説明

カルボシキル基含有ウレタン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、金めっき耐性、PCT耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適したカルボシキル基含有ウレタン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供し、もって比較的低コストでその硬化物からなる保護膜や絶縁層を形成したフレキシブルプリント配線板等を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、(A)(a)ポリイソシアネートと、(b)ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールと、(c)ポリカーボネートポリオールと、(d)ジメチロールアルカン酸とを反応させて得られるカルボシキル基含有ウレタン樹脂と、(B)熱硬化性化合物、好ましくはエポキシ樹脂とを含有する。好ましくはさらに(C)硬化促進剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材との密着性、耐屈曲性もしくは耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、金めっき耐性、PCT耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適したカルボシキル基含有ウレタン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物、並びにその硬化物からなる保護膜や絶縁材料に関し、プリント配線板の製造、特にフレキシブルプリント配線板の製造やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストや層間絶縁膜等の保護膜や絶縁層、又は液晶ディスプレイのバックライトや情報表示用のディスプレイ等に使用されるエレクトロルミネッセントパネルの背面電極用保護膜や、携帯電話、時計、カーステレオ等の表示パネルの保護膜、ICや超LSI封止材料などに有用である。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストとしては、カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンに合わせた金型で打ち抜いた後、接着剤を用いて貼り付けるタイプや、可撓性を有する被膜を形成する紫外線硬化型、熱硬化型のソルダーレジストインキをスクリーン印刷により塗布するタイプや、可撓性を有する被膜を形成する液状フォトソルダーレジストインキのタイプが用いられている。
【0003】
しかしながら、カバーレイフィルムでは、銅箔との追随性に問題があるため、高精度なパターンを形成することができない。一方、紫外線硬化型ソルダーレジストインキ及び液状フォトソルダーレジストインキでは、基材のポリイミドとの密着性が悪く、充分な可撓性が得られない。また、ソルダーレジストインキの硬化収縮及び硬化後の冷却収縮が大きいため反りが生じてしまい、問題となっている。
【0004】
また、従来の熱硬化型ソルダーレジストインキとしては、特公平5−75032号(特許文献1)に開示されているようなエポキシ樹脂と二塩基酸無水物を必須成分とするエポキシ樹脂系レジストインキ組成物があるが、形成される被膜に可撓性を付与するように調整した場合、基材のポリイミドとの密着性が悪くなり、耐めっき性、PCT耐性並びにはんだ耐熱性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、特開2006−117922号(特許文献2)では、(A)1分子中に2個以上のカルボキシル基を有し、かつポリカーボネートジオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応で形成されるウレタン結合を有するポリウレタン、及び(B)熱硬化性成分を含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている。熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂と組み合わせてこのようなカルボシキル基含有ウレタン樹脂を用いることにより、前記した従来のソルダーレジストインキの問題点は解決できるが、ポリカーボネートジオールは高価であるためコストアップになるという問題や、はんだ耐熱性等の特性において未だ改良すべき点が残されていた。
【特許文献1】特公平5−75032号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−117922号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、金めっき耐性、PCT耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適したカルボシキル基含有ウレタン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供し、もって比較的低コストでその硬化物からなる保護膜や絶縁層を形成したプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板や、テープキャリアパッケージ等の部品もしくは製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)(a)ポリイソシアネートと、(b)ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールと、(c)ポリカーボネートポリオールと、(d)ジメチロールアルカン酸とを反応させて得られるカルボシキル基含有ウレタン樹脂と、(B)熱硬化性化合物とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。
好適な態様においては、上記熱硬化性化合物(B)はエポキシ樹脂であり、また、さらに(C)硬化促進剤を含有することが好ましい。さらに無機及び/又は有機フィラー、好ましくはカップリング剤で表面処理された溶融シリカを含有することもでき、必要に応じて有機溶媒を含有することもできる。
さらに本発明によれば、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物や、該硬化物で、表面の一部又は全部が被覆されたプリント配線基板も提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカルボシキル基含有ウレタン樹脂は、(a)ポリイソシアネートと、(b)ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールと、(c)ポリカーボネートポリオールと、(d)ジメチロールアルカン酸とを反応させて得られるものであり、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールとジメチロールアルカン酸のみを用いた場合に比べてはんだ耐熱性等の特性を向上させることができ、また比較的高価なポリカーボネートポリオールの使用量を減らすことができる。従って、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、金めっき耐性、PCT耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成を比較的低コストで形成することができる。このカルボシキル基含有ウレタン樹脂を熱硬化性化合物と共に含有する熱硬化性樹脂組成物は、可撓性に優れたフレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジスト等の保護膜や絶縁樹脂材料として有用である。また、このような熱硬化性樹脂組成物から得られる被膜は、熱硬化後に反りがないため、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージへの部品又はチップの装着が容易である。従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、可撓性及び耐屈曲性、耐折性、柔軟性、めっき耐性、はんだ耐熱性、PCT耐性、電気絶縁性、下地への密着性等の諸特性に優れた可撓性の保護膜を低コストで生産性良く形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者らは、前記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、(a)ポリイソシアネートと、(b)ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールと、(c)ポリカーボネートポリオールと、(d)ジメチロールアルカン酸とを反応させて得られるカルボシキル基含有ウレタン樹脂は、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールとジメチロールアルカン酸のみを用いた場合に比べてはんだ耐熱性等の特性を向上でき、比較的高価なポリカーボネートポリオールの使用量を減らすことができることを見出した。一般に、樹脂のガラス転移温度が低くなる程、形成される被膜の可撓性が増大し、熱硬化後の被膜の反りは少なくなる。しかしながら、ガラス転移温度が低くなると、得られる被膜のはんだ耐熱性、めっき耐性、耐薬品性等の特性も低下し易くなる。本発明では、カルボシキル基含有ウレタン樹脂のポリオール成分のポリカーボネートポリオール(c)の一部に置き換えてビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール(b)を併用することにより、即ちこの(b)成分の芳香環の導入により得られる樹脂のガラス転移温度をある程度上昇させて、これらの相反する特性をバランスさせることにより、得られる被膜のはんだ耐熱性等の特性を向上させることができた。従って、基材との密着性、耐折性、低反り性、金めっき耐性、電気絶縁性等に優れるというカルボシキル基含有ウレタン樹脂の特性を維持しつつ、さらにはんだ耐熱性等の特性を向上させることができる。また、比較的高価なポリカーボネートポリオールの使用量を減らすことができるので、比較的低コストでカルボシキル基含有ウレタン樹脂を製造することができる。
以下、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明で用いるカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)は、ポリイソシアネート(a)と、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール(b)と、ポリカーボネートポリオール(c)と、ジメチロールアルカン酸(d)との反応で形成されるウレタン結合を有し、且つ、上記ジメチロールアルカン酸(d)により導入されたカルボキシル基を有する。反応に際しては、反応停止剤(末端封止剤)としてモノヒドロキシル化合物(e)を加えてもよい。
【0011】
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)は、例えば、ポリイソシアネート(a)と、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール(b)と、ポリカーボネートポリオール(c)と、ジメチロールアルカン酸(d)と、モノヒドロキシル化合物(e)とを一括混合して反応させてもよく、あるいは上記ポリイソシアネート(a)と、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール(b)と、ポリカーボネートポリオール(c)と、ジメチロールアルカン酸(d)とを反応させ、続いて反応停止剤として機能するモノヒドロキシル化合物(e)を反応させてもよい。
反応は、室温〜100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために70〜100℃に加熱することが好ましい。また、上記(a)〜(d)成分の反応比率(モル比)としては、(b):(c)=1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、(b+c):(d)=95:5〜5:95、好ましくは80:20〜15:85、(a):(b+c+d)=1:1〜2:1、好ましくは1:1〜1.5:1、(a+b+c+d):(e)=1:0.01〜0.5、好ましくは1:0.02〜0.3の割合が適当である。
【0012】
前記ポリイソシアネート(a)としては、従来公知の各種ポリイソシアネートを使用でき、特定の化合物に限定されない。ポリイソシアネート(a)の具体例としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、(o,m,又はp)−キシレンジイソシアネート、(o,m,又はp)−水添キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トルエンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。これらのジイソシネートを使用した場合、はんだ耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0013】
前記ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール(b)としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体等が挙げられるが、これらの中でもビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体が好ましい。
【0014】
次に、前記ポリカーボネートポリオール(c)としては、ポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールとしては、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(c−1)、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(c−2)、又はこれら両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(c−3)が挙げられる。
【0015】
前記直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(c−1)の具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0016】
前記脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(c−2)の具体例としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0017】
前記直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(c−3)の具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0018】
前記直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、低反り性や可撓性に優れる傾向がある。また、脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、結晶性が高くなり、耐錫めっき性、はんだ耐熱性に優れる傾向にある。以上の観点から、これらポリカーボネートジオールは2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールを用いることができる。低反り性や可撓性と、はんだ耐熱性や耐錫めっき性とをバランスよく発現させるには、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3のポリカーボネートジオールを用いるのが好ましい。
【0019】
前記ポリカーボネートジオールは、数平均分子量200〜5,000のものが好ましいが、ポリカーボネートジオールが構成単位として直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を含み、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3である場合は、数平均分子量が400〜2,000のものが好ましい。
【0020】
前記ジメチロールアルカン酸(d)は、カルボキシル基を有するジヒドロキシ脂肪族カルボン酸であり、その具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。ジメチロールアルカン酸(d)を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を導入することができる。
【0021】
前記モノヒドロキシル化合物(e)としては、ポリウレタンの末端封止剤となるものであり、分子中にヒドロキシル基を1つ有する化合物であればよく、脂肪族アルコール(e−1)、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物(e−2)等が挙げられる。
脂肪族アルコール(e−1)の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール等が挙げられ、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物(e−2)の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0022】
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は500〜100,000であることが好ましく、8,000〜50,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が500未満では、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度を損なうことがあり、一方、100,000を超えると硬くなり、可撓性を低下させる恐れがある。
【0023】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の酸価は5〜150mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、10〜100mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が5mgKOH/g未満では熱硬化性成分との反応性が低下し、耐熱性を損ねることがある。一方、酸価が150mgKOH/gを超えると、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性が低下する場合がある。なお、樹脂の酸価はJIS K5407に準拠して測定した値である。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)と共に配合される熱硬化性化合物(B)としては、前記(A)成分であるカルボキシル基含有ウレタン樹脂のカルボキシル基と反応し得るエポキシ基、オキセタニル基等を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂やオキセタン化合物を好適に使用できるが、特にエポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニール型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたものを使用してもよい。
【0026】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記熱硬化性化合物(B)は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。その配合量は、前記(A)成分であるカルボキシル基含有ウレタン樹脂のカルボキシル基1当量に対し、前記熱硬化性化合物(B)の官能基の当量、例えばエポキシ樹脂のエポキシ当量の比が、0.8〜3.0、好ましくは1.0〜2.0であることが望ましい。0.8未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の電気絶縁性が不充分となる場合があり、一方、3.0を超えると、フレキシブルプリント配線基板(FPC)の絶縁保護膜として使用した場合の諸特性、特に電気絶縁性が悪化する傾向がある。
【0027】
本発明で用いる硬化促進剤(C)は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール及びその誘導体(例えば、四国化成工業(株)製、2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、2PHZ、1B2MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、C11Z−CN、2PZ−CN、2PHZ−CN、2MZ−CNS、2E4MZ−CNS、2PZ−CNS、2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK、2P4MHZ、2P4BHZ等);アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、チバ・ガイギー社製、イルガキュアー261、旭電化(株)製、オプトマ−SP−170等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等の公知慣用である硬化促進剤あるいは硬化剤類が挙げられる。
【0028】
これら硬化促進剤(C)は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。硬化促進剤(C)の使用は必須ではないが、特に硬化を促進したい場合には、前記熱硬化性化合物(B)100質量部に対して好ましくは0.1〜25質量部の範囲で用いることができる。25質量部を超えるとその硬化物からの昇華性成分が多くなるので好ましくない。
【0029】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)、熱硬化性化合物(B)及び必要に応じて硬化促進剤(C)を、混合機、例えばディスパー、ニーダー、3本ロールミル、ビーズミル等を用いて、溶解又は分散することにより得られる。その際、エポキシ基やカルボキシル基に対して不活性な溶剤を使用してもよい。このような不活性溶剤としては有機溶剤が好ましい。
【0030】
有機溶剤は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)、熱硬化性化合物(B)を容易に溶解又は分散させるため、あるいは塗工に適した粘度に調整するために使用する。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。有機溶剤の配合量は、所望の粘度に応じて適宜設定できる。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ポリイミド等の基材との密着性を向上させるために、公知慣用のメルカプト化合物を含有することができる。メルカプト化合物としては、2−メルカプトプロピオン酸、トリメチロールプロパントリス(2−チオプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、2−アミノチオフェノール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−プロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。その配合量は、前記(A)カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)100質量部当たり10質量部以下の範囲が適当である。メルカプト化合物の配合量が上記範囲を越えた場合、架橋反応に必要な前記エポキシ樹脂のエポキシ基を消費し(エポキシ基と反応し)、架橋密度が下がるため好ましくない。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、密着性、硬度、耐熱性等の特性を上げる目的で、無機及び/又は有機フィラーを含有することができる。無機フィラーとしては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、雲母粉等が挙げられ、有機フィラーとしては、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等が挙げられる。上記フィラーの中でも、低吸湿性、低体積膨張性に特に優れるのは、シリカである。シリカは溶融、結晶性を問わず、これらの混合物であってもかまわないが、特にカップリング剤等で表面処理したシリカの場合、電気絶縁性を向上させることができるので好ましい。フィラーの平均粒径は、25μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下であることが望ましい。これら無機及び/又は有機フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)100質量部当たり200質量部以下が適当であり、好ましくは5〜100質量部の割合である。フィラーの配合量が上記割合を越えると、硬化被膜の耐屈曲性及び耐折性が低下し、好ましくない。
【0033】
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない限り、前記成分以外の他の添加剤、着色剤を添加してもよい。添加剤としては、アスベスト、オルベン、ベントンなどの増粘剤、シリコーン系、フッ素系の消泡剤、レベリング剤、ガラス繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維等の繊維強化材などが挙げられ、着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。さらに、必要に応じて、公知慣用の熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等を添加できる。
【0034】
以上のような組成を有する熱硬化性樹脂組成物は、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、スプレーコーティング法及びディップコーティング法など従来公知の種々の方法でプリント基板に塗布することができる他、ドライフィルム又はプリプレグ等様々の形態、用途に使用することができる。その使用方法や用途により様々な溶剤を用いることができるが、場合によっては良溶媒だけでなく貧溶剤を用いることも差し支えない。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、回路形成されたフレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージ又はエレクトロルミネッセントパネルにスクリーン印刷法により塗布し、例えば120〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化収縮及び冷却収縮による反りがなく、基材に対する密着性、耐屈曲性、耐折性、柔軟性、耐めっき性、PCT耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性等に優れたソルダーレジスト膜や保護膜が形成される。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明する。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0036】
合成例1
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール成分として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)を288g(0.36mol)、ビスフェノールA型プロピレンオキシド付加体ジオール(ADEKA社製、BPX33、数平均分子量500)45g(0.09mol)、ジメチロールアルカン酸としてジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール11.8g(0.16mol)、溶媒としてカルビトールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)250gを仕込み、60℃で全ての原料を溶解した。ポリオール成分を攪拌しながら、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを200.9g(1.08mol)を滴下した。滴下終了後、80℃で撹拌しながら反応を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタン樹脂(ワニスA)を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は18,300、固形分の酸価は50.3mgKOH/gであった。尚、平均分子量は、ゲル担体液体クロマトグラフィー(HLC−8120 GPC 東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンに換算した値で求めた。
【0037】
合成例2
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール成分として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)を180g(0.225mol)、ビスフェノールA型プロピレンオキシド付加体ジオール(ADEKA社製、BPX33、数平均分子量500)112.5g(0.225mol)、ジメチロールアルカン酸としてジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール11.8g(0.16mol)、溶媒としてカルビトールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)250gを仕込み、60℃で全ての原料を溶解した。ポリオール成分を攪拌しながら、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを200.9g(1.08mol)を滴下した。滴下終了後、80℃で撹拌しながら反応を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタン樹脂(ワニスB)を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は18,000、固形分の酸価は50.0mgKOH/gであった。尚、平均分子量は、ゲル担体液体クロマトグラフィー(HLC−8120 GPC 東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンに換算した値で求めた。
【0038】
合成例3
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール成分として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)を72g(0.09mol)、ビスフェノールA型プロピレンオキシド付加体ジオール(ADEKA社製、BPX33、数平均分子量500)180g(0.36mol)、ジメチロールアルカン酸としてジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール11.8g(0.16mol)、溶媒としてカルビトールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)250gを仕込み、60℃で全ての原料を溶解した。ポリオール成分を攪拌しながら、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを200.9g(1.08mol)を滴下した。滴下終了後、80℃で撹拌しながら反応を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタン樹脂(ワニスC)を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は17,500、固形分の酸価は50.0mgKOH/gであった。尚、平均分子量は、ゲル担体液体クロマトグラフィー(HLC−8120 GPC 東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンに換算した値で求めた。
【0039】
比較合成例1
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール成分として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)を360g(0.45mol)、ジメチロールアルカン酸としてジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール11.8g(0.16mol)、溶媒としてカルビトールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)250gを仕込み、60℃で全ての原料を溶解した。ポリオール成分を攪拌しながら、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを200.9g(1.08mol)を滴下した。滴下終了後、80℃で撹拌しながら反応を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタン樹脂(ワニスD)を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は21,200、固形分の酸価は48.0mgKOH/gであった。尚、平均分子量は、ゲル担体液体クロマトグラフィー(HLC−8120 GPC 東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンに換算した値で求めた。
【0040】
比較合成例2
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール成分としてビスフェノールA型プロピレンオキシド付加体ジオール(ADEKA社製、BPX33、数平均分子量500)225g(0.45mol)、ジメチロールアルカン酸としてジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール11.8g(0.16mol)、溶媒としてカルビトールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)250gを仕込み、60℃で全ての原料を溶解した。ポリオール成分を攪拌しながら、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを200.9g(1.08mol)を滴下した。滴下終了後、80℃で撹拌しながら反応を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタン樹脂(ワニスE)を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は17,000、固形分の酸価は51.0mgKOH/gであった。尚、平均分子量は、ゲル担体液体クロマトグラフィー(HLC−8120 GPC 東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンに換算した値で求めた。
【0041】
実施例1〜5及び比較例1〜2
表1に示す各成分及び配合割合で、室温にて三本ロールにより混合し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0042】
【表1】

【0043】
前記各熱硬化性樹脂組成物について、以下のような種々の特性について下記の方法で評価した。その結果を表2に示す。
(1)密着性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれカプトン100EN(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。その硬化被膜に対してセロハン粘着テープによるピールテストを行い、以下の基準で密着性の評価を行った。
○:剥がれのないもの
△:若干剥がれのあるもの
×:剥がれのあるもの
【0044】
(2)耐折性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれカプトン100EN(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜を180゜折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にクラックがないもの
△:硬化被膜に若干クラックがあるもの
×:硬化被膜にクラックがあるもの
【0045】
(3)反り性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれカプトン100EN(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。冷却後、得られた硬化被膜を50×50mmに切り出し、反りを以下の基準で評価した。
○:反りがないもの
△:若干反りがあるもの
×:反りがあるもの
【0046】
(4)金めっき耐性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれプリント回路基板(厚さ1.6mm)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させて試験片を得た(乾燥膜厚15μm)。得られた試験片を用いて、後述する工程で無電解金めっきを行ない、金めっき耐性を以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化被膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0047】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:試験片を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、MetexL−5Bの20vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:試験片を、14.3wt%の過硫酸アンモン水溶液に室温で1分間、浸漬した。
4.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:試験片を、10vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:試験片を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:試験片を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
8.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:試験片を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20vol%水溶液)に30分間、浸漬した。
10.酸浸漬:試験片を、10vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:試験片を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:試験片を、85℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%、シアン化金カリウム3wt%水溶液)に30分間、浸漬した。
13.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:試験片を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗した後、水を良くきり乾燥した。
【0048】
(5)はんだ耐熱性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれプリント回路基板(厚さ1.6mm)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜にロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬し、溶剤にてフラックスを除去し、乾燥した後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、硬化被膜の状態を以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にふくれ、剥がれがないもの
△:硬化被膜に若干ふくれ、剥がれがあるもの
×:硬化被膜にふくれ、剥がれがあるもの
【0049】
(6)封止樹脂密着性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれL/S=20/20μmのポリイミド基板(新日鐵化学(株)製エスパネックス)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜に封止樹脂を滴下し、150℃で3時間硬化させた。封止樹脂に対しての密着性を以下の基準にて評価した。
○:剥離モードが基材の破壊/被膜の凝集破壊によるもの
△:剥離モードが被膜と基材との界面剥離によるもの
×:剥離モードが封止樹脂と被膜の界面剥離によるもの
【0050】
(7)電気絶縁性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれL/S=20/20μmのポリイミド基板(新日鐵化学(株)製エスパネックス)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度120℃、湿度85%RH、0.17MPa、印加電圧60V、200時間
測定条件:測定時間60秒、印加電圧60V
○:室温における抵抗値1013Ω以上
△:室温における抵抗値1012Ω〜10Ω
×:室温における抵抗値10Ω以下、又はショート発生
【0051】
【表2】

【0052】
上記表2に示す結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化被膜は、反りがなく、基材への密着性、耐折性、反り性、金めっき耐性、はんだ耐熱性、封止樹脂密着性に優れていた。また、絶縁信頼性においても良好な結果であった。これに対して、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオール(c)を用いて合成されたカルボシキル基含有ウレタン樹脂(ワニスD)を用いた比較例1の場合、基材への密着性、耐折性、反り性、金めっき耐性、封止樹脂密着性、電気絶縁性には問題なかったが、はんだ耐熱性に劣っていた。一方、ポリオール成分としてビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール(b)を用いて合成されたカルボシキル基含有樹脂(ワニスE)を用いた比較例2の場合、基材への密着性、耐折性、反り性、はんだ耐熱性、封止樹脂密着性には問題なかったが、金めっき耐性や電気絶縁性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)ポリイソシアネートと、(b)ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールと、(c)ポリカーボネートポリオールと、(d)ジメチロールアルカン酸とを反応させて得られるカルボシキル基含有ウレタン樹脂と、(B)熱硬化性化合物とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性化合物(B)がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに無機及び/又は有機フィラーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラーが、カップリング剤で表面処理された溶融シリカであることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で、表面の一部又は全部が被覆されたプリント配線基板。

【公開番号】特開2008−201847(P2008−201847A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36762(P2007−36762)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】