説明

オピオイド受容体拮抗物質

肥満と関連疾病の治療、防止、又は改善に有用な式(I)の化合物、


(I)
又は、その医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマーもしくはその混合物が開示され、ここに、変数X〜X、R〜R(R’を含む)、E、q、v、y、z、A、及びBは記載の通りである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学の分野に関する。具体的には、本発明は、オピオイド拮抗物質として有用な化合物、その治療方法、使用方法、及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
3つのタイプのオピオイド受容体、μ、κ、δオピオイド受容体が広く報告されている。最近の証拠は、μ、κ、及び/又はδ受容体の受容体二量体コンビネーション(ヘテロ二量体と称される)の間の相互作用もまた、オピオイド活性に寄与することを指摘している。オピオイド受容体とその通常制御又はその欠如は、動物における過敏性腸症候群、悪心、嘔吐、掻痒性皮膚疾患、鬱病、煙草・アルコール中毒、性的機能障害、脳卒中、及びトラウマなどの病状に関与している。したがって、オピオイド受容体に拮抗的に結合できる能力が、これらの病状の1つ以上を患うヒトなどの動物における改善、予防、及び/又は治療効果をもたらすことが示されたのは驚くことではない。
【0003】
つい最近、オピオイド受容体のある拮抗物質が、代謝エネルギー消費を高め、肥満したラットの筋肉の質量は維持しながら体重を減らすことが見出されている。これらの発見は、効果的なオピオイド拮抗物質が、肥満を予防、治療、及び/又は改善する効果に有用であり得ることを示唆している。西洋社会における肥満人口の割合、及び肥満とそれに関連する疾病の影響と症状の治療に関わる間接費用を考慮すると、これらの発見の重要性は、誇張し過ぎて述べることはできない。
【0004】
多くのオピオイド拮抗物質が公表されているが、患者に対して全体的な利益を与え、大きな副作用が殆ど又は全くない代替の及び/又は改良された又はより有効な拮抗物質に対して、追求が続いている。米国特許第4891379号は、糖尿病と肥満の治療に有用なフェニルピペリジンオピオイド拮抗物質を開示している。とりわけ、米国特許第4891379号は、下記の構造によって表される化合物LY255582を開示している。
【化1】

【0005】
また、米国特許第4191771号は、オピオイド拮抗物質として有用な化合物を開示している。また、「Wentland, et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 11(2001)1717-1721」において、フェニルピペリジンの二環式類似体が、調製され、オピオイド拮抗物質として報告されている。「Wentland, et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 11(2001)1717-1721」もまた参照されたい。さらに、2000年5月18日出願のヨーロッパ特許出願EP1072592A2は、下記の式1のフェニルピペリジン化合物を開示しており、
【化2】

1
ここに、A、D、R、R、R、X、及びnの意味は、その説明に示されており、これは、そう痒症のようなオピオイド受容体によって仲介される疾患の予防と治療に有用である。
【0006】
米国特許第6140352号と関連特許は、糖尿病と肥満の治療に有用なβアドレナリン受容体のアゴニストとして、式1の化合物を開示しており、
式1
【化3】

(1)
ここに、可変因子X、X、X、R、R、R、R、及びRは、その中に記載の通りである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オピオイド受容体拮抗物質として有用な、あるいは肥満及び/又は別なメカニズムによる糖尿病の治療に有用な、これら及びこの他の化合物が開示されているが、オピオイド受容体とりわけ肥満とその関連疾病に係わる疾病の、安全で有効な及び/又は代わり得る治療又は予防に対する満たされていない医療ニーズが依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式Iの化合物を提供し、
【化4】


ここに、
、X、X、X、及びXはそれぞれ、C、CH、又はNであり、但し、環Bは2以下の窒素原子を有し、
Xは、環Aがシクロヘキシル、シクロヘキセニル、又はピペリジニルであるように、NH又はCHであり、
Eは、NH又はOであり、
vは、0、1、2、又は3であり、
qは、0又は1であって、但し、A環がシクロヘキシル又はシクロヘキセニルのとき、qは1であり、かつvとqは、同時に0ではなく、
とRは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、ヘテロシクリル、C〜C10アルキル複素環、−C〜CアルキルC(O)C〜Cアルキル、−(CH(CO)C〜Cシクロアルキル−、−C〜CアルキルCH(OH)アリール、−CO(O)C〜Cアルキル、−SO〜Cアルキル、−SO〜C10アルキルアリール、−SO〜Cアルキル複素環、−C〜Cアルキルシクロアルキル、−(CHC(O)OR、−(CHC(O)R、−(CHC(O)NR、及び−(CHNSOから独立して選択され、ここに、各々のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、複素環、及びアリール基は、場合により、ハロゲン、C〜Cハロアルキル、C〜Cチオアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−SO〜Cアルキル、−SO〜Cアルキルアリール、−C〜Cアルキルシクロアルキルから独立して選択された1〜5の基によって置換され、RとRは、場合により互いに結合して、4、5、6、又は7員の窒素含有複素環を形成してよく、この窒素含有複素環は、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−CO(O)C〜Cアルキル、ハロゲン、オキソ、C〜Cハロアルキルからなる群より選択された置換基をさらに有することができ、
【0009】
とR’は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、−C〜Cアルキルシクロアルキル、又は−C〜Cアルキルアリール、C〜Cアルキル複素環からそれぞれ独立して選択され、あるいは、RとR’は、結合して、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルケニル、又はC〜C10複素環を形成し、
【0010】
とRは、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、−C〜Cアルコキシアルキル、C〜Cチオアルキル、ハロゲン、C〜Cハロアルキル、−C〜Cアルコキシハロアルキル、アリール、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキルもしくは−C(O)OC〜Cアルキル、−C〜Cアルキルアミノ、−C〜Cアルキルシクロアルキル、−(CHC(O)C〜Cアルキル、及び(CHNRから独立して選択され、ここに、各々のR又はRは、その各環に炭素原子のみで結合し、ここに、yは、0、1、2、又は3であり、zは、0、1、2、又は3であり、
【0011】
とRは、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−C(O)C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、−SO〜Cアルキル、SO〜Cアルキルアリール、−SO〜Cアルキル複素環、アリール、−C〜Cアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、−C〜Cアルキルシクロアルキル、−(CHC(O)R、−(CHC(O)NR、及び−(CHNSOから選択され、ここに、各々のアルキル、アルケニル、及びアリール基は、場合により、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、及びC〜Cアルキルアリールから選択された1〜5の基によって置換され、ここに、RとRは、独立して互いに結合し、4、5、6、又は7員の窒素含有複素環を形成してよく、この窒素含有複素環は、場合により、オキソ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−CO(O)C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキルアミン、アミノ、ハロゲン、及びハロアルキルからなる群より選択された置換基を有することができ、
【0012】
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、又は−C(O)OC〜Cアルキルであり、ここに、nは、0、1、2、3、又は4であり、mは、1、2、又は3であり、
あるいは、これらの医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はジアステレオマー混合物である。
【0013】
また、本発明は、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに式Iの化合物を含む医薬製剤を提供する。
また、本発明は、肥満と、摂食障害(過食症、拒食症等)、糖尿病、糖尿病性合併症、糖尿病性網膜症、性的/繁殖障害、肥満関連の鬱病、肥満関連の不安、てんかん性発作、高血圧、脳溢血、鬱血性心不全、睡眠障害、アテローム性動脈硬化、脳卒中、代謝性疾患とその徴候、高脂血症、高トリグリセリド血症、高血糖症、高リポタンパク血症、薬物乱用、薬物中毒、強迫性行動障害(イヌの足なめ等)、及び常習行為の例えばギャンブルやアルコール依存症などの関連疾病の治療及び/又は予防方法に関するものであり、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はジアステレオマーの混合物の治療的有効量を投与することを含む。
【0014】
本発明は、肥満と関連疾病に係わる症状を治療、予防、及び/又は改善するための薬物の製造に有用な式Iの化合物を提供する。
もう1つの実施態様において、本発明は、食欲抑制剤として有用な式Iの化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はこれらの混合物を提供する。
【0015】
もう1つの実施態様において、本発明は、締まった筋肉の質量を維持又は損失を最少限にしながら、体重低下を達成する方法を提供するものであり、それを必要とする患者に、式Iの化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はこれらの混合物を投与することを含む。
【0016】
さらにもう1つの実施態様において、本発明は、肥満と関連疾病を治療するための他の有効な治療と組み合わせて、それを必要とする患者に、式Iの化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はこれらの混合物を提供する。
【0017】
本願における用語「肥満」は、「過度に太った」のようなその一般に理解された意味を有し、医療文献と立証小冊子又は公衆衛生機関にて定義する肥満であることの臨床的指摘を含む。例えば、Dorland's Illustrated Medical Dictionary(29版、W.B.Saunders Company、フィラデルフィア、米国)は、肥満を「体内に脂肪が過剰に蓄積した結果としての、骨格と身体の要件の限界を超えた体重増加」と定義する。本発明の化合物の患者に対する適切な投与の決定は、有資格医師又は有資格介護人によってなされるべきであるため、患者は、生得的に、投与する介護人によって適切又は肥満と判断される。
【0018】
本願における用語「患者」は、ヒト、及びヒト以外の動物、例えば、コンパニオンアニマル(イヌやネコ)と家畜を包含する。
肥満と関連疾病の治療、改善、及び/又は予防の好ましい患者はヒトである。
本願における用語「治療する」と「治療」は、これらの一般的に受け入れられた意味、即ち、本願に記載の病的状態又はその続発症の進行又は重症度の予防、禁止、抑制、軽減、改善、遅延、停止、又は逆転を包含する。
【0019】
本願における用語「改善」、「防止」、「の防止」、「予防」、「予防法」、「防止する」は、同義的に使用され、肥満と関連疾病に苦しむ患者におけるそれらに係わる症状の重症度を低下させること、あるいは式Iの化合物の被投与者が本願に記載の何らかの病的状態又はその続発症に陥る又はかかる可能性を低下させることを言う。
【0020】
本願における用語「有効量」は「有効投与量」と同義であり、本願に記載の状態又はその有害な影響を防止、改善、又は治療するための1回以上の投与に十分な式Iの化合物の量、あるいは、本発明の想定内で所望の結果を得るためのオピオイド受容体に拮抗するのに十分な式Iの化合物の量を意味する。
【0021】
本願における用語「医薬的に許容される」は、形容詞として使用され、被投与者の患者に実質的に有害でないことを意味する。
本願における用語「活性成分」は、式Iの化合物、式Iの化合物の組み合わせ、式Iの化合物とオピオイド受容体のコアンタゴニストとの組み合わせ、又は式Iの化合物とそれに加えた別の有効な抗肥満剤、減量剤、もしくは抗糖尿病剤との組み合わせを意味する。
【0022】
医薬製剤における「製剤」、又は「医薬組成物」は、活性成分(上記に定義)、及び担体を構成する又はその他の投与されるときの薬剤成分である不活性成分を含む生成物、並びに、何らかの2つ以上の活性成分の組み合わせ、複合化、又は集合から、又は1つ以上の活性成分の分離から、直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含するものとする。したがって、本発明における医薬製剤は、本発明の化合物と医薬用担体を組み合わせることによって得られる全ての有効な組成物を包含する。また、本発明の医薬製剤は、式Iの化合物と、肥満又は関連疾病の治療及び/又は防止に有用なオピオイド受容体又は他の有効な治療の医薬的に許容されるコアンタゴニストを網羅する。
【0023】
本願における用語「関連疾病」は、肥満である状態によって引き起こされる、悪化される、誘引される、又は付随する症状、疾病、もしくは状態を言う。こうした疾病、状態、又は症状には、限定されるものではないが、摂食障害(過食症、拒食症等)、糖尿病、糖尿病性合併症、糖尿病性網膜症、性的/繁殖障害、肥満関連の鬱病、肥満関連の不安、てんかん性発作、高血圧、脳溢血、鬱血性心不全、睡眠障害、アテローム性動脈硬化、脳卒中、代謝性疾患とその徴候、高脂血症、高トリグリセリド血症、高血糖症、及び高リポタンパク血症が挙げられる。本願における肥満関連の鬱病と肥満関連の不安の用語は、特定の肥満患者の症状であって、恐らく肥満であるとの状態の自覚又は自意識によってもたらされ、恐らく特定の個人、複数の個々人、又は一般大衆による認容又は拒絶の現実の又は感知された観念と相まった、それぞれ鬱と不安の状態である。肥満関連の鬱病と不安は、一般に、肥満又は過体重の根本的状態に付け加えて軽減又は治療されることができ、及び/又は式Iの化合物の投与によって防ぐことができる
【0024】
用語「適切な溶媒」は、進行する反応に不活性であり、反応物質を十分に溶かし、その中で所望の反応をもたらす媒体を与える任意の溶媒又は溶媒混合物を言う。
用語「共通溶媒」は、反応又は混合の前に単独で、反応物又は混合物の2つ以上の成分を十分に溶かすために使用され、2つ以上の試薬又は混合物の成分に共通する溶媒を意味する。
【0025】
用語「窒素含有複素環」は、炭素原子に加えて1、2、又は3の窒素原子を含んで環サイズを完成する、あるいは、適切な数の炭素原子に加えて1つの窒素原子と、酸素と硫黄から選択された1又は2の原子の組み合わせで環サイズを完成する4、5、6、又は7員環の芳香族又は非芳香族の単環又は二環式環系を言う。本発明で使用する窒素含有複素環は、0、1、2、又は3の二重結合を有することができる。
【0026】
用語「C〜Cアルキル」又は「C1−8アルキル」は、1〜8の炭素原子を有するアルキル基のあらゆる基、構造異性体、及び/又は相同体を網羅して言う。用語C〜Cアルキルが、別な基に先行又は前置する場合、用語C〜Cアルキルは、アルキル成分の炭素原子数を限定するに過ぎない。例えば、C〜Cアルキルアリールは、C〜Cアルキル基の置換基を有するアリール基であって、基としてのC〜Cアルキルアリール中の炭素原子数が、事実上、アリール基中の炭素原子数とC〜Cアルキル基中の炭素原子数の合計であることを意味する。同様に、用語「C〜Cアルキルシクロアルキル」は、C〜Cアルキル置換基を有するシクロアルカン基であって、全体の基としてのC〜Cアルキルシクロアルカン自身が、アルキル基又はシクロアルキル基で基質に対して結合する置換基であり得ることを言う。この定義と用法は、C〜C以外の相同体、例えば、C〜C、C〜Cなどにも同様にあてはまる。一般に、必要により結合箇所を明確に示すため、特定の基の隣にダッシュ(−)が配置される。しかしながら、ダッシュが存在しないことは、当業者に知られる自明な結合位置を特段に否定するものではない。
【0027】
用語「シクロアルカン」又は「シクロアルキル」は、3〜8の炭素原子を有するシクロアルカン、即ち、シクロプロパンからシクロオクタンまでを意味する。
本願における用語「ハロ」はハロゲンを指称し、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
用語「ハロアルカン」又は「ハロアルキル」は、1〜8の炭素原子と、価数を考慮して許容される1〜3のハロゲン原子を有するハロアルカンを意味する。例えば、クロロエチル、トリフルオロメチル、2−クロロプロピルなどが挙げられる。
【0028】
本願における用語「アルケニル」は、1又は2の炭素炭素二重結合を有する直鎖又は分枝の炭素原子を指称する。
本願における用語「アルキニル」は、1又は2の炭素炭素三重結合を有する直鎖又は分枝の炭素原子を指称する。
本願における用語「アルコキシ」は、基「O−アルキル」を指称し、ここに、アルキルは先に定義した通りである。
【0029】
本願における用語「アリール」は、ヒュッケルの4n+2のπ電子配置を有する化合物又は基を指称し、例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、ベンゾチオフェン等が挙げられるが、但し、カルバゾール及び他の融合三環構造のものは含まれない。
本願における用語「アロキシ」又は「アリールオキシ」は基「O−アリール」を指称し、ここに、アリールは先に規定した通りである。
【0030】
本願における用語「融合二環式」は、融合したシクロアルカン環系を意味し、ここに、各環は、4〜8の炭素原子を有し(即ち、C〜C16の融合二環)、融合した環系は、0〜3の橋頭炭素原子を有する。融合環の一方又は双方は、0又は1つの二重結合を有することができる。融合二環の例には、限定されるものではないが、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプテニルが挙げられる。
【0031】
本願における用語「複素環式」、「ヘテロシクリル」、又は「複素環」は、同義的に使用されてその通常の意味を有し、特段の規定がなければ、単環、二環、三環、又はスピロ環の複素環基を包含する。本願における用語「複素環」は、特段の規定がなければ、窒素、酸素、又は硫黄から独立して選択された1、2、又は3のヘテロ原子を有することができる。本発明に適用可能な複素環基の例には、限定されるものではないが、ピラニル、ピパラジニル、ピロリジニル、アザパニル、アザフロレニル、イソキノリニル、インドリニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、オキサゾリル、モルホリニル、チオモルホリニル、及びピペリジニルが挙げられる。複素環基の各々は、一置換又は二置換されてよく、とりわけ、規定するようなアルキル、シクロアルキル、アリールなどの置換基で特定されることもできる。さらにまた、置換基は、ピペラジンやピロリジンのように1位置もしくはヘテロ原子に存在することができ、又は炭素原子に存在することができ、あるいは、双方に存在することもできる。
【0032】
本願における用語「保護基」は、分子の反応箇所をマスキングするのに有用な基であって、別な基の反応性を高める又は別な所望の1箇所以上での反応を可能にするための基であり、その後、保護基は除去されることができる。保護基は、通常、限定されるものではないが、−OH、−NH、及び−COOHなどの基を保護又はマスキングするために使用される。適切な保護基は、当業者に公知であり、「Protecting groups in Organic Synthesis, 3rd edition, Greene,T.W.; Wuts,P.G.M.Eds., John Wiley and Sons, NewYork,1999」に記載されている。
【0033】
本願における用語「溶媒和」は、本発明の化合物の1つの形態であり、本発明の化合物の1つの結晶又は複数の結晶が、式Iの化合物と溶媒の化学量論又は非化学量論の量から形成されたことを言う。典型的な溶媒和する溶媒には、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0034】
本発明の化合物が酸性又は塩基性の官能基を有する場合、元の化合物よりも水溶性及び/又はより生理的に適切な種々の塩を形成することができる。代表的な医薬的に許容される塩には、限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどのアルカリ塩、アルカリ土類塩が挙げられる。塩は遊離酸から、塩基を含む溶液中で酸を処理する、又は酸をイオン交換樹脂に接触させることにより首尾よく製造される。
【0035】
医薬的に許容される塩の定義には、本発明の化合物の比較的毒性のない無機・有機の塩基付加塩が挙げられ、例えば、十分な塩基性の窒素含有塩基から誘導されるアンモニウム、第4級アンモニウム、及びアミンのカチオンと本発明の化合物とので形成する塩が挙げられる(例えば「S.M.Berge,etal., 「Pharmaceutical Salts,」 J.Phar.Sci., 66:1-19(1977)」参照)。さらに、本発明の化合物の1つ以上の塩基性基が、適切な有機又は無機酸と反応して形成した塩、例えば、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酸性酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化水素酸塩、カンシラート、炭酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、塩化物、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシラート、フッ化物、フルマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシネート、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヒドロヨージド、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロミド、メチルニトレート、メチルサルフェート、ミュケート、ナプシラート、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロメタンスルホネート、及び吉草酸塩が挙げられる。本発明の目的にとって好ましい塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、重硫酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、酸性酒石酸塩、酢酸塩、及びクエン酸塩が挙げられる。
【0036】
式Iによって示される本発明の化合物は、その位置異性体、立体化学的異性体、又は部位異性体のいずれかで得られることがあるが、これらはいずれも本発明の目的の範囲内である。本発明の特定の化合物は、1つ以上のキラル中心を有することができ、したがって、光学活性形態で存在することができる。同様に、本化合物がアルケニル基又はアルケニレン基を有する場合、本化合物のシスとトランスの異性体形態の可能性がある。ラセミ混合物、及び鏡像異性体又はシス・トランス異性体の混合物などのR異性体、S異性体、及びこれらの混合物は、本発明においても考慮されている。付加的な不斉炭素原子が、アルキル基のような置換基に存在することができる。こうした異性体及びこれらの混合物は、いずれも本発明の範囲内に含まれるものである。特定の立体異性体が必要とされる場合、不斉中心を有して既に溶解した出発物質から立体特異的反応を用い、当該分野でよく知られた方法によって、あるいは、立体異性体の混合物をもたらす方法と公知の方法による以降の分割により調製することができる。例えば、ラセミ混合物をある別な化合物、即ち、キラル分解剤の1つの鏡像異性体と反応させることができる。これは、ラセミ体を立体異性体とジアステレオマーの混合物に変化させ、それらが異なる融点、異なる沸点、及び異なる溶解度を有するため、結晶化のような通常の手段によって分離することができる。
【発明の効果】
【0037】
PCT国際出願WO02/078693A2(2002年10月10日公開)は、認識力障害、年齢に関連した障害、気分障害、精神疾患などの障害を治療するための5−HT受容体の拮抗物質としての次式の化合物を開示しており、
【化5】

ここに、R、R、R、R、及びXは、その中に記載の通りである。しかしながら、本発明の化合物は、肥満と関連疾病の治療及び/又は予防に有用である。また、本発明の化合物は、食欲促進作用の抑制が実証されており、したがって、単独治療における、あるいは、運動や他の有効な食欲抑制又は体重減少薬剤と組み合わせた併用療法における食欲抑制剤として有用である。
【0038】
本発明のある化合物の有効性は、結合シンチレーション近接アッセイ(SPA)や機能GTP−γ−Sアッセイなどのいくつかの生物モデルにおける活性又は作用強度によって実証されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
式Iの化合物は、好ましくは、遊離塩基又は医薬的に許容される塩として存在する。より好ましくは、式Iの化合物の塩酸塩、重硫酸塩、メシル酸塩、又はシュウ酸塩である。
式Iの化合物の好ましい実施態様には、下記のような構造Ia、Ib、Ic、及びIdが挙げられる。
【0040】
【化6】

(Ia)
【化7】

(Ib)
【化8】

(Ic)
【化9】

(Id)
【0041】
基Rと基Rに関して
好ましいR基とR基は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、フェニル、ナフチル、ベンゾチオフェン、及びイソプロピルからなる群より選択される。
また、好ましくは、R基とR基は、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、
【化10】

からなる群より選択され、
これらはそれぞれ、場合により、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cチオアルキル、C〜Cアルキルアミノ、フェニル、C〜Cアルキル置換フェニル、C〜C複素環、又は−C〜Cアルキル複素環からなる群より選択された基で置換され、あるいは、C〜Cアルキル、ハロゲン、C〜Cハロアルキル、C〜Cチオアルキル、C〜Cアルキルアミノ、フェニル、C〜Cアルキル置換フェニル、C〜C複素環、又はC〜Cアルキル複素環から選択された基と結合して、置換又は非置換の二環又は三環を形成し、ここに、nは、好ましくは、1、2、又は3である。
【0042】
また、好ましくは、R基とR基は、互いに又は窒素原子に隣接した1又は2の原子と結合し、
【化11】

からなる群より選択された基を形成し、
これらはそれぞれ、場合により、ハロゲン、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cチオアルキル、−C〜Cアルキルアミノ、フェニル、C〜Cアルキル置換フェニル、C〜C複素環、又は−C〜Cアルキル複素環からなる群より選択で置換される。
【0043】
好ましいRとR’基
好ましいRは水素である。好ましいR’基は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、フェニル、及びベンジルから選択される。
【0044】
好ましいR
好ましいR基は、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキルアミノ、−N(C〜Cアルキル)、−NHC〜Cアルキル、−C〜CアルキルN(C〜Cアルキル)、−C〜CアルキルNHC〜Cアルキル、フェニル、−C〜Cアルキルフェニル、−C〜Cアルキルシクロアルキル、及びC〜Cチオアルキルからなる群より選択される。より好ましくは、R基は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、チオメチル、フェニル、及びベンジルからなる群より選択される。最も好ましくは、R基は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、及びベンジルからなる群より選択される。
【0045】
基RとRは、それぞれの環基体上の複数の置換基として存在することができるが、本発明の好ましい実施態様は、各々のRとRが独立して、1つずつ又は二重にそれぞれの環基質上で置換されたものを含む。
【0046】
好ましいR
好ましいR基は、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキルアミノ、−N(C〜Cアルキル)、−NHC〜Cアルキル、−C〜CアルキルN(C〜Cアルキル)、−C〜CアルキルNHC〜Cアルキル、フェニル、−C〜Cアルキルフェニル、−C〜Cアルキルシクロアルキル、及びC〜Cチオアルキルからなる群より選択される。より好ましくは、R基は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、チオメチル、フェニル、及びベンジルからなる群より選択される。最も好ましくは、R基は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメトキシ、及びベンジルからなる群より選択される。
【0047】
好ましいRとR
好ましくは、RとR基は、水素、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、イソプロピル、フェニル、及びベンジルからなる群より独立して選択される。
また、好ましい式Iの化合物において、RとRは、独立して、それらが結合している窒素原子とともに、又は窒素原子に隣接した1又は2の原子とともに互いに結合し、4、5、6、又は7員の窒素含有複素環を形成し、その窒素含有複素環は、場合により、オキソ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、フェニル、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−CO(O)C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、及びハロアルキルからなる群より選択された置換基を有することができる。
【0048】
qの好ましい値
A環がピペリジニルのとき、qは好ましくは0である。A環がシクロヘキシルのとき、Pは好ましくは1である。
【0049】
好ましいE基
最も好ましいE基は酸素原子(O)である。
好ましいA環
好ましいA環はシクロヘキシル又はピペリジニルである。最も好ましいA環はシクロヘキシルである。
【0050】
好ましいB環
好ましいB環は、フェニル環、ピラジン環、ピリミジン環、又はピリジン環である。最も好ましいB環は、フェニル、ピラジン、又はピリジン環である。
v、n、mの好ましい値
vの好ましい値は、0、1、又は2である。
nの好ましい値は、1、2、又は3である。
mの好ましい値は、1又は2である。
【0051】
本発明による好ましい化合物は、
±6−{4−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−エチルアミノ]−シクロヘキシルオキシ}−ニコチンアミド、
【化12】

±6−[4−(3−メチル−ブチルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ニコチンアミド、
【化13】

【0052】
±6−[4−(2−チオフェン−2−イル−エチルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ニコチンアミド、
【化14】

±4−[4−(3−フェニル−プロピルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ベンズアミド、
【化15】

トランス−6−(4−ベンジルアミノ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチンアミド、
【化16】

6−(1−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド、
【化17】

【0053】
6−(1−シクロプロピルメチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド、
【化18】

6−[1−(1H−インドール−2−イルメチル)−ピペリジン−4−イルオキシ]−ニコチンアミド、
【化19】

4−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンズアミド、
【化20】

4−[1−(3−フェニル−プロピル)−ピペリジン−4−イルオキシ]−ベンズアミド、
【化21】

及び、これらの医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ジアステレオマーもしくはジアステレオマーの混合物からなる群より選択された化合物である。
【0054】
本発明の化合物の調製
A環が随意に置換されたシクロヘキシル基である本発明の化合物とその中間体を調製するための典型的なプロトコルを、下記のスキーム1に示す。
スキーム1
【化22】

【0055】
スキーム1によると、出発物質3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカノン(1)とその類似体が、メタノール系溶媒中でポリマー支持のホウ化水素との反応により、対応するアルコールの3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−オール(2)まで還元される。当業者は、別な還元剤と還元様式(例、ポリマー支持なし)が、化合物2とその類似体を得るために使用できることに気付く。ケトン1とその類似体は、例えば、Aldrich Chemical Co(Milawaukee、米国)のような化学薬品業者から購入することができる。次いで、化合物の3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−オール(2)が、ハロニコチノニトリルもしくはハロベンゾニトリル又は別なB環源と結合し、酸素結合化合物3又はその類似体が得られる。例えば、随意に置換された4−クロロニコチノニトリルが、塩基性条件下で化合物2と反応し、酸素結合化合物3が得られる。塩基性条件には、無機・有機塩基から選択された塩基の使用が挙げられる。有用な無機塩基の例には、限定されるものではないが、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸セシウムが挙げられる。有用な有機塩基の例には、限定されるものではないが、カリウムヘキサメチルジシラジド、n−ブチルリチウム、ヘキサメチル燐トリアミド(HMPT)などが挙げられる。塩基性条件は、溶媒、好ましくは有機溶媒の存在によって補完される。好ましい有機溶媒には、プロトン性溶媒又は極性非プロトン性溶媒が挙げられる。最も好ましい溶媒には、ジメチルホルムアミド、メタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシドが挙げられる。最も好ましい塩基性反応条件は、約60〜100℃の温度におけるジメチルアセトアミド中の炭酸カリウムの使用を伴う。化合物3の保護基(ジメチルアセタール基)が、例えば、塩化水素酸のような酸性基との反応によって除去され、化合物4が得られる。化合物4は、所望のアミンによって還元的にアミノ化され、本発明の化合物であるアミノ化合物5が得られる。この還元的アミノ化は、中間のイミン中間体の安定性に対応し、2つの工程で又は1つの工程で行うことができる。典型的に、化合物4は、溶媒としてのメタノール中で第1級又は第2級アミンと反応する(示した第1級アミン)。モレキュラーシーブを添加し、イミン生成の効率を高めることができる。第2工程において、還元剤、典型的に、水素化ホウ素ナトリウム又は他の水素化物の還元剤を反応混合物に添加する。反応の進行は、TLC、HPLC、LC−MS、又は当業者に公知の分析技術によってモニターし、各工程の実質的な完了と次の試薬の添加タイミングを定めることができる。得られるアミノニトリル化合物5は、シアノ基で加水分解され、第1級アミド6が得られる。ニトリルの加水分解は、好ましくは、過酸化水素と炭酸ナトリウムのような無機塩基の反応によって、好ましくは、加圧下で行われる。上記のニトリル加水分解を行うのに適切な溶媒は、DMSO又はDMFである。
【0056】
1つ以上の置換基のR基を有する化合物3と5の類似体は、適切に置換された出発物質を用いて又は置換基官能性の相互交換によって、調製することができる。例えば、A又はB環に結合した最初の随意の置換基は、適切に保護・脱保護されることができ、所望の末端置換基を得ることができる。あるいは、最初の置換基は、公知の1、2、又は3つの工程によって、別な所望の末端置換基に転化させることができる。
【0057】
スキーム2に例示されたもう1つのプロトコルは、環Bの源としてベンズアミドの使用を示す。
スキーム2
【化23】

【0058】
アミド出発物質の使用は、B環がピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、又はピリミジニル基である本発明の化合物にとって特に好ましい。カルボキサミド又は複素環アミドは、B環の適切な代替が市販されている出発物質の一部として導入することができ、又は公知の方法によって調製することができる。例えば、ピラジンカルボキサミド、ニコチンアミド、又はそれらの置換された類似体の使用は、式3a又は6aの化合物の置換された誘導体又は類似体をもたらし、これらもまた本発明の化合物である。第1級と第2級のアミンは、スキーム2に示すように、化合物4aを化合物6aに転化する還元性アミノ化に有用である。還元性アミノ化に有用なアミンの例には、限定されるものではないが、フェネチルアミン、3−メチルブチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ベンジルアミン、及びイソペンチルアミンが挙げられる。
【0059】
本願で開示するこのスキーム及びその他のスキームによって調製される、又は当業者に公知の化合物は、例えば、スキーム3に示すように、さらに酸付加塩に転化させることができる。
スキーム3
【化24】

【0060】
スキーム3は、本発明の化合物である塩酸塩12aの調製を示し、ここに、RNHは、3−メチルブチルアミン又は他の第2級アミン基であり、RとRは、いずれも水素である。示したように、出発物質7は、第3級ブトキシカルボニル無水物(Boc無水物)を用いて窒素原子で保護された4−ヒドロキシピペリジンである。Boc保護ピペリジノール(7)は、所望により、ハロベンゾニトリル、ハロニコニトリル(示した6−クロロ−ニコチノニトリル(8))、ハロピリダジノニトリル、又はこれらのカルボキサミドのようなB環源と反応する。エーテル結合(9)を形成するカップリング反応は、DMA、DMF、又はDMSOのような適切な溶媒中の水素化ナトリウム又は炭酸ナトリウムのような塩基の存在下で行われる。次いで、得られるエーテル(9)のニトリル基が加水分解され、第1級アミドを形成する。ニトリルの加水分解は、過酸化水素と炭酸ナトリウムのような塩基の存在下で行われる。得られたアミド10は、酸性条件下で加水分解され、脱保護された化合物11を生成する。Boc基の脱保護は、HCl、TFA、又はHFを用いて最も適切に行われる。Boc保護・脱保護の手順は、当業者に公知であり、「Protecting groups in Organic Synthesis, 3rd edition, Greene,T.W.; Wuts, P.G.M.Eds., John Wiley and Sons, NewYork,1999」などの有機化学書籍類に全般的に記載されている。また、特定の手順は、本願の実験の項に見ることができる。化合物11の遊離ピペリジニルのNH基は、所望のアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アルキル複素環、又は本発明の範囲内のその他の置換基を有するアルデヒドと反応することができ、所望のN置換されたピペリジニル化合物12を生成することができる。
【0061】
化合物12をエタノールに溶かし、若干過剰(例えば、塩基箇所の数を基準に1.0〜1.5モル当量)の1Nの塩化水素酸を、約0℃から室温の範囲の温度で添加する。この混合物は、冷却あり又はなしで、時間をかけて結晶化させることができ、あるいは、蒸発させて塩酸塩を得ることができ、これはさらに、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、又はこれらの混合物のような適切な有機溶媒を用いた倍散によって精製することができる。あるいは、反応が完了する又は溶液が飽和するまで、化合物12の低温溶液の中に無水HClをバブリングし、その混合物を適切に調整して化合物12aを得ることができる。当業者は、酸付加塩を調製、分離、及び精製するための微妙な技法や種々の技術に気付き、必要以上の実験を行うことなく、特定の基質に対して適切な方法を用いて、同等の結果を得るはずである。
【0062】
スキーム4に、本発明の化合物を調製するための改良プロトコルが示してあり、ここでは、エーテル結合を形成するための求核置換反応が、合成の早期ではなく終期に行われる。
スキーム4
【化25】

【0063】
スキーム4によると、出発物質は、Boc無水物を用いて窒素で保護された、適切に置換されたヒドロキシピペリジン(7)である。このBoc保護ヒドロキシピペリジンは購入することができる。Boc保護ヒドロキシピペリジン7は、4−フルオロベンゾニトリルのようなB環源と反応し、エーテル結合化合物9を生成する。この他のB環源には、例えば、フェニル又はピリジンカルボキサミド、ベンゾニトリル又はピリジノ−ニトリル、及びこれらの類似体が挙げられる。カップリング反応を行う方法は先に記載している。化合物9は、ニトリル基を介してアミドに加水分解され、上述のようにBoc基を除去することによって脱保護され、最後に還元的にアミノ化されて、本発明の化合物を生成する。あるいは、Boc基を除去することによってエーテル化合物9が脱保護され、化合物13を生成することができる。保護基は、当業者に公知の手順を用い、塩化水素酸又はトリフルオロ酢酸を使用して除去することができる。当業者は、式13の化合物の適切に置換された類似体は、所望の置換基に転化することができる適切に置換された出発物質又はその代替物質を用いて開始することにより調製できることに気付く。
【0064】
化合物13を生成させるための化合物9の脱保護の後、N置換ピペリジニル化合物14を生成させる還元性アミノ化が行われる。N置換ピペリジニル化合物14は、最終的に、ニトリル基が加水分解され、本発明の化合物である化合物15を生成する。
vが1である式Iの化合物は、下記に示す合成スキームにしたがって作成することができる。
【0065】
スキーム5
【化26】

スキーム5に示すように、4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(Aldrich Chemical Company(Milwaukee、米国)又は他のファインケミカル供給業者から商業的に入手可能)は、ハロベンゾニトリル又はハロニコニトニトリルのようなB環源と反応し、エーテル結合した生成物13を形成することができる。エーテル結合を形成するカップリング反応が、DMA、DMF、又はDMSOのような適切な溶媒中の水素化ナトリウム又は炭酸カリウムのような塩基の存在下で行われる。次いで、カルボン酸エステルを選択的に還元し、対応するアルデヒド14を得る。この還元は、例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL−H)のような水素化物を用いて行われる。次いで、アルデヒド14が、所望のアミノ部分構造によって還元的アミノ化され、アミン15を生成する。次いで、得られたアミノ前駆体のニトリルが加水分解され、本発明の化合物16を生成する。
【0066】
式Iの化合物を調製するためのさらにもう1つのプロトコルがスキーム6に示されている。
スキーム6
【化27】

【0067】
スキーム5のアルデヒド14が、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム又はカリウムヘキサメチルジシラジドなどの強塩基の存在下で、メトキシメチルジフェニルホスフィンオキシド又はメトキシメチルトリフェニホスホニウムクロリドと反応し、ビニルメチルエーテル17を生成する。次いで、ビニルメチルエーテル17が、酸性条件下で加水分解され、高級アルデヒド18を生成する。次いで、アルデヒド18が、先に掲げて説明したように、所望の式Iの化合物20に転化される。
【0068】
本発明の使用方法
上述のように、本発明の化合物は、μ、κ、及び/又はδオピオイド受容体におけるアゴニストの作用を阻害するのに有用である。そのようなものとして、本発明は、哺乳類におけるμ、κ、δ受容体又は受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)を阻害する方法もまた提供するものであり、その哺乳類に、式Iの化合物の受容体阻害量を投与することを含む。
【0069】
本願における用語「受容体阻害量」は、哺乳類に投与した後に、μ、κ、δ受容体又はこれらの受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)を阻害するのに必要な式Iの化合物のμ、κ、δ受容体又はこれらの受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)を阻害するのに必要な量を意味する。
【0070】
式Iの化合物又はこれらの組み合わせは、広い投与量の範囲にわたって有効である。例えば、1日あたりの投与量は、一般に、体重1kgあたり約0.05〜約250mg/kgの範囲内である。大人のヒトの治療においては、1回又は分割投与において、約0.5〜約100mg/kgの範囲が好ましい。ここで、実際に投与される化合物の量は、治療されるべき症状、投与されるべき化合物の選択、年齢、体重、個々の患者の反応、患者の症状の重症度、及び投与の選択されたルートなどの関連状況に照らして、医者によって決定されるものと理解すべきである。したがって、上記の投与量の範囲は、多少なりでも本発明の範囲を限定するものではない。本化合物は、経口、経皮、皮下、舌下、鼻腔内、筋肉内、及び静脈内ルートのような種々のルートによって投与することができる。
【0071】
脳において、いろいろな生理的機能が、μ、κ、又はδ受容体もしくは受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)に支配され又は影響されることが実証されている。そのようなものとして、本発明の化合物は、摂食障害、オピオイド過剰摂取、憂うつ、喫煙、アルコール依存症、性的機能障害、ショック、脳卒中、脊髄損傷、及び頭部外傷のようなこれらの受容体又はその組み合わせが関与する障害を治療する能力を有するものと考えられる。また、そのようなものとして、本発明は、μ、κ、δ受容体又はこれらの受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)におけるアゴニスト作用を阻害することによる上記障害の治療方法を提供する。本発明の化合物は、μ、κ、δ受容体又はこれらの受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)を阻害する化合物の能力を測定するオピオイド受容体結合アッセイにおいて、優れた活性を呈することが見出されている。
【0072】
GTP−γ−S結合アッセイ
SPAに基づくGTP−γ−Sアッセイフォーマットは、従来のオピオイド(Emmerson et al.,J.PharmExpTher 278,1121,1996; Horng et al., Society for Neuroscience Abstracts,434.6,2000)とムスカリン(DeLapp et al.,JPET289, 946,1999)アッセイフォーマットに基づいて開発された。20mMのHEPES、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT、及び1mMのEDTAの中に膜を再懸濁させた。50mLのGTP−γ−[35S]、化合物、膜サスペンジョン(20μg/ウエル)、及びコムギ胚芽凝集素をコートしたSPAビーズ(1mg/ウエル)を、透明な底の96ウエルアッセイプレートに添加した。アッセイプレートに添加する前に、膜溶液にGDP(200mM)を添加した。プレートをシールし、室温で4時間にわたってインキュベートした後、終夜にわたって冷蔵庫に入れ、ビーズを沈降させた。4℃において信号安定性が60時間を超えることが測定された。プレートを室温まで暖め、Wallac Microbetaシンチレーションカウンターで計測した。拮抗剤アッセイのため、次の濃度、即ち、1マイクロモルの(MOR)DAMGO、30nMの(DOR)DPDPE、300nMの(KOR)U69593で特定のアゴニストを添加した。Kb’sをCheng-Prusoffの式によって求めた(「Cheng and Prusoff, Biochem. Pharmacol. 22,3099,1973」参照)。GTP−γ−S結合アッセイにおける本発明の化合物の代表的なサンプルについて得られた結果を下記の表1に示す。
【0073】
インビトロの拮抗作用GTP−γ−S結合アッセイ
【表1】

【0074】
エキソビボ受容体結合
インビボの作用強度と有効性に対するインビトロの結合親和性と拮抗剤作用強度を橋かけするため、本発明者は、ラット脳におけるエキソビボ受容体結合アッセイを開発した。このアッセイは、化合物処理に対する、媒体受け入れ動物から取り出した脳組織における高親和性で非選択的なオピオイド受容体放射性リガンド(3Hジプレノルフィン)の関連(結合)における差異を測定する(3Hジプレノルフィンの結合が少ない=オピオイド受容体との化合物関連が大きい)。エキソビボ受容体結合アッセイを用いた検討は、活性の間で(作用強度と活性期間)正の相関を実証しており、これはまた、食餌が引き起こした肥満ラットにおける24時間有効性にも関係する。
【0075】
方法
オピオイド受容体のエキソビボ結合アッセイは、化合物の経口投与の後、高密度のμ、δ、κ受容体を含む脳の領域であるラットの線条体/側坐核における3Hジプレノルフィンの結合を測定する(μ、δ、κ受容体について0.1〜0.4nMの親和性の放射性リガンド)。実験的に、化合物又は媒体の0.7mg/kg、p.o.のスクリーニング用量をラットに投与する。化合物投与から6時間後、その動物を屠殺し、線条体/側坐核を取り出し、10体積(重量/体積)の結合緩衝剤の中でホモジナイズする。次いで、30分間にわたって飽和濃度の3Hジプレノルフィンを用い、ホモゲネート結合アッセイにそのホモゲネートを使用する。その均質化とアッセイは4℃で行い、アッセイのインビトロ結合部分における化合物再分散を最少限にする。結果は、マイクロモル(μM)における特定の結合定数Kiとして報告する(表2)。
【0076】
SPA結合親和性アッセイKi(μM)
【表2】

【0077】
製剤
本発明の化合物は、好ましくは、医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、及び本発明の化合物を含む医薬製剤の形態で提供される。こうした組成物は、約0.1重量%〜約90.0重量%で本発明の化合物を含む(活性成分)。このようなものとして、本発明は、本発明の化合物、及びその医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬製剤もまた提供する。
【0078】
本発明の組成物を製造するにおいて、活性成分は、通常、担体と混合され、又は担体で希釈され、又はカプセル、小袋もしくはその他の容器の形態であることができる担体の中に封入される。担体が希釈剤として役立つ場合、これは、活性成分のビヒクル、賦形剤、又は媒体として作用する固体、半固体、又は液体材料であることができる。即ち、本組成物は、錠剤、ピル、粉末、薬用キャンデー、小袋、カチェット、エリキシル剤、エマルジョン、溶液、シロップ、サスペンジョン、エアロゾル(固体として又は液体媒体中で)、及び軟質・硬質ゼラチンカプセルの形態であることができる。
【0079】
適切な担体、賦形剤、及び希釈剤の例には、乳糖、ブドウ糖、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、トラガカント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル−及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、及び鉱油が挙げられる。また、製剤は、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、甘味剤、又は香料を含むことができる。本発明の製剤は、当該分野でよく知られた手順を採用することにより、患者に投与した後、活性成分の迅速、持続、又は遅延放出を提供するように処方することができる。
【0080】
経口投与に関し、本発明の化合物である活性成分は、担体及び希釈剤と混合され、錠剤に成形され又はゼラチンカプセルに封入されることができる。
本組成物は、好ましくは、単位投与量形態に製剤され、各々の投与量が、約1〜約500mg、より一般的には、約5〜約300mgの活性成分を含む。用語「単位投与量形態」は、ヒト被検者その他の哺乳類に一回の投与量として適する物理的に分離した単位を指称し、各々の単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質とともに適切な医薬担体を含む。
【0081】
本発明の作用をより十分に例証するため、以下の処方例が提供される。これらの例は、説明のために過ぎなく、本発明の範囲を限定するものではない。これらの処方は、本発明の任意の化合物を活性成分として採用することができる。
【0082】
処方1
下記の成分を用いて硬質ゼラチンカプセルを調製する。
【表3】

上記の成分を混合し、460mgの量で硬質ゼラチンカプセルの中に充填する。
【0083】
処方2
各々が20mgの薬剤を含むカプセルを次のようにして製造する。
【表4】

活性成分、セルロース、スターチ、及びステアリン酸マグネシウムを配合し、篩45メッシュ(米国)を通過させ、硬質ゼラチンカプセルの中に充填する。
【0084】
処方3
各々が100mgの活性成分を含むカプセルを次のようにして製造する。
【表5】

上記の成分を十分に混合し、空のゼラチンカプセルの中に入れる。
【0085】
処方4
各々が10mgの活性成分を含む錠剤を次のようにして調製する。
【表6】

【0086】
活性成分、スターチ、及びセルロースを篩45メッシュ(米国)に通し、十分に混合する。ポリビニルピロリドンの溶液を、得られた粉末と混合した後、篩14メッシュ(米国)に通す。このようにして製造した顆粒を50〜60℃で乾燥し、篩18メッシュ(米国)に通す。次いで、先に篩60メッシュ(米国)に通しておいたナトリウムカルボキシメチルスターチ、ステアリン酸マグネシウム、及びタルクをこの顆粒に添加し、混合した後、錠剤機で圧縮し、重さ100mgの錠剤を生成する。
【0087】
処方5
下記の成分を用いて錠剤処方を調製することができる。
【表7】

成分を配合・圧縮して、各重量が665mgの錠剤を製造する。
【0088】
処方6
5mLの用量あたり5mgの薬物を各々が含有するサスペンジョンを次のようにして製造する。
【表8】

薬物は、篩45メッシュ(米国)に通し、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びシロップと混合し、スベスベしたペーストを作成する。安息香酸溶液、香料、及び着色料を若干の水で希釈し、撹拌しながらペーストに添加する。次いで、十分な水を添加し、必要な体積を得る。
【0089】
処方7
次の成分を含むエアロゾル溶液を調製する。
【表9】

活性化合物をエタノールと混合し、その混合物を一部のPropellant 22に添加し、−30℃まで冷やし、充填装置に移す。次いで、必要量をステンレス鋼容器に供給し、Propellantの残りの量でさらに希釈する。次いで、バルブ装置をその容器に装着する。
【実施例1】
【0090】
±6−{4−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−エチルアミノ]−シクロヘキシルオキシ}−ニコチンアミド
【化28】

【0091】
工程1
3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−オールの調製
【化29】

メタノール(30mL)中で3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−オン(Aldrich、750mg、3.78ミリモル)とポリマー支持のホウ化水素(Aldrich、3026mg、7.56ミリモル)を混合する。得られた混合物を終夜にわたって回転により振とうする。反応混合物を濾過し、濾過液を濃縮する。残留物を塩化水素酸0.1Mで洗浄し、EtOAcで抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。
【0092】
工程2
6−(3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−ニコチノニトリルの調製
【化30】

DMF(2.1mL)中の3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−オール(1445mg、7.22ミリモル)の溶液をDMF(8.6mL)中の水素化ナトリウム(433mg、10.82ミリモル)のサスペンジョンに滴状で添加する。反応混合物を室温で1時間にわたって撹拌した後、撹拌しながら50℃で20分間にわたって加熱する。DMF(4.5mL)中の6−クロロ−ニコチノニトリル(1200mg、8.66ミリモル)の溶液を滴状で添加する。60℃での加熱と撹拌を終夜にわたって継続する。反応混合物を濃縮してDMFを除去する。残留物を水(15mL)で洗浄し、EtOAc/ヘキサン(20mL)で抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。フラッシュクロマトグラフィ(溶出剤CHCl/ヘキサン=2/1)による残留物の精製は、表題の化合物2000mg(収率92%)を与える。
【0093】
工程3
6−(4−オキソ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチノニトリルの調製
【化31】

塩化水素酸(1.0M水溶液、20mL)に、アセトン(25mL)中の6−(3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−ニコチノニトリル(2000mg、6.61ミリモル)の溶液を混合する。室温で2時間にわたって撹拌した後、40〜50℃で1時間撹拌する。この反応混合物を濃縮する。残留物をEtOAc/ヘキサン(25mL)とKCO(飽和水溶液、20mL)の間で分割する。有機層を水、ブラインで洗浄し、これを硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。残留物をEtOAc/ヘキサン(1/4)で倍散して白色固体を生成させ、これをフラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン=1/4)でさらに精製し、白色固体として1010mg(収率71%)を与える。
【0094】
工程4
6−{4−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−エチルアミノ]−シクロヘキシルオキシ}−ニコチノニトリルの調製、NE4−A05445−035
【化32】

メタノール(4mL)中で、先に得られた6−(4−オキソ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチノニトリル(200mg、0.925ミリモル)、2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−エチルアミン(Aldrich、125mg、0.971ミリモル)、及びひとすくいのモレキュラーシーブ3Åを混合する。反応混合物を終夜にわたって撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウム(70mg、1.85ミリモル)を添加する。撹拌を終夜にわたって継続する。反応混合物をSCXカラムに装填し、メタノールで洗浄し、アンモニア/メタノール(2.0M)で溶出することによって精製する。2回のフラッシュクロマトグラフィ(40/1のCHCl/メタノール中のアンモニア)による残留物の精製は、黄白色オイルとして表題の化合物199mg(65%)を生成する。
【0095】
工程5
先に得られた6−{4−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−エチルアミノ]−シクロヘキシルオキシ}−ニコチノニトリル(199mg、0.604ミリモル)と炭酸カリウムをDMSO(4mL)中で混合する。反応混合物を0℃まで冷却した後、過酸化水素(0.181mL)を滴状で添加する。反応混合物を室温で3時間にわたって撹拌する。この混合物を水に注ぐ。沈殿物を濾過し、メタノールに再溶解する。濃縮し、SCXカラムを通して精製し、表題の化合物を生成する。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=348.3(M+1);HNMR(CDCl):8.62(s,1H)、8.04(m,1H)、6.75(m,1H)、6.01(bs,2H)、5.32(bs,1H)、5.07(m,1H)、3.97(dd,J=11.0と4.0Hz,2H)、3.40(t,J=11.4Hz,2H)、2.73〜2.54(m,3H)、2.21〜2.03(m,3H)、1.79〜1.28(m,12H)
【実施例2】
【0096】
±6−[4−(3−メチル−ブチルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ニコチンアミド
【化33】

実施例1と同様な方法を用い、表題の化合物を与える(199mg、96%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=306.3(M+1);HNMR(CDCl):8.66(s,1H)、8.13〜8.10(m,1H)、7.96(bs,1H)、7.39(bs,1H)、6.81(m,1H)、5.17(s,1H)、5.00(m,1H)、2.49(m,3H)、2.06〜1.14(m,14H)、0.88(t,J=6.6Hz,6H)
【実施例3】
【0097】
±6−[4−(2−チオフェン−2−イル−エチルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ニコチンアミド
【化34】

実施例1と同様な方法を用い、表題の化合物を得る(203mg、87%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=346.1(M+1);HNMR(CDCl):8.61(s,1H)、8.05〜8.00(m,1H)、7.17(m,1H)、6.96(m,1H)、6.87(s,1H)、6.98〜6.95(m,1H)、6.03(bs,2H)、5.31〜5.04(m,1H)、3.07〜2.96(m,4H)、2.67〜2.55(m,1H)、2.20〜2.00(m,3H)、1.78〜1.26(m,6H)
【実施例4】
【0098】
4−[4−(3−フェニル−プロピルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ベンズアミド
【化35】

【0099】
工程1
4−(3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−ベンゾニトリル
【化36】

DMF(2.0mL)中の3,3−ジメチル−1,5−ジオキサ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−オール(NE4−A05445−029、1377mg、6.88ミリモル)の溶液をDMF(8.0mL)中の水素化ナトリウム(412mg、10.32ミリモル)のサスペンジョンに滴状で添加する。反応混合物を室温で1時間にわたって撹拌した後、撹拌しながら、50℃で20分間にわたって加熱する。DMF(4.2mL)中の4−フルオロ−ベンゾニトリル(1000mg、8.26ミリモル)の溶液を滴状で添加する。60℃での加熱と撹拌を2時間にわたって継続する。反応混合物を濃縮してDMFを除去する。残留物を水(15mL)で洗浄し、EtOAc/ヘキサン(20mL)で抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。残留物をフラッシュクロマトグラフィ(溶出液CHCl/ヘキサン=2/1)で精製し、表題の化合物xxxmg(収率xx%)を与える。
【0100】
工程2
4−(4−オキソ−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾニトリル
【化37】

塩化水素酸(1.0M水溶液、20mL)に、アセトン(25mL)中の溶液を添加する。室温で2時間にわたって撹拌した後、40〜50℃で1時間にわたって撹拌する。反応混合物を濃縮する。残留物をEtOAc/ヘキサン(25mL)とKCO(飽和水溶液、20mL)の間で分割する。有機層を水、ブラインで洗浄する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。残留物をEtOAc/ヘキサン(1/4)で倍散して白色固体を生成させ、これをフラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン=1/4)でさらに精製し、白色固体としてmg(収率%)を与える。
【0101】
工程3
4−(4−オキソ−シクロヘキシルオキシ)−ベンズアミド
【化38】

先に得られた4−(4−オキソ−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾニトリル(100mg、0.464ミリモル)とDMSO(23mL)中のKCO(32mg、0.232ミリモル)を混合する。この反応混合物を0℃まで冷却し、過酸化水素(0.139mL)を添加する。この反応混合物を室温で4時間にわたって撹拌する。この反応混合物を水(15mL)でクエンチする。EtOAc/ヘキサン=2/1(3×20mL)で抽出する。硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。残留物をフラッシュクロマトグラフィ(メタノール2.0M中の20/1のCHCl/アンモニア)で精製し、表題の化合物を生成する(40mg、37%)。
【0102】
工程4
4−(4−オキソ−シクロヘキシルオキシ)−ベンズアミド(20mg、0.085ミリモル)、3−フェニル−プロピルアミン(11mg、0.085ミリモル)、トリアセトキシホウ化水素(23mg、0.111ミリモル)、及びCHCl(1mL)中の酢酸(5μL、0.085ミリモル)を混合する。終夜にわたって撹拌する。SCXカラムで精製する(メタノール2.0M中のアンモニア)。残留物をEtOAc/ヘキサン=1/1で倍散し、白色粉末を生成する(25mg、86%)。
【実施例5】
【0103】
トランス−6−(4−ベンジルアミノ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチンアミド
【化39】

【0104】
工程1
4−ベンジルアミノ−シクロヘキサノール
【化40】

シールド管の中でメタノール(75mL)中のトランス−4−アミノ−シクロヘキサノール(2.0g、17.4ミリモル)を混合した後、ベンズアルデヒド(1.85mL、18.23ミリモル)を添加する。反応混合物を撹拌しながら、2時間にわたって70℃に加熱する。次いで、反応物を冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(2.46g、65.1ミリモル)を分割して添加する。終夜にわたって撹拌する。元の体積の1/3まで溶媒を蒸発させる。反応混合物をEtOAc(50mL)と水(40mL)の間で分割する。水系層をEtOAc(20mL)で再抽出する。有機層を合一し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。濾過と濃縮により表題の化合物を生成し(3.5g)、これを次の工程に直接使用する。
【0105】
工程2
6−(4−ベンジルアミノ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチノニトリル
【化41】

DMF(3mL)中のNaH(196mg、4.92ミリモル)のサスペンジョンに、DMF(2mL)中の4−ベンジルアミノ−シクロヘキサノール(675mg、3.28ミリモル)の溶液を滴状で添加する。室温で45分間にわたって撹拌した後、50℃でさらに40分間にわたって撹拌する。DMF(1.8mL)中の6−クロロ−ニコチノニトリル(500mg、3.61ミリモル)の溶液を滴状で添加し、60℃で終夜にわたって撹拌する。反応混合物を冷却し、溶媒を蒸発させる。残留物を水(10)で洗浄し、EtOAc/ヘキサン(2/1、15mL)で抽出する。有機層を合一し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。濾過し、濃縮する。得られた残留物をSCXカラムを通して精製する。クロマトグラフィによってさらに精製し(CHCl/NH(メタノール中の2.0M)20/1)、表題の化合物を生成する(890mg、88%)。
【0106】
工程3
DMSO(25mL)中の6−(4−ベンジルアミノ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチノニトリル(890mg、2.89ミリモル)の溶液にKCO(200mg、1.44ミリモル)を添加する。この反応物を0℃まで冷却し、過酸化水素(0.87mL)を添加する。得られた反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌する。次いで、この反応混合物を水(25mL)でクエンチし、EtOAc(30mL)で抽出する。硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。残留物をSCXクロマトグラフィによってさらに精製し、表題の化合物を生成する(700mg、74%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=326.0(M+1);HNMR(CDCl):8.61(s,1H)、8.04(m,1H)、7.36(m,5H)、6.74(d,J=8.8Hz,1H)、5.10(m,1H)、3.87(s,2H)、2.64(m,1H)、2.22〜2.07(m,4H)、1.58〜1.33(m,4H)
【実施例6】
【0107】
6−(1−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド
【化42】

【0108】
工程1
4−(5−シアノ−ピリジン−2−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【化43】

DMF(7.2mL)中のNaH(360mg、9.02ミリモル)のサスペンジョンにDMF(1.8mL)中の4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1210mg、6.01ミリモル)の溶液を滴状で添加する。室温で45分間にわたって撹拌した後、50℃でさらに40分間にわたって撹拌する。DMF(3.6mL)中の6−クロロ−ニコチノニトリル(1000mg、7.22ミリモル)の溶液を滴状で添加し、終夜にわたって60℃で撹拌する。反応混合物を冷却し、溶媒を蒸発させる。残留物を水(10)で洗浄し、EtOAc/ヘキサン(2/1、15mL)で抽出する。有機層を合一し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。濾過・濃縮する。得られた残留物をSCXカラムを通して精製する。クロマトグラフィによってさらに精製し(CHCl/NH(メタノール中の2.0M)20/1)、表題の化合物を生成する(1.73g、94%)。
【0109】
工程2
4−(5−カルバモイル−ピリジン−2−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【化44】

DMSO(50mL)中の4−(5−シアノ−ピリジン−2−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1630mg、5.38ミリモル)の溶液に炭酸カリウム(371mg、2.69ミリモル)を混合する。この溶液を0℃まで冷却し、過酸化水素(1.61mL)をゆっくり添加する。10分間の後、この反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌する。水(25mL)を添加し、CHCl(30mL)で2回にわたって抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過・濃縮し、白色固体として表題の化合物を生成する(1669mg、97%)。
【0110】
工程3
6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド塩酸塩
【化45】

テトラヒドロフラン(25mL)中の4−(5−カルバモイル−ピリジン−2−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1559mg、4.85ミリモル)を塩化水素酸(ジオキサン中の4.0M、15mL)と混合する。得られた反応混合物を48時間にわたって撹拌する。白色沈殿物を濾過し、EtOAc(10mL)で洗浄する。この白色固形物をメタノールに再度溶かし、濃縮し、表題の化合物を生成する(1195mg、89%)。
【0111】
工程4
CHCl(1.5mL)中で6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド(100mg、0.45ミリモル)にナトリウムトリアセトキシ−ホウ化水素(124mg、0.59ミリモル)とピリジン−2−カルバルデヒド(43μL、045ミリモル)を混合する。反応混合物を3時間にわたって撹拌する。次いで、この反応混合物をCHCl(5mL)で希釈し、NaOH(1M水溶液、5mL)で洗浄する。硫酸ナトリウム上で有機層を乾燥し、濾過・濃縮する。残留物をSCXクロマトグラフィによって精製し、表題の化合物を生成する(83mg、59%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=313.1(M+1);HNMR(DMSO−d):8.67(ad,J=2.2Hz,1H)、8.50(m,1H)、8.12(dd,J=2.6と8.8Hz,1H)、7.98(bs,1H)、7.80〜7.76(m,1H)、7.47(d,J=7.9Hz,1H)、7.41(bs,1H)、7.29〜7.26(m,1H)、6.84(d,J=8.8Hz,1H)、5.10(m,1H)、3.63(m,2H)、2.77〜2.74(m,2H)、2.35〜2.30(m,2H)、1.99(bs,2H)、1.75〜1.69(m,2H)
【実施例7】
【0112】
6−(1−シクロプロピルメチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド
【化46】

実施例6と同様な方法を用い、表題の化合物を与える(89mg、72%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=276.1(M+1);HNMR(DMSO−d):8.66(m,1H)、8.12(app.dd,J=2.2と8.3Hz,1H)、7.97(bs,1H)、7.40(bs,1H)、6.84(app.d,J=8.3Hz,1H)、5.08〜5.03(m,1H)、2.82(bs,2H)、2.52(s,1H)、2.27〜2.20(m,3H)、1.99(m,2H)、1.72(m,2H)、0.86〜0.83(m,1H)、0.50〜0.45(m,2H)、0.10〜0.07(m,2H)
【実施例8】
【0113】
6−[1−(1H−インドール−2−イルメチル)−ピペリジン−4−イルオキシ]−ニコチンアミド
【化47】

実施例6と同様な方法を用い、表題の化合物を与える(110mg、70%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=351.1(M+1)
【実施例9】
【0114】
4−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンズアミド
【化48】

【0115】
工程1
4−(4−シアノ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【化49】

DMF(5mL)中のN−Boc−4−ヒドロキシピペリジン(3.0g、14.9ミリモル)の溶液をDMF(17mL)中の水素化ナトリウム(894mg、22.4ミリモル)のサスペンジョンに添加する。この反応混合物を50℃に加熱しながら45分間にわたって撹拌する。次いで、DMF(5mL)中の4−フルオロ−ベンゾニトリル(2.16g、17.9ミリモル)の溶液を添加する。50℃で2時間にわたって撹拌・加熱する。室温まで冷却し、水(0.5mL)でクエンチする。DMFを蒸発させる。得られた残留物をEtOAc/ヘキサン(2/1、20mL)に再度溶かし、水で洗浄する(3×15mL)。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過・濃縮する。クロマトグラフィによって精製し(EtOAc/ヘキサン20%とEtOAc/ヘキサン10%)、表題の化合物を生成する(2.32g、52%)。
【0116】
工程2
4−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンゾニトリル塩酸塩
【化50】

塩化アセチル(2.5mL)をメタノール(5.0mL)に0℃で滴状にして添加する。得られた溶液を0℃で90分間にわたって撹拌する。次いで、メタノール中の4−(4−シアノ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(284mg、0.94ミリモル)の溶液を添加する。得られた混合物を3時間にわたって撹拌する。溶媒を蒸発させ、ジエチルエーテルで倍散し、表題の化合物を生成する(216mg、96%)。
【0117】
工程3
4−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンゾニトリル
【化51】

CHCl(3mL)中で4−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンゾニトリル塩酸塩(64mg、0.268ミリモル)、ベンズアルデヒド(55μL、0.536ミリモル)、及びナトリウムトリアセトキシホウ化水素(85mg、0.402ミリモル)を混合する。室温で終夜にわたって撹拌する。反応混合物をCHCl(3mL)で希釈し、NaOH(1M水溶液、5mL)で洗浄する。有機層を分離し、それをSCXカラムに入れ、アンモニア(メタノール中の2.0M)で溶出し、表題の化合物を生成する(74mg、95%)。
【0118】
工程4
4−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンゾニトリル(74mg、0.25ミリモル)、DMSO(2.5mL)、及び粉末の炭酸カリウム(18mg、0.13ミリモル)を混合する。得られた混合物を0℃まで冷却し、過酸化水素(76μL)を添加する。添加の後、この混合物を室温で1時間にわたって撹拌する。この反応混合物を水(2mL)でクエンチする。生成した沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、表題の化合物を与える(57mg、73%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=311.1(M+1);HNMR(CDCl):7.79(ad,J=8.6Hz,3H)、7.32〜7.21(m,5H)、7.14(bs,1H)、6.95(d,J=8.6Hz,2H)、4.49〜4.42(m,1H)、3.31(s,2H)、2.69〜2.62(m,2H)、2.27〜2.19(m,2H)、1.96〜1.89(m,2H)、1.66〜1.56(m,2H)
【実施例10】
【0119】
4−[1−(3−フェニル−プロピル)−ピペリジン−4−イルオキシ]−ベンズアミド
【化52】

【0120】
工程1
4−(4−カルバモイル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【化53】

4−(4−シアノ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(実施例9の工程1、215mg、0.71ミリモル)、及び炭酸カリウム(49mg、0.36ミリモル)を0℃においてDMSO(35mL)中で混合する。次いで、過酸化水素(213μL)を滴状で添加する。次いで、室温で1時間にわたって撹拌する。水(10mL)で反応物をクエンチし、EtOAc/ヘキサン(2/1、3×20mL)で抽出する。有機層を合一し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過・濃縮し、表題の化合物を得る。
【0121】
工程2
4−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンズアミド塩酸塩
【化54】

THF(2mL)中の4−(4−カルバモイル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(228mg、0.711ミリモル)の溶液に塩化水素酸(ジオキサン中の4M、3mL)を滴状で添加する。室温で7時間にわたって撹拌する。固形物を濾過し、減圧下で乾燥し、塩酸塩として表題の化合物を得る(180mg、99%)。
【0122】
工程3
CHCl(3mL)中で、4−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンズアミド塩酸塩(102mg、0.397ミリモル)、3−フェニル−プロピオンアルデヒド(106μL、0.796ミリモル)、及びトリアセトキシ−ホウ化水素(127mg、0.597ミリモル)を混合する。この反応混合物を室温で終夜にわたって撹拌する。CHCl(3mL)で反応混合物を希釈し、水酸化ナトリウム(1N水溶液、5mL)で洗浄する。有機層を分離し、SCXカラムに配置し、直接アンモニア(メタノール中の2.0)で溶出する。得られた残留物をCHClとジエチルエーテルで倍散し、白色固体として表題の化合物を生成する(63mg、47%)。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=339.1(M+1);HNMR(CDCl):7.79(ad,J=9.0Hz,3H)、7.28〜7.12(m,6H)、6.95(d,J=9.0Hz,2H)、4.74〜4.40(m,1H)、2.70〜2.63(bm,2H)、2.56(t,J=7.6Hz,2H)、2.31〜2.25(bm,2H)、2.22〜2.15(bm,2H)、1.96〜1.89(bm,2H)、1.71(pentet,J=7.3Hz,2H)、1.63〜1.56(m,2H)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、
【化1】


ここに、
、X、X、X、及びXはそれぞれ、C、CH、又はNであり、但し、環Bは2以下の窒素原子を有し、
Xは、環Aがシクロヘキシル、シクロヘキセニル、又はピペリジニルであるように、NH又はCHであり、
Eは、NH又はOであり、
vは、0、1、2、又は3であり、
qは、0又は1であって、但し、A環がシクロヘキシル又はシクロヘキセニルのとき、qは1であり、かつvとqは、同時に0ではなく、
とRは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、ヘテロシクリル、C〜C10アルキル複素環、−C〜CアルキルC(O)C〜Cアルキル、−(CH(CO)C〜Cシクロアルキル−、−C〜CアルキルCH(OH)アリール、−CO(O)C〜Cアルキル、−SO〜Cアルキル、−SO〜C10アルキルアリール、−SO〜Cアルキル複素環、−C〜Cアルキルシクロアルキル、−(CHC(O)OR、−(CHC(O)R、−(CHC(O)NR、及び−(CHNSOから独立して選択され、ここに、各々のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、複素環、及びアリール基は、場合により、ハロゲン、C〜Cハロアルキル、C〜Cチオアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−SO〜Cアルキル、−SO〜Cアルキルアリール、−C〜Cアルキルシクロアルキルから独立して選択された1〜5の基によって置換され、RとRは、場合により互いに結合して、4、5、6、又は7員の窒素含有複素環を形成してよく、この窒素含有複素環は、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−CO(O)C〜Cアルキル、ハロゲン、オキソ、C〜Cハロアルキルからなる群より選択された置換基をさらに有することができ、
とR’は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、−C〜Cアルキルシクロアルキル、又は−C〜Cアルキルアリール、C〜Cアルキル複素環からそれぞれ独立して選択され、あるいは、RとR’は、結合して、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルケニル、又はC〜C10複素環を形成し、
とRは、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、−C〜Cアルコキシアルキル、C〜Cチオアルキル、ハロゲン、C〜Cハロアルキル、−C〜Cアルコキシハロアルキル、アリール、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキルもしくは−C(O)OC〜Cアルキル、−C〜Cアルキルアミノ、−C〜Cアルキルシクロアルキル、−(CHC(O)C〜Cアルキル、及び(CHNRから独立して選択され、ここに、各々のR又はRは、その各環に炭素原子のみで結合し、ここに、yは、0、1、2、又は3であり、zは、0、1、2、又は3であり、
とRは、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−C(O)C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、−SO〜Cアルキル、SO〜Cアルキルアリール、−SO〜Cアルキル複素環、アリール、−C〜Cアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、−C〜Cアルキルシクロアルキル、−(CHC(O)R、−(CHC(O)NR、及び−(CHNSOから選択され、ここに、各々のアルキル、アルケニル、及びアリール基は、場合により、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、及びC〜Cアルキルアリールから選択された1〜5の基によって置換され、ここに、RとRは、独立して互いに結合し、4、5、6、又は7員の窒素含有複素環を形成してよく、この窒素含有複素環は、場合により、オキソ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、−C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、−CO(O)C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキルアミン、アミノ、ハロゲン、及びハロアルキルからなる群より選択された置換基を有することができ、
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルアリール、−C(O)C〜Cアルキル、又は−C(O)OC〜Cアルキルであり、ここに、nは、0、1、2、3、又は4であり、mは、1、2、又は3であり、
又は、これらの医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマーもしくはジアステレオマー混合物。
【請求項2】
前記A環がシクロヘキシルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記B環が、フェニル、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、及びピリダジンからなる群より選択された請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記A環がピペリジニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Eが酸素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
yが、0、1、又は2であり、Rが、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシ、エトキシ、メチル、エチル、イソプロピル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、及びベンジルからなる群より独立して選択された請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
zが、0、1、又は2であり、Rが、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシ、エトキシ、メチル、エチル、イソプロピル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、及びベンジルからなる群より独立して選択された請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
とRが、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、
【化2】

からなる群より選択され、nが、1、2、又は3である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
とRが、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニルからなる群より選択された請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Eが酸素原子であり、RとRがいずれも水素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
vが1又は2である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
vが1であり、mが1であり、nが1であり、yが0又は1であり、zが0又は1である請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
6−{4−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−エチルアミノ]−シクロヘキシルオキシ}−ニコチンアミド、
【化3】

6−[4−(3−メチル−ブチルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ニコチンアミド、
【化4】

6−[4−(2−チオフェン−2−イル−エチルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ニコチンアミド、
【化5】

4−[4−(3−フェニル−プロピルアミノ)−シクロヘキシルオキシ]−ベンズアミド、
【化6】

トランス−6−(4−ベンジルアミノ−シクロヘキシルオキシ)−ニコチンアミド、
【化7】

6−(1−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド、
【化8】

6−(1−シクロプロピルメチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ニコチンアミド、
【化9】

6−[1−(1H−インドール−2−イルメチル)−ピペリジン−4−イルオキシ]−ニコチンアミド、
【化10】

4−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンズアミド、
【化11】


4−[1−(3−フェニル−プロピル)−ピペリジン−4−イルオキシ]−ベンズアミド、
【化12】

及び、これらの医薬的に許容される塩、溶媒和物、鏡像異性体、ジアステレオマーもしくはジアステレオマー混合物からなる群より選択された化合物。
【請求項14】
前記医薬的に許容される塩が、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化水素酸塩、重硫酸塩、又は酒石酸塩である請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量とともに、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
μ、κ、δ受容体又はこれらの受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)の阻害を必要とする哺乳類に、請求項1に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー混合物、もしくは溶媒和物の受容体阻害量を投与することを含む、哺乳類におけるμ、κ、δ受容体又はこれらの受容体コンビネーション(ヘテロダイマー)を阻害する方法。
【請求項17】
式Iの化合物の治療的有効量を投与することを含む、過敏性腸症候群、悪心、嘔吐、肥満関連の鬱病、肥満関連の不安、煙草・アルコール中毒、性的機能障害、薬物乱用、薬物中毒、中毒性行動障害、強迫性挙動代謝障害及びその症候、及び脳卒中などの肥満関連疾病を治療及び/又は防止する方法。
【請求項18】
式Iの化合物の治療的有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、肥満と関連疾病を治療及び/又は防止する方法。
【請求項19】
式Iの化合物の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする患者の食欲を抑制する方法。
【請求項20】
式Iの化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、ラセミ体、もしくは鏡像異性体の治療的有効量を投与することを含む、肥満患者の体重低下を達成する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の式Iの化合物を活性成分として含有する、肥満と関連疾病に係わる症状を治療及び/又は改善するための医薬組成物。


【公表番号】特表2007−516256(P2007−516256A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543831(P2006−543831)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/038227
【国際公開番号】WO2005/061442
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】