜在触媒と、フェノールレゾール樹脂組成物の硬化剤として用いられる強酸触媒との組合せを使用することに関する。エーテル化燐酸エステル潜在触媒と強酸触媒とは、フェノールレゾール樹脂組成物中に、その樹脂にとって望ましい上昇させた硬化温度より低い温度ではフェノールレゾール樹脂の早過ぎる硬化を起こすことはないが、希望の硬化温度でその樹脂の迅速な硬化を起こすのに充分な量及び適切な重量比で存在しているのが好ましい。エーテル化燐酸エステル潜在触媒と強酸触媒との組合せを用いて、そのようなフェノールレゾール樹脂組成物は、硬化温度よりも低い温度での長いポット寿命及び上昇させた硬化温度での迅速な硬化の両方を示し、空洞又はピンホールが最小限の複合体を与える結果になる。
【0016】
本発明は、フェノールレゾール樹脂組成物の製造方法において、フェノールとホルムアルデヒドとをアルカリ性条件下で反応させ、フェノールレゾール樹脂を形成し、その樹脂を中性にし、エーテル化燐酸エステル潜在触媒を添加し、場合により強酸触媒を添加することを含み、然も、前記エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、場合による強酸触媒の存在下で、第一の低い温度での樹脂の硬化を遅延するが、第二の高い温度での迅速な硬化を可能にし、得られる複合体中の空洞又はピンホールを無くか減少するのに充分な量で添加する、フェノールレゾール樹脂組成物製造方法に関する。
【0017】
本発明は、更に、樹脂組成物を上昇させた温度で硬化する(curing, hardening)ことを含む樹脂複合体の製造方法に関する。その方法は、基体を樹脂組成物で含浸する第一工程を含み、次にその組成物を上昇させた温度で硬化することを含んでいてもよい。好ましくは、基体を周囲温度から周囲温度よりも僅かに高い温度で含浸する。
【0018】
本発明の更に別の利点は、一つには以下の説明で記載され、一つにはその説明から明らかになるか、或は本発明を実施することにより分かるであろう。本発明の利点は、特許請求の範囲で特に指摘する要件及びその組合せにより実現され、得られるであろう。
【0019】
上記一般的説明及び次の詳細な説明の両方共単に例として説明するためのものであり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0020】
本発明の詳細な説明
本発明は、主に水性フェノールレゾール樹脂組成物で、熱硬化することができる組成物、即ち、熱硬化性樹脂組成物で、フェノールレゾール樹脂と、特定のエーテル化燐酸エステル潜在触媒との混合物を含む組成物に関する。エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、フェノールレゾール樹脂組成物中に、場合により強酸触媒の存在下で、第一の低い温度で樹脂の硬化を遅延させ、第二の高い温度で迅速な硬化を可能にするのに充分な量で存在させる。更に、本発明のエーテル化燐酸エステル潜在触媒を使用することにより、得られる複合体中に空洞が形成されていないようにするか、或はそれを最小限にすることができることが示されている。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲全体に亙り用いられている用語「燐酸」とは、HPOとして85%までの水溶液を含むオルト燐酸のみならず、縮合した(脱水した)形態のもの、例えば、ピロ燐酸、ポリ燐酸、無水燐酸(五酸化燐)、及びそれらの混合物を含めるものとする。
【0022】
エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、後で記載するようなアルコキシル化ポリオール又は単官能性エポキシ希釈剤(モノ−エポキシ)の一種類を、燐酸の入った反応器へ混合しながら添加することにより形成する。反応は大気圧で進行し、その方法は安全問題を起こさないようにする充分な温度制御(例えば、冷却)を用いることが必要になるだけである。
【0023】
一つの態様として、エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、アルコキシル化ポリオールと、燐酸、好ましくは燐酸の縮合型、特にポリ燐酸との燐酸エステル反応生成物を含む。その反応は、アルコキシル化ポリオールを燐酸に添加することにより大気圧条件で行われる。燐酸エステルを製造するためのアルコキシル化ポリオールの特別な例には、エトキシル化、プロポキシル化、又はブトキシル化グリセロール、ペンタエリトリトール、スクロース、二価又は多価フェノール、レゾルシノール、フロログルシノール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等が含まれるが、それらに限定されるものではない。そのようなアルコキシル化ポリオールは知られており、市販されている。燐酸エステルを製造するための条件、例えば、約65℃〜約80℃の温度で流体であるアルコキシル化ポリオールを用いるのが好ましい。エトキシル化トリメチロールプロパンは、通常多くの用途にとって好ましい。例えば、エトキシル化トリメチロールプロパンは市販の材料であり、当分野で知られている方法を用いて、3モルのエチレンオキシドと1モルのトリメチロールプロパンとを反応させることにより一つの適当な生成物を調製することができる。エトキシル化トリメチロールプロパンと燐酸との反応で得られる生成物は、エトキシル化トリメチロールプロパンの燐酸エステルである。
【0024】
燐酸原料としてポリ燐酸を用いることにより、典型的には、1:2(オルト:メタ)のモル比でオルト燐酸エステルとメタ燐酸エステルとの混合物を含む燐酸エステル生成物を生ずる。本質的に等量のオルト燐酸(85%)とピロ燐酸(105%)との混合物であるスーパーホス(superphos)を燐酸原料として用いるならば、燐酸エステル中のオルト対メタ比は、約1:1になるのが典型的である。最後に、85%燐酸を用いると、燐酸エステルは、主にオルト燐酸エステルになる。
【0025】
燐酸エステルを強酸、及び場合により燐酸と混合することにより、最終的フェノール硬化触媒を形成するのが好ましい。例えば、40〜80%の燐酸エステルを、5〜25%の強酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)及び0〜20%の燐酸とを混合し、硬化触媒を形成する。
【0026】
別の態様として、フェノール硬化触媒は、燐酸エステル潜在触媒成分として、燐酸とモノエポキシ官能性希釈剤との付加物(反応生成物)を含む。適当なエポキシ官能性希釈剤は、次の式:
【0027】
【化1】

【0028】
(式中、Rは1〜18個の炭素原子を有するアルキル、又は1〜18個のアルキル炭素原子を有する
【0029】
【化2】

【0030】
アルキルカルボニルであり、前記アルキルは直鎖又は分岐鎖のものにすることができる。)
により表すことができる。好ましい態様として、Rは、8〜16個の炭素原子を有するアルキル、又は8〜16個のアルキル炭素原子を有するアルキルカルボニルである。
【0031】
例えば、主にC12及びC14の長さを持つアルキル鎖を含む脂肪族モルグリシジルエーテルを用いて燐酸エステルを製造することができる。ヘロキシ(Heloxy)(商標名)変性剤8〔レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products)から入手できる〕は、フェノール硬化触媒のエーテル化燐酸エステル潜在触媒成分を形成するのに用いることができる脂肪族モルグリシジルエーテルである。この例では、ヘロキシ変性剤8を、燐酸(85%)と反応させて燐酸エステルを形成し、次に強酸(例えば、p−TSA)と混合し、フェノール硬化触媒を形成することができる。また、高度に分岐したC10異性体の合成飽和モノカルボン酸混合物のグリシドールエステル〔例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツから入手できるカルデュラ(Cardura)(商標名)グリシジルエステルE10P〕を、エーテル化燐酸エステル潜在触媒を形成するのに用いてもよい。
【0032】
一つの構成として、本発明は、(a)フェノールレゾール樹脂、(b)記載したようなエーテル化燐酸エステル潜在触媒、及び(c)場合により強酸触媒、の混合物を含む、熱硬化することができる、フェノールレゾール樹脂組成物に関し、この場合、前記エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、前記場合による強酸に対し、第一の低い温度では前記場合による強酸触媒の存在下で前記樹脂の硬化を遅延させるが、第二の高い温度では迅速な硬化を空洞を最小限にして可能にするのに充分な量で存在する。
【0033】
フェノールレゾール樹脂は、既知の出発材料から既知のやり方で調製することができる。そのような樹脂は、アルカリ性条件で、アルデヒド成分とフェノール成分とを反応させ、樹脂生成物中に反応性メチロール基を形成させることにより調製する。例えば、水性反応媒体中で、アルカリ性反応条件下でホルムアルデヒドとフェノール成分とを反応させることにより、適当なフェノールレゾール樹脂を生成させることができる。アルカリ性反応条件は、当業者に知られている極めて多種類の有機及び無機の塩基性触媒のいずれかを用いることにより達成することができる。コスト及び性能に基づいて、アルカリ金属水酸化物、通常水酸化ナトリウムが屡々選択される触媒である。しかし、多くの場合、アミン触媒も好ましい。
【0034】
フェノールレゾール樹脂は、テトラ−、トリ−、及びジ−メチロール化フェノール二量体物質を含めた高度に反応性の高度にメチロール化されたフェノール二量体物質を大きな割合で含むように製造するのが好ましい。一層好ましくは、その樹脂は、大きな割合、例えば、樹脂の4〜8重量%のテトラメチロール化フェノール物質、即ち、テトラダイマー(tetradimer)を含む。メチロール基は、助触媒を添加して、又は添加せずに、上昇させた温度で互いに反応することができる。そのような樹脂は、塩基性及び酸性の両方の触媒の影響下で硬化することができる。本発明は、酸触媒の存在下で樹脂を硬化することに関する。
【0035】
本発明で用いるのに適したフェノールレゾール樹脂は、好ましくは少なくとも0.9:1、一層好ましくは少なくとも約1:1のホルムアルデヒド対フェノールのモル比から、約3.5:1、一層好ましくは約1.85:1までのモル比を用いて製造する。本発明で特に有用なフェノールレゾール樹脂は、長いポット寿命を示し、55℃で開始する種類の強い発熱を示す傾向が小さい。
【0036】
フェノールレゾール樹脂を製造するのに用いられるフェノール成分には、フェノールレゾール樹脂を製造するのに典型的に用いられるどのようなフェノールでも含まれ、それらは二つのオルト位置、又は一つのオルトとパラ位置の所は置換されておらず、そのような置換されていない場所は、希望の重合(二量化、三量化等の)反応が起きるようにするために必要である。これらの位置が置換されたフェノールは、連鎖停止反応により分子量を制御することが当分野で知られているように、少ない量(例えば、フェノール成分の約30重量%まで、一般に約10重量%以下)で用いてもよい。フェノール環の残余の炭素原子の一つ又は全てのいずれもが慣用的仕方で置換されていてもよく、或はされていなくてもよい。これらの置換基の性質は広く変えることができ、その置換基が、アルデヒドとフェノールとの重合でそのオルト及び/又はパラ位置を妨害しないようにする必要があるだけである。更に、フェノール成分の少なくとも一部分は、樹脂が熱硬化性になるように、オルト及びパラ位置のいずれでも妨害されていないフェノール(即ち、三官能性フェノール)を含んでいなければならない。好ましくはフェノール成分の少なくとも10重量%が、そのような三官能性フェノールを含むべきであり、一層好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%含むべきであり、通常フェノール成分は、本質的に全てがそのような三官能性フェノールからなる。
【0037】
フェノール樹脂を形成するのに用いられる置換フェノールには、例えば、アルキル置換フェノール、アリール置換フェノール、アラルキル置換フェノール、シクロアルキル置換フェノール、アルケニル置換フェノール、アルコキシ置換フェノール、アリールオキシ置換フェノール、及びハロゲン置換フェノールが含まれ、前記置換基は、恐らく1〜26、通常1〜9個の炭素原子を含む。
【0038】
本発明のレゾール樹脂組成物を製造するのに適したフェノールの特別の例には次のものが含まれる:ヒドロキシベンゼン(フェノール)、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,4,5−トリメチルフェノール、3−エチルフェノール、3,5−ジエチルフェノール、p−ブチルフェノール、3,5−ジブチルフェノール、p−アミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、3,5−ジシクロヘキシルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クロチルフェノール、フェニルエチル、3,5−ジメトキシフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、p−エトキシフェノール、p−ブトキシフェノール、3−メチル−4−メトキシフェノール、p−フェノキシフェノール、及びそれらの混合物。通常のフェノールが殆どの用途に対し通常好ましい。フェノール成分は、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、又はp,p′−ジヒドロキシビフェニルのような二官能性フェノールを少量含んでいてもよい。
【0039】
ホルムアルデヒドは単独で用いてもよく、或はフェノールレゾール樹脂を形成するのにこれまで用いられてきたアルデヒド又はそれらと同等のもののいずれかと組合せて用いてもよく、それらには例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、フルフルアルデヒド、及びベンズアルデヒドが含まれる。一般に、用いられるアルデヒドは式、R′CHO(式中、R′は、水素、又は一般に1〜8個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである)を有する。或るアルデヒド、例えば、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドは、そのHDT(アメリカ試験材料学会、ASTM D−648により決定して、熱変形温度)が低下する損失はあるが、レゾール樹脂の靭性を改良することが認められるであろう。また、二官能性アルデヒドを用いてフェノール樹脂を製造することができ、架橋を硬化樹脂に導入するのに有利に用いることができると考えられる。通常のホルムアルデヒドが殆どの用途に対し好ましい。ホルムアルデヒドは、ホルマリン溶液及びパラホルムアルデヒドを含むその普通に入手できる形態のいずれかのものとして供給することができる。
【0040】
フェノールレゾール樹脂は、尿素、フラン、及びメラミンのような他の樹脂変性単量体を存在させて製造してもよいと考えられている。そのような変性フェノール樹脂を、本発明の熱硬化性フェノールレゾール樹脂組成物中に含有させることも考えられている。
【0041】
本発明のレゾール樹脂組成物は、好ましくは約60〜95%、一層好ましくは約70〜90%の固体レベルを有するが、特定の用途により、それより多くの又は一層少ない固体を用いてもよい。組成物の粘度は、25℃で測定して通常約200cp〜5000cp(0.2パスカル秒〜5パスカル秒)、通常約300〜1500cp(0.3〜1.5パスカル秒)である。固体含有量に関して、特定の用途により一層大きな粘度及び一層低い粘度の両方を用いることができる。組成物は、樹脂組成物の重量に基づき、好ましくは15重量%より低い遊離フェノール含有量及び3%より低く、一層好ましくは1.0重量%より低い遊離アルデヒド含有量を有する。
【0042】
希望の遊離アルデヒド含有量を達成するために、フェノールレゾール樹脂をアルデヒド除去剤で処理し、樹脂中の遊離アルデヒドの量を低下することができると考えられている。除去剤は、硬化樹脂の硬化速度又は希望の強度に著しい影響を与えることなく、遊離アルデヒドのレベルを低下するのに充分な量で添加する。レゾール製造終了時に存在する遊離アルデヒド1モル当たり0.5〜1.5モル当量の除去剤を使用するのが好ましい。典型的なアルデヒド(ホルムアルデヒド)除去剤には、尿素、メラミン、トルエンスルホンアミド、及びジシアンジアミドが含まれる。好ましい除去剤は、尿素及びトルエンスルホンアミドである。
【0043】
靭性及び他の硬化樹脂の性質を改良するために、種々の他の変性剤をレゾール樹脂に添加することもできる。例えば、それらの変性剤には、連鎖停止フェノール、グリコールで、難燃性を追加するためにハロゲン置換基を持つもの又は持たないもの、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アルキルフェノール、ヒドロキシ含有アクリレート等、及びそれらの混合物が含まれる。レゾール樹脂組成物中へ配合されるそのような変性剤の割合は、典型的には5〜35重量%(フェノール成分に基づく)の範囲にある。
【0044】
難燃剤及び充填剤のような他の変性剤を、フェノールレゾール樹脂組成物を完成させるために添加することができる。二価以上のポリオール、例えば、二価又は多価フェノール、レゾルシノール、フロログルシノール等のような反応性変性剤は、レゾール樹脂へ、それが配合された後に添加することができる。最後に、特定の用途で特別の効果を達成するための変性剤は、適当なものにすることができ、例えば、ポリビニルブチラール、又は複合体に一層良好な衝撃強度を与えるためのエポキシ類でもよい。
【0045】
本発明のフェノールレゾール樹脂組成物中に用いることができる他の成分は有機溶媒である。樹脂組成物は主に水性であるが、或る用途に望ましい固体濃度又は粘度へフェノールレゾール樹脂組成物を希釈するのに種々の有機溶媒を用いることができる。適当な有機溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、等を含めた芳香族溶媒、フルフラール、フルフリルアルコール(酸性条件下で一緒に反応する)、種々のセロソルブ、カルビトール、ケトン、及びエチレングリコール、ベンジルアルコール等のような種々のアルコールのような極性溶媒が含まれる。一般に、そのような有機溶媒は、全溶媒の50重量%まで、好ましくは25重量%以下を構成することができる。環境的理由から、単独の溶媒として水が好ましい。
【0046】
エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、唯一の硬化剤として用いてもよく、フェノール樹脂固体の約2〜20重量%、一層好ましくは約8〜12重量%を構成していてもよいが、特定の用途により、それより大きな又は一層小さい割合で用いてもよい。エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、慣用的酸硬化剤又は酸触媒と組合せて用いてもよい。強酸触媒と組合せて用いる場合、強酸に対する潜在触媒の相対的割合は、希望の硬化性能に依存して広く変化させることができる。どのような特定の割合を選択するかは、単なる日常的な実験を用い、特に後に与える特定の実施例を考慮して、当分野の技術内に充分入る。酸触媒は、当分野で既知の慣用的強酸触媒である。そのような酸には、塩化水素酸、硫酸、及び燐酸のような無機酸、トリクロロ酢酸、スルファミン酸、芳香族ジ−及びポリ−スルホン酸、例えば、フェニルスルホン酸及び他の有機スルホン酸のような有機酸、酸塩化物のような慣用的潜在強酸触媒、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい強酸触媒には、燐酸と、強有機スルホン酸、例えば、エチレングリコール溶媒中に入れて与えられたトルエンとキシレンスルホン酸の市販混合物、又はメタンスルホン酸との混合物が含まれる。
【0047】
一般に、p−トルエンスルホン酸(p−TSA)のような芳香族スルホン酸を酸触媒として用いる。エーテル化燐酸エステル潜在硬化触媒と、場合による強酸触媒との相対的量を変化させることにより、硬化剤組成物の活性度を調節し、最終的には硬化フェノールレゾール樹脂組成物の脱ガス性質の最適化を行うことができる。
【0048】
本発明に関連して、周囲温度まで低いとは、典型的には、40℃より低く、好ましくは約0℃〜35℃、最も普通には0℃〜25℃として考えることができる。
【0049】
強酸触媒は、希望の上昇させた樹脂硬化温度で樹脂の迅速な硬化を促進するのに充分な量でフェノールレゾール樹脂組成物中に存在するのが好ましい。一般に、強酸触媒は、組成物中にフェノールレゾール樹脂固体の100部当たり約0.5〜20部(pphr)、一層好ましくは約1〜10pphrの量で存在させる。別な言い方をすれば、強酸触媒はフェノールレゾール樹脂組成物中に、エーテル化燐酸エステル潜在触媒と強酸触媒との合計の約5重量%〜約80重量%の量で存在させることができる。例えば、触媒系又は混合物は、約30重量%の強酸触媒と、約70重量%のエーテル化燐酸エステル潜在触媒との水性混合物を含有していてもよい。そのような触媒は、強酸触媒の水溶液、例えば、p−トルエンスルホン酸とオルト燐酸との2:1重量比の混合物と、エトキシル化トリメチロールプロパンの燐酸エステルの水溶液とを混合することにより形成することができる。
【0050】
本発明は、速硬性のポット寿命の長いフェノール樹脂組成物を製造する方法にも関する。その方法によれば、フェノール樹脂を先ずホルムアルデヒドとフェノールから調製する。主に、好ましい高度にメチロール化した物質を含む樹脂を、二段階法を用いて調製する。第一段階では大きなF:Pモル比(1.5:1〜4:1のF:P)でアルカリ性触媒を用いてアルカリ性反応条件下で水性反応媒体中でフェノールとホルムアルデヒドとを反応させる。次に第二工程として、更にフェノール及びアルカリ性触媒を添加する。希望の最終的F:Pモル比を得るのに必要な追加量のフェノールを添加し、反応させて最終的樹脂を得る。最終的樹脂に適切なF:Pモル比は、予め確認されており、好ましくはF:Pモル比は約1.5〜1.8である。フェノールとホルムアルデヒドとを反応させるための温度及びpH条件は、当業者の技術範囲内に充分入る。例えば、その方法の第一工程では、全量のホルムアルデヒドをフェノールの半分(50%)だけと反応させ、例えば約3.4/1のF:Pモル比で反応させてもよい。然る後、フェノールの残りの部分を添加し、更に樹脂を反応させて、約1.7/1のF:Pモル比を有する最終的樹脂を得る。
【0051】
フェノール樹脂を調製するのに用いられるアルカリ性触媒の量は、添加される全フェノールの100重量部当たり約0.6〜1.4重量部であるのが好ましい。苛性ソーダ(NaOH)溶液は、通常約50%の強度であるのが普通である。フェノールの二段階添加を用いた場合、触媒はフェノールとほぼ同じ割合で添加する。例えば、最初にフェノールの50%を添加するならば、全触媒導入量の50%を最初に添加する。
【0052】
このように、フェノール及びアルカリ性触媒の一部分だけに対し、ホルムアルデヒドの全量をゆっくり添加してテトラダイマーを形成するように反応を駆動する。残りのフェノール及びアルカリ性触媒を添加することにより、残留する未反応ホルムアルデヒドを消費し、樹脂の粘度の低下を起こす。得られた樹脂は、大きな分率の高度にメチロール化した二量体と、別の有意の分率の主にモノメチロール化したフェノール単量体とを有するメチロール化物質の双峰分布を特徴とする。双峰分布は、高度に反応性で、一般に望ましくない物質である2,6−ジメチロールフェノールのレベルを最小にする。この樹脂物質のレベルが低いことは、一層良いポット寿命を有し、55℃で開始される種類の強い発熱を示す傾向が一層少ない樹脂を与える結果になる。
【0053】
フェノール樹脂を調製するためのアルカリ性反応条件は、当業者に既知の極めて多種類の有機及び無機のアルカリ性触媒のいずれかを用いて確立することができる。コスト及び性能に基づいて、ナトリウム、リチウム、又はカリウムの水酸化物のようなアルカリ金属水酸化物が好ましい。水酸化ナトリウムが特に好ましい。他の触媒には、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムのようなアルカリ土類水酸化物、水性アンモニア及びアミンが含まれる。アルカリ性触媒は、フェノール−ホルムアルデヒドレゾール樹脂を形成するホルムアルデヒドとフェノールとの反応を促進する。
【0054】
次に、必要に応じ、例えば、一層よい貯蔵安定性を得るように、樹脂を中性化してもよい。用いることができる慣用的酸性中性化剤には、メタンスルホン酸、塩化水素酸、燐酸、及び硫酸が含まれるが、それらに限定されるものではない。樹脂を中性化するのに用いることができる種々の酸性潜在硬化剤には、例えば、本発明のエーテル化燐酸エステル潜在触媒及び米国特許第5,378,793号明細書に記載されている部分的硫酸エステルが含まれる。一般に、水性樹脂中に約6.5〜7.5のpHを確立するのに充分な量の中性化剤が添加されるが、4.0位の低い最終的pHレベルでも、屡々安定な樹脂系を与える結果になることがある。
【0055】
次に、本発明によるエーテル化燐酸エステル潜在触媒を樹脂に添加する。エーテル化燐酸エステル潜在触媒も用いることができ、好ましくは強酸触媒と組合せて用いる。特に、これら二つの成分を、長いポット寿命及び迅速な硬化の望ましい組合せが得られるような相対的量で用いるのが好ましい。例えば、エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、強酸触媒の存在下で周囲温度までの低い温度で樹脂の硬化を遅延させるのに充分な量で添加されるであろう。強酸触媒の量に対するエーテル化燐酸エステル潜在触媒の量を変え、樹脂組成物の全触媒含有量を変化させることにより、広い範囲のポット寿命及び硬化速度を得ることができる。更に、得られる複合体中の空洞を無くすか又は最小限にすることができることが観察されている。好ましい態様として、エーテル化燐酸エステル潜在触媒と強酸触媒との混合物を、樹脂を使用する直前のその樹脂に添加する。
【0056】
本発明は、フェノール樹脂組成物を用いて硬化樹脂複合体を製造する方法にも関する。通常周囲温度までの低い温度で、(a)フェノールレゾール樹脂、(b)エーテル化燐酸エステル潜在触媒、及び(c)場合による強酸触媒、の混合物を含む樹脂組成物を与えることにより複合体を形成するが、この場合、エーテル化燐酸エステル潜在触媒は、場合による強酸触媒の存在下で周囲温度までの低い温度で樹脂の硬化を遅延させるのに充分な量で存在させる。樹脂組成物は、更に基体に含浸させてもよい。次に、樹脂又は樹脂含浸基体の温度を、樹脂を硬化し、硬化複合体を形成するための上昇させた温度へ上昇させる。その温度は、約60℃より高い温度へ上昇させるのが好ましく、通常約65℃〜85℃である。複合体は25℃〜80℃位の低い温度で一晩硬化することができるが、気泡発生を起こさないようにするため初期硬化温度は80℃〜90℃を越えない方がよい。80℃〜100℃で複合体を後硬化することにより、最終的複合体の機械的強度を増大する。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、ハンドレイアップ(hand layup)連続積層法、プレプレッグ(prepreg)製造、樹脂トランスファー成形(RTM)、プルトルージョン(pultrusion)の適用、単繊維巻取り、シート成形配合物の製造、に適している。ガラス繊維補強のためには、現在ポリエステル・ハンドレイアップ複合体製品、及びサーテンティード(CertainTeed)RO9型625、又はPPGハイボン(Hybon)(登録商標名)のようなフェノール相容性ガラスを製造するのに用いられている細断ガラス糸マットを用いることができる。そのような補強複合体を製造するために用いられる装置は、この技術の知識をもつ者によく知られており、多くの場合、基本的には本発明のフェノールレゾール樹脂組成物の入った含浸タンクを含む。操作中、ガラス繊維、ガラス繊維ロービング、又はガラス織物のような補強材をタンク中に浸漬し、補強材に樹脂組成物を含浸する。ガラス繊維の場合、含浸後、繊維をマンドレル上に巻取る(単繊維を巻取る)か、又はダイを通して引張り(プルトルージョン)、希望の複合体成形物を形成する。
【実施例】
【0058】
本発明を、次の実施例を参照して更に記述する。これらの実施例は、なんら本発明を限定するものと見做すべきではない。
【0059】
例1
2:1のメタ:オルト比のエトキシル化トリメチロールプロパンのトリ燐酸エステルは市販されており〔テキサス州ラテクソ、75849、オールド・ラテクソ・ロード、私書箱977、P−ケム(P−Chem)〕、強酸(p−トルエンスルホン酸)及びオルト燐酸(85%HPO)と混合する。70重量%の燐酸エステルを、10重量%のp−トルエンスルホン酸(30%HO中)及び20重量%のオルト燐酸(85%HPO)と混合する。得られたエーテル化燐酸エステル潜在触媒を含有する触媒を、次に基礎樹脂としての274G38フェノールレゾール樹脂〔G−Pレジンズ社(Resins Inc.)〕に添加する。次に、エーテル化燐酸エステル潜在触媒の性能を、同じ樹脂中に対照硬化触媒を使用した場合と比較する。対照硬化触媒は、10重量%のp−トルエンスルホン酸(30%HO中)、20重量%の燐酸(85重量%HPO)、65重量%の燐酸アミノトリエタノール(ATP−米国特許第5,864,003号参照)(粘度減少のため15%の水を含有する)、及び5重量%のブチルカルビトール(溶媒)を混合することにより形成する。エーテル化燐酸エステル潜在触媒及び対照触媒の特性を下の表1に報告する。
【0060】
【表1】

【0061】
100部の274G38フェノールレゾール樹脂をエーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒6部と一緒にする。同様に、100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、対照触媒6部と一緒にする。夫々の試料のゲル化時間及びポット寿命を比較する。夫々の試料のゲル化時間(70℃)及びポット寿命を下の表2に報告する。
【0062】
【表2】

【0063】
上記材料を混合し、周囲温度で16時間放置する。次にそれら材料を45℃で15分間保温する。得られた注型物を、表面変化、欠陥、又は空洞について調べる。エーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒を用いて作った注型物は、対照触媒を用いて作った注型物と比較して、その表面のピンホールは著しく減少していたことが観察される。このように、エーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒は、対照と比較して、得られる注型物の空洞又はピンホールに顕著な減少を与える結果になるが、対照と比較してそれに匹敵するゲル化時間及びポット寿命を持っている(表2)。
【0064】
例2
例1に記載したのと同じエーテル化燐酸エステル潜在触媒を用いる。そのエーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒を、72重量%の燐酸エステル、8重量%のp−トルエンスルホン酸(30%HO中)及び20重量%の燐酸(85%HPO)を混合することにより形成する。得られたエーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒を、次に基礎樹脂としての274G38フェノールレゾール樹脂に添加する。次に、エーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒の性能を、例1の同じ対照硬化触媒を用いて得られた硬化速度と比較する。
【0065】
100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、この例のエーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒6部と一緒にする。同様に、100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、例1の対照触媒6部と一緒にする。夫々の試料のゲル化時間及びポット寿命を比較する。結果は、エーテル化燐酸エステル潜在触媒含有触媒のポット寿命が、例1の対照触媒試料のそれに匹敵することを実証している。例1の場合と同じように、上記材料を混合し、周囲温度で16時間放置する。次にそれら材料を45℃で15分間保温する。得られた注型物を、表面変化、欠陥、又は空洞について調べる。分析画像は、エーテル化燐酸エステル潜在触媒に基づく触媒組成物を用いて作った注型物の表面のピンホール及び空洞は、例1の対照触媒試料を用いて作った注型物と比較して著しく減少していることを確認させるものである。
【0066】
例3
本発明による硬化触媒を、先ずヘロキシ(Heloxy)(商標名)変性剤8(モノ−エポキシ官能性希釈剤)とオルト燐酸(85%HPO)とを反応させ、次に得られたエーテル化燐酸エステル潜在触媒と強酸(p−トルエンスルホン酸)と混合することにより形成する。エーテル化燐酸エステルを形成するため、37.5部のヘロキシ変性剤8を、発熱を制御(冷却)しながら(最高温度55℃)、52.5部の燐酸(85%HPO)にゆっくり添加する。次に、得られた溶液を10部のp−TSAに添加する。その溶液をよく混合し、エトキシル化トリメチロールプロパン(希釈剤)15部を添加し、フェノール硬化触媒を形成する。対照硬化触媒は、3モルのトリエタノールアミンと、ポリ燐酸として供給された1モルの燐酸と反応させ、ATPを形成させることにより形成する(例1参照)。最終的対照触媒を調製するため、65部のATPを、20部の燐酸、10部のp−TSA及び5部のブチルカルビトールと混合する。本発明の硬化触媒と対照触媒の特性を下の表3に報告する。
【0067】
【表3】

【0068】
100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、本発明の硬化触媒7部と一緒にする。同様に、100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、対照触媒6部と一緒にする。夫々の試料のゲル化時間及びポット寿命を比較する。夫々の試料のゲル化時間(90℃)及びポット寿命を下の表4に報告する。
【0069】
【表4】

【0070】
得られた注型物を、表面変化、欠陥、又は空洞について調べる。本発明の硬化触媒を用いて作った注型物は、対照触媒を用いて作った注型物と比較して、その表面のピンホールは著しく減少していたことが観察される。このように、本発明の硬化触媒は、対照と比較して得られる注型物の空洞又はピンホールに顕著な減少を与える結果になるが、対照と比較してそれに匹敵するゲル化時間及びポット寿命を持っている。
【0071】
例4
本発明による硬化触媒を、高度に分岐したC10異性体の合成飽和モノカルボン酸混合物のグリシドールエステル〔カルデュラ(商標名)グリシジルエステルE10P〕と、オルト燐酸(85%HPO)とを反応させ、次にその燐酸エステルを強酸(p−トルエンスルホン酸)と混合することにより形成する。燐酸エステルを形成するため、37.5部のカルデュラ・グリシジルエステルE10Pを、発熱を制御(冷却)しながら(最高温度55℃)、52.5部のオルト燐酸(85%HPO)にゆっくり添加する。次に硬化触媒を、この混合物に10部のp−TSAをゆっくり添加することにより調製する。その溶液をよく混合し、エトキシル化トリメチロールプロパン(希釈剤)15部を添加し、硬化触媒を形成する。対照硬化触媒は、3モルのトリエタノールアミンと、(ポリ燐酸として)1モルの燐酸と反応させATPを形成させることにより、例1の場合のように形成する。対照触媒を形成するため、65部のATPを20部の燐酸(85%HPO)、10部のp−TSA及び5部のブチルカルビトールと混合する。本発明の硬化触媒と対照触媒の特性を下の表5に報告する。
【0072】
【表5】

【0073】
100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、燐酸エステル潜在触媒7部と一緒にする。同様に、100部の274G38フェノールレゾール樹脂を、対照触媒6部と一緒にする。夫々の試料のゲル化時間及びポット寿命を比較する。夫々の試料のゲル化時間(90℃)及びポット寿命を下の表6に報告する。
【0074】
【表6】

【0075】
両方の触媒系を用いて作り、得られた注型物を、表面変化、欠陥、又は空洞について調べる。本発明の硬化触媒を用いて作った注型物は、対照触媒を用いて作った注型物と比較して、その表面のピンホールは著しく減少していたことが観察される。このように、本発明の硬化触媒は、対照と比較して、得られる注型物の空洞又はピンホールに顕著な減少を与える結果になるが、対照と比較してそれに匹敵するゲル化時間及びポット寿命を持っている。
【0076】
本発明の本質又は範囲から離れることなく、本発明の組成物及び方法に種々の修正及び変化を加えることができることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらと同等のものの中に入る限り、本発明のそれら修正及び変更を本発明は包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノールレゾール樹脂、(b)場合により強酸硬化触媒、及び(c)エーテル化燐酸エステル潜在触媒であって、アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル及びモノエポキシ官能性希釈剤の燐酸エステルからなる群から選択されたエーテル化燐酸エステル潜在触媒、の混合物から本質的になる熱硬化することができる樹脂組成物。
【請求項2】
フェノールとホルムアルデヒドとを反応させてフェノールレゾール樹脂を形成すること、前記樹脂を中和すること、エーテル化燐酸エステル潜在触媒であって、アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル及びモノエポキシ官能性希釈剤の燐酸エステルからなる群から選択されたエーテル化燐酸エステル潜在触媒を添加すること、及び場合により強酸硬化触媒を添加することから本質的になる、樹脂組成物を製造する方法。
【請求項3】
(1)(a)フェノールレゾール樹脂、(b)場合により強酸硬化触媒、及び(c)エーテル化燐酸エステル潜在触媒であって、アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル及びモノエポキシ官能性希釈剤の燐酸エステルからなる群から選択されたエーテル化燐酸エステル潜在触媒、の混合物を含む樹脂組成物を基体に含浸させること、及び(2)前記樹脂含浸基体を硬化することから本質的になる、補強樹脂複合体を製造する方法。
【請求項4】
(1)(a)フェノールレゾール樹脂、(b)場合により強酸硬化触媒、及び(c)エーテル化燐酸エステル潜在触媒であって、アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル及びモノエポキシ官能性希釈剤の燐酸エステルからなる群から選択されたエーテル化燐酸エステル潜在触媒、の混合物から本質的になる樹脂組成物を基体に含浸させること、及び(2)前記樹脂含浸基体を硬化することにより製造された補強樹脂複合体。
【請求項5】
(a)中性化フェノールレゾール樹脂、及び(b)アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル及びモノエポキシ官能性希釈剤の燐酸エステルからなる群から選択されたエーテル化燐酸エステル潜在触媒、の混合物から本質的になる、熱硬化することができる樹脂組成物。
【請求項6】
(a)フェノールレゾール樹脂、(b)場合により強酸硬化触媒、及び(c)エーテル化燐酸エステル潜在触媒であって、アルコキシル化ポリオールの燐酸エステル及びモノエポキシ官能性希釈剤の燐酸エステルからなる群から選択されたエーテル化燐酸エステル潜在触媒、の混合物を含む樹脂組成物を硬化することから本質的になる、補強樹脂複合体を製造する方法。
【請求項7】
フェノールレゾール樹脂が、置換又は非置換フェノールから調製されている、請求項5、6、1、2、3、又は4に記載の発明。
【請求項8】
フェノールがヒドロキシベンゼンである、請求項7に記載の発明。
【請求項9】
フェノールレゾール樹脂が、ホルムアルデヒド単独又は一種類以上の別のアルデヒドと共に一緒にしたものから調製されている、請求項8に記載の発明。
【請求項10】
フェノール樹脂が、ホルムアルデヒド単独から調製されている、請求項9に記載の発明。
【請求項11】
フェノールの一部分を、先ず約1.5:1〜4:1のホルムアルデヒド対フェノールモル比でホルムアルデヒドと反応させ、次に追加のフェノールを添加し、反応させ、フェノールレゾール樹脂を得る、請求項10に記載の発明。
【請求項12】
エーテル化燐酸エステル潜在触媒が、エトキシル化トリメチロールプロパンとポリ燐酸との反応生成物である、請求項5、6、1、2、3、又は4に記載の発明。
【請求項13】
エーテル化燐酸エステル潜在触媒を、(a)ポリ燐酸を65〜80℃(150〜175°F)へ加熱すること、及び(b)エトキシル化トリメチロールプロパンを大気圧条件で添加することにより調製し、然も、前記ポリ燐酸と前記エトキシル化トリメチロールプロパンが、3:1の燐酸対エトキシル化トリメチロールプロパンモル比で存在する、請求項12に記載の発明。
【請求項14】
エーテル化燐酸エステル潜在触媒が、次の式:
【化1】


(式中、Rは、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、又は1〜18個のアルキル炭素原子を有するアルキルカルボニルであり、前記アルキルは直鎖か又は分岐鎖である。)
のエポキシ官能性希釈剤から調製されている、請求項5、6、1、2、3、又は4に記載の発明。
【請求項15】
エーテル化燐酸エステル潜在触媒が、主にC12及びC14アルキル鎖含有脂肪族モノグリシジルエーテル及び高度に分岐したC10異性体の飽和モノカルボン酸混合物のグリシドールエステルからなる群から選択されたエポキシ官能性希釈剤から調製されている、請求項14に記載の発明。
【請求項16】
強酸触媒が、塩化水素酸、硫酸、燐酸、トリクロロ酢酸、有機スルホン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項5、6、1、2、3、又は4に記載の発明。
【請求項17】
強酸硬化触媒が、燐酸と、一種類以上の有機スルホン酸との混合物である、請求項16に記載の発明。
【請求項18】
有機スルホン酸が、トルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物である、請求項16に記載の発明。
【請求項19】
フェノールレゾール樹脂が、約0.9:1〜3.5:1のホルムアルデヒド対フェノールの比を用いて調製されている、請求項5、6、1、2、3、又は4に記載の発明。
【請求項20】
フェノールレゾール樹脂が、約1:1〜1.8:1のホルムアルデヒド対フェノールの比を用いて調製されている、請求項19に記載の発明。
【請求項21】
基体が、ガラス繊維、ガラス繊維ロービング、及びガラス織物から選択されている、請求項3に記載の発明。

【公表番号】特表2008−507620(P2008−507620A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523643(P2007−523643)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/025629
【国際公開番号】WO2006/020301
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507120304)ジョージア − パシフィック ケミカルズ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】