説明

オンサイト型ガス製造方法、製造装置およびガス製造販売システム

【課題】 十分に品質保証されたガスの製造が可能なオンサイト型ガス製造方法および装置を提供するとともに、これを用いたガス製造販売システムを提供する。
【解決手段】 ガス製造装置は、原料供給装置1、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4とがこの順序で直列に配置され、製造したガスが消費装置5に供給可能となっている。まず、原料を原料供給装置1を介して、または原料供給装置1に貯蔵しておき、これを製造装置2に供給する。製造装置2にて発生させたガスは、精製装置3に送られ、不純物を取り除くことにより高純度化を実施する。高純度化されたガスは、品質保証装置4に送られ、ガス中の不純物濃度を分析することにより、必要に応じて分析結果を製造装置2などにフィードバックし、ガスの品質保証を行なう。品質保証されたガスは、ガスの消費装置5に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型ガス製造方法、製造装置に関し、これを用いたガス製造販売システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ガスは多くの種類が製造され、かつ消費されている。安価であり、大量に消費される窒素および酸素などのガスは、高圧に耐えるパイプラインによって輸送されるか、液体状態のままタンクローリーなどによって運送されて消費者が有する貯蔵タンクに保管される場合もあるが、ほとんどの場合は、ガス製造会社で製造された後、ガスボンベに高圧状態で充填された上で、工業用ガスの消費者に運送されることによって供給される。
【0003】
半導体製造用ガス、レーザー用ガス、化学反応に用いられるガス、または各種実験用に用いられる少量のガスなど窒素や酸素などのガスも、ガスボンベに充填されて消費者に供給されている。このような形態によるガスの販売は、ガスボンベを貸与という形にして充填されたガスをその充填量に応じて販売する場合や、ガスボンベ込みで販売される場合がある。
【0004】
このようにガスボンベに充填されたガスを販売する場合には、製造者にとっては高圧に充填したガスボンベを消費者からの要望に応じて適時輸送することが必要であるし、また消費者にとっては購入したガスボンベを貯蔵する必要が生じる。そのため、製造者、消費者ともにガスボンベを保管する必要がある。また、緊急の事態に備えて、ある程度の備蓄を持ち合わせておく必要がある場合もあり、比較的広い面積を有する貯蔵所の設置が必要になってくる。また、貯蔵所に設置されたボンベの安全保守のためにガス検知設備の設置が必要になるなど、ガスボンベを必須とする販売形態は、多くのコストがかさむのが実情である。
【0005】
これに対して、消費者の有する消費装置の近傍で工業用ガスを製造して供給する、いわゆるオンサイト型のガス製造装置、方法の有用性が認識されるようになっている。
【0006】
オンサイト型装置または方法の従来技術としては、たとえば、特許文献1記載のフッ素ガス供給装置、特許文献2記載のアンモニアの製造装置、特許文献3記載の水素製造設備、特許文献4記載のシランガスのオンサイト発生方法および装置、特許文献5記載の半導体プロセス用オンサイトアンモニア精製システム、特許文献6記載の半導体プロセス用過酸化水素精製システムなどが挙げられる。また、ガスの製造ではないが、特許文献7記載の超高純度バッファードHFのオンサイト精製システム、特許文献8記載のオンサイトアンモニアを用いる排煙脱硝法なども挙げられる。
【0007】
しかし、これらのオンサイト製造装置、方法に関する技術は、主に半導体用途向けの工業用ガスの製造装置、製造方法に限られており、かつ高純度のガスを製造していながらその品質保証を行うための分析装置などについては、一切言及されていない。また、オンサイト製造を行った場合においても、原料の品質変動、製造装置自体の劣化、操作条件のばらつきなどのために、生成率の変動、不純物濃度の変化が起きることは十分に予想される。これに対して、従来のオンサイト製造装置には分析による品質保証の措置が十分にとられておらず、製造されたガスを消費装置にそのまま供給することは、事実上、困難であると言わざるを得ない。
【0008】
またガス製造装置には、マイクロリアクタを備えるものが増えているが、たとえば特許文献9記載のマイクロリアクタを組み入れたモジュラ化学生産システムでは、モジュール化により、コントローラ、ポンプ、弁、リアクタおよび処理モジュールを必要に応じてマイクロリアクタ装置に取り付けたものであり、マイクロリアクタ自身が自在に着脱が可能となっている。しかし、このシステムについては、品質保証が要求されるガスの製造方法について必要な配置、要件などについての記載は全く記載されていない。
【0009】
オンサイト製造を行う場合、ガスボンベを使用していた場合とは異なり、製造しつつ供給、販売を行うため、課金方法など販売形態も変更が必要である。
【0010】
オンサイト製造ではないが、特許文献10には、半導体製造装置メーカが半導体製造メーカに半導体装置を貸出し、貸出した半導体製造装置が処理したウエハーの枚数および半導体製造装置の稼動時間に応じて装置の稼動量を計算し、この稼動量に応じて課金する半導体製造装置の稼動課金方法が開示されており、半導体製造装置メーカと半導体製造メーカとの間では、インターネット通信を介して稼動量情報および課金情報のやりとりを行っている。
【0011】
特許文献11には、過弗化物処理装置メーカーが、PFC(過弗化物)分解処理装置を半導体製造事業者の依頼に応じて半導体製造装置に接続することにより、半導体製造事業者が排出するPFCガスの処理を行なう過弗化物処理の処理方法が開示されている。これにより、半導体製造事業者は初期投資を行なうことなくPFCガスの処理が行なえるようになる。運転中のPFC分解処理装置は、過弗化物処理装置メーカーによってインターネットを通じて常時監視されており、必要に応じてメンテナンスが施される。過弗化物処理装置メーカーは、これらのメンテナンスなどの費用も考慮した料金対応表によってPFCガスの処理量に応じた課金を行っている。
【0012】
特許文献12には、電気事業、ガス事業、および水道事業を営む事業者が、それぞれの需要家に設置した電気メーター、ガスメーター、水道メーターに使用量情報を集計する監視システムを設置することにより、使用量および課金データを需要家に知らせる遠隔システムを開示している。
【0013】
【特許文献1】特開2004−217465号公報
【特許文献2】特開2003−267725号公報
【特許文献3】特開2003−95612号公報
【特許文献4】特開平11−310410号公報
【特許文献5】特表2002−515179号公報
【特許文献6】特表2002−514968号公報
【特許文献7】特表2001−527697号公報
【特許文献8】特許第2992666号公報
【特許文献9】特表2004−508919号公報
【特許文献10】特開2002−117336号公報
【特許文献11】特開2003−88727号公報
【特許文献12】特開2004−326373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、十分に品質保証されたガスの製造が可能なオンサイト型ガス製造方法および装置を提供するとともに、これを用いたガス製造販売システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型のガス製造方法であって、
前記消費装置に供給する前に、ガスの分析を行い、異常が検出されなかった場合にガスを前記消費装置に供給することを特徴とするオンサイト型のガス製造方法である。
【0016】
また本発明は、消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型ガス製造装置であって、
原料を供給するための原料供給装置と、
前記原料供給装置から供給された原料を反応させてガスを発生させる製造装置と、
前記製造装置で発生したガスを精製する精製装置と、
前記精製装置で精製されたガスの分析を行う品質保証装置とを有し、
前記品質保証装置の分析結果に基づいて、異常が検出されなかった場合に、前記消費装置にガスを供給することを特徴とするオンサイト型ガス製造装置である。
【0017】
また本発明は、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、それぞれマイクロリアクタを備えることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記製造装置が備えるマイクロリアクタは、当該マイクロリアクタの環境パラメータを検出する検出手段と、前記環境パラメータを変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記精製装置は、精製したガスを貯蔵し、かつ昇圧することが可能なバッファタンクを備えることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記品質保証装置が備えるマイクロリアクタは、ガス中に含まれる成分を分析する分析用マイクロリアクタチップを1または複数備えることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、上記のオンサイト型ガス製造装置と、オンサイト型ガス製造装置を管理する製造装置設置業者によって利用される製造装置設置業者側サーバと、オンサイト型ガス製造装置を運転し、製造されたガスを消費する消費事業者によって利用される消費事業者側サーバとを含み、これらが互いにデータ通信可能に構成されるガス製造販売システムであって、
オンサイト型ガス製造装置を構成する前記原料供給装置、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、それぞれ装置自身の動作状況を示す動作状況情報を作成して消費事業者側サーバに送信し、
消費事業者側サーバは、受信した前記動作状況情報に基づいて、課金算出情報を作成して製造装置設置業者側サーバに送信し、
製造装置設置業者側サーバは、受信した前記課金算出情報に基づいて消費事業者に請求すべき金額を算出し、算出した金額を含む課金情報を作成して消費事業者側サーバに送信することを特徴とするガス製造販売システムである。
【0022】
また本発明は、製造装置設置業者側サーバは、前記動作状況情報に基づいて、オンサイト型ガス製造装置の動作状況を判断し、その判断結果に応じてオンサイト型ガス製造装置を制御するための管理制御コマンドを送信し、
前記原料供給装置、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、前記管理制御コマンドを受信すると、コマンド内容に従って動作の変更を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型のガス製造方法であり、前記消費装置に供給する前に、ガスの分析を行い、異常が検出されなかった場合にガスを前記消費装置に供給する。
【0024】
これにより、オンサイト型のガスの製造であっても十分に品質保証されたガスの製造が可能となる。
【0025】
また本発明によれば、消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型ガス製造装置である。
【0026】
原料供給装置が原料を供給すると、製造装置は、供給された原料を反応させてガスを発生させる。精製装置は、製造装置で発生したガスを精製し、品質保証装置が精製されたガスの分析を行う。この品質保証装置の分析結果に基づいて、異常が検出されなかった場合に、前記消費装置にガスを供給する。
【0027】
これにより、オンサイト型のガスの製造であっても十分に品質保証されたガスの製造が可能となる。
【0028】
また本発明によれば、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、それぞれマイクロリアクタを備えることにより、製造するガスの制御を詳細かつ容易に行うことができる。これにより、高純度のガスを安定して供給することができる。
【0029】
また本発明によれば、前記製造装置が備えるマイクロリアクタは、検出手段によって当該マイクロリアクタの環境パラメータを検出するとともに、変更手段によって前記環境パラメータを変更することができる。
【0030】
また本発明によれば、前記精製装置は、精製したガスを貯蔵し、かつ昇圧することが可能なバッファタンクを備える。
これにより、ガスを貯蔵する機能と瞬時に供給する機能とを実現することができる。
【0031】
また本発明によれば、前記品質保証装置が備えるマイクロリアクタは、ガス中に含まれる成分を分析する分析用マイクロリアクタチップを1または複数備える。
【0032】
これにより、精製されたガスに含まれる不純物などを精度よく、かつ効率良く検出することができる。
【0033】
また本発明によれば、上記のオンサイト型ガス製造装置と、オンサイト型ガス製造装置を管理する製造装置設置業者によって利用される製造装置設置業者側サーバと、オンサイト型ガス製造装置を運転し、製造されたガスを消費する消費事業者によって利用される消費事業者側サーバとを含み、これらが互いにデータ通信可能に構成されるガス製造販売システムである。
【0034】
オンサイト型ガス製造装置を構成する前記原料供給装置、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、それぞれ装置自身の動作状況を示す動作状況情報を作成して消費事業者側サーバに送信する。動作状況情報には、たとえば供給量、貯蔵量、不純物量などが含まれる。
【0035】
消費事業者側サーバは、受信した前記動作状況情報に基づいて、課金算出情報を作成して製造装置設置業者側サーバに送信する。課金算出情報には、たとえば、オンサイト型ガス製造装置の稼働時間、オンサイト型ガス製造装置から消費装置へのガス供給量、消費装置のガス消費量などが含まれる。
【0036】
製造装置設置業者側サーバは、受信した前記課金算出情報に基づいて消費事業者に請求すべき金額を算出し、算出した金額を含む課金情報を作成して消費事業者側サーバに送信する。
【0037】
このシステムにより、オンサイト型ガス製造装置を利用したガス製造販売を、容易に、効率良く行うことができる。
【0038】
また本発明によれば、製造装置設置業者側サーバは、前記動作状況情報に基づいて、オンサイト型ガス製造装置の動作状況を判断し、その判断結果に応じてオンサイト型ガス製造装置を制御するための管理制御コマンドを送信する。
【0039】
これに対して前記原料供給装置、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、前記管理制御コマンドを受信すると、コマンド内容に従って動作の変更を行う。
【0040】
これにより、異常などが発生した際に、緊急停止を行うなどオンサイト型ガス製造装置を遠隔制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の一形態であるオンサイト型ガス製造装置を示す構成図である。ガス製造装置は、原料供給装置1、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4とがこの順序で直列に配置され、製造したガスが消費装置5に供給可能となっている。まず、原料を原料供給装置1を介して、または原料供給装置1に貯蔵しておき、これを製造装置2に供給する。製造装置2にて発生させたガスは、精製装置3に送られ、不純物を取り除くことにより高純度化を実施する。高純度化されたガスは、品質保証装置4に送られ、ガス中の不純物濃度を分析することにより、必要に応じて分析結果を製造装置2などにフィードバックし、ガスの品質保証を行なう。品質保証されたガスは、ガスの消費装置5に供給される。
【0042】
本発明では、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4は、それぞれがマイクロリアクタを含んで構成されていることを特徴としている。マイクロリアクタは、MEMS(
Micro Electro Mechanical Systems)とも呼ばれ、半導体製造技術を主とした加工手段により、マイクロチャネルと孔とを形成したマイクロリアクタチップにより構成されていることを基本とする。
【0043】
図2は、マイクロリアクタチップ6の例を示す斜視図である。図2に示したマイクロリアクタチップ6には、分岐を有したマイクロチャネル8と、このチャンネル8に連結された孔7とが設けられている。
【0044】
図3は、マイクロリアクタ12aの構成を示す斜視図である。孔が設けられた2枚のホルダー9(上側)、10(下側)によって、図2に示したマイクロリアクタチップ6の孔7と合致するようにマイクロリアクタチップ6を挟持し、ホルダー9の孔にパイプ11を接続することにより、このパイプ11を通じて原料となる液体、気体の供給および、製造されたガスや余剰の液体などの取り出しを行うことができる。
【0045】
また、図4に示すようにマイクロリアクタチップ6をナンバリングアップにて複数枚積層して一つのマイクロリアクタチップとして用いることも可能である。このように積層したものをホルダー9、10で挟持することで、図5に示すような積層型マイクロリアクタ12bとすることができる。積層型マイクロリアクタ12bは、原理的に積層した枚数分だけ、製造量、精製量、分析量などの処理量を拡大させることができる。当然のことながら積層型マイクロリアクタもマイクロリアクタと同一のものと考えることができる。
【0046】
図6は、マイクロリアクタチップ6aの他の例を示す斜視図である。本例のマイクロリアクタチップ6aは、マイクロチャネル8を通過する流体の圧力、温度、流量などの環境パラメータの測定を行うセンサ、またはマイクロチャネル8を通過する流体を加熱するヒータなどを内蔵している。センサにて測定されたデータの入出力およびヒータに電力を供給するための電気的な入出力端子41を備える。このマイクロリアクタチップ6aをホルダー9、10で挟持することで、図7に示すような電気的入出力機能を有するマイクロリアクタ12cを実現することができる。たとえばセンサとしてマイクロリアクタ12cを使用する場合、入出力端子41に接続されたケーブル42を介して所定のデータ処理装置などと接続し、測定に必要なデータ信号の入力および測定結果を示すデータ信号の出力が行われる。さらに、マイクロリアクタ12cは、図8に示すようにケース43に収納され、通信機能を有したボックス44上に載置されて通信機能を備えた処理装置として機能する。ケーブル42が、ケース43に取り付けられたコネクタ45に接続され、コネクタ45から伸びるケーブルがボックス44に取り付けられたコネクタ46に接続される。ボックス44は、外部装置との通信のためのコネクタ47を備えており、マイクロリアクタ12cに入出力されるデータ信号を外部装置と通信可能な信号に変換し、通信ケーブル26を介して後述の事業者サーバ装置などとの通信を行う。ボックス44は、通信機能に加えて、事業者サーバ装置からのコマンドを解析し、供給電圧などを変更することで圧力、温度、流量などの環境パラメータを変更する制御機能を有している。
【0047】
本発明のオンサイト型ガス製造装置は、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4を1台づつ備える構成であってもよいし、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4を複数台備える構成であってもよい。各装置を複数台備える構成である場合、たとえば図9に示すように、それぞれ3台づつ同数含み、かつこれらが各々直列に接続される構成であってもよいし、図10に示すように、製造装置2が4台、精製装置3が3台、品質保証装置4が2台と装置ごとに台数が異なるような構成であってもよい。この構成においても各装置の配列は、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4の順序で接続することは必要であるが、製造装置2で製造されたガスがどの精製装置3に送られてもよく、精製装置3で精製されガスがどの品質保証装置4に送られてもよい。なお、ガス製造装置全体の運転安定性の面からは、図9、図10に示したように複数の装置を備える構成が好ましい。
【0048】
また、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4はそれぞれ1種のマイクロリアクタを含む構成であってもよく、複数のマイクロリアクタを含む構成であってもよい。
【0049】
さらに、本発明のオンサイト型ガス製造装置が備える精製装置3は、精製されたガスを貯蔵し、貯蔵されているガスの圧力を高くすることができる昇圧機構を備えているバッファタンクを備えることが特に好ましい。
【0050】
図11は、精製装置3の構成を示す斜視図である。精製装置3は、少なくとも1基の精製用マイクロリアクタ12dと1基の昇圧器13とを含んで構成される。精製用マイクロリアクタ12dは、マイクロチャネル8を通過するガスから不純物を除去する機能を有し、昇圧器13は、精製用マイクロリアクタ12dで精製されたガスの貯蔵を行なうバッファタンクの機能を有している。
【0051】
一般にガスの消費は断続的に行なわれるので、供給は消費開始のタイミングにあわせて瞬時に行うことを要請されることが一般的である。しかし、ガスの製造はある程度の時間を要するものであるので、断続的かつ瞬時に供給されることが必要となる消費装置5の要求を満足するためには、精製されたガスを貯蔵する必要がある。したがって、貯蔵する機能と瞬時に供給する機能とを満足するために、精製装置3は、昇圧された状態にある精製ガスを蓄積しておく昇圧器13を備えることが好ましい。
【0052】
製造装置2で製造されたガスは、パイプ11aから精製用マイクロリアクタ12dに導入されて精製され、パイプ11bを通って昇圧器13に送られる。昇圧器13では、供給時以外は精製ガスを貯蔵するとともに圧縮し、供給時には貯蔵していたガスをライン16aから品質保証装置4に送る。
【0053】
精製用マイクロリアクタ12dと昇圧器13とはパイプ11a,11bによって連結されているが、これらのパイプは、バルブ15と3方バルブ14a、14bによって、接続分岐されている。
【0054】
品質保証装置4によって、精製ガスの純度など特性が不十分であると判断された場合には、精製装置3に送り返して、再度、精製する必要がある。このとき、戻ってきたガスは順にライン16a、3方バルブ14b、ライン16b、3方バルブ14a、パイプ11aを通って精製用マイクロリアクタ12dに導入される。
【0055】
図12は、品質保証装置4の構成を示す斜視図である。品質保証装置4は、製造装置2、精製装置3と同じくマイクロリアクタ18を含んで構成されている。また、異なる種類のマイクロリアクタチップをナンバリングアップした構成からなる積層型マイクロリアクタを用いてもよい。積層したそれぞれのマイクロリアクタチップは、精製ガスの不純物ごとに対応した分析用ツールを備えている。たとえば、精製ガス中に含まれる不純物を酸素、窒素、炭化水素とすると、酸素、窒素、炭化水素に対応したマイクロリアクタチップを積層する。不純物の検出方法としては、熱線型半導体式、接触燃焼式、気体熱伝導式、定電位電解式、薄膜型半導体式、隔膜ガルバニ電池式、半導体式、オルガスタ式のいずれかの方法を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0056】
図12に示す品質保証装置4は、バイパスライン19を備えていることが特徴である。精製装置3にて精製されたガスはライン20から流入し、3方バルブ17aによってバイパスライン19を通過するか、マイクロリアクタ18を通過するかに分岐される。バイパスライン19、3方バルブ17bを通過した精製ガスは消費装置5に接続されたライン21を通って、そのまま消費装置5に供給される。マイクロリアクタ18を通過し不純物の検出など分析されたガスは、廃棄装置に接続されたライン22を経て、廃棄装置に送られる。また、ガスの常時オンライン分析を行なう場合などには、マイクロリアクタ18を通過したガスであっても、ライン21を経て、消費装置5に供給することもできる。
【0057】
上記の各装置の構成に基づいて、より詳細なオンサイト型ガス製造装置の構成を図13に示す。精製装置3はバッファタンクとなる昇圧器13を含み、出口から入口に精製ガスが戻るためのライン24を設けている。また、品質保証装置4において分析にかけられたガスを廃棄装置23に排出するためのライン25を設けている。
【0058】
以上に示すオンサイト型ガス製造装置を用いたガス製造販売システムについて説明する。
【0059】
まず、本発明のガス製造販売システムを利用したガス製造販売事業形態について明確にする。オンサイト型ガス製造装置の設置事業者と、ガスの消費事業者と、原料などの配送業者の3事業者間で物資、サービスの供給、料金の支払いなどを行う。なお、製造装置の設置事業者が配送業者を兼ねることも可能である。また、必要により、製造装置の設置事業者およびガスの消費事業者が任命する中間業者を加えることも可能である。
【0060】
オンサイト型ガス製造装置は、原料供給装置1、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4で構成され、設置事業者の管理範囲である。一方消費装置5は、消費事業者の管理範囲である。
【0061】
図14は、オンサイト型ガス製造装置を利用したガス製造販売の事業形態を説明するための図である。オンサイト型ガス製造装置を運転するのは消費事業者である。オンサイト型のガス製造装置は、消費装置と密接に連動しているので、ガス製造装置の運転は消費事業者が実施する必要がある。しかし、オンサイト型ガス製造装置の動作状況などの各種情報は、消費事業者と製造装置設置事業者とで共有できるものとする。場合により、消費事業者または製造装置設置事業者の一方が秘守すべき情報であると認識し、かつ他方がこれを認める場合には、情報の共有に制限がかかるシステムを導入することも可能である。
【0062】
製造装置設置事業者は、オンサイト型ガス製造装置から送られてくる動作状況を示すデータに基づいて、個々の装置および個々のマイクロリアクタの動作状況を知ることができる。そして、複数のマイクロリアクタを設置している場合には、動作状況を示すデータに基づき、動作させるべきマイクロリアクタを適宜切り替えることができるシステムを導入する。また、安全上の問題、品質上の重大な問題が生じた場合においては、マイクロリアクタを緊急停止することも可能である。
【0063】
また、必要に応じて、製造装置設置事業者は、オンサイト型ガス製造装置のメンテナンスを実施することができる。
【0064】
また、製造装置設置事業者は、配送事業者に対して原料供給の指示およびマイクロリアクタの配送、交換の指示を行う。指示を受けた配送業者は、オンサイト型ガス製造装置に必要な原料の配送業務、マイクロリアクタの配送、交換の作業を行う。ただし、原料の配送、マイクロリアクタの配送、交換を実施する場合には、認証システムによる照合を行い、製造装置設置事業者の許可があったときにのみ行えるものとする。また、配送された原料、マイクロリアクタを消費事業者が受け取り、これらの交換を実施することも可能である。ただし、この場合にも認証システムによる照合を行う。
【0065】
製造装置設置事業者は、オンサイト型ガス製造装置によって製造されたガスの量に応じた課金設定、またオンサイト型ガス製造装置の稼動時間に応じた課金設定に基づいて、請求額を算出し、消費事業者に課金することができる。消費事業者は、請求額に基づき、マ製造装置設置事業者に料金の支払いを行う。料金には、メンテナンスに要した費用、原料費、マイクロリアクタの配送、交換の費用などが勘案されるような課金設定になっており、製造装置設置事業者と消費事業者の双方が合意した課金設定である必要がある。
【0066】
図15は、ガス製造販売システムを説明するための概略図である。
ガス製造販売システムは、少なくともオンサイト型ガス製造装置28、消費事業者側サーバ装置29、製造装置設置事業者側サーバ装置30を含み、さらに配送事業者側サーバ装置31、消費装置5、廃棄装置23を含んでもよい。
【0067】
上記で説明したように、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4は通信機能を備えている。本システムでは、原料供給装置1、消費装置5、廃棄装置23も、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4と同等の通信機能を備えている。
【0068】
各サーバ装置は、サーバプログラムインストールされた既存のコンピュータで実現可能であり、サーバ装置全体の制御を行うCPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(ロードオンリメモリ)、ハードディスクドライブなどの大規模記憶手段、データ通信を可能とする通信手段を少なくとも備え、必要に応じてディスプレイなどの表示装置、キーボードなどの入力装置、プリンターなどの印字装置などを備えていてもよい。
【0069】
各装置と消費事業者側サーバ装置29とは、通信ケーブル26で接続され、互いにデータ通信可能に構成されている。
【0070】
各装置では、装置自身の動作状況を示す動作状況情報を作成し、消費事業者側サーバ装置29に送信する。作成される動作状況情報の詳細な内容は、装置ごとに異なっている。たとえば、原料供給装置1で作成される動作状況情報には、製造装置2への原料供給量、原料の貯蔵量などが含まれる。製造装置2で作成される動作状況情報には、ガス発生量などが含まれる。精製装置3で作成される動作状況情報には、品質保証装置4への精製ガス排出量、昇圧器13の貯蔵量、昇圧器13の容器内圧力などが含まれる。品質保証装置4で作成される動作状況情報には、不純物量、消費装置5へのガス排出量、排気装置23へのガス排出量などが含まれる。消費装置5で作成される動作状況情報には、ガス消費量などが含まれる。廃棄装置23で作成される動作状況情報には、廃棄処理量などが含まれる。なお、上記の各量は、たとえば単位時間当たりの体積であってもよいし、他の量であってもよい。
【0071】
消費事業者側サーバ装置29は、動作状況情報を受信し、適宜必要なデータ処理を行い、各装置およびオンサイト型ガス製造装置28全体の稼動状態の表示、記録などを行う。
【0072】
消費事業者側サーバ装置29は、この稼動状態に基づいて、各装置の動作条件の変更を指示するための動作制御コマンドを適宜各装置に対して送信し、各装置の動作制御を遠隔制御する。
【0073】
また、消費事業者側サーバ装置29、製造装置設置事業者側サーバ装置30および配送事業者側サーバ装置31は互いにデータ通信可能にネットワーク回線27で接続される。消費事業者側サーバ装置29から製造装置設置事業者側サーバ装置30に対しては、各装置から送信される動作状況情報または各装置およびオンサイト型ガス製造装置28全体の稼動状態を示す稼動状態情報を送信する。このとき消費事業者側サーバ装置29から製造装置設置事業者側サーバ装置30に対して送信される情報には、少なくとも課金されたときの金額算出に必要な課金算出情報が含まれる。課金算出情報は、たとえば、オンサイト型ガス製造装置28の稼働時間、オンサイト型ガス製造装置28から消費装置5へのガス供給量、消費装置のガス消費量などである。
【0074】
製造装置設置事業者側サーバ装置30では、消費事業者側サーバ装置29から課金算出情報を受信すると、予め定める算出方法に基づいて消費事業者へ請求すべき金額を算出し、算出した金額を含む課金情報を作成して消費事業者側サーバ装置29の送信する。
【0075】
消費事業者から製造装置設置事業者への料金の支払いは、たとえばインターネットバンクなどを介したオンライン送金で行うこともできる。
【0076】
製造装置設置事業者側サーバ装置30から、オンサイト型ガス製造装置28に対しては、直接または製造装置設置事業者側サーバ装置30を介して、各装置に含まれるマイクロリアクタの切り替え、装置の緊急停止などの指示を行うための管理制御コマンドを送信する。製造装置設置事業者側サーバ装置30では、動作状況情報、稼動状態情報に基づいて異常の発生を検出し、検出した異常の内容に応じて適切な管理制御コマンドを送信する。異常検出は、たとえば、動作状況情報、稼動状態情報に含まれる各量について適正な範囲を予め定めておき、範囲を越えたかどうかで判断する。不純物量が予め定める閾値を越えると、異常が発生したものと判断し、緊急停止、または再精製を指示するための管理制御コマンドを送信する。
【0077】
製造装置設置事業者側サーバ装置30から、配送事業者側サーバ装置31に対しては、原料の補充、マイクロリアクタの配送、交換を指示するために、指示内容を含む配送指示情報を送信する。
【0078】
配送事業者は、配送指示情報に従って原料の配送、供給装置への補充、マイクロリアクタの配送、交換などの作業を行う。
【0079】
このとき、各装置には、正規の事業者であるかどうかを判断するための認証手段が備えられており、この認証手段が正規の事業者であると判断すると、作業可能となる。認証手段には、既存の認証方法を利用することが可能で、識別番号およびパスワードの入力、磁気カードの読み取り、生体認証などを利用することができる。
【0080】
消費事業者側サーバ装置29、製造装置設置事業者側サーバ装置30および配送事業者側サーバ装置31間のデータ通信、オンサイト型ガス製造装置28と、消費事業者側サーバ装置29、製造装置設置事業者側サーバ装置30とのデータ通信は、専用のネットワークを介して行ってもよいし、インターネットを介して行ってもよい。
【実施例】
【0081】
次に、具体的な実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
本発明のオンサイト型ガス製造装置の実施例として、水とエタノールを原料とし、反応生成物として水素ガスを製造する装置を作製した。
【0082】
(1)製造装置の作製
図16は、製造装置2を構成するマイクロリアクタチップの製造方法を示す工程図である。製造装置2に用いるマイクロリアクタチップは、ガスを発生させるためにマイクロチャネルに触媒を担持している。
【0083】
まず基材として、パイレックス(登録商標)のガラス基板101(30mm×70mm×1mm)を用意し、このガラス基板101にマイクロ加工により、マイクロチャネルとなる深さ100μm、幅500μmの溝102を形成した(a)。溝102は、2回折り返した己字形状(ミアンダパターン)のものとし、その長さを168mmとした。溝102の端部には、直径1mmの貫通孔103を形成した(b)。この溝加工基板にクロムの薄膜とアルミニウムの薄膜を真空蒸着により、溝102が形成されている部分の内、折り返しの部分が完全に含まれるように、縦500μm、横10mmで積層薄膜104として形成した(c)。クロム層の厚みは500nm、アルミニウム層の厚みは2000nmのとした。この蒸着基板表面に、メッキ法にて厚み50μmのアルミニウム膜105を形成した(d)。そして、さらにこの基板表面に陽極酸化処理を行い、酸化アルミニウム層106を形成した(e)。別途酸化アルミニウム層を形成した基板の切断面から、酸化アルミニウム層を測定した結果、この酸化アルミニウム層の厚みは、50μmであることを確認した。なお、陽極酸化の条件は、室温で直流電圧25V、電流密度100A/m、電解時間6時間とした。ついで、酸化アルミニウム層形成基板の上面および下面をアルミナスラリー(砥粒径5μm)とダイヤモンドスラリー(砥粒径0.5μm)を用いて平面研磨を行った後、超音波洗浄器にて、有機洗浄、イオン交換水洗浄を行った(f)。さらに、触媒を溝に固着させるために、アルミニウム30重量部、銅2重量部、亜鉛2重量部を含む触媒水溶液内に30分浸し、これをすくい上げて240℃、6時間、真空恒温槽に保管した。このようにして、マイクロチャネルに触媒107を担持した触媒基板を形成した(g)。
【0084】
同じくもう1枚のパイレックスのガラス基板108(30mm×70mm×1mm)を用意し、このガラス基板108にマスク蒸着にて、クロム薄膜(厚み50nm)、白金薄膜(厚み200nm)の順にクロム/白金積層薄膜109を形成した(h)。このクロム/白金積層薄膜109は、前述の触媒基板と貼り合せたときに触媒と対向するようにパターニングした。この白金薄膜は、温度の変化によりその抵抗値が変化するために、一定の電圧を印加し、電流値を検知することにより、温度を読み取ることができる温度センサとして機能する。そして、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)にてクロム/白金積層薄膜109上に二酸化珪素薄膜(厚み100nm)110を形成し、温度センサの保護層とした(i)。そして、このクロム/白金積層薄膜109と二酸化珪素薄膜110を650℃の温度下で平滑なアルミナ板にて押さえつけ、650℃で16時間保持することにより、これらの薄膜がガラス基板108に埋め込まれ、平滑な面をもった温度センサ付基板を形成した(j)。
【0085】
先に作製した触媒基板と、温度センサ付基板とを、触媒107とクロム/白金積層薄膜109とが対向するように、650℃の温度下で2枚の平滑なアルミナ板にて挟み、6時間加圧圧着することにより、温度センサ付の製造装置用マイクロリアクタチップを作製した(k)。
【0086】
さらに、この製造装置用マイクロリアクタチップを図17に示すように、SUS製のホルダー9(上側)、10(下側)で挟持した。ホルダー9には、原料供給用、生成物取り出し用の貫通孔が設けられており、製造装置用マイクロリアクタチップに設けられた貫通孔103と空間的に連続するように挟持している。これに内径0.25mm、外径1.6mmのテフロン(登録商標)製チューブ11aを接続して製造装置用マイクロリアクタを作製した。
【0087】
作製した製造装置用マイクロリアクタは、図8に示したように、ケース43に収納した。ケース43の下には通信機能を有したボックス44が設置してあり、ケース43に取り付けられたコネクタ45から信号が引き出されて、ボックス44のコネクタ46に接続されている。さらに、外部装置との通信のためのコネクタ47を介して通信ケーブル26を接続した。
【0088】
以上のようにして、本発明の製造装置2を完成させた。
(2)精製装置の作製
図18は、精製装置3を構成するマイクロリアクタチップの製造方法を示す工程図である。
【0089】
まず、基材としてパイレックスのガラス基板111(30mm×70mm×1mm)にマイクロ加工により、マイクロチャネルとなる深さ100μm、幅500μmの溝112を形成した(a)。溝112は、2回折り返しの己字形状(ミアンダパターン)のものとし、その長さを168mmとした。溝112の端部には、直径1mmの貫通孔113を形成した(b)。この溝112に平均直径3μmのアルミナ粒子114を充填した(c)。その後、表面を日本筆にて丁寧に払い、基板表面に付着している余分なアルミナ粒子を除去した。このようにしてアルミナ充填基板を作製した。
【0090】
同じくもう1枚のパイレックスのガラス基板115(30mm×70mm×1mm)を用意し、図16(h)〜図16(j)の工程図にて示したのと同様に温度センサ付基板を作製した。このガラス基板115にマスク蒸着にて、クロム薄膜(厚み50nm)、白金薄膜(厚み200nm)の順にクロム/白金積層薄膜116を形成した(d)。このクロム/白金積層薄膜116は、前述の触媒基板と貼り合せたときにアルミナ粒子と対向するようにパターニングした。そして、プラズマCVDにてクロム/白金積層薄膜116上に二酸化珪素薄膜(厚み100nm)117を形成し、温度センサの保護層とした(e)。そして、このクロム/白金積層薄膜116と二酸化珪素薄膜117を650℃の温度下で平滑なアルミナ板にて押さえつけ、650℃で16時間保持することにより、これらの薄膜がガラス基板108に埋め込まれ、平滑な面をもった温度センサ付基板を形成した(f)。
【0091】
先に作製したアルミナ充填基板と、温度センサ付基板とを、アルミナ粒子114とクロム/白金積層薄膜116とが対向するように、650℃の温度下で2枚の平滑なアルミナ板にて挟み、6時間加圧圧着することにより、温度センサ付の精製装置用マイクロリアクタチップを作製した(k)。
【0092】
また、図18と同様の工程で、アルミナ粒子の代わりに活性炭を充填した温度センサ付の精製装置用マイクロリアクタチップも作製した。
【0093】
アルミナを充填した精製装置用マイクロリアクタチップおよび活性炭を充填した精製装置用マイクロリアクタチップは図17に示したのと同様に、SUS製のホルダーにて挟持し、内径0.25mm、外径1.6mmのPTFE(polytetrafluoroethylene)チューブにて接続して精製装置用マイクロリアクタを作製した。
【0094】
作製した精製装置用マイクロリアクタは、図8に示したように、ケース43に収納した。ケース43の下には通信機能を有したボックス44が設置してあり、ケース43に取り付けられたコネクタ45から信号が引き出されて、ボックス44のコネクタ46に接続されている。さらに、外部装置との通信のためのコネクタ47を介して通信ケーブル26を接続した。
【0095】
図19は、昇圧器13の構成を示す概略断面図である。昇圧器13は、圧力容器121、ピストン式昇圧機構122および不図示の圧力計を含んで構成される。
【0096】
ケースに収納されたマイクロリアクタと昇圧器13とをテフロン製のパイプ11を用いて図11に示したように接続した。
【0097】
本実施例においては、昇圧器13に対して、あらかじめ高純度の水素ガスの充填操作と、この水素ガスの吐出操作とを繰返しておき、装置の動作開始前に圧力容器121内に十分に高純度の水素だけが存在している状態とした。
【0098】
以上のようにして、本発明の精製装置3を完成させた。
(3)品質保証装置の作製
図20は、品質保証装置4を構成するマイクロリアクタチップの製造方法を示す工程図である。
【0099】
まず、両面ともに鏡面研磨を行い、片面にのみ厚み2μmの熱酸化珪素層132を表面に設けたシリコン基板131を用意する(a)。このシリコン基板131の熱酸化珪素層132を設けた面とは反対の面にサンドブラスト法にて、直径が500μm、中心部の基板厚みが20μmになるように凹部131aを設けるための切削加工を行った(b)。続いて、熱酸化珪素層132上に真空蒸着法により、マスクを介して、パターニングを施されたクロム薄膜を厚み50nm、金薄膜を厚み200nmとなるように形成し、これを積層薄膜型ヒータ133とした(c)。この積層薄膜型ヒータ133上に、プラズマCVDにて二酸化珪素薄膜(厚み100nm)134を形成し、ヒータ133の保護層とした。さらに二酸化珪素薄膜134上に、SnO薄膜135をスパッタ法によりマスクを介して形成した(d)。このSnO薄膜135は、この上に形成する触媒薄膜の温度変化を感知する感知薄膜として機能する。なお、この感知薄膜の設計線幅は、300μmとした。そして、パラジウム金属粉末を分散させたシリカゾルをバインダとしたペースト136をスクリーン印刷により、SnO薄膜135を覆うように、厚み30μm、線幅500μmで印刷して焼成した(e)。
【0100】
また、パイレックスのガラス基板137にSnO薄膜のパターンに応じたパターンの溝138を幅950μm、深さ300μmで形成した。さらに、この溝138の端部には、直径1mmの貫通孔139を形成した(f)。
【0101】
このガラス基板とシリコン基板とを陽極接合し、品質保証装置用マイクロリアクタチップを作製した(g,h)。
【0102】
このマイクロリアクタチップがガス中の不純物の検知は、以下のような仕組による。積層薄膜型ヒータ133に通電し、定常状態(高純度の水素を流した状態で300℃程度)に維持した状態で検知対象となるガスを通過させた場合、SnO薄膜135に流れる電流値は一定であるが、水素中に不純物が存在するとSnO薄膜135の表面状態を変化させ、その結果電流値が変化する。したがって、この電流値をモニタリングすることで不純物を検出することができる。
【0103】
作製した品質保証装置用マイクロリアクタは、図8に示したように、ケース43に収納した。ケース43の下には通信機能を有したボックス44が設置してあり、ケース43に取り付けられたコネクタ45から信号が引き出されて、ボックス44のコネクタ46に接続されている。さらに、外部装置との通信のためのコネクタ47を介して通信ケーブル26を接続した。
【0104】
次に、図12に示したように、バイパスライン19を3方バルブ16とともに接続し、消費装置に接続したライン21、廃棄設備に接続したライン22を接続した。
【0105】
以上のようにして、本発明の品質保証装置4を完成させた。
本実施例においては、図1に示したように、原料供給装置1、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4、消費装置5を連結あいた構成とした。なお、消費装置5としては、既存のガスクロマトグラフィー装置を用いた。
【0106】
原料供給装置1としては、メタノールと水との混合液(重量比1:1)を貯蔵する容器とした。この原料供給用の容器はシースヒーターによって150℃に加熱され、蒸気となった水とメタノールとを、同じく200℃に加熱した製造装置2に供給した。製造装置2では、面状ヒータをホルダーによってマイクロリアクタの上面に押さえつけるようにして貼り付け、200℃にまで温度上昇させた。このようにして製造装置2においてメタノールと水とを反応させ、水素ガスを発生させた。製造装置2から取り出される水素ガスは、未反応のメタノールと水蒸気、および不純物である一酸化炭素、二酸化炭素などを含んでいる。
【0107】
水素ガスを、製造装置2と精製装置3との間に設けた、約20℃に水冷した容積50mlのSUS製密封容器を通過させて、精製装置3に供給した。この水冷容器にて、ほとんどの未反応の水とメタノールを除去することができた。
【0108】
精製装置3にでは面状ヒータをホルダーによってマイクロリアクタの上面に押さえつけるようにして貼り付け、200℃にまで温度上昇させた。水素ガス中の不純物は、充填されたアルミナ粒子、活性炭によって吸着除去除去された。
【0109】
品質保証装置4にて不純物濃度を分析したところ、高純度の水素を流した状態とその電流値が変化せず、純度99.99%以上の高純度の水素ガスを製造することができた。
【0110】
オンサイト型ガス製造装置で製造した水素ガスを、消費装置であるガスクロマトグラフィーにより分析したところ、不純物として二酸化炭素が50ppm検出されたが、その他に不純物を検出することができなかった。
【0111】
また、精製装置3の不純物除去能力を再生するために、マイクロリアクタに高純度の窒素を流すことができ、マイクロリアクタに貼り付けたヒータで加熱することにより、充填したアルミナ粒子に吸着した不純物を排気除去することができる。
【0112】
[実施例2]
実施例1では、消費装置としてガスクロマトグラフィーを設置したが、実施例2ではプラズマCVD装置を設置した。さらに、原料供給装置1、製造装置2、精製装置3、品質保証装置4、消費装置5とサーバ装置とを通信回線にて接続し、動作状況のモニタリングなど一括管理運転を実施することができた。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】発明の実施の一形態であるオンサイト型ガス製造装置を示す構成図である。
【図2】マイクロリアクタチップ6の例を示す斜視図である。
【図3】マイクロリアクタ12aの構成を示す斜視図である。
【図4】積層マイクロリアクタチップの例を示す斜視図である。
【図5】積層型マイクロリアクタ12bの例を示す斜視図である。
【図6】マイクロリアクタチップ6aの他の例を示す斜視図である。
【図7】電気的入出力機能を有するマイクロリアクタ12cの例を示す斜視図である。
【図8】通信機能を備えた処理装置を示す斜視図である。
【図9】オンサイト型ガス製造装置を示す構成図である。
【図10】オンサイト型ガス製造装置を示す構成図である。
【図11】精製装置3の構成を示す斜視図である。
【図12】品質保証装置4の構成を示す斜視図である。
【図13】詳細なオンサイト型ガス製造装置の構成を示す図である。
【図14】オンサイト型ガス製造装置を利用したガス製造販売の事業形態を説明するための図である。
【図15】ガス製造販売システムを説明するための概略図である。
【図16】製造装置2を構成するマイクロリアクタチップの製造方法を示す工程図である。
【図17】SUS製のホルダー9(上側)、10(下側)の構成を示す図である。
【図18】精製装置3を構成するマイクロリアクタチップの製造方法を示す工程図である。
【図19】昇圧器13の構成を示す概略断面図である。
【図20】品質保証装置4を構成するマイクロリアクタチップの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0114】
1 原料供給装置
2 製造装置
3 精製装置
4 品質保証装置
5 消費装置
6 マイクロリアクタチップ
7 孔
8 チャネル
9 ホルダー(上側)
10 ホルダー(下側)
11 接続パイプ
11a テフロン製チューブ
12 マイクロリアクタ
13 昇圧器
14a 入口側の3方バルブ
14b 出口側の3方バルブ
15 バルブ
16 戻りライン
17a 入口側の3方バルブ
17b 出口側の3方バルブ
19 バイパスライン
20 ライン
21 消費装置に接続されたパイプ
22 廃棄装置に接続されたパイプ
23 廃棄装置
24 返しライン
25 廃棄装置に接続されたライン
26 通信のためのケーブル
27 ネットワーク回線
29 消費事業者側サーバ装置
30 製造装置設置事業者側サーバ装置
31 配送事業者側サーバ装置
41 入出力端子
42 通信ケーブル
43 ケース
44 ボックス
45 ケースに取り付けられたコネクタ
46 ボックスに取り付けられたコネクタ
47 外部通信用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型のガス製造方法であって、
前記消費装置に供給する前に、ガスの分析を行い、異常が検出されなかった場合にガスを前記消費装置に供給することを特徴とするオンサイト型のガス製造方法。
【請求項2】
消費者の有する消費装置の近傍でガスを製造して供給するオンサイト型ガス製造装置であって、
原料を供給するための原料供給装置と、
前記原料供給装置から供給された原料を反応させてガスを発生させる製造装置と、
前記製造装置で発生したガスを精製する精製装置と、
前記精製装置で精製されたガスの分析を行う品質保証装置とを有し、
前記品質保証装置の分析結果に基づいて、異常が検出されなかった場合に、前記消費装置にガスを供給することを特徴とするオンサイト型ガス製造装置。
【請求項3】
前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、それぞれマイクロリアクタを備えることを特徴とする請求項2記載のオンサイト型ガス製造装置。
【請求項4】
前記製造装置が備えるマイクロリアクタは、当該マイクロリアクタの環境パラメータを検出する検出手段と、前記環境パラメータを変更する変更手段とを備えることを特徴とする請求項3記載のオンサイト型ガス製造装置。
【請求項5】
前記精製装置は、精製したガスを貯蔵し、かつ昇圧することが可能なバッファタンクを備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のオンサイト型ガス製造装置。
【請求項6】
前記品質保証装置が備えるマイクロリアクタは、ガス中に含まれる成分を分析する分析用マイクロリアクタチップを1または複数備えることを特徴とする請求項5記載のオンサイト型ガス製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のオンサイト型ガス製造装置と、オンサイト型ガス製造装置を管理する製造装置設置業者によって利用される製造装置設置業者側サーバと、オンサイト型ガス製造装置を運転し、製造されたガスを消費する消費事業者によって利用される消費事業者側サーバとを含み、これらが互いにデータ通信可能に構成されるガス製造販売システムであって、
オンサイト型ガス製造装置を構成する前記原料供給装置、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、それぞれ装置自身の動作状況を示す動作状況情報を作成して消費事業者側サーバに送信し、
消費事業者側サーバは、受信した前記動作状況情報に基づいて、課金算出情報を作成して製造装置設置業者側サーバに送信し、
製造装置設置業者側サーバは、受信した前記課金算出情報に基づいて消費事業者に請求すべき金額を算出し、算出した金額を含む課金情報を作成して消費事業者側サーバに送信することを特徴とするガス製造販売システム。
【請求項8】
製造装置設置業者側サーバは、前記動作状況情報に基づいて、オンサイト型ガス製造装置の動作状況を判断し、その判断結果に応じてオンサイト型ガス製造装置を制御するための管理制御コマンドを送信し、
前記原料供給装置、前記製造装置、前記精製装置、前記品質保証装置は、前記管理制御コマンドを受信すると、コマンド内容に従って動作の変更を行うことを特徴とする請求項7記載のガス製造販売システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−225210(P2006−225210A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42725(P2005−42725)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】